この世には変わらないものがあれば変わるものもある。
そう、人の性格などもそのうちの一つである。
変わらないもの。それは確実に動かない事実。
例えば―――――大切な人が死んだ。
そのほかにもたくさんある。
春の昼下がり、太陽の光が容赦なく降り注ぐ。
その太陽の下に日傘を差し歩く人物が見える。
――――いや。人ではない。
彼女はレミリアスカーレット。
幼い姿にして恐れられた吸血鬼であり、紅魔館の主でもある。
しかし、その幼い面影は一切見られらない。
今の彼女は昔の子供のまま、では無く立派な大人びた吸血鬼となっている。
そして彼女の白い肌の右手には大量の花。
そして彼女が向かう先には大きな木・・・その下に一つ小さな石碑があった。
そこに刻まれた名前は――――――――
――――――――――――――――紅魔館 ○代メイド長 十六夜 咲夜――――――――
―――――――――――――――――――――――――ここに眠る――――――――――――――――
レミリアはその石碑の前で立ち止まり、呟く。
「やっと。やっと会いに来れたわ。――――咲夜。」
それは紅魔館のある1日だった。
平凡な日々が続く。
「咲夜ー紅茶頂戴ー」
「お待たせしました」
待ってないって。
すぐさま血の混じった紅茶をレミリアの前へと・・・置かなかった。
否。
置けなかった。
咲夜はそのまま持っていた紅茶を落とす。
そしてレミリアは目を疑う。
「―――――っ!咲夜っ!?」
咲夜が倒れこんでいた。
咲夜の体を起こし膝枕をする。
「す、すみませ――」
「黙りなさい!誰か!!美鈴に永琳を呼んでくるように伝えて!!」
近くにいた妖精が窓から飛び出て美鈴の元へと向かう。
「―――――なんですって!?咲夜さんが倒れた!?」
咲夜が倒れた事を聴くとすぐさま竹林の奥の永遠亭へと出発する。
「咲夜さんっ・・・!」
彼女はこれほど無いぐらい全速力で永遠亭へと飛ぶ。
一方レミリアの部屋。レミリアのベットに咲夜が寝ていて、その息は荒かった。
「ハッ、ハッ・・・・」
「咲夜っ・・・!」
レミリアは横で手を握る。
しかしその手にあのナイフを投げるような気力は無く、弱弱しかった。
そしてその手を見るといくつもの傷が見える。
彼女ならこんな傷を負うことはまず無い。
「咲夜っ・・・!かなり前から無理してたのね・・・」
そこに美鈴が扉を勢いよく開け入ってくる。
「お嬢様!永琳様をお連れしました!」
「永琳!咲夜がっ!咲夜がっ!」
ベットに弱弱しく寝ている咲夜を見るやいなや、すぐさま鞄より聴診器を取り出し胸に当てる。
「まずいわね・・・。このままだとそうもせず内に心臓が止まるわ。不整脈を起こしている」
「な、なんとかならないのっ!?」
「なんとかなるなら、もうとっくにやってるわよっ!!!」
思わず大声を出してしまう。
「ごめんなさい。咲夜の能力は、時をを操る能力。多分だけど、咲夜は長期にわたってソレを使ってきたわ。多分だけどその能力を使ったときどこかの臓器に負担、もしくは何らかの力がかかる。
しかも咲夜の能力は未だに不明・・・。どこの臓器に負担がかかっているのか すらわからない。薬は作用する場所によって配分を変えるわ。もしあてずっぽうに調薬して飲ませたとしても、逆に負担をかけるだけ・・・」
永琳はレミリアの顔を直視できないで居る。
「咲夜の能力の詳細が分からない限り―――――私にはどうすることも出来ないわ。ごめんなさい。」
「そ、そんな・・・」
レミリアはその場に崩れ去る。
幻想郷でもっとも病気について詳しいのは多分永琳である。
もっと詳しいものも居るかもしれないが、そんなものを探している余裕は無い。
「レ、レミリアお嬢様・・・。も、申し訳ありません・・・。私はここまでのようです・・・。わ、私が居なくなっても・・・しっかり生活をなさるようお願いします・・・。それがメイド長としての最後のお願いでございます・・・」
レミリアは再度咲夜の手を取ると涙をこぼし始める。
決して人前では見せない吸血鬼の涙。
しかし運命は無常に裏切る。
咲夜の手から力が抜ける。
永琳が首元に手を当て、静かに、だが、はっきりと告げた。
「―――――4月4日0時49分52秒・・・心肺停止・・・っ」
「そ、そんな・・・」
レミリアは咲夜を抱きかかえ泣いた。
目から涙と言う大量の雨を降らせて。
咲夜の頬がレミリアの涙の雫により濡れる。
