※注意
この話では、「リグルは男の子」という前提になっています。
~Awaking~
月。
いい月だ。今夜は満月かな?
晴れていてよかった・・・・・雨だったらもっと苦労する所だったよ。
さあ、今日から目いっぱい輝かなくっちゃ。
・・・・・あれ?
あんな所に、女の子・・・・・何やってるんだろう?
少し観察してみようかな。
それとも、少し驚かせてやろうかな・・・・・・
~Hello, stranger~
「ほー、ほー、ほーたるこーい・・・・・・」
真夏の湖。満月を映す静かな湖面のほとりにチルノの声が響く。
「こっちの水はあーまいぞ、あっちの水もあーまいぞ・・・・・・」
それは、声というより歌だった。
湖のほとりを歌いながら歩き、あちこちをキョロキョロ見回している。
その目的は言うまでもなく、蛍。夏の風物詩。
蛍の歌を歌えば蛍が寄ってくるかも知れない、という割と安易な発想だ。
―――歌詞が微妙に間違っている事にチルノは気付いていないが。
「ほー、ほー、ほーたるこーい・・・・・・」
だが、歩けど歩けどなかなか蛍は見つからない。
未だ多くの自然が手付かずのまま残っている幻想郷、夏になれば蛍は水辺に行けばたくさん見られるはずなのだ。
それなのになぜか今年は蛍を一匹も見ていない・・・・・だから、チルノは歌いながら蛍探しをしていた。
「ほー、ほー、ほーたるこーい・・・・・・・・・・・どうしたんだろ、ここの水が苦くなっちゃったのかな・・・」
不安になって、湖の水を手にとって舐めてみる・・・・・・何ともない。
湖の水が苦くなって蛍がいなくなったのなら納得できる。だが、湖の水は何も変わりはない。
だからこそチルノは不安だった。
『・・・・・呼んだ?』
「・・・・・・えっ?」
突然、歩く先の方から声がした。男の子とも女の子とも思える、不思議な声。
満月とはいえ今は夜、そんなに遠くが見えるわけではない。闇の向こうの声に対し、慌ててチルノが聞き返す。
「だ、誰・・・・?」
『さっき君が呼んでたじゃないか』
「私が・・・・?知らない、誰も呼んでないって」
『いーや、呼んだね』
「し、知らないわよ・・・・・私が呼んだって言うなら、アンタ出てきなさいよ」
『言われなくっても・・・・・・・・』
闇の向こうから人影が現れる。
緑色の髪、白い長袖のYシャツ、黒い半ズボン。
頭からは黒い触角、背中には虫の羽根のようなマント。
そして、やはり男の子とも女の子とも思える中性的な顔立ち・・・・・
一目見てチルノは思う。
―――こいつ、人間じゃない・・・・・・・
見た目の問題だけではない。目の前の相手が放つ気配は、明らかに人間のそれとは違うものだったのだ。
「・・・・・ほら、この通り。分かるよね?」
「・・・・・・・・・・・・もしかしてゴk」
「蛍だよ!ほ・た・る!君、さっき歌ってたじゃん」
チルノに言われかけた事を必死で否定する。
彼(彼女?)にしてみれば、蛍とその生き物を混同されるのは恥でありとても嫌な事なのだろう。
しかしチルノはそんな事を気にもせず、ただ納得したような顔で相槌を打つ。
「・・・・あぁ。アンタ蛍なんだ」
「そうだよぉ・・・・・・・何をどう見たら僕があんなカサカサした奴になっちゃうのさ・・・・・」
「『僕』・・・?アンタ、男の子?」
「ん?そうだけど」
「ふ~ん、そう、男の子なんだ・・・・・・それにしちゃ可愛い顔してるんだね」
「・・・・それって褒めてるの?それとも馬鹿にしてる?」
「悪口じゃないわよ」
初対面だと言うのに、二人とも全く警戒していない様子だ。
二人とも見た目が子どもである事、特にチルノは見た目だけでなく中身まで子どもっぽい事が功を奏していたのかも知れない。
ともかく、二人はごく普通に話をしていた。
「・・・・・そうだ、アンタ蛍なんだよね?何でこの辺りから蛍がいなくなったか知らない?」
「・・・・・・・・・知ってるけど・・・・知りたい?」
「そりゃ知りたいわよ。去年までは普通にこの辺りで見たんだもん」
「ちょっとビックリするかも知れないよ・・・・それでもいい?」
「え・・・・・・?」
含み笑いを浮かべる少年。だが、見た目が幼いせいかいたずらっぽい可愛い笑みになってしまう。
そして、チルノはそれに臆する事もなく食い下がる。
「ちょっとやそっとの事じゃ驚かないわよ・・・何か知ってるなら、教えてよ!」
「うふふ・・・・・・いいよ、見せてあげる」
両腕を広げ、ゆっくり目を閉じる。
そして―――彼が蛍の妖怪だからだろう―――全身から淡い輝きを放ち・・・・・・
彼の体からだけでなく、地面からも淡い光が放たれる。それも、二人の周りを包み込むように。
「・・・・!?・・・・・・これ・・・・・」
「・・・さあ、みんな。好きなだけ舞え。飛べ。そして・・・輝け」
ザアッ・・・・・・・・!
