※このお話は麻雀を題材に扱っておりますが、
普通の麻雀対戦話を求めている方には全然お勧めできない内容です。
「誰が一番強いんですか?」
今回のこの大騒ぎはその一言から始まった、
人と妖怪が集まる宴会でそれを投げ打ったのは、
幻想郷の新参者、東風谷早苗であった。
「それはもちろん、最強の種族であるヴァンパイアの中でも最強な私に決まってるじゃない」
「あたいが最強ね!」
「ふん、貴様なぞ紫様どころか、その式で九尾の狐でもあるこの私にも劣るわ」
「あたいこそ最強ね!」
「面白そうな話題じゃない、最古の歴史を持つ月人に地上の者が敵うとでも? ね、永琳?」
「あたいったら最強ね!」
「……神前で大きな口をたたくじゃない、なぜ神が神なのかを教えてやる必要があるわね」
本来ならこの様にいがみ合っても、適当に弾幕でも放ちあい適当に終わる、
それが普通だった、しかしながら今回のテーマは最強、自らの誇りを刺激されたのか、
普段ならいさめる立場の者達ですら煽り立てている始末。
「あー、どうするんだこれ? もう収まりがつきそうに無いぜ?」
「どどどどどうしましょう!! 私のせいでなんか大変なことに!!」
「もうどうにもならないわね、私にできることは神社が壊れないように結界を張る事だけ」
「ままま魔理沙さぁぁん!」
「わかってる、わかってるから落ち着け」
元凶となった早苗は霊夢と魔理沙に助けを求めている、
宴会での揉め事は慣れっこの二人、特に魔理沙は何かしら案を考え出しているようだ。
「よーし! お前ら! 幻想郷最強の名誉が欲しいかーーーっ!!」
そして唐突に魔理沙は叫んだ、右手にある謎の四角い箱を掲げながら。
~少女説明中~
麻雀、それは十九世紀中頃に中国で生まれた遊戯、
十四枚の牌で役を作り、点数を争う、ただそれだけのもの、
一からすべて説明するとすごく長くなるので、その辺りは略する。
「で、何で麻雀で最強が決まるの?」
異を唱えたのはレミリアだった。
「んー、質問に質問で返すことになるが……レミリア、最強とは一体何なんだ?」
「決まってるじゃない、誰よりも強いことよ」
「じゃあその強さはどうやって決まる?」
「それは力とか、速さとか……とにかく最後まで立っていれば最強よ」
「だがそれは要素の一つ一つにすぎないぜ? もっと大事な物があるはずだ」
「もっと大事な物?」
「……能力ね、力も速さも技術も運も、各々が持つ能力次第で崩れ去る脆き物」
「お、さすがは紫だ、話が早い」
速さは力を凌駕し、技術は速さを凌駕し、力は技術を凌駕する、
その逆もあれば、運が良かっただけでどうにかなることもある。
「だったらもう単純に能力の強さだけで最強を競えばいい、トランプ、将棋、チェス、
競うものは色々あるが、戦略と能力が一番マッチする遊戯はこれしか無いぜ?」
「それで麻雀なの? 正気かしら?」
「さっきからやけに噛み付くじゃないか、私の血でも吸いたいのか?」
「……馬鹿ね、あなたは運命を操るこの私に、麻雀で戦えと言っているのよ?」
ぞくり、と場の雰囲気が一変する、
喧騒の最中に放つようなただ威圧するだけの妖気ではない、
心の底から恐怖を力ずくで引きずり出す、圧倒的なまでの妖気。
「おおっ……もしこれが弾幕ごっこなら尻尾巻いて逃げ出すところだぜ」
「中々面白い提案だわ魔理沙……私の最強はもはや見えているけれど」
「随分と強気だな、お前も、その周りの奴らもな」
「所詮、私の引き立て役よ」
「んじゃレミリア」
「何?」
「お前がどうせ一位になるんだから、豪華な賞品でも提供してくれないか?」
「…………」
スポンサーが紅魔館に決定しました。
~少女提供中~
「それでは紅魔館主催幻想郷雀王決定戦、これより開催だぜ!」
舞台は紅魔館の大広間に移り、壇上で魔理沙が開幕を宣言する、
その背には金銀財宝が賞品として山積みにされていた。
「というわけで参加選手の紹介だ!」
魔理沙の合図と共にプリズムリバー三姉妹の演奏が始まる、
豪華絢爛に彩られた扉が重厚な音を立てながら開き、
観客達の拍手に包まれながら選手たちが姿を露にする。
