あの罰ゲームが生み出した三日間から一夜明け、騒がしい日々に関わった者達もいつも通りの朝を迎えた。
「もこー、また寝不足?」
「ああ、ホント……なんでだろうな」
迎えた様に見えただけだった。二人は妹紅の家で軽い朝食を食べている、無論作ったのは妹紅だ。
「なぁチルノ、いつまで私んちにいるつもり?」
「? もこーに責任取ってもらうまで」
丸焼きにした筍を口に頬張りながら答えるチルノだが、自分で言っている意味が分かっているんだろうか?
「責任って……何の責任だよ、まったく……」
責任といっても妹紅には身に覚えが無さ過ぎる。当然だ、全ては誤解から始まった冤罪なのだから。
「もこーがアタイを傷物にした責任」
危うく妹紅は味噌汁を噴出す所だった。
「おま、傷物って……誰に教わったんだそんなの!」
「ん? さくやが言ってた」
「くっ! あのストーカーメイドめ、要らん事吹き込んで……」
妹紅の怒りは遥か遠く、紅魔館のメイド長に届いたのだろうか? 届いてないであろう、きっと。
「はぁ……チルノ、悪いことは言わない、早いとこ帰った方がいい」
「何で?」
口いっぱいにご飯をかっ込みながらチルノは答える。
「何でって、そりゃお前にも帰る場所があるだろ? それに、私の近くは割りと危ないんだ。あの馬鹿姫とのいざこざに巻き込まれるかもしれない」
「へーき、アタイ最強だから」
妹紅の必死の訴えに、いつもの言葉で返すチルノだが、今回ばかりは妹紅も引けない。
「最強とかの問題じゃない、私はお前の事を思って――」
「もこー」
何とか言い聞かせようとする妹紅の言葉をチルノは遮った。さっきまでご飯をかっ込んでいた箸と茶碗を置き、チルノは妹紅の目を見る。
「な、何だよ……」
「もこーは、アタイの事……嫌い?」
「……え?」
反則技炸裂。上目遣いで見つめてくるチルノに妹紅は言葉を返せなかった。
「アタイと一緒に居るの……嫌なの?」
「い、いやその……」
瞳を潤わせ妹紅に迫るチルノ。その瞳を見た妹紅は後ずさり一つ出来ずに固まっている。
「アタイは、もこーと一緒に居たい」
「だ、だからその……」
さらに近づいてきたチルノは、妹紅の手を握り始める。無論、潤んだ瞳は上目遣いのまま妹紅の目を放さない。
「けど……もこーがアタイが嫌なら……」
チルノは潤んだ瞳をさらに潤わせる、いわば涙目。そして、妹紅から目線を逸らすようにゆっくりと俯いていき、手を握る力もそれに会わせて緩めていく。
「嫌なら、アタイ諦める……」
妹紅の手を離し、俯いていくチルノの瞳を妹紅が捕らえられなくなる、そのギリギリが限界だった。
「い、嫌なわけないだろ!」
妹紅が気づいた時にはそう口にしていた。
「それじゃ、一緒に居てもいいって事ね」
「……は?」
妹紅の言葉を聞き入れた途端、先ほどの態度と打って変わっていつも通りのチルノに戻り、またご飯を食べだす。
その様子をただ唖然と見つめる妹紅だった。
「……なぁ、今の誰に教わったんだ?」
「ん? めーりんが教えてくれた」
「あのすれ違いバカップルめ、そろって要らん事吹き込んで……」
妹紅の怒りは遥かと遠く、紅魔館の元上司達に届いたのだろうか? 届いてないであろう、きっと。
一方、紅魔館では。
「はぁ、どうしよう」
美鈴は先ほどかずっと食堂の前にいた。
「うう、一体どんな顔で咲夜さんに会えばいいんだろう」
朝、食堂に行けば、朝食を作って待っている咲夜が居る、現に咲夜の気を感じる。だが、美鈴は訳あって咲夜の顔を見づらい。よって食堂の扉の前をため息を吐きながら行ったり来たりしている。
「と、とにかく、入ってみますか……」
こうしていても始まらない、そう美鈴は思い扉に手をかける。
「……とりあえず、ちょっと覗いてから……」
かなりチキンな美鈴だった。そっと扉を開け、中を盗み見るように覗く。
「……咲夜さーん、いますかー……」
美鈴自身にしか聞こえないほどの小さな呟きで咲夜の名を呼んでみる。が、そこに咲夜の姿は無かった。
「あれ? 咲夜さ――」
そして、突如背中に感じる気配。さっきまで食堂に存在していたはずの気が、今は真後ろにある。
「呼んだかしら? マイステディ」
軽く息を吹きかけるように耳元で囁かれ、美鈴は全身の鳥肌が立つのを感じた。
「さ、ささ、咲夜さん!」
突然の呼びかけに心臓を止めかけられながらも、振り返る美鈴。
「さっきから、こそこそとどうしたの?」
「い、いえ! 何でもないですよ?」
何でもないはず無いのだが、今の美鈴に気の利いた言い訳など出来るはずも無い。
「その割には、さっきから目を逸らすじゃない」
「そ、その、本当に何でも――」
「嘘おっしゃい」
ジレンマに耐えれなくなった咲夜が美鈴の顎に手をかける。それにより無理にでも美鈴は咲夜と目を合わす事になった。
「あ、あう、咲夜さん……」
顎にかけられた手、見詰め合う目。美鈴が昨夜のことを思い出すのに、これらは十分すぎた。
思い浮かぶは夜中の門前、さっきまでの自分とは思えないほど大胆な思いのぶつけ方、そして一つの飴を奪い合う二人の姿。これらが美鈴の中でフラッシュバックされる。
「美鈴、顔が真っ赤よ?」
「あ、あうう……」
限界値、もし羞恥心が生命活動に害を与えるのなら、紛れも無く美鈴は命の危機に瀕している。
「す……す、すみません! 失礼します!」
ついに耐えられなくなった美鈴は、咲夜の手を振り解き、全力でその場を走り去った。
声をかける間もなく、去って行く美鈴を咲夜は唖然と見送る。
「逃げなんて……どうしたのかしら? 何時もなら軽く受け流すのに」
「メイドを極めたアタイの力を巫女に見せ付けてくる」
「……そう、私は寺小屋にでもいるから」
朝食を食べ終えたチルノは、そう言い残し神社へと飛んで行き、それを気だるそうに見送る妹紅。
「さてと、慧音の所にでも顔を出すか」
そしてこの現状をどうにか出来ないか知恵を貸してもらおう、そう心で呟く妹紅だった。
「という訳でさ、何とかなんない慧音?」
「何ともならんな」
頼みの綱を即座に断ち切られる。
「そもそもきちんと誤解を解き、チルノをしっかり説得しない妹紅にも否はある」
「そうは言うけどさ、私も色々頑張ったんだよ? でも上手くいかないんだって」
よもや泣き落としに負けたとは言えない妹紅なので、上手くそこら辺は誤魔化しながら慧音の力を頼る。
「妹が出来たと思って諦めろ、そのうちあの氷精も飽きて帰って行くさ」
「……それまでこの生活を続けろと?」
「なに、たまには変わった生活もいいものだぞ?」
既にあの三日間で非日常を送っている妹紅にとっては、いい加減普段通りの生活を送りたかった。
「……はぁ、あいつの相手えらい疲れるんだよ」
「慣れれば子供とは可愛いものだぞ?」
そう言いながら、表で元気に遊びまわる寺小屋の子供達を眺める慧音。その視線に気がついた子供達が一斉に慧音と妹紅に集まってくる。
「けーね先生、お話終わったー?」
「終わったならもこーお姉ちゃんと遊んでいい?」
「もこーねーちゃん、あそぼーぜ!」
「もこーお姉ちゃん、一緒にあそぼー」
子供にとって普段会えない人と遊ぶのは楽しいらしく、皆妹紅を遊びに連れ出そうとしていた。
「ああ、構わないぞ。沢山遊んでもらえ」
「何勝手に返事してんだよ、別にいいけどさ」
妹紅は子供達に手を引かれて、外へと連れ出されていく。
「それで、何して遊ぶんだ?」
「今、これが流行ってるんだよー」
そう言って子供達が取り出したのは、ヨーヨーだった。
「ヨーヨー? 懐かしい物で遊んでるな」
「へへー、これただのヨーヨーじゃないんだ」
皆が妹紅の前でヨーヨーを中指に付け始める。普通、ヨーヨーとはひたすら上下運動を繰り返す単純な玩具である、しかしこのヨーヨーは違う。
「いくよ、ほら!」
一人が勢いよく腕を振り下ろす、ヨーヨーは糸を引きながら限界まで落ち、そして駆け上がる――と妹紅は思ったが、糸が伸びきったヨーヨーはその場で止まり、音をたて回転し続けている。
「へぇ、外の世界の物か?」
妹紅は物珍しそうにそのヨーヨーを見詰めている。
「もこーねーちゃんもやってみな」
そう言われ妹紅がヨーヨーを一つ受け取り、指に付ける。
「よし、見てろよ。これ位私にも……」
子供の前でかっこいい所を見せようと張り切ってヨーヨーを振り落とす妹紅、なのだがヨーヨーは妹紅の意気込みとは反対に、まるで普通のヨーヨーの様に直ぐに手元に戻ってくる。
「あ、あれ?」
予想外の展開に困惑しながらも、妹紅は再びヨーヨーを振り下ろすが、やはり直ぐ手元に戻ってくる。
「くっ、なぜ戻ってくる……」
