※注意 この作品はモンス○ーハ○ターとのクロスオーバー作品です。クロスオーバーが苦手な人には面白くないかもしれません。それでも読んでくれる人には感謝です!
気がついたら見知らぬ空を飛んでいた。この空は狭い。大地も狭い。
生きようとする声、死から逃れようとする叫びがか細い。
そして空気に混じる血の香りが少ない、少なすぎるこの世界。
彼は戸惑っていた。優しくなってしまった空に、大地に、世界に。
今まで彼が飛んでいた世界は空はどこまでも続くかのように広く、広大な大地には生と死が目まぐるしく繰り返され、空気には血の香りが充満する世界だった。
そして彼を最も戸惑わせる要因は、この世界に来てから周りをうろちょろと飛び回る存在にある。
「あやややや!これは事件です!!スクープです!!!これで私の新聞も今以上に購読者が増える予感ですよ」
そう、この一見人間のようだが、黒い羽を持っていること。そして飛んでいる事実が彼女、射命丸文が人間ならざるものであることを証明している。
彼は天狗など見たことがないが、彼女が見た目以上の力の持ち主であることは長年の戦いによって培われた勘によって理解していた。
しかし、今の彼にとってそれはどうでもいいことで思うことはただ一つ。
(鬱陶しい)
である。
「銀色の蜥蜴幻想郷に現る!いやいや恐竜のほうがインパクトがあるかも。あぁ、これでゴミを漁ったり、虫の幼虫を麦飯のまぜる生活ともおさらばですよ!ハイッ、怪獣さんこっち向いてください!」
銀色の体を持つ彼は巨大な空飛ぶ爬虫類とでも言えばいいのか。
全長は20メートル程。醜悪とも美麗ともいえる顔をもち、逞しい腕には大きな翼がある。凶悪な爪を有する脚にしなやかで力強い尾を持つ彼のことはそう、飛竜とでも言うのが一番ふさわしいだろう。
美しいながらも無数の傷を持つ彼の体から、長い年月を戦い生きていたことが解る。
ジー・・・パシャッ!ジー・・・パシャッ!
ほとほと彼はうんざりしていた。
自分の周りを飛び回るこの生き物、鳴き声がやかましいだけでなく、妙に耳障りな音と目障りな光をやたらチカチカさせてくる。
しかもこの生き物。さりげなく追い払おうとしても巧みに距離を保ちながらはなれない。
この世界に慣れていないせいもあり、出来るだけ無視をしようとしていた彼だったがさすがに堪忍袋の緒に限界がきた。
(いいかげんにせい!!)
ヴァオォォォォォォォォォォォ!!!!
一度、大きく文との距離を空けた彼は渾身の咆哮を見舞う!
「うひゃあ~!!」
突然の咆哮に驚いた文が崩れた体制を直そうしているその隙に彼は遠くの空へ消えていった。
「あちゃ~逃げられてしまいましたね・・・しかしながらネタはばっちりです。記事にするのが楽しみ♪」
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時は変わって夕方。
彼は今だ幻想郷の空を飛び続けていた。
(ムゥ・・・獲物になるようなのが見つからん)
そう、この世界には彼の餌となる大きい恐竜などが見当たらないのである。
人間はたくさんいたが、うかつに手を出すと自分の命が危ない相手であると彼は理解している。人間に狩られた同類は数知れず・・・
しかし、夜になって視界が悪くなっては狩りはできない。本格的に腹が減ってきた彼は進退極まっていた。
(こうなったらそこらへんの生き物を手当たりしだい・・・ンッ?)
手近な妖怪に襲い掛かろうとした矢先にどこからともなく嗅いだことの無い、しかしながら香ばしく食欲をそそる匂いが漂ってきた。
匂いのする方向を見てみると明かりが灯っており、そこからは妙だが心地良い音が聞こえてくる。
とりあえずその灯りを目指して見ることにした。
「目が~!目が~!!見えなくなったら鰻をお食べ♪おいしいおいしい八目鰻~♪」
夜雀のミスティア・ローレライことみすちーは活きのいい八目鰻が大量だったことで上機嫌だった。
「いつも~みんなが来ってくれるのに、なぜっか伸びない屋台の売上~♪」
その理由はみんなのほとんどが「ツケでお願いね!」と言って食い逃げしていくからであり、更にミスティアが鳥頭であることが災いしてツケの請求をしないことにある。
しかし、そんなこと気にしないのがミスティアクオリティー。
「鰻が上手にやけました~♪」
ブオォォ!!!ドシーン!!!
「うわ~ん!!!!」
みすちーはいきなり泣き出した!
無理もない話しである。
強風が起こったかと思うといきなり目の前に怪獣っぽいのが降ってきたのであるから下手したらちびる。
彼はいきなり泣き出したみすちーに面食らったものの自分の幸運に感謝した。
香ばしい匂いは屋台からしていてあいかわらず食欲をそそる。そしてなにより今日の晩飯が見つかったのだから。
(うまそうな奴)
さっそく彼はミスティアを一口で食べようと近づいていく。
「うわ~ん!なんか私超ピンチ!」
みっともなく鼻水をたらしながらもみすちーは己にせまる危機を悟った。
しかしミスティアもただ食われるわけにはいかない!
「あんたなんか鳥目になっちゃえ!!」
(!!!)
ミスティアのことをただの獲物だと思っていた彼は不意をつかれ戸惑った。
いきなり目が見えなくなったのであるから戸惑うのも無理はない。しかも彼は獲物を目で追う為に目を潰されることに弱かった。
(なっなんだ!なにが起こったのだ!)
いきなり暴れだした飛竜にミスティアはびびっていた。かな~りびびっていた。
「あわわ、鳥目にしたのはいいけど結局あぶないよ~。どうしたら・・・」
今だに暴れる飛竜にどうしようかと思ったが、困った時の歌頼み!
「とりあえず~落ち着いて~落ち着いて~♪」
(!!この音はさっきの・・・なんと心地良いことよ)
さきほど聞こえた音が聞こえたかと思うと彼のこころは不思議と安らぎ、聞きほれている内にいつしか目も治っていた。
「ほっ、なんとか大人しくなったよ。それにしても綺麗な怪獣。鰻はいらんかね~♪」
(なんだ?この良い匂いの薄っぺらくて茶色いものは、食えるのか?)
ミッション・又自分に注意が向く前に怪獣に餌付けをしてみよう作戦成功!!