「咲夜っ!!何時もみたいに!!私に言ってよ!!お嬢様って・・・!勝手に行かないで・・・」
しかしその言葉に反応を示さず、ピクリとも動かない。
それどころか逆に冷たくなり始める。
永琳達は気を聞かせ外へと出る。
外でも咲夜の死を悲しむものがいる。
「パチュリー様・・・」
レミリア同様にパチュリーも目から少しではあるが涙を流していた。
「逝った・・・のね」
「はい。咲夜さんは・・・たった今旅立たれました」
声を必死に振り絞る美鈴。
その声もかなり震えていた。
あの、厳しいけど優しい咲夜、十六夜 咲夜がもうこの世には居ない・・・。
その十六夜の夜、紅魔館には一夜、主の声がずっと響いていた。
そして次の日の夜。彼女の葬儀が行われる。
紅魔館の前の湖へと大勢の人や妖が集まる。
その姿は、博麗の巫女、霊夢から魔法使いの魔理沙、アリス、パチュリー 白玉楼からは幽々子と妖夢。
紫や藍、萃香など大勢の立会人が居る。
勿論全員黒い服を着用している。
しかしこのメンバーの中には1人足りない人物が居る。
そう。レミリアである。
パチュリーは館へと戻るとレミリアの自室へと入る。
「ノックもせず入ってくるなんて失礼じゃない?」
「・・・。いいのかしら。葬儀に出なくて」
「いいのよ。私の泣き顔を見られたくないもの。今は平気だけど咲夜の顔を見たらまた・・・泣き出しそうだし」
「・・・。泣いてもいいんじゃないかしら?ここには今の貴女をとがめる人は誰も居ない。もし居たら私が殺すわ」
「パチェ・・・」
その言葉に再びレミリアの目に水滴がたまり始める。
そして、パチュリーの胸へと飛び込み、また泣いた。
それと同時に咲夜の棺桶に火が放たれる。
「咲夜さん・・・。貴女はいいライバルでした。今までありがとうございました」
魂魄 妖夢である。
彼女は泣きながらも深々とお辞儀をした。
泣かない者のほうが多かったが多分心の中では泣いていることだろう。
幻想郷にはこうも鉄扉皮が多いのである。
火を放たれ燃え盛る棺桶
それをバルコニーから見る2人の影。
「咲夜・・・今までありがとう。これからちゃんと1人でやっていくわ」
しかしソレを否定する声が上がる
「それは違うわ。貴女は一人じゃない。美鈴も居るし、小悪魔も居るし私も居る。少なくとも1人ではないはずよ」
「・・そうね」
「さぁ、行きましょう。主である貴女が従者の旅立ちを見届けないでどうするの」
「そうね」
そして咲夜が旅立った後、
もう心配しないで。といわんばかりの大規模な宴会が開かれた。
「咲夜。もう私は大丈夫よ・・・今までありがとう」
それは咲夜の死・・・ 人間にしてはあまりにも早すぎる死であった。
昔のことを思い出しつつレミリアは石碑の前に跪き、咲夜の墓にそっと手を載せる。
石碑はもう何年たったのか分からない。紅魔館 ○代 というところまでは完全につぶれてしまい見ることが出来ない。
そして付いた汚れを持ってきた布でふき取り、綺麗に磨いてあげる。
もし、もしも咲夜が生きているのなら先代のメイド長の墓掃除は咲夜にやらせただろう。
しかし、咲夜の墓は私が手入れをする。と言って願と聞き入れなかったレミリアである。
「ごめんなさい。今まで会いにこれなくて・・・」
そういいつつも咲夜の墓の周りの草を綺麗に抜いていく。
あのお嬢様とはまったくと言っていいほど面影が重ならない。
そして花を沿え、立ち上がる。
「咲夜。あなたが死んでからかれこれ400年・・・。幻想郷も変わったわ。今日はその報告をしようと思うの。」
そういうと報告を始める。
「まずは博麗の巫女ね。 霊夢は・・・貴女が死んでから60年後に死んだわ。病になんどかかかったけど永琳のお陰で長生きできた・・・。
でも貴女とは違うわ。今霊夢は白玉楼にて幽々子と生活しているわ。相変わらずあの庭師を困らせているみたい。今の博麗神社は5回、代替わりして新しい霊――が管理しているの。
次は魔理沙・・・。だけど彼女はまだ生きているわ。咲夜が死んだすぐ後・・・と言っても5年位あとだけど彼女は儀式を執り行った。
勿論アリスはやめたほうがいい と止めたがそれを聞き入れなかったらしいわ。そして今では純粋な魔法使い・・・。相変わらずの泥棒っぷりと派手な魔法で私を楽しませてくれるわ
紫は相変わらずぐーたらな生活。式に生活の家事を任せあちらこちらに出没しているわ。たまに私のところにも来るわよ。一緒に紅茶を飲むの。
