幻想郷にきてからだいたい一ヶ月が経過した。
この一ヶ月、そりゃあもういろいろあった。
まずは、紅白と黒白が仲良く神社に襲撃しに来たことからはじまる。
オープンになったうちの神様二人が仲良く表に遊びにお行きになられたり。
はたまた、うちに宴会しにいろんな人々(人より妖怪のほうが多かった気もする)が集まってきたり。
外の世界からここに来たことで興味がウチに向いたんだろうなーなんて解釈も…
「この後始末がなければ考えなくもなかったなあ…」
宴会から一夜明けて、境内がこの有様じゃそんな好意的な考えも失せる。
もしかしていじめられてるのかな、とさえ思った。
何しろ境内が異ッッッ常にキッタナい!
酒瓶酒瓶弁当箱酒瓶串ワイン紙コップポテチ空缶信仰心酒瓶ファンタペプシポーション!
どっからもってきたの的なものまでぎょーさん存在した。
飲みすぎ食べすぎ太るわよあんたたち。
てか誰よ信仰心捨てたの!おやつあげないわよ!
ちなみに、神様は今日も遊びに行ってる模様。
はぁ、とため息をひとつ。
考えていても始まらない。
箒を手にひとりで境内の大掃除を始める私。
掃除機ぐらい、もって来るべきだった。
幻想郷は不思議なところである。
博麗の結界ひとつで外の世界から切り離された、外の人間からすれば正に幻想郷だ。
それでも、外の世界からの影響が地味ーにあるらしい。
香霖堂で扱われているものなんかがその一部だ。
ケータイ、パソコン、テレビその他。
ただ、外の世界の技術の結晶もここでは蹴鞠に使われるらしい。
正直ありえない。
ここの住人はどんな足してんの。
妖怪か!
…妖怪でしたっけ皆さん。
それはそれとして、私は今日は香霖堂に探し物をしにきた。
昨日言ったもの、掃除機を探しにきたのだ。
店主は物の名前と用途はわかる程度の能力が備わってるし、名前言えばきっと出してくれるはず。
現代人の私が、あれらの外の世界の技術を使うべきだと思う。
蹴鞠なんかに使うのは言語道断だ。
ちなみに、今日も神様二人はどこかへ行かれている模様。
信仰される気あるのかな、なんてヤバい疑問を持ちながら扉を開く。
「ごめんください」
「いらっしゃいませ」
読んでいたらしい本から顔を上げた店主が愛想笑いを見せる。
「おや、珍しい客だね」
「こんにちは、探しものがあるのですがよろしいでしょうか」
こちとら学校内では優等生で通った早苗ちゃん。
花が咲くような笑顔を浮かべ店主に尋ねる。
「何をお探しで?」
「『掃除機』っていうものを探してるんですが」
「あぁ、確か奥の方にあったような…自分で探してもらえるとありがたい」
店主が指を指した店の奥…
何でもかんでもわからないものは積みましたどうだこのやろうと言わんばかりの、山。
山からカンカラカンと何か落ちた。
「す、すごい山ですね」
「ん…まあ、君の探し物も多分あるだろうから探してみなよ。
そうそう、あまり散らかさないでくれよ」
そう言った店主は、本に目を戻す。
勝手にやってくれってことらしい。
商売する気ないんだろうなあ…。
ていうかこれはアンタが散らかした後じゃないの?
さて山である。
もう、そうとしか形容できない程の数の、外の世界のガラクタの山。
なんというか腐海。
なんでこうなってしまったのか、最早私では理解に苦しい。
「あら、あなたは…」
さっそく山の解体に向かおうとしたところで、先客がいることに気づく。
うさみみを生やしお目目真っ赤の人間(?)が山の中腹辺りでガサゴソやっていた。
「こんにちは」
「こんにちは。ええと…あなたは山の上の巫女ね」
あら、結構礼儀正しい。
外の世界でうさみみを生やした人間なんて、コミk…
いや、あれは忘れよう…忘れるべきだ…
ともかく、私が思った以上に礼儀正しい人(?)だった。
「東風谷早苗と申します。最近幻想郷に引っ越してきました」
「私は鈴仙・優曇華院・イナバ。幻想郷の外から来た者同士、よろしく」
名前長っ!