「スポンサーの紅魔館からは、レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット
パチュリー・ノーレッジ、十六夜咲夜、中国と、なんと五人もエントリーだぜ!」
「ま、スポンサーの権限ね」
「まーじゃんっ、まーじゃんっ!」
「えーと、麻雀で簡単に勝てる方法は……」
「時、止めていいのよね?」
「何でこういう肝心なときだけ中国って呼ぶんですか……」
最初の組は紅魔館一行、総勢五名の大軍団だ。
「続いて西行寺家から西行寺幽々子、魂魄妖夢の二人がエントリーだぜ!」
「ジャーマンポテト~」
「麻雀です」
続いて西行寺家の主従が参戦、といっても参戦できるのがこの二名しかいない。
「八雲家からは八雲紫と八雲藍の二人だ!」
「麻雀……久々ねぇ、藍?」
「ふふ、相対したとしても手加減は致しませんよ?」
「言うようになったじゃない」
八雲の主従からはどことなく威圧感が漂う。
「次は永遠亭から蓬莱山輝夜、八意永琳、鈴仙・優曇華院・イナバ、藤原妹紅の四人だ!」
「麻雀……昔はよくやったわよね」
「今と昔ではかなりルールが違うようです、気をつけましょう」
「姫様、師匠、後ろの方にもっと気をつけるべきだと思うんですが」
「何で私が永遠亭に含まれているんだっ!!」
その時観客席では、てゐがぼったくり価格で品物を売っていた。
「彼岸からは四季映姫・ヤマザナドゥと小野塚小町が仕事をさぼってエントリーだ!」
「さぼってなどおりません! 有給休暇です! 小町と一緒にしないでください!」
「四季様、私のは休憩で決してさぼってるわけではきゃんっ!!」
小町の可愛い鳴き声で新しくファンになった幻想人、およそ五名。
「妖怪の山からは射命丸文と鍵山雛がエントリーだ!」
「この麻雀大会の結果は私の独占ですよね!? ねっ!?」
「もーいーくつ回るとー、世紀末ー」
新聞のネタになるといえば彼女はどこからでも飛んでくるでしょう。
「守矢の神社からは、八坂神奈子、洩矢諏訪子、東風谷早苗の三名がエントリー!」
「あら、てっきりガンキャノンと呼ばれると思ってたのに」
「あーうー!」
「変な呼び名に慣れないでくださいキャノ子様、幼女化しないでください諏訪子ちゃん」
外界由来の毒舌マシン、でも都会の女子高生はもっと酷いとか。
「あとは人数あわせにそこら辺からチルノ、アリス、ミスティア、ルーミア、
リグル、レティ、メディスンの七人だな、精々飛ばないように頑張ってくれ」
「あたいこそ最強ね!」
「そこら辺扱い!? この私が!?」
「うう、折角の出店の機会なのに……」
「そーなのかー!」
「蟲の地位向上の機会、私の地位向上の機会!」
「今は冬よ! 八雲紫は冬眠してないとおかしいわ!」
「スーさん、今ってどういう季節~?」
もしかしたら夏かもしれませんし、秋かもしれません。
「そして最後は博麗組の紹介だ! まずは弾幕オブパワー! 霧雨魔理沙!」
「あー、テンション高すぎるわよ、楽園の素敵な巫女、博麗霊夢」
「こういうのもいいじゃない、四季のフラワーマスター風見幽香!」
「やれやれ、あまり人前には出ないんだがねぇ……悪霊様祟り神様魅魔様だよ」
「ヒィーック、うぇふっ、鬼だよー、萃香ちゃんだよー!」
『五人揃ってぇー! 博麗特戦隊っ!!』
最後は全員がのりのりである。
「どうして私が入れずに鬼が入っているのよ……」
「そこの七色、目から血の涙を流しながら私の館の柱を殴るな」
~トーナメントルール説明~
三十二名を四名ずつ八卓に分け、その各卓の一位、二位が次の戦いへと進む、
十六名を今度は四卓に分け、各卓の一位が決勝戦へと進む、
決勝戦で一位をとったものが雀王、果ては幻想郷最強の名誉を得るとかなんとか。
~麻雀予選ルール~
・半荘
・原点25000点
・食いタンあり
・後付あり
・包あり
・赤牌・花牌無し
・誰かが飛んだ際、二位が並んだ時は先に上がったものの勝ち抜け
・飛んだ人はおとなしくツモ切りしててね
・でもルールなんか殆ど意味ないよ!
