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友達のつくりかた 最終話 【あらすじつき】

2008/02/11 23:06:09
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この作品は作品集47にある「友達のつくりかた」「友達のつくりかた2」、
作品集48にある「紅魔館の住人達」、
作品集49にある「友達の作り方3」の続きになっています。
先に上記の4作品を読んで頂けると、話の内容がわかりやすいと思います。
また、各作品のあらすじを作りましたので、初めてお読みになられる方はあらすじを読んで頂ければ,
この作品までの内容がわかるようになっています。





            【あらすじ】


『友達のつくりかた』

アリス・マーガトロイドは寂しくなって魔理沙を魔法の森で偶然を装い待ち伏せする。
待ち伏せは成功し、話し合いの結果、魔理沙からの提案でキノコ狩りに行くことに。
キノコ狩りを終え、楽しく魔理沙の家で食事を食べようとしたその時、霊夢が登場。
霊夢との約束をすっぽかした魔理沙に怒り、料理を食べ尽くして残っていたキノコもちゃっかり回収して帰っていった。



『友達のつくりかた2』

なんだかんだで魔理沙とのきっかけを作ってくれる霊夢にお礼をしようと、おはぎを作るアリス。
作りすぎてしまった分は人里(子供たち)、白玉楼(幽々子)へと送り、博麗神社で霊夢へ手渡した。
霊夢に対しても1人の女の子として扱い、優しく話すアリスに霊夢は好意を持つものの、
言葉には出さずアリスはそのまま帰っていく。

家に帰ったアリスは先程送った人里(慧音)、白玉楼(妖夢)からのお礼の手紙を手にする。
妖夢からの手紙にはお茶会の招待状と、その時に手作りの和菓子があると嬉しいとまで書いてあり、
困ったアリスは慧音に頼んで和菓子の作り方を教えてもらうことに。
妹紅が里に問題が起こらないように見張っていたくれたこともあり、
なんとかお茶会前に和菓子を作り上げたアリスは慧音と妹紅にお礼を言って、白玉楼へと飛んでいった。

早速幽々子の元へと通されるアリス。幽々子は妖夢にお茶の支度を任すと、アリスをじっと見つめ
、アリスに最近の急な変化について聞いた。
アリスは他人からの好意がとても心地よかったこと、素直になって笑い合ってるほうが楽しいこと、
招待を受けたのも3人でお茶をしながら話すのも楽しいだろうと思ったからだと説明する。
話し終わって恥ずかしそうにしていると、ずっと後ろで妖夢が聞いていたことを知り、真っ赤になるアリス。
しかし、このことをきっかけに打ち解けた3人は楽しくお茶会を終え、
妖夢はアリスの素直で優しいところに親しみを持つようになった。



『紅魔館の住人達』

魔理沙と一緒に紅魔館へと本を借りに来たアリスは嵌められてメイドとして1週間働くことに。
咲夜から裁縫隊の一員として服の修理、製作及び館内の清掃を命じられたアリスは持ち前の器用さと人形操術で仕事をこなし、
新人の妖精メイドの指導まで担当、成果をあげる。

最終日前日(6日目)の夜に咲夜を呼び出したアリスは、ほとんど指導を行わずに妖精メイドに任せている理由と、
1人で大量の仕事を抱えている理由をきいた。
咲夜は、紅魔館の住民は仲間を、主(レミリア)を想い、支え合っていること。力のあるなしは関係なく、
それぞれが出来る形で努力し幸せになろうとしていること。
そしてそれは教えることではなく、各人が気付くべきことであり、その間の負担を負うのはメイド長である自分であり、
それはこれからも変わらないことを話した。
アリスは話してくれた咲夜にお礼を言い、部屋へと戻ろうとすると、後ろから咲夜の「来てくれてありがとう…」という声を聞く。
しかし、振り返ると咲夜はもうそこにはいなかった。

最終日、フランの遊び相手としての役目を終えた魔理沙と共に、アリスは紅魔館を出て行った。



『友達のつくりかた3』

年も明けてしばらく後、白玉楼へと遊びに来たアリスは幽々子の提案で、妖夢と一緒にお餅をつくことに。
いつもと違う2人での作業の為、とても楽しそうにお餅をつく妖夢。アリスもがんばり、大量のもち米を全てお餅へ変え、
つきたてを3人で十分に堪能した。
その後、まったりとした雰囲気の中、3人で話をしていると、ちょっとした誤解から妖夢とアリスの仲が気まずくなるも無事解決。
今まで以上に仲良くなった。

