「楽園を放逐された人類にとっての最大の希望が何かわかるかしら。
それは『楽園を放逐された絶望』に勝る絶望が、
楽園の外には正しく絶無である、ということよ。
そして、人間はどんな絶望的な状況であろうとも、
どんなに絶命的な状態であろうとも、
どんなに絶対的な状勢であろうとも、
その最低の現状に対して『慣れる』ことができ、
その最悪の現状をすら『馴らす』ことができる生き物。
「人間は苦境に屈しない力を皆持っているわ。
けど、それ以外の動物はそんなモノ持ってないの。
何故だかわかるかしら。
苦しいと思うことが無いから?
そう、そうかもしれない。
でも私はこう思う。
人間以外の生き物は苦境に至ることが無いから、だと。
生き物は全て、苦境を回避する力を持っている。
その力を、人間は本能と呼ぶ。
それこそが生き物が元々持っている「本当の能力」、という意味ね。
「人間だって、もちろん本能を持った生き物よ。
でも、さっき言った苦境に屈しない力を持っている人間は、
本能とそれを二つ同時に使いこなすことは出来ない。
原始の力と新生の力を二つともに使いおおせるのは、
本当に限られた極一部の突破存在だけ。
「それ、即ち人間が理性と呼ぶ力。「理の性能」。
これはね、本来人間が持つべき力じゃないの。
私たちのような生命存在、
分類としては幻想類超越科に属する幻想種が持つ、特別な力。
私たちがこの力を存在自体で行使しているところを、
人間は脳という体内の一器官に余っている三分の一程度の空白で行使する。
「最初の人間は、本能だけを使ってその生命存在を終端まで続いていけばよかったのよ。
なのに、幻想種のためにだけ生っていた楽園の果実を、
よせばいいのに、その本能を生かしていたがゆえに齧ってしまった。
さらに悪いことに、そのまま食べ尽くしていれば、
あるいは新しい幻想種の仲間入りが出来たかもしれなかったところが、
三口ほど齧った所でそれが楽園の主たちに知られてしまったせいで、
とても中途半端な生き物になってしまった。
「だから人間は皆、半分人間で半分妖怪の、半幻想の存在なのよ。
人間の部分と幻想の部分がごちゃまぜになっているのが、普通の人間。
ああ、言わなくてもわかるわ。それは余談になるから手短に。
あなたも私も、それがくっきりと分かれて顕在している生命存在を知っているわね。
そう、あの子の場合は、それが故に幻想種の仲間入りを果たしている。
あの子の人間は確かに人間だし、あの子の幻想は朧に幻想。
その二つのどちらかが欠けてもあの子ではなくなる、特異な上に奇妙な突破存在ね。
と、話を戻すけど、いいかしら?
「人間だけが、この地球上のどこにでも行けて、どこでも生きることができる。
人間だけが、まるで意味のない行動をとることができる。
人間だけが―――。
人間だけができることは、他の生き物にしかできないことと比べて、
あまりにも多すぎるのよ。それを不思議に思ったことがあるでしょう?