「た、助かった・・・今日の屋台は閉めるしかないかな~」
一心不乱に鰻の蒲焼をむさぼる飛竜を前に今日の屋台が開かずにして終わったことを理解したミスティアであった。
鰻を食べ終わった飛竜はミスティアを襲うことなくおとなしくなった。そして彼女に頬ずりまでしてきた。ミスティアどうやら飛竜に懐かれてしまったようである。
「ト、トゲが痛い!貴方は元々幻想卿にはいなかったわよね?っというか居たらすぐ解るね。まずは貴方を歌ってみましょうか!」
空を翔る我らは王。空は全て我らがもの。何人たりともこの空を汚させん。我らが聖域を汚すものは地獄の業火に焼かれるであろう。
「うん、こんなところかな空の王者さん♪私の歌を気にいったの?ありがとう!」
グルゥゥ・・・
「よし!今日は特別に私の歌をとことん聴かせてあげる!私の歌を聴け~!!」
彼はミスティアの歌に耳を傾けながら、遠い昔の事を思い出した。
先立ってしまった金色の体が美しかった妻を。人間共に狩られた自分に負けず劣らず強かった息子を。
家族みんながそろっていた時の記憶を思い出しながらいつしか彼は眠りについた・・・
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目を覚ますと辺り一面闇に包まれていた。
(まだ夜のか・・・いや、この闇は夜なんてものじゃない)
「そう、ここはあなたの夢の世界よ」
「誰だ!!」
「始めまして、そしてようこそ幻想郷へ飛竜さん。私は八雲紫という妖怪。今は貴方の夢にお邪魔させてもらってるわ」
「お前・・・俺と喋れるのか?」
「あなたと喋るくらいはゆかりん朝飯前!」
彼は一見人間の女性にみえる存在が只者でないことはすぐに解った。己を戦慄させるほどの存在だと。
「教えてくれ、ここはいったいなんだ?俺はどうして此処に来た」
「ここは幻想郷というあなたがいた世界とはまったく別の世界。そしてあなたがここにきたのは偶然。それだけよ」
「・・・俺は戻れるのか?」
「えぇ、戻れるわ。でも、あなた本当に元の世界に戻りたい?」
「・・・・・・・・・」
「こっちの世界はそこそこ住み心地がいいでしょ。あなたの世界は地獄といえなくもないわ」
「確かにな。もう妻も息子もいない元の世界は地獄に近いものがあった。だが、俺が望めば幻想郷で暮らしていけるのか?」
「そうね、あんまり大暴れしなければ私がフォローしてあげてもいいわ。正直、あなたより性質が悪いのはいっぱい居るし」
「そうか・・・ここで大人しく暮らすのも悪くない。飯も上手かったしな」
「貴方みたいな大物が夜雀ごときに飼いならされるのを見るのは正直虚しくはあるけど・・・私はこれでもあなたには敬意を払っているのよ。あなたのその傷だらけの体は相当過酷な戦いを続けたんでしょうね。そしてその経験が今まで生をつないできた。さぞかし強力な式神になるんでしょうね。うふふっ」
「それは本当に敬意を払っているのか・・・」
「本当よ!じゃあ最後に一つ、この世界の人間に手出しちゃだめよ。こわい巫女さんが飛んでくるから」
「解った」
「それじゃ私はこれで。よい幻想郷ライフをw」
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彼が目を覚ますと傍らにはミスティアが眠っていた。
どうやら自分は本当に幻想郷で暮らしていくことになるらしい。
(本当に、これからここで暮らしていけるんだな)
正直、戦いの本能は今だ燻っているけれど、老いた自分にはここでゆっくり余生をすごすのも悪くないと思った。
そして彼はギンタとミスティアによって命名された。
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「号外~!号外~!今回の文々。新聞はすごいよ~!!銀色の怪獣幻想郷に現る!私たちに明日はあるのか!?」
最初のほうはまたガセだろ、とか、またまた文ちゃんは~みたいな反応だったが、ミスティアの近くにいつもいる飛竜は屋台の常連客の名物となっていき、口コミによって瞬く間に存在が幻想郷に伝わった。
最初のほうは、妖怪が恐ろしい化け物を手なずけて里に襲い掛かってくるのではないか?などの飛竜危険説が出てきたが、ミスティアのそばでおとなしくしている姿からは脅威は感じられず、むしろ夜雀の屋台に行くと飛竜の餌付けができると評判になりしだいに幻想郷の一員として認められるようになった。
ひとつ脅威があるとすれば、屋台の食い逃げが容易でなくなったということぐらいか。
食い逃げを決行しようとすると飛竜が睨みつけてくる為大抵の者は食い逃げを諦めることとなる。
それでも魔理沙は「ミスティアにデカイ顔はさせられないぜ!」と言って食い逃げを試みたが、見事に空中でキャッチされ屋台に連れ戻される結果となった。捕まって屋台に連れ戻されるまでの間甘噛みされていたため、よだれと恐怖にさらされた魔理沙は「恐かった、べとべとだった・・・もうギンタ様にはさからえないぜ・・・」などと言ったとか。
夜では屋台の人気者となり、昼間はミスティア達の遊び相手となって彼は充実した時を過ごした。
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「邪悪なる竜め!おまえは幻想郷さいきょーのアタイが倒す!」
「なにを!奴を倒すのはこの勇者リグルさ!!」
「バカ共の出番はないよ。止めをさすのはこのてゐ様だからね」
「そーなのかーがんばるぞー」
「橙だって負けないからね!」
グオォォォォォォ!!
と吼えるギンタに棒切れ片手に突撃していくチルノ達。
この遊びはギンタの頭を棒切れで一番最初に叩いたものが勝ちというゲームである。
ギンタはたくみに頭を動かすのでこれがなかなか難しい。
そして頭を棒で叩かれた時は大げさにやられてあげる。
「やったー橙がやっつけたよー!」
といった感じで勝者はヒーロー気分を味わえるこのゲームは幻想卿のお馬鹿さん達(失礼)に大好評なのである。
「ふふっ,楽しくやってるみたいね飛竜さん」
遊んでいる様子をこたつからスキマでみていた紫は、表情に乏しいはずの飛竜が微笑んでいるように見えた。
「ふわ~あ、さてさてもう一眠りしますかね」
その時紫はこたつの上に置かれた文々。新聞のある記事が事件の引き金になるとは思っていなかった。
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「ふいー今日はアタイが一番やっつけたね!え~と何回だっけな?・・・まあとにかくたくさんだよ!」
「数も数えられないくせになにが一番だよこのバカ!」
「も~うチルノもてゐもケンカはやめなよ~」
三人の喧嘩の騒ぎで彼は目を覚ました。
最近自分がよく寝ることが多くなっているのが少々気がかりになっていた。
夕方になったころ、遊び疲れた面々は今夜の屋台用の鰻を取りに行ったミスティアの帰りを待っていた。
しかし、いつもなら帰ってくるこの時間帯にも関わらず今日は帰ってこない事に彼は焦りを感じずにはいられない。
「ミスティア帰ってこないね。なんか心配になってきた」
「そーなのだー」
橙とルーミアが言うとおり本当に帰ってこないミスティアが彼は心配でたまらなかった。
そろそろ本格的に夜になってきた頃、突然ミスティアの匂いがした。それも血の匂いが。
「あっ、どこいくのギンタ!!」
不吉な予感を胸に、橙の声を聴く余裕もなく彼はミスティアの匂いを追って飛び立った。
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ミスティアの匂いを追って辿りついたのは木々が生い茂る森の中だった。
彼は周りの木々を薙ぎ倒しながら着地する。
そして森の中を探しているとミスティアがいた。
意識はあるようだが、鳥もちで捕まった後にさるぐつわをされ縛られたのだろう。しかも矢が刺さっていたりなどかなり酷いこともされているようだ。
慌てて駆け寄る彼に対してミスティアはクビを振った。こちらへ来るなというように。
彼がミスティアに近づいた時、突然一条の光が彼をめがけて放たれた!
