Caution:
本作は
作品集50「彼女が門番になった理由(わけ)」
作品集51「雪梅」
の続編となっております。
そちらを先にお読みいただくことで、より一層楽しんでいただけることと思います。
また、名前ありのオリキャラが登場しますので、そういったものを嫌われる方はブラウザの「戻る」ボタンをクリックなさってください。
では、本編をどうぞ。
その日、紅魔館正門前は戦場だった。
多数の符と針が飛び、それを迎撃せんと必死の弾幕が張られる。攻め手は只一人、防ぎ手は数多。それでもなお、優勢なのは攻め手だった。
「くたばれっ! 呪われた悪魔の狗どもっ!」
口汚い罵りの言葉を浴びせながら猛攻を仕掛けているのは、紅白の衣装を身に纏った無重力の巫女――博麗霊夢だった。常の彼女を知る者なら誰もが目を疑うだろうし、現に防戦を指揮している紅美鈴は未だに目の前の光景に現実味が持てなかった。
が、何を思ったかいきなり彼女が紅魔館に攻撃を仕掛けてきたのは事実である。それも、弾幕ルールを完全に無視した、「殺す気」の攻撃だ。正直、今の今まで凌げているのは僥倖と思うしかない。
「ああもう! 急に勤労意識に目覚められても迷惑ですよ!」
「百万金でも積んで、紅魔館の壊滅でも依頼した人でもいるんですかねー」
「もしそうだったら笑えませんね」
「パチュリー様もいない時に、ホントに厄介ですよ」
「全くですねぇ……それより、準備は!?」
「はい、先ほど配置についたと合図がありました」
「おーらい。それじゃ、いっちょ行ってきますか!」
門前に作った即席のバリケードから飛び出し、霊夢の前に身を晒す。正直とっとと逃げ出したいが、そうもできない立場が辛いなぁ、と内心ぼやきつつ。
「どうやら、殺される覚悟ができたようね」
「いえいえ、生憎死ぬときは布団の上でひ孫に見守られながらと決めてますので」
「減らず口をっ!」
「どおおっ!」
霊夢の攻撃を必死にかわす、かわす。周囲からの支援と防戦に徹していることもあってなんとか凌いでいるが、そう長くは持たないのは明らかだった。1秒が1分にもなったかのように長く感じられる。
(くうう、早くしてー!)
その心の声が聞こえたわけでもないのだろうが、主戦場から離れたところにある木の上にいたメイド服姿の少女が動いた。
”Stinger”
その呟きと共に、手に持った、「睡眠薬」とのラベルが付いた瓶に入った液体が、どういう理屈か矢となった。
”Sniping”
少女はそれを仮想の弓に番え、敵を狙う。
”Shoot”
声と共に放たれる矢。通常の弾幕ごっこでは想定外の距離から放たれたそれは、狙い過たず一直線に博麗の巫女に飛んでいった。
「ぐっ」
軽い呻きと共に、霊夢の動きが止まる。その右腕には氷の矢とも言うべき奇妙な物が突き刺さっていた。大した深手にも見えなかったが、それでも明らかに霊夢の動きが悪くなる。
「よし、この隙に一気に……」
好機とみたメイドが突進しようとするが、美鈴は逆に危機感を覚えた。
「待ちなさい!」
「咲夜さんも戦闘で手柄を立てて出世したんだ、私だって!」
そう言って、美鈴の制止を振り切り、突っ込むメイド。だが、現実は――博麗の巫女は甘くはなかった。
「ハアァッ!!」
気迫の籠もった声と共に、前方に一斉に符を展開する。
「きゃああっ!!」
「やっぱりっ! 総員退避っ!!」
符から放たれるエネルギーの奔流が荒れ狂った後。そこに博麗の巫女の姿はなかった。
「逃げられましたか……。さっきの子は? 怪我をしてるんなら衛生兵に!」
「だめでーす! 頭が半分ありませーん!」
「……しょうがない、埋めちゃって。そのうち生えてくるでしょ」
「あのー、隊長? 私たち妖精を野菜か何かの同類だと思ってません?」
「違うの?」
「ひどっ!」
「ごめんなさい、冗談です。……それはさておき、これからどうしましょうか」
「どうしましょうねぇ」
「まあ、あの人たちから多分、有益な情報が聞けるでしょう」
「え?」
そういって美鈴が指した先には永遠亭の主、蓬莱山輝夜と屋敷に住まう月兎、鈴仙。……そしてなぜか簀巻きにされて吊るされている最高頭脳、八意永琳の姿があった。
※ ※ ※
「……つまり、この馬鹿騒ぎの原因はそこの馬鹿、いえ天才様の仕業というわけね?」
苦虫を百匹ぐらい纏めて噛み潰したような表情で、レミリアは今聞いた話にそう結論付けた。
「ええ、その通りよ。大変申し訳なく思っているわ」
そう言って頭を下げる輝夜。『「ありがとう」と「ごめんなさい」がちゃんと言えないヤツはろくな大人にならない』と昔誰かが言っていたが、取りあえず彼女はそうではなかったらしい。
その横では憤懣やるかたない表情の鈴仙と、完全にしょげ返っている永琳。流石に興味本位の結果が引き起こした惨劇に、一応の反省はしているらしい。
「えーっと……つまり……」
頭痛を堪える表情で、ひとまず事態を整理しようと咲夜が声を出す。
具体的にはこういうことだった。
永琳は、いつものように新薬、それも怪しげな薬の開発に勤しんでいた。今回作ったのはその名も『性格反転薬』。そして、よりによってその実験対象に霊夢を選んでしまったのである。その結果。
「日ごろ『怠け者で妖怪退治を真面目にしない』な巫女が、『勤勉に妖怪退治に励む』ようになった……と」
結論付けて、咲夜は深いため息をつく。こういう事態に役立つ知恵者のパチュリーが、珍しくアリスのところに出かけていて不在なのも、咲夜にとっては頭の痛い材料だった。
「……………………頭痛がしてきたわ。薬師、解毒薬はあるんでしょうね?」
なかったらコロス、と言わんばかりに睨みつけるレミリアに、怯んだ様子も見せず、永琳は応える。
「当然。私は天才、八意永琳よ?」
「天才様も今回の騒ぎは予見できなかった、と」
「うぐっ」
横合いから繰り出された美鈴の言葉のボディーブローに、うめき声を上げて再びしょげ返ってしまったが。
「美鈴、追い討ちをかけてはいけないわ」
「はぁ。お嬢様でもそういうお優しいことを言うんですね」
「だって、これからこき使うのに凹まれたら面倒じゃないの」
「まあ、そんなことだろうとは思いましたが。それより、どうします? 多分、近いうちにまたやってきますよ。ここ、一番目立つ『妖怪の拠点』なんですから」
「そうねえ……何か策はないの?」
「……まあ、3つほど」
レミリアの問いかけに、指を三本立てて美鈴は語りだす。
「一つ目は、地に潜ってやり過ごす方法ですね。地下壕でも掘って、そこに人員を隠す。上手く芝居をして、屋敷が倒壊、我々は全滅という風に見せれば、一度神社に戻って落ち着くでしょうから、そこで輝夜さんなりが近づいて、解毒剤を飲ませればいいでしょう」
「でもそれ、屋敷全損が前提よね? 却下よ却下」
「二つ目は、紅魔館及び永遠亭の総力で当たって、何とか霊夢さんを力づくで押さえ、解毒剤を打つ、という方法です」
「その場合の被害は?」
「ウチのメイドと永遠亭の兎半分ずつ。あと最悪、私や鈴仙さんが死ぬかも知れません」
「却下よ却下、被害が大きすぎるわ。それぐらいならさっきの策の方がマシよ」