残ったお餅を持って博麗神社へと飛んだアリスは、霊夢のお茶を楽しみながら落ち着いた心地よい時間を過ごす。
お餅をぱくついていた霊夢はアリスの笑顔が気になって聞いてみると、アリスはお餅を食べている霊夢がかわいかったから、と素直に話す。
霊夢はその場はごまかすも、アリスへの好意を自覚したのだった…。









             【本編】



人里のそばにある、慧音邸。
普段なら朝の見回りのために就寝している時間だが、家主である慧音は1人の少女と共に台所に立っていた。


「ごめんね、慧音。遅くまでつきあってもらっちゃって」
「なに、気にするな。私はちょっとやそっとのことで身体を壊したりしない。
それに、私も教えてもらっているんだから、気にしないでくれ。
なにより、アリスとこうやって2人で台所に立ってお菓子を作るのは楽しいからな」
「本当? そう言ってもらえると嬉しいわね。
 私もこうやって慧音とお菓子作るのが楽しいって思っていたから」

アリスと慧音はお互い手を動かしながら、楽しそうに会話していた。
2人ともご機嫌で、作業は順調に進んでいった。

2人が協力してお菓子を作るのは初めてではない。
以前にアリスは白玉楼でお茶会に出す和菓子の作り方を慧音に教わるために、ここを訪れたことがあった。
その際に慧音はお菓子作り(特に和菓子)に関する知識や技術を丁寧にアリスに教えてあげたのだ。
おかげでお茶会のお菓子は大好評。
アリスは慧音にお礼を言い、(お茶会終了後に作成した)慧音人形と、改めて作った和菓子を慧音に渡していた。
一方の慧音も、アリスのひたむきな姿勢と人柄に好感を持っていて、それ以後もたまにやってくるアリスとの交流を楽しんでいたのだった。


そして今回、アリスが慧音邸にいるのは、あるイベントのためだった。
そのイベントとはバレンタイン。
自分にとって大切な人達にチョコレートなどのお菓子を渡すことで、相手に感謝や友情、愛情などの気持ちを伝える大事なイベントである。





             ~数日前~


アリスは自宅で数日後に迫ったバレンタインに渡す人をリストアップしていった。
魔理沙、霊夢、妖夢、幽々子、里の人達(子供達)、慧音、妹紅、紅魔館の面々………  

「ん~、困ったわね……」
アリスは名前を書いていくうちにあることに気付いた。
どちらかというとアリスは洋菓子の方は得意だが、和菓子はそれほど自信が無い。
そして、渡す相手の中には洋菓子よりも和菓子のほうが好きな人達もいる。
もともとは洋菓子(チョコレートやケーキなど)を渡すものだと聞いているが、やっぱり相手に喜んでもらえるものが一番だろう。
あるいは少し手を加えて、洋菓子になれていない人でも食べやすいものを作るのも良い。
それに、今回は何パターンも作るつもりなので(魔理沙用、霊夢用、妖夢用等)1人だと厳しい。

「幸い、まだ日数には余裕がある……
また慧音に協力してもらいましょうか」

アリスの知り合いで、和菓子に詳しくお菓子作りを手伝ってくれる人物といえば慧音だ。
以前にも無理を言ってお願いしたことがあるので少し気が引けるが、現実的にアリス1人では難しい。
アリスは慧音邸へと飛んだ。
アリスと慧音はお互いの持っている和菓子・洋菓子の知識を教え合い、相手に納得のいくものを渡せるようにお菓子作りを続けたのだった。






         ~バレンタイン前日・夜~



アリスと慧音の前には大量のお菓子(ケーキやチョコレート、クッキーなど)が並んでいた。
慧音は里の人達、アリスは紅魔館のメイド達の分がすごい数になった。
もちろん、数が多いからといって手抜きではない。
2人とも1つ1つ丁寧にしっかりと作り上げたので、どれも自信を持って渡すことが出来る。