「人間なんて生き物がこの地球上に存在していることの不思議、
自分という生命存在の意味について、
その存在を始めてから一度も考えなかった人間なんていないはず。
不思議に決まってる、不自然で当然、不条理でない筈が無いわ。
だって、人間は幻想の生き物なのだから。
「神からも、悪魔からも、天使からも、他の生き物からも、
あらゆる生命存在から「できそこない」と侮蔑されるのは、
その存在の成り立ちから既に中途半端だから。
「人間は、本能という力の発現を制御してまで理性という力を使う。
その制御にすら理性という力を使う。
そんなに理性という力が眩しいのかしら。
そんなに本能という力が憎いのかしら。
そんなに、そんなに、自分は人間である、ということを自覚していたいのかしら。
自分が他の誰でもない、唯一無二の存在であることに価値を見出して、
『自分こそ自分である』ことに固執する自分に満足する。
それをプライド? 馬鹿馬鹿しい、下らない、凄絶なまでに幼稚で、小憎らしくすらあるわ。
そんなだから、私たちは人間という生命を己のエサとしか認識しないのよ。
その身を構成するパーツの数京分の一にでも残留している、禁断の林檎の破片を食べるために、ね。
「確かに、人間みたいな中途半端な生命、
この地球という生命存在世界内部のどこを探したって他に見つかりはしないわね。
だって他の動物は、楽園に果実があるということすら知らなかったのだから。
悪魔の誘いに乗った、なんてのは、悪魔に教えを乞うた、の間違い。
人間という生命存在は、その本能、つまり存在の根底から間違っていたの。
だから苦境を回避する力が働かずに禁断の林檎を口にし、挙句楽園を追い出された。
私たちがよく「人間なんて」、と口々に言うのは、そういうことが原因。
「人間が幻想種であることは、他ならぬ人間自身だって気付いているはずね。
人間は幻想以下の全ての想像をもって、
ありとあらゆる概念をおよそ無限に生み出すことができる生き物なのだから。
それに人間は、何らかの手段でもって人間でなくなれば、即座に幻想種になれる生き物。
死ねば幽霊に、獣化すれば獣人に、魔道に堕ちれば魔人に。
獅子と蛇と鷲が混ざり合ってもただの合成種だけれど、人間なら幻想種になれるの。
「逆に人間以外の生き物も、人化すれば幻想種になる。
妖怪の多くはこのパターンだと思うわ。
それどころか、生命存在でなくとも、人間の形さえ取れば幻想化する。
本の妖怪、鈴の妖怪なんて物質から、火や、騒霊なんていう現象ですら、幻想種の仲間入りをする。
挙句の果てに人間が生み出した概念から生まれる幻想種なんてのもいるのだから、始末に負えない。
人間というのは、在るだけで世界を狂わせる、最悪の生命存在なのよ。
世界が狂うのは、人間がまるで世界そのものであるかのような振る舞いをするから。
眼前にある自分でない自分の存在を許容できる存在も、この世には人間しかいないのよ。
そして人間は、本当に自分の内部に自分だけの世界をいつでも持っている・・・。
「・・・大分、話がずれてしまったけれど。ようやく戻ってこれたわね。
そう、人間はみな、自分のための世界を持っている。
でも、殆どの人間には理性と本能の二力を扱いきれないが故に、
それは酷く荒涼とした歪で自分勝手な世界になる。
果実を取り込んだために作ることができるようになった、偽りの世界(フォルスストロベリー)。
「でも、そうでない人間もいる。
理性と本能の二つの力を使いこなす、数少ない人類の突破存在。
決して苦境には至らず、例え至ったとして確実にそこから抜け出すことができる逸脱者。
二力を扱い、自分のための世界を完璧に作り出す。
「完全な世界(トップ・オブ・ザ・ワールド)。完全な世界(パーフェクトスクウェア)。
完全な世界(アドミティドジェミニ)。完全な世界(オーバーロード)。
完全な世界(ライフイズビューティフル)。完全な世界(ミステイクマーダー)。
「そう、それは、あなたのような人を指すのよ。
完全で瀟洒な従者、『初めから終わりまでの完璧(ディスランブル)』。時空走狗。
私から見れば、あなたは“運命に唾吐く(ふりむきつづける)者”。
ありえざる“十六時間目”すら作り出す時空調停者。空色の奇術師。
「予想を欺く期待を欺く欺瞞」。咲かない花を咲かせ得る夜。英雄式(ウィナーズイクエイション)。
「あなたは人間。
確かに、間違いなく、純然たる人間。
神の移し身の究極形の、原初における至高型でありながら、
あなたは今、疑いなく幻想種の仲間入りをしている。
この幻想の郷に入り込んで、閉ざされた生命存在世界による排斥を受けなかった。
幻想の外にあって幻想種であり続けた、ただ一人の“渡世人”。
世のあらゆる幻想がこの郷に追いやられる中、
最後まで外の世にいた突破存在。
「そんなあなただから、先の物語の担い手になれたのね。
語り部の一人になれるのは、人間でありながら人間でないものだけだった。
あの漂泊の巫女にせよ、求天の魔女にせよ、
冥界に在った含幻の剣客にせよ、誘命の屍姫にせよ。
「巫女は人にしては執着を失い、魔女は人にしては好奇の果てる事無く、
剣客は人にしては頑迷に過ぎ、屍姫は人にしては人外を愛した。
ここに割って入って暴れて騒いで混ざって線引き狂ったように咲き誇るのは、
それができるのは、ここにあっては正しくあなた一人だけだった、ということ。
いえ、逆か。紅針六芒であるあなたが時を刻まなければ、あの物語は成り立たなかったのね。
「何が言いたいのか、って?
