Coolier - 新生・東方創想話

『風』~この地、このときの幻想郷~

2008/01/14 18:19:31
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物語中の時期は、12月の初めごろとなります。あらかじめご了解ください。








 気がついたら、掃除は終わっていた。


 一時期は層ができるほど厚く、豊かに積もっていた落ち葉も、ここ最近は朝を迎えるたびに

その量を減らしてきている。

 

 私はため息をついて、掃き終えたばかりの参道を見渡す。鳥居から社殿まで続く石畳の道に

異物はなく、そこから外れた剥き出しの土上にのみ、僅かに枯れ葉が点在するだけだった。

 

 こんなところでいいかしら――鳥居に箒を立てかけて、大きく伸びをする。

 冷たい風が露出した肩にあたり、ぶるりと震えが走った。

 寒くなったものね、と私は思う。地の豊穣と心の潤いをもたらす季節は去り、滅びと再生を

もたらす眠りの季節が、ゆるやかに山川を包みこんでいる。


 私は鳥居の外に広がる、地平線の彼方にまで至る見慣れた風景に目を向けた。



 幻想郷は冬を迎えていた。

 常と変わらず平和に訪れる、いつもどおりの冬を、私は迎えていた。






――


『風 ~この地、このときの幻想郷~』


――






 鳥居に箒を立てかけたまま、私は社殿の縁側に腰掛け、熱いお茶を啜っている。

 ふと目の前を見渡すと、先ほど綺麗に掃き終えたはずの参道に、またも落ち葉が散らばって

いるのに気が付いた。

 視線を上へ向ける。

 目に付くのは神社のまわりにそびえる木々。かつて豊かに葉を茂らせていたものの、今では

随分と剥き出しの枝が目立つようになった。それでもなお幾房の枝には、押し寄せる冬の寒風

に抗うように僅かな葉がしがみついている。

 ひゅう、とあらたな風が吹く。

 枝に縋っていた葉の一枚、力尽きたようにほろりと外れ、風に乗ってどこへともなく飛んで

行った。

 


 いつだったか、香霖堂へ遊びに行ったとき、うずたかく積もる落ち葉に覆われた店を見て、

霖之助さんになぜ掃除をしないのか問うたことがあった。霖之助さんはいかにも面倒臭そうな

表情を浮かべてこう答えた。


「葉は冬になれば木から落ちるが、それは土から生まれた葉がまた土へと戻ることを意味して

いる。葉は地の発展と再生の役割を担っているんだ。邪魔だからといって、落ち葉をむやみに

集めたり移動したりをして、地を蘇らす邪魔しちゃいけないんだよ」


 相変わらず、わかるようなわからないような話をしながら結局何もしない彼に、私は掃除を

サボる言い訳としか聞こえないわ、と指摘したものだ。

 けれど改めて思い返してみれば、つい先日まであれほど積もっては集め、積もっては集めを

繰り返していた落ち葉の山は、いつのまにやらどこかへ消えている。先ほど集めた落ち葉も、

明日の朝になればその面影をほとんど残していないだろう。

 本当に土に還ったのだろうか、それとも知らないうちに大風でも吹いて、麓へと飛ばされて

いったのだろうか。

 幻想郷には自ら厄を集める神様がいる。落ち葉を好んで蒐集する神様も、あるいはどこかに

いるのかもしれない。

 私はお茶を啜る。少しぬるくなっていた。

 

 


 神様といえば、今朝、秋の姉妹神が神社に寄ってきた。この辺りも居場所がなくなってきた

ため、秋が残る地を探して南の方へ向かうとのこと。

 ほんの数ヶ月前に、妖怪の山で出会った頃の元気はどこへやら、二人とも鬱でも患ったかの

ようにどんよりとした様子だった。姉は神社周囲の丸裸のような木々を見てさらに暗くなり、

妹は妹で「ここは栗の木も葡萄の木もないのね。まったく使えない神社だわ」と毒づきながら

ますます暗くなっていた。

 寝起きだったことに加え、二人の顔を見て余計に寒くなったように感じた私は、無理矢理に

でもお引き取り願おうとお祓い棒を構えた。そのとき、二人が突然「あら」と嬉しそうな顔を

浮かべた。姉は社殿の横に生えていた古い木を、妹は神社の裏手にあった小さい木をそれぞれ

見ていた。

 

 姉が目の前の古い木に向かってふわりと飛び立った。

 そして、優雅な動作で木の周りを舞いはじめた。

 

 すると、色褪せた生気の薄い葉ばかりのその木が、

 みるみるうちに鮮やかな紅葉に彩られはじめた。

 

 年老いたからか、それとも日が当たりにくい場所のせいか、毎年わずかに葉を生やしたまま

気付く前に散っていたその木は、私の前で初めて、その豊かで美しい赤色を花開かせたのだ。

 

 呆気にとられる私を、姉は満足そうに眺め、ころころと笑みを浮かべた。

 そこに、今度は妹が現れた。


「せっかくあるんだから、もう少し手入れしてあげなさい。あのままじゃ、周りの木に栄養を

横取りされて、いつまでたっても大きくならないわ」


 妹はそういって、手に抱えていたものを私に差し出した。

 彼女の手には、大きく艶のある柿の実が三つのせられていた。

 


 お茶を啜りつつ、私はお茶請けに手を伸ばす。先ほど貰った柿を剥いたものだ。熟れていて

美味しい。

 神様から直接いただいたものだと思うとありがたみも増すものね――と思い、すぐに自分の

現金さに苦笑する。なんだかんだと言っても、この幻想郷で美味しい食べ物を楽しめるのは、

彼女たちのおかげなのだ、と改めて認識させられた。


 まるまる一つを食べ終えた私は、余った柿の種を、さきほど赤い葉を繁らせたあの木の傍に

植えてみることにした。

 

 ――豊穣の神から下賜された果実の種を、紅葉の神が蘇らせた木の傍らにて育む。

 

 すぐにでも芽を出して実をつけそうじゃない、と思った。

 そして、信仰って案外こういうところから生まれるのかしらね、とも思った。

 

 

――

 

 

 種を植えた私は、しばし頭上に広がる美しい赤い葉を堪能する。

 長年神社で暮らしていたにも関わらず、意識どころか存在すら忘れるほど見慣れたこの木が

実はこんな綺麗な姿にもなれるのかと、その在り様の新鮮さと、それを知らなかったことへの

気恥ずかしさを同時に感じる。

 