「やったわね」
「ああ、そうだな。
しかし、アリスが紅魔館の面々とそんなに親しかったとは知らなかったな」
「ふふ……ちょっとの間だけど、メイドとしてお世話になったことがあるのよ」


アリスは懐かしそうに微笑んでいる。
あの後も本を借りに行く時は裁縫を手伝ったりすることもあるし、仲良くやっている。
パチュリー・咲夜達の分は個々に形と味などを変えているが、
メイド達の分は基本的(お世話になった裁縫隊以外)には数種類のバリエーションの中から、
お好みのものを食べてもらうようにした(さすがに、全員の細かい好みまで知らないからだ)。
そして、現在の正確な人数もわからないし、量はかなり多めに作った。
門番隊の人達はたくさん食べるだろうし、すぐに駄目になるようなものでもない。
きっと喜んでくれるだろう。

アリスは慧音に改めて御礼を言って、家へと戻った。
明日は早くからみんなのところを回る予定なので、すぐにベッドに入った。








           ~バレンタイン当日~




               【白玉楼】



「こんにちは、妖夢」
「いらっしゃい、アリスさん」

妖夢はいつものように幽々子の待つ部屋へとアリスを案内する。
アリスは大きな袋と中くらいの大きさの袋を持っていて、それが一目でバレンタイン用だとわかった。
妖夢は無意識のうちに視線をアリスからその袋のほうに向けてしまい、慌ててアリスに視線を戻した。
アリスは妖夢の視線にしっかりと気付いていたようで、柔らかい微笑で「後でね」と小さな声でささやいた。

妖夢は恥ずかしさで顔を赤らめながら、ぺこっと頭を下げて幽々子の元へと案内する。
アリスはその動作がかわいくて、悪いと思いながらも笑いをこらえることが出来なかった。
「ありがとう」とだけ返して、嬉しそうに妖夢の後についていった。





「いらっしゃい、アリス。
妖夢、お茶とお菓子をお願いね」

「はい。畏まりました」

妖夢が部屋を出て行くと幽々子は嬉しそうにアリスが持ってきた袋を見る。

「あらあら、なんだかとってもたくさん入ってるみたいね~。
それに、あきない様にうまく味・形に変化をつけてくれたのかしら?」

「……え、ええ。開けてないのによくわかるわね」
「ふふふ♪」

アリスは袋を自分のそばにおいたままなので、袋の大きさと膨れ具合から量はわかっても中身まではわからないはずだ。
相変わらず食事に関してはかなわないな、とアリスは思う。


「お待たせしました。お茶とお菓子をお持ちしました」

妖夢は手早く丁寧にお皿やお茶、お菓子を並べると腰を下ろす。

「それじゃあ、交換を始めましょう~。
ほらほら、妖夢、早く早く」

妖夢は上機嫌で急かす幽々子を見ながら少しはしたないとなぁと思ったが、
年に一度のイベントなのだし気にしないようにした。
嬉しくて内心はしゃいでいるのは、妖夢にとっても同じなのだから。

アリスから受け取ったお菓子含めて、全てのお菓子が3人の前に行き渡ると、
幽々子は手早く(1言で)挨拶のようなもの(視線はずっとお菓子に注目していてめちゃくちゃだった)を済ますと、みんなで食べ始めた。

せっかくなので、みんなで各人の食べ比べをしようということになり、
まずは幽々子の作ったお菓子(ティラミス)を食べる(本人も味を確かめるため、相手のものとは別に自分用のものも置いてある)。



「……おいしい」
「わぁ。さすが幽々子様」
「ん~、上出来かしらね」

幽々子のティラミスは、見た目はとてもシンプルだが味が深く上品で繊細、とても素人が作ったとは思えないほど美味しいものだった。
アリスは、舌の肥えている幽々子が作ったものだから美味しいとは予想していたが、ここまでとは思わなかった。
アリスはほんの一瞬だけ、《どうして?》という表情を浮かべたが、すぐにそのことは忘れ、味を楽しんだ。
対して、妖夢はさすがに幽々子の料理の腕を知っていたようで、アリスほど驚きはしなかったものの、ゆっくりと咀嚼し味わって食べていた。