そうね。話が長くなりすぎたか。私はね、咲夜。
あなたに一つ、質問をするのを忘れていたのよ。
あなたの土産話が楽しくて、すっかりそれに魅せられて、
これだけは聞いておかなくちゃ、と思っていたことを忘れていた。
「咲夜。質問、ね。
霙の吹雪く春、夏近き世にも寒々しい春。
私が許した暇の間。
無何有の山々で、幻想の境で、租界の夜で、たなびく雲上で、
天衝く長き階で、朱に染まった限られた春の苑で、
あなたはあなたの為に、一片残らず完璧に無欠に完全に無比に疾駆し、
妖々(あやかしども)の見る夢が、どんなに不可解で理不尽で傍若無人であるかを、
ただの一つの取り零しも無く余す所無く、見てきて。
「楽しかった、かしら?」
「ええ、レミリア様。
あのお暇の日は、最高に最低に最悪に最善の一日でしたよ。
本当、とっても楽しかった。二度と、あんな楽しいのは御免ですけど、
お望みとあらばいくらでも。
時を進めて、戻して、止めて、留めて、止まって、
飛ばして、壊して、ずらして、曲げて、あの狂騒の一部始終を、
ご覧に入れて差し上げます」
「そう。そうね。あなたがそう答える運命を、私は知っていたわ。
だから私は次にこう言うのよ、咲夜」
「ふふ。お嬢様。それ、私も言うのでしょう?」
「「次があったら、今度は一緒に」」
There’s the Border Land that had closed your mind very early in life.
It has been continued.
それは『楽園を放逐された絶望』に勝る絶望が、
楽園の外には正しく絶無である、ということよ。
そして、人間はどんな絶望的な状況であろうとも、
どんなに絶命的な状態であろうとも、
どんなに絶対的な状勢であろうとも、
その最低の現状に対して『慣れる』ことができ、
その最悪の現状をすら『馴らす』ことができる生き物。
「人間は苦境に屈しない力を皆持っているわ。
けど、それ以外の動物はそんなモノ持ってないの。
何故だかわかるかしら。
苦しいと思うことが無いから?
そう、そうかもしれない。
でも私はこう思う。
人間以外の生き物は苦境に至ることが無いから、だと。
生き物は全て、苦境を回避する力を持っている。
その力を、人間は本能と呼ぶ。
それこそが生き物が元々持っている「本当の能力」、という意味ね。
「人間だって、もちろん本能を持った生き物よ。
でも、さっき言った苦境に屈しない力を持っている人間は、
本能とそれを二つ同時に使いこなすことは出来ない。
原始の力と新生の力を二つともに使いおおせるのは、
本当に限られた極一部の突破存在だけ。
「それ、即ち人間が理性と呼ぶ力。「理の性能」。
これはね、本来人間が持つべき力じゃないの。
私たちのような生命存在、
分類としては幻想類超越科に属する幻想種が持つ、特別な力。
私たちがこの力を存在自体で行使しているところを、
人間は脳という体内の一器官に余っている三分の一程度の空白で行使する。
「最初の人間は、本能だけを使ってその生命存在を終端まで続いていけばよかったのよ。
なのに、幻想種のためにだけ生っていた楽園の果実を、
よせばいいのに、その本能を生かしていたがゆえに齧ってしまった。
さらに悪いことに、そのまま食べ尽くしていれば、
あるいは新しい幻想種の仲間入りが出来たかもしれなかったところが、
三口ほど齧った所でそれが楽園の主たちに知られてしまったせいで、
とても中途半端な生き物になってしまった。
「だから人間は皆、半分人間で半分妖怪の、半幻想の存在なのよ。
人間の部分と幻想の部分がごちゃまぜになっているのが、普通の人間。
ああ、言わなくてもわかるわ。それは余談になるから手短に。
あなたも私も、それがくっきりと分かれて顕在している生命存在を知っているわね。
そう、あの子の場合は、それが故に幻想種の仲間入りを果たしている。
あの子の人間は確かに人間だし、あの子の幻想は朧に幻想。
その二つのどちらかが欠けてもあの子ではなくなる、特異な上に奇妙な突破存在ね。
と、話を戻すけど、いいかしら?
