カチャリと紅茶のカップをソーサーに置いて、レミリアは軽く息をついた。
「咲夜の淹れた紅茶は、やっぱり美味しいわね」
口元に笑みを浮かべながら、顔を横に向ける。
「お褒めに与り、光栄ですわ」
少し後ろに控えていた咲夜が、瀟洒な笑みを浮かべながら軽く会釈をする。
この部屋に窓はないが、外に出てみれば紅魔館を山の稜線に沈みかけた夕日が、館を名前通り真っ赤に染め上げている景色を見ることが出来ただろう。
優雅なアフタヌーンティー、と言うには少々時間が遅いが、そんな事はレミリアにしてみれば大して気にすることでもないのである。
ふと見てみれば、先ほど飲み終わったカップに新たな紅茶が注がれている。血のように真っ赤に透き通った色をしたこの紅茶は、レミリアのお気に入りだった。
特に声をかけなくても、もう少し飲みたいと思っていれば、このようにいつの間にか――恐らく時を止めてやっているのだろう――新たな紅茶が用意されているし、そろそろ良いと思えばそのまま側に控えている。
咲夜は呼ばれる通り、とても良く出来た完全な従者だった。
レミリアはそんな咲夜をとても気に入っている。
咲夜が自分のことを敬愛しているのは普段の態度からも判るが、単に主人と従者と言うだけではなく更にもう一歩踏み込んだ強い関係であるとレミリア自身心の内で思っている。きっと咲夜も同じだろう。
まあ、口に出すようなことはしないのだけれども――
レミリアが生きてきた年月から見れば、咲夜と過ごしている時などほんの一握りにも満たない。けれどすでに、咲夜の居ない生活など考えられないほどにまでなっている。
咲夜を拾った時には、こんなにまで何時如何なる時も側に置くようになるとは思っていなかった。
――いや、もしかすると解っていたのかもしれない。あの時、運命は確かに見えていたのだ。だから彼女に十六夜咲夜の名を付け、メイドとして紅魔館に置くことにした。運命を操ったのだ。
けれど、運命を操ったところで心までも変えることは出来ない。今あるこの心地良い関係は、もしかすると運命すらも越えたところにある奇跡とも言えるものなのかもしれない。
そんな事を考えたところで、レミリアはクスリと笑いながら紅茶を口に含んだ。
なんだか柄でもないことを考えてしまったわね。
そう思いながら、突然笑い出したレミリアに不思議そうにしている咲夜に、なんでもないわと手を軽く振る。
それを見て、そうですかと再び涼やかな笑みを浮かべて控える咲夜。
良く出来た従者だ。
「そうですわ、お嬢様。先ほど焼き上がったクッキーがあるのですけど、召し上がりますか?」
咲夜がふと思い出したように、レミリアに訊いてくる。
クッキーか……。
「それは咲夜が作ったのかしら?」
「はい、そうですが」
「そう、ならいただくわ。持ってきてちょうだい」
咲夜が作ったものなら、特に問題はないだろう。何回かお茶会の時にも食べたこともある。レミリアの他、パチュリーなどにも概ね好調だった。
「かしこまりました。少々お待ちください」
お辞儀をしながらそう言い、咲夜は静かな足取りで部屋を出ていく。
それを見ながら、レミリアはまた一口紅茶を口に含んだ。
そして、ふと気づいたように僅かに眉をひそめると、モゴモゴと舌で口の中を探り始める。
紅茶の中に何かが入っていたというわけではない。数日前から口の中に何か違和感がある。それがまた気になってきてしまったのだった。
(何かしらね、この変な感じ……。牙の辺りが疼くというか……。ここ最近、直接血を吸うような事をしていなかったし、その所為かしら……?)