アリスと妖夢が食べ終わると、幽々子は待ちかねたようにアリスのお菓子を手に取る。
そして全員で同時に一口目を味わった。

「…うん」
「美味しいです、アリスさん」
「美味しいわね~」

幽々子が食べたのは甘味を抑えた大人のしっとりとしたチョコレートケーキだ。
ほろ苦いブラックココアスポンジに、チョコムースと小豆のクリームを使い、しつこくないように分量・甘さを調節した一品。
そして妖夢が食べたチョコレートケーキは、クーベルチュールチョコレート(カカオバターの含有量が高い製菓用のチョコレート)を使った甘いケーキ。
アリスが妖夢のために磨きをかけたテンパリング(温度調節)で、つややかで、舌触りは滑らか、口当たりの良い一品となった。


幽々子用に用意された特大のチョコレートケーキを食べ終えた幽々子は、美味しそうに食べる妖夢をじっと見つめると、
アリスに微笑みかけながらおかわりを注文した。

「ねぇねぇ、アリス。せっかくだから妖夢が食べているのも欲しいわ~」
「はいはい。そういうと思って用意してあるわよ」

アリスは予備として持ってきた分を幽々子に渡す。

「ん~、やっぱりこっちも美味しいわね」

幽々子は幸せそうにケーキを食べている。
自分の作ったケーキをこんなに喜んでくれて食べてくれて、アリスも嬉しく思った。

「あの…… アリスさん、出来ましたら私にも幽々子様が食べていたケーキを頂けませんか?
その、とっても美味しかったので」

「本当? ありがとう。嬉しいわ。
ただ、あれは幽々子の分だけであまりがないのよね…」

アリスはちょっと困った顔をした。

「もしよかったら、私のケーキをあげる。
 ほんの一口しか食べてないし、私はもう作っている最中に何度も食べているから」
「え、でも……」

「いいから、いいから。 はい、召し上がれ」

アリスは普段それほど食べない妖夢が、自分からアリスの料理をもっと食べたいといってくれたことが嬉しかった。
他には何も考えていなかった。

「あ……、で、では頂きますね」

妖夢は少し恥ずかしそうにゆっくりと食べ始めると、小さく「美味しいです」とだけ言った。

幽々子はもちろん妖夢が恥ずかしがっていた理由(間接キス)に気付いていたが、面白そうに見ていただけだった。

その後、妖夢の作ったお菓子(チーズケーキ)を全員で食べ終わる頃にはもうお昼近くになっていた。
アリスはこの後、一度家に帰って、魔理沙と霊夢にもお菓子を渡しにいく予定だったので、玄関へと向かった。
妖夢が見送りをしようとすると、幽々子は妖夢に「ちょっとお話があるから、あなたは待っていなさい」と言いつけ、
アリスと幽々子の2人で玄関へとやってきた。




         【白玉楼・玄関】


アリスと幽々子は互いに呼んでくれたこと、来てくれてことにお礼を言い、アリスが帰ろうとしたその時、幽々子はアリスを呼び止めた。

「アリス、あなた私に聞きたいことがあるんじゃないかしら?」
「……気付いていたの?」
「…………」

幽々子は答えないが、その表情が十分に物語っていた。
いつものからかいの表情ではなく、不思議と優しい笑顔でアリスを見つめている。
アリスは少し迷ったが、今の幽々子ならきっと問いに対しては答えてくれる、そう思って聞いてみることにした。

「ねぇ、幽々子。1つ聞きたいんだけど、いいかしら?」
「ええ、どうぞ」
「私が最初におはぎを作って渡した時、本当はそれほど美味しくなかったんじゃない?」
「どういうこと?」
「私… あなたがあんなに料理が上手だったなんて知らなかったのよ。
あなたは今ほとんど料理しないみたいだけれど、多分あなたが作ったほうが美味しかったんじゃないかって思ってしまって……」

アリスは少し悲しそうに言った。

「そうね~。確かにそうかもしれないわねぇ」

アリスはその言葉を聞きながら「やっぱり」と下を向く。

「けれど、そうとも限らないけれどね」

「……どういうこと?」
「ねぇ、アリス。あなた、誰かに料理を作るとき、何を思って作っているかしら?」
「え? それは、喜んでもらおうと思って……」

幽々子はにっこりと笑って、柔らかい声でアリスに返す。

「ふふ、そうよね。その人に喜んでもらいたい。
美味しいものを作って、幸せに笑ってもらいたい…。
料理ってね、そういう気持ちがとても出やすいものなのよ。
温かさとかね…。
アリスの料理には、優しい気持ちがこもっているわ。
技術なんかよりね、そっちのほうがずっと大切なのよ。
……私はね、アリスの料理大好きよ」