「人間だけが、この地球上のどこにでも行けて、どこでも生きることができる。
人間だけが、まるで意味のない行動をとることができる。
人間だけが―――。
人間だけができることは、他の生き物にしかできないことと比べて、
あまりにも多すぎるのよ。それを不思議に思ったことがあるでしょう?
「人間なんて生き物がこの地球上に存在していることの不思議、
自分という生命存在の意味について、
その存在を始めてから一度も考えなかった人間なんていないはず。
不思議に決まってる、不自然で当然、不条理でない筈が無いわ。
だって、人間は幻想の生き物なのだから。
「神からも、悪魔からも、天使からも、他の生き物からも、
あらゆる生命存在から「できそこない」と侮蔑されるのは、
その存在の成り立ちから既に中途半端だから。
「人間は、本能という力の発現を制御してまで理性という力を使う。
その制御にすら理性という力を使う。
そんなに理性という力が眩しいのかしら。
そんなに本能という力が憎いのかしら。
そんなに、そんなに、自分は人間である、ということを自覚していたいのかしら。
自分が他の誰でもない、唯一無二の存在であることに価値を見出して、
『自分こそ自分である』ことに固執する自分に満足する。
それをプライド? 馬鹿馬鹿しい、下らない、凄絶なまでに幼稚で、小憎らしくすらあるわ。
そんなだから、私たちは人間という生命を己のエサとしか認識しないのよ。
その身を構成するパーツの数京分の一にでも残留している、禁断の林檎の破片を食べるために、ね。
「確かに、人間みたいな中途半端な生命、
この地球という生命存在世界内部のどこを探したって他に見つかりはしないわね。
だって他の動物は、楽園に果実があるということすら知らなかったのだから。
悪魔の誘いに乗った、なんてのは、悪魔に教えを乞うた、の間違い。
人間という生命存在は、その本能、つまり存在の根底から間違っていたの。
だから苦境を回避する力が働かずに禁断の林檎を口にし、挙句楽園を追い出された。
私たちがよく「人間なんて」、と口々に言うのは、そういうことが原因。
「人間が幻想種であることは、他ならぬ人間自身だって気付いているはずね。
人間は幻想以下の全ての想像をもって、
ありとあらゆる概念をおよそ無限に生み出すことができる生き物なのだから。
それに人間は、何らかの手段でもって人間でなくなれば、即座に幻想種になれる生き物。
死ねば幽霊に、獣化すれば獣人に、魔道に堕ちれば魔人に。
獅子と蛇と鷲が混ざり合ってもただの合成種だけれど、人間なら幻想種になれるの。
「逆に人間以外の生き物も、人化すれば幻想種になる。
妖怪の多くはこのパターンだと思うわ。
それどころか、生命存在でなくとも、人間の形さえ取れば幻想化する。
本の妖怪、鈴の妖怪なんて物質から、火や、騒霊なんていう現象ですら、幻想種の仲間入りをする。
挙句の果てに人間が生み出した概念から生まれる幻想種なんてのもいるのだから、始末に負えない。
人間というのは、在るだけで世界を狂わせる、最悪の生命存在なのよ。
世界が狂うのは、人間がまるで世界そのものであるかのような振る舞いをするから。
眼前にある自分でない自分の存在を許容できる存在も、この世には人間しかいないのよ。
そして人間は、本当に自分の内部に自分だけの世界をいつでも持っている・・・。
「・・・大分、話がずれてしまったけれど。ようやく戻ってこれたわね。
そう、人間はみな、自分のための世界を持っている。
でも、殆どの人間には理性と本能の二力を扱いきれないが故に、
それは酷く荒涼とした歪で自分勝手な世界になる。
