Coolier - 新生・東方創想話

茶葉強奪計画

2004/07/09 12:45:34
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 それは、何でもない普通な一日だった。普通にアリスの家に行って、夕方になって「ウチにあんたの食料なんか無いのよ」と追い出されて、仕方なく晩ご飯を作ろうとした時――

「む。私としたことが、補充を忘れたとはな。」

 なんと茶葉は切れていた。和食の私に対して飯後のお茶が無いのは許されることじゃないが、この時間じゃ買出しにも行けないな。どこぞのスキマ妖怪と同じように睡眠時間が長いから、そこの主人は。
 ではどうするべきか。ここはいつものように、霊夢のをうば…もとい、分けてもらおうか。確かこの前行った時に、やたらと香りがいいお茶を飲んだような気がして――ん?

「そうだったな。年中無休で襲われてるから、きっと24時間営業に決まってるんだ。タダよりうまいお茶は無いぜ。」

 霊夢の言葉を思い出して、行き先をあっさりと決定する。道も趣味本位で聞いたから大丈夫だと思う。
 なら、後は行動のみ。私は作りかけている晩ご飯をそのまま置いて、黒い帽子を深く被って、エプロンをつけたまま空に飛び出した。

 * * *

 30分位で当の茶園に到着。もう夜になりかけてるというのに、本当にちゃんと営業している。客は無いが。
 村の中心を一回りしたら、販売部みたいな建物に入って普通に出迎えられた。

「いらっしゃいませー何をお求めですか?」
「とりあえず、緑茶。」
 コンマ1秒で返答する。
「緑茶ですね。こちらはウチの…」
 って、違った。
「あーちょっと待ってくれ。その前に確認しておくが、値段はそこに書いたそのままなのか?」
「大量に購入してくだされば割引きますよ?」
「いやそうじゃなくて。霊夢がいつも勝手に貰ってると聞いたから、来てみたのだが…」
「はぁ、博麗さんですか?彼女にはそれなりに世話になってますから…」
「世話せずにお茶は飲めない、か?」
「いえ、普通に代金を払って頂ければ売りますよ。」

 なんだこれは、話が違う。タダでうまいお茶が貰えると言ったから来たのに、妖怪退治をしなければダメという話は聞いてない。
 そして当然だが私はお金なんか持っていない。家のアイテムを霖之助に売りつけばいくらか足しになるが、生憎今は売っていいものが無い。あった記憶も無いが。
 でもこのまま無駄足になるのもイヤなんで、頭を働かせて提案。

「ツケは受け付けるか?」
「払う気の無い人には受け付けません。」

 鋭い。二度と来なければツケもタダと変わらんと踏んだが、あっさりと見破られた。相手が妖怪なら霊夢の真似して奪って逃げるのもいいが、人間相手だとやりにくいし、やりたくもない。多分。
 まあともあれ、こうなればもうお手上げだ。やっぱり霊夢の家に行こうと思った、瞬間。

「だーかーら!あの紅白の居場所を教えてよ!そうしたらもうここにも来ないから、あんたらにもその方がいいでしょう!?」
 茶園の入り口から騒がしい声がした。振り向くと、そこは普通な村人と黒いおかっぱ頭の女の子がいた。どうやら騒動の源はその緑黒妖怪らしい。
「いや、だから紅白って何のことだ?」
「紅白の服着て針と札をびゅーびゅー撃つ奴よ!知らないとは言わせないのよ!」
「知らないってば!」
「むきー!!話にならない、責任者出せーーー!!」

 グゴォォォン!!

 1分もたたないうちに交渉は決裂した。緑黒が放った強風に大きく空へ舞い上がる村人、そしてそのまま星に…なれるかどうかは知らないが、とりあえず見えないところまで飛ばされた。

「責任者!責任者はどこだーーーーー!!」

 グゴォォォォォォン!!

 うわ、今度は無差別に周りを破壊して来た。なんかこう、某妹を思い出させるな…ガクガク。
 でもまぁ、もちろんこのチャンスを逃す私ではない。なにやらブツブツしてる店員をほっといて、今度こそタダでお茶を飲むぞ、と気合を入れて緑黒に近づく。マジックミサイルを撃ちながら。

 ぶかん!ぶかん、ぶかん、ぶかん!

