チルノは魔理沙を前に勝利を確信していた。
「今日こそは、ぎったんぎったんの、めちゃめちゃにしてやるわ。上手い具合に凍ったら、明日は魔理沙が吸血鬼んちの晩御飯よ」
「なんだぜ? あいかわらず物覚えが悪いぜ? そう言って、ぎったんぎったんになるのは毎回お前だろう」
「ふっふっ~ん、そう言ってられるのも今のうちよ」
「へぇ?」
「何しろ今日は、すっごーい必殺技を開発したんだからね。あんたなんて、あっと思ったら、ぴっちゅーんよ」
「ふん?」
「なによう。もっと驚きなさいよ。あんたなんて、弾幕を見たと思ったら、ぶつかってるのよ。そういう弾幕なのよ」
「えっ、そうなのか?」
陽は強烈に天上より降り注ぎ、眼下の森は眩しすぎる光に影を消し飛ばされ、緑を平面なキャンバスに塗り伸ばしたように、起伏も陰陽もなくなっている。
そんな日だった。
高い木を三本ほど積み重ねたほどの低空で対峙するチルノと魔理沙を、夏の太陽が炙りたてる。
上空では激しく風が吹いているのか、雲が早い速度で流れている。
炎熱の季節、雲は天を目指して伸び上がり、白く輝いていた。
「それは、ちょっとまずいかもしれないぜ」
首を捻る魔理沙。
丁度、湖にかかっていた影が風に吹かれて、魔理沙の顔を曇らせた。
「あ、やっぱり? まずいと思う? ね? ね?」
「うーん、お前はなかなか強いしな、どうも今回はだめかもしれないぜ……」
自身満々なチルノに、いつも馬鹿にしてくる魔理沙も不安に思っているらしく、声が小さくなっていく。
「あれか? それは見たとたんにやられるようなものなのか?」
「そうね~。あんたなんかじゃ、いきなりバーって広がる弾に巻き込まれて一発でやられちゃうわよ」
「いや、いくらチルノが最強とは言っても、一発じゃさすがにやられないぜ」
「なにお~。一発じゃないんだから、バン、バン、バン、バンって連続でいくんだから」
「うーん、でもさ、それだけじゃなぁ。こっちだって動くしなぁ」
不安になってチルノを恐がっているくせに、魔理沙は生意気にも反論してくる。
「あんたの行くほうへ追いかけて、ぎりぎり狙って撃つもん。始めはよけられても、追い詰められて当たるわよ」
「なかなかよく考えてあるぜ。さすががチルノだ。私じゃ思いつかないぜ」
「そうでしょ、そうでしょ。あんた見所あるわよ。なんだったら家来にしてあげてもいいわよ」
「それはゴメンだぜ」
風が吹いて魔理沙の言葉をかき消した。
二人を太陽から隠していた雲も風に追い立てられ、再び対峙しあう決闘者は熱にさらされる。
風にはためく魔理沙の大きな黒い帽子があおられて、日差しの下に少しだけ口元が見えた。
すこしだけ皮肉な笑みの浮かんだ口だった。
「チルノ教えて欲しいんだけどさ。チルノの考えはすごいんだけどさ。それだったら追い詰められる前に、引き寄せて出来た隙間を抜ければいいだけじゃないのか?」
「馬鹿ねぇ。それだけの訳ないじゃない」
「馬鹿はお前だ」
「なんか言った?」
「いや、別に、とにかくチルノの考えた新しいのはすごいってわけだな?」
「そうよ。あのねぇ、この前見たのよ。紅白のとね、私ぐらいの子があそんでるの」
「紅白? 霊夢のことか? 霊夢の相手できるチルノぐらいのやつ? だれだ?」
魔理沙は考え込んでチルノに馬鹿面を晒している。
珍しく夜に、なんだか森が騒がしい気がしてチルノは目を覚ましたのだった。
月は紅く大きく不気味なほどで、普段ならチルノは怖くって、思わず頭から布団をかぶって震えてしまったに違いなかった。
でも、その日は妙に恐いはずなのに、うきうきして夜なのに出歩いてしまった。
黒い夜空に浮かび上がる不気味な、一つ目のような満月。
月から零れ落ちる紅玉の結晶は、吹きすさぶ雪の嵐の輝きにも似ていて、チルノは魅せられる。
目を凝らしてみれば、空の中心に居座って宝石の雨を降らしているのは、少女だった。
水色の髪に、薄桃色の服の幼い女の子。
紅白の巫女を相手に夜の空で戯れていたのだった。
「ふふん、話はここまでよ。いくわよっ、悪い魔女を今日こそ退治してやるんだから」
「ちっ、もうちょいしゃべると思ってたんだが……、しかたない、やってやるぜ。――――――――、でも、言っておくが私は普通の魔法使いだぜ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どわっ、おわっ」
適当に動きまわってよけられたのは、運が良かったから。
「おわ、おおぉ」
チルノの弾幕に魔理沙は叫び、汗を流していた。
「くそぅ、めずらしくはったりじゃなかったんだな」
ようやく出来た一呼吸の間に、チルノの正面で打ち込みながら魔理沙は呻く。
今日の魔理沙の体調から言って、直撃に耐えられるのはせいぜい3発まで。
開幕早々2発も直撃を受け、すでに体力の半分以上を失っていた。
タイプ的にも、力量的にもチルノは魔理沙の苦手とするところでもなく、時々たいくつな時に戦う感覚を忘れないための、ウォーミングアップとして利用するのに最適の相手だった。
からかう相手としても、面白いというのも魔理沙がチルノに絡む理由の一つ。
ただ、魔理沙としては負けた時にチルノと戦ってだと、たとえ高熱を出していようと、強敵とやりあって疲労してようと言い訳が出来ず、百戦百勝を要求される敵手なだけに、心理的にはプレッシャーのかかる対戦者ではあった。
「落ちろ、落ちろ、落ちろ」
名前もない、挨拶程度の弾幕を前に、魔理沙は必死になって第二派が来る前に攻撃を止めさせようと必死になっていた。
「ふふんっ、無駄、無駄、いくわよっ」
明らかに焦りの色を表情に浮かべてしまっている魔理沙と比べて、普段とは反対にチルノの方は余裕たっぷりに迎え撃ってくる。
チルノが下ろしていた両手を胸元に引き寄せ、何も無い中空にまるで見えない玉でも捧げ持つような姿勢を取ると、密着していた魔理沙は引き下がり、攻撃から退避へとポジションを写した。
高空にチルノが陣取り、下にいる魔理沙に目掛けて弾を嵐と降り注いでくる。
「ッ――――――――」
密度の濃い弾の三連撃。
昨日までは、魔理沙に目掛けて直線に向かってくる塊を、右、左、右と横に移動してやればすむはずだった単調な攻撃。
魔理沙はチルノ目掛けて、氷の飛礫が密集する隙間を掻い潜り進んでいく。
「レミリアだったのか、霊夢の相手は」
よけいなことを言っている暇もないのだが、それでも言わずにはおられない。
チルノの攻撃は、紅い悪魔の影響を受け、格段に強力なものへと変化していた。
魔理沙の身長ほどもある直径を持つ雪玉が目前に迫る。
体を投げ出すように袖口で青白い円球の表面を削り、結晶を宙に舞わせながら横へと移動すると、底に張り付くように氷柱を思わせる三角推が隠れていた。
荒い呼吸が夏の日中にも係わらず、あたりの急激な気温の低下で白くなる。
まるで戦いの場だけが季節を進めて冬になってしまったように。
魔理沙は次に迫る弾丸を、箒を軸に転回し、ぎりぎりいっぱいのところを避けた。