伊吹山の鬼も相変わらず酒を飲んでいるわ。飲まなかったのは貴女の葬儀と霊夢の葬儀の時だけよ。
あの酔っ払いは勘弁してほしいわね
あ・・・。そうだ、私もね。変わったのよ。あれから体も成長して大人になった。日光にも少しぐらいなら耐性が出来たし川もわたれるようになったわ。
フランもね、今は監禁してないの。しっかりと力の使い方を覚えたから、破壊行動を繰り返すことも無かったからね。今でもたまに博麗神社に遊びに行くわよ。
亡霊の姫と庭師は相変わらずな生活を送っているわ。
庭師は1人世話をするのが増えて困った顔をしていたけど・・・。
図書館によく遊びに来るアリスも最近は見かけないわね。相変わらず魔理沙とつるんで彼方此方騒いでるみたいだけど。
でもたまに来るわよ?図書館のパチュリーとか私にクッキーを持ってきてくれたりするわ。意外と美味しいのよ?紅茶とよく合うし・・・
永遠亭の姫と妹紅は相変わらず殺し合いの日々ね。
一回館の目の前でドンパチやられたから私とパチェでボコボコにしたわ。
永琳ももうあきらめているみたいだったわね。フフッ
それからね、紅魔館のほうは貴女がいなくなってからもメイド達はよくやってくれるわ。咲夜の代わりになる!ってね。
いいことだわ。門番の美鈴は相変わらずだけど・・・。アレからも腕を磨き今では一流の門番よ。
魔理沙にも引けを取らないほど成長したわ。
変わるところはとことん変わるけど・・・ 変わらないものはまったく換わらないわね」
次の言葉が出ない。
その代わりに涙が出る。
「ああ。あれから400年たった今でもこうして涙を零してしまう・・・。こんなに女々しいとは思わなかったわ」
するとそこに足跡が聞こえる。
「あら?レミィも来てたの?」
「あ・・・。」
レミリアはすぐに涙を拭いパチュリーのほうへと向く。
「ええ。だって今日は咲夜の命日じゃない」
そう、今日は彼女の命日なのである。
パチュリーは咲夜の墓の前まで歩み寄り、
「レミィ。貴女は変わったわね」
「パチェ。貴女は変わらないわね」
パチュリーはレミリアが置いた花の上へとさらに自分が持ってきた花を置く。
「今ね。咲夜に今の幻想郷の報告をしていたの。喜んでくれるかしら」
「・・・ええ。きっと。きっと喜んでくれるわ」
静寂―――――
その静寂を破ったのはパチュリーだった。
「ねぇ。もう一度、咲夜に会いたい?」
「・・・。ええ。」
「いい事を教えてあげるわ。貴女は―――――今日」
その瞬間時間が止まった気がした。
ア・エ・ル
そうパチェの口は動いた。
「ほ、本当なの?」
「ええ。ずいぶんと前閻魔のところに行ってきてね」
「閻魔って・・・あの四季映姫・ヤマザナドゥ?」
「そうよ。彼女にね咲夜の魂が着たら使いを出してくれって頼んでおいたの、そしてその使いはまだ来ていない・・・。この意味が分かるかしら?」
つまり―――――彼女の魂はまだここにある。 そうパチュリーは言いたかったのだろう。
「でも。魂じゃ・・・あえないわ」
「・・・。私を誰だと思っているの。最近図書館にこもりっぱなしだったのは疲れたわ」
何時も篭りっ放しだろう とレミリアは突っ込みそうなったが今はそれどころではない。
「ほ、ホントに、会えるの?」
「ええ。今からはじめるわよ。この世に留まってられるのは多分―――――持って5分。早くて3分。」
400年の歳月がたったというのに再会の時間はあまりにも短く、非情だった。
「心の準備はいいわね?今から5分ほど詠唱するからその間に言葉でも考えておきなさい」
そういうとパチュリーは呪文を唱え始める。
「So here's voice wafting into accepting an undisclosed soul...」
何がなんだか分からない呪文を詠唱する。
レミリアの心臓はこれ以上内くらい大きく鼓動している。
何を言えばいいのかわからないまま時は進む。
「覚悟はいいわね。いい?1度だけよ。」
「え、ええ・・・。」
「蘇符「リバースソウル!!」肉体を一時的に魔力で構築・・・っ!」
次の瞬間とてつもない閃光が辺り一面を包む。
そして春になり新しい葉が芽生えた木の葉っぱを揺らす。
風が流れレミリアは髪の毛と帽子を押さえる。
その舞い散る葉のカーテンの向こうに懐かしい姿が見える。
その姿を見た瞬間胸が熱くなる。
あの、メイド服、何もかもを見透かすような鋭い目つき。華奢な体付き。
