※この作品は、ある日の永遠亭のある二人のほんのひとときの時間をほのぼのと書く小説です。
「永琳!いる?」
永遠亭に一人の少女の声が響き渡る。声の主は、この永遠亭の主である蓬莱山輝夜のだった。
「えーりーん!いるなら返事してー!」
薄暗い回廊で叫んでも輝夜の声は空しく響くだけ。誰も返事しなかった。
「全く、永琳ったら何処にいるの?こういう必要なときに限っていないんだから・・・。」
ふぅ、とため息を一つ。違う場所へ行こうとした時、輝夜の足が止まった。
「煙?」
モクモクと視線の奥からは黒い煙が立ち込めていた。
「永琳…。」
輝夜は煙がのぼるほうへ歩いていった。
煙の立ち上っていた部屋に入ったときには、もう殆どの煙が消え失せていた。
「永琳?いるの?」
「姫…ですか?」
部屋の奥で輝夜の呼びかけにこたえた女性――――八意永琳が、薄墨の煙の中から出てきた。
また新薬作りをしていたか。輝夜は煙で少しすすけた永琳の顔をジト目で見ていた。
「姫、どうしたのですか?突然私を呼んで…。」
「永琳、顔汚い。」
「あっ。すいません。」
永琳は急いだ仕草をしながら、再び部屋に戻っていった。薬作りのどこにそんな興味が沸くんだろう?永琳の趣味に素朴な疑問を抱いていたら、すすの取れた白い肌で、永琳は微笑みながらやってきた。
「お待たせしてすいませんでした。新薬開発に熱中してつい…。」
「もう永琳ったら…。あ、そうだ!永琳、話があるの!」
「なんですか?」
「実はね!わたし、働こうと思っているの!!」
「あー。そうですか。じゃ、頑張ってください。私まだ開発の途中なので、では・・・。」
「うん!分かった。頑張るよ!…………って待ってよ永琳!!」
すたすたとさっきいた場所へ戻ろうとする永琳の服に、輝夜はほしいものを買ってもらえなかった小さな子供みたいにしがみついた。永琳は自分の服にしがみつきながら「えーりん!えーりん!」と叫ぶ姫の要求に耳を塞ぎながら戻ろうとするが、あまりにも五月蠅く、とても無視ができないほどだった。さすがに痺れを切らした永琳はすがりつく輝夜の話を聞くことにした。これ以上姫を騒がせたらもっと面倒になりそうだし・・・。
「姫、そんなにも私に聞いてほしいことがあるのですか?」
「もちろんよ!結構大事なことなのだから聞いておかないと後々困ると思って・・・。それなのに永琳は…」
「はいはい…すいませんでした。」
これだから姫は大変だ。こういうところと引き篭りな所さえなければいいのに…。ため息をつきながら手を頭に当てて、頭痛の仕草をした。
「で、聞いてほしいことはなんですか?」
「うん。実はね、ほら最近例の夜雀が鰻屋をやるようになったでしょ?あの夜雀が営業できるくらいならわたしにだって出来ると思って…」
まさか自分でも店を開くとか言うんじゃないでしょうね。他人に流されやすいんだから。
「お店を開こうと思っているの!ねぇ永琳?店のお金出して!あ、ちなみにお店の種類はお土産屋にしようかなぁ~って考えているんだけd…」
「無理です。」
「えっ!」
輝夜は突然の拒否に目を丸くした。そんなにも驚かなくても。
「なんで無理なの?」
「姫はきっと分かっておられると思いますけど、一応言っておきますね。店を開くにはお金だけじゃダメ なのですよ?まず売り物を作る人手が 要りますし、それにそれを宣伝する人手も要ります。それだけで もかなりの金額が必要なのですよ?それだけじゃありません。店の場所を確 保するために土地も買わな きゃいけないですし、それに…」
「でもあの鰻屋は結構みんなに知れ渡っているよ?」
「アレは屋台だからです!!それにあれほど小さい屋台だったらあの夜雀だけでも十分出来ます!!」
「でも…」
輝夜はさっきとは打って変わって表情が暗くなった。それほどやりたいのか。うちの主も、もうちょっと屋外に出すようにしてもらわないと。無知すぎる…。主の無知さに永琳は心の中で嘆いていた。いつものことだが。
「でもホントに働きたいの!」
「姫。一つ訊いていいですか?」
「何?」
「姫は働きたいと、店を開きたい。どっちですか?はじめは働きたい、次は店を開きたい、そして最後はま
た働きたい…。結局姫は何がしたいのですか?」
しばらく輝夜は黙り込んだ。訊いてはいけないような気がしたけれども、ここは正直に言わないと本人もどう考えるか分からないかもしれないからだ。変に拒んでは今以上に引き篭ったりするし、かといって姫の要求に、「はい。いいですよ」と答えると後々凄く面倒なことが起りそうだ。訊いて良いんだよ。今のは。