「もこーねーちゃん出来ないの? かっこわりー」
子供とは、なかなか残酷だったりする。そんな心無い言葉に、傷つきながらも必死にヨーヨーを振り下ろす妹紅、しかし無常にもヨーヨーは手元に戻る。
「な、何で出来ないんだ!」
恨めしそうに手の中のヨーヨーを睨んでいると、かなり場違いな二人組みが妹紅の前に現れた。
「なんか珍しいのが珍しいことしてるぜ」
「あら本当ね、門番の次はヨーヨー使いにでもなるつもりなのかしら」
何故か寺小屋を訪れてきた魔理沙とアリス。
「……何でお前等がこんな所いるんだよ」
「まぁ散歩のついでだな」
妹紅は今の自分の失態を見られたのではと思い、やや言葉が荒くなる。
「あ、まりさねーちゃんだー!」
「ようお前等、ヨーヨー大事にしてるか?」
「うん、練習していろんな技出来る様になったよ」
子供達は予期せぬゲストに大はしゃぎし、魔理沙に駆け寄る。そして一人が魔理沙の前で覚えたての技を披露し始めた。
「おお、なかなか出来るようになったじゃないか」
「でしょー、めっちゃ練習したんだ」
妹紅はさっきまで自分を取り囲んでいた子供達が魔理沙に駆け寄っていく様子を、一人さびしく眺めている。
「でもまだまだだぜ。貸してみろ、もっとすごい技を見せてやる」
そう言って子供達からヨーヨーを二つ受け取った魔理沙は、素早く左右の指につけ、二つ同時に放り投げた。
「見てろ! これが魔理沙様のダブルループだ!」
二つのヨーヨーは魔理沙の手にあわせ、円を描くようにヒュンヒュン飛び回る。
「うわ! すっげー!」
「あれ一つでも難しいのに」
無論、大技を前に子供達は大盛り上がりだ。
「お前等も練習すればきっとできるぜ」
魔理沙はそう言いながら華麗にヨーヨーをキャッチする。
「魔理沙、いつの間にそんな物練習したの?」
その様子を眺めていたアリスが不思議そうに訪ねた。
「ああ、こーりんの所で見つけて面白そうだから貰ってきたんだが、飽きたからこいつ等にやったんだ」
「はぁ、どうせ強引に奪ったんでしょ」
「まぁそう言うな。アリスもやってみるか?」
魔理沙はヨーヨーの一つをアリスに差し出す。アリスは少し眺めた後、受け取り指に付ける。
「見よう見まねで出来るものなのかしら……」
アリスはヨーヨーの感触を確かめながら魔理沙のようにヨーヨーを放り投げる。アリスにとってヨーヨーの技など、今魔理沙がやって見せたもの意外に知らないため、まさに見よう見まねなのだろう。
「いやいやアリス、幾らなんでもいきなりループは――」
才能とは、どこで発揮されるか分からないものである。魔理沙の言葉を遮るようにヨーヨーは華麗な円を描きはじめる。
「思ってたほど難しくないのね、これ」
涼しげな顔でアリスはビュンビュンとヨーヨーを回す、その速度はさっきの魔理沙の比ではない。
これ以上続けると糸が切れるんじゃないかという所でアリスはヨーヨーをキャッチする、その時の音もバシンと乾いた音が響く位だ。
「うん、これならいけるわね。魔理沙、そっちのヨーヨーも貸して頂戴」
「……構わないが、ここでお前がダブルループとか決めちゃったら私の立場が無いぜ?」
今の妹紅の立場に比べればずっとマシだろう。魔理沙はもう一つのヨーヨーをアリスに手渡す。
「残念だけど、あなたの威厳は地に落ちてもらうわ。皆もヨーヨー貸してくれないかしら?」
アリスは魔理沙から受け取ったヨーヨーのほかに、子供達からもヨーヨーを借り始める。
「何する気だアリス、かっこつけて失敗したらかっこ悪いぜ?」
妹紅の心の傷を広げる魔理沙の言葉をアリスは聞き流し、ヨーヨーを全て地面に置く、その数四つ。そしてアリスは人形を呼び出した、その数三体。
「……アリス、それは反則じゃないか?」
魔理沙は既にアリスがしようとしている事を悟ったりらしい。
「特技は生かすものよ魔理沙」
アリスの声と同時に、人形達はヨーヨーを自分の指に付ける。真ん中の人形が両指に、左右の人形がそれぞれ一つずつ。
「それじゃ、見ててね皆」
かくしてショー始まる、人形達は一斉にヨーヨーを放り投げ、さっきのアリス同様ハイスピードで回し始めた。
一寸の狂いも無く左右対称でヨーヨーは回り続ける。
「ふと思ったんだけど、こういう技もあるのかしら?」
アリスの呟きと同時に、左右の人形はループを止め、違う技を繰り出し始める。
「マジックにシュートザムーンとは……」
「こんな事も出来るわよ」
ついには、真ん中の人形が二つのヨーヨーの回転を交差させ始めた。
「ク、クリスクロスだと! 私でも出来ない技を……」
「すっげー! マジすっげー!」
魔理沙の驚きをよそに、子供達はハイテンションで喜んでいる。
その光景を妹紅は今だ一人さびしく見詰めていた。
「……慧音、やっぱり子供の相手は私には無理だよ」
「メイドを極めたアタイは最強のはずなのに……何故!?」
「馬鹿だからじゃない?」
神社にて、霊夢に喧嘩を吹っかけたチルノはものの数分で撃墜されていた。
「くっ、馬鹿って言うな!」
「じゃあ賢くなることね」
涙目で反論するチルノだが、弾幕という暴力、正論という圧力によって気おされ気味である。
「じゃ、じゃあ根掘り葉掘りの葉堀りって意味知ってる?」
「根とは根拠、葉は枝葉末節の事。調べるなら根っこから葉っぱまで徹底的に、という意味よ」
「巫女すげぇ!」
もう完敗もいいとこだ。
「それじゃ負けた罰として、境内の掃除しなさい」
「な、何でアタイが――」
「負けたんだから文句言わない」
そう言って霊夢はチルノに箒を押し付ける。
「それじゃ、私は中でお茶でも飲んでるから、終わったら声かけなさい」
それだけ言い残すと、霊夢は中へと入っていった。
残されたチルノは箒を握り締め、何故負けたのかを考える。
「メイドを極めたはずなのに……」
もっとも、考えた所で答えは見つからなそうだが。
一方、中に入っていった霊夢は台所でお湯を沸かし、お茶を入れていた。
「さて、掃除する手間は省けたし、お昼は何作ろうかなぁ」
茶の間で熱い湯のみに口をつけながら、霊夢は昼食の献立を考える。
「買い物に行くの面倒だし、あるものでいっか」
一杯目の湯のみを空にしたところで結論を出す。そして同時に茶の間の障子が開かれる。
「掃除終わったー」
「……」
霊夢は入ってきたチルノを見詰めると無言で立ち上がり、チルノの前に立った。
「な、何よ、掃除終わ――」
ごちん、鈍い音がチルノの言葉を遮る。
「いったー! 何すんのよ!」
「何するじゃないでしょ、嘘付くならもっと上手く付きなさい」
チルノに箒を押し付けてからまだ十分も経ってない、幾らなんでも早すぎる。
「う、嘘じゃないもん! 本当だもん!」
「あのね、嘘付いたって境内見れば直ぐに分かるのよ」
そう言いながら、霊夢はチルノを引きずり表に出た。
「ほら、まだこんなに落ち葉が……って、あら?」
そこに広がる光景はどう見ても掃除後、元々ゴミ等は堕ちていなかったが、端に焚き火が出来るほどの落ち葉の山が積み上げられている。
「……まさか本当に終わってるなんて」
「だから終わったって言ったじゃいない!」
すごく、すごくどうでもいい所でメイドの経験が役に立っていた。
「そうみたいね、殴って悪かったわ」
「へへー、すごいでしょー」
むしろ凄いのはチルノをここまで鍛え上げた咲夜だろう。
「はいはい、それじゃもう帰ってもいいわよ」
「えー、掃除したらお腹すいたー。何か食べ物ー」
「何で私があんたのご飯作んなくちゃいけないのよ」
「うー、鬼メイドだって働いたらご飯くれたのにー」
確かに紅魔館でメイドをやっていた頃はそうだったが、それとこれでは話が違う。
「駄々こねてないでさっさと帰りなさい。私はこれから少ない材料で自分の分を作るんだから」
「ケチ巫女ー、甲斐性無しー」
「うっさい、無いもんは無いの!」
ごちん、傍らで騒ぎ続けるチルノを霊夢は博麗の霊力が宿ってるっぽい鉄拳で黙らせる。
「あのーごめんください」
そんな時、境内の階段から見知った人物が声をかけてきた。
「あら早苗、どうしたの?」
「いえ、ちょっとご飯のおかずを作りすぎちゃって……おすそ分けに来たんですが」
「……すごくありがたいんだけど、タイミングが悪いわね」
霊夢の反応に不思議そうに頭を傾げる早苗。そしてそれを聞いてご飯にありつけると判断し、すこぶる笑顔を浮かべるチルノ。
「やたー、ごはんごはんー」
「お腹空いてるの? コロッケでよかったら食べる?」
早苗はよく分からないが無邪気に喜ぶチルノに早速餌付けを始めた。
「……気楽なもんね、青コンビは」
「はぁ、もうお昼ですか」
美鈴は時計塔の針を見詰めながらため息を付いていた。