・転んでも泣かない
「それでは卓の抽選をするぜ~」
魔理沙がどこからか用意した箱に各々が手を入れ、
一枚ずつ紙を取り出していく、今回の組み分けは以下の通り。
一卓:幽香、パチュリー、レティ、幽々子
二卓:フランドール、ルーミア、妖夢、諏訪子
三卓:藍、鈴仙、神奈子、永琳
四卓:霊夢、早苗、雛、霧雨魔理沙
五卓:リグル、メディスン、魅魔、咲夜
六卓:輝夜、妹紅、チルノ、ミスチー
七卓:小町、文、萃香、アリス
八卓:レミリア、紫、映姫、美鈴
各々がそれぞれの卓に付き、数分が経過した後、
始まりを知らせる鐘の音が重く遠く響き渡った。
~予選:一卓~
「あ、出てきた……これは凄い物ね」
「全自動麻雀卓、積み込みと配牌を代わりにしてくれる……こほっ」
「外の人間も面白いものを作るのね」
「じゃーまんぽてとー」
一名を除いて始めて見る麻雀卓に釘付けの一同、紫が用意したものらしく、
灰皿や点棒入れまで付いており、ドラ出しまでしてくれる代物だ。
「起家は私ね……こほっ」
東一局零本場 東:パチュリー(親) 南:幽香 西:レティ 北:幽々子
「そうね……まずは字牌から」
「あ、それポン」
パチュリーが最初の一手に切り出したのは白、
それをすかさずレティが鳴き、白を三枚揃えて並べる。
「上がりへの特急券ゲットォ、最初に流れは頂かないとね」
「素人じゃ……こほっ、ないみたいね」
「当然よ、こう見えても長生きしてるもの」
「でも玄人とも思えない……」
「言ってくれるわね」
「じゃーまんぽてと~……」
一人謎の言葉をつぶやき続ける幽々子を尻目に、
それぞれツモり、捨てては進めてゆく。
「あ、それチー……それもポンね」
その中、レティは鳴きを繰り返して牌を揃えていく、
八巡目を終えた頃、すでにレティの元には刻子が二つと順子が一つ。
「(ふふ、テンパイテンパイ……)」
あがる、という点から見ればレティはスムーズにそれに近づいているといえる、
役は白のみの安い手だが、しっかりと両面待ちにすることを怠らない。
「んんー……」
その時、レティの上家の幽香は、何やら台を見つめて唸っていた。
「あら、どうしたの?」
「……花牌が無いのね」
「あるわけ無いじゃない」
風見幽香、その能力は花を操る程度の能力、
こと麻雀の世界では、花牌を操る程度の能力となる。
「花牌があればどんな手でもドラ四確定なのに」
「(……あっさりと恐ろしいことほざくわね)」
あがりに必要な一飜にドラ4を加えると最低でも満貫が確定する、
もし花牌ありのルールであったならば、幽香は早上がり一辺倒の怪物と化するだろう。
「(でも花牌は無し……私の勝利への道が開けてきたわ)」
「(まぁ、花牌なんてどうでもいいのよね……それよりも気になるのはあっち)」
安堵するレティとは対照的に、場を深刻な目で見つめ続ける幽香、
特に彼女が注目しているのがパチュリーの捨て牌だった。
「(捨て牌の殆どが既に他家によって場に捨てられた物……嫌な予感がするわね)」
「……リーチ」
「(っ!)」
幽香の予感は的中した、放り投げられる千点棒、
横向きにおかれた捨て牌、わずかに汲み取れるその微笑。
「(七対子か三暗刻、四暗刻には速すぎるとしても……待ちも読めないし、ここは現物)」
その時の幽香の手は一向聴という所まで来ていたが、
それを捨ててでもパチュリーを警戒した。
「……早リーチには正面衝突よ、勝負!!」
しかしレティは目先のあがりに目をくらませたのか、そのままツモ切りをする始末。
「ちょ、ちょっと、たかが一飜程度の役で親のリーチ相手に……」
「……それ、ロン」
「ええっ!?」
「あーあー……」
無情にも宣告される処断の一刀、慣れた手つきで倒される麻雀牌。
「リーチ、一発、七対子、ドラ2……裏ドラも乗ったわ、完璧ね」