黙っていた輝夜はうつむきながらぶつぶつと何か言っていた。だが、それは聞き取りにくかった。言いたくないことなのか、それとも恥ずかしいことなのかよく分からないが。永琳は小さな声でつぶやく輝夜にそっと話しかけた。
「姫、何が言いたいのですか?はっきりいてください。」
「…あのね。永琳。わたし…。」
「はい。」
「わたし…。引き篭るのやめようと思っている。」
「あー、なるほど。だから働きたいと思っているのですね。」
「う…。ま、まぁそんな感じかな?」
「だったら、いい仕事がありますよ?」
「でも、なんだかなぁ…。」
「なんですか?」
「いや、別に紹介してくれるのはいいんだけど、わたし正社員とかそういう仕事じゃなくて…。」
「えっ?じゃ、まさか…」
輝夜は何も言わずにうなずいた。どうやらフリーターとして働きたいらしい。そんな馬鹿な…。
永琳は半分驚きつつも、輝夜の働きたい本当の理由が薄々分かってきたようだった。
「永琳!時給高めなアルバイトとかある?」
「知りませんよ。」
「う~ん。じゃあパソコン使って調べるしかないなぁ…。」
「姫。」
「ん?」
「一つ言ってもいいですか?」
「構わないけど?何か?」
「姫。あなたの働きたい理由。なんとなく分かってきました。なんとなくですけど…。」
「あ、あら。そうなの…?」
う、痛いとこ突いてくるね。バレないかしら…。輝夜の視線があちこちに泳いでいた。核心的な部分を永琳は突いたらしい。そんな輝夜の焦りもお構いなしに永琳はすっぱり言った。
「姫ってもしかして、遊ぶために働きたいのでは?」
ズゴーーーーン!!輝夜は一発で心中を見抜かれた。図星か…。永琳は既に呆れかえっていた(まあいつもの輝夜の生活習慣から既に呆れているが)。永琳はまたもやため息をついてしまった。核心を突かれて口を開けたまま硬直している自分の主を見つめながら、
「もぅ。姫。もう少しまともな目的かと思えば、遊ぶためなんて…。姫、今日のこの話、無かったことにしてください。では、私は薬の続きがあ るので。失礼します。」
「…………うん。」
永琳はすたすたと薬を作っている部屋へ戻っていった。輝夜はそのまま空気を抜かれた風船のようにしょぼしょぼとその場に崩れた。力の無い声で輝夜は、
「やっぱり永琳は必要なときに限って役に立たないよ…。」
こうして輝夜の就職計画は、儚くも永琳によって崩れ去った。
残念!輝夜!
おしまい
「永琳!いる?」
永遠亭に一人の少女の声が響き渡る。声の主は、この永遠亭の主である蓬莱山輝夜のだった。
「えーりーん!いるなら返事してー!」
薄暗い回廊で叫んでも輝夜の声は空しく響くだけ。誰も返事しなかった。
「全く、永琳ったら何処にいるの?こういう必要なときに限っていないんだから・・・。」
ふぅ、とため息を一つ。違う場所へ行こうとした時、輝夜の足が止まった。
「煙?」
モクモクと視線の奥からは黒い煙が立ち込めていた。
「永琳…。」
輝夜は煙がのぼるほうへ歩いていった。
煙の立ち上っていた部屋に入ったときには、もう殆どの煙が消え失せていた。
「永琳?いるの?」
「姫…ですか?」
部屋の奥で輝夜の呼びかけにこたえた女性――――八意永琳が、薄墨の煙の中から出てきた。
また新薬作りをしていたか。輝夜は煙で少しすすけた永琳の顔をジト目で見ていた。
「姫、どうしたのですか?突然私を呼んで…。」
「永琳、顔汚い。」
「あっ。すいません。」
永琳は急いだ仕草をしながら、再び部屋に戻っていった。薬作りのどこにそんな興味が沸くんだろう?永琳の趣味に素朴な疑問を抱いていたら、すすの取れた白い肌で、永琳は微笑みながらやってきた。
「お待たせしてすいませんでした。新薬開発に熱中してつい…。」
「もう永琳ったら…。あ、そうだ!永琳、話があるの!」
「なんですか?」
「実はね!わたし、働こうと思っているの!!」
「あー。そうですか。じゃ、頑張ってください。私まだ開発の途中なので、では・・・。」
「うん!分かった。頑張るよ!…………って待ってよ永琳!!」
すたすたとさっきいた場所へ戻ろうとする永琳の服に、輝夜はほしいものを買ってもらえなかった小さな子供みたいにしがみついた。永琳は自分の服にしがみつきながら「えーりん!えーりん!」と叫ぶ姫の要求に耳を塞ぎながら戻ろうとするが、あまりにも五月蠅く、とても無視ができないほどだった。さすがに痺れを切らした永琳はすがりつく輝夜の話を聞くことにした。これ以上姫を騒がせたらもっと面倒になりそうだし・・・。
「姫、そんなにも私に聞いてほしいことがあるのですか?」
「もちろんよ!結構大事なことなのだから聞いておかないと後々困ると思って・・・。それなのに永琳は…」