 ふと、なにやら冷たいものがこつん、こつんと私の頭を打った。

 反対側の頭上へ振り向く。抜けるような青空に溶け込んでいるかのように、白と青の衣装に

身を包んだ少女がふわふわと浮かんでいた。

 チルノだった。夏以来だ。

 久しぶりに会ったチルノは、相変わらずの生意気そうな表情で、挑発するように小さい氷の

塊を次から次へと投げつけてきた。

 私はため息をついて懐からお札を一枚取り出すと、やんちゃな氷精に向けて放ってやった。

お札は狙い通り正確に飛び、チルノの顔面にぺたり、と張り付いた。

 「うひゃあ」と可愛い悲鳴をあげるチルノ。じたばたともがきながら、あっちへふらふら、

こっちへふらふらと慌しく飛び回り、最後は社殿の屋根にぶつかって、まるで落ち葉のように

ひらひらと私の目の前に墜落した。

 なにしにきたのよ、このおばか――お札を剥がしてやった私は、悔しそうな目つきで睨んで

くるチルノの頬をぐりぐりと弄びながらそう問うてやる。む、柔らかいわこいつのほっぺ。

 むーやめろーと涙目で唸りながら、ひとしきり私に弄り回されたチルノは、赤くなった頬を

さすりながら、「寒くなったから巫女も弱ってるんじゃないかなと思って」と答えた。

 どうやら昨夏、暑さに弱っていたところを、冷房代わりにと無理矢理拉致されたことを根に

持って来たらしい。でもあれって魔理沙がやったことじゃない。なんで私に。

 聞くと「あの白黒の家は知らないもん」とのこと。確かに魔法の森は結構距離あるものねえ。

 お茶でも淹れようか? と尋ねる。チルノは「ふん、そんなものいらないよ!」と強がると、

背中の氷の羽をぱたぱたと揺らして飛び上がった。そして、


「これでせいぜい寒がっちゃえ!」


 と言って、特大の氷を作りだした。

 当ててくるつもりかと思いきや、ぽーんと、社殿の裏手の方へ放り投げる。

 そのまま、べーっと舌を出して飛び去っていった。何をしたいんだか…

 あの様子だと近いうちにまた来るんだろうなあ、と私は嘆息する。まあ暇つぶしになるから

いいけど。

 

 

――

 

 

 社殿へ戻ろうとしたとき、ぴゅう、と木枯らしが吹いた。とても寒い。氷精なんかを相手に

したせいか、それとも裏手の特大の氷のせいか、ますます冷え込んできたようだ。

 私は小走りで母屋へ駆け込んだ。こういう時はコタツと熱いお茶に限る。

 しかし、お茶を淹れ換えて居間に入ると、またも招かざる客が我が家に入り込んでいるのに

気がついた。

 

「や~、霊夢」


 萃香だった。今度はこいつか。

 顔馴染みの小鬼は、コタツに上半身を突っ伏したまま、片手をだらりと上げて挨拶をした。

いつも以上に真っ赤な顔だ。かなり酔っているようだ。むしろへべれけと言っていい。


「いや~、ひさしぶりに妖怪の山へ行ったらねえ~、な~んだか見慣れない神社に見慣れない

変なのがいてさぁ~。ぶっとばしてやろうと思ったけど~、いつのまにか酒盛りになってて~」


 なるほど、神奈子と会ったのね。

 彼女も相当な酒豪だ。さぞかし派手な飲み合いだったのだろう。

 

「三日三晩ぶっ通したからねえ~。さすがに伊吹瓢箪も空になるかと思ったよう~」 

 

 それは飲み過ぎだ。

 

 頼むから吐かないでよ、と私は一応釘をさす。萃香は顔をあげて、怒ったように両手を振り

上げながら「鬼を馬鹿にすんな~こんくらいへっちゃらへ~」とうわ言のようにのたまうも、

そのままばたりと仰向けに倒れこんで寝息を立てはじめた。だめだこいつ。

 やれやれと思いながら、私もコタツへ入る。ぐでぐでになって寝ている萃香を眺めながら、

守矢神社を見に行ったほうがいいかしら、などと考えた。この鬼がここまでダメになるほどだ。

どんな惨状になっているのものやら、さすがに少し気になってくる。


 守矢神社の巫女(?)の早苗は、あの妖怪の山での一件以来、山や里でちょくちょくと顔を

合わせる間柄となった。なんでも山の妖怪と和解して以来、連日連夜、宴会に付き合わされて

いるんだとか。そのくせ、うちの神社で宴会するときも、神奈子の付き添いで必ず参加する。

自他共に認める酒好きの神奈子ならともかく、ただの人間である早苗には厳しい日々だろう。

 最初の一ヶ月、早苗は会うたびに疲れ切ったような表情を浮かべていた。そして次の一ヶ月

は病気と見紛うほど、げっそりとやつれていた。そしてさらに一ヶ月経った頃には、そろそろ

目が据わりはじめていた。今ここ。

 そのうち、早苗が切れて、山の妖怪と大喧嘩でもしはじめるかもしれない。そうしたら私も

異変として動かなきゃならなくなるかもしれないし、なによりトラブルに飢えているどこかの

白黒魔砲使いや、赤い館のお子様吸血鬼あたりが嬉々として乗り込んでいきかねない。こんな

寒い時期にそんな面倒事は心底御免だ。

 

 

 お茶を飲みながら、そんなことをぼんやりと考えていると、なにやらコタツの中に違和感を

感じてきた。妙にぞわぞわとするというか、落ち着かないというか。

 コタツの中を覗いてみる。すると、中に一面の白い靄が詰まっているのが見えた。どうやら

萃香がコタツに入れている分の下半身を“疎”にしているらしい。前を向くと、対面の萃香が

顎を卓上に乗せて、いやらしそうな目つきでにやにや笑いながら私を眺めていた。

 ちょっと、あんたの霧チクチクして気持ち悪いんだから元に戻しなさいよ、と文句を言うと、

萃香は益々いやらしい表情を浮かべ、より深く体を沈めはじめた。中の霧がさらに濃くなる。

こら、いい加減にしなさい、ちくちく気色悪いんだってば……って、ちょ、ちょっと、どこに

入り込んでるのよ。や、止めなさいってば、あ、まって、こら、やめ、ちょ、あ、あ、あっ、

 