「ひぇぇぇぇ!」
「馬鹿ね……本当に馬鹿、素人以下……」
「倍満よ、24000点頂戴」
「そんな……は、始まって一局で残点0って……」
1位:パチュリー・ノーレッジ 50000 (+26000)
2位:西行寺 幽々子 25000 (変動無)
3位:風見 幽香 25000 (変動無)
4位:レティ・ホワイトロック 0 (-24000)
東一局一本場 東:パチュリー(親) 南:幽香 西:レティ 北:幽々子
「飛んでないだけまだチャンスがあるわよ、ほら諦めないで」
「うう……あなたに慰められるなんて……」
幽香がぽんぽんとレティの肩を叩く、
だが当のレティは流れもつかめず、崖際に追い詰められた状態、
もはやまな板の上の鯉、できる事は死を待つことだけか。
「東一局一本場、始めるわよ……」
機械は待ちもせず、残酷に牌を配る、
レティ・ホワイトロック処刑会場、開幕である。
「(ここでツモるなりロンするなりしてレティを飛ばせば勝ちぬけね)」
当然先ほどまで慰めていた幽香もこうなれば悪魔である、
というか最初から悪魔であり、慰めていたのも演技かもしれない。
「うう、どうにかしてでも点を取らないと……」
レティはレティで手つきがふらふらになっていた、
他家のツモあがりすら許されない状況では仕方無いとも言える。
「ねー、じゃーまんぽてとまだ~?」
『…………』
そして相変わらず素っ頓狂な事を言い続ける幽々子、
なぜか右手にはフォーク、左手にはスプーンを持っている。
「じゃーまんぽてと食べ放題って聞いたんだけど~?」
『出ないわよ!!』
「ええっ!?」
ついに他家の三人が切れた、一寸もずれることなく言い放たれる否定の言葉、
力無くした幽々子の手からカランカランとこぼれ落ち、金属音を響かせるフォークとスプーン。
「嘘……嘘よそんなの……じゃーまんぽてと大食い王決定戦じゃなかったの!?」
『そんなわけないでしょ!!』
「……はふぅん」
二度目の否定の言葉が放たれると同時に、幽々子の体はだらりと後ろに垂れ下がった。
「…………うふ、うふふふふふ、うふふふふふふふふふ?」
そのまま数秒が経過してから、不気味に笑い始める幽々子、
途端、場の空気が一変した、レミリアの時と同じように。
「こほ、こほっ……この空気は何?」
「この威圧感……西行寺幽々子、目覚める前にしとめて起きたかった」
「え、何!? 何なの?! 私ついていけないんだけど!?」
ゆっくりと幽々子が体をまっすぐに戻す、
そしてその目が対面の幽香を捕らえた時、そこにいつもの大食いな幽々子の姿は無かった、
そこにいたのは、西行寺家当主西行寺幽々子、カリスマの象徴たる存在。
「……それ、カン」
「ひっ!? ……あ、ロンじゃないのね」
「あらら……はぁ、早々と終わったわね、私の戦いも」
「……幽香?」
幽々子がレティの捨て牌をつまんだ時、幽香は自らの手牌を閉じた、
まるでこれから何が起きるかを見通しているように、
その光景をパチュリーは疑問に思いながらも、静かに見届ける、
幽々子が牌を揃え、隅に置かれたのは四枚の四筒。
「もう一つカン」
「えっ?」
嶺上牌から牌を取ると、その牌と手牌をあわせてまた隅に揃える、
今度は四枚の四萬が置かれ、その異常さにパチュリーが声を上げた。
「さらにカン」
「むきゅっ!?」
次に置かれたのは四枚の四索、この時点で三槓子が成立した。
「まだよ、まだ終わらないわ」
「ど、どういうこと?」
「見てれば分かるわ」
幽香は腕を組み、ただ静かに幽々子の動作を見つめている、
そのあまりにもありえない現実に、パチュリーもうろたえるしかない。
「私の元には四が集う、四萬、四筒、四索……それは集い三となる、
そして三の隣にはまた四が存在する、私はそれを引き寄せるだけ……カン!」