「はいはい…すいませんでした。」
これだから姫は大変だ。こういうところと引き篭りな所さえなければいいのに…。ため息をつきながら手を頭に当てて、頭痛の仕草をした。
「で、聞いてほしいことはなんですか?」
「うん。実はね、ほら最近例の夜雀が鰻屋をやるようになったでしょ?あの夜雀が営業できるくらいならわたしにだって出来ると思って…」
まさか自分でも店を開くとか言うんじゃないでしょうね。他人に流されやすいんだから。
「お店を開こうと思っているの!ねぇ永琳?店のお金出して!あ、ちなみにお店の種類はお土産屋にしようかなぁ~って考えているんだけd…」
「無理です。」
「えっ!」
輝夜は突然の拒否に目を丸くした。そんなにも驚かなくても。
「なんで無理なの?」
「姫はきっと分かっておられると思いますけど、一応言っておきますね。店を開くにはお金だけじゃダメ なのですよ?まず売り物を作る人手が 要りますし、それにそれを宣伝する人手も要ります。それだけで もかなりの金額が必要なのですよ?それだけじゃありません。店の場所を確 保するために土地も買わな きゃいけないですし、それに…」
「でもあの鰻屋は結構みんなに知れ渡っているよ?」
「アレは屋台だからです!!それにあれほど小さい屋台だったらあの夜雀だけでも十分出来ます!!」
「でも…」
輝夜はさっきとは打って変わって表情が暗くなった。それほどやりたいのか。うちの主も、もうちょっと屋外に出すようにしてもらわないと。無知すぎる…。主の無知さに永琳は心の中で嘆いていた。いつものことだが。
「でもホントに働きたいの!」
「姫。一つ訊いていいですか?」
「何?」
「姫は働きたいと、店を開きたい。どっちですか?はじめは働きたい、次は店を開きたい、そして最後はま
た働きたい…。結局姫は何がしたいのですか?」
しばらく輝夜は黙り込んだ。訊いてはいけないような気がしたけれども、ここは正直に言わないと本人もどう考えるか分からないかもしれないからだ。変に拒んでは今以上に引き篭ったりするし、かといって姫の要求に、「はい。いいですよ」と答えると後々凄く面倒なことが起りそうだ。訊いて良いんだよ。今のは。
黙っていた輝夜はうつむきながらぶつぶつと何か言っていた。だが、それは聞き取りにくかった。言いたくないことなのか、それとも恥ずかしいことなのかよく分からないが。永琳は小さな声でつぶやく輝夜にそっと話しかけた。
「姫、何が言いたいのですか?はっきりいてください。」
「…あのね。永琳。わたし…。」
「はい。」
「わたし…。引き篭るのやめようと思っている。」
「あー、なるほど。だから働きたいと思っているのですね。」
「う…。ま、まぁそんな感じかな?」
「だったら、いい仕事がありますよ?」
「でも、なんだかなぁ…。」
「なんですか?」
「いや、別に紹介してくれるのはいいんだけど、わたし正社員とかそういう仕事じゃなくて…。」
「えっ?じゃ、まさか…」
輝夜は何も言わずにうなずいた。どうやらフリーターとして働きたいらしい。そんな馬鹿な…。
永琳は半分驚きつつも、輝夜の働きたい本当の理由が薄々分かってきたようだった。
「永琳!時給高めなアルバイトとかある?」
「知りませんよ。」
「う~ん。じゃあパソコン使って調べるしかないなぁ…。」
「姫。」
「ん?」
「一つ言ってもいいですか?」
「構わないけど?何か?」
「姫。あなたの働きたい理由。なんとなく分かってきました。なんとなくですけど…。」
「あ、あら。そうなの…?」
う、痛いとこ突いてくるね。バレないかしら…。輝夜の視線があちこちに泳いでいた。核心的な部分を永琳は突いたらしい。そんな輝夜の焦りもお構いなしに永琳はすっぱり言った。
「姫ってもしかして、遊ぶために働きたいのでは?」
ズゴーーーーン!!輝夜は一発で心中を見抜かれた。図星か…。永琳は既に呆れかえっていた(まあいつもの輝夜の生活習慣から既に呆れているが)。永琳はまたもやため息をついてしまった。核心を突かれて口を開けたまま硬直している自分の主を見つめながら、
「もぅ。姫。もう少しまともな目的かと思えば、遊ぶためなんて…。姫、今日のこの話、無かったことにしてください。では、私は薬の続きがあ るので。失礼します。」
「…………うん。」
永琳はすたすたと薬を作っている部屋へ戻っていった。輝夜はそのまま空気を抜かれた風船のようにしょぼしょぼとその場に崩れた。力の無い声で輝夜は、
「やっぱり永琳は必要なときに限って役に立たないよ…。」
こうして輝夜の就職計画は、儚くも永琳によって崩れ去った。
残念!輝夜!