そしてあの―――――懐かしい声。
「お嬢様―――――お久しぶりです」
その声を聴いた瞬間体のうちからこみ上げてくる熱いものをこらえ切る事が出来なかった。
「あ、ああ・・・さ、咲夜っ―――!!」
そのまま涙を流しながら咲夜の胸へと飛びつく。
「咲夜っ・・・!咲夜ぁ・・っ!」
嫌な顔一つせずその涙を受け止める。
「お嬢様。大きくなられましたね。とても・・・素敵です」
レミリアは胸から顔を上げ、
「でしょう?あなたに負けないぐらい美人になったのよ」
咲夜は苦笑いをし
「お嬢様のほうが私よりずっと、ずっと美人ですよ」
ゆっくり笑った。
「咲夜っ!私、あれから頑張って、いろいろなことに挑戦して、それから、それから・・・」
「落ち着いてください。分かっていますよ。ずっとここからお嬢様のことを見ておりました」
「・・・。やっぱりお見通しね。咲夜には。」
「当たり前です。」
咲夜は視線を胸のレミリアからパチュリーへと移し、
「パチュリー様。お嬢様ともう一度会えたことを大変うれしく思います。本当にありがとうございました。それから・・・お嬢様のことをよろしくお願いします」
パチュリーは一間空けて
「ええ。任せてよ」
「これで安心です。」
静かにだが刻一刻と時は過ぎ去る。
次の瞬間。
咲夜の足の先が砂のように消え始める。
「さ、咲夜っ!!」
「すみません。もう限界のようです」
「そ、そんな・・・」
無情にも時は過ぎ去る。
「お嬢様のメイドであれて幸せでありました。命を助けていただいたご恩は忘れません。ありがとうございます。」
もう足の膝まで消えている。
「もう、時間です。」
「ま、待って!」
次の瞬間咲夜の唇にレミリアの唇が重なった。
それは一瞬ではあるが、とてつもなく長い時間にレミリアは感じ取れた。
とても暖かく、そして幸せな時間。
「か、必ずよっ!必ず!!私の元へ戻ってきなさい!約束よ!いや・・・命令よ!!」
唇を離し叫んだ。
「・・・。はい。畏まりました―――――お嬢様」
もう半分以上消え去っている咲夜は残った手でレミリアの頭をゆっくりと撫でる。
「お嬢様。これを差し上げます。私の宝物です。」
それは銀色の懐中時計だった。
「あなた・・・まだ持っていたの」
それはレミリアが初めて咲夜に上げた物だった。
「大切に、大切にするわ。」
その言葉を聴いてにっこり笑った。
それとは反対にレミリアの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
「では、お嬢様、―――――お元気で」
「咲夜っ!」
レミリアだけが分かった。
最後にゆっくりと、咲夜は微笑んでいた。
「咲夜――――――――――っ!!」
そして完全に消失。
次の瞬間強い風が吹き葉っぱ・・・。いや違う。墓の周りにいつの間にか咲いた大量の白い花の花びらが舞い上がる。
「行って参ります。お嬢様」
最後に咲夜の声が聞こえた気がした。
その後一時的な蘇生術により生き返った咲夜から貰った懐中時計は魔力により一時的に構成されているはずなのに、何時間立っても、何日立っても、何ヶ月たっても、何年たっても、消える事は無かっらしい。
そう、人の性格などもそのうちの一つである。
変わらないもの。それは確実に動かない事実。
例えば―――――大切な人が死んだ。
そのほかにもたくさんある。
春の昼下がり、太陽の光が容赦なく降り注ぐ。
その太陽の下に日傘を差し歩く人物が見える。
――――いや。人ではない。
彼女はレミリアスカーレット。
幼い姿にして恐れられた吸血鬼であり、紅魔館の主でもある。
しかし、その幼い面影は一切見られらない。
今の彼女は昔の子供のまま、では無く立派な大人びた吸血鬼となっている。
そして彼女の白い肌の右手には大量の花。
そして彼女が向かう先には大きな木・・・その下に一つ小さな石碑があった。
そこに刻まれた名前は――――――――
――――――――――――――――紅魔館 ○代メイド長 十六夜 咲夜――――――――
―――――――――――――――――――――――――ここに眠る――――――――――――――――
レミリアはその石碑の前で立ち止まり、呟く。
「やっと。やっと会いに来れたわ。――――咲夜。」
それは紅魔館のある1日だった。
平凡な日々が続く。
「咲夜ー紅茶頂戴ー」
「お待たせしました」
待ってないって。
すぐさま血の混じった紅茶をレミリアの前へと・・・置かなかった。