お昼。普通なら食堂で昼食を取るが、例によって咲夜の顔を見づらい美鈴にとっては鬼門である。
「うう、朝は何であんな逃げるような事をしたんだろう……」
おかげでますます咲夜の顔を見づらい美鈴だった。
「……この際、昼食は諦めますか。一食くらい抜いても死ぬわけじゃないですし」
実際には朝も食べていないため、二食抜いているのだがそんな事も憶えていないくらい美鈴は切羽詰っている。
そして、そんな美鈴を咲夜は食堂の窓から見詰めていた。
「……ご飯を食べに来ないなんて、どうしたのかしら?」
「それじゃ慧音、私そろそろ帰るよ」
「ん、そうか? もう少しゆっくりしていけば良いものを」
あの後、大盛り上がりした人形ショーも終わり、魔女二人は森へと帰っていった。だが子供達の興奮は冷めず、皆ヨーヨーの練習をしている。
「いや、飯の支度しなくちゃいけないし」
「ほう、珍しいな。食べれればいいと言って、何でも丸焼きにして食べてたお前が料理とは」
「私一人ならね、けど食べ盛りのチビにそんなものばかり食わすわけにいかないだろ」
食べ盛りという点では妹紅の方が遥かに食べるのだが、それはこの際置いておく。
「そういう考えが出来るようになっただけでも、氷精との生活はお前にいい影響を与えているよ」
「冗談、早く自由の身になりたいよ」
「その割には面倒を見るつもりなんだな」
「……まさか叩き出すわけにもいかないだろ」
ため息を付きながら話す妹紅のだが、慧音にはその変化が面白く、つい口元が緩んでしまう。
「まぁ、そういう訳なら早く帰るといい。所で妹紅」
「ん、なに慧音?」
「お前、丸焼き以外の料理って出来るのか?」
「……味噌汁と漬物。後、米の炊き方くらいは」
「……今日からお前に料理を教えるとしよう」
「それじゃ、アタイそろそろ帰る」
「そう、このまま晩御飯まで食べていく気かと思ったわ」
「別にいいじゃないですか、食べさせてあげれば」
神社では三人での昼食も、その後の強制的な皿洗いも終わり食後のお茶を飲んでいた。ちなみに皿洗いは枚数が少ないためか奇跡的にチルノは一枚も皿を割ることは無かった。
「あのね早苗、勝手なこと言わないの。誰が作ると思ってるのよ」
「私もお手伝いはしますよ?」
どうも早苗はチルノが気に入っているらしい。きっと美鈴と同じで根が優しく、子供好きなのだろう。
「どっちにしろ、帰るっていってるんだからその必要はないけどね」
「まぁそれはそうですけど……チルノちゃん、良かったら夕飯も食べてかない?」
霊夢の意見を無視して早苗はチルノを夕食に誘ってみる。
「ん、いい。きっともこーが待ってるから帰る」
「もこー? 何であんたが妹紅の所に帰るのよ」
チルノの口から思いがけない人物の名前が出てきたことに、霊夢は当然の疑問を口にした。
「もこーにアタイを傷物にした責任を取って貰うから」
「……は?」
本人の知らぬ所で誤解が広まる妹紅だった。
「あー、もう夕食の時間ですか」
時計の針が進むたびに美鈴は憂鬱になっていく。
「やっぱりお昼に一度会うべきだったかも……」
問題を先送りにした所で解決するはずも無く、寧ろますます合いづらくなるだけだった。
「うう、顔見づらいなぁ、でも変な誤解されたくないし……」
変に思われたくない、だから話がしたい、けど気まずくて顔が見れない、まるで終わらないワルツのような物。
そんな堂々巡りを繰り返す美鈴を、咲夜は昼間と同じように食堂の窓から見詰めている。
「本当に……どうかしたのかしら」
結局、美鈴が食堂に顔を見せる事は無かった。
「もこー、ただいまー」
「ああ、お帰り。ちょっと早いけどご飯出来てるから、食べるだろ?」
慧音監修の元、妹紅はそれなりに食事らしい食事を用意していた。少なくとも食材をそのまま丸焼きにしたものは無い。
「うん、食べるー」
「なら運ぶの手伝いな」
妹紅の言葉に頷き、チルノは手伝いを始める。妹紅が皿に盛り、チルノが運ぶ。特に難しい作業ではないし、現に段取り良く進められていた、だからこれは妹紅にもチルノにも否があるわけではない。それは偶然、妹紅が味噌汁をお椀に注ぎチルノに渡す――この時だった。
「ほら、味噌汁持ってきな」
「分か――熱っ!!」
カシャン、という音と共にチルノは受け取ったお椀を手から落としてしまった。ほんの少し味噌汁が熱めだった、原因はそれだけ。
「お、おい、どうした?」
「うう、熱い……熱いよ……」
魚にとって人間の手は火傷するほど熱い物だという。氷精にとっても、今の味噌汁はとても触れる温度ではなく、普通の人間にとって沸騰した熱湯の様な物だろう。
あまりに熱がるチルノを不安に思い、妹紅はチルノの手を覗き込む。
「平気か? っておい! 手が真っ赤だぞ、大丈夫か!?」
熱さは限度を超えると痛みになる。きっとチルノの手はまだジンジンと痛むだろうし、現に目には涙が溜まっているし、肩は小刻みに震えている。
「んん、熱い……けど大丈夫、アタイ最強だから。それより、ごめん……味噌汁こぼしちゃった」
そんな痛みを堪えながらチルノが弱々しい声で答えたのは、妹紅にとってどうでもいい心配事だった。
「せっかく……もこーが作ってくれたのに、ごめん……」
「馬鹿! そんなのどうでもいいから! それよりさっさと手を冷やせ」
うん、と小さく頷いたチルノは、手のひらサイズの氷を作り握り締めた。それを見届けた妹紅は部屋の奥から救急箱を探し出す。
「たしか前に慧音の置いてったやつが……あった!」
妹紅にとって救急箱など何の役にも立たないので、妹紅本人は要らないと言っていたのだが、あまりにも生傷の耐えない妹紅を見かねて慧音が置いてった物である。
「ほら、手出しな。一応、塗り薬と包帯くらいはあるから」
「うん、分かった……」
まだ少し痛むのか、チルノは氷を手放しゆっくりと手を差し向ける。
「薬塗るけど、少し沁みるかもしれないからな」
妹紅は自分の指に薬をつけ、そっとチルノの手を取り薬を塗り始めた。
「ん、んん……痛ぅ、もこー、もっとやさしく……」
「可愛そうだけど、こればっかりは我慢しな」
痛みに顔を歪ませるチルノを、妹紅は労わる様に言葉をかける。薬を塗り終えた妹紅は包帯を手に取る。
「あまり器用とは言えないから、少し不恰好だけど……」
慣れない手つきだが、妹紅なりにゆっくりと優しく丁寧に包帯を巻いた。
「はい、終わり。まだ痛むか?」
「ん、だいぶ痛くなくなった」
それを聞いた妹紅は、安堵のため息を吐きながら救急箱を片付ける。
「もういいから、居間で休んでな。後は私がやるから」
うん、とチルノは小さく頷き居間へと歩き出す、が不意に妹紅へと振り返った。
「もこー、ありがと……」
「いいよ、気にすんな」
それから妹紅は、こぼれた味噌汁を手早く片付け、食事の支度を再開した。
「よし、それじゃ食べるか、頂きます」
「……」
「どうした、食わないのか?」
「……お箸、持てない」
「……」
利き手を包帯で巻かれているチルノが箸を持つのは、どう頑張ってみても無理だろう。
「もこー」
「……何だ」
名前を呼ばれた妹紅はなぜか嫌な予感しかしない。
「あーん」
チルノはさも当然のように妹紅に向かって口を広げる。
その行動が何を意味するのか、妹紅は数秒考えた結果、試しにご飯を箸で掴みチルノの口に放り込んだ。
「……ほれ」
「ん、んぐんぐ、ごく。あーん」
放り込まれたご飯を飲み込み、チルノはまた口を開く。
「……ほれ」
「んぐんぐ、あーん」
今日の夕食はいささか時間がかかりそうだった。せっかく頑張って作った料理が冷めないかと不安な妹紅だが、その不安も直ぐ消える。
「チルノ、うまいか?」
「うん、おいしー」
笑顔で答えるチルノを見て妹紅は思う。この顔が見れただけで頑張った甲斐があったと、それにこんな日々もそう悪い物じゃない、そう思う妹紅だった。
深夜の門前、一人気落ちする美鈴のもとにいつもの差し入れを持って現れる咲夜。
「……やっぱり、来ましたか……」
「ええ、やっぱり来るわよ」
二人きりの時間、美鈴にとって朝のような退路は無い。
「それじゃ、お茶でも飲みながら話でもしましょうか。今日の事とか」
「うう、はい……」
まるで尋問に掛けられる気分で美鈴はコップを受け取る。
「はぐらかしても仕方ないから率直に聞くけど、どうしたのよ一体?」
「すみません……」
咲夜の質問に、美鈴はただ俯いて謝る。
「はぁ……もっと簡潔に聞くわ。何で私を避けてたの?」
「さ、避けてたわけじゃ……その、何て言うか」
「私の事、嫌いにでもなった?」
「ち、違います! そんな事あるわけ――」