「ふむ。三つ目ですが……永琳さん。その薬ですが、例えば『薬そのものを矢にして、その矢が掠っただけ』とかでも効果があるようにできますか?」
「え? ええ、濃度を高めれば。ただ、薬そのものを矢にするなんて無理だと思うけど」
「なるほど、ありがとうございます。じゃ、それ作ってもらえますか?」
「……何を考えてるの、美鈴?」
いぶかしげに尋ねるレミリアに、美鈴は笑顔で答えた。
「強敵を倒すには狙撃、という基本でいこうかと」
※ ※ ※
”Stinger”
少女が呟く声に応え、手にした木の枝が、鏃まで木でできた矢になる。
”Sniping”
少女はそれを仮想の弓に番え、的を狙う。
”Shoot”
再び声を発し、それと共に矢が放たれる。それは狙い過たず、的の中心に命中した。
”Stinger”
次に、手にした石を、総石造りの矢に変える。
”Sniping -- Shoot”
放たれる矢。物理法則を無視して飛んだそれは、先に的にあった木の矢を真っ二つに裂いて、的に突き立った。
”Stinger”
3度の声。今度は何の変哲もない鉄釘が、やはり矢に変わる。
”Sniping -- Shoot”
軸も羽根も鉄と言う、およそ飛びそうもない矢は、石の矢を砕きながら的に突き立った。
……後ろから拍手が聞こえる。少女が振り向くと、そこには少女の上司であるメイド長、十六夜咲夜の姿があった。
「相変わらず見事ね、ジーナ」
「これはメイド長……お見苦しいところを」
「謙遜しなくていいわ。大したものじゃない」
そう言って、咲夜はナイフを的に投げる。中心からやや逸れ、的に突き立った鉄矢の横にナイフは突き刺さった。
「この距離で中心を百発百中。私でも無理ね」
「そういう能力と、それをメイド長の年の数より長い時間、練習し続けてきた結果です。誇るほどのものではありません。それに……」
「それに?」
「今の世では無用の能力です」
そう言って静かに笑う少女、ジーナ・ハスハに、咲夜は首を振って見せた。
「さっき、霊夢を止めたのは貴女でしょう? あれは貴女以外にはできなかった。違う?」
「私は自分の能力の範囲で最善を尽くしたに過ぎません。美鈴隊長たちが頑張ってくれたから、私がなんとかする隙ができただけです。それに……私がやらなくても、メイド長かお嬢様がなんとかされたでしょう」
上の者の手を煩わすのは心苦しいことですが、と苦笑しながら語るジーナに対し、咲夜はもう一度首を振る。
「謙遜するものじゃないわ。……それに、もう一度貴女のその能力、使ってもらうわよ」
咲夜のその言葉に、ジーナは怪訝な表情を見せる。
「もちろん否やはありません……が、どういうことでしょう?」
「詳しい説明は、お嬢様の前で受けてちょうだい。行きましょう」
※ ※ ※
ジーナ・ハスハは紅魔館では古参の部類に入るメイドである。
彼女の持つ能力とは『物を矢に変え、撃つ程度の能力』。弓なしでも遠くを撃つ事ができるその能力は、射程では中々のものがある……が、連射が効かず、威力は矢の材質に因るものの、結局はそれを普通の弓で撃ち出したレベルと大差がない。
とどのつまり。弾幕を張ることができず、かといって『スピア・ザ・グングニル』のような圧倒的な一撃必殺の力があるわけでもない程度の能力しか持たない彼女は、こと弾幕ごっこにおいてはそこらの『妖怪その1』と同レベルなのだった。
「しかし、どんな能力も使いようでして」
「皆まで言わなくていいわ。要するに、薬師が作った解毒剤を矢にして、霊夢に撃ち込む、そういうことでしょう」
「ご賢察、痛み入ります」
恭しく頭を下げる美鈴に、レミリアはつまらなさそうに鼻を鳴らす。
「そうは言うけど、さっきので霊夢も警戒してるんじゃない? 上手く行くのかしら」
「前線要員が3枚増えましたし、なんとかなるでしょう」
そう言って美鈴は黙々と作業を続ける永琳、逃げようとしていた鈴仙、その襟首を押さえている輝夜を指した。
「イナバ、何逃げようとしてるのよ」
「姫様、勘弁してください~!」
「あー、やっぱり嫌がる人に強制するのは良くないかと。本人に選ばせてあげましょうよ」
「美鈴さんっ! そ、そうですよねっ」
一縷の望みにすがるかのように、鈴仙は美鈴の言葉に飛びつく。
「前線に行って幻想郷の英雄として戦死するか、後退して敗北主義者として処刑されるか、好きなほうを選んでください」
が、美鈴はそれを容赦なく断ち切った。無言で崩れ落ちる鈴仙。
「ううっ……薬作ったのはししょーなのにー。なんで私までこんな目にー」
「諦めなさい、イナバ。永遠亭の一員が引き起こした問題ならば、それは永遠亭の問題よ」
なお毅然とした態度を崩さない輝夜に、流石に鈴仙もこれ以上泣き言は言えなかった。
「さて、ジーナ」
目の前の狂乱を他所に、黙って立っていたジーナに、ようやくレミリアが水を向ける。
「話は聞いての通り。美鈴が薦め、咲夜も、私も最適だと判断した。後は貴女の意志よ。……博麗の巫女の狙撃、できるかしら?」
「できます」
「……そ、即答が来るとは思わなかったわね」
「お嬢様、私はできないことを出来ると大言壮語したくはありません。……が、出来ることを出来ないと、卑屈になりたくもありません。自惚れるつもりはありませんが、それでもお話の件でしたら、この紅魔館では私が最適だと自負いたします」
「そう。ならもう私が言う事はない。この作戦、紅魔館だけではない。幻想郷の未来がかかっている――そう肝に銘じ、戦いなさい!」
『はいっ!』
レミリアの言葉に、咲夜、美鈴、ジーナの答えが唱和した。
※ ※ ※
「んー、急に静かになったぜ。何だったんだろうな?」
「あちらは紅魔館のほうだな。気になるなら見てくれば良かったのではないか?」
閑静な森の中の一軒のログハウス。そのテラスに出されたテーブルについて、二人の少女がのどかなティータイムを楽しんでいた。二人揃って黒主体と言うともすれば陰鬱な雰囲気になりそうな服装なのだが、霧雨魔理沙とリリーブラック、二人が纏う空気はむしろ明るいものだった。
「しかしまあ、わざわざ先日の礼とは律儀なことだ。……噂では、君はもっと傍若無人だと聞いていたのだがね」
「ん……まあ色々あって、な。魔理沙さんも少しは周りを見ようと思うようになったのさ」
「ふ、む。そうか」
「……ん、聞かないのか?」
「君が話したいなら聞くが、そうでないなら聞くつもりはないな」
「意外だぜ」
「意外かな? 俺は元々こういう性格だがね」
「ああ、いやいや、そうじゃなくてな。ほら、私の周りは『見たがり、聞きたがり、知りたがり』ばっかりだろ?」
「君の周りと言うか、幻想郷全体の風潮と言う気もするがね。そもそも、君もその筆頭だろう?」
「……こいつは、一本取られたぜ」
帽子で顔を隠し、天を仰ぐ魔理沙の姿に笑みを溢しながら、慣れた手つきでリリーブラックはカップに紅茶を注いでいく。
それから暫く、少女同士らしく話に花を咲かせていたが、やがてまた、紅魔館の方から派手な音が響きだした。
「……妙だな。こうも立て続けとは」
「流石に気になるな。ちょっと見て来るぜ」