おしまい
少しも面白いと思えませんでした。
せめてどこかに盛り上がる箇所を入れるなり何なりして下さい。
いや、でもちゃんと読めるものでしたよ。
次回に期待したいですね。
とりあえず、↑の前書きはやめた方がいいかと思います。
ギャグなのかほのぼのなのか、境が分かりにくいからなのかな?
コンセプトをはっきりしないと評価はされにくいでしょうね。
それと輝夜の引篭もり設定=ギャグ特化の2次設定なのだと思うので、
もう少しハジけたほうが良かったのかもしれないですね。
遊ぶために働く理由あんのかな?とか思いました。
引き篭もっている輝夜の生活がどんなものであるか描写し、どんな理由で遊ぶために働く気持ちになったのとか、その辺をしっかり書いたらいいかも。
とはいえ、↑のような理由はシリアス系の話しの場合です。そういうしっかりした基盤がないと、なんのこっちゃわからないので最低限の説明がいるというか。
もちろん、ギャグでもあるにこしたことはないですが。
今度はギャグの場合です。他の方がもう書かれているのですが、盛り上がる面白い展開があれば、この話しはさらによいものになっていたかと。
ちなみにこれがいいとはいいませんが、仮に紅魔館、白玉楼等にバイトへいった場合の過程の話しを組みこむとか(妄想ですがw)したら盛り上がった?かも。
ただもう一つ方法はあるとおもいます。
創想話新作を読んでいればわかるんですが、秀逸なオチ、もしくは強烈なネタ、萌え燃えなネタ等組みこむとよさそうです。
確かに皆さんの言うようにこの小説は大きな展開が殆どありませんでした。
次回は大きな展開を入れるように努力します。
>>煉獄さんへ
面白い展開を作るように、努力します。
>>☆月柳☆さんへ
新作の小説を何度も読み直して勉強します。確かに今読み直すと何故輝夜は遊ぶために働くのかというもうちょっと詳しい理由を付け足さなかったので分かりにくかったと思います。アドバイスありがとうございます。
なんかこう、ダラダラ~っとした感じがそれっぽくて好きです。
もうちょっと付け足して冗長な話でもいいかも…
地の文の視点が永琳になったりただの地になったりでちょっとややこしいのが残念。
イザヨイネット等で正しい設定を把握してから来て下さい。
輝夜のニートネタやパソコン関係のネタが二次設定だと知ってて書いたのなら、ありがちな話しだったのでもう一捻り欲しかったってのが正直な感想です。
ただ改行のタイミングが少し気になるので、投稿前のイメージ確認で確認すると大分変わると思いますよ。
ちなみに遊びたいから働きたい・・・自分はありだと思います。
バイトだって遊ぶ為にやってる人は多いと思います。
自分もSS初めたのはかなり最近なのでお互い頑張りましょう!
改行のタイミングが変になっているのは、メモ帳からそのままコピーしたからです。私はまだ高校生と中学生の中間なので、まだバイトのことはよく分かりませんwww。
ストーリーはまったりほのぼのしていていい雰囲気なのですが、そのまま途切れるように終わってしまうので、少し物足りない感じ。
次を期待しております。
皆さんの仰るとおり、もう少し長くてもよかったかな、と思います。
しかし読みやすくて、話も筋が通っていたのでよかったと思います。
回数を重ねれば自分の形が生まれてくると思います、そのときにもまた続編のようなものをかかれてはいかがでしょうか。