「そう、それだけ聞いて安心したわ」
安堵の息を吐く咲夜。
「もしかして本当に嫌われたのかと思って、一日気が気じゃなかったわよ」
「……ごめんなさい」
「まったく手が付けられてない食事を片付ける気持ち、貴女に分かる?」
「っ! 本当にごめんなさい、咲夜さん」
自分のくだらない感情で相手の好意を無碍にしてしまった、しかもそれに気づきもしなかった。美鈴は後悔の思い一杯になる。
「それじゃ、話してくれるかしら?」
「はい……その、なんと言いますか、咲夜さんを見ると……思い出しちゃって、気恥ずかしいです」
上目遣いで答えた美鈴の顔は真っ赤である。
「貴女とベットを共にした憶えはまだ無いけど……まさか昨夜のあれ位で?」
「はい……」
初めて一線を越えた次の日、というのなら咲夜だって理解できる、だがまさかあれ位でここまで動揺するとは思わなかったのだろう。
「まったく情けない。元はといえば貴女から仕出かした事でしょうに」
「い、言わないでくださいよ、凄く恥ずかしいんですから」
ますます顔を赤くして俯いてしまう美鈴。
「ま、許してあげるわ」
「有難う御座います」
「昨夜の貴女と違って私は心が広いから、許すための条件なんていうのも出さないわよ」
「だ、だから言わないでくださいよー」
一通り美鈴をからかって満足したのか、咲夜は口元を緩めた。
「さて、それじゃ行くわよ」
「え? 行くってどこへですか?」
突然の咲夜の申し出に、美鈴は思わず聞き返す。
「決まってるわ、食堂よ。貴女今日は何も食べてないでしょ?」
「ああ、そういえばお腹空きました」
あっけらかんと答える美鈴だが、一日何も食わずにいてこの程度なのは、あまりの悩み事に空腹など二の次だったのだろう。
「夜食作ってあげるから、食べるでしょう?」
「ええ、食べますけど……ちょっといいですか咲夜さん」
美鈴はそう言って屋敷へと歩き出す咲夜の足を止めた。
「何? メニューだったらある程度受け付けるわよ」
「いえ、その夜食なんですけど、私に作らせてくれませんか?」
「……別に構わないけど、どういう風の吹き回し?」
「前に約束したじゃないですか、私の手料理ご馳走するって。今日のお詫びを兼ねて作りたいんです」
約束、昨日までの騒がしい三日間の初日に交わしたもの。
「そうね、分かったわ。ご馳走になろうかしら」
「ええ、咲夜さんに比べたらまだまだですけど、腕によりをかけますよ」
「夜食なんだから、そんなに手の込んだ物はいいわよ?」
「私がお腹へってるんです」
そんな会話をしながら二人は屋敷へと歩いていく。
こうして騒がしい三日間が生み出した変わった一日は終わりを迎えた。
「永琳、そういえば最近妹紅の姿が見えないわね?」
「……姫様、ひょっとして覚えて無いのですか?」
「え、何が?」
「いえ、罰ゲームの事ですよ」
「罰ゲーム? なにそれ?」
「……何でもないです。妹紅だったらその内顔を出すでしょう、鬼の形相で」
「? まぁいいわ。それよりこの炎龍、何回倒しても宝玉出ないんだけど……これが噂の物欲センサーってやつ?」
「お言葉ですが、上位じゃないと出ませんよ?」
「え、マジ!? 私の八時間返してよ!」
「ん、んん……いたっ、も、もこー、もっとやさしく……」
「あ、ああ、悪い……つい力が入っちまった」
「ん、んあ、んん……」
「これ位で……痛く無いか?」
「あ、はん……だ、大丈夫だから……」
「それじゃ、少し強くするぞ?」
「う、うん、わかった……」
「ん、んん、どうだ? 大丈夫か?」
「へ、へいき、そ、その……少し、気持ちいいから……」
「わ、わかった、もう少し強くするから……」
「ん、んあ! も、もこー、そ、そんな急に――」
「ご、ごめん、けどこのままじゃらちが明かないだろ……」
「だ、だめ! んんあ、ひゃう!」
「す、すぐに終わるから……」
「は、早く……アタイもう、我慢が……」
「こ、これで……おわったぁ」
「はぁ、はぁ……」
「チルノ、大丈夫か?」
「う、うん、大丈夫。もこーの……気持ちよかったし……」
「そ、そうか、ならよかった。……所でさ」
「何? もこー」
「ただ背中流してるだけで変な声出すの何とかなんないの?」
「変な声って?」
「……何でもない。ほら、次は頭洗うから」
「え? ん、んあ、も、もこー、そんな強引に……だめ」
「お前、わざとだろ?」
「ねぇ早苗、もう時間も遅いけど帰らなくていいの?」
「え? 迷惑でしたか?」
「いや、そういう訳じゃないけど……あの二人は何も言わないの?」
「ええ、実は神奈子様達には、今日は泊まってくるって言ってあるので」
「……あんた端から泊まるつもりで来てたの?」
「はい、なんの為にわざとおかず作りすぎたと思ってるんですか」
「知らないわよ、そんなの」
「まさか、今更帰れなんて言わないですよね?」
「……好きにしなさい」
「私もアリスに負けられないからヨーヨーの練習することにしたぜ」
「そう、せいぜい頑張りなさい。所で一つ聞いていいかしら?」
「何だ? 特別に答えてやら無いことも無いぜ?」
「なら聞くけど、貴女のヨーヨーの練習と、今私が糸で縛られてるのは関係あるのかしら?」
「ああ、まずは糸の扱いを練習しようと思ってな」
「……くだらない冗談を言うつもりは無いけど、意図が分からないわ」
「つまり今夜の研究のテーマは、人形遣いを縛ってみようだぜ」
「……センスの欠片も無いわね。早く放してくれないかしら? 糸が食い込んで痛いのよ」
「ああ、食い込む様に縛ったからな。ほら、ここの糸を引っ張るとだ……」
「ひ、ひゃう! や、やめて、そんな所引っ張ったら……く、食い込んで……」
「んー? 何処が食い込むんだ?」
「ま、魔理沙、意地悪しないで……だ、だめ、お願いだから、や、やめ――」
「そんな反応するなよ、ますます虐めたくなるだろ?」
「そ、そんな事、言われても……んんあ! や、ちょっと、んはああぁぁ」
「それじゃあ……思う存分味わってくださいね……咲夜さん」
「ほんとに良いの? 美鈴」
「はい、咲夜さんに味わってもらいたいんです。私の全てを……」
「そう、なら頂くわ。とても美味しそうよ……美鈴」
「咲夜さん、早く……私もう」
少女妄想中
「みたいな展開も期待しちゃったりしたんだけど?」
「夢見すぎです。とりあえずチャーハンで我慢してください」
「ええ、それはそれでいいのよ。美味しいし、貴女の手料理だし、それに貴女の手料理だし、なにより美鈴の手料理だし」
「そう言って貰うと嬉しいですが、さっきみたいな展開には発展しませんよ?」
「やっぱり、強引に襲うしかないのかしら……」
「はぁ……瀟洒でかっこよく口説かれたら、そのまま咲夜さんの部屋に行っても良かったんですが、ダメみたいですね」
「ちょっとまって美鈴それほんと?」
「ええ、まぁ」
「お願い、もう一回チャンスを頂戴。今スイッチ切り替えるから」
「やり直しは無理だと思います。雰囲気台無しですから」
「ふふ、まだ遅くはないわ。夜はこれからだもの」
「うわ、本当に切り替えましたね」
「ええ、貴女を手に入れるためなら……これ位造作も無いことよ」
「今更頑張っても無駄だと思いますよ?」
「無駄という言葉は、基本的に私の専売特許よ。それにね無駄かどうかは私が決めるの」
「な、何かいつにも増して強気ですね」
「貴女が私の事をよく知っているように、私も貴女の事を良く知ってるつもりよ?」
「ど、どういう事ですか?」
「貴女は強い押しに弱いって事。昨夜で確信を持ったわ」
「そうなんですかね……」
「それにね、そろそろ本気で私の思いに答えて欲しいの……」
「咲夜さん……」
「貴女は近くに居るのに、遠くに感じるのよ……だからお願い、近くに感じたいの……一つに、なりたいの」
「そんなに、私が……欲しいですか?」
「……今更、口にする必要は無いと思うけど、あえて言うわ。美鈴、貴女が欲しい」
「ずるいですね、そんな事言われたら……」
「ずるくもなるわ、貴女を手にする為だもの」
「咲夜さん……」
「美鈴……」
「あー喉渇いた、お水、お水って、あれ?」
「「お、お嬢様!?」」
「あ、あの、えーと、その……く、空気の読めない主でごめんなさい!!」
「もこー、また寝不足?」
「ああ、ホント……なんでだろうな」
迎えた様に見えただけだった。二人は妹紅の家で軽い朝食を食べている、無論作ったのは妹紅だ。
「なぁチルノ、いつまで私んちにいるつもり?」
「? もこーに責任取ってもらうまで」
丸焼きにした筍を口に頬張りながら答えるチルノだが、自分で言っている意味が分かっているんだろうか?
