※ちょっとしたオリジナル設定がありますのでそういうのが苦手な方はブラウザで戻るをどうぞ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーそれはある2月14日のことー
「おーい、霊夢ー」
博麗神社の縁側でお茶を飲んでた霊夢は友人である魔理沙に声を掛けられた。
別にどうという事も無い、何時も通りの光景だ。
「魔理沙…どうしたの?」
ひとまずお茶を横に置き、お茶菓子を取られないようにさりげなく自分の背後に隠す。
「心配しなくても”今日は”盗らないぜ」
ちっばれてたか。
「ん? 今日は?」
「ああ、今日は『バレンタインデー』だぜ? お茶菓子とかで腹を膨らしてる場合じゃない」
「『バレンタイン』……ああ、アレね」
バレンタインデー。
それは恋人たちの愛の誓いの日であり、チョコレートにより好意を伝え、
恋する気持ちを吐き出す為の日、と聞いている。
ちなみに告白された際、チョコを受け取ってしまうと永遠の呪縛に囚われ、
いつか必ず添い遂げる羽目になるという。
怖い。
「で、霊夢は誰に渡すんだ?」
ごぶっと霊夢が茶を吹いた。
「あ、アンタなんてこと言うのよ! 常に中立の立場で無きゃいけない博麗の巫女である私に誰かと添い遂げろと!?」
「あー、そうか。そういやそうだったな」
ポリポリと頬を掻いてスマンスマンと魔理沙は言う。
ちなみに去年も全く同じやり取りをしている。
そう、この幻想郷では事実が曲解して伝えられていたのだ。(主に紫の手により)
『バレンタインデーである2月14日は女神ユノの祝日なのよ?
ああ、ユノっていうのははすべての神の女王で、そりゃもう怖いぐらいの確実性を持って呪われるわぁ』
と紫は言い、
里の守護者であり、知識人でもある上白沢 慧音も『ユノについては間違いない』と断言した為、
このような状態になってしまっている。
おかげで2月14日は殺伐とした幻想郷になってしまった。
「ふう、まあいいわ……で、魔理沙は誰かに渡すの?」
「んー、とりあえずアリスとパチュリーとで一緒にチョコ交換する予定だが?」
「ぶうっ!?」
霊夢は再びお茶を噴出した。今度はもっと盛大に。
「おい、大丈夫か」
「……っゲホッ何考えてんのよ!? あんたら三人で結婚するつもり!?」
「実験だよ実験。一生離れられ無いほど強い力が発生するならそれを利用して一世一代の大魔術をってな」
「はあ……よくやるわ。でももし失敗したらどうすんのよ」
「さあ? 三人で暮らすんじゃないか? 私は失敗する気なんざさらさらないけど」
ホントによくやるわねそんな事。
と、霊夢が呆れた顔をして新しくお茶を入れなおそうと立ちあがった時。
「――――――!!」
「ん?」
「誰か来るな。」
誰かが博麗神社に突っ込んできた。
「霊夢ーーーー!! た、たす、助けてーーー!!」
なんだか緑色の巫女だった。
山の上の神社、洩矢神社の巫女、東風谷 早苗だ。
「なんだ、早苗か」
「なんか必死ね。さてお茶入れましょ」
「え!? そんな反応!?」
焦っている様子の早苗を特に気にも留めず二人は再びまったりし出す。
「と、とにかく霊夢、異変が起きたの、助けて! いや、助けてください!」
神社に降りるやいなや霊夢の腰辺りに縋り付く。
「異変? どんなの? それよりも動けないんだけど」
「言っとくが今日はバレンタインデーだからな。
一人を賭けて二人が殴り合いの壮絶なバトルをしててもそれは普通だぜ?」
「え、それバレンタイン関係あるんですか!?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
幻想郷のバレンタインの例
―例1、竹林―
「こんの引きこもりがァァァァ!! お前に妹紅を渡すかああああっ!!」
