「私たちは演奏する。
「私たちは演奏するわ。
「私たちは演奏するよ。
「私たちは演奏する。
事象に際し、普く動作を捨て置いて、ただ奏でるために奏でる。
「私たちは演奏するわ。
現象に関し、全き反応を置き忘れ、ただ唄うばかりに唄う。
「私たちは演奏するよ。
四象に即し、如何なる感情も忘れ去り、ただ聴こえるだけを聴かせる。
「昔のことは覚えてないの。
澄み切ったこの幻想の郷に、ずっとずっと前、その界面に触れて、
そのせいで全部を忘れたのかも。
「今はとっても楽しいわ。
毎日毎日、いつでもどこでも奏で行く、不気味な騒霊音楽隊。
常世の霊も御用達よ。
「未来のことは考えない。
今の積み重ねを示すそれに対して、今を積み重ねない私たちが、
それに何かを期待することが間違っているのだから。
「「「だって、世界は音で出来ている
「はじめに聞いたその音を、綺麗に響くその樂を、
愛する人(オト)に、変えるため。
「流れて流れ、海馬を離れたその思ヒ出を、
深く優しく孵らせるため。
「振り返らずに、遠き彼の世の友たちを、
永らく後に、忘れ去るため。
「聞こし召すのは、はじまりのうた。
長き道行き、共に歩く何よりも強い意志(フォルテシシモ)。
「聞こし召すのは、かはたれのうた。
果てなく遠き、宝物への重なる響き(ヴィブラート)。
「聞こし召すのは、おわかれのうた。
死してや見えず、もう届かない収束の寂しさ(デクレッシェンド)
「「「だって、世界は樂で出来ている
「姉さんたちは、わかってるかな?
渡れぬ川を、渡る方法。私以外が、渡ればいい。
「二人はずっと、知ってるのかしら?
前を見ないで、歩く方法。後ろを向いて、走ればいい。
「妹たちは、気付いてるのか?
留まる事を、知る方法。真正面に、立て札がある。
「私は私。何もしてない。皆が勝手に、楽させる。
「私はどこか。いつも聴こえる。楽しかれとは、私の悲しみ。
「いつでも私。それ以外なく。哀しむならば、皆で泣こう。
「「「だって、世界は歌で出来ている
「大事な物があるのなら、私がそれを守り抜く。
正道だけが、私の道。
「懐郷病にかかったら、私が故郷(さと)を呼び寄せるよ。
邪道だけが、私の道。
「失せ物探しをするのなら、私が他に用事をあげるわ。
横道だけが、私の道。
「三人いればなんとやら。悩みは全て解くまで。
私に出来なければ、妹たちへ。
「定めの女神も三人だって。私は断つのが楽でいい。
私にできなきゃ、姉さんたちへ。
「三色あれば見分けはつかない。私はぼうっと吹くけれど。
私に無理なら、二人がいるわ。
「「「だって、世界は劇で出来ている
「私の呼吸、存在を証明する何より物質的な波動。
生憎そんなモノは持ち合わせていないけれど、
指を揃えて“吹き”さえすれば、彩なる音色が空を舞う。
「私の指先、存在を証明する何より物質的な使徒。
生憎そんなモノは持ってないけど、
感じるままに“弾き”さえすれば、輝く旋律が宙を飛ぶ。
「私の首筋、存在を証明する何より物質的な脈動。
生憎そんなモノの持ち合わせは無いが、
背筋を伸ばして“惹き”さえすれば、妙なる調べが界に満ちる。
「私は騒霊、荒御霊。白の浸透、二人を繋ぐ、落ち着かぬレガート。
狂騒幻白、ホワイトホワイトラプソディ。虹の外を縁取る白き雲。
「私は騒霊、荒御霊。赤の誘発、二人を始める、小悪魔のカデンツァ。
騒操幻赤、ピアニィレッドファンファーレ。虹の端で代表する赤の芒。
「私は騒霊、荒御霊。黒の衝撃、二人を統べる、静かなるソレンネ。
騒覇幻黒、ブラックライクライフマーチ。虹を知らず夢見る夜の黒。
「「「私たちは騒霊、荒御霊。
虹の軌跡、三者が奏でる、楽しくも哀しいピアノフォルテ&フォルテピアノ。
騒樂天河、プリズムリバーオーケストラ。星の七色すら知る虹の虹。
何も知らぬ物にして、全てを唄う者。
普遍を奏でるままに、あらゆる何かを忘却する幻想の虹色。
彼方の空逝く、“精神の在るを見世るモノ(サーカスレヴァリエ)”。
「私たちは三人で一人だ。形態を支える柱はいつも三つと決まっている。
「でも均衡を保つまでも無く、天板は滅茶苦茶のコナゴナ。一つ外れても構いやしないよ。
「どうして板は壊れたのかしら。互いの位置を見失ったから?相対する二を忘れたから?
「おそらくは、いいえおそらくは。
三人ですら、足りなかったのよ。
「四が足りないのかな。支柱を支える、四番目の柱が?
でもでもそんなの、私知らない。支点の位置も、覚えてない。
「あったかもしれないし、無かったかもしれない。
何せ私たちは全てを忘れる、忘却の旋律をいつだって聴かせてきた。
「「「誰かに聴かせたその曲が、私たちに聞こえない道理は無い。
開始を序曲を原初を、趨勢を豊饒を没落を、破滅を終曲を閉塞を、
どこかで聴いてる、いつかで聴いてる、他ならぬあなたたちに謳って聴かせた。
「それが壊れた板を思わせる?
「あるいは板が、そもそもないか。
「どこかに忘れてきたのかも。
「忘れる?「忘れる?「忘れる?
「「「忘れる、って。何を。
「そんなことより謡おうよ。
空の果てから、海の底まで、響きて聞かす錚々草紙(いくさがたり)。
「きっととっても楽しいわ。
千里を渡り、万世を貫き、全霊に捧ぐ花鳥風月(つれづれがたり)。
「誰が聞いても心が躍る。
万魔の祭典、百鬼の宴会、騒ぎに乗じる幽霊楽団(ちんどんや)。
「「「後ろで歌って支えてあげる。宴の席を盛り上げて。
願いを叶える素敵な楽隊。奇跡は幻、でもいいじゃない。
だってだって、世界はイマで、
あなたは世界で出来ているから」
あなたは世界を生きているから」
謳って舞うのは、あなただから」
「「「さあ謳って、悲劇と呼ぶにはあまりに楽しい、
喜劇と呼ぶにはあまりに哀しい、そんな素敵な、人生という歌。
「「「そして聞かせて、その歌を。そんな素敵な、生命という詩。
「 「 「 私たちには、歌えないから 」 」 」
Nomore life. Nobody knows.
They sings like a crying child.
彼女たち3人を作りだしたのが正にその4人目なのに。
それでも最後の
「 「 「 私たちには、歌えないから 」 」 」
が記憶に無くても4女の事(歌担当?)を覚えている(と解釈しました)
のが4人の姉妹の絆って物でしょうか?
とてもいい話だと思います。
できれば全キャラでやって欲しいです(ぉ