Coolier - 新生・東方創想話

似て非なり

2008/03/02 05:41:19
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※早苗+雛です(×じゃないよ)
 キャラ掴みきれてないなぁ・・・(遠い目)
 
 
 
「彼女のことですか?
 優しい方だと思いますよ。
 あと、よく回られてるなぁ・・・とか
 それに―――寂しい方です」
 
 
 
 ~First~
 妖怪の山に位置するここ、守矢神社で私は境内を掃いていた。
「はぁ・・・」
 規則正しく箒の音を立てながら、しかし私の心は曇っていた。
 本来なら、人里で信仰を集めるための活動を行っているはずなのだが、今日は
八坂様が「境内の掃除をしといてほしい」と仰るからここに居る。
 幻想郷に来て日が経ち、ある程度の信仰が集まるようになったとはいえまだま
だ序の口だと思うのだが。
「・・・愚痴っていてもしょうがないか」
 しかし掃除とはいえ、神様に頼まれたこと、これもまた立派な仕事。
 内心で愚痴りながらも、私は丁寧に掃き清めていた。
 山に位置するためか周りは(元々自然が支配している幻想郷内においても)木々
が多く、ほんの少しサボればそれだけで足の踏み場が無くなるほど落ち葉が積も
ってしまう。
 ここに来る妖怪はそんなことを気にしないとは思うが、人間からも信仰を集め
ようと頑張っている以上綺麗にして損は無いはずだ。
「よし、頑張りましょう」
 一度手を止め決意を新たに、私は空を見上げた。
 と、そんな境内に私以外の気配が入り込んだ。
(誰かしら?)
 この山は妖怪の山、そういう意味では訪れるのは妖怪と相場は決まっているの
だが、それにしては気配はおとなしい。
 以前訪れてくれたとある妖怪など、風を巻き上げながら騒々しく訪れてくれた
ものだ。
 だが、気配はそれとは違っていた。
 とりあえず、笑顔を浮かべてその人物と相対することにする。
「こんにちは、守屋神社へようこそ」
 彼女は、目を丸くしていた。
 
 
 
「彼女の能力はご存知ですよね?
 いえ、知らないのかと思いまして。
 ああいや、愚問でしたね」
 
 
 
「どういったご用件で?」
 目の前の彼女、鍵山雛さんに私は尋ねる。
「・・・お参りに来たのよ」
「あ、そうですか。ごゆっくりどうぞ」
 私の言葉に小さく頷きながら、彼女は無愛想に私の横を通り過ぎた。私として
は、どうもそのファッションセンスに目が行ってしまう。
 なんというか、鮮やかだ。
「・・・掃除、しますか」
 いつまでも彼女に気をとられていてはしょうがない。
 とは思いながらも、私の目はどうも彼女に惹きつけられてしまう。
 彼女のことはよく知っている。なんでも、厄を溜めているそうだ。
 彼女がここに来るのも珍しくない、そうだ。八坂様によると、私が居ない日に
限って、彼女は参拝に訪れるそうだ。
(熱心ですね・・・)
 掃き掃除の傍ら、手を合わせ真剣な表情で何やら呟いておられる彼女を見つめな
がら、私はそんな感想を抱いた。
 ここ幻想郷では外の世界ほど神様への信仰が薄れてはいない。だが、わざわざ
こんな山の中の神社にまで参拝に来る人妖はそうそう居ない。
 そんな意味では、彼女は本当に熱心だ。
 そう思いながら掃除をしていると、何時の間にか背後に気配を感じた。
 どうやら参拝を終えられたらしい。
 そのまま後ろを通り過ぎようとするその気配に向き直りながら、私は口を開い
ていた。
「何を―――お祈りになられていたんですか?」
 ピクッと、そんな音を立てるように彼女の動きが止まる。
 しかし私も動きを止めていた。
 いくらここが私のお勤めする神社とはいえ、個々人の祈りの内容など聞いては
巫女失格だ。
 それなのに、私は何故か問いかけていた。
 ・・・痛いほどの沈黙。
 私は箒を片手に、彼女はこちらを振り向きもせずに。
 その沈黙を破ったのは、彼女だった。
「・・・もっと人間が厄にまみれますように、そう祈ったのよ」
 そう答えて、あとは振り返りもせずに彼女は私の視界から消えた。
 何となく・・・何となくだが悲しかった。
 