「邪魔なのよっ! この半獣が!!」
弾幕を一切使わない格闘戦を繰り広げる輝夜と慧音。
すぐそばで妹紅と永琳がぼっ立ちしている。
「なあ、なんで慧音が闘うのかな…慧音! 上! 上だ! 頭突き使え!」
「うーん。まあ色々事情があるのよ多分」
「そうなのか? ……慧音、そこだ! そう、右、左! 輝夜をぶっ飛ばせ!」
「あ、チョコ食べる?」
「ああ、気が利くな、ありがとう永琳」
もぐもぐ。
―例2、白玉楼―
「妖夢ー」
「はい、何でしょう幽々子様」
「チョコあげる」
「へ!? ゆゆゆゆ幽々子様っ!? い、いいですよ!」
「何? そんなに嬉しいの?」
幽々子はニヤニヤするが、
「ゆ、幽々子様が、食物を、分けるなんて……」
当の庭師は別の部分で驚愕していた。
「………妖忌、貴方の育て方は間違っておりました。よよよ」
「え、そこで何故お師匠様の名前が?」
「こうなったら妖夢を直接いただこうと思います、まる」
ガバッ
「うえっ!? ちょ、幽々子様!? ちょまっ」
カコーン
―例3、太陽の畑―
「さあさあリグルこのチョコを食べるのよ!」
「ひ、ひええ! 誰かー!! 幽香がなんか変ーー! いやいつも変だけどーー!」
ガシッ
「うわーっ!? つ、ツタが足にーー!」
「ふふふ、捕まえたわよ、今年こそ……」
「助けてー!」
絶体絶命のその時。
『待ったあ!』
「あ、チルノ! それに皆ー!」
「りぐるー助けに来たよー」(ルーミア)
「今日はつきたてのほやほやだから!」(橙)
「たとえ~ひとりひとりがよわくても~♪」(ミスティア)
「どれだけできるかわからないけど…」(大妖精)
「最強のあたいならこんなもの!」(チルノ)
「チッ……今年も邪魔するの? まあいいわ、返り討ちよ!」
―例4、妖怪の山―
「ほら、椛。チョコですよ。今晩付き合いなさい」
「椛、ほら、にとり特製のチョコだよ!」
滝のすぐ付近の岩場で文、にとり、椛の三人がもめていた。
「あ、あの、文様もにとりも、貰えるのは嬉しいんですが、私は狼なのでチョコは…」
「と・う・ぜ・ん私のですよね。食べるの」
「いや、私の方だよね?」
「う。いや、あの」
「さあ!」「さあ!」
「う、う、う、う」
ぷつっ
「ガ、ガウッ! ガウウ!」
バクバクバクバク
「あ」
「両方食べちゃった」
「はあ、はあ。さあ、これで――」
ドクン。
「っあああぐ!?」
ガクン、と椛が膝をついた。と同時に文とにとりがガッツポーズ。
『よっし成功!!』
「な、何ですかこのチョコーーー!!? か、体が、しび……」
「とりあえず滝の裏へ持って行きましょうか文さん」
「そうね」
「組んで、たんで…すか!? ああーっ! だれか、誰かー!!」
ザアアアアアアアアアアアアアアア
「ん? 厄の……気のせいか」
ザアアアアアアアアアアアアアアア
―例5、紅魔館外―
「ね、ねえ、美鈴? このチョコあげる」
「あ、咲夜さん、ありがとうございます…っと」
ぱくっ
「あ」
「うん、おいしい」
一口で食べてしまった。
頑張って凝って作ったのに。
「…………シッ!」
サクッ
「あいたーっ! ……ハッまさか甘い罠ってヤツですか!?」
「上手い事言ってんじゃないわよ!」
サクッ
―例6、紅魔館主の間―
「…………難儀ねぇ、ホント」
ふう、とレミリアは溜め息をつく。
と、その時
「あ、お姉様みっけ」
バタン、と扉を開けて妹のフランドールが入ってきた。
「あら、フラン。どうしたの?」
「お姉様お姉様! ほら、チョコ作ったの! 食べて!」
「え?」
「これでずっと一緒にいられるんでしょ? ほら、食べて!」
「いや、あのね、フラン? これは恋人同士のね……」
「ぶー、それ去年も言ってたよ! そのあと食べてたし」
…………言ったっけ? そして食べたっけ?