 ――ごんっ

 

 お払い棒を力一杯萃香の脳天に叩き込んでやった。まったく油断も隙もあったもんじゃない。

 萃香は頭を抑えて悶絶していた。これで少しは酔いも冷めたかしら。

 

「うう、ひどいよ霊夢~、鬼いじめかっこわるい~」


 鬼はいじめるものじゃなく、退治するものよ。ほら、さっさと出て行って酔いでも醒まして

らっしゃい、とお払い棒を突きつけながら脅す。萃香は頭を擦りながら、ふらふらと居間から

出て行った。意外と足取りはしっかりしているようだった。まったくもう。



 やたらと体が火照ってしまい、もうコタツに入り直す気も失せてしまった。里へ買い物でも

行こうかとも思ったけれど、お茶も食糧の備蓄も十分にある。


 とりあえず母屋から外に出た。

 日が大分傾いたようだ。吹き付ける木枯らしもますます厳しさを増しているように感じる。

 まさに冬の風だ。

 冷たいだけでない。

 痛く、そして寂しい。

 

 風というものも不思議なものだと思う。

 同じ空気の流れなのに、受ける感覚は季節によってまったく違う。

 

 まどろむ者をそっと揺り起こすような、優しくたおやかな春の風。

 まるで大地の隅々までその熱を行き渡らせるためかのような、雄々しく寧猛な夏の風。

 盛りを過ぎた者達に落ち着きと豊かさを感じさせてくれるような、憩いと愁いの秋の風。

 そして、地を這う者に、遍く眠りと滅びを強いるような、無慈悲で無情な冬の風。

 

 風はその季節ごとに各々の相を表している。

 さらに、風はあらたに訪れる季節の兆しともなり、また時として、自然界より起こる異変の

兆候を告げることもある。古の時代より、人々はその身に浴びる風をもって自然の期を知り、

嵐や災害の到来を察知してきた。

 

 私は妖怪の山へ目を向ける。

 あの山の頂の住まう早苗の先祖は、かつて風を操ることで人々の信仰を集め、現人神として

祀り上げられたという。すなわちそれは、繰り返し訪れる自然の変異変遷を、見極め、操り、

解き明かす、いわば人世の営みの導き手たる存在だったのだろう。

 

 彼女たちは信仰の失われた外の世界を見限り、新たな信仰を得るため幻想郷に移り住んだ。

一体どんな思いで幻想郷へ来たのだろう。外の世界において、長い時を経てゆっくりと信仰が

失われていくのを、彼女たちはどんな思いで見てきたのだろう――

 

 ――やめやめ。私の柄じゃないわね。

 私は軽く頭を振って思考を止めた。こんなことを考えるのは私の柄じゃない。こういうのは

香霖堂の店主や、いまごろ冬眠を貪っているだろうスキマ妖怪あたりが考えればいいことだ。



 私は一つ息をついて気を取り直し、鳥居に立て掛けたままだった箒を取りに行こうとした。


 そのとき、ごう――とひときわ強い風が吹いた。


 先ほどまでとは違う、冷たさも寂しさも無い風。

 ただ吹き、ただ荒れ狂う、純粋な風。

 

 突風――俗に天狗風ともいう。にわかにふきくる山海の怪異。

 どうやら私のとりとめのない思考が、またも余計なものを招きこんだようだ。

 早苗の操るのが神徳の風ならば、これぞまさに山に住まう妖(アヤカシ)の風。

 風というものは本当に、その本質をよく表してくれるものだと思う。


「こんにちわー! 天狗の号外だよー!」


 渦巻く風の中から、見慣れた天狗娘が姿を現した。射命丸文だ。


「ごきげんよう霊夢さん。相変わらず暇そうですねえ」


 大きなお世話だ。

 文は嫌味とも挨拶ともつかないそんな一言を投げかけながら、「文々。新聞号外」と書かれた

紙片を放ってよこした。……あら、この記事って。


「大ニュースですよ! うちの山の神様と鬼の伊吹萃香さんが盛大な飲み比べをしたんです」


 もう話が広まっているのかと驚く。相変わらず天狗は耳が早い。

 当の号外に目を落とす。紙面には、うつ伏せに倒れて目を回した八坂神奈子と、伊吹瓢箪を

掲げながら彼女を踏みつけて勝ち誇る萃香の写真がでかでかと載っていた。うわあ……。

 とはいえ萃香の足つきもかなりあぶなっかしそうではある。よく見ると彼女らの後ろには、

疲れきった様子でぺたんと座り込んでいる早苗の姿がちらりと写っていた。


「生憎、私が行った時は丁度決着がついたところで、飲み比べの模様を取材できなかったのが

残念ですが、神社のあちこちにお酒溜りができてたり、湖の御柱が全部叩き壊されてたりと、

なんかもう凄いことになってましたよ」


 道理で早苗が途方にくれているわけだ。本当に様子を見に行ったほうがいいかもしれない、

と私もいささか心配になる。

 文がすっと地面に降りてきた。同時に突風も止む。せっかくなのでそれとなく早苗の様子を

聞いてみることにした。


「早苗さんですか。お話を聞かせてもらおうと思ったんですが、ろくに反応して貰えなかった

ですね。なにせあのお二人が飲んでる間中、ずっとおさんどんをさせられていたそうですし。

今回事情を聞かせてもらったのは、もっぱら諏訪子さんからでした」

 

 聞けば、諏訪子も最初は飲み合いに参加したものの早々と潰されてしまい、その後は社殿に

逃げ込んで様子を伺っていたのだという。話をしながらも早苗をしきりに心配していたので、

グロッキーですと答えてあげたら「あーうー」と叫びながら慌てて介抱に向かった、などと、

聞いてないことまでいろいろと話してくれた。あの神様も本当によくわからないわね。

 

「まあ詳しくは号外を読んでみてください。今回は自信作ですから! そうそう、萃香さんは

こちらに来ていませんでした? 諏訪子さんにお話を伺っている間にどこかに行ってしまわれ

まして。ここかと思って来たのですが」


 さっきまでいたけど今はいないわ、と答える。


「そうですか! わかりました。それではまた!」

 

 ――と言って、またも突風を吹き散らかして何処かへ飛び去っていった。

 