首を傾げながら、違和感を紛らわすように紅茶を飲む。
――と、ドアがコツコツとノックされる。
「失礼します、お嬢様」
声と共に、咲夜が盆を持って部屋に入ってくる。
随分と早いが、例によって部屋を出たと同時に時を止めて持ってきたのだろう。
テーブルの上に乗せられた皿には、きつね色にこんがりと焼けたクッキーがこんもりと盛られている。
甘く、何とも言えない良い香りが、レミリアの鼻に届く。色や形、薄さなども様々だが、どれも一口サイズになっており見た目からしてとても美味しそうだ。
レミリアは、スタンダードな四角い形のクッキーを手に取ると、口に入れてサクリと噛み砕く。
ホワリと口の中に広がる甘さとバターの芳香。同時にシャラリと舌の上でクッキーが崩れ、何とも言えない余韻を残して喉に落ちていく。
「上出来ね」
ニコリと微笑みながら咲夜を見れば、涼やかな表情の中にも隠しきれない嬉しさを浮かべながら、小さなお辞儀で応える。
紅茶とも良く合う。相変わらず絶品な咲夜のクッキーだった。
「あ、お嬢様。その丸い形のクッキーは新しく作ってみたものなんですよ」
何個めかのクッキーを手に取ったとき、咲夜がそんな事を言ってくる。
「へぇ……。他のものと大して変わらないように見えるけど、何か違うのかしら?」
「ええ。豆乳を使ったクッキーなんです。先日パチュリー様の所に有りました本の中で見つけて、作ってみました。健康にもよろしいようですし、甘さも控えめですのでお嬢様のお口にも合うかと。ただ、少々堅めなのが難ですが……」
「ふぅん……」
言われたクッキーを口の中に入れる。
成る程、今までのクッキーよりも大分堅いようだ。豆乳を使ったと言うことだが、ほとんどそのような風味は感じられない。
そして、そのまま噛み砕こうとクッキーに歯を立て、力を入れた瞬間――
ポキンと口の中で音がした。
「……?」
なんだろう……何とも言えない違和感。舌で確かめてみれば、噛み砕いたはずのクッキーは何故かそのままで、他に何か小さくて硬いものが口の中に転がっている。
少々行儀は悪いが、口に中に指を入れて、その小さな硬いものを取り出してみる。
それは白くて尖っていて……見たままに言えば、牙だった。
なんだろう……これは。
ジーッと指でつまんだそれを見つめる。頭の中で理解が追いつかない。
ええと……え? え? 何故こんなものが此処にあるのかしら……。私の牙……?
「お嬢様? もしかして、クッキーの中に何か……」
様子のおかしいレミリアを見た咲夜が、心配げにそばに寄る。
そして、レミリアが持っているものを見て言葉を途切れさせた。
「お嬢様、それは……」
レミリアはジッと牙を見つめたまま応えない。
折れた? 何で? クッキー食べたから?
段々目の前の現実が頭に染み渡ってくる。
つまりは、さっきのポキンって言う音は私の牙が折れた音で、それを今私が持っていると言うことは口の中に牙はなくて……。
ゆっくりと舌で牙が有ったであろう場所を確かめてみる。
物の見事に其処だけぽっかりと隙間が空いていた。
「………………」
牙……私の牙……。
吸血鬼の象徴とも言えるもの……。血を吸う時に必要なもの……。
と言うことは、血を吸えない?
吸血鬼としては致命的……血を吸えない吸血鬼なんて、カリスマ低下どころの話ではない。
どうしよう……どうしようどうしよう。
頭の中でグチャグチャと色々なことを考えた後、レミリアはゆっくりと咲夜の顔を見上げて……
「さくやぁ……どうしよう」
べそっと泣き顔になった。
◆
紅魔館の地下にある大図書館。
パチュリー・ノーレッジが館長を務める知識の殿堂である。
とは言っても一般に開放しているわけでもないので、パチュリーの書斎と言った方がいいのかもしれない。それにしては少々規模が大きすぎるが。
とにかく蔵書の数が多い。黒白の魔法使いに毎度のごとく本を持ってかれているが、全体から見れば微々たるとも言えないほどの数だったりする。
それでも、いつかは綺麗さっぱり取り返してやろうと思っていたりするが。
この図書館にはありとあらゆる分野の知識が集まっていると言っても過言ではない。知らない内に増えていたりもするのでパチュリー自身も全ての本を把握できていない。
そんな場所だから、その知識を求めて度々人が訪れたりもするのだ。
代表的なのは魔理沙だが、その他にもアリスや慧音がやって来ることもある。