幽々子の言葉を聞いていくうちに、アリスの瞳からすっと涙が落ちる。

「……あ。ご、ごめんなさい。私──────」

幽々子は涙を拭こうとするアリスを強引に、そして優しく抱きしめた。

「ありがとう、アリス」

「……っ」

アリスは何か言葉を返そうと思ったが、うまく声が出なかった。
だから、それは幽々子が強く抱きしめているせいにして、身体からゆっくりと力を抜いた。
幽々子は死んでいるはずなのに、やけに温かかった。









「……ありがとう。もういいわ。
ねぇ、私は幽々子の優しいところは好きだけれど、意地悪なところはあまり好きじゃないわ」

「そう? 私は優しいアリスは好きだけど、かわいいアリスはもっと好きよ?」

アリスは落ち着いてきた顔をまた赤くしながら、慌てて幽々子から離れた。

「か、からかわないでよ……。
もういいわ。私はこの後も用事あるし、いったん家に帰るわね」

「そう? わかったわ」

アリスが浮いたのを見て、幽々子は玄関のほうに歩き出した。

「……幽々子」

「あら、な~に?」

幽々子は楽しそうに振り返った。

「さっきは、ありがとう…」

アリスは幽々子にもう一度お礼を言って、恥ずかしそうに笑顔を向けると家に帰っていった。


幽々子はもう飛んでいってしまったアリスに向かって言葉を返した。

「……どういたしまして」

幽々子は満足そうに笑って、中に戻っていった。








         
              【アリス邸】



「ただいま~」
アリスは家に帰ってくると、すぐに渡してもらうお菓子の準備を開始した。
紅魔館へのお菓子を持って行ってもらう役は上海達にお願いし、慧音と妹紅、人里(子供達)へのお菓子は蓬莱達にお願いした。
「特に急いでいないから、安全に傾けないように運んでくれる?」
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
上海達と蓬莱達は元気よく返事をすると、アリスからお菓子の箱を受け取り飛んでいった。
アリスはそれを確認すると、魔理沙と霊夢に渡すお菓子(チョコ)を大事そうに抱え、博麗神社に向けて飛んでいった。

今日、アリス・霊夢・魔理沙の3人はそれぞれチョコを持ってきて、お互いの気持ちを確認する(言いたいことを言い合う)約束をしていた。
それは友達として大事だとか、いっしょにいて楽しいとか、好きだとか… 相手に想っている感情をぶつけようというのだ。
言いだしたのは魔理沙。魔理沙にとってはイベントだから面白そうと言う理由での発案だったかもしれない。
しかし、アリスにとってはそんなに軽く受け入れられるものではなかった。
反対はしなかったけれど、やっぱり少し怖い。
気持ちを伝えるというのは時に残酷な結果を生み出すことにもなるから…。
けれど、アリスは正直にこの気持ちを伝えようと思った。
今日、魔理沙と霊夢に告白する。
2人が受けとてくれるかどうかわからないけれど、そう決めた。
アリスは飛ぶペースをあげた。








              【博麗神社】


  
アリスが神社に着くと、霊夢はいつもどおりの場所でお茶を飲んでいた。

「お待たせ。ごめんなさい、遅くなっちゃった。
魔理沙の姿が見えないけれど、まだ来てないの?」
「ええ、魔理沙はまだ来てないわ。
お昼ぐらいに、まだしばらくかかりそうだって言っていたから、もう少しかかるでしょうね。
今、お茶入れてくるから待ってなさい」

霊夢はそう言うと2人分のお茶と、赤い袋を持ってきた。

「はい、どうぞ」
「ありがとう、霊夢。
……うん、おいしいわね」
「そう?」
「ええ、とっても」

アリスは先程までの緊張がとけていくのを感じながら、美味しそうにお茶を飲む。
霊夢も同じようにお茶を飲み、2人とも少し落ち着いたところで霊夢が口を開いた。

「ねぇ、アリス。魔理沙は多分まだ少しかかるだろうから、先に私たち2人で交換しない?」
「………え?」
「だから、先に私とチョコの交換をしない?
魔理沙とは後でまたすればいいでしょ?
それに、やっぱりこういうのって3人より2人のほうが良いと思うし」


