*続き物です。49の「前」を読んだ方が…良いかもしれない。
とりの、鳴き声がする。
「ん…」
隣で咲夜が小さな呻き声を上げた。
わたしは寒かったから、そのまま布団に顔を突っ込む。
…あったかい。
ぎぃ、ばたん。
……こうやって咲夜とくっついているのなんて、初めてかもしれない。
いつもいつも咲夜の傍にはお姉様が居るから…咲夜はわたしに構ってくれないし。
かつ、かつ、かつ、かつ
咲夜の風邪を吸って頭は凄く痛いけど、何だか…凄く、嬉しい。
「フラン、こんな所で何をしているのかしら?」
「レッドマジック」
「え?」
どどどだだだだだだだだ、って音が一気に世界を占める。紅い弾幕…避けなきゃ…もう!体が鈍い!
部屋中に細かい弾幕がいっぱい突き刺さった…危ないなあ…とりあえずベットから出ようっと。
これ、お姉様の弾幕だ。声もお姉様だったし。お姉様の弾幕は速いくせに何処か避ける余地の多い大きな弾が多い。
わ…っ、来てる来てる!でもそんなの簡単に避けれるよ、お姉様?
お姉様がスペルカードを放ったって事は、遊んでも良いんだよね?
咲夜ともうちょっといっしょに居たかったけれど…でも、遊ぶ方が楽しいから。ごめん咲夜。
「お姉様…いくよ♪」
「フラン……貴方の罪は重いわよ。」
「?」
わたし何をしたっけ?地下室からは出て良いって言われてたし…
咲夜の血を吸った事?そんなの大した事でもないし。
………?
「ねえ、その罪って何?」
「…は?」
「ねえ」
「…。貴方がそれを理解していなかったとは…そもそもの大前提がおかしかったのね。ほら、教えてあげるわ」
紅符「スカーレットマイスタ」
弾幕でものを教えるなんて、お姉様も頑張るじゃない?
でもね…そんなの、全部…
「破壊してあげ…っわっ!?」
「能力が上手く出せないのは咲夜の病気を引き継いだ結果…罪の報いよ。」
べっ…べつに良いもん!これ位軽いハンデだよ!
そろそろこのお姉様面に一発くらわせなくっちゃね!
禁弾「過去を刻む時計」
一気に弾幕が生み出される。発生源は・・・わたし。部屋が狭いからすぐに壁に突き刺さったり柱に食い込んだりするけど…
でも、何処までも彷徨ってくれると良いな。わたしの本気は…
こんなものじゃないんだから、ネ?
「なっ…それでもここまでっ!?」
「まだまだ…行くよ。咲夜とまた一緒に寝るんだもん!」
「ふん…咲夜と一緒に寝るのは私よ!貴方の罪は…咲夜と寝た事!小悪魔から聞いたわよ?」
「へぇ?咲夜にべたべたのお姉様…もしかして嫉妬なの?」
「そ…そんな訳ないじゃない!ありえないわよ!!」
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お姉様がレーザーを放った、と同時にその下を抜けて弾発射。
でもそれだけじゃないよ!狂った時計の針はお姉様に迫るんだよ?
それをお姉様はボムで防いだみたいだけど、それでもまだわたしのスペルカードは尽きない。
可愛そうに。そろそろ身の程を知れば良いのにな。
もう相手の喋る声も聞き取れない。お姉様が逃げ惑う。かわいそうな仔猫さん。
だれも居なくなったらいいのに。この部屋なんて無くなれば良いのに。
お姉様だって行き成り怒らなくても良いのに。何処かの誰かが消えれば良いのに。
ああイライラする。どうしても考えが反れる。これもきっと病気の所為。
咲夜の血を吸わなきゃ良かったのに…わたしってもしかして…馬鹿?
あれ。
なにか…忘れてる?
+もしかして馬鹿?+…違う。もうちょっと前。
+かわいそうな仔猫+行きすぎだよ!最後のところ!
+吸わなきゃ良かった+そう…なんだったっけ、何を…
あ。
「咲夜…」
「え?聞こえなーい!」
「咲夜がこの部屋に居た…よ…?」
全ての弾が止まった。これが咲夜の世界で発生したのならどんなに嬉しいかな。
「え…?ちょ…本当?」
「嘘なわけ…ないじゃない…」
ああ、完全にお姉様の血の気が引いた。
「それを早く言いなさい!早く咲夜を救出しないと…」
「うんっ」
もう、何で早く思い出さなかったんだろ…咲夜は人間で病み上がりで…とにかくよわっちいのに!