魔理沙は別にして、他の者たちは特に騒いだり本を汚したり勝手に持っていったりすることもないので、特に気にしては居ない。
パチュリーとしては静かに本が読めれば、それで良いのだ。
そして今も、淡々と魔導書を繰るパチュリーの側で同じように読書に没頭する者が一人。
永遠亭の薬師――八意永琳だ。
以前レミリアが、パチュリーの喘息を診て貰おうと永琳を紅魔館に呼んだことがあった。
残念ながらパチュリーの喘息は先天的なもので根本的な治療を試みることは出来なかったのだが、それでも定期的に貰う薬のおかげで随分と発作の回数が減った。
その礼と言うことで、レミリア直々に貸し出しも含めたこの大図書館の利用を許可されているのだった。
パタンと本を閉じる音に、パチュリーはふと顔を上げて永琳の方を見る。
永琳が小さく息を吐きながら、今し方読み終えた本を脇に積んでいた。
「随分と読むのが早いのね」
彼女が此処に来てから読んだ本は、優に10冊を越える。
ペースで言えば、15~20分で一冊を読み終わっていることになる。それぞれの本の厚さも決して薄くはない。
「そうかしら? 集中しているものだからあまり気にしても居なかったのだけども」
そう言って、穏やかに微笑む永琳。
貸し出しを許されている永琳だが、実際に本を借りていくことはあまりない。
このように一心不乱に本を読みあさって、そして全て理解して帰っていくのだ。天才という呼び名は伊達ではないと言うことだろうか。
積まれた本の山を見てみる。
幻想郷に原生している薬草などを書いた物の他、職業柄なのか医療に関わるような内容の本が多い。
「相変わらずそう言う本が多いのね。私はあまり読まないのだけど、面白いのかしら」
パチュリーはそう言った後、再び本に視線を落とす。
「面白いというか、知識を蓄えるのが主ね。永遠亭を閉じて永い間過ごしていたものだから、色々と知識が古いのよ」
そう言って、傍らの本の表紙を撫でるように触れる永琳。
「なかなか面白いわ。思いも寄らないような薬草が意外なものに使えそうだったりね。それに最近は魔法的な治療も取り入れて組み合わせてみようと思っている所よ」
天才であると同時に、あらゆる薬を作る程度の能力を持つ永琳。きっと常人には考えもつかないような使い道が頭の中で展開されているのだろう。
「そう……それは興味深いわね」
本から顔を上げずに応えるパチュリー。
別におざなりに聞いているわけではなく、これが彼女の自然体なのだ。
永琳もそれを解っているのだろう。特に気分を害した様子もなく、言葉を続ける。
「やっぱり外には出てみるものね。あちこちを歩き回ってみると色々と新しい発見があるものよ」
クスリと笑って席を立つ永琳。
多分にパチュリーに向けた言葉も混じっているのだろう。動かない大図書館と言われるほどにパチュリーはこの場所から外に出ることがない。
パチュリーはその言葉にチラリと永琳を見ただけで、特に何も言葉を返してくることもない。
永琳はそんな彼女を見て苦笑すると、積んだ本を元の場所に戻すためによいしょと持ち上げる。
「あ、私がやりますよ」
どこからともなく小悪魔が現れて、永琳に声をかける。
手にしたお盆には、湯気立つ紅茶が乗せられていた。
少しの間逡巡した後、
「そう、それじゃお願いするわね。ありがとう」
そう言ってフワリと微笑み、再び椅子に腰を下ろす。
「いえいえ、お気になさらずに~。これがわたしの仕事ですから」
そう言いながらニコニコと笑顔を見せ、パチュリーと永琳の前にそれぞれ紅茶を置く小悪魔。
そして積まれた本を両手で持ち上げると、パタパタと羽をはためかせながら図書館の奥へと飛んで消えていく。
その様子を見送りながら、紅茶を一口。
ハーブティーのようで、飲むと同時にスッと心地よい感覚が鼻から喉へと通り過ぎていく。
見ればパチュリーも、本から目を離すこともなく紅茶を口にしている。
そろそろ時間も遅くなってきたし、お暇しようかしら……。姫も退屈しているでしょうし。
暇~と言いながら鈴仙辺りを弄り回している輝夜の姿を思い浮かべて、フフッと含み笑いをする。
そんな事を考えながらハーブティーの香りを楽しんでいると、フッと近くに何者かの気配が生まれた。
「良かった。まだ居たわね」
そう声に出しながら近づいてきたのは咲夜。
急いできたのか、ほんの少しだけ息が上がっている。
