一人の少女はいつも待ち続けている。暗く、狭く、いつまでも続くこの世界で・・・
たった一人で・・・
「・・・」
不思議な浮遊感の漂うこの世界
いつものような、浮遊感でなくまるで上も下もまるで存在しないような
重力から解き放たれたようなそんな感触な場所だ
「変わらないのね。ここは・・・」
声の主である西行寺幽々子は数えるのも飽きるような何度めかのため息をついた
眠りにつくといつもそうだ。気がつくとここに居るのだ
もちろんこんな所には身に覚えがないのだが・・・
そして、何もないこの世界で時間が経っているのかも分からないがいつものように妖夢に起こされるのを待つのだ
しかし、いつもと違った
『・・・今年で・・・・・・・・・』
かすかに、声が聞こえるのである。静寂が当たり前のようなこの世界で幼い声が聞こえるのである
気がつくと、目の前に一人の子供が立っていた
背の低いその子供は自分の腰あたりまでしかない子供であった
「ねぇ、あなたは・・・」
どこから来たの?とは訊けなかった
なぜなら、その子供は・・・
― * ―
「・・・・・・様・・・幽々・・・・・・・・・幽・・・子様」
誰かが私のことを呼んでいるようだ。それに、激しく体を揺すられて少し気分が悪い
あたりが真っ暗だから揺すられてるのか分からないが・・・
真っ暗・・・なんでかな。もう、あの夢は終わったんじゃなかったかしら
・・・あぁ、そうか
目をあけてないからね。そう、簡単なことじゃない
「・・・・・・・・・幽々子様!」
「そんなに叫ばなくても聞こえてるわよ」
そう、いつも通り妖夢が私を起こしに来てくれたのだ。夢の終わりはいつもそう
なにもない暗い夢の中から妖夢がいつも私を連れ出してくれる
それが、私の日常・・・
変わらない日々を過ごす私の朝
そう、それが幽冥楼閣である。幻想郷で死んだものは皆ここに集まる死者の世界
そして、私の住む場所である
ここはなにも変わらない。変わらないからここは存在するのかもしれない
ここは全ての終着点。生きる者の最後に訪れる所。全てが終わった場所
だから、変わらない
なに一つ変わらない。そう、なに一つ・・・。本当にそうなのかしら?
「幽々子様!」
「聞こえてるわよ。ちょっと考え事をしていただけよ」
「・・・そ、そうですか。しかし、随分辛そうだったので」
「えっ」
はじめ妖夢の言われた事が分からなかった。しかし、なぜか自分の頬は涙で濡れていた
「(泣いてたの、私・・・?)」
何に対して、私は涙を流したのだろうか。何に対して悲しかったのだろうか
悲しむ理由などないのに。いや、悲しむ事すら無いっていう方が正しいかしら
「悪い夢でも見たんですか?」
「・・・悪い夢、ね」
悪い夢・・・
いつも真っ暗なあの世界で何があったかしら。いつも覚えているのに今回に限って思い出せない
ついさっき見た夢だったのにもう忘れてしまっている
「(本当に悪い夢だったのかな)」
自分がここまで物覚えが悪いのかと思い可笑しくなって顔がにやけてしまう
「・・・本当に大丈夫ですか?」
心配そうに覗いてくる妖夢。まあ、彼女は彼女なりに私の事を心配しているのだろう
そんな妖夢の頬をとりあえず引っ張っておいた。案の定、妖夢は本当に痛いのか分からないがじたばた暴れている
そんな妖夢を可笑しく思いながら、顔を上げると一面の桜が目に入ってきた
そう、今年も桜の季節がやってきた
あたりを覆うような桜色。幾本もの桜の木が空を埋め尽くしている。しかし、一本だけ花びらをつけない桜がある
あんなにも大きい桜なのにつぼみすらつけていないのである
『西行妖』
あの巨木の名前である。いくつもの春を重ねても咲くことが無い桜。しかし、見る物を圧倒させるような強大な桜の木
大地に力強く立つ幹には空を縫う様に広がる枝である。例え、花をつけていなくても見る者を魅了する
「(今年は咲くのかしら?見る事ができるかしら?)」
一度として、この巨木の桜を見た事が無い。どんなつぼみをつけ、どんなすばらしい桜を咲かせるのかも分からない
「(そういえば・・・)」
この桜を一緒に見ようと約束した事があった。遠い遠い昔の約束。彼女は覚えているかしら
約束したのに随分と時間が経ってしまったなと感じた
あの頃の約束を・・・
・
・
・
「ゆかりぃ~。」
「何よ。そんな悲しくて死んじゃいそうなか顔をして」
あの時から、酷い言い方であった。紫はいつもそっけない
いつも、ぼぉ~と遠くを見ていて何を考えているか分からなかった