彼の固い甲殻によってはじかれたそれは巨大な矢であった。
その時になり彼は自分が囲まれていることに気がついた。
どうやら自分を囲んでいるのは屈強な男達で数は6人ほどか。
それぞれ弓を始め槍や槌などそれなりの武装をしていた。
だが、それがどうした。俺にとってその程度は恐るるに足らない。
貴様らなど息をするだけで焼き尽くすことができるしかし今回は見逃してやろう。
今は一刻もはやくミスティアを連れ帰らなければ。あの長生きしている薬師ならなんとかしてくれるだろう。
それに紫との約束もある。
グアァァァァァァァァァァ!!!!
早々に立ち去れ俺の気が変わらぬ内にな。
咆哮に怖気づいた男達は、やべぇ、俺らが敵うわけねえよ!誰だよあの怪獣が大人しいって言ってた奴は!?などと逃げ腰になっている。
今回かどうやらこれで終わりだと悟った彼はミスティアのもとに寄っていった。
(大丈夫か?)
そんな気持ちでミスティアに擦り寄る。
ミスティアもそれが解ったらしく思ったよりは元気にうなずいて笑ってみせる。
妖怪である彼女の体は頑丈らしい。
これならすぐ元気になりそうだと安心して気が抜けた時だった。
(!?)
彼は自分の体から力が抜けるのをどうすることもできなかった。
「!!!!??」
ミスティアが心配して寄ってくるがどうすることも出来ずにただもがくことしかできない。
「おい、なんか弱ってねえか?」
「これはいける!」
「奴の銀を剥ぎ取るぞ!」
突然倒れた彼の異常を好機とみた男達は一斉に襲い掛かる。
なんとかミスティアを遠ざけるもそれが限界だった。
彼の鱗や甲殻は非常に固く男達の武器では傷一つつかないが、鱗や甲殻の間の肉は耐えられない。
男達は鱗や甲殻を肉から剥がしに掛かった。
ギャアォォォォォォォォォン!!!!
全身を駆け巡る鱗や甲殻がはぎとられる激痛にも彼の体は思うように動かない。
「くそっ、なかなか剥がれねえ!」
男達は手こずっているようだったがそれが彼の苦しみを増加させた。
ミスティアはなんとか男達を止めようとするが手足が縛られているうえに怪我もしている。さるぐつわを噛まされているので得意の歌も歌えない。
傷ついていくギンタを前にミスティアはただ泣くことしか出来なかった。
激痛に意識が遠のきながら彼は考え事をしていた。
歴戦の戦士だった自分の無様な姿は空の王者としての誇りを捨てた自分に対する報いなのだと。
これでは妻と息子に合わせる顔が無いな。
そう重いながら彼の意識は闇に落ちて・・・・
そこに突如凄まじい風が起こり男達をギンタからひきはがした。
「私の記事をみて悪事に走るとは許せない行為です」
月夜の空に現れたのは射命丸文であった。
いつもの彼女とは違う厳しい表情で男達で男たちを睨みつけているその姿は正しく天狗である。
「幻想郷の住人を自分の欲で殺そうとする輩にはスキマに落ちてもらうわよ」
無様に転がる男達の背後に現れたスキマから出現したのは大妖怪八雲紫。
彼女もまたいつものだらけた態度は微塵も感じさせず、怒りの波動で満ちている。
突然の二人の登場に驚くミスティアの拘束が突如解かれた。
「大丈夫かしら?」
拘束を解いたのはマッド薬師こと八意永琳その人であった。
「助けて、ギンタを助けて!お願い・・・」
自分の怪我を差し置いて懇願するミスティアに永琳は力強く頷いた。
「解ったわ。あなたはもう少しだけがまんしてね」
そう優しく言うとすぐさま飛竜の手当てに向かった。
飛竜の怪我は見た目よりは軽かった。
しかし問題なのは体力の低下が酷い。辛うじて息はあるが意識が無くすでに虫の息となっている。
「これでは薬を飲ませられない!」
そう判断した永琳は心臓マッサージなどを試みるが、相手は全長20メートル近い飛竜である。人にはどうすることもできない体格差だ。
そこにさんざん男達をいたぶったあとにスキマに落とした紫と文が戻ってきた。
「申し訳ありません。全ては私の記事が招いたことです」
「それについてはみっちり反省しなさい。それで永琳、飛竜の容態は?」
「怪我は思ったより深くないの。問題は体力の低下ね。このままでは薬も飲ませられないわ。紫、貴方の力でどうにかならない?」
「できるならしてるわ!」
紫が悔しそうに叫ぶ。いつもの彼女からは想像できない悲痛な表情をうかべていた。
「彼はね・・・私や永林程ではないにしろものすごく長生きしているの。そのせいで霊格は相当高くなってて、私の力も彼自信には効かないのよ・・・それにもう彼の寿命は終わりに近づいてる。もう天命なのかもしれない」
「そんな、それじゃあ・・・ギンタは死ぬしかないってこと?こんな優しかったのにこんな酷い死に方をしなくちゃいけないの?」
「ミスティア・・・」
「そんなのやだ!私は諦めない。ギンタには私の歌をもっと聞いてもらうんだから!」
そしてミスティアは歌い始めた。お願いもう一度立って、歌を聴いて・・・ギンタ・・・
ミスティアは歌い続けた。願いを込めて。
(ミスティア・・・泣いているのか?)
彼は自分の寿命が近い事を悟っていた。しかし、この死に方は納得できなかった。
まだ俺は礼の一つすら言っていない。まだだ、もう少しだけがんばなければ!