否。
置けなかった。
咲夜はそのまま持っていた紅茶を落とす。
そしてレミリアは目を疑う。
「―――――っ!咲夜っ!?」
咲夜が倒れこんでいた。
咲夜の体を起こし膝枕をする。
「す、すみませ――」
「黙りなさい!誰か!!美鈴に永琳を呼んでくるように伝えて!!」
近くにいた妖精が窓から飛び出て美鈴の元へと向かう。
「―――――なんですって!?咲夜さんが倒れた!?」
咲夜が倒れた事を聴くとすぐさま竹林の奥の永遠亭へと出発する。
「咲夜さんっ・・・!」
彼女はこれほど無いぐらい全速力で永遠亭へと飛ぶ。
一方レミリアの部屋。レミリアのベットに咲夜が寝ていて、その息は荒かった。
「ハッ、ハッ・・・・」
「咲夜っ・・・!」
レミリアは横で手を握る。
しかしその手にあのナイフを投げるような気力は無く、弱弱しかった。
そしてその手を見るといくつもの傷が見える。
彼女ならこんな傷を負うことはまず無い。
「咲夜っ・・・!かなり前から無理してたのね・・・」
そこに美鈴が扉を勢いよく開け入ってくる。
「お嬢様!永琳様をお連れしました!」
「永琳!咲夜がっ!咲夜がっ!」
ベットに弱弱しく寝ている咲夜を見るやいなや、すぐさま鞄より聴診器を取り出し胸に当てる。
「まずいわね・・・。このままだとそうもせず内に心臓が止まるわ。不整脈を起こしている」
「な、なんとかならないのっ!?」
「なんとかなるなら、もうとっくにやってるわよっ!!!」
思わず大声を出してしまう。
「ごめんなさい。咲夜の能力は、時をを操る能力。多分だけど、咲夜は長期にわたってソレを使ってきたわ。多分だけどその能力を使ったときどこかの臓器に負担、もしくは何らかの力がかかる。
しかも咲夜の能力は未だに不明・・・。どこの臓器に負担がかかっているのか すらわからない。薬は作用する場所によって配分を変えるわ。もしあてずっぽうに調薬して飲ませたとしても、逆に負担をかけるだけ・・・」
永琳はレミリアの顔を直視できないで居る。
「咲夜の能力の詳細が分からない限り―――――私にはどうすることも出来ないわ。ごめんなさい。」
「そ、そんな・・・」
レミリアはその場に崩れ去る。
幻想郷でもっとも病気について詳しいのは多分永琳である。
もっと詳しいものも居るかもしれないが、そんなものを探している余裕は無い。
「レ、レミリアお嬢様・・・。も、申し訳ありません・・・。私はここまでのようです・・・。わ、私が居なくなっても・・・しっかり生活をなさるようお願いします・・・。それがメイド長としての最後のお願いでございます・・・」
レミリアは再度咲夜の手を取ると涙をこぼし始める。
決して人前では見せない吸血鬼の涙。
しかし運命は無常に裏切る。
咲夜の手から力が抜ける。
永琳が首元に手を当て、静かに、だが、はっきりと告げた。
「―――――4月4日0時49分52秒・・・心肺停止・・・っ」
「そ、そんな・・・」
レミリアは咲夜を抱きかかえ泣いた。
目から涙と言う大量の雨を降らせて。
咲夜の頬がレミリアの涙の雫により濡れる。
「咲夜っ!!何時もみたいに!!私に言ってよ!!お嬢様って・・・!勝手に行かないで・・・」
しかしその言葉に反応を示さず、ピクリとも動かない。
それどころか逆に冷たくなり始める。
永琳達は気を聞かせ外へと出る。
外でも咲夜の死を悲しむものがいる。
「パチュリー様・・・」
レミリア同様にパチュリーも目から少しではあるが涙を流していた。
「逝った・・・のね」
「はい。咲夜さんは・・・たった今旅立たれました」
声を必死に振り絞る美鈴。
その声もかなり震えていた。
あの、厳しいけど優しい咲夜、十六夜 咲夜がもうこの世には居ない・・・。
その十六夜の夜、紅魔館には一夜、主の声がずっと響いていた。
そして次の日の夜。彼女の葬儀が行われる。
紅魔館の前の湖へと大勢の人や妖が集まる。
その姿は、博麗の巫女、霊夢から魔法使いの魔理沙、アリス、パチュリー 白玉楼からは幽々子と妖夢。
紫や藍、萃香など大勢の立会人が居る。
勿論全員黒い服を着用している。
しかしこのメンバーの中には1人足りない人物が居る。
そう。レミリアである。
パチュリーは館へと戻るとレミリアの自室へと入る。
「ノックもせず入ってくるなんて失礼じゃない?」
「・・・。いいのかしら。葬儀に出なくて」
「いいのよ。私の泣き顔を見られたくないもの。今は平気だけど咲夜の顔を見たらまた・・・泣き出しそうだし」