でも、そんな紫を私は今でも好きである
「・・・そんなかおしてないもん」
「全く・・・冗談よ。それでどうしたの?」
からかいもするが、いつも優しく話を訊いてくれた
「ようきがはなしてたんだけどユメってなに?」
「また、どうしたの?」
あの時、紫は怪訝そうな顔をしたような気がする
「だって、わたしユメっていうのをいちどもみたことないもの」
「夢を見たことないの?じゃあ、あの庭師の娘の・・・」
「ようむのこと?」
「彼女は見たことあるって?」
「・・・うん」
「そう・・・」
紫は、まるで自分の事のように私の事を思ってくれた
「わたしだけみることできないの。やっぱり、にんげんじゃないとみれないの・・・」
「そ、そんなことないわよ!私だって見るわよ」
まるで、私という存在を庇うように
「夢は誰にでも平等に存在するのよ。例え、それが人間だろうと妖怪だろうと幽々子、あなたのような存在でもね」
「・・・じゃあ、わたしもみることができるかな」
「ええ、きっと見ることができるわよ」
そう、夢は見る事はできる
「じゃあ、どんなユメをみようかなぁ~」
「幽々子、見れる夢は選べないのよ」
しかし、選ぶ事ができない。今の夢のように・・・
「夢は今まで起きたこと、これから起きること、望むことが具現化して見る事ができるのよ」
「いつかはみれるのね。わたしのみたいユメを」
そう、今でも私の夢は変わらない
「ええ、でもそれは所詮、妖に過ぎないの」
妖でも構わない、私が見たいのは
「・・・んぅ~、でも、でもみてみたいなぁ~あのサクラ。さいぎょうあやかしっていうサクラがさくところをみてみたいの」
「!!!」
そう、満開の『西行妖』
あの時の紫は本当に驚いていたっけ
「ねぇ、ゆかり。そんなユメをみることができるかな」
「・・・ええ、見る事はできるでしょうね・・・」
私は、まだ一度も見たことが無い
「えへぇ~。じゃあ、そのユメをみたらゆかりにもみせてあげるね。」
「夢は他人に見せられないわよ」
「じゃあ、ホンモノをみせてあげる」
そう、夢が駄目なら現実で叶えるしかない
「・・・んぅ~、私は遠慮しておくわ」
「なんでよ~」
「・・・・・・・・・」
「なんで、なんで」
「・・・あの桜はもう見飽きちゃったのよ」
見飽きるほど見たの?
「いいなぁ~。ねぇ、どんなだったかおしえてよ」
「・・・じゃあ、少しだけ教えてあげる。・・・そうね。とても、この世のものとは思えないほど綺麗だったわよ。」
「・・・・・・・・・」
「空を埋め尽くすほどの桜・・・だったわ、それにその桜の下で・・・」
私が唯一訊いたあの桜の話。妖忌も教えてくれなかったから
「したで?」
「おしまい」
「・・・ねぇ、ゆかり」
「なに?」
「いっしょにみようね。さくら」
「・・・咲いたらね」
・
・
・
まだあの頃の約束を果たしてなかったのよね。昔の話だもんね。紫ったら忘れているかもね
この西行寺にある最も大きくて咲くことのない桜『西行妖』の桜を見ることを・・・
何度春が来ても咲くことがない。この桜が満開に咲く夢も未だ見たことない
「(本当に咲くのかしらこの桜)」
いつしか、諦めていたのかもしれない。今更だけど、この桜の満開になった所を見ることはできないかしら
何か良い方法は・・・・
「そういえば今年も幻想郷に春が来ますし、今年はあの桜咲きますかね?」
「そう、ね」
確かにもう幻想郷では春の気配が近づいている。そして、それらが雪を溶かし、春の陽気を運んでくる
植物は自分を主張する様に育ち始める。桜もまた大輪の花びらをつけ・・・
「・・・そう、それだわ!」
「えっ」
「妖夢、今から幻想郷の春をすべて集めるのよ」
「い、今からですか!」
「そう、今から春を全て集めてこの桜、西行妖を満開にするのよ」
咲かない西行妖は春が足らないからに違いない
なら、春を集めれば今年こそこの西行妖の桜を見れるようになるかもしれない
そうしたら紫に見せてあげよう。きっと喜んでくれるだろう
そう、空を覆うほどの桜の花びらに・・・
― * ―
そこはいつものように様に真っ暗。相変わらずの風景である
「そういえば、あの子どこにいったのかしら?」
自分でも分からないが、私はあの少女を探していた。
もちろん、当てなんて無い。そもそも、なぜ『少女』と分かったのだろうか・・・
「何もないのに探しているなんて馬鹿ら・・・」
そこには、一本の大きな桜の木があった。はえているのでなくそこに在るのである