「む、そうか。代わりが入ったばかりだったのだが、残念だな」
「ああ、いやいや。そのまま残しておいてくれ。帰ってきたら貰うぜ」
「冷めるぞ?」
呆れたように言うリリーブラックに、箒にまたがりながら魔理沙は指を振る。
「私を誰だと思ってる? ……幻想郷最速、霧雨魔理沙だぜ!」
そう言って勢い良く飛び出していった魔理沙に、リリーブラックはひたすら苦笑いを浮かべていた。
※ ※ ※
紅魔館門前では、時ならぬ激戦が繰り広げられていた。寄せ手は1人、防ぎ手は沢山。それでも、紅白の嵐は止まらない。
「ちょちょ、ちょっと! 霊夢ってこんなに強かったかしら!?」
「そりゃ強いですよ! 博麗の巫女ったら幻想郷のジョーカーなんですから!」
「え、それ紫さんじゃないんですか?」
「口動かしてる暇があったら戦いなさいー!」
侃々諤々言いつつも、必死に霊夢の攻撃を受け止める4人。……ちなみに輝夜は真っ先に被弾して落ちて行った。死んでも生き返るからいっかぁ、とほっとかれてる辺り、哀れである。
「美鈴、貴女の『気を使う程度の能力』で、気配を消して不意打ちとか出来ないの?」
「無理無理、先代に悪戯でそれやったら、しっかり気づかれましたもん。博麗の巫女には通用しませんよ」
「むしろ先代と美鈴さんの関係が気になるんですけど……」
「二人とも、無駄話してないで手伝って!」
メイドや兎たちも門の内外に掘った塹壕からちまちま攻撃を仕掛けるが、若干行動が制限できる程度である。攻勢に出れば、霊夢は先にメイドたちの排除にかかるかも知れない。そうなれば一瞬で殲滅されるだろう。主敵を空中の5人(今は4人)に絞らせるための、已むを得ない戦術だった。
「うううっ、まだなのー!」
既にボロボロになり、泣きが入った鈴仙の声に応えるかのように、咲夜がカウントダウンを開始する。
「後5秒。……3、2、1……撃てぇ!」
咲夜が勢い良く振り下ろした腕と共に、メイドと兎たちの弾幕が密度を上げた。永琳、鈴仙、咲夜、美鈴も同時にスペルカードを展開する。これが普通の相手なら、或いは普通の弾幕戦なら、撃墜間違いなしの攻撃。
だがこれは既に弾幕戦ではなく、そして相手は博麗霊夢だった。
「や、やった?」
「いえ……無理ね」
前面に展開した結界は、恐るべきことにこの攻撃を全て受け止めていた。とは言え、流石に霊夢も楽々と受け止めたわけではない。結界に全力を注ぎ、その動きは止まっていた。
「……良くやったと褒めてあげる。でも、これまでよ!」
一気呵成の攻勢を防ぎきり、反撃に転じようとする博麗の巫女の目には、彼女たちは呆然としているように映ったのだろうか。
「……そうね、『これまで』よ」
その咲夜の言葉を訝しく思う暇は、霊夢には与えられなかった。
※ ※ ※
静かに、神経を研ぎ澄ませて待つ。
待つ、待つ、待つ。ひたすらに待つ。
これは狩りだ。それも得物は最上級。
ならばこそ、逸ってはいけない。冷静に、そして気を途切らせることなく。『一撃必殺』のその時を待たねばならない。
遠く、紅魔館の門前で、メイド長が腕を振り上げたのが見える。もうすぐだ。
''Stinger''
呟き、薬を矢に変える。好機を作るためにボロボロになっている上司や同僚たちの奮闘に報いるためにも、失敗は許されない。
メイド長の腕が振り下ろされると共に、総攻撃がなされる。その濃密さは、最早弾幕というより光の壁だった。……だが、これでも落とせない。
''Sniping''
呟き、矢を想像上の弓に番える。今撃っても駄目だ。味方の弾幕に打ち落とされるだろうし……仮に抜けても、あの結界に阻まれる。だから、隙を狙わなければいけない。巫女が意識を防御から攻撃に切り替える、その隙を。
やがて、弾幕が途切れ、巫女は愚かな敵を殲滅するために前進しようとする、その瞬間。
''Shoot''
『矢』は放たれた。
※ ※ ※
「……なにっ!?」
普通の人間なら、何も気づくことなく射抜かれただろうそれに、霊夢は反応し……あろうことか、回避しようとした。だが、
「駄目よ。貴女の時は私のもの」
「……っ!!」
咲夜の能力が、ほんの僅か、霊夢の回避行動を遅らせる。それでもかする程度にしかならなかったのは、驚嘆すべきだろう。
「今のが切り札? お粗末ね」
「ええ、今のが切り札。そして、私たちの勝ちよ」
腕を組み、昂然と胸を張って咲夜は宣言する。そして、それはその通りになった。
「……!?」
かくん、と糸が切れた人形のように、霊夢が落ちる。天才薬師の薬は、確かにその効能を発揮したのだ。……が。
「ふっ、これで幻想郷の平和……は……」
勝ち名乗りを上げようとして、咲夜は気づいた。
霊夢が意識を失った、ということは……ほっとくと湖に落ちる、ということに。
「うわーっ! 起きて霊夢ー!」
「駄目、遠すぎる!」
慌てて助けようとするも、距離がありすぎた。哀れ、霊夢は湖に真っ逆さまか、と思われたその時。
「届けぇーっ!!!」
彼方から飛来するは黒い疾風。水面に水飛沫を撒き散らしながら飛び込んできたのは、様子を見に来た霧雨魔理沙だった。
「こん……のおぉっ!」
ぎりぎりで霊夢をかっさらい、魔理沙はなんとか対岸、紅魔館の門前にたどり着いた。スピードを優先したため、着地ですっころび、いまいちしまらないものになってしまったが。
「あいててて……ははっ、タッチダウンで6点ゲットだぜ」
「いやー、助かりました」
降りてきた美鈴が、魔理沙に声をかける。
「TFPということで、紅茶でもどうです? ちょっと中に通せるかは分かりませんが」
「いやいや、生憎とデート中に抜け出してきたんでね」
そう言いながら、霊夢をそっと地面に横たえる。一体何があったか気になるところだが、周りのほっとしたような反応から見るに、どうやら『無事に終わった』ということだろう。ならば、話を聞くのは次の機会でもいい。それに、辺り一体酷いことになってて、その後片付けに終われるだろう紅魔館で悠長にお茶をご馳走になるのも気がひけた。
「騒ぎも収まったみたいだし、霧雨魔理沙はクールに去るぜ」
「そうですか、それは残念です」
「話は次に来た時に聞かせてもらうぜ。それじゃな、メイド長、門番」
すちゃっ、と軽く一礼して、魔理沙は慌しく飛び出していった。
「……本当に、嵐みたいな子ね」
「まあまあ、助かったんだからいいじゃないですか。それより、永琳さん」
「ええ、後は永遠亭で引き受けます。……それと、この度は本当にご迷惑を」
「……済んだことを言っても仕方なし、次から気をつけてくれればいいわ」
憮然として言う咲夜をまあまあと宥めながら……だが、次に美鈴が放った一言は、ある意味とどめだった。
「今回の被害額の試算がでましたら、そちらに回しますので」
「…………エエ、ワカッタワ」
周囲の惨状を見渡して、深く永琳はため息をつくのだった。
※ ※ ※
「…………ん、あれ?」
霊夢が目を覚ますと、見慣れない天井だった。
「師匠ー! 霊夢さんが目を覚ましましたー!」
霊夢が起きたのに気づき、傍についていた鈴仙が永琳を呼ぶ。
(えー……てことは永遠亭? なんで私ここに?)