「もしかして忘れたの?」
「え? そ、そんなことないわよ。じゃあ頂きましょう」
「ふふーん、今年は自信作だよ(やった! 引っかかった!)」
「あらあら、それは楽しみねえ。じゃあ私がお茶を入れるわ(言ったかなあ…)」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「で、何があったの?」
「え、ああ、そう、チョコなんですよ!」
「えー、どうせ誰かに無理矢理渡されそうになってるとかそんなのでしょ?」
「そんぐらい自分で追い払えよー」
「違うんですよ! 幻想郷にもバレンタインデーがあるって聞いて
山でお世話になってるから大天狗様に『ほんのお気持ちです』ってチョコを渡したら突然」
「はぁ? お前そんな趣味あったのか?」
「ちょっと、魔理沙。人の好みはどうこう言いうものじゃないわよ」
「だ、だからなんなんですか、ここのバレンタインデーは! 危うく、その…大事なモノを失いそうになったんですよ!?」
早苗は必死だが、
対する霊夢と魔理沙はわけが分からないという顔だ。
「なによ、外じゃ違うって言うの?」
「全然違いますよ!」
早苗はそりゃもう必死に外でのバレンタインデーを説明した。
好きな相手に渡す『本命チョコ』だけじゃない。
お世話になった人や、尊敬する人、友達にも渡す『義理チョコ』の存在もあるということを。
「なっ……そんな便利な存在が外にはあるのか…!」
「やられたわね」
「私から見ればこっちが異常ですよ……」
『お返しは三倍の法則があったなんて……』
「そっち!?」
「しかもよ、魔理沙。それはばら撒けばばら撒くほど……」
「そうか! 三倍、六倍……いや、乗算方式で九倍、二十七倍……!」
二人は驚愕した様子で早苗を見る。
「くっ、はっきり言うわ早苗。私、外の世界を舐めてたわ」
「ああ、前に外の世界で変なメイドに会ってからすっかり忘れてた。外は……とんでもないところだ」
「あの、助けて欲しいんですけど、このままだと私……」
「東風谷様。見つけましたぞ」
「ひっ!?」
いつの間にか神社にとんでもない数の天狗が集まっていた。
「大天狗様が『返事をしたい』とのことです」
「え、あの、実は……」
早苗が何か喋ろうとするがガシッと二人の屈強な天狗に両側から掴まれる。
「さあ、参りましょうか」
「ひっ、れ、霊夢!! 魔理沙さ……」
早苗が助けを請おうと、縁側にいる二人に……いない。
上を見上げると、二人は空にいた。
雲ひとつ無い青空の中で紅白と黒白はよく見える。
「こうしちゃいられないな、さっさと皆にこのこと説明して周らないとな!!」
「ええ、まだ明日には早いわ! 魔理沙は紅魔館からお願い! 私は人里に行ってその後白玉楼に行くわ!」
「おうよ! こりゃ実験は中止だな!」
「グットラック!!」
「グットラック!!」
双方、親指を立ててお互いに幸運を祈りあう。
そのまま二人は別方向にスパーンとどっかに飛んで行ってしまった。
終わった。
「……東風谷様?」
「ああ、いいです。自分で飛びますから……ははは」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、覚悟して早苗は大天狗の前に出たが、
『流石に儂も驚いたが……年寄りをからかうもんじゃないよ、お嬢ちゃん』
と言われ、”断られた”ということになった。
(……た、助かったぁ)
『そうじゃな、こう、もうちょっと大人になったらの、その時は』
(……助かってない)
早苗は絶望した。
―その頃の洩矢神社―
「早苗遅いねー」
「そうだねえ。大天狗様の所終わったら博麗の巫女の所に行くって言ってたし……」
「あっちの巫女とよろしくやってるんだよ多分」
「あはは、そうかもねぇ」
とても平和でした。
(了)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーそれはある2月14日のことー
「おーい、霊夢ー」
博麗神社の縁側でお茶を飲んでた霊夢は友人である魔理沙に声を掛けられた。
別にどうという事も無い、何時も通りの光景だ。
「魔理沙…どうしたの?」
ひとまずお茶を横に置き、お茶菓子を取られないようにさりげなく自分の背後に隠す。
「心配しなくても”今日は”盗らないぜ」
ちっばれてたか。
「ん? 今日は?」
「ああ、今日は『バレンタインデー』だぜ? お茶菓子とかで腹を膨らしてる場合じゃない」
「『バレンタイン』……ああ、アレね」
バレンタインデー。
それは恋人たちの愛の誓いの日であり、チョコレートにより好意を伝え、
恋する気持ちを吐き出す為の日、と聞いている。
ちなみに告白された際、チョコを受け取ってしまうと永遠の呪縛に囚われ、
いつか必ず添い遂げる羽目になるという。
怖い。
「で、霊夢は誰に渡すんだ?」
ごぶっと霊夢が茶を吹いた。
「あ、アンタなんてこと言うのよ! 常に中立の立場で無きゃいけない博麗の巫女である私に誰かと添い遂げろと!?」
「あー、そうか。そういやそうだったな」
ポリポリと頬を掻いてスマンスマンと魔理沙は言う。
ちなみに去年も全く同じやり取りをしている。
そう、この幻想郷では事実が曲解して伝えられていたのだ。(主に紫の手により)
『バレンタインデーである2月14日は女神ユノの祝日なのよ?