まるで、この世界に中核といえるように当たり前にあった。何も無い世界に・・・
いや、始めから存在していたのかもしれない
木の根元には、一人の少女が座っていた。探していた子に間違いがなかった。なぜか、そう感じた
少女の周りの闇だけがぽっかりと抜け落ち日の光が差し込んでいた
主役である少女に当たるスポットライトのように少女だけを照らしていた
ふいに少女がこちらに気付き振り向いた。かすかに聞こえる衣擦れと共に
「!!!」
自分が探していた少女に会えたのに声を掛けることができなかった
服装が多少違えど髪の色や顔などに見覚えがあったからだ。見覚えがあるのは当たり前だ
今日までに、何度も見たことがあるのだから。だから、間違えるはずがなかった
そこにいるのが背が小さいが自分自身だという事を
「おねえちゃん。どうしたの?」
「・・・・・・・・・」
「ねえ、どうしたの」
「ええ、ちょっと道に迷ったみたいなの」
頭の中が混乱している。小さい自分が自分の声で話しかけてくるのだから
こんな事はありえない。起こり得ないはずである
「じゃあ、わたしとあそんでよ」
「…え?」
なぜ、こんな事になったのか分からなかった。しかし、少女は目を輝かせながら懇願してくるのである。
「だめぇ~?」
そう、昔の私もこんな感じで構ってくれなかったら言っていたような気がする
そんな私を紫や妖忌は困りながらも遊んでくれたっけ。それは本当に昔の自分を見ているようだった
そう、紫と遊んでいた頃のあの頃と・・・
「・・・分かったわ。何して遊ぶの?」
「んぅ~、かくれんぼ。おねえちゃんがおにね」
「しょうがないわね。じゃあ、数えるわよ。1、2、3、・・・」
「わ、わ、わ。はやくかくれないと」
昔、私もこんな風に遊んだわね。まあ、あの時は妖夢、妖忌や紫の四人しかいなかったけど
「(懐かしいな・・・)」
数を数えながら、懐かしさを感じた。まぁ、悔しさもあるけど・・・
いつも紫はすきまに逃げ込むし、妖夢や妖忌を捕まえると
「もう半分を見つけてないとダメですよ」
とか言って一回も全員見つけられなかったのよね
・・・今にしてみればかなり卑怯な事をしているのよね、あの3人・・・・・・
「・・・9、10っと、じゃあどこに隠れたのか、なって・・・。何も見えないわね」
そういえばこの辺りは真っ暗で何も見えない
見えるのはこの桜の木の周りだけだったことを数え終わってから気がついた
「んぅ~、困ったわね」
「おねえちゃん、はやく~」
そんな事を知ってか知らずか小さな私が私を急かす
「でも、こう暗いとどこを探せばいいのか・・・」
「じゃあ、こうさん?」
「う・・・」
連敗記録更新と思った
「そ、そうね、降参よ。じゃあ、姿をみせ・・・」
不意に服をつかまれた。見ると小さな手が私の服の袖を掴んでいた
その時、小さな私がどこにいたのか分かった。自分の後ろに居たのだ。しかし、信じられなかった
私の裏には桜の木しかないのだから。木の裏からでは少女の手は届かないのだ
「(まさか、ね・・・)」
恐る恐る振り返り袖を掴んでいる手を目で追っていくとその手は桜の木から生えていた
その上には、少女の顔がこちらを見ていた。純粋な瞳を持って・・・
― * ―
「幽々子様!」
「えっ、なに」
「もう、人の話し聞いてくださいよ」
どうやら西行妖を見とれていたようだ。そう、西行妖は満開には程遠いが桜の花をつけていた
あの何百年たっても咲かないあの桜が花をつけて咲いているのだ
「え~と、それでなんの話をしていたんだっけ」
「全くちゃんと聞いていてくださいよ。いつも以上にぼけっと・・・」
「なにか言った妖夢」
「いえ、なんでも・・・。それより、まだ春を集めるのですか」
不思議そうに尋ねてくる妖夢の考えている事が分からなかった。まだ、西行妖は満開になっていないのだから
「ええ、もっとよ。この幽冥楼閣を覆うほど春を集めないと。もっと、もっと多く集めないと・・・」
「・・・幽々子、様?」
妖夢が何を心配しているのか知らないが、これでは足らない
もっともっと春が必要なの
満開じゃなければ意味がないのよ
満開じゃなければ・・・
あれ?私・・・
「幽々子!これ、どうしたのよ!」
「あ、紫。いらっしゃい」
そうだ、私は紫にこの桜を見せたかったのよ
あの時、誓った約束を果たすため
そして、私の夢を実現させるため・・・
「きれいでしょ、紫」
「・・・・・・・・・」
なんで黙っているのかしら?まだ、満開じゃないからかしら?