アリスは霊夢の言葉に少し迷った。
もともと今回のことは魔理沙が言い出したことだが、待ち合わせの時間こそ決めたものの、
3人いっぺんに(チョコの交換+話を)やると決めていたわけではない。
それに、3人でやるよりも2人のほうが話しやすいのは事実だし、
3人のうち2人(私と霊夢)の間でだけでも話がまとまっていたほうがいいのもたしかだ。
3人がばらばらで話が全く伝わらないというケースは避けたい。
なんせ、相手は魔理沙と霊夢。話を聞こうとしない代表だ(魔理沙が《話し合おう》ではなく、
《言い合おう》と言ったことからも、予測できる)。
話の途中で喧嘩になって弾幕勝負にでもなったら目も当てられない。
抜け駆けするようで少し悪い気はするが、魔理沙が来てからまたアリスと霊夢からそれぞれ《交換+話》という流れでも大丈夫だろう。

アリスは納得した様子でうなずくと、持ってきた霊夢のチョコを袋から出した。
チョコを大事そうに抱え、少し恥ずかしそうにアリスは霊夢に話しかける。

「じゃあ、まずはチョコの交換ね。
はい… 受け取ってくれる?」
「ええ、もちろんよ。ありがと。
じゃあ、これは私から。
そんなに得意じゃないから、期待しないでね」
「ううん、ありがとう。
嬉しいわ。開けていい?」
「ええ」

2人とも入っている箱からチョコを出す。
アリスが霊夢に渡したのは人形型のチョコ。もちろん霊夢そっくり。
少し甘めで、ホワイトチョコレートなども使い、色まで再現したアリスの自信作だ。
対して霊夢がアリスに渡したのはシンプルな丸いチョコ。そして真ん中に《アリスへ》と書いてある。
ほんの少しひびがあるが、お菓子の製作などをろくにしたことが無い霊夢が頑張って作ったのがわかる。とても美味しそうだ。

「ありがとう。なんだか食べるのがもったいないくらい」
「そう? でも、アリスが作ってくれたチョコの方がもったいないわね。
これ、私でしょう? よく出来てるわね」

「あはは…… もしかして、嫌だった…… かしら?
がんばって作ったんだけど……」

アリスは悲しそうにうつむいてしまった。

「え? いや、そんなことないわよ。嬉しいわ。
すぐに食べるのはもったいないぐらい。ありがと、アリス」

実際、あまりにもよく出来ていて、食べるのをためらわせるチョコだったが、嬉しかったことは確かだ。
霊夢は大事そうにチョコをしまい、それを見てアリスも霊夢からもらったチョコをしまう。


「さ、それじゃあ話を始めましょうか。
アリスからまず私に言うことはある?」
「ええ、あるわ。その…… 驚かないで聞いてくれる?」
「ええ」
「その……ね。
なんとなく気付いているかもしれないけど、私は霊夢が好き……」
「………」
「霊夢が入れてくれたお茶を飲みながら2人でゆっくりとするのも、私が作ったお菓子を嬉しそうに食べてくれる霊夢を見るのも、
私はとても嬉しいし、落ち着くの。
ずっと会えなかったら寂しいって思うし、一緒にいてくれると温かい気持ちになるわ。
……これが恋だとか、愛って言葉に当てはまるのかどうかわからないけれど、今の関係に私は満足しているつもり。
霊夢のことを傷つけたりはしたくないし、そういうことをしたいとも思わないわ。
だから、霊夢には今のままの霊夢でいて欲しいって思ってる…」

「……魔理沙のことは、どう思っているの?」

「霊夢に対してと同じ…… 好き…。
魔理沙は本当に無茶をして私を振り回すし、強引で自分勝手なところがあるけれど、そういうところも含めて好きなの。
直して欲しいところもあるけれど、魔理沙と一緒にいるとドキドキするし、楽しいの。
魔理沙の笑顔を見たらドキッとするし、困っていたら助けたいって思うわ。
でも、魔理沙に対しても、そういうことをしたいとは思っていないし、今のままが良いって思っている」
「…………そう」
「私のこと……  嫌いになった?」