 ほとんど一方的に喋りっぱなしのくせして、用が済むや否やさっさと行ってしまうあたり、

相変わらず忙しないわねと思う。新聞記者という職業柄、天狗という種族柄なのだろう。

 以前、花の異変や山の探索の際に戦ったときも、やたらとすばしっこい動きで飛び回られ、

随分と翻弄されたものだ。ま、速いの相手にするのは慣れてるし、なんてことなかったけど。

 

 手元の号外に改めて目を通してみる。

 紙面をめくると――あらら。

 鳥居の柱によりかかってぐったりしている早苗と、それを必死に介抱しようとする諏訪子の

写真が、これもまた目立つように掲載されていた。

 

 私はその写真をじっくり眺めた。

 自然と、笑みが浮かんでくる。

 

 本当に――どちらも人間臭い。二人とも外の世界では神様だったんでしょうに。

 

 射命丸文は、この号外を幻想郷のいたるところに配って回るのだろう。

 そして幻想郷に住む人々は、今日にでも知るに違いない。

 

 ――あの恐ろしい妖怪の山を統べ、天狗や河童といった強力な妖怪を信者にしてしまった、

得体の知れない神様――そんな彼女が、実は鬼に飲み負けて、このような情けない姿を晒して

しまうような少女だということを。

 そして、こんな神様と共にいる二人もまた、威厳などとはほど遠い、こんなにもありがちで

親しみやすそうな存在であるということを。

 

 里の人々が神奈子たちに抱いていただろう畏怖や不審感は、親しみへと変わっていくだろう。

神奈子や諏訪子が求め続けた信仰――親交は着実に幻想郷に根付いていき、そして早苗もまた、

忘れ去られたかつての現人神から、神に仕え徳を顕す存在としてその意義を取り戻すだろう。

あれだけ熱心に活動する主従だ。彼女たちの影響力が幻想郷中に遍く広まる日も、そう遠くは

ないかもしれない。

 

 風の神とそれに寄り添う風の従者は、風の妖怪によって、あらたなる風聞、風評を幻想郷に

駆け巡らさせた。そしてこれからは、その神威神徳を、風に乗せて広めていく。

 

 奇なる縁だな、と私は思った。

 でも、これこそが幻想郷という地なんだろう。

 

 

 

 いつのまにか木枯らしは止んでいた。

 夕暮れが近づき、気温も下がったようだ。でも不思議と寒さは感じなかった。

 色濃く染まった太陽が煌々と神社を照らしていた。赤茶けた鳥居や枯れ葉の散らばる参道が

オレンジ色に映えるなか、社殿の横の、季節はずれの彩りを取り戻したあの木が、一層にその

美しい赤色を輝かせていた。


 ああ、来るわね――私は前触れもなくそう直感した。


 私の神社には毎日毎日、招きもしないのに色んな連中が集まってくる。

 妖怪やら妖精やら、最近は神様まで、ありとあらゆる変なやつが、私の神社に押し寄せては

傍若無人をやらかしていく。うんざりすることばかりだが、とうの昔に慣れてしまった。


 けれど、その中でも最も古く、最も頻繁に、最も傍若無人に振舞う者が向かってきている。

 私はため息をついて、沈み行く太陽の方角へ目を凝らした。

 眩むようなオレンジ色の光のなかに、ほんの一点、黒い粒がぽつりと見えた。





「よう霊夢、あいかわらず暇そうだな」


 天狗にも言われたけれど、あんたに言われると余計に腹立つのは何でかしら。


「お前は暇なときは大抵お茶を飲んでいるからな。今はそのお茶すら飲んでいないんだから、

よっぽど暇ってことだ」


 どういう理屈だ。


「実は私も暇でな」


 知らないわよ。


 夕日の中から現れた黒い粒は、たちまちのうちに轟音をあげて神社へ突っ込んできた。

 そして私と顔をあわせるや否や、いつもどおりの傍若無人な一言を吐いてよこした。


 私の最も付き合いの古い友人、霧雨魔理沙。


 箒から飛び降りた彼女は、なにか面白いものでも探すように、神社のなかを無遠慮に見渡し

はじめた。

 そして、社殿の横の、あの木に視線が向けられる。


「おお、これって楓か。いつのまに植えたんだこんなの」


 赤い木のもとへ駆け寄る魔理沙。


「しかも全然散ってないじゃないか! どうしたんだ、これ?」


 私は事情を話す。

 今朝訪れた、秋の姉妹神のこと、

 氷精がちょっかいをかけてきたこと、

 へべれけの伊吹萃香のこと、

 騒がしい天狗のこと、

 神奈子と諏訪子と早苗のこと。

 

 愚痴や雑談を交えながら今日一日のことを話す私に、魔理沙は満足そうに頷いて言った。

 

「よし、じゃあ今夜は宴会だな!」


 なんでよ?


「知らないのか?」


 魔理沙は箒に飛び乗ると、不敵な笑みを浮かべて言った。


「今宵は満月だぜ?」






――





 

 そして今夜も、博麗神社には大勢の人間や妖怪や神様がひしめいた。


 夕暮れも間近という時間帯に思い立ちながら、たかだか数時間でよくもまあこれだけの数を

集めたものだと、今更ながら魔理沙の行動力には感心する。


 紅魔館の主従、永遠亭のお歴々、白玉楼の姫と庭師、三途の死神と彼岸の閻魔、山の河童、

そして呆れることに、守矢神社の面々と、鬼。

 あんたら……三日三晩飲み続けてまだ飲み足りないの?


「ふふふ、そこの小鬼。前回は不覚を取ったけど、今度はそうはいかないわよ。再戦と行こう

じゃない」


 つい先ほどまで潰れていたとは到底思えないほどピンピンとした神奈子が、どん、と酒瓶を

取り出す。その名も『銘酒 鬼ごろし』。萃香の眉がピクリと動く。


「まあ、昼間はあんなにあられもない姿を幻想郷中にばら撒かれたのに、まだ懲りないのね、

この神様は」

「鬼ごろしっていっても色々あるぜ。萃香を潰すなら、やっぱり大江産じゃないと効かないん

じゃないか?」

「酔い覚ましは持ってきているけれど、鬼や神様には通じるかしら。一粒入れるだけで10倍

酔える特製の錠剤ならあるけど、これでも使う?」


 やんややんやと周りの連中が好き勝手に囃し立てるなか、神奈子と萃香がお互いの超特大の

盃に酒を注ぎはじめる。その後ろ脇では、額に手を当てた早苗がうんざりした様子でため息を

ついていた。

 あんたたち、飲み比べするのは勝手だけど、酔ってうちの神社壊したりしたら二人まとめて

退治するわよ?


