Coolier - 新生・東方創想話

彼女らしさ

2008/02/28 18:45:00
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風見 幽香

強力な力を持つ妖怪と言われている

なお現在は太陽の畑でひっそりと暮らしている


         ~妖怪辞典録抜粋~








彼女は歩いていた
森の中でも山の中でも、花畑でなく
人里の街中を歩いていた

誰もが特徴的な傘、服装に見とれ彼女を見る

だが彼女は気にしない

なかにはヒソヒソと何か話す声も聞こえる

だが彼女は気にしない

しばらくするといつもの活気ある街中のざわめきに戻る

故に彼女は気にしない


ドンッ

彼女の下半身に衝撃が走る
彼女はゆっくりと視線を下ろす
そこには幼い子供が己の下半身にぶつかっていたのが見えた

周囲がざわめく

彼女はゆっくりと腰を下ろし子供の顔に己の顔を近づける

「元気良くはしゃぐのは良いけどケガしちゃだめよ」

彼女はそういうと子供の頭を撫でる
子供は笑顔になり一礼すると人ごみの中に消えていった
彼女はそれを見送ると腰を上げ再び歩み始めた
いつの間にか周囲の不穏なざわめきは消えていた

だから彼女は気にしない


彼女は一軒の店の前で立ち止まる
人里にある花屋の前で立ち止まる
すると店内から1人の老婆が顔を出した

「おやまぁこれは風見のお嬢さんじゃないかい」
「こんにちわ、おばあちゃん」

彼女と老婆はあたかも親子のようにその場で世間話をする

「ああ、そうだ風見のお嬢さんや」
「なんでしょう」
「婆は少し用事で店を開けなきゃならんのだが良ければ店番をお願いしたいのだがのぉ」
「ええ、いいですよ」
「助かりますだ、花たちも喜ぶじゃろう。美人さんが来たとなぁ」
「またまたご冗談を。気をつけていってらっしゃいな」
「夕刻には戻りますだ」

老婆はそういうとそのまま街中に消えていった

それを見送ると彼女は店にある腰掛に腰を下ろす
何かなければ花屋は忙しくはない
ときたま店に置いてある花を丁寧に手入れをして腰掛けに戻る

店の前を通る人達は彼女のことを特に気にもしなかった

よくあることだから人々は気にしない

彼女は腰掛に座り時折花たちのほうを見てあとは手元の本を読む作業を繰り返す

空が紅くなり始めた頃、老婆が戻ってきた

「おかえりおばあちゃん」
「助かりましただ」
「いいえ」
「花たちも元気になって、ありがたやありがたや」
「ふふふ」
「先も長くない老婆の願いを聞いていただきありがとですだ」
「またそんなこといって。その台詞言い始めてもう10年くらいたつわよ?」
「そうですかのぉ」
「ふふふ、じゃあまたねおばあちゃん」
「またお寄りください、風見のお嬢さん」

彼女は笑顔で老婆に別れを告げる

彼女は夕暮れに染まり始めた街中を歩く
まだまだ街中の活気は収まらない
いやむしろこれからという雰囲気だった

いつものことだから彼女は気にしない


「あら、珍しいわねこんなところにいるなんて」
「その台詞そのまま返すわ」

彼女の目の前に現れたのは神社の巫女

「蝋燭が尽きかけてたから買出しに来たのよ」
「へー」
「あなたはなんで此処に?」
「んー暇つぶし」
「ふーん」
「まぁ此処で会うなんて滅多にないから…」
「なによ」
「甘味処でお話でもしない?」
「…あんたから誘うなんて裏ありそうで怖い」
「街中で暴れるほど私はチャチな妖怪じゃないわ」
「それもそうね」
「行きつけの場所があるの」
「もちろんあんたの奢りよね?」
「さぁどうだか」
「…まぁいいわ案内して」
「はいはい」

彼女と巫女は共に街中を歩む



彼女は妖怪
誰がなんと言おうと妖怪
だから彼女は気にしない
己が妖怪であると理解しているから

巫女は人間
誰がなんと言おうと人間
だけど巫女は気にしない
気にしたところで疲れるだけだから


静かに人里は闇に包まれ
明かりが灯り
夜にもかかわらず人の声が響いた



彼女は好き
どんな形になれど
人間が好き
「杏仁豆腐蕗の薹風味がおすすめよ」
「うわぁこれにがっ!」
「まだこの味が理解できないようじゃお子様ね」
「言ってろ」
「ふふふ…」









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コメント



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2.70名前が無い程度の能力削除
ゆうかりんに限らず、里の中での妖怪はこんな感じかも知れませんね。
それよりも、その杏仁豆腐に入ってる吹野等はヤバイだろwww
4.80桶屋削除
この穏やかさがなんとも言えない♪
淡々とした日常描写が良いですねぇ♪

個人的には、「気にしない」って言葉の連続が中心に思えたので、最後もその言葉で締めてあったら良かった気もしました。
9.80三文字削除
むう、大妖怪ってこのぐらい何事も無く生活してるんだろうなぁ
にしても、行き付けの甘味処があるとは、やっぱりゆうかりんも女の子っ!
10.90名前が無い程度の能力削除
飄々というか、泰然というか、何とも言えない雰囲気を醸し出すゆうかりんですね。それでいてお嬢さんと呼ばれたり、甘味が好きだったり、どこまで行っても根っこが女の子なのが最高です。
>店の前を通り人達は
通る、では?
>吹野等
蕗の薹、では?
14.80名前が無い程度の能力削除
これは良いゆうかりん
さすが大妖怪!優しいね!
15.70☆月柳☆削除
らしさが伝わってくるいいお話でした。