「幽々子さま。」
……返事は無い。
「幽々子さま~」
もう一度呼ぶ。しかし、やはり返事は無い。
「幽々子さま、こんなところで寝ていると身体に悪いですよ。」
さらに呼ぶも、応答はない。
「え?ゆ、幽々子さま?」
その声にちょっと焦りが見え始めた。
正面に横たわる幽々子は、相変わらず何の反応も見せない。
妖夢は幽々子の手を取る。親指を手首に当てて、何かの反応を探っている。
「みゃ、脈が無い!」
そして一つの結論を弾き出す。
「これはもしかして一大事?」
「こういうときは……現場で応急処置をする人と、助けを呼びに行く人が必要……」
微妙に冷静を装う妖夢。
「でも私は一人。まぁ半人で半霊だけど。」
こういうときに中途半端に役に立つ、幽霊の半身。
「まぁ幽霊でもいいか。」
自分の半身たる半幽霊に助けを呼ばせる。いや、正確にはこれも妖夢なので、使役的な言い方は正しくないのだが、まぁ便宜上。
「で、応急処置……確かまずは仰向けに寝かせて、衣服を緩めて……」
着物の帯を緩める。拘束から解放された着物は幽々子の体から離れようとし、結果その身体が……肌が露出する。
「みょんっ?」
慌てて着物を着付け直す。その妖夢の頬は真っ赤に染まっていた。
「で、口を開いて物が詰まってないか確認し……失礼します。」
幽々子の口をやや強引に開く。特に物が詰まっている形跡は無い。喉のほうまでじっくり眺めるが、鳥の小骨一本すら確認できない。
「気道を確保したら、人工呼吸(*1)……」
ぼんっ。
熱を帯びた顔の赤みが限界を超えて湯気を立てる。妖夢の表情は、そんな可笑しな表現がまさにぴったりと言う状態である。
「しかしこの魂魄 妖夢が付き人の時に西行寺家に一大事があっては末代までの恥!ここは断腸の思いで!」
わざと大きな声で自分を奮い立たせる。ちなみに、『断腸の思い』とはここで使う言葉ではない。
そして口を近づけたその時。
ぷっ、と小さな音を立て、幽々子の口から一気に吐き出される息。
「???」
頬を真っ赤に染めたまま近づけた顔がそれを感じる。びっくりした妖夢は咄嗟に飛びのいてしまう。
幽々子の様子を疑う。本当にわずかなう音とともに、喉元が少し動いているのが分かった。
「ゆゆゅゆ幽々子さま、いぃい意識はおぁありなのですね?ななななな何をしてるんですかっ!」
刹那の沈黙。
直後、幽々子がその沈黙を破った。
「っぷ、ははは、ぷははは~」
噴き出しながら笑い転げる。先ほど緩めた帯のせいで、再び彼女の肌が見えそうになる。傍らには、その様子をただあっけに取られて眺めているだけの妖夢。
数分後。流石に笑いつかれた幽々子。
「あーやっぱり、退屈なときは妖夢で遊ぶに限るわ。」
一方、茫然自失中の妖夢。目の焦点が今だ定まっていない。
着物を着付けなおしながら幽々子は続ける。
「まったく、これだから庭師は鈍感だって、いつもぼろくそに言われるのよ。」
そこでやっと自我を取り戻した妖夢は、『いつもぼろくそに言っているのは幽々子さまです』と思ったが口に出さなかった。
「で、幽々子さまは何をしていたんですか。」
「死体ごっこ。」
「そんな変な遊び、どこで覚えたんですか……」
呆れ顔の妖夢。
「妖夢の反応が面白すぎて、思わず笑ってしまったじゃない。」
「それは誉めてるんじゃないですよね。」
「もちろんぼろくそに言ってるわ。」
「大体、幽霊に脈があるわけ無いじゃない。」
至極正論である。反論できない。
「まったく妖夢は素直すぎなのよ。反応と言い表情といい。見ていて面白いわ。」
「それも誉めてるんじゃないですよね。」
少々投げ槍な妖夢。
「いやいや妖夢。」
その言葉の直後、それまで笑っていた幽々子の表情が少し引き締まった。
「だからこそ私の好きな妖夢なんだけどね。」
再び頬を染める妖夢。
「ほら、すぐそう素直に顔に出る、おもしろいわ~」
再びニヤける幽々子。
「だからってからかわないでくださいよ~」
まぁ今日の白玉楼も割と平和な一日だったということで。
(*1)実際の場合は、その前に呼吸があるか確認しましょう。呼吸がある場合はそのまま様子見で。
……返事は無い。
「幽々子さま~」
もう一度呼ぶ。しかし、やはり返事は無い。
「幽々子さま、こんなところで寝ていると身体に悪いですよ。」
さらに呼ぶも、応答はない。