 次から次へと酒を流し込む二人を見て、さすがに胸焼けを感じた私は視線を他へ移す。


 集まりの端っこでは、月兎が、何故か閻魔と死神の二人に捕まっていた。真っ赤な顔をして

説教する閻魔と、えぐえぐと泣きながら頷く月兎。なるほど、説教魔と泣き上戸ね。

 死神が、そんな二人の盃に延々と酒を注ぎ足していた。


 さらに視線を移す。

 今宵の宴会の主役となるはずの、季節外れの真っ赤な楓。

 その木のもとにはいたのは、白玉楼の主従と、意外なことに紅魔館の面々だった。


「紅色は見慣れているけど、こういう風に楽しむのも悪くないわね」

「館には楓がありませんしね。今度美鈴に言って、新しく植えてもらいましょうか」

「この辺りはとっくに紅葉の季節も終わっているはずなのに、不思議だわ」


 真っ赤な液体を注がれたグラスを傾けながら、レミリアと咲夜が話している。珍しいことに、

今夜はパチュリーも来ているようだ。紅魔館から出ているのを見たのは春以来だ。


「妖夢~、この柿美味しいわ~。ほら、貴方も食べてごらんなさい」

「いえ、お気に召したのなら私の分もどうぞ、幽々子様」

「あらそう? なら遠慮なく~」


 木を挟んだ反対側では、幽々子と妖夢が微笑ましいやりとりをしている。

 ……って、ああ!? せっかく神様から貰った柿が、いつのまに!

 出した覚えの無い柿をみて、慌てて私も彼女たちのもとへ駆け寄る――が、既に遅し。もう

食べ尽くされた後だった。あーあ……


「あら霊夢、柿ご馳走様~」

「こんばんは、お邪魔しています」

「霊夢遅いじゃない。ホストはゲストを放ったらかしにしないものよ」

「お嬢様、今更ですわ」


 がっくりと肩を落とす私へ声がかかる。楽しみにしていたのになあ。


「あら霊夢。なんだか元気が無いわね。血が足りてないんじゃないの?」


 そんなレミリアの申し出を片手をひらひらといなしながら、私も楓をよく眺められる場所に

腰を落ち着ける。葉の隙間から、綺麗な月がちらちらと覗き見えた。


「満月に紅葉。なかなか風流ねえ~」


 幽々子が間延びした声で言った。


 参道の方は、神奈子と萃香の飲み比べがいよいよヒートアップしてきたようだ。絶え間ない

歓声と嬌声、稀にその中に早苗の悲鳴が混じる。

 しかしこの木の下にいる私たちには、そんな騒ぎが遠い地のことのように感じられていた。

幽々子や妖夢はもとより、レミリアたちも一言も発することなく、グラスや盃を傾けながら、

月の光に照らされて妖しく映える、その紅葉に見入っていた。



「霊夢、ひとつ聞いていいかしら。この楓は何故赤いままなの? この時期なら、とうの昔に

色褪せて散っているはずなのだけれど」


 沈黙を破ったのはパチュリーだった。

 私は今朝の秋の姉妹神のことを話して聞かせた。生気の萎えた楓に彩りを与え、養分を奪わ

れた柿の木に豊かな果実をみのらせた、二人の神の話。 


「そう、神の――」


 パチュリーはあらためて楓の木を見上げた。そして祈るように目を閉じた。


 「知識と理」――パチュリーの根幹にして、彼女の力の源泉。

 彼女は書物を開いて知を得、知を巡らせて理を紡ぐ。永い年月を経て積み上げたそれは重く

大きく、その為し得る範囲もまた、第一級の神や妖怪と比較しても遜色はない。

 しかし今、パチュリーの目の前を彩っている紅葉は、彼女の奉ずる「知識と理」を超越した

ものによってもたらされていた。理を覆し、法則を捻じ曲げ、現象そのものを改変させる事実

――人はそれを奇跡と呼ぶ。

 パチュリーの眼前に広がる紅葉は、まさに神の奇跡の産物だった。たった一本の楓、たった

三つの果実。万能には程遠くとも、それは知識や理を無効とする、大いなる力の顕現だ。


 それを前にして、パチュリーは何を思うのだろう。

 私は彼女に目を向ける。


 パチュリーは目を閉じていた。その表情は澄んでいた。

 懊悩も煩悶もなく、ただあるがままを受け入れるかのように、眼前の奇跡と向き合っている

かのようだった。

 

 私は悟る。彼女はきっと知っているのだろう。

 奇跡も理も、この地においては相反するものではないということを。

 山川水木すべての営みに理が存在するように、

 森羅万象ありとあらゆるものに、神は宿っている。


 私は参道を見た。

 何人もの少女たちに囲まれて、鬼がいた。神がいた。

 しどけない姿を晒し、真っ赤な顔で互いを睨み付けながら酒を呷る、奇跡の担い手。

 

 私はパチュリーのような知識はないし、神のような力を操ることもできない。

 だからパチュリーが奇跡の成果を前に何を思うのかなど、見当もつかない。

 けれど、あのように威厳もへったくれも無い神様や鬼がこんなに身近にいて、パチュリーの

ような知恵と理屈の権化がそのすぐそばで杯を傾けている。


 絡み合うことも交わることもない。

 けれども確かに、奇跡と理が、同じ地に寄り添って存在していた。

 全てがすべてをありのままに受け入れる地。それが幻想郷というところなのだ。

 