彼の号令一つで、絨毯のように敷き詰められていた地面の光が文字通り『弾けた』。
光の帯とも呼べたものは無数の光の粒となり、まるで地上の星となり、辺りを漂いだす。
緑とも黄色とも、黄緑とも取れる儚い光。チルノはその輝きに見覚えがあった。
「これ・・・もしかして蛍・・・・・・?」
「そうだよ。これのために、ちょっとだけ隠れてもらってたんだ」
「う、わ・・・・・・きれい・・・・・・・・・・・・!」
「こんな蛍を見るのは初めてでしょ?」
「うん・・・・すごくきれい」
「・・・・・気に入ってもらってよかった・・・!」
ホッと胸を撫で下ろし、安堵の表情を浮かべる。
悪戯っぽい笑みは穏やかな笑顔に変わり、男の子はずなのにまるで女の子のように可愛く見える。
そして、その笑顔で少年は続けた。
「・・・・・そうだ、名乗るのが遅れちゃった。僕の名前はリグル、君の名前は?」
「私?私は・・・チルノ」
「うん、じゃあチルノ・・・・今日からしばらくの間、よろしくね!」
言うなり、いきなりチルノの手を握る。今まで異性と交流した事などないのだろう、
チルノは顔を真っ赤にしてあっという間にいっぱいいっぱいになってしまった。
「え!?あれ、あ、ちょっと・・・・・あれ?」
「こんなにきれいな満月と蛍・・・一緒に見ようよ」
「えーと、まぁ・・・うん、その・・・・・・・・・いいよ」
チルノは自分が何を聞かれたのか分かっていないだろうし、何と答えたのかも分かっていないだろう。
ただ何となく、その場の空気に流されて首を縦に振ったに過ぎない。
だが、リグルを動かすには充分だった。チルノの手を引き、近くの木の下に腰掛ける。
二人並んで座り、見事な満月とその下を舞う蛍を交互に眺める。
「・・・蛍、キレイだね・・・・・・・・・・・リグ・・・・ル・・・・・・・」
手を少しだけ強く握り返す。今のチルノにとって、自分の想いを言葉で表現するのは不可能に近い。
だから、せめて行動で自分の想いを伝えようと・・・・・・・・彼女は手を握り返す事で想いを伝えようとした。
「うん、きれいだね・・・・・」
返事は一言だけだった。
チルノの想いを無駄にしてはいけない、自分が雄弁になればなる程チルノを精神的に追い込んでしまう・・・・・
そう考え、リグルもほとんど言葉を返さず行動で自分の想いを示す・・・・・
そして、繋いでいた手を放し肩に腕を回した。
「あ・・・・・・」
「今夜はこのままでいさせて・・・・・ね?」
耳元でリグルが囁く。その声に酔ったのか今の雰囲気に酔ったのか、チルノは小さく頷くのみ。
「・・・・・・・・・・うん」
蛍の妖怪と氷精。珍しい組み合わせの二人の時間は、静かに穏やかに流れていった。
この話では、「リグルは男の子」という前提になっています。
~Awaking~
月。
いい月だ。今夜は満月かな?