 
 
「能力故に嫌われる人妖は多々存在します。
 例えばとある妖怪は、様々な虫を統べることから少々嫌われております。
 ・・・益虫だって、統べているんですけどね」
 
 
 
 ~Second~
「早苗、今日は人里に行くんだろう?」
「・・・すみません、今日はその、休暇、を取ってもよろしいでしょうか?」
「休暇? 良いよ良いよ、この頃働き詰めだろうし、一週間ぐらい休んでも構わ
ないわよ。私がなんとかするから」
「す、すみません・・・」
「気にすることないって、ゆっくりお休み」
 
 なんとなくだが、私には予感があった。
 もしかすると巫女のお告げ、なるものかもしれないが。
「あっ・・・」
「こんにちは」
 今日もまた境内に現われたのは、昨日と同じ服装の雛さん。
 ・・・同じ服を何着もクローゼットにしまっていたりするのだろうか。
「今日は・・・人里、行かないの?」
「あ、今日はちょっと休暇です」
「・・・その格好で?」
 言われて自分の服を見てみる。
 いつもと同じ巫女服。
 ・・・私はクローゼット一杯の巫女服なんて持ってないが。
「まぁまぁ良いじゃないですか。今日もお参りですか?」
「・・・そうよ」
 
 昨日と同じように熱心に手を合わせ、何やら呟いておられる。
 その様子を、これまた昨日と同じように私は見ていた。
 そしてまた昨日と同じように彼女は帰ろうとしている。
 昨日と違うのは、私と彼女が連れ添って歩いていること。
「・・・なんでついてくるの?」
「たまたま行く方向が同じだけです」
 我ながら下手な誤魔化し方だと思うが、雛さんが何も言わないので良しとして
おこう。
「そういえば、今日はどのようなお祈りを?」
「昨日と同じよ」
「そうですか・・・」
「そうよ」
 話が、続かない。
 私は目一杯笑顔を浮かべて会話を心がけているのだが、雛さんにその気配が見
受けられない。
 いや、確かに私が勝手についていき勝手に喋りかけているだけなのだが。
 それでも少し寂しい。
「いつまでついてくるの?」
 しまいにはこんなことまで言われてしまった。
「ええと・・・気が済むまで?」
「私の気は済んでるから離れてくれない?」
 この人絶対Sだ、外見だけじゃない。
「まぁいいじゃないですか、楽しいですよ、散歩」
「楽しくなんか・・・」
 そう言いかけて、雛さんは口を閉ざした。
 何となくだが、彼女も本心では楽しんでいるような気がする。
 やはり、予想通りだったか。
「じゃぁ、私はこっちだから」
「へ? そ、そっちですか・・・」
 彼女が指差した方向、木々が生い茂り草が生えいろいろ危なそうな唸り声まで
聴こえる森の中。
「貴方も来る?」
「い、いえ、遠慮しておきます・・・」
 したり顔といった感じで雛さんが微笑んでいる。
 やはり、Sだ。
「じゃぁね」
 振り返りもせず、だが片手を挙げて彼女は森の中へと入っていこうとする。
 私は、その後姿に声をかけていた。
「また、散歩しませんか?」
 何かこけたような音が聴こえたが、その声が届いたと判断して私は神社への道
に戻った。
 気分が良かった。
 途中で階段を踏み外し痛い思いをするまでは。
 
 
 
「ただ、彼女の場合は違います。
 彼女の近くでは人妖問わずで、様々な不幸が訪れる。
 そう、だからこそ“違う”」
 
 
 
 ~Third~
「どうも、今晩は」
「・・・コンバンハ」
 何を考えてか、今日の彼女は陽が落ちてからお参りにこられた。
 「この時間なら居ないと思ったのに・・・」等と呟いておられるのは気のせいとい
うことにしておこう。
 