「この寒さだから、そう長くは持たないわね。三日としないうちに散ってしまうでしょう」


 グラスを置いて立ち上がったパチュリーが、木の幹に手を添えて言った。

 細腕に力がこもり、楓の木がかすかに揺れる。


 はらり――と一枚、葉が枝から零れて落ちた。


 地に舞い落ちた楓の葉をパチュリーは拾って、いとおしむように目の前にかざした。


「珍しいものを見せてもらったし、お礼をしないとね」

「あら、珍しいわねパチェ。何をするつもり?」


 レミリアが興味深そうにパチュリーを見上げる。

 パチュリーは傍らに座っているレミリアに顔を向けて言った。


「レミィ、お願いがあるのだけれど」


 そして社殿の裏手を指を差す。


「あの氷を、空へ放り投げてくれないかしら」


 パチュリーの申し出に、皆が訝しげに社殿の裏手へ目を向ける。

 指先の向こうには、昼間、神社に来た氷精の置き土産の大きな氷の塊が、ほとんど溶けずに

残っていた。


「あんなものをどうするのよ?」


 友人の意図を読み取れないレミリアが困惑した様子で問い返す。

 それを受けたパチュリーは、口元にそっと笑みを浮かべて答えた。


「いいものを見せてあげるわ」



――



「それで、どこへ向かって投げればいいの?」


 レミリアが、氷の塊を手に添えて問う。

 楓の木のまわりには、いつのまに宴会に参加していた全員が集まっていた。萃香や神奈子も

手に特大盃を持ったまま、興味深そうに成り行きを見守っている。


「あそこへ」


 パチュリーは木の真上に浮かんでいた。そして腕を自身のさらに頭上へ掲げる。その指は、

中天を煌々と照らしている、輝かしい満月へと向けられていた。


「月へ向かって?」

「ええ。おもいっきりお願い」


 レミリアは一つ頷き、白く端正な手を氷の塊に食い込ませる。がきんっ、という音とともに

指先が半ばまで氷に埋め込まれた。

 背中の羽を震わして、レミリアは右手に氷の塊を掴んだまま、ゆっくりと浮かび上がった。

体積だけでも彼女の10倍はあろうかという巨大な氷塊にもかかわらず、吸血鬼の面目躍如と

いったところか、その重量をまったく意に介していないようだ。

 ほぼパチュリーと同じ高度まで上昇したレミリアは、一息ついて右肩を大きく振りかぶる。

そのままの体勢で、友人へ目を向ける。彼女の視線を受けて、パチュリーが軽く頷いた。


「それっ!」


 掛け声と共に、巨大な氷塊が空へと舞った。


 パチュリーの指示どおり、まっすぐ月に向けて放たれたそれは、

 まるで大空へと還る流星のように、きらきらと月光に照らされながら天へ駆け登っていく。

 

 氷塊が、私たちから見て丁度月と同じ大きさにまで遠ざかったとき、

 パチュリーが両手を空へ掲げた。

 集中するように目を細め、その唇が素早くなにかを呟く。

 

 ――魔法の詠唱。

 

 掲げられた両手から山吹色の魔力が渦を作った。

 パチュリーの周囲の空気が大きくうねりはじめる。

 

 

 「ジンジャガスト!」

 

 

 渦となった魔力が大気と同化し、パチュリーの頭上に巨大な竜巻を生み出した。

 強く鋭い強風は無数の空気の刃と化し、天に登りつめた氷塊を切り刻んでいく。

 幾重の層に及ぶ刃の渦に晒された氷塊は無数の氷の粒となり、

 風の奔流に乗って地表へと降り注ぎ始めた。


 

 私たちの周りにも強い風が舞っていた。

 風の中心に楓があった。吹きすさぶ強風を受け、木を覆う真っ赤な葉が次々に枝から離れて

宙へその身を躍らせる。しかしそれらは地上へ落ちることはなく、風に乗ってさらに上空へと

舞い上がっていくように見えた。


 すると、パチュリーが掲げていた腕をおろした。頭上で荒れ狂っていた空気の渦はたちまち

霧散し、それと同時に私たちの周囲の風も勢いを失くした。

 暴風から一転してそよ風程度の穏やかさを取り戻した風を浴びながら、楓の木だけが余韻を

残すかのように、その真っ赤な葉を散らし続けている。

 

 

 

 私は見た。

 暴風に晒されて舞い上がった紅葉が、地上へと落ちてくる。

 同時に、切り刻まれた何万何億もの微細な氷の粒が、

 紅葉と共に、まるで粉雪のように私たちの元へ降り注いでくるのを。

 

 中天には真ん丸い月が、相変わらず闇夜を明るく鮮烈に照らし続けていた。

 舞い落ちる氷粒がその光を反射し、

 その細やかな身ひとつひとつを宝石のように輝かせていた。

 それらが彩る光の中に、真っ赤な楓の葉があった。

 中天の月光と、周囲の宝輝につつまれて、

 降り注ぐ葉は、その色をどこまでも紅く妖しく照らしだしていた。

 


 輝かしい月の下、

 かすかに色をたたえて氷が光を乱舞させ、

 紅妖の葉は微風にのって、光芒の輪のなかを舞い踊る。

 まるで万華鏡のように――

 

 

「――雪月花」


 幽々子が呟いた。

 呆けたような相変わらずの表情で、

 でもその目はいつになく強く鋭く頭上を見据えながら。

 