晴れていてよかった・・・・・雨だったらもっと苦労する所だったよ。
さあ、今日から目いっぱい輝かなくっちゃ。
・・・・・あれ?
あんな所に、女の子・・・・・何やってるんだろう?
少し観察してみようかな。
それとも、少し驚かせてやろうかな・・・・・・
~Hello, stranger~
「ほー、ほー、ほーたるこーい・・・・・・」
真夏の湖。満月を映す静かな湖面のほとりにチルノの声が響く。
「こっちの水はあーまいぞ、あっちの水もあーまいぞ・・・・・・」
それは、声というより歌だった。
湖のほとりを歌いながら歩き、あちこちをキョロキョロ見回している。
その目的は言うまでもなく、蛍。夏の風物詩。
蛍の歌を歌えば蛍が寄ってくるかも知れない、という割と安易な発想だ。
―――歌詞が微妙に間違っている事にチルノは気付いていないが。
「ほー、ほー、ほーたるこーい・・・・・・」
だが、歩けど歩けどなかなか蛍は見つからない。
未だ多くの自然が手付かずのまま残っている幻想郷、夏になれば蛍は水辺に行けばたくさん見られるはずなのだ。
それなのになぜか今年は蛍を一匹も見ていない・・・・・だから、チルノは歌いながら蛍探しをしていた。
「ほー、ほー、ほーたるこーい・・・・・・・・・・・どうしたんだろ、ここの水が苦くなっちゃったのかな・・・」
不安になって、湖の水を手にとって舐めてみる・・・・・・何ともない。
湖の水が苦くなって蛍がいなくなったのなら納得できる。だが、湖の水は何も変わりはない。
だからこそチルノは不安だった。
『・・・・・呼んだ?』
「・・・・・・えっ?」
突然、歩く先の方から声がした。男の子とも女の子とも思える、不思議な声。
満月とはいえ今は夜、そんなに遠くが見えるわけではない。闇の向こうの声に対し、慌ててチルノが聞き返す。
「だ、誰・・・・?」
『さっき君が呼んでたじゃないか』
「私が・・・・?知らない、誰も呼んでないって」
『いーや、呼んだね』
「し、知らないわよ・・・・・私が呼んだって言うなら、アンタ出てきなさいよ」
『言われなくっても・・・・・・・・』
闇の向こうから人影が現れる。
緑色の髪、白い長袖のYシャツ、黒い半ズボン。
頭からは黒い触角、背中には虫の羽根のようなマント。
そして、やはり男の子とも女の子とも思える中性的な顔立ち・・・・・
一目見てチルノは思う。
―――こいつ、人間じゃない・・・・・・・
見た目の問題だけではない。目の前の相手が放つ気配は、明らかに人間のそれとは違うものだったのだ。
「・・・・・ほら、この通り。分かるよね?」
「・・・・・・・・・・・・もしかしてゴk」
「蛍だよ!ほ・た・る!君、さっき歌ってたじゃん」
チルノに言われかけた事を必死で否定する。
彼(彼女?)にしてみれば、蛍とその生き物を混同されるのは恥でありとても嫌な事なのだろう。
しかしチルノはそんな事を気にもせず、ただ納得したような顔で相槌を打つ。
「・・・・あぁ。アンタ蛍なんだ」
「そうだよぉ・・・・・・・何をどう見たら僕があんなカサカサした奴になっちゃうのさ・・・・・」
「『僕』・・・?アンタ、男の子?」
「ん?そうだけど」
「ふ~ん、そう、男の子なんだ・・・・・・それにしちゃ可愛い顔してるんだね」
「・・・・それって褒めてるの?それとも馬鹿にしてる?」
「悪口じゃないわよ」
初対面だと言うのに、二人とも全く警戒していない様子だ。
二人とも見た目が子どもである事、特にチルノは見た目だけでなく中身まで子どもっぽい事が功を奏していたのかも知れない。
ともかく、二人はごく普通に話をしていた。
「・・・・・そうだ、アンタ蛍なんだよね?何でこの辺りから蛍がいなくなったか知らない?」
「・・・・・・・・・知ってるけど・・・・知りたい?」
「そりゃ知りたいわよ。去年までは普通にこの辺りで見たんだもん」
「ちょっとビックリするかも知れないよ・・・・それでもいい?」
「え・・・・・・?」
含み笑いを浮かべる少年。だが、見た目が幼いせいかいたずらっぽい可愛い笑みになってしまう。
そして、チルノはそれに臆する事もなく食い下がる。
「ちょっとやそっとの事じゃ驚かないわよ・・・何か知ってるなら、教えてよ!」
「うふふ・・・・・・いいよ、見せてあげる」
両腕を広げ、ゆっくり目を閉じる。
そして―――彼が蛍の妖怪だからだろう―――全身から淡い輝きを放ち・・・・・・
彼の体からだけでなく、地面からも淡い光が放たれる。それも、二人の周りを包み込むように。
「・・・・!?・・・・・・これ・・・・・」
「・・・さあ、みんな。好きなだけ舞え。飛べ。そして・・・輝け」
ザアッ・・・・・・・・!