頭の中がはてなマークで埋まる霊夢だったが。
「ま、いっか」
持ち前の気楽さで、あっさり思考を放棄した。理由なら、すぐに来る薬師が教えてくれるはずだから。
紅魔館との打ち合わせの末、霊夢には『神社で倒れているところを鈴仙が見つけて、永遠亭に運んできた』とだけ伝えられた。記憶のはっきりしない霊夢はそんなものかと納得し、鈴仙と永琳に素直にお礼を告げた。……事実を知る二人は、大層据わりが悪かったが。
手土産(事実上のお詫びの品)を持たされた霊夢が神社に戻った後、紅魔館から届けられた請求書を見て輝夜が卒倒しかけたが……まあそれは余談である。
※ ※ ※
閑静な森の中の一軒のログハウス。そのテラスに出されたテーブルにつく妖精の前に、箒にまたがった魔法使いが降り立った。
「よう、戻ったぜ」
「本当に早かったな。流石最速を自称するだけはあるか」
「自称じゃない、事実だぜ」
「ふふっ、そういうことにしておこうか」
「事実なんだがなぁ……ん、良かった。冷めてないぜ」
立ったまま紅茶をすする魔理沙に、行儀が悪いぞと嗜めながら、リリーブラックは問いかける。
「それで、結局なんだったか分かったか?」
「あー……行った時には終わってたぜ。話も聞かずに戻ってきたから、よくわからん」
「おいおい、何しに行ってきたんだ」
「もちろん、様子を見にだぜ。まあ何か面白いことがあったのは確かだから、今度紅魔館に行ったときに詳しく聞くさ」
「俺はてっきり、そのまま居つくと思ったんだがな」
「デートを放り出したまま帰ってこないほど、私は薄情じゃないつもりだぜ?」
「ほう」
魔理沙の言葉に、リリーブラックは面白そうに目を細める。
「そうか、デートだったのか」
「そうだぜ。気づいてなかったのか? つれないな」
「いやいや、全く気づかなかったよ。何時ぞや、随分とうぶな反応をしてくれた君から、まさかそんな言葉が聴けるとは」
そう言ってリリーブラックは席を立ち、魔理沙に近寄る。
「負けっぱなしは性に合わないからな」
そう言って魔理沙は、リリーブラックを抱き寄せる。
「なるほど。如何にも君らしい理由だ。俺としてはもう少し色っぽい理由の方がよかったが」
見上げる形で、リリーブラックは魔理沙に顔を寄せる。
「色っぽい理由の方が後から付いてくるさ。そんなもんだろ?」
魔理沙もリリーブラックに顔を寄せ……唇が触れるか触れないか、というところで、二人の動きが止まる。
そのまま暫し見つめあうと、やがて二人は笑みを浮かべ、どちらからともなく身体を離した。
「……こんなとこでどうだい、ブラック?」
「悪くはなかったな、魔法使い。後は照れで顔が赤くなってなければもっといい」
「……うるさい」
からかうように笑うリリーブラックに、魔理沙はふてくされた表情を浮かべた。
それがまた可笑しくて、リリーブラックは忍び笑いを漏らす。
「まあ、そう拗ねるな。君の頑張りに免じて、取って置きの蜂蜜酒を開けるとしよう」
「蜂蜜酒? へえ、初めてだぜ」
全く、ころころと表情の変わる。
一転、うきうきした様子になっている魔理沙を微笑ましく眺め、リリーブラックは蜂蜜酒を取るために家の中に入っていった。
春爛漫、なべて世はこともなし。
※ ※ ※
深夜の紅魔館。
先ほどまでの後片付けの喧騒もなくなり、静寂が訪れた館の庭に、一人の少女がいた。
”Stinger”
少女が呟く声に応え、手にした木の枝が、鏃まで木でできた矢になる。
”Sniping”
少女はそれを仮想の弓に番え、的を狙う。
”Shoot”
再び声を発し、それと共に矢が放たれる。それは狙い過たず、的の中心に命中した。
……後ろから拍手が聞こえる。少女が振り向くと、そこには少女の上司であるメイド長、十六夜咲夜の姿があった。
「夜中まで精が出るわね」
「……メイド長」
「功労者を労うようにと、お嬢様からのお達しよ。これからお茶会をやるわ、貴女も出席なさい」
だが、咲夜のその言葉に、ジーナは首を振った。
「功労者と言うならば、それはメイド長と隊長です。私は大言をしながら、危うく矢を外すところでした」
「あれは霊夢の勘が規格外なのよ。貴女のせいじゃないわ」
「ですが……」
「ねえ、ジーナ『さん』」
なおも言葉を繋ごうとするジーナを遮って、咲夜は砕けた口調で話しかける。
「私がまだメイド長じゃなかった頃、覚えてます?」
「……え、ええ。一生懸命、何事も完璧にしようと頑張っておられたのを、良く覚えていますが」
「そうね。完璧じゃなきゃ意味がない、自分ひとりでなんでも出来なきゃ意味がない――そう思ってた。でも、そんな私に姉さんが言ったんです。なんでも自分一人でしようとするな、もっと他人を頼れ、って」
「……それは」
「ジーナさん、私の手を借りる事は、貴女のプライドが許しませんか?」
「いえ、そんなことは!」
「じゃ、これ以上あれこれ言うのはナシです。皆で頑張って、上手く行った、それでいいじゃないですか」
「……そう、ですね。……すみません、メイド長」
ようやく、微笑を浮かべたジーナに、咲夜も微笑み返す。
「さて、それじゃ行きましょう、ジーナ。お嬢様、今頃待ちくたびれているわ」
「……そうですね、隊長が八つ当たりされてたら大変ですから、早くいかないと」
微笑み合いながら、屋敷の中へと向かう二人を、十六夜月が照らしていた。
本作は
作品集50「彼女が門番になった理由(わけ)」
作品集51「雪梅」
の続編となっております。
そちらを先にお読みいただくことで、より一層楽しんでいただけることと思います。
また、名前ありのオリキャラが登場しますので、そういったものを嫌われる方はブラウザの「戻る」ボタンをクリックなさってください。
では、本編をどうぞ。
その日、紅魔館正門前は戦場だった。
多数の符と針が飛び、それを迎撃せんと必死の弾幕が張られる。攻め手は只一人、防ぎ手は数多。それでもなお、優勢なのは攻め手だった。
「くたばれっ! 呪われた悪魔の狗どもっ!」
口汚い罵りの言葉を浴びせながら猛攻を仕掛けているのは、紅白の衣装を身に纏った無重力の巫女――博麗霊夢だった。常の彼女を知る者なら誰もが目を疑うだろうし、現に防戦を指揮している紅美鈴は未だに目の前の光景に現実味が持てなかった。
が、何を思ったかいきなり彼女が紅魔館に攻撃を仕掛けてきたのは事実である。それも、弾幕ルールを完全に無視した、「殺す気」の攻撃だ。正直、今の今まで凌げているのは僥倖と思うしかない。
「ああもう! 急に勤労意識に目覚められても迷惑ですよ!」
「百万金でも積んで、紅魔館の壊滅でも依頼した人でもいるんですかねー」
「もしそうだったら笑えませんね」
「パチュリー様もいない時に、ホントに厄介ですよ」
「全くですねぇ……それより、準備は!?」
「はい、先ほど配置についたと合図がありました」
「おーらい。それじゃ、いっちょ行ってきますか!」
門前に作った即席のバリケードから飛び出し、霊夢の前に身を晒す。正直とっとと逃げ出したいが、そうもできない立場が辛いなぁ、と内心ぼやきつつ。
「どうやら、殺される覚悟ができたようね」
「いえいえ、生憎死ぬときは布団の上でひ孫に見守られながらと決めてますので」
「減らず口をっ!」
「どおおっ!」
霊夢の攻撃を必死にかわす、かわす。周囲からの支援と防戦に徹していることもあってなんとか凌いでいるが、そう長くは持たないのは明らかだった。1秒が1分にもなったかのように長く感じられる。
(くうう、早くしてー!)