「あっ!飛竜の呼吸が強くなりましたよ!ミスティア、あなたの歌が届いたんです!」
「これならいけるかも、ほら薬を飲みなさい!がんばって!」
「あなたは死ぬにはまだ早い!」
「ギンター!がんばって!!」
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気がついたらミスティアの顔が目の前にあった。
(どうやら帰ってこれたな)
「よかった・・・よかったよー!!うわあぁぁぁぁぁぁん!!」
鼻水をたらしながら抱きついてくるミスティアに、彼は鼻先を摺り寄せた。
「もう、鼻水びちゃびちゃですよ~」
「ふぅ、飛竜に薬飲ませるなんて経験二度とないかもね」
「二人ともお疲れ様。永琳は無理やりスキマで連れ出して悪かったわね。明日の宴会では特別にいいお酒を用意しておくわ」
「あら、楽しみにしてますわ」
そこでミスティアは宴会という単語に気がついた。明日は宴会だったのか!しかし自分は呼ばれてないという事実に気がついて心底凹んだ。
「ギンタ、明日は寂しく飲もうじゃないの・・・」
(とことんつきあうぜ)
トボトボ寂しく帰っていこうとするのけ者コンビに、呆れながらも紫が二人に声をかけた。
「なに言ってんの、招待されてるわよ!あいかわらず鳥頭なんだから・・・飛竜も、ギンタもちゃんと連れてきなさいよ」
「えっ、ギンタもいいの?」
「もちろん!」
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事件の発端となった記事の内容は「飛竜の体は全身銀なのか?」というものだった。文は記事の中でしっかりと、「飛竜の体は銀のように美しいが銀とは違ったのであった。残念!!」と書いていた。それを見出しだけ読んで勘違いした男達が私でギンタをおびき出して銀をいただこうとしたのが事件の真相みたい。
ちなみに男達はスキマの中で散々恐い思いをした後里に返されたって。今度やったら許さないんだから!
次の日の宴会には幻想卿のいつものメンツ+ギンタで楽しく始まった。
スイカと文の飲み比べにギンタが参戦して誰が勝つかの賭けに発展した。私はもちろんギンタに賭けたけど、そしたら一番体が大きいくせに最初に脱落したもんだから賭けには負けちゃった。でもお酒飲むのなんて初めてだと思うし今回は許してあげる!
私が歌を歌おうと思ったらルナサさんたちが演奏させてくれって来てくれたからとても気持ちよく歌えた。ギンタが泣いて感動してて私はビックリしたけどほかの皆もビックリしてた。
今日の宴会は本当に楽しかった。
帰りはギンタの背中に乗ろうとしたけどとげだらけで乗れないから口の中に入った。そしたらチルノがみすちー食われてる!ってバカ笑いしてた。でも気持ちは解る。
夜はギンタと一緒に寝た。私はギンタにいろいろ話た。最初は私の事食べようとしてたよねとか、ギンタとあって楽しかったこと色々。
気がついたらギンタが寝ていた。初めての宴会で疲れたんだね。おやすみギンタ、又明日。
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「ふわ~・・・昨日は飲みすぎたかも、頭ガンガンする・・・ギンタもまだ寝てる」
ミスティアは二日酔い気味で目を覚ました。昨日は楽しくていつも以上に騒いでしまったようだ。それでもギンタが喜んでくれたことが嬉しかった。
「ほら、ギンタももう起きて!朝ですよ~」
今だ爆睡眠中のギンタを叩いてみる。しかし起きない。それならばとギンタが絶対起きるはずのおはようの歌も歌った。
しかしギンタは目を覚まさない。
ミスティアは気がつき始めた。ギンタがどうなったかを。しかし頭で理解できても心が拒絶する。
声を震わせながらも彼女は歌い続けた。のども枯れてむせこんでしまうほど歌った。それでも彼女は歌い続けようとした。
「ミスティア」
声の方向に振り向くと紫が立っていた。
「あっ、おはよう。もうギンタったらねぼすけで」
「ミスティア・・・ギンタの魂は元の世界に還ったの」
その一言でミスティアの心は折れた。
あとはもう涙が止まらなかった。ミスティアは泣いた。力いっぱい泣いた。短い間だったけどギンタがいてくれたことは忘れない。鳥頭の私だけどギンタのことは絶対忘れないと誓いながら泣いた。
「ギンタはあなたにとても感謝していたわ。本当の子供みたいだったって。きっと貴方にとってもギンタはお父さんみたいな存在だったのね」
優しく抱きよせてくれた紫の胸でミスティアは泣き続けた。
ギンタは空を飛んでいる。
下に見えるのはミスティアと紫。そして自分の体。
彼は自分が死んだことを理解した。
しかし彼は幸せだった。
お礼は紫が伝えてくれたようでミスティアに伝わったらしい。
泣かしてしまったことには心が痛むが、同時にここまで自分のことを想っていてくれてたのだと分かり嬉しかった。
(ミスティアは強い子だ。元気にな)
そんな彼の傍らに、金の光と銀の光が飛んできた。
(妻よ、息子よ・・・迎えに来てくれたのだな。帰るか、家族の元に)
金と銀の光に導かれ銀の翼が幻想郷の空の彼方に消えていった。
気がついたら見知らぬ空を飛んでいた。この空は狭い。大地も狭い。
生きようとする声、死から逃れようとする叫びがか細い。
そして空気に混じる血の香りが少ない、少なすぎるこの世界。
彼は戸惑っていた。優しくなってしまった空に、大地に、世界に。
今まで彼が飛んでいた世界は空はどこまでも続くかのように広く、広大な大地には生と死が目まぐるしく繰り返され、空気には血の香りが充満する世界だった。
そして彼を最も戸惑わせる要因は、この世界に来てから周りをうろちょろと飛び回る存在にある。
「あやややや!これは事件です!!スクープです!!!これで私の新聞も今以上に購読者が増える予感ですよ」
そう、この一見人間のようだが、黒い羽を持っていること。そして飛んでいる事実が彼女、射命丸文が人間ならざるものであることを証明している。
彼は天狗など見たことがないが、彼女が見た目以上の力の持ち主であることは長年の戦いによって培われた勘によって理解していた。
しかし、今の彼にとってそれはどうでもいいことで思うことはただ一つ。
(鬱陶しい)
である。
「銀色の蜥蜴幻想郷に現る!いやいや恐竜のほうがインパクトがあるかも。あぁ、これでゴミを漁ったり、虫の幼虫を麦飯のまぜる生活ともおさらばですよ!ハイッ、怪獣さんこっち向いてください!」
銀色の体を持つ彼は巨大な空飛ぶ爬虫類とでも言えばいいのか。
全長は20メートル程。醜悪とも美麗ともいえる顔をもち、逞しい腕には大きな翼がある。凶悪な爪を有する脚にしなやかで力強い尾を持つ彼のことはそう、飛竜とでも言うのが一番ふさわしいだろう。
美しいながらも無数の傷を持つ彼の体から、長い年月を戦い生きていたことが解る。
ジー・・・パシャッ!ジー・・・パシャッ!