アリスは不安そうに尋ねる。

「…ううん、そんなこと無いわ」

霊夢は優しくアリスの肩に手を置くと、柔らかい笑顔でアリスを安心させた。

「でもね、アリス。1つお願いがあるわ」

「何? 霊夢」

「もう少し、私のところ(博麗神社)に来てくれると嬉しいわね。
差し入れとかいらないから…… 私も多分、アリスのことが好きだから……」

「……れ──────」

アリスが霊夢を呼ぼうとすると、霊夢はふわっとアリスを抱き寄せた。

「……っれ、霊夢?」
「約束…… してくれる?」

霊夢は笑顔のままアリスを抱きしめる。
そして、その手に力を入れようとしたその時───────






「霊夢~~~~~~~~~~~~!!」

大きな声と共にアリスの前を星型の弾幕が通り過ぎていった。


「…………っえ、魔理沙? どうして?」

アリスが不思議がるのも当然だ。魔理沙は神社の外からではなく、中の一室から出てきたのだから。

「あら、魔理沙。いらっしゃい。お帰りはあちらよ」

霊夢はそう言って魔理沙の家のほうを指した。

「何がいらっしゃいだ、この監禁巫女!
よくも私を閉じ込めてくれたな」

「え? ど、どういうこと? ねぇ、霊夢。
魔理沙はまだ来てないんじゃなかったの? 遅れて来るって言ってたよね?」

「いいか、アリス。私はアリスが来る前にとっくにここに来ていたんだよ。
霊夢に言われて早めに来てくれって言われてな!」

魔理沙は霊夢を睨めつけるが、霊夢は全くこたえていない。

「なにか先に用があるのかと来てみりゃ、霊夢に今の今まで縄で縛られた上に結界で閉じ込められてたんだよ、私は」

「…ほ、本当なの? …霊夢?」

「あ~、まあ……ね。
でも、おかしいわね。(私が奪って)八卦炉も箒も別の部屋隠しといたはずだし、どうやってあの結界を破ったの?
邪魔されないように防音まで完璧のやつ(結界)にしたのに」

霊夢は、不思議そうに魔理沙に尋ねた。

「紫に助けてもらったんだよ」

魔理沙はよほど怒っているようで、表情がすごいことになっている(八卦炉と箒の場所も紫から教えてもらったらしく、
その手にしっかりと握られている)。

「あ、なるほどね。起きてたんだ、紫」

「……………」

さすがに霊夢も魔理沙が怒っていることに気付いた。
ちょっと気まずそうに、魔理沙に聞いてみる。

「…………え~と、怒ってる?」

「当たり前だ~~~~~~~~!!!」



魔理沙は大声で叫びながらマスタースパークを霊夢にお見舞いすると弾幕勝負を始めた。

アリスは一瞬止めようかとも思ったが、魔理沙の怒りはちょっとやそっとじゃ収まらなさそうだったので、放っておくことにした。





~~少女弾幕中・しばらくお待ち下さい~~



「~~もう、わかったわよ。私が悪かった。いい加減許してよ~~」
「その声は全然反省してないだろうが~~~~~~!!」



~~少女さらに弾幕中・もうしばらくお待ち下さい~~



「…っはぁ……っはぁ……。わ、悪かったわよ。本当に、もうこんなことしないから」
「当たり前だ。今度こんなことやったら、お賽銭箱ごと持っていくからな!」

  


ようやく魔理沙の怒りが収まったところで、アリスは2人から事情を聴いた。
どうやら霊夢は、アリスが魔理沙のことを好きなことを知っていて、アリスを魔理沙に取られないように(霊夢曰く)説得するつもりだったらしい。
無事アリスも霊夢を好きなことを確認した後は(霊夢曰く)保険をかけた後、魔理沙を結界から出すつもりだったらしい。
霊夢は魔理沙のことを嫌いではないが、魔理沙よりも(霊夢曰く)ちょっとだけアリスのほうが好きらしい。