弱い者は優しく扱え、って門番も言ってたような気がする。だからって門番に優しくする気は無いけど…あの門番弱くないしね。
肉体が弱い咲夜は………うん…死んでない…よね…
「咲夜…」
「ねえフラン、もし咲夜が居たら…謝りましょう」
「…うん…」
そんな会話がぽつぽつと交わされて…もう5分…
咲夜が見つからない。
もう凄く悲しくなった。泣きたくなった。後ろを振り返ったらお姉様も少し暗い顔をしている。
つい腹立たしくなって…ベットらしきものを蹴り飛ばした。
「あ…」
「あ」
「え?」
銀髪。蒼い目。千切れた懐中時計。
…生きてる。でも、ベットの下敷きになってる…けど、出れなくなった程度のものみたい。
生きてる……すっごく安心した。溜息が漏れた。
「咲夜…」
「妹様…あの、おはようございま」
「さくやーーーーーっ!」
ふいに突き飛ばされて5メートルは…飛ばされた。
お姉様………。
「あら、お嬢様。この通り元気になりましたよ」
「ごめんね、ごめんね?でも…馬鹿馬鹿…馬鹿!死んだかと思ったじゃないの!」
「ふふ、この紅魔館にいてこの程度で死ぬようではメイド長を勤められませんわ。」
「それで、病気も治ったのよね?あ、ベットには潰されてないの?」
「ええ、ベットさえ消えればも」
禁忌「レーヴァテイン」
あ、不味い。
今日快晴だったー…ついついレーヴァテインホームランを打っちゃったなー…お姉様壁を突き破って飛んで行っちゃったなー。
ま、いっか♪いつか帰ってくるだろうし。
「ベットは退けるから、行こう咲夜。パチュリーに軽く見てもらったほうが良いかもしれないからね。」
「あ、はい。」
そう言えば風邪…パチュリーに何とかしてもらう!それが良い!
…あれ、凄い…何だか紅い閃光が近づいてくる…?
あれ、あの閃光お姉様?
どがーん。
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「異常無し。レミィの方は…寝てなさい」
パチュリーの簡単な診察の後、咲夜は立派に「菌が破壊」されてたんだって。
わたしは元々人間じゃないから菌も消えやすいって言ってた。
お姉様は問題外。太陽に3分晒されて平気な吸血鬼なんて存在しないと思うよ。
「解りました、有難う御座いますパチュリー様」
「いいのよ」
「お嬢様を宜しくお願いしますね」
「ええ」
「では行きましょうか」
「うんっ」
ちょっとだけお姉様が寝てて嬉しいな。
今日一日は、わたしだけの咲夜だもん。
「ねえ咲夜ー」
「如何されました?妹様。」
「時間は動かせる―――」
の?あれ?」
咲夜がメイド服になってる。
わたしの服が綺麗になってる。
「ご覧の通りです」
「やっぱり咲夜は…こうでなくちゃね。」
思わず溜息。いつか、わたしが生きる道の途中で死んでしまう存在。なのにこんなに愛おしいの。
お姉様もきっと一緒の感情を持ってるんだ。咲夜の事が堪らなく大好きで、でもそれは硝子細工のように脆い。
でも抱締めて欲しい。
でも微笑んで欲しい。
でも咲夜は一人しか居ない。
そして咲夜は忙しい。
そして…咲夜の事が好きな存在は、もう一人居る。
「だいすき」
「光栄ですわ」
咲夜は人間だから、だからこんなに美しいのかもしれない。昔わたしは壊すだけだからその大切さはあまりよく解らなかったけれど、
今は大切に愛でていこうと思う。
「とりあえず魔理沙をやっつけよう!」
「わかりました、では日傘を」
「うん、行くよ咲夜!スペルカードは揃ってるよね?」
「ええ、魔理沙をやっつけましょう」
だいすきだから。
処女作でこれなら次も期待できますな。小説に限ったことではなく、何においてもとにかく数をこなさなきゃ上達はしませんのでこれからも頑張ってくださいな。
……うわ偉そうな意見!すいません
咲フラ良いなあ、今後に超期待。
普段ベタベタなくせに嫉妬がすぎるレミリアにもワロタ。
是非また紅魔館の住人の話を書いてほしいところ。期待してます。
好き・・・///