さすがにそんなの一回じゃ覚えられない。
「え、ええとなんとお呼びすれば…」
「別に何でもかまわないけど…」
「じゃあ、ウドちゃん」
「レイセンでお願いしますマジで。てかえらいフランクね!」
すごい勢いでツッコまれた。
ていうかツッコみ慣れてそう。
これは相当イジられたりしてんじゃないかなこの人(?)。
そんな性格してそう。
スタンスはウドちゃんじゃなく天野さんだったのかもしれない。
「じゃあレイセンちゃん」
「ちゃんづけは譲らないのね…早苗さんでいいかしら」
「折角出会ったんだし、ちゃんづけじゃダメ?」
「き、急に慣れなれしいわねアナタ…」
同じ外の世界から来たこの人(?)、何故か妙に親近感を覚える。
ここで友達作るならこんな人がいいなー、みたいな。
うさみみあるけど、見た目同年代っぽいし(諏訪子さま含め幻想郷ではアテにならない)。
あの霊夢とは、あまり仲良しにはなれそうにない。
「レイセンちゃーん」
「てゐと似たような匂いを感じるわ…」
「レーセンちゃ~ん」
「はいはい早苗さん」
「ウドcy」
「早苗ちゃんコンニチワ!これでいい!?」
「レイセンちゃん好きー」
「アナタ本当に急ね」
まったくもう、なんてため息をつく彼女。
クラスに一人いるタイプね。
委員長タイプというか、中間管理職タイプというか。
そんなわけで、レイセンちゃんと友達になりました。
幻想郷ではじめての、私の友達です。
「ところで、何を探しているの?」
「ん…えーとなんだったかしら…」
ここにいるってことは私と同じように何かを探しにきたらしい。
それはわかるけど、まだ私を警戒してる節がある。
この子絶対人見知りとかする子ね。
「ちなみに私は『掃除機』を探しに来たの。
そうだなぁ…動物で例えるなら象みたいな形の機械なんだけど」
「別にアナタのは聞いてないけど…」
ちょっとレイセンちゃんが冷たい。
まあ、初対面だしこんなものかもしれない。
人見知りっぽいし。
「ううん、二人いるなら二人で探したほうがいいんじゃないかなと思って。
なんせこれだけの山だし、探し物もちょっとやそっとじゃ見つからないと思うよ」
「なるほど、それもそうね」
合理的な案を出すことで、協力関係を得る。
これぞ、私の友達つくりの極意。
あっちの世界にいるときはこうやって何人友達をオトしたことか!
さらに、
「だから、一緒にさがそ!」
そう!この笑顔、微笑み、スマイル…!
現人神と崇められる私の最高の笑顔で、何人の友達を(ry
「わかったわ、協力しましょう」
「そうこなくちゃ、ありがとうレイセンちゃん!」
「ギブアンドテイクってヤツかしらね」
「ギボアンドアイコ?」
「何それ!誰!何者!」
レイセンちゃん的に、前途は多難らしい。
私は楽しいけど。
とりあえず続きを読んでみたいと思うので次に期待です。
あああ!すみません!
これカップリング要素皆無です!
あとがき書き間違えました、申し訳ないです。
あまり1コメント毎にぶれないでどっしりと書きたいものを書いてくれると読者としてはうれしいです。
友達づくりに積極的な早苗さんのキャラが新鮮で面白かったです。きちんとした客になりそうな早苗さんに冷たいこーりんもw
ていうか早苗さんもギブアンドテイクの意味くらい分かりましょう。
なんかこういう形の小説は「涼宮ハ○ヒの憂鬱」に近いですね。次回期待しています!
暖かいコメントありがとうございます、救われます。
友情をテーマにゆるりと書いていきたいです。
>03-22 20:55:20の方
なんというかその…ききまつがいというやつです、きっとw
>じう様
自分語りみたいな形がすきですw