「でも、まだ五分咲きってところかしら。まだ満開にならないの。未だ足りないのよ。全然足らないの」
「・・・・・・・・・」
ねぇ、なんで黙っているの。一緒に見ようって約束したじゃない
「あと少しで私の夢が叶うのよ。今まで、ずっと見ることのできなかったこの桜が咲くことが実現するのよ!」
「・・・幽々子」
なんでそんな目で私を見るの!
私の夢が叶うのよ!
なのになんで喜んでくれないの!
「紫もこの桜をもう一度見たいでしょ!約束したもんね。この幽冥楼閣を覆うほど桜を見せてあげるって!」
「!!!」
「幽々子様・・・」
そうでしょ!
私は何も間違ってない!
「ねぇ、見たいでしょ。ゆか・・・」
パシンッ
「ゆ、か、り?」
いきなり紫が私を叩いた。叩かれた頬が少し痛かった
でも、それより叩かれた理由が分からなかった。なんで・・・
「そんなの見たくないわよ!」
「どうして!どうしてよ!・・・分からないよ。なんで、見たくないのよ」
「それは…」
「紫、どうしてよ!私の夢であり、あなたとの約束を守ろうとしているだけじゃない!」
「幽々子様!」
「黙ってなさい!妖夢」
「ぐっ・・・」
止めにかかった妖夢を扇子一振りで払いのける。軽く払っただけで妖夢の体は簡単に吹き飛んで桜の幹に叩きつけられた
「幽々子・・・お願いだから。これ以上春をここに・・・西行妖に集めないで」
「なんでよ!教えてよ、紫!」
なんで、集めては駄目なの?桜を見るためには集めないといけないのに・・・
「・・・あなたを苦しめたくないのよ、幽々子」
「待ってよ、分からないよ、紫。ゆか・・・」
紫は居なくなってしまった。すきまを使って消えてしまったのだ
結局、紫が何を言いたかったのか、私には分からなかった
「・・・・・・・・・」
「・・・ゆ、幽々子様」
「・・・・・・るのよ」
そう、私の答えはもう出ている
「えっ」
「集めるのよ!幻想郷の春を残らず!」
そう、答えが・・・
「でも、紫様が…」
「いいから、行きなさい!妖夢!」
「は、はいっ!」
集めなければ、もっと春を集めて満開にして見せる。私の夢を実現させるために
それが、私の『意思』だから。西行妖を満開にさせる事が私の意思
紫も満開になったらこの桜のすばらしさがわかるはず
この桜のすばらしさが・・・
― * ―
「あ、おねえちゃんまたきてくれたんだ」
「・・・ええ」
当たり前の様に私はもう考えていた。そこに私が居ることに・・・
やはり、ここには一本の桜の木と小さな私がいた。そう『私』が・・・
そして、桜の木が大きくなっているように感じた
「じゃあ、こんどはなにをしてあそぶ?」
「ええ~と、鬼ごっこなんてどう」
そう、これが当たり前の光景。本当に?