「・・・。泣いてもいいんじゃないかしら?ここには今の貴女をとがめる人は誰も居ない。もし居たら私が殺すわ」
「パチェ・・・」
その言葉に再びレミリアの目に水滴がたまり始める。
そして、パチュリーの胸へと飛び込み、また泣いた。
それと同時に咲夜の棺桶に火が放たれる。
「咲夜さん・・・。貴女はいいライバルでした。今までありがとうございました」
魂魄 妖夢である。
彼女は泣きながらも深々とお辞儀をした。
泣かない者のほうが多かったが多分心の中では泣いていることだろう。
幻想郷にはこうも鉄扉皮が多いのである。
火を放たれ燃え盛る棺桶
それをバルコニーから見る2人の影。
「咲夜・・・今までありがとう。これからちゃんと1人でやっていくわ」
しかしソレを否定する声が上がる
「それは違うわ。貴女は一人じゃない。美鈴も居るし、小悪魔も居るし私も居る。少なくとも1人ではないはずよ」
「・・そうね」
「さぁ、行きましょう。主である貴女が従者の旅立ちを見届けないでどうするの」
「そうね」
そして咲夜が旅立った後、
もう心配しないで。といわんばかりの大規模な宴会が開かれた。
「咲夜。もう私は大丈夫よ・・・今までありがとう」
それは咲夜の死・・・ 人間にしてはあまりにも早すぎる死であった。
昔のことを思い出しつつレミリアは石碑の前に跪き、咲夜の墓にそっと手を載せる。
石碑はもう何年たったのか分からない。紅魔館 ○代 というところまでは完全につぶれてしまい見ることが出来ない。
そして付いた汚れを持ってきた布でふき取り、綺麗に磨いてあげる。
もし、もしも咲夜が生きているのなら先代のメイド長の墓掃除は咲夜にやらせただろう。
しかし、咲夜の墓は私が手入れをする。と言って願と聞き入れなかったレミリアである。
「ごめんなさい。今まで会いにこれなくて・・・」
そういいつつも咲夜の墓の周りの草を綺麗に抜いていく。
あのお嬢様とはまったくと言っていいほど面影が重ならない。
そして花を沿え、立ち上がる。
「咲夜。あなたが死んでからかれこれ400年・・・。幻想郷も変わったわ。今日はその報告をしようと思うの。」
そういうと報告を始める。
「まずは博麗の巫女ね。 霊夢は・・・貴女が死んでから60年後に死んだわ。病になんどかかかったけど永琳のお陰で長生きできた・・・。
でも貴女とは違うわ。今霊夢は白玉楼にて幽々子と生活しているわ。相変わらずあの庭師を困らせているみたい。今の博麗神社は5回、代替わりして新しい霊――が管理しているの。
次は魔理沙・・・。だけど彼女はまだ生きているわ。咲夜が死んだすぐ後・・・と言っても5年位あとだけど彼女は儀式を執り行った。
勿論アリスはやめたほうがいい と止めたがそれを聞き入れなかったらしいわ。そして今では純粋な魔法使い・・・。相変わらずの泥棒っぷりと派手な魔法で私を楽しませてくれるわ
紫は相変わらずぐーたらな生活。式に生活の家事を任せあちらこちらに出没しているわ。たまに私のところにも来るわよ。一緒に紅茶を飲むの。
伊吹山の鬼も相変わらず酒を飲んでいるわ。飲まなかったのは貴女の葬儀と霊夢の葬儀の時だけよ。
あの酔っ払いは勘弁してほしいわね
あ・・・。そうだ、私もね。変わったのよ。あれから体も成長して大人になった。日光にも少しぐらいなら耐性が出来たし川もわたれるようになったわ。
フランもね、今は監禁してないの。しっかりと力の使い方を覚えたから、破壊行動を繰り返すことも無かったからね。今でもたまに博麗神社に遊びに行くわよ。
亡霊の姫と庭師は相変わらずな生活を送っているわ。
庭師は1人世話をするのが増えて困った顔をしていたけど・・・。
図書館によく遊びに来るアリスも最近は見かけないわね。相変わらず魔理沙とつるんで彼方此方騒いでるみたいだけど。
でもたまに来るわよ?図書館のパチュリーとか私にクッキーを持ってきてくれたりするわ。意外と美味しいのよ?紅茶とよく合うし・・・
永遠亭の姫と妹紅は相変わらず殺し合いの日々ね。
一回館の目の前でドンパチやられたから私とパチェでボコボコにしたわ。
永琳ももうあきらめているみたいだったわね。フフッ
それからね、紅魔館のほうは貴女がいなくなってからもメイド達はよくやってくれるわ。咲夜の代わりになる!ってね。
いいことだわ。門番の美鈴は相変わらずだけど・・・。アレからも腕を磨き今では一流の門番よ。