その心の声が聞こえたわけでもないのだろうが、主戦場から離れたところにある木の上にいたメイド服姿の少女が動いた。
”Stinger”
その呟きと共に、手に持った、「睡眠薬」とのラベルが付いた瓶に入った液体が、どういう理屈か矢となった。
”Sniping”
少女はそれを仮想の弓に番え、敵を狙う。
”Shoot”
声と共に放たれる矢。通常の弾幕ごっこでは想定外の距離から放たれたそれは、狙い過たず一直線に博麗の巫女に飛んでいった。
「ぐっ」
軽い呻きと共に、霊夢の動きが止まる。その右腕には氷の矢とも言うべき奇妙な物が突き刺さっていた。大した深手にも見えなかったが、それでも明らかに霊夢の動きが悪くなる。
「よし、この隙に一気に……」
好機とみたメイドが突進しようとするが、美鈴は逆に危機感を覚えた。
「待ちなさい!」
「咲夜さんも戦闘で手柄を立てて出世したんだ、私だって!」
そう言って、美鈴の制止を振り切り、突っ込むメイド。だが、現実は――博麗の巫女は甘くはなかった。
「ハアァッ!!」
気迫の籠もった声と共に、前方に一斉に符を展開する。
「きゃああっ!!」
「やっぱりっ! 総員退避っ!!」
符から放たれるエネルギーの奔流が荒れ狂った後。そこに博麗の巫女の姿はなかった。
「逃げられましたか……。さっきの子は? 怪我をしてるんなら衛生兵に!」
「だめでーす! 頭が半分ありませーん!」
「……しょうがない、埋めちゃって。そのうち生えてくるでしょ」
「あのー、隊長? 私たち妖精を野菜か何かの同類だと思ってません?」
「違うの?」
「ひどっ!」
「ごめんなさい、冗談です。……それはさておき、これからどうしましょうか」
「どうしましょうねぇ」
「まあ、あの人たちから多分、有益な情報が聞けるでしょう」
「え?」
そういって美鈴が指した先には永遠亭の主、蓬莱山輝夜と屋敷に住まう月兎、鈴仙。……そしてなぜか簀巻きにされて吊るされている最高頭脳、八意永琳の姿があった。
※ ※ ※
「……つまり、この馬鹿騒ぎの原因はそこの馬鹿、いえ天才様の仕業というわけね?」
苦虫を百匹ぐらい纏めて噛み潰したような表情で、レミリアは今聞いた話にそう結論付けた。
「ええ、その通りよ。大変申し訳なく思っているわ」
そう言って頭を下げる輝夜。『「ありがとう」と「ごめんなさい」がちゃんと言えないヤツはろくな大人にならない』と昔誰かが言っていたが、取りあえず彼女はそうではなかったらしい。
その横では憤懣やるかたない表情の鈴仙と、完全にしょげ返っている永琳。流石に興味本位の結果が引き起こした惨劇に、一応の反省はしているらしい。
「えーっと……つまり……」
頭痛を堪える表情で、ひとまず事態を整理しようと咲夜が声を出す。
具体的にはこういうことだった。
永琳は、いつものように新薬、それも怪しげな薬の開発に勤しんでいた。今回作ったのはその名も『性格反転薬』。そして、よりによってその実験対象に霊夢を選んでしまったのである。その結果。
「日ごろ『怠け者で妖怪退治を真面目にしない』な巫女が、『勤勉に妖怪退治に励む』ようになった……と」
結論付けて、咲夜は深いため息をつく。こういう事態に役立つ知恵者のパチュリーが、珍しくアリスのところに出かけていて不在なのも、咲夜にとっては頭の痛い材料だった。
「……………………頭痛がしてきたわ。薬師、解毒薬はあるんでしょうね?」
なかったらコロス、と言わんばかりに睨みつけるレミリアに、怯んだ様子も見せず、永琳は応える。
「当然。私は天才、八意永琳よ?」
「天才様も今回の騒ぎは予見できなかった、と」
「うぐっ」
横合いから繰り出された美鈴の言葉のボディーブローに、うめき声を上げて再びしょげ返ってしまったが。
「美鈴、追い討ちをかけてはいけないわ」
「はぁ。お嬢様でもそういうお優しいことを言うんですね」
「だって、これからこき使うのに凹まれたら面倒じゃないの」
「まあ、そんなことだろうとは思いましたが。それより、どうします? 多分、近いうちにまたやってきますよ。ここ、一番目立つ『妖怪の拠点』なんですから」
「そうねえ……何か策はないの?」
「……まあ、3つほど」
レミリアの問いかけに、指を三本立てて美鈴は語りだす。
「一つ目は、地に潜ってやり過ごす方法ですね。地下壕でも掘って、そこに人員を隠す。上手く芝居をして、屋敷が倒壊、我々は全滅という風に見せれば、一度神社に戻って落ち着くでしょうから、そこで輝夜さんなりが近づいて、解毒剤を飲ませればいいでしょう」
「でもそれ、屋敷全損が前提よね? 却下よ却下」
「二つ目は、紅魔館及び永遠亭の総力で当たって、何とか霊夢さんを力づくで押さえ、解毒剤を打つ、という方法です」
「その場合の被害は?」
「ウチのメイドと永遠亭の兎半分ずつ。あと最悪、私や鈴仙さんが死ぬかも知れません」
「却下よ却下、被害が大きすぎるわ。それぐらいならさっきの策の方がマシよ」
「ふむ。三つ目ですが……永琳さん。その薬ですが、例えば『薬そのものを矢にして、その矢が掠っただけ』とかでも効果があるようにできますか?」
「え? ええ、濃度を高めれば。ただ、薬そのものを矢にするなんて無理だと思うけど」
「なるほど、ありがとうございます。じゃ、それ作ってもらえますか?」
「……何を考えてるの、美鈴?」
いぶかしげに尋ねるレミリアに、美鈴は笑顔で答えた。
「強敵を倒すには狙撃、という基本でいこうかと」
※ ※ ※
”Stinger”
少女が呟く声に応え、手にした木の枝が、鏃まで木でできた矢になる。
”Sniping”
少女はそれを仮想の弓に番え、的を狙う。
”Shoot”
再び声を発し、それと共に矢が放たれる。それは狙い過たず、的の中心に命中した。
”Stinger”
次に、手にした石を、総石造りの矢に変える。
”Sniping -- Shoot”
放たれる矢。物理法則を無視して飛んだそれは、先に的にあった木の矢を真っ二つに裂いて、的に突き立った。
”Stinger”
3度の声。今度は何の変哲もない鉄釘が、やはり矢に変わる。
”Sniping -- Shoot”
軸も羽根も鉄と言う、およそ飛びそうもない矢は、石の矢を砕きながら的に突き立った。
……後ろから拍手が聞こえる。少女が振り向くと、そこには少女の上司であるメイド長、十六夜咲夜の姿があった。
「相変わらず見事ね、ジーナ」