「咲夜? どうかしたのかしら?」
パチュリーが本から顔を上げて咲夜に訊く。
彼女がこの図書館に来るのはそう珍しいわけではないが、いつもと違い少々様子がおかしいのが気になる。
咲夜は数瞬で息を整えると、パチュリーに向かって深々と頭を下げる。
「失礼しました、パチュリー様。少々急いでいたもので……」
「別に気にしないけれど。私に何か用なの?」
「いえ、用があるのはパチュリー様ではなく……」
そう言いながら永琳の方を見る。
「こちらの薬師の方ですわ」
「私? 何かしら……」
頬に手を当てながら、コクンと首を傾げる永琳。
「お嬢様を診て欲しいの」
きゅっとエプロンを掴む手に力がこもった。
「レミィを? いったい何があったの?」
眉を寄せてパチュリーが本を置いた。
「その……」
咲夜が言い淀む。どう言うべきか迷っているような様子だったが、そのままをを伝えることにしたようで顔を上げて口を開く。
「お嬢様の牙が折れてしまったんです」
しばしの沈黙。
「ええと……それは比喩ではなく直接的な意味で、かしら?」
永琳が少々困惑した様子で咲夜に訊く。
「ええ、そのままの意味で。ポッキリと」
パチュリーと顔を見合わせる。彼女も些か戸惑っているようだった。
「まあ、取り敢えず診てみましょう。案内してちょうだい」
机の上に置いてあった赤青のナースキャップを頭に乗せ、銀の三つ編みを背中に払いながら立ち上がる。
見ればパチュリーも魔導書片手に席を立っていた。どうやら気になったらしく、ついてくるようだ。
そして三人連れ立って出ていく。
静寂に包まれる大図書館。
やがて戻ってきた小悪魔が、いつの間にか居なくなっている主人と客人に首を傾げたのだった。
◆
広大な紅魔館の廊下を歩き、やがて一つのドアの前で止まる。
「お嬢様。お連れしました」
ノックをした後ドアを開き、二人を中に迎え入れる咲夜。
不安げに足をブラブラさせながら椅子に座って居たレミリアが、永琳とそしてパチュリーの姿を見てヘニョリと情けない顔になる。
「う……パチェも来たのね」
「あなたの牙が折れたと聞いてね。咲夜が深刻そうにしているからいったい何かと思ったわよ」
「た、大変なことなのよっ。牙が折れたら、吸血鬼としての誇りがっ……カリスマがっ!」
ブンブンと手を振り回りながら叫ぶレミリア。
「はいはい。静かにして。取り敢えず、その折れたという牙を見せて貰えないかしら」
パンパンと手を叩いて場を収める永琳。
「ええ、これよ」
咲夜が差し出す皿の上に、小さな牙が乗っている。
手に取り、様々な角度からそれを調べる永琳。
「ふむ……」
そしてレミリアに近づく。
「詳しく診るから口を大きく開けて貰えるかしら」
そう言って、レミリアの顎に手を添える。
「よ、よろしくお願いするわ」
身を屈めて口の中を覗き込む。
「段々口が閉じてきているわよ。もっと大きくあーんってする」
「あーん……」
ペンライトを胸元から取り出して、口内を照らしてみる。
(あんなに大きなお口を開けて……可愛いですわお嬢様……)
(レミィの貴重な姿が見れたわね。やっぱりたまには図書館から出てみるものだわ。写真に撮っておこうかしら……?)
瀟洒な従者と日陰の少女が真面目な顔でそんな事を考えている中、永琳の診察が進んでいく。
「……はい、、もう良いわよ」
「う、うむ……」(ジュルリ)
「あ、お嬢様、涎が……」(拭き拭き)
「ず、ずっと口を開けてたからよっ」
レミリアのカリスマ絶賛下降中である。
「それで、どうなのかしら? レミィの牙は元通りになりそうなの?」
魔導書を持ち直しながら、パチュリーが訊く。
「そうねぇ……」
頬に手を当てて、思案顔の永琳。
「ま、まさかもう片方の牙も折れちゃうなんて事はないでしょうね!?」
泣きそうな顔で詰め寄るレミリア。
「結論から言うと――」
ゴクリと唾を飲む音がレミリアの喉から聞こえる。
「この牙はくっつかないし、恐らくもう一方の牙も抜けるでしょうね」
ガキンとレミリアの身体が固まる。
そして、ギギギッと錆びたような動きで咲夜の顔を見上げると
「さくやぁぁぁぁ……」
べそそっ
泣き出した。
「ああっ、お嬢様!」
慌てて駆け寄る咲夜のメイド服にバフッと顔を埋めるレミリア。
ギューッとしがみつくその姿は、なんというか見た目相応で可愛らしかった。
「永琳……どうにかならないの?」