「責任って……何の責任だよ、まったく……」
責任といっても妹紅には身に覚えが無さ過ぎる。当然だ、全ては誤解から始まった冤罪なのだから。
「もこーがアタイを傷物にした責任」
危うく妹紅は味噌汁を噴出す所だった。
「おま、傷物って……誰に教わったんだそんなの!」
「ん? さくやが言ってた」
「くっ! あのストーカーメイドめ、要らん事吹き込んで……」
妹紅の怒りは遥か遠く、紅魔館のメイド長に届いたのだろうか? 届いてないであろう、きっと。
「はぁ……チルノ、悪いことは言わない、早いとこ帰った方がいい」
「何で?」
口いっぱいにご飯をかっ込みながらチルノは答える。
「何でって、そりゃお前にも帰る場所があるだろ? それに、私の近くは割りと危ないんだ。あの馬鹿姫とのいざこざに巻き込まれるかもしれない」
「へーき、アタイ最強だから」
妹紅の必死の訴えに、いつもの言葉で返すチルノだが、今回ばかりは妹紅も引けない。
「最強とかの問題じゃない、私はお前の事を思って――」
「もこー」
何とか言い聞かせようとする妹紅の言葉をチルノは遮った。さっきまでご飯をかっ込んでいた箸と茶碗を置き、チルノは妹紅の目を見る。
「な、何だよ……」
「もこーは、アタイの事……嫌い?」
「……え?」
反則技炸裂。上目遣いで見つめてくるチルノに妹紅は言葉を返せなかった。
「アタイと一緒に居るの……嫌なの?」
「い、いやその……」
瞳を潤わせ妹紅に迫るチルノ。その瞳を見た妹紅は後ずさり一つ出来ずに固まっている。
「アタイは、もこーと一緒に居たい」
「だ、だからその……」
さらに近づいてきたチルノは、妹紅の手を握り始める。無論、潤んだ瞳は上目遣いのまま妹紅の目を放さない。
「けど……もこーがアタイが嫌なら……」
チルノは潤んだ瞳をさらに潤わせる、いわば涙目。そして、妹紅から目線を逸らすようにゆっくりと俯いていき、手を握る力もそれに会わせて緩めていく。
「嫌なら、アタイ諦める……」
妹紅の手を離し、俯いていくチルノの瞳を妹紅が捕らえられなくなる、そのギリギリが限界だった。
「い、嫌なわけないだろ!」
妹紅が気づいた時にはそう口にしていた。
「それじゃ、一緒に居てもいいって事ね」
「……は?」
妹紅の言葉を聞き入れた途端、先ほどの態度と打って変わっていつも通りのチルノに戻り、またご飯を食べだす。
その様子をただ唖然と見つめる妹紅だった。
「……なぁ、今の誰に教わったんだ?」
「ん? めーりんが教えてくれた」
「あのすれ違いバカップルめ、そろって要らん事吹き込んで……」
妹紅の怒りは遥かと遠く、紅魔館の元上司達に届いたのだろうか? 届いてないであろう、きっと。
一方、紅魔館では。
「はぁ、どうしよう」
美鈴は先ほどかずっと食堂の前にいた。
「うう、一体どんな顔で咲夜さんに会えばいいんだろう」
朝、食堂に行けば、朝食を作って待っている咲夜が居る、現に咲夜の気を感じる。だが、美鈴は訳あって咲夜の顔を見づらい。よって食堂の扉の前をため息を吐きながら行ったり来たりしている。
「と、とにかく、入ってみますか……」
こうしていても始まらない、そう美鈴は思い扉に手をかける。
「……とりあえず、ちょっと覗いてから……」
かなりチキンな美鈴だった。そっと扉を開け、中を盗み見るように覗く。
「……咲夜さーん、いますかー……」
美鈴自身にしか聞こえないほどの小さな呟きで咲夜の名を呼んでみる。が、そこに咲夜の姿は無かった。
「あれ? 咲夜さ――」
そして、突如背中に感じる気配。さっきまで食堂に存在していたはずの気が、今は真後ろにある。
「呼んだかしら? マイステディ」
軽く息を吹きかけるように耳元で囁かれ、美鈴は全身の鳥肌が立つのを感じた。
「さ、ささ、咲夜さん!」
突然の呼びかけに心臓を止めかけられながらも、振り返る美鈴。
「さっきから、こそこそとどうしたの?」
「い、いえ! 何でもないですよ?」
何でもないはず無いのだが、今の美鈴に気の利いた言い訳など出来るはずも無い。
「その割には、さっきから目を逸らすじゃない」
「そ、その、本当に何でも――」
「嘘おっしゃい」
ジレンマに耐えれなくなった咲夜が美鈴の顎に手をかける。それにより無理にでも美鈴は咲夜と目を合わす事になった。
「あ、あう、咲夜さん……」
顎にかけられた手、見詰め合う目。美鈴が昨夜のことを思い出すのに、これらは十分すぎた。
思い浮かぶは夜中の門前、さっきまでの自分とは思えないほど大胆な思いのぶつけ方、そして一つの飴を奪い合う二人の姿。これらが美鈴の中でフラッシュバックされる。
「美鈴、顔が真っ赤よ?」
「あ、あうう……」
限界値、もし羞恥心が生命活動に害を与えるのなら、紛れも無く美鈴は命の危機に瀕している。
「す……す、すみません! 失礼します!」
ついに耐えられなくなった美鈴は、咲夜の手を振り解き、全力でその場を走り去った。
声をかける間もなく、去って行く美鈴を咲夜は唖然と見送る。
「逃げなんて……どうしたのかしら? 何時もなら軽く受け流すのに」
「メイドを極めたアタイの力を巫女に見せ付けてくる」
「……そう、私は寺小屋にでもいるから」
朝食を食べ終えたチルノは、そう言い残し神社へと飛んで行き、それを気だるそうに見送る妹紅。
「さてと、慧音の所にでも顔を出すか」
そしてこの現状をどうにか出来ないか知恵を貸してもらおう、そう心で呟く妹紅だった。
「という訳でさ、何とかなんない慧音?」
「何ともならんな」
頼みの綱を即座に断ち切られる。
「そもそもきちんと誤解を解き、チルノをしっかり説得しない妹紅にも否はある」
「そうは言うけどさ、私も色々頑張ったんだよ? でも上手くいかないんだって」
よもや泣き落としに負けたとは言えない妹紅なので、上手くそこら辺は誤魔化しながら慧音の力を頼る。
「妹が出来たと思って諦めろ、そのうちあの氷精も飽きて帰って行くさ」
「……それまでこの生活を続けろと?」
「なに、たまには変わった生活もいいものだぞ?」
既にあの三日間で非日常を送っている妹紅にとっては、いい加減普段通りの生活を送りたかった。
「……はぁ、あいつの相手えらい疲れるんだよ」
「慣れれば子供とは可愛いものだぞ?」
そう言いながら、表で元気に遊びまわる寺小屋の子供達を眺める慧音。その視線に気がついた子供達が一斉に慧音と妹紅に集まってくる。
「けーね先生、お話終わったー?」
「終わったならもこーお姉ちゃんと遊んでいい?」
「もこーねーちゃん、あそぼーぜ!」
「もこーお姉ちゃん、一緒にあそぼー」
子供にとって普段会えない人と遊ぶのは楽しいらしく、皆妹紅を遊びに連れ出そうとしていた。
「ああ、構わないぞ。沢山遊んでもらえ」
「何勝手に返事してんだよ、別にいいけどさ」
妹紅は子供達に手を引かれて、外へと連れ出されていく。
「それで、何して遊ぶんだ?」
「今、これが流行ってるんだよー」
そう言って子供達が取り出したのは、ヨーヨーだった。
「ヨーヨー? 懐かしい物で遊んでるな」
「へへー、これただのヨーヨーじゃないんだ」
皆が妹紅の前でヨーヨーを中指に付け始める。普通、ヨーヨーとはひたすら上下運動を繰り返す単純な玩具である、しかしこのヨーヨーは違う。
「いくよ、ほら!」
一人が勢いよく腕を振り下ろす、ヨーヨーは糸を引きながら限界まで落ち、そして駆け上がる――と妹紅は思ったが、糸が伸びきったヨーヨーはその場で止まり、音をたて回転し続けている。
「へぇ、外の世界の物か?」
妹紅は物珍しそうにそのヨーヨーを見詰めている。
「もこーねーちゃんもやってみな」
そう言われ妹紅がヨーヨーを一つ受け取り、指に付ける。
「よし、見てろよ。これ位私にも……」
子供の前でかっこいい所を見せようと張り切ってヨーヨーを振り落とす妹紅、なのだがヨーヨーは妹紅の意気込みとは反対に、まるで普通のヨーヨーの様に直ぐに手元に戻ってくる。
「あ、あれ?」
予想外の展開に困惑しながらも、妹紅は再びヨーヨーを振り下ろすが、やはり直ぐ手元に戻ってくる。
「くっ、なぜ戻ってくる……」
「もこーねーちゃん出来ないの? かっこわりー」
子供とは、なかなか残酷だったりする。そんな心無い言葉に、傷つきながらも必死にヨーヨーを振り下ろす妹紅、しかし無常にもヨーヨーは手元に戻る。
「な、何で出来ないんだ!」
恨めしそうに手の中のヨーヨーを睨んでいると、かなり場違いな二人組みが妹紅の前に現れた。
「なんか珍しいのが珍しいことしてるぜ」
「あら本当ね、門番の次はヨーヨー使いにでもなるつもりなのかしら」
何故か寺小屋を訪れてきた魔理沙とアリス。
「……何でお前等がこんな所いるんだよ」
「まぁ散歩のついでだな」
妹紅は今の自分の失態を見られたのではと思い、やや言葉が荒くなる。
「あ、まりさねーちゃんだー!」
「ようお前等、ヨーヨー大事にしてるか?」
「うん、練習していろんな技出来る様になったよ」
子供達は予期せぬゲストに大はしゃぎし、魔理沙に駆け寄る。そして一人が魔理沙の前で覚えたての技を披露し始めた。