ほとほと彼はうんざりしていた。
自分の周りを飛び回るこの生き物、鳴き声がやかましいだけでなく、妙に耳障りな音と目障りな光をやたらチカチカさせてくる。
しかもこの生き物。さりげなく追い払おうとしても巧みに距離を保ちながらはなれない。
この世界に慣れていないせいもあり、出来るだけ無視をしようとしていた彼だったがさすがに堪忍袋の緒に限界がきた。
(いいかげんにせい!!)
ヴァオォォォォォォォォォォォ!!!!
一度、大きく文との距離を空けた彼は渾身の咆哮を見舞う!
「うひゃあ~!!」
突然の咆哮に驚いた文が崩れた体制を直そうしているその隙に彼は遠くの空へ消えていった。
「あちゃ~逃げられてしまいましたね・・・しかしながらネタはばっちりです。記事にするのが楽しみ♪」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
時は変わって夕方。
彼は今だ幻想郷の空を飛び続けていた。
(ムゥ・・・獲物になるようなのが見つからん)
そう、この世界には彼の餌となる大きい恐竜などが見当たらないのである。
人間はたくさんいたが、うかつに手を出すと自分の命が危ない相手であると彼は理解している。人間に狩られた同類は数知れず・・・
しかし、夜になって視界が悪くなっては狩りはできない。本格的に腹が減ってきた彼は進退極まっていた。
(こうなったらそこらへんの生き物を手当たりしだい・・・ンッ?)
手近な妖怪に襲い掛かろうとした矢先にどこからともなく嗅いだことの無い、しかしながら香ばしく食欲をそそる匂いが漂ってきた。
匂いのする方向を見てみると明かりが灯っており、そこからは妙だが心地良い音が聞こえてくる。
とりあえずその灯りを目指して見ることにした。
「目が~!目が~!!見えなくなったら鰻をお食べ♪おいしいおいしい八目鰻~♪」
夜雀のミスティア・ローレライことみすちーは活きのいい八目鰻が大量だったことで上機嫌だった。
「いつも~みんなが来ってくれるのに、なぜっか伸びない屋台の売上~♪」
その理由はみんなのほとんどが「ツケでお願いね!」と言って食い逃げしていくからであり、更にミスティアが鳥頭であることが災いしてツケの請求をしないことにある。
しかし、そんなこと気にしないのがミスティアクオリティー。
「鰻が上手にやけました~♪」
ブオォォ!!!ドシーン!!!
「うわ~ん!!!!」
みすちーはいきなり泣き出した!
無理もない話しである。
強風が起こったかと思うといきなり目の前に怪獣っぽいのが降ってきたのであるから下手したらちびる。
彼はいきなり泣き出したみすちーに面食らったものの自分の幸運に感謝した。
香ばしい匂いは屋台からしていてあいかわらず食欲をそそる。そしてなにより今日の晩飯が見つかったのだから。
(うまそうな奴)
さっそく彼はミスティアを一口で食べようと近づいていく。
「うわ~ん!なんか私超ピンチ!」
みっともなく鼻水をたらしながらもみすちーは己にせまる危機を悟った。
しかしミスティアもただ食われるわけにはいかない!
「あんたなんか鳥目になっちゃえ!!」
(!!!)
ミスティアのことをただの獲物だと思っていた彼は不意をつかれ戸惑った。
いきなり目が見えなくなったのであるから戸惑うのも無理はない。しかも彼は獲物を目で追う為に目を潰されることに弱かった。
(なっなんだ!なにが起こったのだ!)
いきなり暴れだした飛竜にミスティアはびびっていた。かな~りびびっていた。
「あわわ、鳥目にしたのはいいけど結局あぶないよ~。どうしたら・・・」
今だに暴れる飛竜にどうしようかと思ったが、困った時の歌頼み!
「とりあえず~落ち着いて~落ち着いて~♪」
(!!この音はさっきの・・・なんと心地良いことよ)
さきほど聞こえた音が聞こえたかと思うと彼のこころは不思議と安らぎ、聞きほれている内にいつしか目も治っていた。
「ほっ、なんとか大人しくなったよ。それにしても綺麗な怪獣。鰻はいらんかね~♪」
(なんだ?この良い匂いの薄っぺらくて茶色いものは、食えるのか?)
ミッション・又自分に注意が向く前に怪獣に餌付けをしてみよう作戦成功!!