魔理沙にも引けを取らないほど成長したわ。
変わるところはとことん変わるけど・・・ 変わらないものはまったく換わらないわね」
次の言葉が出ない。
その代わりに涙が出る。
「ああ。あれから400年たった今でもこうして涙を零してしまう・・・。こんなに女々しいとは思わなかったわ」
するとそこに足跡が聞こえる。
「あら?レミィも来てたの?」
「あ・・・。」
レミリアはすぐに涙を拭いパチュリーのほうへと向く。
「ええ。だって今日は咲夜の命日じゃない」
そう、今日は彼女の命日なのである。
パチュリーは咲夜の墓の前まで歩み寄り、
「レミィ。貴女は変わったわね」
「パチェ。貴女は変わらないわね」
パチュリーはレミリアが置いた花の上へとさらに自分が持ってきた花を置く。
「今ね。咲夜に今の幻想郷の報告をしていたの。喜んでくれるかしら」
「・・・ええ。きっと。きっと喜んでくれるわ」
静寂―――――
その静寂を破ったのはパチュリーだった。
「ねぇ。もう一度、咲夜に会いたい?」
「・・・。ええ。」
「いい事を教えてあげるわ。貴女は―――――今日」
その瞬間時間が止まった気がした。
ア・エ・ル
そうパチェの口は動いた。
「ほ、本当なの?」
「ええ。ずいぶんと前閻魔のところに行ってきてね」
「閻魔って・・・あの四季映姫・ヤマザナドゥ?」
「そうよ。彼女にね咲夜の魂が着たら使いを出してくれって頼んでおいたの、そしてその使いはまだ来ていない・・・。この意味が分かるかしら?」
つまり―――――彼女の魂はまだここにある。 そうパチュリーは言いたかったのだろう。
「でも。魂じゃ・・・あえないわ」
「・・・。私を誰だと思っているの。最近図書館にこもりっぱなしだったのは疲れたわ」
何時も篭りっ放しだろう とレミリアは突っ込みそうなったが今はそれどころではない。
「ほ、ホントに、会えるの?」
「ええ。今からはじめるわよ。この世に留まってられるのは多分―――――持って5分。早くて3分。」
400年の歳月がたったというのに再会の時間はあまりにも短く、非情だった。
「心の準備はいいわね?今から5分ほど詠唱するからその間に言葉でも考えておきなさい」
そういうとパチュリーは呪文を唱え始める。
「So here's voice wafting into accepting an undisclosed soul...」
何がなんだか分からない呪文を詠唱する。
レミリアの心臓はこれ以上内くらい大きく鼓動している。
何を言えばいいのかわからないまま時は進む。
「覚悟はいいわね。いい?1度だけよ。」
「え、ええ・・・。」
「蘇符「リバースソウル!!」肉体を一時的に魔力で構築・・・っ!」
次の瞬間とてつもない閃光が辺り一面を包む。
そして春になり新しい葉が芽生えた木の葉っぱを揺らす。
風が流れレミリアは髪の毛と帽子を押さえる。
その舞い散る葉のカーテンの向こうに懐かしい姿が見える。
その姿を見た瞬間胸が熱くなる。
あの、メイド服、何もかもを見透かすような鋭い目つき。華奢な体付き。
そしてあの―――――懐かしい声。
「お嬢様―――――お久しぶりです」
その声を聴いた瞬間体のうちからこみ上げてくる熱いものをこらえ切る事が出来なかった。
「あ、ああ・・・さ、咲夜っ―――!!」
そのまま涙を流しながら咲夜の胸へと飛びつく。
「咲夜っ・・・!咲夜ぁ・・っ!」
嫌な顔一つせずその涙を受け止める。
「お嬢様。大きくなられましたね。とても・・・素敵です」
レミリアは胸から顔を上げ、
「でしょう?あなたに負けないぐらい美人になったのよ」
咲夜は苦笑いをし
「お嬢様のほうが私よりずっと、ずっと美人ですよ」
ゆっくり笑った。
「咲夜っ!私、あれから頑張って、いろいろなことに挑戦して、それから、それから・・・」
「落ち着いてください。分かっていますよ。ずっとここからお嬢様のことを見ておりました」
「・・・。やっぱりお見通しね。咲夜には。」
「当たり前です。」
咲夜は視線を胸のレミリアからパチュリーへと移し、
「パチュリー様。お嬢様ともう一度会えたことを大変うれしく思います。本当にありがとうございました。それから・・・お嬢様のことをよろしくお願いします」
パチュリーは一間空けて
「ええ。任せてよ」
「これで安心です。」
静かにだが刻一刻と時は過ぎ去る。
次の瞬間。
咲夜の足の先が砂のように消え始める。