ぶれる視界の中、球筋の先を見通すと、さらに奥からすでに一度喰らってしまった大玉が、ゆっくりと迫って来ている。
僅かに出来た隙間には、人の頭大の、氷山から削り出したいびつな格好の弾丸が空間を埋めるべく、後ろから大玉を追い抜いてくる。
さらには、三角の氷柱が魔理沙に向けて無数に突き進んでくる。
大は遅く、中は速く、小は高速で多量に。
三種の形に、三種の速度が入り混じり、隙間無く宙を埋め、時間の差で魔理沙を欺く。
後ろのものが追いつき、追い越そうとする僅かな時間差を逆に利用し、出来た空間に身を割り入れ、前へ。
前へ、前へ、前へ。
「ぷはぁ――――――――」
スカートの裾を氷柱の刃で刻まれ、破布を舞わせながら、極寒世界を抜け出し、先にある青空を魔理沙は見て、詰めていた息を吐き出す。
しかし、チルノの姿を見ることすら叶わずに、見えるのは次にやってくる第二派の弾丸達。
魔理沙は波濤の先を思わせる、無数の氷のきらめきに身を投げ入れ、低温の空気が流体と化してしまったような粘る時の中を、体をくねらせて踊りながら弾幕の通路を駆け上っていく。
先の見えない球面で構成された曲がり角を、反射と勘で突き進み、二つ目の波を押し切る。
「あと一回っ」
無様に額に汗し、喘ぎに胸を膨らませながら、これがレミリアでなくて良かったと魔理沙は思った。
もし紅い血を思わせる、弾幕の迷路を全速で走らせられた先に、待ち構えているものが紅い悪魔だったとしたら、とても神経は耐えられないだろう。
しかも、コレがゲームの始まりを告げる、挨拶程度のものでしかないのだ。
だが、今日の魔理沙の相手はチルノ。
負けるわけにはいかない。
風切り音を後に残し、魔理沙は最後の波に身を委ねる。
規則的に並んで放射状に配置された大物に、付き従う中小の群れ。
魔理沙は氷塊を後ろへと残し、自由に飛びまわれる空間を求める。
魔理沙自慢の速度も殺される、密なる周囲よりの圧迫に喘ぎ、身悶えながら、第三の波を乗り切り、チルノの前出た。
「はぁはぁ、ぜぇぜぇ、なかなかやるじゃないか」
「あんたこそ、よく二発喰らった程度でのりきったわね」
「チルノのくせになんだか偉そうだぜ」
「だってあたい最強だもん」
「に、しては表情に余裕がないぜ。今ので力を使い果たしたってところじゃないか?」
魔理沙自身も意外すぎるチルノの攻撃にあせり、余裕など欠片も無かったが、カマをかけてみる。
息を荒がせる魔理沙に引き換えチルノは静かだったが、それでも顔には疲労の色が浮かんでいる。
猛烈な攻撃は真似できたとしても、それを支えるレミリア・スカーレットの無尽蔵の体力だけは真似る事は不可能だ。
「ま、まだ、大丈夫だもん。つぎでやっつけてやる」
「どうだかなっ」
跳び退る魔理沙を追ってチルノのスペルカード弾幕が展開される。
アイシクルフォール――――――降り注ぐ氷柱の欠片たち
当然、レミリアの影響を受け変化を遂げて、つららの動きも変わっていた。
円弧の側面が押し潰すように左右から迫るはずの弾幕は、魔理沙の直上で二つの円の外線が交じわり、二線が絡み合うまま下りてくる。
アイシクルファールが氷弾で円の側線を描いていた弾幕が、円の下部が交差しあうようになっただけの弾幕。
レミリアの”千本の針の山”のコピーにほぼ等しいが、それだけに恐ろしさは格別だった。
じりりっ、と魔理沙の背中を冷たい汗が這って行く。
「こりゃだめかもなぁ…………」
チルノを中心に五重の氷環が築かれ、攻撃するには弾幕の防衛線を潜り抜けなければならない。
ゆっくりと無数の氷で作られた弧が迫りくる中、魔理沙は考える。
交差弾幕は魔理沙の苦手なタイプの攻撃だ。
あえてこれを正面から受けるべきなのか、と。
意外な攻撃の連続に、魔理沙はチルノが相手とも思えないほど疲労している。
対するチルノも傍目から見ても分かるほど、疲れきっている。
妖精にしては、チルノは戦えるほうだが、強大な力、人間とは比べ物にならないほどの肉体的な強靭さを背景に組み立てられているレミリアのものをコピーしたかの様な攻撃は、チルノに緊張と体力の限界を要求しているはずだった。
他人のスタイルで戦うことが、術者に強いる肉体的なつらさは、誰よりも魔理沙がよく知っていることだった。
「ま、肉体と精神力の限界への挑戦ってとこか? なら、私だってやってやるぜ」
苦手な攻撃を回避するための言い訳っぽいかな? とも魔理沙は心の中で自分自身を皮肉りながら、下着の中に手を入れて頼りになる相棒を引きずり出す。
真冬の北風にも負けないほどの冷気が渦巻く中でも、八角柱の鉄塊は脈動し、熱を帯びている。
「チルノだって、こんな無理な攻撃してるんだ、最後まで持つはずがないっ」
魔理沙は手の中の、八卦炉の熱に励まされるように決断する。
弾幕をよけることなく、自分の放つ攻撃によって押し通る。
決して正道の方法ではないが、弾幕は何よりもパワーであるとの持論を持つ魔理沙には相応しい。
覚悟を据えてチルノの正面に位置取り、眼前に掲げる相棒に魔力を注ぎ込んで行く。
脈動は激しく、生命を持つように鼓動を打ち、鉄は赤熱し、魔理沙を上気させる。
心地よい高揚感が、八卦炉に力が蓄積されるにつれ魔理沙を包み込む。
「ふっ」
呼吸一つ、魔理沙がか細いため息とも思える声を吐き出すと同時に鉄は光り輝き、目を射る眩しさが線と化してチルノと魔理沙を繋ぐ。
「っ――――――――――――――――――」
次の瞬間、光は奔流と化した。
真夏の太陽の下、チルノと魔理沙の戦う空間だけは、冬の日の雪が降りしきる静けさに包まれていた。
耳が痛くなるような静寂に、氷の欠片が七色に輝き、渦巻く中心を眺めるとカレイドスコープそのものだった。
しかし、魔理沙が渾身の力を込めて放った一撃は、光が乱舞し、多様な幾何学模様を作り上げ、弾幕が作り上げる七色の幻想を暴力的に切り裂く。
山をも崩す、太い光の帯は、青白い無数の氷片がその配列によって生み出す弾幕の芸術的にも思える美しさを、白色でただ塗りつぶす。
有無を言わさぬ力。
だた、それは暴力、暴力、暴力。
純粋なまでの力だった。
技巧もなく、繊細さもなく、緻密さもなく、知性もなく、妖艶さもなく、ただただ力だけを相手に向かってぶつける。
弾幕の中にある美を汚すような戦い方。
だが、力以外に何も存在しないような純粋さには、違った美しさがあった。
それは魔理沙の意思の結晶だった。
螺旋を描いて絡み合いながら、重なり合いながら、魔理沙からチルノへと続いていた氷で出来た透明な階段は、空気を震わしながら天に向かって伸びる光の柱に崩され、散り散りとなって、雲散霧消していく。
圧倒的な熱量に触れられたことで、零度以下を保つことが出来なくなった水は気体へと化し、水蒸気の霧を作り、急激に容量を膨張させたことで小型の嵐をなって吹き荒れた。
「くっ、うぅぅ――――」
魔理沙は自らの発した力に吹き飛ばされそうになりながらも踏みとどまり、さえぎられた視界の中、顔に当たる風の圧力を堪える。
興奮に自然と手が震えるのが分かる。
力を発した瞬間、目標に攻撃が当たる前に、相手を確実に捕らえた手ごたえがあった。