 主の呟きに、夢から覚めたような面持ちの妖夢が反応する。


「幽々子様……?」

「妖夢、しっかり見ておきなさい」


 妖夢が一瞬その身を硬くし、慌てて視線を頭上の光芒へと戻す。幽々子の声には、いつもの

間延びしたようなそれとは違い、威厳と迫力が込められていた。


「……その昔、貴人は自然の美の象徴として雪・月・花を詠みこんだわ。四季折々の自然と、

その美しさを楽しむ風流の心。ひいては雅の精神そのもののあらわれとして『雪月花』という

言葉を用いたの。古の歌人や風流人は、好んでこの言葉をよく使ったものよ」


 目の前の情景に目を奪われ続ける私たちの耳に、幽々子の解説が届く。彼女の声には重みと

張りが兼ね備わっていたが、不思議と障りに感じることはなく、まるで溶けこむかのように、

その言葉一つ一つが私のうちに収まってきていた。


「けれど、『雪月花』という言葉には、もう一つ意味があるの。それは『近くにありながらも、

決して交わることのないもの』という意味。知ってのとおり、雪が降るとき月は見えず、また

雪が降る季節に花が咲くこともない。雪と月と花、この三種が相合わせるときこそ自然が最も

美しくなる瞬間としながらも、それは決して訪れることは無い。

――雪月花とはまさに、幻想を表す言葉なのよ」


 幻想――私は目の前の光景に変わらず目を奪われ続けながら、その言葉の響きが、今までと

まったく違って聞こえていることに気がついた。

 私の住む地は幻想郷で、私のまわりにいる知り合いたちは幻想の存在。あまりに身近過ぎて

意識したことも無い言葉だったけれど、いま幽々子の口にした「幻想」という言葉は、とても

美しく、けれど幽かで儚い――そんな印象を私の内に刻み込んだ。

 氷の粒と楓の葉は未だ止むことなく降り続き、月の光もなお鮮烈に私と周りを照らし続けて

いる。けれど私は、今にも終わるかもしれない目の前の光景を強く目に焼き付けるとともに、

たとえようも無い寂寥感も覚えていた。


「よおし! ここは私がもう一発、こいつにさらに星を加えてアレンジしてや――おぶっ!」


 魔理沙が空気を読まずに勇んで立ち上がったところを、ミニサイズ・オンバシラがごんっと

彼女の後頭部に叩き込まれた。

 ずぅん、という効果音が立ちそうな勢いで沈む魔理沙。それを横目で見ながら、やれやれと

神奈子が吐息をつく。そしてあらためて頭上の楓へと向き直った。


「それにしても、幻想郷の中で、さらに幻想を味わえるとはね。良いものを見せて貰えるわ」

「とはいっても雪の代わりに氷の粒、花の代わりに楓の葉、所詮は紛い物の幻想だけれどね」


 そう言って、パチュリーが神奈子の隣に降りてきた。私たちの目をこれだけ釘付けにさせて

おきながら、彼女の口調は相変わらず陰気で皮肉っぽい。

 けれど、やっぱり彼女の表情はすっきりとしていた。血色の悪い、見るからに不健康そうな

顔つきも相変わらずだけど、その表情に翳りや迷いは感じられなかった。


「まあ、いま私ができるのはこの程度。自然の力を利用するだけの精霊魔法使い風情じゃね」


 パチュリーが身を屈め、先ほどまで持っていたグラスを拾い手に取る。

 あれだけの強風に晒されながらも倒れなかったのか、グラスの中には赤い液体が満たされた

ままだった。

 赤い液体の表面には、楓の葉が一枚、浮かんでいた。


「けれど、創れずとも作り変えるのが魔の力。理を統べて、ついにはそれを超越することこそ

魔の理想。私は自然を従えて、いつかはそれを超えてみせるわ」


 神奈子へ向けてか、楓へ向けてか、はたまたは幻想郷すべてに向けてか、

 パチュリーは僅かにグラスを掲げて、そう言った。


 それを讃えるかのように、神奈子が盃を大きく掲げた。

 それに続くように、皆々もまた、手に持つグラスや盃を顔上へ掲げた。



 幻想の光景が周囲を満たすなか、

 私たちの酒杯が輪を作る。

 その中心にそびえる楓の木から、またひらりと葉が落ちた。


 降り注ぐ氷の粒は不思議と止むことなく、いつまでも振り続けるかのようだった。








――






 


 あの宴会から数日が過ぎた。

 紅葉はすっかり散ってしまい、楓の木はいつもどおり、朽ちた姿を晒していた。

 しかしその木の麓には、色褪せたとはいえ、紅を残した落ち葉が今も山を為している。


 私はそれを掃こうとはしない。

 この落ち葉もいつか土となって楓の木へ戻り、きっと来年もまた鮮やかな紅葉を蘇らせると

信じていた。

 そして数年後には、その隣に立派な柿の木が果実をみのらすといい――そう願っていた。



 びゅう――とひときわ強い風が吹いた。

 積もっていた落ち葉が風を受けて舞い上がった。


 風はどんどん勢いを強めていった。

 落ち葉は一枚残らず吹き飛ばされ、天高く舞い上がり、

 山々や谷へ向けて広まっていった。

 私は立ち尽くしたまま、それを見守っていた。

 

 

 暴風が止む。

 そよ風が凪ぐ。

 

 冬にもかかわらず、

 その風はとても優しく、暖かく、

 いとおしむように、私の剥き出しの肩を撫でていった。

 



 すべてが元通りになったかのような神社のなか、

 私のそばに、たった一枚だけの紅い葉が

 ひらり、ひらりと舞い落ちていた。





                             End...






通りすがりの道端や、見慣れぬ風景や、町を行きかう人々や、

そんな何気ないなかに、幻想というものは零れ落ちているのかもしれません





はじめまして、Seji Murasameと申します。お読みいただき、ありがとうございます。

初の投稿となりますが、楽しんでいただければ幸いです。

ご意見、ご批判、ご感想など、お気軽にお寄せいただければと思います。



今作の反省点として、特に後半部からの霊夢の語り口が堅苦しくなりすぎた感があります。

暢気でいて、割と色々と考えてたりするというのが、私の霊夢へのイメージですが、

ちょっとこれはやりすぎかもしれないと、読み返しながら思ったりしました。

書き進めるうちに悦に入りがちな悪癖もあるので、この反省を活かして次作に繋げたいところです。



この作品では、私の中の「幻想郷」という世界のイメージを詰め込めるだけ詰め込んでみました。

皆さんのなかの幻想郷とどれだけ通じるものがあるか、どれだけ差異があるのか、

そういった点も楽しみながら読んでいただけたら嬉しいです。



1/15

書式が少しおかしくなっていましたので、修正しました



2/15

書式をさらに変更しました。divタグが使えたとは。ついでに壁紙も外部のものに変更しました。



5/29

創想話のシステム変更にともなって、おかしくなっていたデザインを修正しました
Seji Murasame
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コメント