隅に置かれし四枚の五索、役満『四槓子』成立の瞬間だった。
「あ、ありえないわ! この全自動卓でそんなことが起こるわけが……」
「忘れたのパチュリー、この麻雀は能力を競い合う物だということを」
「幽香……確かに私も七対子をあがったわ、だけどこれは確率的にありえるはずが無い」
四槓子、それは幻の役、それを一巡目に揃える確率を表すと、
一体どれほどの長い数列となるのだろうか。
「ありえない、何てことはありえない、何故ならこれが私の能力だから」
「むきゅ……だけどその単騎待ちをあがらなければまだ成立しない」
「何勘違いしてるの? まだ私のターンは終了していないわ!」
「ま、まさか……!」
「四槓子を成立させた時点であなた達には死が纏う、それだけの事よ……ツモ!」
この時パチュリーもようやく理解した、なぜ幽香が手牌を閉じたのか、
そして知った、この麻雀の世界では文字通り桁が違う存在がいることを。
「四槓子、役満よ」
1位:西行寺 幽々子 57300 (+32300)
2位:パチュリー・ノーレッジ 33900 (-16100)
3位:風見 幽香 16900 (-8100)
4位:レティ・ホワイトロック - 8100 (-8100)
「運が良かったわねパチュリー・ノーレッジ、二回戦では精々頑張ってね」
「え、ええ……って、勝てるわけ無いじゃないの、こんなの……」
レティと幽香が飛び、その時点の順位で幽々子とパチュリーが勝ち抜けとなった、
だがパチュリーは喜ぶことも無く、そのありえない状況の卓をただ見つめる。
「西行寺幽々子、幻想四雀鬼の一人、又の名を、四にて死に誘う姫」
「何よそれ……聞いたことも無いわよ」
「あの領域にたどり着きたければあの領域を知りなさい、かく言う私もまだまだ……」
「……むきゅぅ」
このような結果になったが、もちろんパチュリーとて弱くは無い、
普通の人間が相手であり、自らの能力を如何なく発揮できれば、
百回半荘をして九十九回はトップを取る、それほどの実力である、
だが、幽々子の立つ領域からすれば所詮その程度なのだ、
そして他の卓でも実力差によって狩られる者達が続出した。
「ツモ、地和」
「ええっ!?」
「ツモ、十三不塔ね~」
「そーなのかー!!」
二卓では諏訪子とフランドールがそれぞれあがりを宣言した、
互いに一巡目、互いに役満、互いに勝ち抜きを決めて。
「(鈴仙、特訓していたコンビ打ち……いくわよ!)」
「(はい! 十分しかしてませんけど!)」
三卓では永琳と鈴仙の師弟が見事なコンビ麻雀を見せ付ける。
「(師匠、ドラです!)」
「ポン!」
「(師匠、一萬です!)」
「(よし、これでテンパイよ!)」
「ロン、純正九蓮宝燈、ダブル役満」
『はいぃぃ!?』
だがしかし、藍が手牌を倒せばそこにはきれいに並ぶ萬子の群れ、
鈴仙の点棒が四回分弱ほど吹き飛んでいく。
「し、師匠……」
「大丈夫よ、まだ二位は決まってない、あなたの分まで勝つわ!」
「仲がいいのねぇ……でもロン、天和」
『うそぉぉぉ!?』
続いて神奈子が幻の役をあがり、二位通過を決めた。
「……師匠、麻雀って意外と役満があがれるものなんですねー」
「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない」
「師匠!?」
その圧倒的な実力を如何なく発揮し、次々と勝ち抜きを決める猛者達。
「あ~、張り合いがないったらありゃしないねぇ、ツモドラ12、数え役満」
「わっ! また役満!?」
「全然まったくコレでもかというぐらい知らない人なのに強い!」
「あたしゃまだここにいるんだよ!」
五卓では魅魔がダントツの成績で、続いて咲夜がこっそりと二位を決めて勝ち上がる、
まだ勝ちぬけが決まっていない卓はあと四つ。
~予選:四卓~