そういう時はたいてい、一撃でどんな相手でも落とす事が出来る。
魔理沙を直接敵を、自らの手で鷲づかみにしたような感触に、興奮を押し留めることが出来ずに、荒々しくあえいだ。
「ふぅ、ふぅぅ、はぁはぁ、ああぁ、はぁ、はぁ」
こわばったままの手指を解すように、八卦路を掴んだままの右腕を、反対側の手で何度も撫でていく。
毛穴が開いて、産毛が逆立っているのが、手の皮膚を通して伝わってくる。
その感触に体が反応して震え、背筋を伝って脳髄にまで這い入ってくる。
魔理沙は背筋を反らして、興奮に浸りながら薄目のまま上を向いた。
空は晴れ、冬の空気は去り、八月の太陽がうるさいぐらいにぎらぎらと魔理沙の目に入ってきた。
「よう、負け犬」
地面に大の字に転がったままのチルノの横に魔理沙は体を投げ出す。
「あたい負けてないもん」
「ああっ? ひっくり返って動けないのに、負けてないもくそもあるもんか」
そういう魔理沙も体がだるくて、口を動かすのもようやくといった状態だった。
ただ、チルノにそんな目に合わされたなんて恥ずかしかったので、昼寝でもしに来たといった様子を頑張って装うことにする。
「だって、だって、魔理沙、反則よ、反則、うっ、ひっく」
「なんだよ、泣くことないだろ? お前負けることなら慣れてるだろ?」
「うううぅ、ひっく、だって、きょ、今日こそやっつけられるとおもったんだもん」
「まぁ、なぁ、いつもよりはすごかったな、確かに……」
「2発も当てた、2発も当てたのに、うぅ、うぐうぅ、う、ぐぐぐぐ、ぐぐぐぐぐぐぐぐぅ」
「おいおい、かわいくない泣きかたするなよ」
顔をくしゃくしゃにして、鼻水までたらすチルノに、魔理沙はエプロンからハンカチを取り出して、体を起こして涙を拭いてやる。
「せめて、鼻水はたらすなよ」
「だって、でちゃうんだもん、うううっ、ずるるるるっ」
「こら、吸い込むなって――――、もうしょうがないな、鼻かんでやるからだせよ」
「うん、ふぅぅぅぅぅ、ぶちゅるるるるっ、ぶちゅっ」
透明なぬるぬるした液体が、チルノの鼻を包んだハンカチの隙間から、あふれ出してくる。
「うへー、すごい鼻水だぜ」
「だって、魔理沙が反則つかうから、パンツビームは反則よ。あたいが攻撃してるんだから、魔理沙はちゃんとよけて攻撃しないとダメなんだから」
「パンツビームって? なんだ?」
量が多すぎてほっぺたまで汚しているチルノの鼻水をふき取ると、ハンカチはぬるぬるでいっぱいになって、重いぐらいだった。
魔理沙は洗濯して再利用することをあきらめて、丸めて湖に向けてほうり投げた。
ぼちゃっと、小石でも投げ込んだような鈍い音がして、ハンカチはあっと言う間に沈んで見えなくなる。
「魔理沙、パンツのなかからアレだして、いっつもビューってやるじゃないっ。だからパンツビーム」
「パンツとか、アレとか、ビューとか、やばい言い方だな」
「えっ?」
「いや、わからなかったんなら、いい。忘れてくれ」
「とにかく魔理沙のパンツは反則よ」
チルノが弾幕で来てるんだから、魔理沙は受ける側として避けるのに徹しろということのようだ。
マスタースパークは直線的で大威力の攻撃だから、チルノ的には弾幕には分類されないようだった。
弾幕ごっこは弾幕を持って戦うもので、弾幕に分類されない攻撃は反則、ということらしい。
魔理沙としては、アレって単純にまっすぐ進むだけだから、見掛けに騙されないで横にでも廻ればおしまいなのに、と思う。
もっとも自分の必殺技なので、弱点を話すようなまねはしないが。
「パンツは反則かぁー」
「そうよっ、魔理沙のパンツは反則」
夏とは言え、湖から吹く風が心地よい。
久々に必死になって戦った疲労に、眠気が押し寄せてくる。
「まー、なんだー、お前にもいつか最強のアイテムの詰ったパンツが現れるって。気を落とすな」
「うー、そんな恋人にふられたみたいななぐさめかたしないでよ~」
「お前、今日すごく強かったんだしさ、パンツが反則ってならお前も反則級のパンツをはいたらいんんだって。ふぁー、なんだか眠いぜ、むー、このまま昼寝でもするかぁ」
「最強のパンツかぁー、うー、あー、あたいもなんだか眠いわ。ねちゃおっと」
「とにかくさ、チルノも大分強くなったよな。頑張ればきっともっと強くなるぜ」
魔理沙は横からのチルノの微弱な冷気が心地よく、帽子を顔に乗せ太陽の光を目からさえぎり、目を閉じた。
「パンツ、パンツ、パンツ」
隣で繰り返されるチルノの独り言を子守唄代わりに、魔理沙は眠りに落ちた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あーあー、三日もたつのにまだ取れないなぁ。紅白は風呂には入らないのかな~」
神社の裏手にある木の枝に腰掛けて、足をぶらぶらと前後に振りながら、チルノはため息をつく。
始めは探検してるみたいで、博麗神社に来たことも、霊夢を監視することも面白かったが、何しろ霊夢は動かない。
のんびりと毎日同じことを繰り返しているだけのうえに、チルノが見ているとほとんどの時間を、縁側に座って空ばっかりみている。
チルノが何かあるのかと思って霊夢の視線の方向を追ってはみるが、そこにあるのは青い空に白い雲ばかり。
どうやら、何時間も風に吹かれて形が変わっていく雲を、眺めているだけのようだった。
チルノの監視したところによれば霊夢は働かない。
チルノの知識によれば、人間はご飯を得るために仕事をするらしい。
霊夢の仕事は巫女というものらしく、神様に仕えるのが仕事らしい。
でも、チルノから見るとそれらしいことは全くしていない。
チルノですら、ちょっと大丈夫かと、心配してしまうほど何もしていない。
まず、博麗霊夢の朝はおそい。
チルノは太陽が東の山の淵から顔を覗かせただけで、早く一日が始まらないかと待ちきれずに飛び起きてしまうのに、巫女ときたら太陽が空の真ん中に来るまで起きてこない。
チルノが暑さに耐え切れず日陰に逃げ込むころ、家の雨戸が開いて寝巻き姿の霊夢が顔を覗かせる。
ようやく起きたと思ったら、まず縁側に盆に急須と茶のみを載せて運んできて、朝ごはん代わりにお茶を飲む。
その後、箒を持ち出してきて神社の境内を掃除する。
ただし境内を一周し終わるのに、五回縁側に腰を下ろして、お茶呑み休憩を間に挟んでいた。
それが午前中のこと。
午後は日長一日中、縁側に腰を据えつけて、茶のみを手に抱え込んだまま、ずっと空だけを眺めていた。
しかも、三日間毎日。
さすがにチルノでも、これはどうなのかと疑問を持ってしまう。
「しかし洗濯もしないわね~。どうなってんのかしら? 三日間見てたけど、仕事はしない、風呂には入らない、洗濯はしないって、どうなってんのかしら?」
何もしない霊夢を監視しているのは、すごくチルノにとっては退屈なことで、今にも飛び出して、わーっと暴れ周りたいところだった。
けれども却ってここまで動きがないと、気になって離れられなくなる。
もし、チルノが遊びに出ている間に、霊夢が仕事を始めたら?