「これはメイド長……お見苦しいところを」
「謙遜しなくていいわ。大したものじゃない」
そう言って、咲夜はナイフを的に投げる。中心からやや逸れ、的に突き立った鉄矢の横にナイフは突き刺さった。
「この距離で中心を百発百中。私でも無理ね」
「そういう能力と、それをメイド長の年の数より長い時間、練習し続けてきた結果です。誇るほどのものではありません。それに……」
「それに?」
「今の世では無用の能力です」
そう言って静かに笑う少女、ジーナ・ハスハに、咲夜は首を振って見せた。
「さっき、霊夢を止めたのは貴女でしょう? あれは貴女以外にはできなかった。違う?」
「私は自分の能力の範囲で最善を尽くしたに過ぎません。美鈴隊長たちが頑張ってくれたから、私がなんとかする隙ができただけです。それに……私がやらなくても、メイド長かお嬢様がなんとかされたでしょう」
上の者の手を煩わすのは心苦しいことですが、と苦笑しながら語るジーナに対し、咲夜はもう一度首を振る。
「謙遜するものじゃないわ。……それに、もう一度貴女のその能力、使ってもらうわよ」
咲夜のその言葉に、ジーナは怪訝な表情を見せる。
「もちろん否やはありません……が、どういうことでしょう?」
「詳しい説明は、お嬢様の前で受けてちょうだい。行きましょう」
※ ※ ※
ジーナ・ハスハは紅魔館では古参の部類に入るメイドである。
彼女の持つ能力とは『物を矢に変え、撃つ程度の能力』。弓なしでも遠くを撃つ事ができるその能力は、射程では中々のものがある……が、連射が効かず、威力は矢の材質に因るものの、結局はそれを普通の弓で撃ち出したレベルと大差がない。
とどのつまり。弾幕を張ることができず、かといって『スピア・ザ・グングニル』のような圧倒的な一撃必殺の力があるわけでもない程度の能力しか持たない彼女は、こと弾幕ごっこにおいてはそこらの『妖怪その1』と同レベルなのだった。
「しかし、どんな能力も使いようでして」
「皆まで言わなくていいわ。要するに、薬師が作った解毒剤を矢にして、霊夢に撃ち込む、そういうことでしょう」
「ご賢察、痛み入ります」
恭しく頭を下げる美鈴に、レミリアはつまらなさそうに鼻を鳴らす。
「そうは言うけど、さっきので霊夢も警戒してるんじゃない? 上手く行くのかしら」
「前線要員が3枚増えましたし、なんとかなるでしょう」
そう言って美鈴は黙々と作業を続ける永琳、逃げようとしていた鈴仙、その襟首を押さえている輝夜を指した。
「イナバ、何逃げようとしてるのよ」
「姫様、勘弁してください~!」
「あー、やっぱり嫌がる人に強制するのは良くないかと。本人に選ばせてあげましょうよ」
「美鈴さんっ! そ、そうですよねっ」
一縷の望みにすがるかのように、鈴仙は美鈴の言葉に飛びつく。
「前線に行って幻想郷の英雄として戦死するか、後退して敗北主義者として処刑されるか、好きなほうを選んでください」
が、美鈴はそれを容赦なく断ち切った。無言で崩れ落ちる鈴仙。
「ううっ……薬作ったのはししょーなのにー。なんで私までこんな目にー」
「諦めなさい、イナバ。永遠亭の一員が引き起こした問題ならば、それは永遠亭の問題よ」
なお毅然とした態度を崩さない輝夜に、流石に鈴仙もこれ以上泣き言は言えなかった。
「さて、ジーナ」
目の前の狂乱を他所に、黙って立っていたジーナに、ようやくレミリアが水を向ける。
「話は聞いての通り。美鈴が薦め、咲夜も、私も最適だと判断した。後は貴女の意志よ。……博麗の巫女の狙撃、できるかしら?」
「できます」
「……そ、即答が来るとは思わなかったわね」
「お嬢様、私はできないことを出来ると大言壮語したくはありません。……が、出来ることを出来ないと、卑屈になりたくもありません。自惚れるつもりはありませんが、それでもお話の件でしたら、この紅魔館では私が最適だと自負いたします」
「そう。ならもう私が言う事はない。この作戦、紅魔館だけではない。幻想郷の未来がかかっている――そう肝に銘じ、戦いなさい!」
『はいっ!』
レミリアの言葉に、咲夜、美鈴、ジーナの答えが唱和した。
※ ※ ※
「んー、急に静かになったぜ。何だったんだろうな?」
「あちらは紅魔館のほうだな。気になるなら見てくれば良かったのではないか?」
閑静な森の中の一軒のログハウス。そのテラスに出されたテーブルについて、二人の少女がのどかなティータイムを楽しんでいた。二人揃って黒主体と言うともすれば陰鬱な雰囲気になりそうな服装なのだが、霧雨魔理沙とリリーブラック、二人が纏う空気はむしろ明るいものだった。
「しかしまあ、わざわざ先日の礼とは律儀なことだ。……噂では、君はもっと傍若無人だと聞いていたのだがね」
「ん……まあ色々あって、な。魔理沙さんも少しは周りを見ようと思うようになったのさ」
「ふ、む。そうか」
「……ん、聞かないのか?」
「君が話したいなら聞くが、そうでないなら聞くつもりはないな」
「意外だぜ」
「意外かな? 俺は元々こういう性格だがね」
「ああ、いやいや、そうじゃなくてな。ほら、私の周りは『見たがり、聞きたがり、知りたがり』ばっかりだろ?」
「君の周りと言うか、幻想郷全体の風潮と言う気もするがね。そもそも、君もその筆頭だろう?」
「……こいつは、一本取られたぜ」
帽子で顔を隠し、天を仰ぐ魔理沙の姿に笑みを溢しながら、慣れた手つきでリリーブラックはカップに紅茶を注いでいく。
それから暫く、少女同士らしく話に花を咲かせていたが、やがてまた、紅魔館の方から派手な音が響きだした。
「……妙だな。こうも立て続けとは」
「流石に気になるな。ちょっと見て来るぜ」
「む、そうか。代わりが入ったばかりだったのだが、残念だな」
「ああ、いやいや。そのまま残しておいてくれ。帰ってきたら貰うぜ」
「冷めるぞ?」
呆れたように言うリリーブラックに、箒にまたがりながら魔理沙は指を振る。
「私を誰だと思ってる? ……幻想郷最速、霧雨魔理沙だぜ!」
そう言って勢い良く飛び出していった魔理沙に、リリーブラックはひたすら苦笑いを浮かべていた。
※ ※ ※
紅魔館門前では、時ならぬ激戦が繰り広げられていた。寄せ手は1人、防ぎ手は沢山。それでも、紅白の嵐は止まらない。
「ちょちょ、ちょっと! 霊夢ってこんなに強かったかしら!?」
「そりゃ強いですよ! 博麗の巫女ったら幻想郷のジョーカーなんですから!」