「おお、なかなか出来るようになったじゃないか」
「でしょー、めっちゃ練習したんだ」
妹紅はさっきまで自分を取り囲んでいた子供達が魔理沙に駆け寄っていく様子を、一人さびしく眺めている。
「でもまだまだだぜ。貸してみろ、もっとすごい技を見せてやる」
そう言って子供達からヨーヨーを二つ受け取った魔理沙は、素早く左右の指につけ、二つ同時に放り投げた。
「見てろ! これが魔理沙様のダブルループだ!」
二つのヨーヨーは魔理沙の手にあわせ、円を描くようにヒュンヒュン飛び回る。
「うわ! すっげー!」
「あれ一つでも難しいのに」
無論、大技を前に子供達は大盛り上がりだ。
「お前等も練習すればきっとできるぜ」
魔理沙はそう言いながら華麗にヨーヨーをキャッチする。
「魔理沙、いつの間にそんな物練習したの?」
その様子を眺めていたアリスが不思議そうに訪ねた。
「ああ、こーりんの所で見つけて面白そうだから貰ってきたんだが、飽きたからこいつ等にやったんだ」
「はぁ、どうせ強引に奪ったんでしょ」
「まぁそう言うな。アリスもやってみるか?」
魔理沙はヨーヨーの一つをアリスに差し出す。アリスは少し眺めた後、受け取り指に付ける。
「見よう見まねで出来るものなのかしら……」
アリスはヨーヨーの感触を確かめながら魔理沙のようにヨーヨーを放り投げる。アリスにとってヨーヨーの技など、今魔理沙がやって見せたもの意外に知らないため、まさに見よう見まねなのだろう。
「いやいやアリス、幾らなんでもいきなりループは――」
才能とは、どこで発揮されるか分からないものである。魔理沙の言葉を遮るようにヨーヨーは華麗な円を描きはじめる。
「思ってたほど難しくないのね、これ」
涼しげな顔でアリスはビュンビュンとヨーヨーを回す、その速度はさっきの魔理沙の比ではない。
これ以上続けると糸が切れるんじゃないかという所でアリスはヨーヨーをキャッチする、その時の音もバシンと乾いた音が響く位だ。
「うん、これならいけるわね。魔理沙、そっちのヨーヨーも貸して頂戴」
「……構わないが、ここでお前がダブルループとか決めちゃったら私の立場が無いぜ?」
今の妹紅の立場に比べればずっとマシだろう。魔理沙はもう一つのヨーヨーをアリスに手渡す。
「残念だけど、あなたの威厳は地に落ちてもらうわ。皆もヨーヨー貸してくれないかしら?」
アリスは魔理沙から受け取ったヨーヨーのほかに、子供達からもヨーヨーを借り始める。
「何する気だアリス、かっこつけて失敗したらかっこ悪いぜ?」
妹紅の心の傷を広げる魔理沙の言葉をアリスは聞き流し、ヨーヨーを全て地面に置く、その数四つ。そしてアリスは人形を呼び出した、その数三体。
「……アリス、それは反則じゃないか?」
魔理沙は既にアリスがしようとしている事を悟ったりらしい。
「特技は生かすものよ魔理沙」
アリスの声と同時に、人形達はヨーヨーを自分の指に付ける。真ん中の人形が両指に、左右の人形がそれぞれ一つずつ。
「それじゃ、見ててね皆」
かくしてショー始まる、人形達は一斉にヨーヨーを放り投げ、さっきのアリス同様ハイスピードで回し始めた。
一寸の狂いも無く左右対称でヨーヨーは回り続ける。
「ふと思ったんだけど、こういう技もあるのかしら?」
アリスの呟きと同時に、左右の人形はループを止め、違う技を繰り出し始める。
「マジックにシュートザムーンとは……」
「こんな事も出来るわよ」
ついには、真ん中の人形が二つのヨーヨーの回転を交差させ始めた。
「ク、クリスクロスだと! 私でも出来ない技を……」
「すっげー! マジすっげー!」
魔理沙の驚きをよそに、子供達はハイテンションで喜んでいる。
その光景を妹紅は今だ一人さびしく見詰めていた。
「……慧音、やっぱり子供の相手は私には無理だよ」
「メイドを極めたアタイは最強のはずなのに……何故!?」
「馬鹿だからじゃない?」
神社にて、霊夢に喧嘩を吹っかけたチルノはものの数分で撃墜されていた。
「くっ、馬鹿って言うな!」
「じゃあ賢くなることね」
涙目で反論するチルノだが、弾幕という暴力、正論という圧力によって気おされ気味である。
「じゃ、じゃあ根掘り葉掘りの葉堀りって意味知ってる?」
「根とは根拠、葉は枝葉末節の事。調べるなら根っこから葉っぱまで徹底的に、という意味よ」
「巫女すげぇ!」
もう完敗もいいとこだ。
「それじゃ負けた罰として、境内の掃除しなさい」
「な、何でアタイが――」
「負けたんだから文句言わない」
そう言って霊夢はチルノに箒を押し付ける。
「それじゃ、私は中でお茶でも飲んでるから、終わったら声かけなさい」
それだけ言い残すと、霊夢は中へと入っていった。
残されたチルノは箒を握り締め、何故負けたのかを考える。
「メイドを極めたはずなのに……」
もっとも、考えた所で答えは見つからなそうだが。
一方、中に入っていった霊夢は台所でお湯を沸かし、お茶を入れていた。
「さて、掃除する手間は省けたし、お昼は何作ろうかなぁ」
茶の間で熱い湯のみに口をつけながら、霊夢は昼食の献立を考える。
「買い物に行くの面倒だし、あるものでいっか」
一杯目の湯のみを空にしたところで結論を出す。そして同時に茶の間の障子が開かれる。
「掃除終わったー」
「……」
霊夢は入ってきたチルノを見詰めると無言で立ち上がり、チルノの前に立った。
「な、何よ、掃除終わ――」
ごちん、鈍い音がチルノの言葉を遮る。
「いったー! 何すんのよ!」
「何するじゃないでしょ、嘘付くならもっと上手く付きなさい」
チルノに箒を押し付けてからまだ十分も経ってない、幾らなんでも早すぎる。
「う、嘘じゃないもん! 本当だもん!」
「あのね、嘘付いたって境内見れば直ぐに分かるのよ」
そう言いながら、霊夢はチルノを引きずり表に出た。
「ほら、まだこんなに落ち葉が……って、あら?」
そこに広がる光景はどう見ても掃除後、元々ゴミ等は堕ちていなかったが、端に焚き火が出来るほどの落ち葉の山が積み上げられている。
「……まさか本当に終わってるなんて」
「だから終わったって言ったじゃいない!」
すごく、すごくどうでもいい所でメイドの経験が役に立っていた。
「そうみたいね、殴って悪かったわ」
「へへー、すごいでしょー」
むしろ凄いのはチルノをここまで鍛え上げた咲夜だろう。
「はいはい、それじゃもう帰ってもいいわよ」
「えー、掃除したらお腹すいたー。何か食べ物ー」
「何で私があんたのご飯作んなくちゃいけないのよ」
「うー、鬼メイドだって働いたらご飯くれたのにー」
確かに紅魔館でメイドをやっていた頃はそうだったが、それとこれでは話が違う。
「駄々こねてないでさっさと帰りなさい。私はこれから少ない材料で自分の分を作るんだから」
「ケチ巫女ー、甲斐性無しー」
「うっさい、無いもんは無いの!」
ごちん、傍らで騒ぎ続けるチルノを霊夢は博麗の霊力が宿ってるっぽい鉄拳で黙らせる。
「あのーごめんください」
そんな時、境内の階段から見知った人物が声をかけてきた。
「あら早苗、どうしたの?」
「いえ、ちょっとご飯のおかずを作りすぎちゃって……おすそ分けに来たんですが」
「……すごくありがたいんだけど、タイミングが悪いわね」
霊夢の反応に不思議そうに頭を傾げる早苗。そしてそれを聞いてご飯にありつけると判断し、すこぶる笑顔を浮かべるチルノ。
「やたー、ごはんごはんー」
「お腹空いてるの? コロッケでよかったら食べる?」
早苗はよく分からないが無邪気に喜ぶチルノに早速餌付けを始めた。
「……気楽なもんね、青コンビは」
「はぁ、もうお昼ですか」
美鈴は時計塔の針を見詰めながらため息を付いていた。
お昼。普通なら食堂で昼食を取るが、例によって咲夜の顔を見づらい美鈴にとっては鬼門である。
「うう、朝は何であんな逃げるような事をしたんだろう……」
おかげでますます咲夜の顔を見づらい美鈴だった。
「……この際、昼食は諦めますか。一食くらい抜いても死ぬわけじゃないですし」
実際には朝も食べていないため、二食抜いているのだがそんな事も憶えていないくらい美鈴は切羽詰っている。
そして、そんな美鈴を咲夜は食堂の窓から見詰めていた。
「……ご飯を食べに来ないなんて、どうしたのかしら?」
「それじゃ慧音、私そろそろ帰るよ」
「ん、そうか? もう少しゆっくりしていけば良いものを」
あの後、大盛り上がりした人形ショーも終わり、魔女二人は森へと帰っていった。だが子供達の興奮は冷めず、皆ヨーヨーの練習をしている。
「いや、飯の支度しなくちゃいけないし」
「ほう、珍しいな。食べれればいいと言って、何でも丸焼きにして食べてたお前が料理とは」
「私一人ならね、けど食べ盛りのチビにそんなものばかり食わすわけにいかないだろ」
食べ盛りという点では妹紅の方が遥かに食べるのだが、それはこの際置いておく。
「そういう考えが出来るようになっただけでも、氷精との生活はお前にいい影響を与えているよ」
「冗談、早く自由の身になりたいよ」
「その割には面倒を見るつもりなんだな」