もし、チルノが寝ている間に、お風呂に入ったら?
洗濯を始めたら?
気になって、気になってしょうがなくて、何時お風呂に入るのかと疑問が渦巻きすぎて、チルノは昼寝をすることも出来ず、霊夢を見続けるほどしかなかった。
「あっ」
声をあげた霊夢に、チルノも同じく声を上げて、木の上から思わず乗り出すようにして縁側を覗き見る。
この三日目で四十回目ぐらいの無駄な期待になるとは思うけれど、つられて霊夢の視線の方向に目をやってしまう。
いきおい込んで空を見上げると、雲がお饅頭に似ていて霊夢が喜んでいただけとか言うのが何回もあったので、さすがにチルノも学習して、霊夢が何か面白いことをするのを期待しないようにすることにしていた。
暑かった夏の一日も太陽が西へと傾いて、光の鮮烈な白色が緩み、空の透明な青色に深い濃紺が混じり出す時刻となり、涼しげな風が吹き出してきている。
縁側の軒の影が長く延びて、家の前庭に尖った三角の絵を描いている。
霊夢は茶菓子を座敷から何種類も運んでは戻しを繰り返して、あれでもない、これでもないとめずらしく悩んでいるようだった。
おまけに髪を纏めたリボンを解いて、櫛を取り出して黒い髪を何度も梳いて整えている。
初めて見るそわそわと落ち着きのない霊夢にチルノも、何かあると、枝から飛び降りて、ぎりぎり近くまで茂みに隠れて寄って行った。
「霊夢、またお茶飲んでるの? 何時来てもお茶ばっかりね」
「たまたまあんたが私の休憩時間にくるだけよ」
「そうかしら? でも私、結構神社に足を運んでるけど、霊夢がお茶してるとこ以外は見たことないわ」
「たまたまよ。たまたま」
「十回来て、十回とも同じ状態だったら、割合としてかなりのものよね。これはずっとさぼってるか、さぼってる回数が多いか、さぼってる時間が長いかのどれかよね」
「変な理屈はいいってば。私がちゃんと仕事してるって言ったら、仕事してるの」
「そう?」
「変なこと言わないで座りなさいよ。ほら、スイカあげるから」
「はいはい」
「信じてないわね~。私は今日も一日中、境内を掃除し続けていたわ」
涼しげに霊夢は手にした赤い果肉に被り付いて、しゃりしゃりと食べる。
「うそばっかりっ。一日中おちゃ飲む以外なにもしてなかったじゃないっ」
「だれっ」
「ん?」
隠れて見張っているはずのチルノだったが、霊夢があんまりしらじらしく嘘をつくものだから、つい大声を上げてしまった。
「あたい見たもの。紅白はずっとお茶ばっかりで、働かなかったもの」
ばれた以上は仕方ないので、チルノは草を掻き分け、葉っぱを頭に乗せた状態で霊夢の前に姿を現した。
「だれかと思ったらめずらしいわね。迷子かしらねぇ。湖ならあっちよ」
「湖のほうこうはわかってるってば。それよりずっとお茶飲むことしかしてなかった」
「やっぱりそうなのね。霊夢ってずっとお茶しか飲んでないのね」
「はい、霊夢の仕事はお茶を飲むことです」
「くすくすっ、霊夢の仕事はお茶を飲むことなのね。この子にこんなこと言われてるわよ」
「勝手に言ってたらいいわ。私はちゃんと仕事してるから」
「それはちゃんとお茶を飲んでましたって意味ね」
チルノは何気ない風を装って縁側に近づいていき、博麗神社を訪れた客の隣に腰を下ろした。
上手くいったのか、部外者のチルノが居座ったのも特に気にせずに話を続けている。
三角形に切られて皿の上に並べられた果実を手に取り齧ると、しゃくしゃくとした感触が甘い汁と一緒に口いっぱいに広がる。
スイカを、音を立てて食べながら、隣の人をおそるおそる伺う。
「なぁに? 私に何かあるのかしら?」
あんまり執拗にチルノが見るものだから、金髪の女の人は疑問に思ってか、霊夢との話を切って尋ねてきた。
「えぇっと、あの、えっと」
話しかけられてうれしいのと、言っていいものなのかと迷いつつ、こんな機会は二度とはないだろうとチルノは思い切って口にした。
「ルンペルシュティルツヘンッ」
「あっ、見に来てくれたのね? 妖精さんの名前は?」
「ルンペルシュティルツヘンッ」
「ありがとう。でも、私が聞きたいのは、私の人形劇を見てくれた可愛い妖精さんの名前なのよ」
「えーと、チルノ。チルノです。いつも、いつも見てます。面白くって大好きっ」
「何よ、なんのことなのよ、さっぱりよ。どういうことなの? あんた達知り合いなの?」
チルノとお客の訳のわからない会話に霊夢がめずらしく戸惑ったような声をあげる。
「えーと、人形の人のお名前はなんていうんですか?」
「私? 私はアリス・マーガトロイドっていうのよ。”人形の人”って覚えててくれたんだ。ふふふっ、私のことはアリスでいいわよ」
「なんなのよ、一体。まったく」
「私、最近ね、里で人形で芸してるから、この子……チルノはそれを見てくれてたのよ」
「で、ルなんとかってのは」
「この前やった劇よ、すごいんだから。みんなに大人気なのよ。あたいも大好き。人形劇すごく面白いのよ。霊夢は見ることが出来ないから残念ね」
チルノは憧れの人形劇をやっている人、アリスとお話できたことと、名前を呼んでもらえたことに舞い上がって、代わりに霊夢に答えて見せる。
「くぅ、最近アリス強気だと思ってたら、そういうわけだったのね。友達がいないのが売りみたいなとこあったから、安心してたのに……、アリスが人気ものかぁ……」
チルノの答えに霊夢はぶつぶつと下を向いて呻き出す。
丁度よく出来た機会に、チルノは疑問に思っていたことをアリスに聞いてみることにした。
「ねぇねぇ、どうして魔女役は魔理沙で、お姫さまの役が霊夢なんですか?」
「やっぱりわかる?」
「うんっ、霊夢はいつもお姫様」
「それはね…………」
うんうん、と秘密めかして隣に座ったチルノに口を寄せてくるアリス。