ああ、ユノっていうのははすべての神の女王で、そりゃもう怖いぐらいの確実性を持って呪われるわぁ』
と紫は言い、
里の守護者であり、知識人でもある上白沢 慧音も『ユノについては間違いない』と断言した為、
このような状態になってしまっている。
おかげで2月14日は殺伐とした幻想郷になってしまった。
「ふう、まあいいわ……で、魔理沙は誰かに渡すの?」
「んー、とりあえずアリスとパチュリーとで一緒にチョコ交換する予定だが?」
「ぶうっ!?」
霊夢は再びお茶を噴出した。今度はもっと盛大に。
「おい、大丈夫か」
「……っゲホッ何考えてんのよ!? あんたら三人で結婚するつもり!?」
「実験だよ実験。一生離れられ無いほど強い力が発生するならそれを利用して一世一代の大魔術をってな」
「はあ……よくやるわ。でももし失敗したらどうすんのよ」
「さあ? 三人で暮らすんじゃないか? 私は失敗する気なんざさらさらないけど」
ホントによくやるわねそんな事。
と、霊夢が呆れた顔をして新しくお茶を入れなおそうと立ちあがった時。
「――――――!!」
「ん?」
「誰か来るな。」
誰かが博麗神社に突っ込んできた。
「霊夢ーーーー!! た、たす、助けてーーー!!」
なんだか緑色の巫女だった。
山の上の神社、洩矢神社の巫女、東風谷 早苗だ。
「なんだ、早苗か」
「なんか必死ね。さてお茶入れましょ」
「え!? そんな反応!?」
焦っている様子の早苗を特に気にも留めず二人は再びまったりし出す。
「と、とにかく霊夢、異変が起きたの、助けて! いや、助けてください!」
神社に降りるやいなや霊夢の腰辺りに縋り付く。
「異変? どんなの? それよりも動けないんだけど」
「言っとくが今日はバレンタインデーだからな。
一人を賭けて二人が殴り合いの壮絶なバトルをしててもそれは普通だぜ?」
「え、それバレンタイン関係あるんですか!?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
幻想郷のバレンタインの例
―例1、竹林―
「こんの引きこもりがァァァァ!! お前に妹紅を渡すかああああっ!!」
「邪魔なのよっ! この半獣が!!」
弾幕を一切使わない格闘戦を繰り広げる輝夜と慧音。
すぐそばで妹紅と永琳がぼっ立ちしている。
「なあ、なんで慧音が闘うのかな…慧音! 上! 上だ! 頭突き使え!」
「うーん。まあ色々事情があるのよ多分」
「そうなのか? ……慧音、そこだ! そう、右、左! 輝夜をぶっ飛ばせ!」
「あ、チョコ食べる?」
「ああ、気が利くな、ありがとう永琳」
もぐもぐ。
―例2、白玉楼―
「妖夢ー」
「はい、何でしょう幽々子様」
「チョコあげる」
「へ!? ゆゆゆゆ幽々子様っ!? い、いいですよ!」
「何? そんなに嬉しいの?」
幽々子はニヤニヤするが、
「ゆ、幽々子様が、食物を、分けるなんて……」
当の庭師は別の部分で驚愕していた。