「もきゅ。」

 可愛い鳴き声出すんだな、こいつは…あとリョクコクは語呂悪そうだからやめることにした。

「うぅぅ、ちょっとあんた!いきなりミサイル撃ってくる奴がいるか!!」
「二重結界と比べれば可愛いもんだと思うんだぜ?」
 ありのままの真心を以下略。
「にじゅうけっかい…?あ、紅白のアレか。ってあんた、あいつの事知ってるの?」
「親友だぜ?」
 ちょっと照れたり。
「あ、やっぱり。いきなり人を攻撃してくるから、あいつと同類だなぁと思ってた。」
「失礼だな、私は霊夢なんかより全然レディだぜ?」
「ならなんなのよその言葉遣いは…」
 ほっとけ。そういえば会話がずれていたな、と思い出して、本題に入ることにした。
「で、ここで何をしてるんだ。やっぱり妖怪は一日破壊しないと死ぬというのは本当のことだったか?」
「そんなわけないでしょう!私はただ紅白からペンダントを…もきゅ!?」
 マジックミサイルが顔面を直撃。ぐるりと空中で一周し、更に顔面で地面に激突した。
「人に願いするときはまず人の願いを叶えないと駄目だぜ?」
「まだ願ってないのに…」
 風の妖怪が半ば涙目になって、赤くなった鼻を撫でながら立ち上がった。何気に怯えてるように見える。
「私はお茶を貰いに来たけどな、どうやら世話をしてないとタダでよこしてくれないんだ。」
「いや、あんたの願いなんて聞いてないし、そもそもそんなのあたしとは…」
「それで諦めようとした時、お前が現れて大暴れしてた。ここまでいえば判るだろう?」
「…はっ!?まさかあたしを退治して、世話はしたと…」
「ご名答。イリュージョンレーザー!」

 * * *

「うひゃぁぁ!?」

 慌てて避ける。ちょっと服に掠ったけど、大丈夫大丈夫。一安心してると

「ぼーとしてる暇はないぜ!」

 びゅびゅびゅびゅびゅ!!

「わ、わ、わわわわ!もう、何なのよ!!!」
 問答無用でレーザーを連発で撃たれた。なんとか全部避けきれたけど、もう頭の中に避けることしかない、ひたすら避け続けるしかない。でも避けるには冷静な頭が必要、冷静に、冷静に、ぜーはーぜーはー、よし落ち着い…た…って5way弾追加されてるぅぅ!!!

 ぷす、ぷち、じぃぃぃ…

「ひぃぃぃぃ~」
 あ、危なかった!5wayをギリギリで避けたけど、レーザーが何発腹と肩を掠った。慌てて傷を確認する…って大したことになってないじゃん。おかしいな、このレーザーはこんなに弱いのかな?
 が、流石にまともに喰らう勇気が無くて、対策を考えることにした。でも考えるには時間が要るから、とりあえず時間稼ぎ、と。

「これでも喰らえ!風符『タイフーンホーブォ』!!」

 魔力を1つの巨形弾に注ぎ込んで、そのカタチを目の前に現して、片手でそれを発射!!
 ――あさっての方向に向かって。

「はぁ?」
 呆れて手を止まるモノクロ(と命名)。目はホーブォの弾を追っていたが、はっと気付いてこっちに振り返る。
 そしてこの一瞬にあたしは閃いた。このレーザー、紅白の針と似たようなものじゃない。ならばこの特別に作り上げたスペルで!

「本命はこっちよ!!抗符『針破り』……ってあ゛。あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、スペル展開中だったーー!!!」
 何たるミス。針対策に正面集中弾幕をスペルにしたのが仇になるとは。あたしはスペルの二枚張りなんかできないよーーー!!!

「スキありだぜ!!」

 あ。お母さん、あたし、もう駄目かも。ペンダントを無くしたまま逝ってしまって御免なさい――

 ブゴォォォォン!!!