彼の号令一つで、絨毯のように敷き詰められていた地面の光が文字通り『弾けた』。
光の帯とも呼べたものは無数の光の粒となり、まるで地上の星となり、辺りを漂いだす。
緑とも黄色とも、黄緑とも取れる儚い光。チルノはその輝きに見覚えがあった。
「これ・・・もしかして蛍・・・・・・?」
「そうだよ。これのために、ちょっとだけ隠れてもらってたんだ」
「う、わ・・・・・・きれい・・・・・・・・・・・・!」
「こんな蛍を見るのは初めてでしょ?」
「うん・・・・すごくきれい」
「・・・・・気に入ってもらってよかった・・・!」
ホッと胸を撫で下ろし、安堵の表情を浮かべる。
悪戯っぽい笑みは穏やかな笑顔に変わり、男の子はずなのにまるで女の子のように可愛く見える。
そして、その笑顔で少年は続けた。
「・・・・・そうだ、名乗るのが遅れちゃった。僕の名前はリグル、君の名前は?」
「私?私は・・・チルノ」
「うん、じゃあチルノ・・・・今日からしばらくの間、よろしくね!」
言うなり、いきなりチルノの手を握る。今まで異性と交流した事などないのだろう、
チルノは顔を真っ赤にしてあっという間にいっぱいいっぱいになってしまった。
「え!?あれ、あ、ちょっと・・・・・あれ?」
「こんなにきれいな満月と蛍・・・一緒に見ようよ」
「えーと、まぁ・・・うん、その・・・・・・・・・いいよ」
チルノは自分が何を聞かれたのか分かっていないだろうし、何と答えたのかも分かっていないだろう。
ただ何となく、その場の空気に流されて首を縦に振ったに過ぎない。
だが、リグルを動かすには充分だった。チルノの手を引き、近くの木の下に腰掛ける。
二人並んで座り、見事な満月とその下を舞う蛍を交互に眺める。
「・・・蛍、キレイだね・・・・・・・・・・・リグ・・・・ル・・・・・・・」
手を少しだけ強く握り返す。今のチルノにとって、自分の想いを言葉で表現するのは不可能に近い。
だから、せめて行動で自分の想いを伝えようと・・・・・・・・彼女は手を握り返す事で想いを伝えようとした。
「うん、きれいだね・・・・・」
返事は一言だけだった。
チルノの想いを無駄にしてはいけない、自分が雄弁になればなる程チルノを精神的に追い込んでしまう・・・・・
そう考え、リグルもほとんど言葉を返さず行動で自分の想いを示す・・・・・
そして、繋いでいた手を放し肩に腕を回した。
「あ・・・・・・」
「今夜はこのままでいさせて・・・・・ね?」
耳元でリグルが囁く。その声に酔ったのか今の雰囲気に酔ったのか、チルノは小さく頷くのみ。
「・・・・・・・・・・うん」
蛍の妖怪と氷精。珍しい組み合わせの二人の時間は、静かに穏やかに流れていった。
リグルが積極的というのも面白いですね。
しっかし…………かゆいなあ(笑)。
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