「……まさか叩き出すわけにもいかないだろ」
ため息を付きながら話す妹紅のだが、慧音にはその変化が面白く、つい口元が緩んでしまう。
「まぁ、そういう訳なら早く帰るといい。所で妹紅」
「ん、なに慧音?」
「お前、丸焼き以外の料理って出来るのか?」
「……味噌汁と漬物。後、米の炊き方くらいは」
「……今日からお前に料理を教えるとしよう」
「それじゃ、アタイそろそろ帰る」
「そう、このまま晩御飯まで食べていく気かと思ったわ」
「別にいいじゃないですか、食べさせてあげれば」
神社では三人での昼食も、その後の強制的な皿洗いも終わり食後のお茶を飲んでいた。ちなみに皿洗いは枚数が少ないためか奇跡的にチルノは一枚も皿を割ることは無かった。
「あのね早苗、勝手なこと言わないの。誰が作ると思ってるのよ」
「私もお手伝いはしますよ?」
どうも早苗はチルノが気に入っているらしい。きっと美鈴と同じで根が優しく、子供好きなのだろう。
「どっちにしろ、帰るっていってるんだからその必要はないけどね」
「まぁそれはそうですけど……チルノちゃん、良かったら夕飯も食べてかない?」
霊夢の意見を無視して早苗はチルノを夕食に誘ってみる。
「ん、いい。きっともこーが待ってるから帰る」
「もこー? 何であんたが妹紅の所に帰るのよ」
チルノの口から思いがけない人物の名前が出てきたことに、霊夢は当然の疑問を口にした。
「もこーにアタイを傷物にした責任を取って貰うから」
「……は?」
本人の知らぬ所で誤解が広まる妹紅だった。
「あー、もう夕食の時間ですか」
時計の針が進むたびに美鈴は憂鬱になっていく。
「やっぱりお昼に一度会うべきだったかも……」
問題を先送りにした所で解決するはずも無く、寧ろますます合いづらくなるだけだった。
「うう、顔見づらいなぁ、でも変な誤解されたくないし……」
変に思われたくない、だから話がしたい、けど気まずくて顔が見れない、まるで終わらないワルツのような物。
そんな堂々巡りを繰り返す美鈴を、咲夜は昼間と同じように食堂の窓から見詰めている。
「本当に……どうかしたのかしら」
結局、美鈴が食堂に顔を見せる事は無かった。
「もこー、ただいまー」
「ああ、お帰り。ちょっと早いけどご飯出来てるから、食べるだろ?」
慧音監修の元、妹紅はそれなりに食事らしい食事を用意していた。少なくとも食材をそのまま丸焼きにしたものは無い。
「うん、食べるー」
「なら運ぶの手伝いな」
妹紅の言葉に頷き、チルノは手伝いを始める。妹紅が皿に盛り、チルノが運ぶ。特に難しい作業ではないし、現に段取り良く進められていた、だからこれは妹紅にもチルノにも否があるわけではない。それは偶然、妹紅が味噌汁をお椀に注ぎチルノに渡す――この時だった。
「ほら、味噌汁持ってきな」
「分か――熱っ!!」
カシャン、という音と共にチルノは受け取ったお椀を手から落としてしまった。ほんの少し味噌汁が熱めだった、原因はそれだけ。
「お、おい、どうした?」
「うう、熱い……熱いよ……」
魚にとって人間の手は火傷するほど熱い物だという。氷精にとっても、今の味噌汁はとても触れる温度ではなく、普通の人間にとって沸騰した熱湯の様な物だろう。
あまりに熱がるチルノを不安に思い、妹紅はチルノの手を覗き込む。
「平気か? っておい! 手が真っ赤だぞ、大丈夫か!?」
熱さは限度を超えると痛みになる。きっとチルノの手はまだジンジンと痛むだろうし、現に目には涙が溜まっているし、肩は小刻みに震えている。
「んん、熱い……けど大丈夫、アタイ最強だから。それより、ごめん……味噌汁こぼしちゃった」
そんな痛みを堪えながらチルノが弱々しい声で答えたのは、妹紅にとってどうでもいい心配事だった。
「せっかく……もこーが作ってくれたのに、ごめん……」
「馬鹿! そんなのどうでもいいから! それよりさっさと手を冷やせ」
うん、と小さく頷いたチルノは、手のひらサイズの氷を作り握り締めた。それを見届けた妹紅は部屋の奥から救急箱を探し出す。
「たしか前に慧音の置いてったやつが……あった!」
妹紅にとって救急箱など何の役にも立たないので、妹紅本人は要らないと言っていたのだが、あまりにも生傷の耐えない妹紅を見かねて慧音が置いてった物である。
「ほら、手出しな。一応、塗り薬と包帯くらいはあるから」
「うん、分かった……」
まだ少し痛むのか、チルノは氷を手放しゆっくりと手を差し向ける。
「薬塗るけど、少し沁みるかもしれないからな」
妹紅は自分の指に薬をつけ、そっとチルノの手を取り薬を塗り始めた。
「ん、んん……痛ぅ、もこー、もっとやさしく……」
「可愛そうだけど、こればっかりは我慢しな」
痛みに顔を歪ませるチルノを、妹紅は労わる様に言葉をかける。薬を塗り終えた妹紅は包帯を手に取る。
「あまり器用とは言えないから、少し不恰好だけど……」
慣れない手つきだが、妹紅なりにゆっくりと優しく丁寧に包帯を巻いた。
「はい、終わり。まだ痛むか?」
「ん、だいぶ痛くなくなった」
それを聞いた妹紅は、安堵のため息を吐きながら救急箱を片付ける。
「もういいから、居間で休んでな。後は私がやるから」
うん、とチルノは小さく頷き居間へと歩き出す、が不意に妹紅へと振り返った。
「もこー、ありがと……」
「いいよ、気にすんな」
それから妹紅は、こぼれた味噌汁を手早く片付け、食事の支度を再開した。
「よし、それじゃ食べるか、頂きます」
「……」
「どうした、食わないのか?」
「……お箸、持てない」
「……」
利き手を包帯で巻かれているチルノが箸を持つのは、どう頑張ってみても無理だろう。
「もこー」
「……何だ」
名前を呼ばれた妹紅はなぜか嫌な予感しかしない。
「あーん」
チルノはさも当然のように妹紅に向かって口を広げる。
その行動が何を意味するのか、妹紅は数秒考えた結果、試しにご飯を箸で掴みチルノの口に放り込んだ。
「……ほれ」
「ん、んぐんぐ、ごく。あーん」
放り込まれたご飯を飲み込み、チルノはまた口を開く。
「……ほれ」
「んぐんぐ、あーん」
今日の夕食はいささか時間がかかりそうだった。せっかく頑張って作った料理が冷めないかと不安な妹紅だが、その不安も直ぐ消える。
「チルノ、うまいか?」
「うん、おいしー」
笑顔で答えるチルノを見て妹紅は思う。この顔が見れただけで頑張った甲斐があったと、それにこんな日々もそう悪い物じゃない、そう思う妹紅だった。
深夜の門前、一人気落ちする美鈴のもとにいつもの差し入れを持って現れる咲夜。
「……やっぱり、来ましたか……」
「ええ、やっぱり来るわよ」
二人きりの時間、美鈴にとって朝のような退路は無い。
「それじゃ、お茶でも飲みながら話でもしましょうか。今日の事とか」
「うう、はい……」
まるで尋問に掛けられる気分で美鈴はコップを受け取る。
「はぐらかしても仕方ないから率直に聞くけど、どうしたのよ一体?」
「すみません……」
咲夜の質問に、美鈴はただ俯いて謝る。
「はぁ……もっと簡潔に聞くわ。何で私を避けてたの?」
「さ、避けてたわけじゃ……その、何て言うか」
「私の事、嫌いにでもなった?」
「ち、違います! そんな事あるわけ――」
「そう、それだけ聞いて安心したわ」
安堵の息を吐く咲夜。
「もしかして本当に嫌われたのかと思って、一日気が気じゃなかったわよ」
「……ごめんなさい」
「まったく手が付けられてない食事を片付ける気持ち、貴女に分かる?」
「っ! 本当にごめんなさい、咲夜さん」
自分のくだらない感情で相手の好意を無碍にしてしまった、しかもそれに気づきもしなかった。美鈴は後悔の思い一杯になる。
「それじゃ、話してくれるかしら?」
「はい……その、なんと言いますか、咲夜さんを見ると……思い出しちゃって、気恥ずかしいです」
上目遣いで答えた美鈴の顔は真っ赤である。
「貴女とベットを共にした憶えはまだ無いけど……まさか昨夜のあれ位で?」
「はい……」
初めて一線を越えた次の日、というのなら咲夜だって理解できる、だがまさかあれ位でここまで動揺するとは思わなかったのだろう。
「まったく情けない。元はといえば貴女から仕出かした事でしょうに」
「い、言わないでくださいよ、凄く恥ずかしいんですから」
ますます顔を赤くして俯いてしまう美鈴。
「ま、許してあげるわ」
「有難う御座います」
「昨夜の貴女と違って私は心が広いから、許すための条件なんていうのも出さないわよ」
「だ、だから言わないでくださいよー」
一通り美鈴をからかって満足したのか、咲夜は口元を緩めた。
「さて、それじゃ行くわよ」
「え? 行くってどこへですか?」
突然の咲夜の申し出に、美鈴は思わず聞き返す。
「決まってるわ、食堂よ。貴女今日は何も食べてないでしょ?」
「ああ、そういえばお腹空きました」
あっけらかんと答える美鈴だが、一日何も食わずにいてこの程度なのは、あまりの悩み事に空腹など二の次だったのだろう。
「夜食作ってあげるから、食べるでしょう?」