「た、助かった・・・今日の屋台は閉めるしかないかな~」
一心不乱に鰻の蒲焼をむさぼる飛竜を前に今日の屋台が開かずにして終わったことを理解したミスティアであった。
鰻を食べ終わった飛竜はミスティアを襲うことなくおとなしくなった。そして彼女に頬ずりまでしてきた。ミスティアどうやら飛竜に懐かれてしまったようである。
「ト、トゲが痛い!貴方は元々幻想卿にはいなかったわよね?っというか居たらすぐ解るね。まずは貴方を歌ってみましょうか!」
空を翔る我らは王。空は全て我らがもの。何人たりともこの空を汚させん。我らが聖域を汚すものは地獄の業火に焼かれるであろう。
「うん、こんなところかな空の王者さん♪私の歌を気にいったの?ありがとう!」
グルゥゥ・・・
「よし!今日は特別に私の歌をとことん聴かせてあげる!私の歌を聴け~!!」
彼はミスティアの歌に耳を傾けながら、遠い昔の事を思い出した。
先立ってしまった金色の体が美しかった妻を。人間共に狩られた自分に負けず劣らず強かった息子を。
家族みんながそろっていた時の記憶を思い出しながらいつしか彼は眠りについた・・・
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目を覚ますと辺り一面闇に包まれていた。
(まだ夜のか・・・いや、この闇は夜なんてものじゃない)
「そう、ここはあなたの夢の世界よ」
「誰だ!!」
「始めまして、そしてようこそ幻想郷へ飛竜さん。私は八雲紫という妖怪。今は貴方の夢にお邪魔させてもらってるわ」
「お前・・・俺と喋れるのか?」
「あなたと喋るくらいはゆかりん朝飯前!」
彼は一見人間の女性にみえる存在が只者でないことはすぐに解った。己を戦慄させるほどの存在だと。
「教えてくれ、ここはいったいなんだ?俺はどうして此処に来た」
「ここは幻想郷というあなたがいた世界とはまったく別の世界。そしてあなたがここにきたのは偶然。それだけよ」
「・・・俺は戻れるのか?」
「えぇ、戻れるわ。でも、あなた本当に元の世界に戻りたい?」
「・・・・・・・・・」
「こっちの世界はそこそこ住み心地がいいでしょ。あなたの世界は地獄といえなくもないわ」
「確かにな。もう妻も息子もいない元の世界は地獄に近いものがあった。だが、俺が望めば幻想郷で暮らしていけるのか?」
「そうね、あんまり大暴れしなければ私がフォローしてあげてもいいわ。正直、あなたより性質が悪いのはいっぱい居るし」
「そうか・・・ここで大人しく暮らすのも悪くない。飯も上手かったしな」
「貴方みたいな大物が夜雀ごときに飼いならされるのを見るのは正直虚しくはあるけど・・・私はこれでもあなたには敬意を払っているのよ。あなたのその傷だらけの体は相当過酷な戦いを続けたんでしょうね。そしてその経験が今まで生をつないできた。さぞかし強力な式神になるんでしょうね。うふふっ」
「それは本当に敬意を払っているのか・・・」
「本当よ!じゃあ最後に一つ、この世界の人間に手出しちゃだめよ。こわい巫女さんが飛んでくるから」
「解った」
「それじゃ私はこれで。よい幻想郷ライフをw」
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彼が目を覚ますと傍らにはミスティアが眠っていた。
どうやら自分は本当に幻想郷で暮らしていくことになるらしい。
(本当に、これからここで暮らしていけるんだな)
正直、戦いの本能は今だ燻っているけれど、老いた自分にはここでゆっくり余生をすごすのも悪くないと思った。
そして彼はギンタとミスティアによって命名された。
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「号外~!号外~!今回の文々。新聞はすごいよ~!!銀色の怪獣幻想郷に現る!私たちに明日はあるのか!?」
最初のほうはまたガセだろ、とか、またまた文ちゃんは~みたいな反応だったが、ミスティアの近くにいつもいる飛竜は屋台の常連客の名物となっていき、口コミによって瞬く間に存在が幻想郷に伝わった。
最初のほうは、妖怪が恐ろしい化け物を手なずけて里に襲い掛かってくるのではないか?などの飛竜危険説が出てきたが、ミスティアのそばでおとなしくしている姿からは脅威は感じられず、むしろ夜雀の屋台に行くと飛竜の餌付けができると評判になりしだいに幻想郷の一員として認められるようになった。
ひとつ脅威があるとすれば、屋台の食い逃げが容易でなくなったということぐらいか。
食い逃げを決行しようとすると飛竜が睨みつけてくる為大抵の者は食い逃げを諦めることとなる。
それでも魔理沙は「ミスティアにデカイ顔はさせられないぜ!」と言って食い逃げを試みたが、見事に空中でキャッチされ屋台に連れ戻される結果となった。捕まって屋台に連れ戻されるまでの間甘噛みされていたため、よだれと恐怖にさらされた魔理沙は「恐かった、べとべとだった・・・もうギンタ様にはさからえないぜ・・・」などと言ったとか。
夜では屋台の人気者となり、昼間はミスティア達の遊び相手となって彼は充実した時を過ごした。
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「邪悪なる竜め!おまえは幻想郷さいきょーのアタイが倒す!」
「なにを!奴を倒すのはこの勇者リグルさ!!」
「バカ共の出番はないよ。止めをさすのはこのてゐ様だからね」
「そーなのかーがんばるぞー」
「橙だって負けないからね!」
グオォォォォォォ!!
と吼えるギンタに棒切れ片手に突撃していくチルノ達。
この遊びはギンタの頭を棒切れで一番最初に叩いたものが勝ちというゲームである。
ギンタはたくみに頭を動かすのでこれがなかなか難しい。
そして頭を棒で叩かれた時は大げさにやられてあげる。
「やったー橙がやっつけたよー!」
といった感じで勝者はヒーロー気分を味わえるこのゲームは幻想卿のお馬鹿さん達(失礼)に大好評なのである。
「ふふっ,楽しくやってるみたいね飛竜さん」
遊んでいる様子をこたつからスキマでみていた紫は、表情に乏しいはずの飛竜が微笑んでいるように見えた。
「ふわ~あ、さてさてもう一眠りしますかね」
その時紫はこたつの上に置かれた文々。新聞のある記事が事件の引き金になるとは思っていなかった。
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「ふいー今日はアタイが一番やっつけたね!え~と何回だっけな?・・・まあとにかくたくさんだよ!」
「数も数えられないくせになにが一番だよこのバカ!」
「も~うチルノもてゐもケンカはやめなよ~」
三人の喧嘩の騒ぎで彼は目を覚ました。
最近自分がよく寝ることが多くなっているのが少々気がかりになっていた。
夕方になったころ、遊び疲れた面々は今夜の屋台用の鰻を取りに行ったミスティアの帰りを待っていた。
しかし、いつもなら帰ってくるこの時間帯にも関わらず今日は帰ってこない事に彼は焦りを感じずにはいられない。
「ミスティア帰ってこないね。なんか心配になってきた」
「そーなのだー」
橙とルーミアが言うとおり本当に帰ってこないミスティアが彼は心配でたまらなかった。
そろそろ本格的に夜になってきた頃、突然ミスティアの匂いがした。それも血の匂いが。
「あっ、どこいくのギンタ!!」
不吉な予感を胸に、橙の声を聴く余裕もなく彼はミスティアの匂いを追って飛び立った。
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ミスティアの匂いを追って辿りついたのは木々が生い茂る森の中だった。
彼は周りの木々を薙ぎ倒しながら着地する。
そして森の中を探しているとミスティアがいた。
意識はあるようだが、鳥もちで捕まった後にさるぐつわをされ縛られたのだろう。しかも矢が刺さっていたりなどかなり酷いこともされているようだ。
慌てて駆け寄る彼に対してミスティアはクビを振った。こちらへ来るなというように。
彼がミスティアに近づいた時、突然一条の光が彼をめがけて放たれた!
彼の固い甲殻によってはじかれたそれは巨大な矢であった。
その時になり彼は自分が囲まれていることに気がついた。
どうやら自分を囲んでいるのは屈強な男達で数は6人ほどか。
それぞれ弓を始め槍や槌などそれなりの武装をしていた。
だが、それがどうした。俺にとってその程度は恐るるに足らない。
貴様らなど息をするだけで焼き尽くすことができるしかし今回は見逃してやろう。
今は一刻もはやくミスティアを連れ帰らなければ。あの長生きしている薬師ならなんとかしてくれるだろう。
それに紫との約束もある。
グアァァァァァァァァァァ!!!!