「ツモ、西と南と白、2600オール」
「く……!」
「あら、また役牌だらけ?」
場は既に南三局、北家に魔理沙、南家に霊夢、東家に早苗、そして西には親の雛、
対局は続いているものの、状況は思った以上に芳しくない。
「空気呼んでくれよ、ここは私と霊夢の因縁の戦いの予定なんだぜ?」
「そうは言っても役が寄って来てしまうんです」
「集めるのは厄だけにしてほしいぜ……」
順位をみれば雛が二位以下を大きく突き放してトップに立っていた、
順調にツモりつづけ、コツコツと役牌で点数を積み上げたのだ。
「(このままじゃ危ういな……さて、どうするか)」
「その白、ポン」
「おおっ?」
魔理沙が思案中に動いたのは対面の霊夢だった、
白を揃えてから切り捨てたのはなんとドラ。
「……早あがりか?」
「いらないから切っただけよ、それに親を止めないとね」
魔理沙の問いにひょいひょいと答える霊夢、
しかし魔理沙は霊夢の狙いが何か分かっていた。
「(二位狙いだな……)」
予選は二位までが次の戦いに移ることが出来る、
ならばこの状況から三人の戦いだと割り切るのも作戦の内。
「……勝負だな、霊夢」
「……負けないわよ」
「あのー、お取り込み中一つよろしいですか?」
「あん?」
「何よ?」
宿命のライバルの間に水を差したのは南家の早苗だった。
「何だ、生きてたのか」
「勝手に殺さないでください」
「で、何かあったの?」
「これってあがってますか?」
早苗が手牌を倒すと、そこには見事に揃った字牌の群れ。
「だ、大四喜、四暗刻単騎、字一色……」
「五倍役満ですって……!?」
奇跡を起こす程度の能力とはかくも恐ろしきもの、
これにより早苗は一位で勝ち抜けを決めた、
そして早苗の奇跡の力の最大の被害者となったのは対面の雛であった。
「ト、トップから最下位転落なんて……」
早苗のあがりにより霊夢と魔理沙は端数を引いてもそれぞれマイナス40000点、
だがしかし親である雛はマイナス80000点である。
「魔理沙、後は任せたわよ」
「……ああ、任されたぜ」
二位には霊夢を押しのけて魔理沙が滑り込んだ、
二人の点差は極わずかであったが、それが命運を分けたのだ。
~予選:六卓~
「(何で!? どうして妹紅の手から索子が出ないの!?)」
「うーん……どうするかな~」
六卓は他の卓と違った雰囲気に包まれていた。
「また九が全部揃ったわ! あたいったら最強ね!!」
「早く負けて屋台を開きたいんだけど……」
ひたすらに妹紅から上がることしか考えない輝夜
それに気づいてるのかいないのか、あがる事も振り込む事もない妹紅、
九萬、九筒、九索をそろえて一人悦に浸るチルノ、
さっさと負けて観客相手に商売したいミスティアと異常な様相である。
「(清一色、一と四索待ち……なのになんで妹紅から上がれないのよ!)」
「ミスティア出たよー!」
「(あなたが捨てても意味が無いのよ!)」
「んー……索子でも捨てるか」
「(こんな時に限ってー!!)」
チルノが一索を捨てれば、妹紅がタイミングよく四索を捨てる、
輝夜にとってはもどかしい時間が繰り返されること数十回。
「……テンパイ」
「九が十二個よ! あたいったら最強ね!」
「テンパイ……って輝夜、また恐ろしい待ちだな」
「あがれなきゃ意味ないのよ!」
「ノーテン」
結局は長い長い膠着の果てに輝夜と妹紅が勝ち抜けを決めた、
それにしても流局による得点だけであがるとは何とも気の長い二人である。
そしてこれにて計六卓の勝敗が決定した、
一卓を除いては強き者が勝ち抜けるという展開だったが
もしも卓に座った四人全てが強き者だった場合はどうなるのだろうか。
「さて、他も終わったみたいだし、そろそろ始めるとするかい?」
「そうですね、烏天狗の強さ、知らしめてさしあげましょう」