「霊夢のことが好きだからよ。大好きな人をお姫様にしてあげたいから……」
「うそっ、人形の人、霊夢のこと好きなんだぁ」
あまりの答えにチルノは驚いて、せっかくアリスがチルノにだけ教えてくれた秘密を大きな声で口にしてしまう。
しまったと思いながらも、我慢できずに霊夢のほうへ振り向いてみると、せんべいが口から落ちていくのが見えた。
「………………っ」
硬直していた霊夢の顔が、あごのほうからお湯にでも浸かっているみたいに赤くなっていく。
「馬鹿っ、馬鹿チルノっ、そんなわけ、な、な、な、ないでしょっ、アリスが私のこと、好きなわけ、なんて、あるわけ、バカバカバカ、馬鹿チルノ」
「なによ、いきなりぃ、あたい馬鹿じゃないもんっ」
「馬鹿な冗談を真に受けるやつは馬鹿よ。お馬鹿妖精。馬鹿、馬鹿、バカバカバカチルノッ」
「なによぉ、えらそうに。霊夢なんてお風呂に入らないくせにっ」
「え……」
売り言葉に買い言葉。馬鹿、馬鹿と何度もののしられて、黙っておくつもりだったことが口から、つい零れ出てしまった。
「………………って、魔理沙が言ってた」
ごまかしにもならないごまかしを、何とか付け加えてみる。
「それに洗濯もしないって、魔理沙が……………」
沈黙に耐え切れずに、つい余計なことを付け加えてしまう。
チルノの思い違いでないなら、確かにその場の空気は凍り、周囲の温度が一、二度下がったようだった。
霊夢は赤い顔を益々濃くし、俯いて前髪で目元を隠している。
風呂に入らないとか、洗濯しないとか言われて、霊夢がすごく恥ずかしがっているのがチルノでもわかった。
いつもチルノを冷たくあしらうやつだけども、こういう風に困らせるのは嫌だった。
でも、なぐさめたり、ごまかしたりする上手な方法は、残念なことにチルノの頭には浮かんではくれない。
チルノは困ってしまって、どうしようもなくて、隣に座ったアリスの方を泣きそうな顔のまま見上げた。
「ねぇ、チルノ。霊夢ってどんな匂いなの? 私に教えてくれる?」
変なおねがいだとチルノは思ったが、アリスがにっこりと笑って、そうすることが当然とばかりに普通に話したので、霊夢に近づいて匂いを嗅いだ。
縁側に膝をついて、体を伸び上げるようにして、首を垂れる霊夢の襟元に鼻を擦りつけてみた。
「甘いよ」
汗っぽい匂いだったが、それ以上に霊夢の体からの匂いは、チルノが酔っ払ってしまうのではないかと思うほど、濃く甘かった。
だからチルノは素直にそう言った。
「そう、甘いの?」
小首をアリスはかしげる。
「うん、甘くって、ちょっとだけ酸っぱくって果物みたい」
「くすくすっ、いい匂いなのね。くすくすっ」
素直に言われるままに霊夢の匂いを嗅いで感想を言うチルノがおかしかったのか、アリスは目尻を下げて可笑しそうに声をもらす。
「そういう風に表現されると、なんだか私、果物がたべたくなっちゃたわ……。ねぇ――――――――――チルノ、今日はもう帰りなさい。私たち用事ができたから」
「えー、まだお日様沈んでないのに。せっかく人形の人とお話できたのに」
「今度里に行ったときには、チルノを一番前に座らせてあげるわ。それじゃ、だめかしら?」
唐突に訳もわからないまま、追い払われるように帰れと言われて、チルノは不満げな表情でふくれる。
でも、アリスが人形劇する時に一番前で見せてくれると約束してくれたので、今回は大人しく言うことを聞くことにする。
それに言うこと聞かなくて、大好きな人形の人がチルノを嫌いになったりしたら困るから、チルノは素直にここを一旦離れることにする。
「約束ね。絶対見に行くから、ちゃんと覚えていてね。ね、忘れたら嫌だよ」
「わかったわ。絶対に忘れないわ。かわいい私のお客さんだもの、絶対に忘れないわ、ごめんね。――――――――――――――――本当はいろいろ話したかったんだけど、霊夢にお風呂の入り方教えてあげないといけないから」
「なぁんだ。それならあたい帰るね。ちゃんと霊夢にお風呂と洗濯教えてあげて。だって一人で出来ないなんて可哀想だもの」
ようやくチルノは合点が行った。
人形の人は霊夢がお風呂に一人でちゃんと入れないって知って、心配になったのだ。
チルノとしても霊夢がお風呂に入らないのは心配なので、ここはアリスに任せることにする。
それにチルノとしては、霊夢がお風呂に入れば、目的のものが手に入るのだ。
「ええ、ちゃんと手取り足取り教えてあげるわ。――――ねぇ、霊夢?」
チルノがちょっとドキッとしてしまうようなアリスの声だった。
「な、なによ。もうっ…………。ちょっと人気ものになったからって、お得意さまが出来たからって強気になって…………、アリスの馬鹿……」
「じゃ、あたい帰るね。霊夢はちゃんとお風呂に入るように。じゃあね」
うつむいたまま、もごもごと口の中で呻く霊夢に、人形の人にお風呂の入り方を教わるように、チルノは念をおしておく。
「じゃあ、また人形劇見に来てね」
「うん、絶対見に行くから、約束だよ。ばいばいー」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あー」
いつものごとく紅魔館への魔理沙の通り道にはチルノが待ち受けていた。
「ふっふっふっ、おどろいて言葉もないようね。今日こそやっつけてやるんだから」
「あー」
チルノの服が青から赤に変わっていた。
「あー」
「口あけたまま呻いて馬鹿みたいよ」
「あー」
袖の部分だけが上着から切り離され、肩がむき出しになった独特の形状。
魔理沙が普段神社でよく見かける、あの服を何故だかチルノが着ていた。
「っと、それ霊夢のだよな」
「へっへ~ん、すごいでしょ。くくっ、コレが手に入った以上あんたの負けは確定ね」
霊夢か誰かが魔理沙を騙して、笑おうとしているのではないのか?