早々に立ち去れ俺の気が変わらぬ内にな。
咆哮に怖気づいた男達は、やべぇ、俺らが敵うわけねえよ!誰だよあの怪獣が大人しいって言ってた奴は!?などと逃げ腰になっている。
今回かどうやらこれで終わりだと悟った彼はミスティアのもとに寄っていった。
(大丈夫か?)
そんな気持ちでミスティアに擦り寄る。
ミスティアもそれが解ったらしく思ったよりは元気にうなずいて笑ってみせる。
妖怪である彼女の体は頑丈らしい。
これならすぐ元気になりそうだと安心して気が抜けた時だった。
(!?)
彼は自分の体から力が抜けるのをどうすることもできなかった。
「!!!!??」
ミスティアが心配して寄ってくるがどうすることも出来ずにただもがくことしかできない。
「おい、なんか弱ってねえか?」
「これはいける!」
「奴の銀を剥ぎ取るぞ!」
突然倒れた彼の異常を好機とみた男達は一斉に襲い掛かる。
なんとかミスティアを遠ざけるもそれが限界だった。
彼の鱗や甲殻は非常に固く男達の武器では傷一つつかないが、鱗や甲殻の間の肉は耐えられない。
男達は鱗や甲殻を肉から剥がしに掛かった。
ギャアォォォォォォォォォン!!!!
全身を駆け巡る鱗や甲殻がはぎとられる激痛にも彼の体は思うように動かない。
「くそっ、なかなか剥がれねえ!」
男達は手こずっているようだったがそれが彼の苦しみを増加させた。
ミスティアはなんとか男達を止めようとするが手足が縛られているうえに怪我もしている。さるぐつわを噛まされているので得意の歌も歌えない。
傷ついていくギンタを前にミスティアはただ泣くことしか出来なかった。
激痛に意識が遠のきながら彼は考え事をしていた。
歴戦の戦士だった自分の無様な姿は空の王者としての誇りを捨てた自分に対する報いなのだと。
これでは妻と息子に合わせる顔が無いな。
そう重いながら彼の意識は闇に落ちて・・・・
そこに突如凄まじい風が起こり男達をギンタからひきはがした。
「私の記事をみて悪事に走るとは許せない行為です」
月夜の空に現れたのは射命丸文であった。
いつもの彼女とは違う厳しい表情で男達で男たちを睨みつけているその姿は正しく天狗である。
「幻想郷の住人を自分の欲で殺そうとする輩にはスキマに落ちてもらうわよ」
無様に転がる男達の背後に現れたスキマから出現したのは大妖怪八雲紫。
彼女もまたいつものだらけた態度は微塵も感じさせず、怒りの波動で満ちている。
突然の二人の登場に驚くミスティアの拘束が突如解かれた。
「大丈夫かしら?」
拘束を解いたのはマッド薬師こと八意永琳その人であった。
「助けて、ギンタを助けて!お願い・・・」
自分の怪我を差し置いて懇願するミスティアに永琳は力強く頷いた。
「解ったわ。あなたはもう少しだけがまんしてね」
そう優しく言うとすぐさま飛竜の手当てに向かった。
飛竜の怪我は見た目よりは軽かった。
しかし問題なのは体力の低下が酷い。辛うじて息はあるが意識が無くすでに虫の息となっている。
「これでは薬を飲ませられない!」
そう判断した永琳は心臓マッサージなどを試みるが、相手は全長20メートル近い飛竜である。人にはどうすることもできない体格差だ。
そこにさんざん男達をいたぶったあとにスキマに落とした紫と文が戻ってきた。
「申し訳ありません。全ては私の記事が招いたことです」
「それについてはみっちり反省しなさい。それで永琳、飛竜の容態は?」
「怪我は思ったより深くないの。問題は体力の低下ね。このままでは薬も飲ませられないわ。紫、貴方の力でどうにかならない?」
「できるならしてるわ!」
紫が悔しそうに叫ぶ。いつもの彼女からは想像できない悲痛な表情をうかべていた。
「彼はね・・・私や永林程ではないにしろものすごく長生きしているの。そのせいで霊格は相当高くなってて、私の力も彼自信には効かないのよ・・・それにもう彼の寿命は終わりに近づいてる。もう天命なのかもしれない」
「そんな、それじゃあ・・・ギンタは死ぬしかないってこと?こんな優しかったのにこんな酷い死に方をしなくちゃいけないの?」
「ミスティア・・・」
「そんなのやだ!私は諦めない。ギンタには私の歌をもっと聞いてもらうんだから!」
そしてミスティアは歌い始めた。お願いもう一度立って、歌を聴いて・・・ギンタ・・・
ミスティアは歌い続けた。願いを込めて。
(ミスティア・・・泣いているのか?)
彼は自分の寿命が近い事を悟っていた。しかし、この死に方は納得できなかった。
まだ俺は礼の一つすら言っていない。まだだ、もう少しだけがんばなければ!
「あっ!飛竜の呼吸が強くなりましたよ!ミスティア、あなたの歌が届いたんです!」
「これならいけるかも、ほら薬を飲みなさい!がんばって!」
「あなたは死ぬにはまだ早い!」
「ギンター!がんばって!!」
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気がついたらミスティアの顔が目の前にあった。
(どうやら帰ってこれたな)
「よかった・・・よかったよー!!うわあぁぁぁぁぁぁん!!」
鼻水をたらしながら抱きついてくるミスティアに、彼は鼻先を摺り寄せた。
「もう、鼻水びちゃびちゃですよ~」
「ふぅ、飛竜に薬飲ませるなんて経験二度とないかもね」
「二人ともお疲れ様。永琳は無理やりスキマで連れ出して悪かったわね。明日の宴会では特別にいいお酒を用意しておくわ」
「あら、楽しみにしてますわ」
そこでミスティアは宴会という単語に気がついた。明日は宴会だったのか!しかし自分は呼ばれてないという事実に気がついて心底凹んだ。
「ギンタ、明日は寂しく飲もうじゃないの・・・」
(とことんつきあうぜ)
トボトボ寂しく帰っていこうとするのけ者コンビに、呆れながらも紫が二人に声をかけた。
「なに言ってんの、招待されてるわよ!あいかわらず鳥頭なんだから・・・飛竜も、ギンタもちゃんと連れてきなさいよ」
「えっ、ギンタもいいの?」
「もちろん!」
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事件の発端となった記事の内容は「飛竜の体は全身銀なのか?」というものだった。文は記事の中でしっかりと、「飛竜の体は銀のように美しいが銀とは違ったのであった。残念!!」と書いていた。それを見出しだけ読んで勘違いした男達が私でギンタをおびき出して銀をいただこうとしたのが事件の真相みたい。
ちなみに男達はスキマの中で散々恐い思いをした後里に返されたって。今度やったら許さないんだから!