「え?ゆ、幽々子さま?」
その声にちょっと焦りが見え始めた。
正面に横たわる幽々子は、相変わらず何の反応も見せない。
妖夢は幽々子の手を取る。親指を手首に当てて、何かの反応を探っている。
「みゃ、脈が無い!」
そして一つの結論を弾き出す。
「これはもしかして一大事?」
「こういうときは……現場で応急処置をする人と、助けを呼びに行く人が必要……」
微妙に冷静を装う妖夢。
「でも私は一人。まぁ半人で半霊だけど。」
こういうときに中途半端に役に立つ、幽霊の半身。
「まぁ幽霊でもいいか。」
自分の半身たる半幽霊に助けを呼ばせる。いや、正確にはこれも妖夢なので、使役的な言い方は正しくないのだが、まぁ便宜上。
「で、応急処置……確かまずは仰向けに寝かせて、衣服を緩めて……」
着物の帯を緩める。拘束から解放された着物は幽々子の体から離れようとし、結果その身体が……肌が露出する。
「みょんっ?」
慌てて着物を着付け直す。その妖夢の頬は真っ赤に染まっていた。
「で、口を開いて物が詰まってないか確認し……失礼します。」
幽々子の口をやや強引に開く。特に物が詰まっている形跡は無い。喉のほうまでじっくり眺めるが、鳥の小骨一本すら確認できない。
「気道を確保したら、人工呼吸(*1)……」
ぼんっ。
熱を帯びた顔の赤みが限界を超えて湯気を立てる。妖夢の表情は、そんな可笑しな表現がまさにぴったりと言う状態である。
「しかしこの魂魄 妖夢が付き人の時に西行寺家に一大事があっては末代までの恥!ここは断腸の思いで!」
わざと大きな声で自分を奮い立たせる。ちなみに、『断腸の思い』とはここで使う言葉ではない。
そして口を近づけたその時。
ぷっ、と小さな音を立て、幽々子の口から一気に吐き出される息。
「???」
頬を真っ赤に染めたまま近づけた顔がそれを感じる。びっくりした妖夢は咄嗟に飛びのいてしまう。
幽々子の様子を疑う。本当にわずかなう音とともに、喉元が少し動いているのが分かった。
「ゆゆゅゆ幽々子さま、いぃい意識はおぁありなのですね?ななななな何をしてるんですかっ!」
刹那の沈黙。
直後、幽々子がその沈黙を破った。
「っぷ、ははは、ぷははは~」
噴き出しながら笑い転げる。先ほど緩めた帯のせいで、再び彼女の肌が見えそうになる。傍らには、その様子をただあっけに取られて眺めているだけの妖夢。
数分後。流石に笑いつかれた幽々子。
「あーやっぱり、退屈なときは妖夢で遊ぶに限るわ。」
一方、茫然自失中の妖夢。目の焦点が今だ定まっていない。
着物を着付けなおしながら幽々子は続ける。
「まったく、これだから庭師は鈍感だって、いつもぼろくそに言われるのよ。」
そこでやっと自我を取り戻した妖夢は、『いつもぼろくそに言っているのは幽々子さまです』と思ったが口に出さなかった。
「で、幽々子さまは何をしていたんですか。」
「死体ごっこ。」
「そんな変な遊び、どこで覚えたんですか……」
呆れ顔の妖夢。
「妖夢の反応が面白すぎて、思わず笑ってしまったじゃない。」
「それは誉めてるんじゃないですよね。」
「もちろんぼろくそに言ってるわ。」
「大体、幽霊に脈があるわけ無いじゃない。」
至極正論である。反論できない。
「まったく妖夢は素直すぎなのよ。反応と言い表情といい。見ていて面白いわ。」
「それも誉めてるんじゃないですよね。」
少々投げ槍な妖夢。
「いやいや妖夢。」
その言葉の直後、それまで笑っていた幽々子の表情が少し引き締まった。
「だからこそ私の好きな妖夢なんだけどね。」
再び頬を染める妖夢。
「ほら、すぐそう素直に顔に出る、おもしろいわ~」
再びニヤける幽々子。
「だからってからかわないでくださいよ~」
まぁ今日の白玉楼も割と平和な一日だったということで。
(*1)実際の場合は、その前に呼吸があるか確認しましょう。呼吸がある場合はそのまま様子見で。
にしてもこの調子じゃいずれできてしまうんじゃないんですかこの二人。妖夢は多分幼いので犯罪ですよゆゆこさま?
…とか言いながら、そんな妖夢SSを読んでニヤニヤしまくる自分(笑)。
>こんなところで寝ていると身体に悪いですよ
ゆゆ様は幽霊だから身体に悪いも何もない!でも、ちゃんと心配する妖夢は素敵!
そりゃゆゆ様も惚れ直すわ(爆ぉ