果実を取り込んだために作ることができるようになった、偽りの世界(フォルスストロベリー)。
「でも、そうでない人間もいる。
理性と本能の二つの力を使いこなす、数少ない人類の突破存在。
決して苦境には至らず、例え至ったとして確実にそこから抜け出すことができる逸脱者。
二力を扱い、自分のための世界を完璧に作り出す。
「完全な世界(トップ・オブ・ザ・ワールド)。完全な世界(パーフェクトスクウェア)。
完全な世界(アドミティドジェミニ)。完全な世界(オーバーロード)。
完全な世界(ライフイズビューティフル)。完全な世界(ミステイクマーダー)。
「そう、それは、あなたのような人を指すのよ。
完全で瀟洒な従者、『初めから終わりまでの完璧(ディスランブル)』。時空走狗。
私から見れば、あなたは“運命に唾吐く(ふりむきつづける)者”。
ありえざる“十六時間目”すら作り出す時空調停者。空色の奇術師。
「予想を欺く期待を欺く欺瞞」。咲かない花を咲かせ得る夜。英雄式(ウィナーズイクエイション)。
「あなたは人間。
確かに、間違いなく、純然たる人間。
神の移し身の究極形の、原初における至高型でありながら、
あなたは今、疑いなく幻想種の仲間入りをしている。
この幻想の郷に入り込んで、閉ざされた生命存在世界による排斥を受けなかった。
幻想の外にあって幻想種であり続けた、ただ一人の“渡世人”。
世のあらゆる幻想がこの郷に追いやられる中、
最後まで外の世にいた突破存在。
「そんなあなただから、先の物語の担い手になれたのね。
語り部の一人になれるのは、人間でありながら人間でないものだけだった。
あの漂泊の巫女にせよ、求天の魔女にせよ、
冥界に在った含幻の剣客にせよ、誘命の屍姫にせよ。
「巫女は人にしては執着を失い、魔女は人にしては好奇の果てる事無く、
剣客は人にしては頑迷に過ぎ、屍姫は人にしては人外を愛した。
ここに割って入って暴れて騒いで混ざって線引き狂ったように咲き誇るのは、
それができるのは、ここにあっては正しくあなた一人だけだった、ということ。
いえ、逆か。紅針六芒であるあなたが時を刻まなければ、あの物語は成り立たなかったのね。
「何が言いたいのか、って?
そうね。話が長くなりすぎたか。私はね、咲夜。
あなたに一つ、質問をするのを忘れていたのよ。
あなたの土産話が楽しくて、すっかりそれに魅せられて、
これだけは聞いておかなくちゃ、と思っていたことを忘れていた。
「咲夜。質問、ね。
霙の吹雪く春、夏近き世にも寒々しい春。
私が許した暇の間。
無何有の山々で、幻想の境で、租界の夜で、たなびく雲上で、
天衝く長き階で、朱に染まった限られた春の苑で、
あなたはあなたの為に、一片残らず完璧に無欠に完全に無比に疾駆し、
妖々(あやかしども)の見る夢が、どんなに不可解で理不尽で傍若無人であるかを、
ただの一つの取り零しも無く余す所無く、見てきて。
「楽しかった、かしら?」
「ええ、レミリア様。
あのお暇の日は、最高に最低に最悪に最善の一日でしたよ。
本当、とっても楽しかった。二度と、あんな楽しいのは御免ですけど、
お望みとあらばいくらでも。
時を進めて、戻して、止めて、留めて、止まって、
飛ばして、壊して、ずらして、曲げて、あの狂騒の一部始終を、
ご覧に入れて差し上げます」
「そう。そうね。あなたがそう答える運命を、私は知っていたわ。
だから私は次にこう言うのよ、咲夜」
「ふふ。お嬢様。それ、私も言うのでしょう?」
「「次があったら、今度は一緒に」」
There’s the Border Land that had closed your mind very early in life.