「ええ、食べますけど……ちょっといいですか咲夜さん」
美鈴はそう言って屋敷へと歩き出す咲夜の足を止めた。
「何? メニューだったらある程度受け付けるわよ」
「いえ、その夜食なんですけど、私に作らせてくれませんか?」
「……別に構わないけど、どういう風の吹き回し?」
「前に約束したじゃないですか、私の手料理ご馳走するって。今日のお詫びを兼ねて作りたいんです」
約束、昨日までの騒がしい三日間の初日に交わしたもの。
「そうね、分かったわ。ご馳走になろうかしら」
「ええ、咲夜さんに比べたらまだまだですけど、腕によりをかけますよ」
「夜食なんだから、そんなに手の込んだ物はいいわよ?」
「私がお腹へってるんです」
そんな会話をしながら二人は屋敷へと歩いていく。
こうして騒がしい三日間が生み出した変わった一日は終わりを迎えた。
「永琳、そういえば最近妹紅の姿が見えないわね?」
「……姫様、ひょっとして覚えて無いのですか?」
「え、何が?」
「いえ、罰ゲームの事ですよ」
「罰ゲーム? なにそれ?」
「……何でもないです。妹紅だったらその内顔を出すでしょう、鬼の形相で」
「? まぁいいわ。それよりこの炎龍、何回倒しても宝玉出ないんだけど……これが噂の物欲センサーってやつ?」
「お言葉ですが、上位じゃないと出ませんよ?」
「え、マジ!? 私の八時間返してよ!」
「ん、んん……いたっ、も、もこー、もっとやさしく……」
「あ、ああ、悪い……つい力が入っちまった」
「ん、んあ、んん……」
「これ位で……痛く無いか?」
「あ、はん……だ、大丈夫だから……」
「それじゃ、少し強くするぞ?」
「う、うん、わかった……」
「ん、んん、どうだ? 大丈夫か?」
「へ、へいき、そ、その……少し、気持ちいいから……」
「わ、わかった、もう少し強くするから……」
「ん、んあ! も、もこー、そ、そんな急に――」
「ご、ごめん、けどこのままじゃらちが明かないだろ……」
「だ、だめ! んんあ、ひゃう!」
「す、すぐに終わるから……」
「は、早く……アタイもう、我慢が……」
「こ、これで……おわったぁ」
「はぁ、はぁ……」
「チルノ、大丈夫か?」
「う、うん、大丈夫。もこーの……気持ちよかったし……」
「そ、そうか、ならよかった。……所でさ」
「何? もこー」
「ただ背中流してるだけで変な声出すの何とかなんないの?」
「変な声って?」
「……何でもない。ほら、次は頭洗うから」
「え? ん、んあ、も、もこー、そんな強引に……だめ」
「お前、わざとだろ?」
「ねぇ早苗、もう時間も遅いけど帰らなくていいの?」
「え? 迷惑でしたか?」
「いや、そういう訳じゃないけど……あの二人は何も言わないの?」
「ええ、実は神奈子様達には、今日は泊まってくるって言ってあるので」
「……あんた端から泊まるつもりで来てたの?」
「はい、なんの為にわざとおかず作りすぎたと思ってるんですか」
「知らないわよ、そんなの」
「まさか、今更帰れなんて言わないですよね?」
「……好きにしなさい」
「私もアリスに負けられないからヨーヨーの練習することにしたぜ」
「そう、せいぜい頑張りなさい。所で一つ聞いていいかしら?」
「何だ? 特別に答えてやら無いことも無いぜ?」
「なら聞くけど、貴女のヨーヨーの練習と、今私が糸で縛られてるのは関係あるのかしら?」
「ああ、まずは糸の扱いを練習しようと思ってな」
「……くだらない冗談を言うつもりは無いけど、意図が分からないわ」
「つまり今夜の研究のテーマは、人形遣いを縛ってみようだぜ」
「……センスの欠片も無いわね。早く放してくれないかしら? 糸が食い込んで痛いのよ」
「ああ、食い込む様に縛ったからな。ほら、ここの糸を引っ張るとだ……」
「ひ、ひゃう! や、やめて、そんな所引っ張ったら……く、食い込んで……」
「んー? 何処が食い込むんだ?」
「ま、魔理沙、意地悪しないで……だ、だめ、お願いだから、や、やめ――」
「そんな反応するなよ、ますます虐めたくなるだろ?」
「そ、そんな事、言われても……んんあ! や、ちょっと、んはああぁぁ」
「それじゃあ……思う存分味わってくださいね……咲夜さん」
「ほんとに良いの? 美鈴」
「はい、咲夜さんに味わってもらいたいんです。私の全てを……」
「そう、なら頂くわ。とても美味しそうよ……美鈴」
「咲夜さん、早く……私もう」
少女妄想中
「みたいな展開も期待しちゃったりしたんだけど?」
「夢見すぎです。とりあえずチャーハンで我慢してください」
「ええ、それはそれでいいのよ。美味しいし、貴女の手料理だし、それに貴女の手料理だし、なにより美鈴の手料理だし」
「そう言って貰うと嬉しいですが、さっきみたいな展開には発展しませんよ?」
「やっぱり、強引に襲うしかないのかしら……」
「はぁ……瀟洒でかっこよく口説かれたら、そのまま咲夜さんの部屋に行っても良かったんですが、ダメみたいですね」
「ちょっとまって美鈴それほんと?」
「ええ、まぁ」
「お願い、もう一回チャンスを頂戴。今スイッチ切り替えるから」
「やり直しは無理だと思います。雰囲気台無しですから」
「ふふ、まだ遅くはないわ。夜はこれからだもの」
「うわ、本当に切り替えましたね」
「ええ、貴女を手に入れるためなら……これ位造作も無いことよ」
「今更頑張っても無駄だと思いますよ?」
「無駄という言葉は、基本的に私の専売特許よ。それにね無駄かどうかは私が決めるの」
「な、何かいつにも増して強気ですね」
「貴女が私の事をよく知っているように、私も貴女の事を良く知ってるつもりよ?」
「ど、どういう事ですか?」
「貴女は強い押しに弱いって事。昨夜で確信を持ったわ」
「そうなんですかね……」
「それにね、そろそろ本気で私の思いに答えて欲しいの……」
「咲夜さん……」
「貴女は近くに居るのに、遠くに感じるのよ……だからお願い、近くに感じたいの……一つに、なりたいの」
「そんなに、私が……欲しいですか?」
「……今更、口にする必要は無いと思うけど、あえて言うわ。美鈴、貴女が欲しい」
「ずるいですね、そんな事言われたら……」
「ずるくもなるわ、貴女を手にする為だもの」
「咲夜さん……」
「美鈴……」
「あー喉渇いた、お水、お水って、あれ?」
「「お、お嬢様!?」」
「あ、あの、えーと、その……く、空気の読めない主でごめんなさい!!」
というわけで一言
氷炎の続きを!
しかしお嬢様が不憫すぎる……ここはいもさまに慰めてもらうしか。
一線越えそうなら場所を変えればいいと思うよ!
というわけで、氷炎の続きを!レイサナも是非!
れみりゃにも春を!
そしてアリスSUGEEEEEEEEEE
氷炎の続きを!
ではぜひ氷炎の続きをば
読んだあとに何も残りません。
むしろ前回より卑猥に見せかけた部分が多いだけ不快でした
ヨーヨーで思い出したけど、ジターリングってまだあるのかな・・・・・・
氷炎の続きを!
そしてこっそり進行しつつある霊早も気になりますねー
>「……気楽なもんね、青コンビは」
あ、新しい組み合わせ!?
>これが噂の物欲センサーってやつ?
絶対に搭載されてると思うね私は!
>構想あるし
あるんかいw
>そんな事言って嫌われたらそうするの!?
そんな事言って嫌われたらどうするの!?
そうって何ですか?どうしちゃうんですか!?とか思っちゃった
そしてKY認定されかけたれみりゃさまとなんかハブられてる気がする妹様に合掌。
氷炎の続きはぜひとも読ませていただきたいですね。
個人的にはこあパチェの続きがみたいです。そしていい加減、お嬢様に愛の手をww
>ヨーヨー
時の流れは無常ですね…。
咲夜さんと美鈴もいいですが、チルノと妹紅が意外といいコンビだ。
前回同様とてもおもしろかったので、続きの構想があるようでしたらぜひ読んでみたいです。
というわけで
氷炎の続きを!
はっきり言って狙いすぎな表現に引きました。
丁度、その世代だった自分には悲しいことなわけで。
ついでに、魔理沙がミニ四駆に手を出したらマグ○ム並にかっ飛び仕様なんだろうなぁ、なんて事を考える今日この頃。
それにしても早苗さん可愛いなぁ
是非、氷炎の続きを!
チルノのレベルがどんどん上がっている件について。
こんなに詰め込まれているのに各々味があって面白かった。
貴方の書く小悪魔が好きです。
お嬢様は何も悪くないからさ(´;ω;)
ここでこの後も書くなら次はもう少し抑え目な方が良いかと
作品自体は相変わらず面白いですよ~ww
前作に続きなんか本気でレミリアが不憫になってきた……(´;ω;)
多分誤字だと思われるので報告
>お昼、普通なら~
お昼は、普通なら~
>あれ位でここまで同様
あれ位でここまで動揺
氷炎コンビも一線を越えてしまうのなら、ここで終わらせた方がいいと思います。
チルノに恋愛感情が芽生えるようには見えませんし。
あと、すっかりHシーン担当になっているアリスがかわいそう。
今度はチルノが巫女修行するかと思ったのに。
まあ、ヨーヨー幻想入りしたのはうれしいが