「………妖忌、貴方の育て方は間違っておりました。よよよ」
「え、そこで何故お師匠様の名前が?」
「こうなったら妖夢を直接いただこうと思います、まる」
ガバッ
「うえっ!? ちょ、幽々子様!? ちょまっ」
カコーン
―例3、太陽の畑―
「さあさあリグルこのチョコを食べるのよ!」
「ひ、ひええ! 誰かー!! 幽香がなんか変ーー! いやいつも変だけどーー!」
ガシッ
「うわーっ!? つ、ツタが足にーー!」
「ふふふ、捕まえたわよ、今年こそ……」
「助けてー!」
絶体絶命のその時。
『待ったあ!』
「あ、チルノ! それに皆ー!」
「りぐるー助けに来たよー」(ルーミア)
「今日はつきたてのほやほやだから!」(橙)
「たとえ~ひとりひとりがよわくても~♪」(ミスティア)
「どれだけできるかわからないけど…」(大妖精)
「最強のあたいならこんなもの!」(チルノ)
「チッ……今年も邪魔するの? まあいいわ、返り討ちよ!」
―例4、妖怪の山―
「ほら、椛。チョコですよ。今晩付き合いなさい」
「椛、ほら、にとり特製のチョコだよ!」
滝のすぐ付近の岩場で文、にとり、椛の三人がもめていた。
「あ、あの、文様もにとりも、貰えるのは嬉しいんですが、私は狼なのでチョコは…」
「と・う・ぜ・ん私のですよね。食べるの」
「いや、私の方だよね?」
「う。いや、あの」
「さあ!」「さあ!」
「う、う、う、う」
ぷつっ
「ガ、ガウッ! ガウウ!」
バクバクバクバク
「あ」
「両方食べちゃった」
「はあ、はあ。さあ、これで――」
ドクン。
「っあああぐ!?」
ガクン、と椛が膝をついた。と同時に文とにとりがガッツポーズ。
『よっし成功!!』
「な、何ですかこのチョコーーー!!? か、体が、しび……」
「とりあえず滝の裏へ持って行きましょうか文さん」
「そうね」
「組んで、たんで…すか!? ああーっ! だれか、誰かー!!」
ザアアアアアアアアアアアアアアア
「ん? 厄の……気のせいか」
ザアアアアアアアアアアアアアアア
―例5、紅魔館外―
「ね、ねえ、美鈴? このチョコあげる」
「あ、咲夜さん、ありがとうございます…っと」
ぱくっ
「あ」
「うん、おいしい」
一口で食べてしまった。
頑張って凝って作ったのに。
「…………シッ!」
サクッ
「あいたーっ! ……ハッまさか甘い罠ってヤツですか!?」
「上手い事言ってんじゃないわよ!」
サクッ
―例6、紅魔館主の間―
「…………難儀ねぇ、ホント」
ふう、とレミリアは溜め息をつく。
と、その時
「あ、お姉様みっけ」
バタン、と扉を開けて妹のフランドールが入ってきた。
「あら、フラン。どうしたの?」
「お姉様お姉様! ほら、チョコ作ったの! 食べて!」
「え?」
「これでずっと一緒にいられるんでしょ? ほら、食べて!」
「いや、あのね、フラン? これは恋人同士のね……」
「ぶー、それ去年も言ってたよ! そのあと食べてたし」
…………言ったっけ? そして食べたっけ?