「烏なんて所詮黒だけ、この私の一割四分二厘しかないわ」
「今日は麻雀で酒が飲めるぞー!!」
明らかに他の卓とは違う雰囲気に包まれる七卓、
レベルが違う、と一目見るだけで観客が理解できるほどに、
だがしかし、その七卓をも超えるプレッシャーに包まれたのが八卓だった。
「運命の力の前にひれ伏しなさい!」
「強気ね、でも幻想四雀鬼の一人である私に敵うかしら?」
「あなた達は少々調子に乗りすぎる、ここで叩きのめして差し上げるのが私に詰める善行です」
「……よろしくお願いします」
勝利の運命を引き寄せる悪魔、レミリア・スカーレット、
点棒を幻へと葬り去る妖怪、八雲紫、
東知る西知る北知る南知る、四季映姫・ヤマザナドゥ、
麻雀百五十年の歴史の体現者、紅美鈴。
四人全員が優勝候補であり、その中の二人がここで消える、
果たして勝ち残るのは誰なのか、既に勝ちぬけを決めた者達の視線も注がれる中、
勝敗を分ける牌が今四人の手元へと配られた。
ただ、ちょっとモッサリ。どれが誰の発言かわかりにくいかなぁ。
会話と会話の説明以外の状況説明が乏しい気もする。
けど題材や流れ自体は続きが楽しみだし、現状でも十分面白いので続きが楽しみです。早く!早く続きを読ませて!
ていうか、チルノはやり方によったら強くないかい?
そういえば、過去にも麻雀の話があったな。
話や流れが面白く、能力の設定などにも
盛大に楽しませていただきました
続きが楽しみです。ぜひ読ませてください
あと、神奈子が決めた天和は配牌時に役が出来ていた場合の役なのでロンはできないのでは…?
規模がでかいから今後の展開がより楽しみだぜ!
今後の展開がたのしみだ
ただ、この麻雀のルールがよくわからないなぁ
三卓は藍のダブル約満で対局終了、
四卓は風が違うし、2600オールで対局終了しそう
藍様がぶち抜いた後に神奈子様が二位ゲッツ
>>四卓
場が西になってたのを訂正しました、ご指摘ありがとうございます、
雛の自風とごっちゃになってたー!
>あと、神奈子が決めた天和は配牌時に役が出来ていた場合の役なのでロンはできないのでは…?
一応親はツモるわけではないのでロン宣言、結局はどっちでも可能。
あう、そうでしたか。すみません
ゆゆ親やとしたら32000オールじゃなくて48000オールになる
三卓もレイセン飛んだら2位は上家優先にしないとレイセンの5倍役満アガリとかでレイセンがトップになっちゃって飛びありルール全否定になっちゃう
能力の設定とか面白そうなんで細かいとこ気をつけて頑張って~
てかルーミアの能力一番うざいww
何かスゴそう!っていう雰囲気で楽しめました。
そして雛の能力いいなぁ、めちゃくちゃほしい
キャラクターと能力が見事にあっていて面白いです。
続きを大変期待しております
>ゆゆ親やとしたら32000オールじゃなくて48000オールになる
やっちゃった!!
実は幽香上がりとか書いて消して書いて消してを繰り返したので
ここら辺ごっちゃになってたんですよね……ご指摘ありがとうございます。
大四喜や四暗刻単騎、国士十三面等がダブル役満は公式ルールではなくあくまでローカルルールの一種なので説明すべきかと。
(もっとも何をおいて公式とするかがあやふやなゲームというのもありますが。
雀荘のフリーなどだとその雀荘がきめたルールが絶対ですし。)
ただ、天和の描写における「一応親はツモるわけではないのでロン宣言、結局はどっちでも可能。」
というのはロンの定義付けが「他のプレイヤーが和了牌を打牌したとき、これを取得して和了すること。」なのでやはりおかしいかと。
(まぁ上がり時の発声を全て「ロン」とするプロ団体もあるぐらいだから大した問題じゃありませんが)
「暗くて牌が見えないわっ!ドラは一体何なの!?」
こんな感じですか?w