魔理沙は焦って廻りを見渡す。
「お前、霊夢のやつとぐるだったりしないよな?」
「なんのことよ。コレはね、私が自力で手に入れたものよ」
「そうか」
「そうよ。なんだか知らないけど、縁側で脱ぎ捨ててあったよ」
「そうか」
「そうよ。そういえば人形の人のも一緒においてあったなぁ。お風呂入るんだから、ちゃんとしたところで脱いだらいいのに、――――――――今度言ってあげようっと。でも、丁度良かったわよ。縁側に脱いでくれてたおかげで楽に手に入れられたもの」
「そうか」
魔理沙は思った。
目の前にいる妖精は自分の着ているものの価値を分かってないと。
チルノが何も考えずに着ている服は、魔理沙がここ5年ほど博麗神社に何度も通い詰め、霊夢に何気ないふりで服を交換して遊ぼうと持ちかけてたりしても、決して着させてはくれないものだった。
はじめは軽い気持ちだったものがあんまりにガードが堅いので、今では巫女風の霊夢の服は、魔理沙の脳内レアアイテムランキングの最上位に位置するようになっていた。
「ふふ~ん、どう? あたい似合ってる? ねぇねぇ」
一緒にお風呂に入って先に出て着てやろうとしたり、夜中に盗みに入ったり、つまずいたふりして霊夢に味噌汁を頭からぶっかけたりと、色々な工夫を重ねたあげく、ばれておしおきを散々喰らった魔理沙の苦闘の歴史など知らず、チルノは無い胸を目の前で反り返らせている。
「うらやましい? うらやましい? うらやましいでしょ?」
よっぽどに物欲しそうな表情が顔に出てしまったのか、チルノですらくやしげな魔理沙に気付き、神経を逆撫でしてくる。
「ふっふっふっ、うらやましくて堪らない負け犬に、さらなる敗北を刻んであげるわ」
いつも根拠のないチルノの強がりだが、前回のことと霊夢の服の神々しさに魔理沙は大人しく態度の大きさを堪えることにする。
何しろ今回チルノを倒しさえすれば、究極とも言えるお宝が手に入るのだ。
「なにしろ巫女の服を手に入れたんだもん、こいつでいちころよ」
目の前にあるものを手に入れたくてたまらず、焦燥感で身もだえしそうな魔理沙などおかまいなしに、チルノは陽気で自身満々のまま、何やら体をごそごそと弄り始める。
「えーと、こいつでっ、あれ? えー、こいつ、あれ? あれ?」
服の上を手の平でぱたぱたと叩いては首をかしげ、おなかをさすっている。
「おかしいなぁ? どこに隠してんだろ?」
脇から服の下に手を突っ込んで、体と布地の隙間に出来た空間を往復させる。
お尻を追いかけるように回転したり、袖を振ったりとした挙句、一人で納得するようにうなずく。
「わかったわ。ここね」
「ぶっ」
仁王立ちでスカートを捲り上げ、純白のドロワーズを魔理沙に見せ付ける。
裾を口に咥えて、捲りすぎて小さなおへそがドロワーズの上から覗いたままの格好で、チルノは下着の中に手を突っ込んで、ごそごそとやっている。
「あんっ」
「何だ? 霊夢のドロワーズはいて気持ちよくなったのか?」
「なんでもないわよ、エッチ、馬鹿、変態。珠がないか探してただけよ」
「玉か? 玉はないだろ、女なんだから」
「えっ?」
「いや、すまん。わからなかったらいいんだぜ。下品だったから忘れてくれ」
チルノの訳にわからない行動に、思わず突っ込みをいれてしまったが、自分でもあんまりな内容だったので、魔理沙は赤面を隠すため帽子のひさしを引き下げた。
「おかしいのよ。紅白がいつも持ってる珠がないのよ。――――アレ? おかしいなぁ。ぜったいパンツに入ってるって思ったのに……」
「それって、ひょっとして陰陽玉のことか?」
「なんだかしらないけど、巫女の持ってる珠よ。あれさえあればあんたなんていちころなのに」
どうして陰陽玉がドロワーズの中に入ってるとチルノが思ったりしたのか、魔理沙には疑問だったが、自分もスカートを捲りあげて下着を晒し、中に手を突っ込んでごそごそ始めた。
「おかしいわ。女の子の大事なものはパンツの下にあるって聞いたのに」
「あー、こういう感じか?」
「あーそうそう、そういう感じ」
魔理沙はドロワーズに手を入れて、中に隠した八卦炉を取り出して見せる。
下着から重々しい金属の塊が出てきたのを見て、チルノは納得がいったように頭を振っている。
「で、次はどうするんだ?」
「えーと、出てきた秘密兵器を相手に向けて」
「なるほど」
「よーく、狙って」
「こういう感じか?」
「そうそう、そうやって撃つのよ」
自分はそうしたかったのだとばかりに、向けられた八卦炉に向けて身を乗り出すようにうなずいている。
「じゃ、チルノの言う通りにさせてもらうぜ、マスタ――――――――」
魔理沙が標的に向け構えたまま力を込め、八卦炉の表面が赤熱で輝き、発射する段になってチルノは今、自分がどういう状態にいるのか気付いたようだった。
「え? あっ、しまっ――――――――――」
「スパーク――――――――――――――――――――――――――ッ」
口をあけたまま彫像と化したチルノに目掛けて、最小出力で範囲を絞って必殺の一撃をお見舞いした。
「よし私の勝ちだぜ。しかし上手い具合に当たったもんだな」
ふっとばされて地面に転がるチルノを見下ろしながら、魔理沙は自分の腕前に感心した。
チルノには大ダメージ、霊夢の服には傷一つなしと、理想的な状態だった。
「さて、と。それじゃ待ちに待ったごほうびをいただくとするか」
「くそぅ。反則よう。勝負するときは、ちゃんと宣言しないといけないんだからぁ。きゃっ」
チルノはぶつぶつと文句を言っているが、獲物を前にした魔理沙の耳には届かない。
両足を揃えて抱え上げて、問答無用にスカートに手を掛ける。
「なにすんのよ。風邪引いたらどうするのよ」
「お前、いっつも冷たいんだから、風邪なんて引かないって」
「あっ、ああっ、やめなさいよ。スカート脱がさないでよ。泥棒」
チルノはじたばたもがいて、足の先で魔理沙を蹴ろうと暴れるが、引っくり返して後ろ向きにさせて、その隙に足首にかかっていた布地を引き抜く。
「どろぼう? もともとコレは霊夢のなんだから、泥棒したのはお前だろう」
「でも今は私が着てるんだから、私のよ」
食いつくように体を持ち上げて、チルノは身を乗り出して魔理沙に噛み付いてくる。
「あーあー、盗人猛々しいとはこのことだぜ」
肩口のリボンの結び目を解くと、自重で袖がはらりと落ちた。
「あー、どうぼう、どろぼう、魔理沙のどろぼう」
「いいか、チルノ。今は夏だ。夏は熱いだろう」
「う、うん。熱い」
チルノが騒がしくて溜まらず、魔理沙は一計を案じる。
「そうだ。夏は熱い。で、お前は服を着てるよなぁ?」
「そうよ。あたいが取ってきた、秘密兵器の服よ」
胸元を彩る、ふんわりとしたリボンを解きながら、真面目な顔をして語りかけると、チルノも何故か真面目な声で答えてくる。
「こんな真夏の太陽の下で服なんか着てたら、熱くないか?」
「熱い、すんごく熱い」
「たぶんそれは、お前が服を着てるからだ」
「じゃ、服を脱いだら涼しくなる?」
「だから、こうやってお前が涼しくなる手伝いをしてるんじゃないか」
「あっ、そっか、そうだったんだ」
バンザイをさせて上着も脱がせてしまう。
さらしもつけずに着ていたせいで、上半身が丸裸なチルノを転がして、ドロワーズも脱がせていく。