「さ、咲夜っ!!」
「すみません。もう限界のようです」
「そ、そんな・・・」
無情にも時は過ぎ去る。
「お嬢様のメイドであれて幸せでありました。命を助けていただいたご恩は忘れません。ありがとうございます。」
もう足の膝まで消えている。
「もう、時間です。」
「ま、待って!」
次の瞬間咲夜の唇にレミリアの唇が重なった。
それは一瞬ではあるが、とてつもなく長い時間にレミリアは感じ取れた。
とても暖かく、そして幸せな時間。
「か、必ずよっ!必ず!!私の元へ戻ってきなさい!約束よ!いや・・・命令よ!!」
唇を離し叫んだ。
「・・・。はい。畏まりました―――――お嬢様」
もう半分以上消え去っている咲夜は残った手でレミリアの頭をゆっくりと撫でる。
「お嬢様。これを差し上げます。私の宝物です。」
それは銀色の懐中時計だった。
「あなた・・・まだ持っていたの」
それはレミリアが初めて咲夜に上げた物だった。
「大切に、大切にするわ。」
その言葉を聴いてにっこり笑った。
それとは反対にレミリアの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
「では、お嬢様、―――――お元気で」
「咲夜っ!」
レミリアだけが分かった。
最後にゆっくりと、咲夜は微笑んでいた。
「咲夜――――――――――っ!!」
そして完全に消失。
次の瞬間強い風が吹き葉っぱ・・・。いや違う。墓の周りにいつの間にか咲いた大量の白い花の花びらが舞い上がる。
「行って参ります。お嬢様」
最後に咲夜の声が聞こえた気がした。
その後一時的な蘇生術により生き返った咲夜から貰った懐中時計は魔力により一時的に構成されているはずなのに、何時間立っても、何日立っても、何ヶ月たっても、何年たっても、消える事は無かっらしい。
個人的にはすごいとしか言えませんね…
私も未来の幻想郷で作品を作る予定(ゲーム化予定)なので…ネタかぶらないようにがんばらないと…
同じようなものがありましたから、もういいやと感じたところがあります。
いい話なんですが、それならば過去作品と比較してみて、従来には
無い要素と展開が個人的には欲しいです。
でも、こういうのは初めてという方にとっては問題ないと思えます。
強いて言えば幻想郷報告の部分がなんとなく改善
の余地ありと思いますね。
それでは次回作を期待してます。
イイヨイイヨーで10点
カザカミ様
うーんやっぱり被ったのがありましたか・・・。
従来には無い要素・・・・ 少し頭をひねって考えて見ます^^
ご指摘ありがとうございました!
レミリアにとって咲夜は特別なのでしょうね
まあ、創想話は大きいですからこういう事は良くありますしね、こうなったら勝負だ!(何を?)
やはり誰しも考えることは同じということでしょうか。
む・・やっぱり既出でしたか・・・
少し残念(´・ω・)
次はもう少し独特せいのある、この発想は無かった!って小説を書いてみたいですね
三文字様
勝負!(・ω・´)(ぇ(そしてやっぱり何を
しかしながら他の方もおっしゃってる通り、既に過去の作品に
似たようなものがあります。途中まではほぼ同じなものも。
あとがきを見る限り知らなかったようですが、ssを投稿する前に確認を
するということは、書き手としての義務であると思います。
とはいえ、終盤の展開はなかなか目を見張るものがありました。
次回作に期待しております。
「死」「未来」「再会」
扱っているものすべてがとても重大なテーマのはずなのに、
まったく重みを感じられなかったのは残念です。
重みという表現が分かり辛ければ、
リアリティ、必然性と言い換えてもよいでしょうか。
それぞれの要素が、ただ感動的「であろう」お話にするために、
配置……というよりただ並べられていたという印象が拭えません。
次回作には期待させて頂きます。
個人的に既出かどうかは問題ない。某シェイクスピアちゃんが物語の構成は大体やりつくしちゃったぜともいわれているし。
だがやはり重みが少ないということ、記述法の基礎にちょっと疑問を感じてしまう点が多々有り。
――例えばダッシュ。頼りすぎではないかしらん。ちなみに普通は二つだけセットで使うので気になる人は気になる。
個人的に、中間部のレミリアの近況報告は必要なのかなあと。
普段こんな風な批評はあまりしないけれど、がんばってほしくてこんな感じに。がんばれ。