「もしかして忘れたの?」
「え? そ、そんなことないわよ。じゃあ頂きましょう」
「ふふーん、今年は自信作だよ(やった! 引っかかった!)」
「あらあら、それは楽しみねえ。じゃあ私がお茶を入れるわ(言ったかなあ…)」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「で、何があったの?」
「え、ああ、そう、チョコなんですよ!」
「えー、どうせ誰かに無理矢理渡されそうになってるとかそんなのでしょ?」
「そんぐらい自分で追い払えよー」
「違うんですよ! 幻想郷にもバレンタインデーがあるって聞いて
山でお世話になってるから大天狗様に『ほんのお気持ちです』ってチョコを渡したら突然」
「はぁ? お前そんな趣味あったのか?」
「ちょっと、魔理沙。人の好みはどうこう言いうものじゃないわよ」
「だ、だからなんなんですか、ここのバレンタインデーは! 危うく、その…大事なモノを失いそうになったんですよ!?」
早苗は必死だが、
対する霊夢と魔理沙はわけが分からないという顔だ。
「なによ、外じゃ違うって言うの?」
「全然違いますよ!」
早苗はそりゃもう必死に外でのバレンタインデーを説明した。
好きな相手に渡す『本命チョコ』だけじゃない。
お世話になった人や、尊敬する人、友達にも渡す『義理チョコ』の存在もあるということを。
「なっ……そんな便利な存在が外にはあるのか…!」
「やられたわね」
「私から見ればこっちが異常ですよ……」
『お返しは三倍の法則があったなんて……』
「そっち!?」
「しかもよ、魔理沙。それはばら撒けばばら撒くほど……」
「そうか! 三倍、六倍……いや、乗算方式で九倍、二十七倍……!」
二人は驚愕した様子で早苗を見る。
「くっ、はっきり言うわ早苗。私、外の世界を舐めてたわ」
「ああ、前に外の世界で変なメイドに会ってからすっかり忘れてた。外は……とんでもないところだ」
「あの、助けて欲しいんですけど、このままだと私……」
「東風谷様。見つけましたぞ」
「ひっ!?」
いつの間にか神社にとんでもない数の天狗が集まっていた。
「大天狗様が『返事をしたい』とのことです」
「え、あの、実は……」
早苗が何か喋ろうとするがガシッと二人の屈強な天狗に両側から掴まれる。
「さあ、参りましょうか」
「ひっ、れ、霊夢!! 魔理沙さ……」
早苗が助けを請おうと、縁側にいる二人に……いない。
上を見上げると、二人は空にいた。
雲ひとつ無い青空の中で紅白と黒白はよく見える。
「こうしちゃいられないな、さっさと皆にこのこと説明して周らないとな!!」
「ええ、まだ明日には早いわ! 魔理沙は紅魔館からお願い! 私は人里に行ってその後白玉楼に行くわ!」
「おうよ! こりゃ実験は中止だな!」
「グットラック!!」
「グットラック!!」
双方、親指を立ててお互いに幸運を祈りあう。
そのまま二人は別方向にスパーンとどっかに飛んで行ってしまった。
終わった。
「……東風谷様?」
「ああ、いいです。自分で飛びますから……ははは」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、覚悟して早苗は大天狗の前に出たが、
『流石に儂も驚いたが……年寄りをからかうもんじゃないよ、お嬢ちゃん』
と言われ、”断られた”ということになった。
(……た、助かったぁ)
『そうじゃな、こう、もうちょっと大人になったらの、その時は』
(……助かってない)
早苗は絶望した。
―その頃の洩矢神社―
「早苗遅いねー」
「そうだねえ。大天狗様の所終わったら博麗の巫女の所に行くって言ってたし……」
「あっちの巫女とよろしくやってるんだよ多分」
「あはは、そうかもねぇ」
とても平和でした。
(了)
打たれ強い幽々子様がお気に入り♪
咲夜可愛いよw
何したんだ大天狗様。
あと霊夢に魔理沙、お返しは三十倍でも良いからチョコくれw
黒幕さん、長引くのは良いですからもちょっとパワーダウンをお願いしますw
リリーかわいいよかわいいよリリー
でも「儂」だの「それがし」だのと言いそうでちょっと怖い…
そこにきたのが早苗さんと、笑うとは別の意味でもう最高。
やっちゃったね早苗さん。
面白いネタをどうも、感謝します 70点
黙れッ!異論は認めないッ!
それよりも、早苗ちゃんはモテモテだなw
レミリアはボケるには早すぎるw
EX良かったです。
レティの恋が実って欲しいです
霊夢と魔理沙はがめついな~おいw
いや、本編も良いよ?
でもおまけが良い。
それにしても、春度の高い連中の多いこと多いこと・・・
あと、あとがきも良かったなぁ
禿同ッ!魔理沙の言う「そんな趣味」ってのは老人趣味じゃなくて同性愛のことだッ!
そして後書きも素晴らしかったです。
当然ですよ、幻想郷に男の妖怪がいるわけないじゃないですか。
幻想郷のバレンタインはこうして混沌の方向に変わっていくのですね。
大天狗様はきっとそういうタイプの女性なんだぜ?
ていうかえーりんがばっちり漁夫の利とってるw
まあ、男性だろうと女性だろうと早苗が不幸なのに変わりはありませんがねw
御山があんな厄いことになってるんだから雛様少しは反応してくださいw
ありがとうございました
最強クラスの妖怪だから仕方ないのかもしれませんが。w
藍は知ってそうだけど面白いから傍観、と。