「あっ、みえちゃうじゃない」
「見えるほどのものはないから安心しろ。じゃ、これはもらっていくぜ」
「もう、バカバカ。いくら熱いからってパンツまで脱がせることないじゃないの」
「よいしょ、よいしょっと、なぁ、お前アリスのこと知ってるか?」
「何て格好させんのよ、この変態! アリスって?」
「ん、人形をいっぱい連れてるやつだぜ。足を抜いてっと」
「こら、やめなさいよぉ、人形って、人形劇の人? ひょっとして? 知ってる!! あたい大好き。人形かわいくって、面白いもの」
「あー、あいつ子供とか人形とかばっかりに好かれてるな」
「で? で? で? 人形の人が何? 何なのよ、教えないさいよ」
上向きに寝転がされて足を抱え上げられ、ドロワーズが引っかかったままだったが、チルノはアリスのことがよほど気になるのか大人しくしている。
「うむ…………、お前ああいう風に人形使えるようになりたくないか?」
すっぽりとチルノを丸裸にして最終目的物を手に入れると、魔理沙は立ち上がり、自分の下着の中へと霊夢のものを隠しておくことにした。
何しろ大事なものを隠すにはパンツの中が一番だ。
「えー?」
「いいか。秘密はパンツにある」
「やっぱり? あたいの推理は間違ってなかったのね」
「そうだ。もしお前がアリスのパンツを盗むことができたら。もっと強くなるぜ、最強間違いなし。そして人形劇も出来るようになる」
「パンツ、パンツ、パンツなんだわ。やっぱりパンツに秘密にあるんだわ」
チルノ的に魔理沙の言葉がくるものがあったのだろうか、握りこぶしに力を込めてチルノは一人肯いている。
「よし頑張って盗ってこいよ」
「うん、あたいやってやるわ。ありがとう魔理沙」
「おう、じゃあな」
クールに箒に乗り込む魔理沙に、素っ裸のチルノは腕を千切れそうなほど一杯に動かして、手を振っている。
「ありがとう魔理沙、ありがとう、ありがとう」
「ふ~ん、今日はなかなかラッキーな一日だったぜ」
紅魔館の図書館に遊びに行く予定は急遽取りやめにして、魔理沙はまっすぐに自宅を目指して箒を走らせる。
「何しろチルノのおかげで、普通じゃ手に入れられないお宝が私のものになったんだからな」
ニヤニヤと顔をだらしないほど緩めたまま魔理沙の表情は戻らなくなっている。
「ふー、霊夢のやつ勘がすぎるんだよなぁ。あんなにさんざん博麗神社に行ってるのに、洗濯してるのって見たことないものな。ひょっとして真夜中にやってるんじゃないのか? チルノのどうやって手に入れたんだぜ?」
魔理沙の腕には霊夢の巫女風の服が一式、上着、スカート、袖、リボンと抱えられている。
霊夢の服は所々汚れており、全体に皺がよってくたびれている。
魔理沙としては洗いたてよりも、霊夢が一日しっかりと着た後のものが欲しかったので、手に入れた服はほぼ理想的なものと言えた。
「霊夢の服かぁー」
魔理沙は感慨深げに呟くとスカートの中に手を突っ込んで、ドロワーズの中をかき回す。
中には八卦炉と共に霊夢の下着がしまわれている。
「霊夢のドロワーズかぁー」
魔理沙は自分のドロワーズに隠しておいた、霊夢のドロワーズを引き出してうっとりとする。
チルノと別れてからすでに十度目のことだった。
他人のドロワーズ、いや、魔理沙自身のドロワーズでも、箒に跨って空を飛びながらうっとりと見詰めているのは、傍目からすればどうしようもない変態だったが、魔理沙はうれしさに満ち溢れていたのでそんなことなどお構いなしで、さらなる行為に突き進む。
「すーはー」
布地で顔を覆うようにして、息を大きく吸い込む。
「すーはー、すーはー、――――――――うーん、霊夢のだけじゃなくて、なんだかチルノっぽい匂いが混じってるか?」
鼻を蠢かせて熟練の調香師のように、手にした物体に染み付いた香りを分析をする。
「すーはー、まっ、いいか。今晩はこいつでお楽しみだぜ。へへへ――――――――――すーはー。あー、今度はアリスのも手に入りそうだし、いいことずくめだぜ。あぁ、こうなったら下着のハーレムを築いてやるぜ」
「なかなか夢のある話ね、そりゃ」
「なっ、いいだろ。うらやましいだろ」
横から誰かが話しかけてくるが、魔理沙は麻薬のように癖になる香りに引き寄せられて、顔を上げることも出来ずに、繊維の隙間に染み込んだ霊夢の匂いを味わい続ける。
「匂いを嗅ぐのって楽しい?」
「そりゃ、最高だぜ。何しろずっと狙ってて、ようやく今日手に入ったんだからな、すーはー、しかしなんだな、何というか酸味が効いてて、まるで果物みたい……と言うには濃厚で熟成されているな。うーん、これは3日ほど寝かせた匂いだな」
「くっ、どうせ私は風呂に入らない女よ」
「あー、そうか霊夢は風呂に入らないのか。どうりで濃厚なわけだぜ。…………………えっ、霊夢?」
「死ね、馬鹿」
驚いて顔を上げた魔理沙の脳天に、霊夢の持つ幣束の、棒の部分が直撃した。
「つぁ、くぅ、いてて、霊夢のやついきなり何するんだぜ、まったく、あいさつもなしにひどいぜ」
逆さまに頭から着地し、木の幹に跨ったような格好で霊夢を見上げる。
「ひどいのはあんたよ」
せっかく手に入れた霊夢の服はあたり一面に散らばり、空から下りて来た霊夢が順に拾って魔理沙の目の前で回収していく。
まだよく味わっていない、さらしぐらいは見逃してくれないものかと、物欲しげな視線でアイコンタクを試みたが、残念なことに魔理沙の意思は通じず、すごい顔で睨まれた。
「あっ、霊夢。こ、これには訳があるんだぜ――――、あのさぁ」
「人の下着に顔を埋めて匂い嗅いで、次はアリスのも盗んでハーレムとか言ってるやつの言い訳なんて聞く気もないわ」
「だいたいさ、盗んだのはわたしじゃないぜ」
魔理沙はチルノから手に入れただけだ。
正々堂々の戦いで手に入れた戦利品だ。
チルノがどうやって手に入れたのかはともかく、魔理沙の手元に来た過程においてやましいところは全くない。
服は確かに霊夢の服には違いはないが、霊夢が拾ってる服の所有者は魔理沙だ。
「ここ二、三日、妙な気配があるから用心してたんだけど、やられちゃったわね。ま、あんたが変態なのはいいのよ。パチュリーのでもフランドールのでも好きなだけ集めなさいよ。ただしアリスのは、ダメ」
「あっ、霊夢ひょっとして二叉なの怒ってるか? なんなら今度から霊夢のパンツだけで我慢するぜ?」
最後に残ったお宝をいとおしげに頬に擦り付けて、魔理沙にとって霊夢のドロワーズが素晴らしいものであるとアピールする。
霊夢はかなり怒っているようだったが、魔理沙の熱意にひょっとしたらドロワーズだけは残してくれるかもと、見せ付けるように布地に顔を埋めた。
「誰がよっ。いい? 問題はあんたの今頭に被ってるやつ、何日分の賽銭に相当すると思ってんの? あー、もう、今日は心配で、心配で」
「なんだよ、そっちの問題かよ、ちぇ」
「とにかく実損と著しい精神的苦痛で賠償を要求するわ」
「あー、なんだよ?」
「まずコレ返してもらうわよ、それと…………」
無造作に頬に擦り付けていた下着を表情も変えずに霊夢はもぎとると、魔理沙の足を掴んでひっくり返ったままの格好から一回転させて、尻を突き出す形で四つん這いにさせた。