It has been continued.
人間に対しての解釈が面白いですね。
それで咲夜は「人間の匂いがする~って違った」程人間離r(キラドール
私の中では何故か霊夢よりも魔理沙よりも彼女が人間代表です。何でだろう。
前回よりは比較的作者様の意図を汲めたのではと思うのですがまだまだ読解力が追いついていないのが現状です。申し訳ありませぬ。
だけど終盤、彼女のセリフの後からが最高にかっこいいです。
アチョー読みしかできない自分にもここだけはすとんと腑に落ちてきました。
長編の方ではどんなかっこよさを見せてくれるのでしょうか。期待しています。
あと、分からないのがタイトルです。
何故あえて「レッドルチルクォーツ」なのか。この言葉が時間を操る咲夜を差しているのは分かりますが、いわゆるクォーツ式時計とかけているだけなら「レッドルチル」である必要が無いので。ほか、文中で咲夜を「紅針六芒」と言っている点についても疑問に思った次第です。
あまり深い意味は無いのかも知れませんが、鉱物などに興味を持っている身としては色々と考えてしまいます。
以下、勝手に考えて(調べて)みた解釈を
① レッドルチルクォーツには六芒星型に見えるようなカット方法があり、これとレミリアのスペル「スターオブダビデ」とかけている。
② ルチル入り水晶(ルチルクォーツ)は、水晶中に針状の結晶を持ったもので、これと時計の“針”をかけている。
③ ルビーやサファイアの中に針状のルチルが一定の規則にしたがって配置すると、スタールビーやスターサファイアとなり、これが咲夜とスカーレット姉妹の結びつきを示唆する(コランダムとスカーレット姉妹の関係は前の作品をそのまま参照)。更に、スター石において交差している3本の線のうち、1本は「運命」を意味する。
何か大いに思考がズレまくってる感じがしなくもないです。もしタイトルに何らかの意味が込められているのなら、教えて貰えませんか? 感想を書くところで質問をしてしまうことの筋違いは承知の上で。
最後に、誤変換の指摘を。
『始末に終えない』→『始末に負えない』
どうもありがとうございます。おかげで自分という存在自体の階梯が自分自身の
精神の中で無闇に向上していく錯覚を得させていただいています。実に楽しい。
と、ご感想への返答をどういった形で行えばよいのかこの新参には見当がつかなかったもので、
この場にフリーレスという形で為させていただきます。ご興味がおありでなければ、
適当に読み流してしまってくださいませ。本文もそんな感じに。
>裏鍵氏
>「人間の匂いがする~」
お読みいただきありがとうございま・・・って、ソ、ソノカイワワスレテタァ(大汗)。
藍戦か・・・送信を終えたら、ちょっと逝ってくるとします。飯綱。
>Barragejunky氏
>だけど終盤、~
ありがとうございます。格好良い人を書くと自分も格好良くなれる錯覚があります。
でも、錯覚と自覚してたら意味無いです。人よ、より鈍感であれ。
氏の続作には勝手ながら程良く期待させていただいておりますよー。
>いち読者氏
どうもお読みいただきありがとうございます。
まず、ご指摘の誤変換については修正いたしました。
ご報告ありがとうございます。
それで、解釈の方ですが・・・うわー、全部バレてる(嬉)。
本当に単純に、紅魔館のメイドだから紅っていうことで、
はじめは紅けりゃいいや位の考えだったのですが、この紅針水晶、
調べてみたら出るわ出るわ符合点。それで決まりだなという運びに。自分内。
しかも、最後の一本は運命を意味する、っていうのまでは存じませんでした。
なんて完璧、なんて瀟洒な宝石でしょう。ミーニングのために人は生きてる。
というか、貴重な時間をわざわざこんなもののために使わせてしまってすみません。
もっとわかりやすく示唆すべきなのか、あとがきにばらしを入れるべきか。
自分はこういった私的考察・私的解釈を好む人種なので、
できるだけネタは隠して終わりたいのですが。
ともあれありがとうございます。