「うぎゃーーーー!!?」

 …………

 ………

 ……

「あれ?」

 衝撃はいつまでも来なかった。恐る恐る目を開けると、そこは地面に伏せてるモノクロの姿があった。
 背中から煙が上がってるから、多分着弾したと思うけど、いったい誰が…ってあ。

「ホゥ…あの的外れな狙いは囮だったのか…相手の後ろに行ってから追尾してくるとは、中々やるなお嬢ちゃん…」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 お、お母さん。先は何とか生き延びたけど、今度は本当に駄目っぽいです。人間ってこんなに強烈な殺気を放てる生物でしたか、っていうかこいつ本当に人間ですか。教えてお母さん。そして助けてぇぇぇぇ

「恋符『マスタースパ…」
「わーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 アレはヤバイ。喰らったら死ぬ、絶対死ぬ、確実に死ぬ。無我夢中に飛んだ。村の外へ。済みません御免なさいもう来ませんから見逃して下さいー!!

 ザク。

 後ろからナイフの刺す音がして、あたしはその場を逃げ出した――

 * * *

「まったく、結局逃げられたじゃないか。どうしてくれるんだ、メイド長?」
 私はジト目で、ナイフを帽子に刺した殺人鬼を睨んだ。
「そんなことはマスタースパークをしめてから言いなさい。ここらへんを消してどうするつもりだったのよ?」
「いや、ついカッとなってな…」
「あなたの破壊衝動でウチの紅茶源を消さないでよ。それともやはり頭に刺した方がよかったかしら?」
「すまん、私が悪かった。」
 はぁ、と二人ともため息1つ。
「あとこれ、パチュリー様からの。」
「ん?茶葉じゃないか。何でパチュリーがこんなものを…あ。」

 思い出した。この前遊びに行った時、パチュリーが煎茶製造に熱中になってたっけ。確かその時「できたら少し分けてくれ」と言ったが…マジで作ったのか。
 見かけによらず行動派だな、と思いつつありがたくもらうことにした。

「じゃ私は帰るわ。言っておくけど、次やったら本当に頭を刺すからね。」
 パチュリー。今度はこの殺人鬼に運送を頼まないでくれ。死を一緒に運送してきそうだから――
どうも、裏鍵です。
えと見ての通り、2回目の投稿の改編です。文章自体がボロボロだったので、書き直すことに決定しました。
自分が未熟者のせいで、色々とご迷惑をかけてしまってすみません。

それとですね、感想と批評を頂ければとっても嬉しいです。なにせSSを書くのが初めてなので、色んな人の意見が欲しいです。自分だけだとどうも判らない部分が沢山ありまして…
ここでは書きにくい、と仰るのならjbbsの東方シリーズ板「東方二次創作作品を語るスレ」でお願いします。匿名でも構いません、思いっきり叩いて下さいw

では、待っております。
裏鍵
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コメント



0.640簡易評価
5.40名前が無い程度の能力削除
光景を目に浮かべながらニヤニヤしつつ読ませていただきました。
7.60名前が無い程度の能力削除
フォンも懲りないねぇ。
ひょっとして、麗夢が妖怪を生かしたまま追い払っているのは、
全部退治してしまうと、以後妖怪退治のお礼を貰えなくなるから……?

最初、まりさの名前を出さずに始める辺りは良い感じです。
敵視点での一人称語りへの移動が一寸判りにくかったかも。
後、パチェ或いは咲夜どんは、まりさの居場所をどうやって知ったのでしょうか?
咲夜さんが、パチェの挽いた煎茶を、四六時中持ってるとは考えにくいので。
(理由1:弾幕で気づいて、時を止めて急行してきた)
(理由2:咲夜は、パチェ製のお茶を少しちょろまかして村の人と呑むつもりだった)
(理由3:まりさは、ストーカーモードパチェの水晶玉か何かで常に監視されている。プライバシー? 人権? だから何?)

色々書きましたが、まりさらしい行動原理など面白かったです。
ペンダント奪回編等有れば、また楽しませて頂きます。
14.無評価裏鍵削除
うわ、レスを見逃した…orz
激遅レスだが、まずは霊夢。あれ、あたってるかあたってないか微妙です。まぁ本人にかかれば「生かしたのはあんた(村の人)であって私じゃないわよ~」と逃げるけどw
あと咲夜はまず村で紅茶を買って、そして魔理沙のウチに寄る予定でした。途中で会ったからついでで渡した、ということです^^;
にしても3は面白いな…実装するかな…(ヤメレ