「あ~あ~、神社がめちゃくちゃね。
魔理沙、手伝ってくれない?」

「バカヤロー!! 1人で直せ!」

……どうやら霊夢はそれほど反省していないようだ。
結局、その後は魔理沙のチョコをアリスと霊夢(魔理沙は渡したくなさそうだったけど)が受け取り、
アリスと霊夢のチョコを魔理沙が受け取って(霊夢のチョコには毒が入っているかどうか確認するといっていたが)、
無事(?)バレンタインとしての本業をまっとうできた。

話し合いの方も、アリスが事情を聴いている時に、お互い(口は悪かったが)言い合っていたので、目的は達成できた。
予定とは違ったが一応3人とも納得し、魔理沙もアリスも家に帰っていった。









              【アリス邸】



「ただいま~~。遅くなってごめんね」

アリスが家に帰ると、上海と蓬莱が飛んできた。

「シャンハーイ」
「ホラーイ」

上海と蓬莱はアリスに無事頼まれごとをこなしたことと、もらってきた荷物のことを話す。
「上海、蓬莱。 ありがとう、ご苦労様」
アリスは優しく抱きしめて、テーブルの上に置かれた荷物をほどいていく。

「あ、これは……」

慧音と妹紅からは上海と蓬莱の絵が描かれたクッキー、そして紅魔館からはお菓子の詰め合わせ(大量)と、
働いていた時に着ていたメイド服だった。

「もう、これを着ることなんてないのにね……。
咲夜………ありがとう」

このメイド服はアリスが短い間ではあったが紅魔館の一員であった証のようなものだ。
多分、咲夜が私(アリス)にそのことを忘れないようにと渡してくれたのだろう。
メッセージカードはついていないが、そのぐらいのことはわかる。

幽々子と妖夢(帰り際にまたもらった)、魔理沙と霊夢からもらったお菓子もそっとテーブルの上に置く。

あまり広くないテーブルに、小さな山のように積み重なったものを見ると、支えてくれる人達がいることを実感できて、
アリスは嬉しくなった。

「ありがとう、みんな。
これからもよろしくね」

アリスはベッドで幸せそうに眠りに落ちた。
今日も幻想郷は平和であった。
5作品目の投稿となります。
白玉です。

ゆったりと進んできたこのシリーズも、この作品で終わりです。
読んで下さっている方々の期待に沿えたかどうかわかりませんが、
楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。

読んで頂きましてありがとうございました。

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次回作も期待します
10.80名前が無い程度の能力削除
よかった。これまでのもとても好きだったし、終わるのは正直残念。この作品の空気がとても好き。ただ、何だろう、ずっと感じていたのですが、何か会話が不自然というか、造られたもののように感じてしまいます。こう言ったら、こう返す、みたいな。
11.-10名前が無い程度の能力削除
つまらなかった
14.100名前が無い程度の能力削除
相変わらずホッとする雰囲気ですね。あーでもこれが最終回か~。
今まで清涼飲料水をありがとうございました!
ただ、文章の少し説明的な辺りが気になりました。括弧で説明しすぎると不自然に見えます。
次回作も楽しみにしてます!
17.90名前が無い程度の能力削除
アリスが人気者な話が好物な私にとって、ど真ん中ストライクなシリーズでした。後日談も読みたいくらい。
19.80名前が無い程度の能力削除
これは和みたいときに読むととても和めるSSだな
実に素晴らしい
27.100名前が無い程度の能力削除
うーむ、このシリーズこれで終わってしまうのか、残念。
全話通して非常に面白かったです、次回作も期待しています。
28.50名前が無い程度の能力削除
なんといいますか、途中を色々と省略していて勿体ないと思います。
>幽々子は手早く(1言で)挨拶のようなもの(視線はずっとお菓子に注目していてめちゃくちゃだった)を済ますと、みんなで食べ始めた。
こういうの。

>持ち前に器用さと人形操術で仕事をこなし、
>新人の妖精
持ち前のです。あと文中に改行が入ってしまっています。
30.80名前が無い程度の能力削除
>アリスと慧音はのお互いの
アリスと慧音はおのおのお互いの   かな?

作品の雰囲気がとても好きでした、次回作にも期待してまs!
31.80名前が無い程度の能力削除
バレンタイン前日に心を込めてチョコを作る乙女は幻想郷入りしたようですね