「わ、な、なんだよ。いきなりここでか? 私のこと好きなのは分かるがいきなりは……」
さすがの魔理沙でも、愛の告白もなしで真昼の森の中で求められるのは照れてしまう。
霊夢の無表情さがいかにも、”攻め”という感じがよく出ているので、魔理沙のどきどきは加速して、思わずほっぺが赤くなってしまう。
「とにかく脱ぎなさいよ。倍返しであんたのはいてるのでいいから、もらっていってやる」
わしづかみにして強引に引き下げる霊夢は無情で、ムードもあったものではない。
仕方がないので、大げさに恥ずかしがってみせて演出することにした。
「うわー、泥棒っ。下着脱がさないでくれよ、は、恥ずかしいぜ」
「何言ってんのよ。あんたの下着の中身なんて興味ないわよ。大体、泥棒が泥棒とか言うって盗人猛々しいにもほどがある」
「うわー」
「ほら、逃げないの。大人しくしてたらさっさと済ませてあげるから」
「なんだかエッチだぜ。その台詞っ」
「…………へんに冷静ね。まっ、いいわ。はいっ、下半身すっぽんっぽんね」
「せめてもうちょっとムードとかを考えてやるべきだと思うぜ、私は」
魔理沙の努力も知らず淡々とした霊夢を、拗ねた目で見上げる。
「盗人退治にムードもくそもないわよ。さて、これで実損の部分は回復したわね。あとは精神的苦痛についてだけど…………、今日という今日は徹底的におしおきね。丁度下着穿いてないことだし」
せっかく魔理沙が下半身を晒しているにも係わらず霊夢の目は冷たさを増し、妖怪を追いはぐ時の異様なオーラが背中から立ち昇っている気もする。
「ん? んん? ん?」
口元を手で覆って辱めに堪えるポーズを取っていた魔理沙も、さすがに少しおかしいと思い出す。
「大体ね、大体ね、あんたのせいで……、あんたのせいで…………、私がリードするはずだったのにアリスにリードされちゃったじゃないのぉ――――、くぅ、これからアリスに尻にしかれちゃうじゃないのぉ――――。くそぉ、ううぅぅっ、魔理沙ぁ、あんたのせいでぇ――――、あんたが、私が風呂に入らない女なんてうわさをばら撒いたせいで~、おのれ魔理沙ぁ――――、この恨みはらさでおくべきかぁ~」
「ひっ」
霊夢の手の中で木が弾け、幣束が真ん中から二つに引きさかれた。
「くふぅ、くふふふふっ」
不気味に笑いながら二つに裂かれた棒を投げ飛ばし、袖口から陰陽玉を取り出して眼前に浮かべた。
魔理沙はこの時点で初めて、霊夢が本気で怒っていて、自分が退治される対象になっていることを悟った。
下半身丸出しで、霊夢に向けてお尻を突き出していることの危なさに、汗が額を伝うのが分かる。
「うわっ……、れ、霊夢っ、さ、さすがに陰陽玉は、む、無理、無理だぜ。わ、私、しんじゃうぜ」
「ああ、初めてだとみんな、よく言うわ。大丈夫。人間の身体って柔軟だから」
霊夢は完全に本気だった。
口もとを引き攣らせて笑いながら、目がどうしようも無いほど、チルノの冷気でも出せないほどの絶対零度の光を放っている。
「あの……、目が笑ってないぜ…………」
「ふんっ、どうせ私は風呂にも入らなくて、洗濯もしなくて、いい匂いしてる女よ」
「あっ、や、やめろっ、ほ、本気か? それは神聖なものだぜ。兵器だぜ」
「平気、平気」
言いながら、霊夢は魔理沙の尻を掴んで持ち上げた。
「だじゃれとか言ってる場合とかじゃなくて……、う、うわっ、だ、誰か助けてくれー、おしおきなんかに……」
「ま、二、三回すればおしおきじゃなくって、ごほうびに変わるし」
「うわ――――――、ア゛――――――――――――――――」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇ、ねぇ、どんなパンツはいてるの?」
「えっと、どういう意味かしら?」
「だからね、アリスの今日はいてるパンツってどんなの?」
一番前で人形劇を見せてもらって上機嫌なチルノは、憧れの人に一歩でも近付くため、目標のものを手に入れるため、無邪気に尋ねた。
「どうして下着が気になるの?」
「だって魔理沙が、魔理沙が人形の人みたいになりたかったら、パンツをもらってこいって言ったから」
「また魔理沙!!!!」
「だからね、アリスのパンツが欲しいの。だめ?」
顔をしかめるアリスの服をつまんで見上げるようにしながら、恐る恐るチルノはねだってみた。
「馬鹿魔理沙、霊夢の陰陽玉でこりないなんて、どこまで馬鹿なのかしら? 今度は私が人形でやるしかないのかしら?」
「魔理沙って馬鹿?」
「そうよ。私はあいつほど馬鹿なやつは知らないわ」
「今度いってやろ。あたいのこと馬鹿にしてるけど、あんたのほうがみんなに馬鹿にされてるって。あたいも前から魔理沙って馬鹿っぽいって思ってたけど、やっぱりだったんだ」
「くすくすっ、妖精からも馬鹿にされてるのね」
チルノが魔理沙のことを馬鹿呼ばわりしているのが、よっぽど面白かったのかアリスは笑っている。
「人形についてなら、いくらでも教えてあげるから、人に下着のことなんて聞いちゃだめよ。まして人の下着を欲しがったらだめっ、いい?」
「うんっ」
「魔理沙みたいに馬鹿になりたくないでしょ?」
「うんっ、馬鹿魔理沙になりたくない」
「素直でいい子ね。約束を守れるなら――――、家に来て一緒に人形で遊ばせてあげる」
「やった――――――」
「馬鹿魔理沙……、ふふっ、どんなおしおきをしてあげようかしら? ふふっ、くくっ、霊夢とはとっても仲良くなれたし、あとパチュリーあたりとも仲良くなれたら――――ふふっ、この子は私のラッキーアイテムだし、なんとかならないかしら?」
よろこぶチルノを尻目にアリスはにやにや一人ごとを呟いている。
チルノは一人芝居をしているアリスに、こういう努力があの人形劇になるのかと純粋に感心する。
チルノのことも忘れて、アリスは独り言をひとしきり呻いた後、思い直したようにチルノに振り返る。
「ところで湖の向こうにあるお屋敷には図書館があるって知ってる?」
「あっ、知ってる、本がいっぱいあるところだぁ~」
「そこのいる魔女の持つ下着を手に入れると、とっても賢くなるってうわさがあってね――――――――ねぇ、そんな下着、欲しくなったりしない?」
ー了ー
夏の青空での氷結弾幕とか虹かかりまくりじゃないっすか!!!!!
あと霊夢のドロワーズなんてもんがあるなら俺もほs(夢想封印
⑨となんとかは使いようと・・・
チルノがとてもとても可愛かったです。
結局最後までわからんかったぜ
まさに、やればできるこ
しかし、なぜ他のことは覚えられないのか・・・
風呂に関しては、匂いでアリスをメロメロにするため、と自己完結
受け身にならないアリスは珍しいw
アリスは黒いなぁw
チルノが獄符「千本の針の山」を模したスペカなんて使ってきたらそりゃ怖いなぁ。
馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけど、やっぱり馬鹿だなチルノw
魔理沙の勘違いが面白かったw
霊夢は風呂に入らぬか…ほうほう。アリスは人気者だと思ってるし、この黒さも魔法使いっぽくて好きだ。
甘くてすっぱい…のど飴ありましたよねw
ニヤニヤさせてもらいました
ただ、個人的にこの微妙に特徴的な文章のリズム?にノりきれなかったので-10点。
点数入れ忘れ。