 そしてまた、私達は“散歩”をする。
 
「・・・というわけなんですよ」
「そうなの、それは大変ね」
 ただ昨日と違うのは、私が話すことに彼女が相槌を打ってくれていること。
 これは好感度上昇フラグでも立てたのだろうか。
「えぇ、信仰を集めるためには色々と苦労がありまして」
「厄を集めるのと、どっちが大変かしら」
「さぁどうでしょう・・・」
 ほんの少しだが、打ち解けてくれたようだ。
 何となく気分が良い。
「・・・雛さん」
「なにかしら?」
「私と、お友達になってくれませんか?」
 だから自然にその言葉が出てきてくれた。
「・・・・・・・・・へ?」
 いつもの彼女とは違うそのリアクションに私は内心微笑ましくなる。
 うん、こういった表情も彼女に似合っている。
「良いじゃないですか、どうせお互い山の中、色々とご近所ですし」
「で、でも私の―――」
「・・・嫌なんですか?」
 必殺技、上目遣い!
「ぐっ・・・」
 こうかは ばつぐんだ!
「・・・考えとくわ、じゃあ私はこっちだから」
「って雛さん!?」
 返答を待っていたら、あっさりと森の中へと逃げ込まれてしまった。
 うぅむ、期待していいのだろうか。
 せっかく、友達が増えると思ったのだが。
「・・・ま、いいか」
 見上げた夜の空は、星が妙に明るかった。
 
 はずなのに、何故か数秒後私はずぶ濡れになっていた。
 
「な、なんで急に雨が降るんですか!」
 そう叫んでみてもしょうがない。
 まさにバケツをひっくり返したような雨が私に襲い掛かる。
 巫女服も何もかもあっというまにぬれねずみだ。
「ああもう!」
 大急ぎで帰る私の脳裏に、とある天狗の言葉が思い浮かんだ。
 
 
 
「能力を持つが故に貴方は疎まれていた。
 でも、こちらではそんなことはない。貴方は普通なんです。
 でも、彼女は違う。彼女の能力はこちらでもまた疎まれるもの。
 だから、貴方と彼女は似ているんです」
 
 
 
 ~Final~
「風邪、引いちゃったみたいね」
「・・・どうしようか」
「卵酒でも飲ませてみる?」
「・・・結局あんたは酒かい」
 
 目に映る天井が、揺らいでいる。
 ああそうだ、私は昨日ずぶ濡れになりながら帰ってきたんだ。
 そしてあっけなく、風邪を引いた。
「疲れでも残ってたんでしょうか・・・」
 自分の額に手を当てながら考えてみる。
 その一動作がどうにももどかしい。これは本格的に風邪を引いたようだ。
「・・・寝てれば、治るでしょう」
 瞼を閉じ、眠りへと意識が誘われるのを待つ。
 しかし、何故昨日は急に雨が降ってきたのだろう。
 それまで雲ひとつ無かったはずなのに。
 そう思いながら遠のいていく意識の中、私は答えを見出していた。
 
 彼女の近くでは人妖問わずで、様々な不幸が訪れる。
 
「ごめんなさいね、私のせいで」
 誰だろうか。
「昨日の言葉、嬉しかった」
 私は、起きているのだろうか。
「でも、私の近くに貴方が居ちゃ駄目」
 それとも、まだ夢を見ているのだろうか。
「本当なら、今ここに私が居てはいけない」
 なんだろう、胸が苦しい。
「でも、これだけはさせて」
 額に、冷たい何かが載せられる。
「・・・さようなら」
 
 
 視界に移った天井は、揺らいでいなかった。
「あれ?」
 ほんの少し楽になったのかもしれない。私はそう思いながら上体を起こす。
 額からおちる、手ぬぐい。
「・・・これ」
 まだ冷たい、その手ぬぐいを見ながら私は―――
 