「いいよ~。このまえはわたしのかちだから、きょうもおねえちゃんがおにだよ」
「はい、はい。じゃあ、いくわよ。1、2、3、・・・」
「わ~い」
小さな私は本当に嬉しそうだった
「・・・9、10っと、よし、捕まえるわよ」
「つかまんないよ~だ」
目を開けると、一面桜の木が生えていた。どこを見ても桜色の世界。そう、幽冥楼閣の庭そのものだった
そんな中、小さな私が手を振っていた
「おにさんこっちだよぉ~」
「よし、行くわよ」
必死で私を追いかけた。小さな私はステップのように軽い足取りで走っていた
私がこんなに一生懸命に走っているのに距離は一向に縮まる気配がなかった
「ちょ、ち・・・ょっと、待・・・って、はぁ、はぁ」
「またないよ~だ。うぁっ」
「えっ」
いつの間にか辺りにあった桜は皆一様に花を散らせていた。そして、後に残ったのは暗いだけで何もないいつもの世界
しかし、いつもと違いかすかにさびた鉄のような匂いと死の匂いが辺りに感じられた
そして、小さな私は底無し沼のようなねっとりとした黒い地面に捕らえられていた
「おねえちゃん、たすけて。はやく」
「ちょ、ちょっと待って」
急いで彼女を引き上げようと手を伸ばしたが、その瞬間、小さな私が私の手を掴んだ
「・・・・・・・・・エタ」
「えっ」
「・・・ツカマエタ」
それは今までのような少女のような声ではなくとても低く枯れた声だった
私を掴んだ手は人の手ではなかった。温かみが無く硬くて冷たかった
そう、その手は・・・
― * ―
「ゆ・・・幽・・・子・・・様」
「ん、妖夢おはよう」
そう、夢はいつも妖夢が起こしてくれる所で終わる。どんな夢でも・・・
目を開ければ、そこには妖夢がいる
しかし、
「って、どうしたのその傷!」
「ちょっ・・・と、侵・・・入者・・・やられただけ・・・ですので」
「これのどこがちょっとなのよ!」
しかし、目の前にいたのは血で体を染めている妖夢の姿であった
妖夢のいたる所に刃物の傷や焼け焦げたような跡があり、胸にぽっかりと穴が穿たれていた
「結・・・構、持っ・・・かれちゃ・・・ました」
妖夢の言う通り、半人の方の体は骨を数十本、いやもっと折られていた。血も止めど無く流れていた
半人半霊でなければ、間違いなく死んでいる
「大・・・夫ですよ。半分・・・か痛くないで・・・から」
「・・・妖夢」
気丈に振舞う妖夢が見ているだけで痛々しい
「侵入・・・者はナイフ扱うメイ・・・ド、強力な魔・・・法を使う魔女と、霊・・・力に長ける巫女・・・の三人で・・・」
「妖夢!命令よ。喋らないで」
「春・・・取り返し来たそ・・・です」
それでも、妖夢は今起こっている騒動を話す。その間、絶え間なく血を流しつづけながら、それでも主人に尽くす一人の少女
「幽・・・々子・・・てくだ・・・い」
妖夢の指差す方向には空を埋め尽くすほどの桜の花びらをつける西行妖があった
妖夢が今まで集めてきてくれたのだ
「あ・・・とこれ」
妖夢の手には、僅かだが集めてきた春が握られていた。自身の血で赤く染まっていた春が・・・
「ありがとう、妖夢」
「幽・・・子様の夢で・・・もん・・・ね」
そう言うと妖夢はぐったりと力尽きた
まさか、死んだのかと思ったがかすかに寝息を立てていた
・・・まったく、この子は。
半分毒づきながら半分感謝していた
「そうね、あと一息だわ」
西行妖は満開の一歩手前まで来ていた
もう、八分咲きという所まで来ていた
「・・・そう、後少しなのよ」
長年の夢だった桜が咲いた。あと少しの春で満開になる。そうすれば紫もこのすばらしさを分かってくれるはずである
遠い日に約束を果たすため
侵入者を排除するため、春を奪い西行妖を満開にするため
私は向かった、春を奪う者を討つために・・・
・
・
・
幽々子は気が付いていなかった
幽冥楼閣で一番大きな桜『西行妖』は、他とは大きく違っていた・・・
大きさもすばらしさも・・・
そして幽々子の想っていたような桜色をしていなかった
その桜の花びらは黒くよどんでいたでいた
そう、まるで
『まるで、『墨染の桜のように』かしら?』
一人の少女が静かに笑っていた・・・
・・・・・・・・・ to be continue
私はこう言う話結構好きです。
やっぱり少しぐらい設定を無視した方が、面白味が出たりしますし。
私はこの先の展開が読めません。
続き期待してまってます。
>誤字・こうした方が良いと思うところ
迷ってみたいなの→迷ったみたいなの
妖夢や妖忌は捕まえると→妖夢や妖忌を捕まえると
桜の幹に叩きつけた→桜の幹に叩きつけられた
または、体は簡単に吹き飛んで→体を簡単に吹き飛ばして桜の幹に叩きつけた
わかるのはず→わかるはず
それと所々 、を入れた方が読みやすいと思います。
色々、指摘させてもらいましたが、私も書き始めて一ヶ月ちょいなので、自信
がありません。
作者様が、この方が良いと思うなら、それで良いと思います。
これからもがんばってください。