「え、それ紫さんじゃないんですか?」
「口動かしてる暇があったら戦いなさいー!」
侃々諤々言いつつも、必死に霊夢の攻撃を受け止める4人。……ちなみに輝夜は真っ先に被弾して落ちて行った。死んでも生き返るからいっかぁ、とほっとかれてる辺り、哀れである。
「美鈴、貴女の『気を使う程度の能力』で、気配を消して不意打ちとか出来ないの?」
「無理無理、先代に悪戯でそれやったら、しっかり気づかれましたもん。博麗の巫女には通用しませんよ」
「むしろ先代と美鈴さんの関係が気になるんですけど……」
「二人とも、無駄話してないで手伝って!」
メイドや兎たちも門の内外に掘った塹壕からちまちま攻撃を仕掛けるが、若干行動が制限できる程度である。攻勢に出れば、霊夢は先にメイドたちの排除にかかるかも知れない。そうなれば一瞬で殲滅されるだろう。主敵を空中の5人(今は4人)に絞らせるための、已むを得ない戦術だった。
「うううっ、まだなのー!」
既にボロボロになり、泣きが入った鈴仙の声に応えるかのように、咲夜がカウントダウンを開始する。
「後5秒。……3、2、1……撃てぇ!」
咲夜が勢い良く振り下ろした腕と共に、メイドと兎たちの弾幕が密度を上げた。永琳、鈴仙、咲夜、美鈴も同時にスペルカードを展開する。これが普通の相手なら、或いは普通の弾幕戦なら、撃墜間違いなしの攻撃。
だがこれは既に弾幕戦ではなく、そして相手は博麗霊夢だった。
「や、やった?」
「いえ……無理ね」
前面に展開した結界は、恐るべきことにこの攻撃を全て受け止めていた。とは言え、流石に霊夢も楽々と受け止めたわけではない。結界に全力を注ぎ、その動きは止まっていた。
「……良くやったと褒めてあげる。でも、これまでよ!」
一気呵成の攻勢を防ぎきり、反撃に転じようとする博麗の巫女の目には、彼女たちは呆然としているように映ったのだろうか。
「……そうね、『これまで』よ」
その咲夜の言葉を訝しく思う暇は、霊夢には与えられなかった。
※ ※ ※
静かに、神経を研ぎ澄ませて待つ。
待つ、待つ、待つ。ひたすらに待つ。
これは狩りだ。それも得物は最上級。
ならばこそ、逸ってはいけない。冷静に、そして気を途切らせることなく。『一撃必殺』のその時を待たねばならない。
遠く、紅魔館の門前で、メイド長が腕を振り上げたのが見える。もうすぐだ。
''Stinger''
呟き、薬を矢に変える。好機を作るためにボロボロになっている上司や同僚たちの奮闘に報いるためにも、失敗は許されない。
メイド長の腕が振り下ろされると共に、総攻撃がなされる。その濃密さは、最早弾幕というより光の壁だった。……だが、これでも落とせない。
''Sniping''
呟き、矢を想像上の弓に番える。今撃っても駄目だ。味方の弾幕に打ち落とされるだろうし……仮に抜けても、あの結界に阻まれる。だから、隙を狙わなければいけない。巫女が意識を防御から攻撃に切り替える、その隙を。
やがて、弾幕が途切れ、巫女は愚かな敵を殲滅するために前進しようとする、その瞬間。
''Shoot''
『矢』は放たれた。
※ ※ ※
「……なにっ!?」
普通の人間なら、何も気づくことなく射抜かれただろうそれに、霊夢は反応し……あろうことか、回避しようとした。だが、
「駄目よ。貴女の時は私のもの」
「……っ!!」
咲夜の能力が、ほんの僅か、霊夢の回避行動を遅らせる。それでもかする程度にしかならなかったのは、驚嘆すべきだろう。
「今のが切り札? お粗末ね」
「ええ、今のが切り札。そして、私たちの勝ちよ」
腕を組み、昂然と胸を張って咲夜は宣言する。そして、それはその通りになった。
「……!?」
かくん、と糸が切れた人形のように、霊夢が落ちる。天才薬師の薬は、確かにその効能を発揮したのだ。……が。
「ふっ、これで幻想郷の平和……は……」
勝ち名乗りを上げようとして、咲夜は気づいた。
霊夢が意識を失った、ということは……ほっとくと湖に落ちる、ということに。
「うわーっ! 起きて霊夢ー!」
「駄目、遠すぎる!」
慌てて助けようとするも、距離がありすぎた。哀れ、霊夢は湖に真っ逆さまか、と思われたその時。
「届けぇーっ!!!」
彼方から飛来するは黒い疾風。水面に水飛沫を撒き散らしながら飛び込んできたのは、様子を見に来た霧雨魔理沙だった。
「こん……のおぉっ!」
ぎりぎりで霊夢をかっさらい、魔理沙はなんとか対岸、紅魔館の門前にたどり着いた。スピードを優先したため、着地ですっころび、いまいちしまらないものになってしまったが。
「あいててて……ははっ、タッチダウンで6点ゲットだぜ」
「いやー、助かりました」
降りてきた美鈴が、魔理沙に声をかける。
「TFPということで、紅茶でもどうです? ちょっと中に通せるかは分かりませんが」
「いやいや、生憎とデート中に抜け出してきたんでね」
そう言いながら、霊夢をそっと地面に横たえる。一体何があったか気になるところだが、周りのほっとしたような反応から見るに、どうやら『無事に終わった』ということだろう。ならば、話を聞くのは次の機会でもいい。それに、辺り一体酷いことになってて、その後片付けに終われるだろう紅魔館で悠長にお茶をご馳走になるのも気がひけた。
「騒ぎも収まったみたいだし、霧雨魔理沙はクールに去るぜ」
「そうですか、それは残念です」
「話は次に来た時に聞かせてもらうぜ。それじゃな、メイド長、門番」
すちゃっ、と軽く一礼して、魔理沙は慌しく飛び出していった。
「……本当に、嵐みたいな子ね」
「まあまあ、助かったんだからいいじゃないですか。それより、永琳さん」
「ええ、後は永遠亭で引き受けます。……それと、この度は本当にご迷惑を」
「……済んだことを言っても仕方なし、次から気をつけてくれればいいわ」
憮然として言う咲夜をまあまあと宥めながら……だが、次に美鈴が放った一言は、ある意味とどめだった。
「今回の被害額の試算がでましたら、そちらに回しますので」
「…………エエ、ワカッタワ」
周囲の惨状を見渡して、深く永琳はため息をつくのだった。
※ ※ ※
「…………ん、あれ?」
霊夢が目を覚ますと、見慣れない天井だった。
「師匠ー! 霊夢さんが目を覚ましましたー!」
霊夢が起きたのに気づき、傍についていた鈴仙が永琳を呼ぶ。
(えー……てことは永遠亭? なんで私ここに?)