次の日の宴会には幻想卿のいつものメンツ+ギンタで楽しく始まった。
スイカと文の飲み比べにギンタが参戦して誰が勝つかの賭けに発展した。私はもちろんギンタに賭けたけど、そしたら一番体が大きいくせに最初に脱落したもんだから賭けには負けちゃった。でもお酒飲むのなんて初めてだと思うし今回は許してあげる!
私が歌を歌おうと思ったらルナサさんたちが演奏させてくれって来てくれたからとても気持ちよく歌えた。ギンタが泣いて感動してて私はビックリしたけどほかの皆もビックリしてた。
今日の宴会は本当に楽しかった。
帰りはギンタの背中に乗ろうとしたけどとげだらけで乗れないから口の中に入った。そしたらチルノがみすちー食われてる!ってバカ笑いしてた。でも気持ちは解る。
夜はギンタと一緒に寝た。私はギンタにいろいろ話た。最初は私の事食べようとしてたよねとか、ギンタとあって楽しかったこと色々。
気がついたらギンタが寝ていた。初めての宴会で疲れたんだね。おやすみギンタ、又明日。
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「ふわ~・・・昨日は飲みすぎたかも、頭ガンガンする・・・ギンタもまだ寝てる」
ミスティアは二日酔い気味で目を覚ました。昨日は楽しくていつも以上に騒いでしまったようだ。それでもギンタが喜んでくれたことが嬉しかった。
「ほら、ギンタももう起きて!朝ですよ~」
今だ爆睡眠中のギンタを叩いてみる。しかし起きない。それならばとギンタが絶対起きるはずのおはようの歌も歌った。
しかしギンタは目を覚まさない。
ミスティアは気がつき始めた。ギンタがどうなったかを。しかし頭で理解できても心が拒絶する。
声を震わせながらも彼女は歌い続けた。のども枯れてむせこんでしまうほど歌った。それでも彼女は歌い続けようとした。
「ミスティア」
声の方向に振り向くと紫が立っていた。
「あっ、おはよう。もうギンタったらねぼすけで」
「ミスティア・・・ギンタの魂は元の世界に還ったの」
その一言でミスティアの心は折れた。
あとはもう涙が止まらなかった。ミスティアは泣いた。力いっぱい泣いた。短い間だったけどギンタがいてくれたことは忘れない。鳥頭の私だけどギンタのことは絶対忘れないと誓いながら泣いた。
「ギンタはあなたにとても感謝していたわ。本当の子供みたいだったって。きっと貴方にとってもギンタはお父さんみたいな存在だったのね」
優しく抱きよせてくれた紫の胸でミスティアは泣き続けた。
ギンタは空を飛んでいる。
下に見えるのはミスティアと紫。そして自分の体。
彼は自分が死んだことを理解した。
しかし彼は幸せだった。
お礼は紫が伝えてくれたようでミスティアに伝わったらしい。
泣かしてしまったことには心が痛むが、同時にここまで自分のことを想っていてくれてたのだと分かり嬉しかった。
(ミスティアは強い子だ。元気にな)
そんな彼の傍らに、金の光と銀の光が飛んできた。
(妻よ、息子よ・・・迎えに来てくれたのだな。帰るか、家族の元に)
金と銀の光に導かれ銀の翼が幻想郷の空の彼方に消えていった。
なんでそう言うかとですね、うちは結構天邪鬼体質でしてレートの低いものと高いものを優先的に読んできまして(全部読むのは諦めた;;)、レートが低いのはことごとくクロス系だったというわけです。
でも、これはゲーム知らなくてもそこそこ分かる内容だった気がしないでもない。
だからクロスだからだめだ!っていう観点ではなく、普通に読んでの感想。
とはいっても、やっぱりゲーム知らないとどうしても楽しめないなぁ……。
内容は、最初はよかったけど、最後のほうは無理に終わらせた感がいなめない。
で、ちょっと分からなかった。
後は誤字
幻想卿→幻想郷(これ間違えると、かなり突っ込まれるってけーねが言ってた
他にもあった気がするけど、読み返す気力がない、脱字だった気がする。
最後に、どうしても違和感をぬぐえない場所が一つ。
さすがに魔理沙がミスティアに様はないw
いや、そもそもあの展開でいきなり様はないな……。
んー、もしかしたら様と呼んでしまうほどの恐怖だったのか?!
と、まあちょっと今回は辛めで申し訳ないけど、こんな感じで。
幻想卿に関してはいい加減飽き飽きしてます
他には永林とか
これはまだ軽いクロスものだけど、クロスものなら問答無用で拒否って人も居るし
あと、文章中にwが入ってるのがかなり気になる(俺だけ?)
wは心情を表わすのに便利だけど、小説だと地の文でしっかり書くようにした方がいいよ
まあ楽しんで書けるのは才能だと思うし、今後に期待してこの点で
シリアスな部分が…
推敲はされましたでしょうか
頼もしいコメントばかりでとても勉強になりました。
誤字などについての指摘などとても助かります。今度から誤字は一発で無くしていきたいです。
しかしというかやはりというかクロスオーバーは風当たり強いですね・・・私も今回は妄想爆発だったので滅茶苦茶な内容になってしまいましたが今後もクロスオーバーには挑戦してみたいです。その前に純粋な東方小説を書いてみたいですけど。
皆様のご指摘を頼りに修正しました。本当にありがとうございます!
こんなの読んだら、もう狩れなくなったよ!
シルバーソル(正式名称ではないが)のほうだったのか
主に紅玉ばっか狙ってたせいで討伐した記憶があまりない
私はモンハンわかんない人なので普通に読んだ感想を。
全体としては東方成分とモンハン成分のバランスはちょうどいいと思いました。みすちーかわいいよ
個人的には前半に比べて後半で物語の展開のペースが早足になったかな、という印象。
私も先日初投稿したばかりなのであまり人のことを言えた立場ではないですが、お互いに頑張っていきましょう。
楽しく読ませていただきました。
・・こんなに書けるのに初投稿なんですね。
あと、ミスティアかわいいよ!
他の作品も楽しみにしています!
しかし、飛竜種が幻想入りしてこの状態だと言うとことは、
古竜種が幻想入りしたらもっと大変なことになりそう。(;^ω^)