そんな友人の姿を見て流石に可哀想だと思ったのか、パチュリーが永琳の側に寄り囁くように訊いてくる。
そんな彼女たちを見た永琳は、柔らかな笑みを浮かべると
「そう心配することでもないわよ。まずこの牙だけど――」
そう言って、皿に乗っていた牙を手のひらに移す。
「この歯は乳歯なのよ」
「は……?」
「え?」
その言葉に、咲夜とパチュリーの二人がまじまじと手の上の牙を見つめる。
「と言うことは、つまり……」
「そう、この牙は抜けるべくして抜けたという訳ね」
咲夜の言葉に続けるように、永琳が答える。
「今見てみたけれど、歯茎からもう新しい歯が見えているわ。だから、もう片方の牙ももうすぐ同じように抜けて新しい牙に生え替わるでしょうね」
フゥ~っと咲夜の口から安堵したような息が漏れる。
「なるほど。そう言うことだったんですか」
「分かってみれば何とも拍子抜けだったわね」
パチュリーも苦笑している。
「え……? え?」
場の空気が変わったのに気付いたらしく、レミリアが顔を上げてキョトンとした顔で皆の顔を見回していた。
「お嬢様」
咲夜がしゃがんで、レミリアと視線を合わせる。
「心配なさらないでも宜しいようですよ。大丈夫です」
柔らかく微笑んで、レミリアの頬を優しく撫でる咲夜。
「……どう言うこと?」
「最近、牙の辺りがウズウズとむず痒かったりしませんでしたか?」
「まあ……していたわね」
「それは、お嬢様が成長なされたという印なのです。古い歯は抜けて、新しくもっと強くて立派な牙が生えてくるのですわ。もう一方の牙も同じです」
そう言って、もう片方の手もレミリアの頬に添え、包み込むようにする。
「つまり……」
慌てるような事ではなかったと言うこと? と目で訊ねるレミリア。
咲夜はニコリと笑って頷く。
するとレミリアはボンッと頬を赤く染めて、咲夜の手の中から抜け出し、こちらに背を向けて椅子に座る。
「ま、まあ、実は分かっていたのだけれどねっ。ちょっと試しに狼狽えてみただけなのよ」
背中の羽がパタパタと忙しなく動いているのが椅子越しに分かる。
「フフッ……」
「クスクスクス……」
「ハァ~……」
「そ、そこ! 何笑ったりため息ついたりしているのかしら?」
ちなみに、咲夜、永琳、パチュリーの順である。
その後、無事に……と言うべきか、もう一方の牙も抜け、可愛らしい生えかけの牙が顔を出す頃になると、レミリアはあまり館から出かけずに部屋に篭もることが多くなった。
何でも、牙なし状態の歯を誰かに見られたら威厳が、カリスマがと呟きながら紅茶を啜っているらしい。
宴会の時に、『そう言えば最近レミリア見ないわね』と思い出したように呟いた霊夢に、そんな事情を知る永琳やパチュリーはクスクスと含み笑いをしていた。
ちなみに、抜けた牙は咲夜が大切に持っている。慣習に従って軒下に投げることも提案したのだが、見つかって拾われたら恥ずかしいと膨れた顔で言うので咲夜が預かることにしたのだった。
今日も幻想郷は平和である。
余談だが、しばらく後にフランドールにも牙の生え替わりが起こり、レミリアと同じように大騒ぎするのだが、その際したり顔で説明するレミリアと、姉を尊敬の眼差しで見つめるフランドールを見て、咲夜は笑いを堪えるのに大変苦労したという。
それでもそんなおぜうさまが大好きな咲夜さんであった
それはともかくレミ萌え。
いや、読んでて楽しかったです。
お嬢様のべそっとする顔などが想像できただけに思わず
PCの前でニヤニヤしたりしてしましました。
しかしれみりゃかわいいwwwww
和めたし笑えたし一粒で二度美味しかった。
あと最後最高!!
ただカリスマが、という言葉はもったいなかった。
カリスマ、ギャグSSで散々使い尽くされた言葉なので、どうしてもほのぼのではなく
ギャグに頭が切り替わってしまいました。
お嬢様かわいすぎるぜ。竹●泉絵をあてはめてみたら鼻血吹いたぜ。
妹者が先だったら・・・・
なんて変な想像をしてみる。
とても面白かったです。レミリアが何をやらせても可愛いんだよなあ!
正直オチは読めましたが、ある意味王道の展開なのでそれは仕方のないこと。
と言うより、オチが分かっているのに最後まで楽しく読ませてくれたことをこそ評価したい。
べそかいてるフランにお姉ちゃんぶって説明するレミリア想像して萌えたw
ありがとうございました。