頭の中がはてなマークで埋まる霊夢だったが。
「ま、いっか」
持ち前の気楽さで、あっさり思考を放棄した。理由なら、すぐに来る薬師が教えてくれるはずだから。
紅魔館との打ち合わせの末、霊夢には『神社で倒れているところを鈴仙が見つけて、永遠亭に運んできた』とだけ伝えられた。記憶のはっきりしない霊夢はそんなものかと納得し、鈴仙と永琳に素直にお礼を告げた。……事実を知る二人は、大層据わりが悪かったが。
手土産(事実上のお詫びの品)を持たされた霊夢が神社に戻った後、紅魔館から届けられた請求書を見て輝夜が卒倒しかけたが……まあそれは余談である。
※ ※ ※
閑静な森の中の一軒のログハウス。そのテラスに出されたテーブルにつく妖精の前に、箒にまたがった魔法使いが降り立った。
「よう、戻ったぜ」
「本当に早かったな。流石最速を自称するだけはあるか」
「自称じゃない、事実だぜ」
「ふふっ、そういうことにしておこうか」
「事実なんだがなぁ……ん、良かった。冷めてないぜ」
立ったまま紅茶をすする魔理沙に、行儀が悪いぞと嗜めながら、リリーブラックは問いかける。
「それで、結局なんだったか分かったか?」
「あー……行った時には終わってたぜ。話も聞かずに戻ってきたから、よくわからん」
「おいおい、何しに行ってきたんだ」
「もちろん、様子を見にだぜ。まあ何か面白いことがあったのは確かだから、今度紅魔館に行ったときに詳しく聞くさ」
「俺はてっきり、そのまま居つくと思ったんだがな」
「デートを放り出したまま帰ってこないほど、私は薄情じゃないつもりだぜ?」
「ほう」
魔理沙の言葉に、リリーブラックは面白そうに目を細める。
「そうか、デートだったのか」
「そうだぜ。気づいてなかったのか? つれないな」
「いやいや、全く気づかなかったよ。何時ぞや、随分とうぶな反応をしてくれた君から、まさかそんな言葉が聴けるとは」
そう言ってリリーブラックは席を立ち、魔理沙に近寄る。
「負けっぱなしは性に合わないからな」
そう言って魔理沙は、リリーブラックを抱き寄せる。
「なるほど。如何にも君らしい理由だ。俺としてはもう少し色っぽい理由の方がよかったが」
見上げる形で、リリーブラックは魔理沙に顔を寄せる。
「色っぽい理由の方が後から付いてくるさ。そんなもんだろ?」
魔理沙もリリーブラックに顔を寄せ……唇が触れるか触れないか、というところで、二人の動きが止まる。
そのまま暫し見つめあうと、やがて二人は笑みを浮かべ、どちらからともなく身体を離した。
「……こんなとこでどうだい、ブラック?」
「悪くはなかったな、魔法使い。後は照れで顔が赤くなってなければもっといい」
「……うるさい」
からかうように笑うリリーブラックに、魔理沙はふてくされた表情を浮かべた。
それがまた可笑しくて、リリーブラックは忍び笑いを漏らす。
「まあ、そう拗ねるな。君の頑張りに免じて、取って置きの蜂蜜酒を開けるとしよう」
「蜂蜜酒? へえ、初めてだぜ」
全く、ころころと表情の変わる。
一転、うきうきした様子になっている魔理沙を微笑ましく眺め、リリーブラックは蜂蜜酒を取るために家の中に入っていった。
春爛漫、なべて世はこともなし。
※ ※ ※
深夜の紅魔館。
先ほどまでの後片付けの喧騒もなくなり、静寂が訪れた館の庭に、一人の少女がいた。
”Stinger”
少女が呟く声に応え、手にした木の枝が、鏃まで木でできた矢になる。
”Sniping”
少女はそれを仮想の弓に番え、的を狙う。
”Shoot”
再び声を発し、それと共に矢が放たれる。それは狙い過たず、的の中心に命中した。
……後ろから拍手が聞こえる。少女が振り向くと、そこには少女の上司であるメイド長、十六夜咲夜の姿があった。
「夜中まで精が出るわね」
「……メイド長」
「功労者を労うようにと、お嬢様からのお達しよ。これからお茶会をやるわ、貴女も出席なさい」
だが、咲夜のその言葉に、ジーナは首を振った。
「功労者と言うならば、それはメイド長と隊長です。私は大言をしながら、危うく矢を外すところでした」
「あれは霊夢の勘が規格外なのよ。貴女のせいじゃないわ」
「ですが……」
「ねえ、ジーナ『さん』」
なおも言葉を繋ごうとするジーナを遮って、咲夜は砕けた口調で話しかける。
「私がまだメイド長じゃなかった頃、覚えてます?」
「……え、ええ。一生懸命、何事も完璧にしようと頑張っておられたのを、良く覚えていますが」
「そうね。完璧じゃなきゃ意味がない、自分ひとりでなんでも出来なきゃ意味がない――そう思ってた。でも、そんな私に姉さんが言ったんです。なんでも自分一人でしようとするな、もっと他人を頼れ、って」
「……それは」
「ジーナさん、私の手を借りる事は、貴女のプライドが許しませんか?」
「いえ、そんなことは!」
「じゃ、これ以上あれこれ言うのはナシです。皆で頑張って、上手く行った、それでいいじゃないですか」
「……そう、ですね。……すみません、メイド長」
ようやく、微笑を浮かべたジーナに、咲夜も微笑み返す。
「さて、それじゃ行きましょう、ジーナ。お嬢様、今頃待ちくたびれているわ」
「……そうですね、隊長が八つ当たりされてたら大変ですから、早くいかないと」
微笑み合いながら、屋敷の中へと向かう二人を、十六夜月が照らしていた。
タイトルを読む限りでは魔理沙とブラックの話は蛇足だったような。もうちょっと霊夢との戦いの様子を緊迫感あふれる様子で書いていただきたかった、というのが私の我侭でございます。
この感想を書いてる途中で自分を黒霊夢をもっと見たかったんだなと気付く。
惜しむのはもう少し戦闘などの緊迫感があれば良かったと思います。
オリキャラとはいえ、メインキャラほどは目立ってたないし、良い役を演じてるとおもいます。
それよか冒頭のジーンな妖精が気になるのですが……
美鈴がよくもジーンをとか叫ぶところまで幻視したのに。
でも話はよかった。オリキャラもよかった。
美味しい事を持っていくね~。
魔理沙、おまいはどこまでヒーロー属性なのかとwww
魔理リリ(ブラ)の組み合わせや迷惑をかける師匠って珍しくて面白いですね
バトルシーンの静と動の対比も印象的でした
オリキャラ良いですねぇ。アーチャーですね。
美鈴自身を矢に変えて射出とか出来そうwww
手榴弾でも矢にすれば、とんでもなくウザそうだw
てかリリーさん、蜂蜜酒ですか…(/ω\*)
ジーナは概ね受け入れて頂けたようで、ほっとしております。
一方、戦闘シーンは……誉めてくださっている方もおりますが、
今ひとつ淡泊だった、というのは確かに否めない所ですね。
主軸のブレについてのご指摘と併せ、今後の課題としたいと思います。
これまでの作品も含めまして、たくさんの感想、本当にありがとうございます。
これらを糧に、より良い作品を皆様にお届けできればと思います。
話自体も面白かったです
ただ、魔理沙とリリーの話はいらなかった気が・・・
なかなか良い作品でした。
リリー・ブラックは相変わらず攻めですねw
存在していることに違和感もなく、話と上手く絡んでるし。
面白かったです。
話の流れを見る限り本来必要の無かったであろうオリキャラが前面に出すぎている感があります。
それはリリーも、ですね。登場した面子を見る限り正直どちらも蛇足に感じました。
あえて悪い言い方をすれば「オリキャラを書きたいがために話を考えた」風にも見えるので気をつけた方がよいかと思います。