「八坂様!」
「ぶっ! ど、どうしたんだい早苗、寝てなくても―――」
「そんなことより! ついさっき誰か来ませんでしたか!?」
「あ、ああ来てたよ」
「今どちらに!?」
「もうお帰りに、って早苗!」
 
 駆け出す、駆ける、駆け抜ける。
 靴を履く暇すら惜しい。私は走り出す。
 ああなんて私は馬鹿なんだろう、彼女の悩みを知っていながら。
 私はただ、友達になりたかっただけだ。
 自分と似ていた、それでいて違っていた彼女と。
「奇跡でもなんでもいいから!」
 ああ、なんて私は無力なんだろう。
「私は、私は!」
 女の子一人、泣かせてしまうなんて。
 
 幸いなことに彼女の姿はすぐに見つかった。
 何でだろう、見慣れたはずの後姿が妙に小さく見える。
 そんな背中に、私は勢いを殺しきれずに飛びこんだ。
「えっ!」
 そんな驚きの声が耳に飛び込んでくるが、それでも私は構わない。
 だるい体を叱咤しながら、両手を彼女に回す。
「あ、貴方寝てなくちゃ―――」
「雛さんの・・・せいじゃ、ないです・・・」
 頭に霞がかかっているようだ。
「そ、そんなことどうでもいいから―――」
「どうで、もよくないです・・・雛さんのせいじゃないんです、だから―――」
 それでも、これだけは、言わなくてはいけない。
「だから、泣か、ないで・・・くだ」
 暗転
 
 
 ~Future~
「おはようございます」
「・・・おはよう」
「今日もお参りですか?」
「ええそうよ」
 
「今日も、厄が集まるように願ったんですか?」
「・・・そんなこと、願ったことはないわ」
「では、なんと?」
「人間が、幸せになるように、よ」
 
「その“人間”には、私も入っているんですか?」
「・・・・・・さぁ」
「ああ目ぇ逸らした!」
「知らない知らない知らない!」
 
 
 
 ~Another~
「彼女のことですか?
 優しい方だと思いますよ。
 あと、よく回られてるなぁ・・・とか。
 それに―――今ではあまり寂しくないようですね。」
前作・前々作に評価・コメントをしてくださった方、ありがとうございます。
今回は、前作の後書きどおり早苗+雛という訳の分からない組み合わせ。
 
余談
ある意味においては早苗と雛は似ているなぁ、と思ったことから出来上がったネタですが、
でも結局二人は違う。似ているけど違う。
 
 
次は美鈴無敵説主張SSでも書いてみるか。
RYO
[email protected]
http://book.geocities.jp/kanadesimono/ryoseisakuzyo-iriguti.html
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コメント



0.1210簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
早苗と雛ってコンビも中々いいですね。なんとなく読んでて「たこす」氏の厄神様の通り道の歌詞が頭に浮かびました。
あと各章の手前にある台詞の使い方が上手だなと思いました。
次回作の美鈴SSも期待して待ってます。
2.90名前が無い程度の能力削除
早苗+雛…………?いやどう見ても雛さんトゥル~エンドルート、若しくは早苗さん幻想郷ハーレムルートにしか想えませんね。早苗さんは天然タラシだと信じています。
次の美鈴SSも見て見たいっす。

3.100名前が無い程度の能力削除
とてもよかったです。早苗+雛でどんな風になるかと思えば、こんなに素敵な話になるとは
次回作も期待しています
10.80三文字削除
章の手前のセリフは文ちゃんと早苗さんの会話ですかね?
それはそうと、上目遣いを使えるだなんて早苗恐ろしい子っ!
11.80SAM削除
早苗×雛に見えてしまう私は反省すべきでしょうか?
12.100名前が無い程度の能力削除
この娘ら可愛いんだけど、どうしてくれるんですか?
×と+の境界が自分には理解できないっす。紫様、境界いじらないでください。
13.90bobu削除
これはいい早苗+雛ですね。
こんな良いものを見せられたら次回作にも期待せざるを得ないw
ありがとうございました
25.70名前が無い程度の能力削除
これは面白い。早苗さんと雛の意外な共通点。もう共通じゃないけど。