0.3130簡易評価
3.90名前が無い程度の能力削除
いい幻想郷を読ませてもらいました
おもしろかったです
7.100名前が無い程度の能力削除
雰囲気がすばらしかったです。次回作が楽しみだ
9.100名前が無い程度の能力削除
すばらしい
12.90名前が無い程度の能力削除
若干出来すぎな物語かな、とも思いましたが…幻想郷なら、こんな事起こっても不思議じゃないかもなぁ、とか思ったり。
霊夢含めみんな粋で、大変素敵でした。
15.100名前が無い程度の能力削除
読了感がとてもいい。
神社でのやりとりも宴会でのやりとりも魅力的で、心にのこる作品だと感じました
16.80浜村ゆのつ削除
こういう雰囲気のお話は好きなのですw
そして、すっと心にしみてくるような語り口がとてもよく、気がつくと読み終わっていましたw
何気ない中にある幻想…そういうのは私も好きです。
17.100三文字削除
雰囲気が素晴らしい。そして最初と最後で霊夢の風に関する感じ方が変わっているのも面白い。
こんな粋で楽しげな宴会に交じってみたいなぁ
18.100名前が無い程度の能力削除
こーりんのセリフが最後こういう形で繋がるとは
感心しました。次も期待しています
19.80名前が無い程度の能力削除
素晴らしい作品です。
作中の雰囲気が読んでいて心地良かったです。
次回作に期待しています。
20.100削除
読んでいて作品に引き込まれていきました。
雰囲気も、話の流れも、そして神と人と妖怪と魔女と間の抜けた-気の置けない幽霊、キャラ立ちも素晴らしい作品でした。
次回作も楽しみにしています!
21.無評価Seji Murasame削除
沢山のコメントありがとうございます。
これだけ沢山の方に読んでいただけるとは本当に嬉しいです。

>01-14 12:28:28の名無し様
>01-14 18:28:52の名無し様
>01-14 20:08:38の名無し様

ありがとうございます。気に入っていただけて光栄です~

>01-14 23:17:37の名無し様

少し持っていき方が強引過ぎるかなあという自覚はありましたw
ダラダラとなるような話にはしたくなかったので、長すぎず、かつ
中身は濃くなるようにしましたが、無理はいけませんね。
次回作は、もっと自然になるように心がけて書きたいと思います。
読んでいただいてありがとうございます~。

>01-15 01:35:17の名無し様

読んでいただいて良い気分になってもらえたのなら、これ以上のことはありません。素敵な感想をありがとうございます~

>浜村ゆのつ様

もともとこの作品は、初冬の幻想郷を舞台に、霊夢の気ままな一日を
ありのままに書いていくというコンセプトでした。
書き進めるうちに別物になってしまいましたが、全体的なベースにあるのは、
私自身のイメージするありのままの幻想卿の雰囲気です。
文字でうまくそれを表現できればと思いましたが、気に入っていただけたのなら
光栄です~。

>三文字様

ありがとうございます~。雰囲気を気に入っていただけたのなら感無量です
暢気でマイペースな霊夢ですが、彼女の周りでおこる毎日の色んな出来事は
意識せずとも積み重なっている。そういう感じが出て入ればなあと思います
宴会部分からは割と難産でしたが、あまりゴチャゴチャにならずに、うまく
雰囲気を出せたかなあと思います。こちらも気に入っていただけたのなら光栄ですw

>01-15 19:55:23の名無し様

気がついていただけましたか。最後のシーンの締めとして考えていましたが、
うまく活きてくれたかどうか、いまいち自信がありませんw
彼女もまた心に幻想を抱く。けれども結局に風とともに幻となって消え去る。
最後の隠し味の感じで盛り込んでみました。
うまく味わってもらえるように書けていれば良いのですが。

>01-15 20:02:15の名無し様

お褒めいただきありがとうございます~。嬉しいです。
次回作もぜひぜひよろしくお願いします!
22.無評価Seji Murasame削除
>狐様

ありがとうございます~。会話が少なく、霊夢視点の語りばかりになって
しまいましたが、キャラクターもうまく動けていたのなら嬉しいですw
基本的にすっとぼけた連中ばかりですが、やっぱり根っこは小粋で逞しいの
ばかりだと思いますので、今後もそういう風にキャラクターを描ければなあと
思っていますw
24.100名前が無い程度の能力削除
事件が起こるでもなく、盛り上がるでもなく、ただ静かに、優雅に進む物語に引き込まれてしまいました。
幻想郷とはかくも美しきかな。
25.100名前が無い程度の能力削除
すごく雰囲気の良い、味のある作品だと思います。描写のよさやキャラの会話に、つい何度も唸っていました。
このような味わい深い作品、味わせていただき感謝です。
27.100名前が無い程度の能力削除
いや…これは素晴らしい
風という言葉の意味の深さが感じられますな
31.80名前が無い程度の能力削除
秋姉妹の登場部分が非常に良かったです。
全般的に淡々としてはいますがそれを感じさせぬ面白さが随所に見られました。

34.無評価Seji Murasame削除
コメントを寄せていただいた方ありがとうございます~。レスをさせていただきます。

>01-16 00:15:22の名無し様

幻想郷はとても美しいところだと思います。魔理沙たちをはじめ、やんちゃで騒がしい連中はたくさん居ますが、
自然本来の豊かさや四季折々の風靡さや色使いがとてもよく表れる、楽園そのものの世界なのではないでしょうか。
毎日毎日、掃除をしながら縁側でぼんやりとお茶を飲む霊夢は、そういう幻想郷「本来の姿」というものを、
人間の中ではきっと誰よりも知っているんじゃないかと思います。
今後もこういった幻想郷のありようを描いていければいいなあと思ってます。

>01-16 00:51:39の名無し様

雰囲気を大切にしたいお話だったので、情景描写は特に気を使いました。
読み進めるうちに、自然と頭の中にその光景が浮かび上がってくるような、そういうお話を目指しましたが、
少しでも上手くいっていたらいいなあと思います。
味わい深い作品というお言葉は本当に嬉しいです。またよろしくお願いします~

>01-16 01:42:12の名無し様

お褒めの言葉ありがとうございます~。
冬という時期は、四季のうちでも最も「風」という現象を敏感に感じる季節じゃないかと思っています。
初冬を迎え、厳しい寒風に苛まれる霊夢は、たまたま風について思いを馳せます。そこから、今回のお話が発展していくわけです。
私のお話から、風というものにたいして新しい何かを見出していただけたのなら、本当に書いた甲斐があるというものです。
読んでいただいてありがとうございました~

>01-16 14:37:20の名無し様

秋姉妹は、最初は本当に物語の中の味付け程度の登場の予定だったのですが、結果的に彼女らのもたらしてくれたものが、
物語中とても重要な位置を占めるようになりました。私自身もまったく予定外で、いつのまにこんなことになったんだという気分ですw
ただ、幻想郷中が冬を迎え、秋姉妹はいよいよその役割を終える日が近づいてしまいました。
そんななか、彼女たちが最後の秋の名残を博麗神社にもたらしてくれる。
そういった、過ぎ去る季節の儚さや哀愁といったものが表現できていればいいなあと思います。
また、内容は私の主観丸出しですが、視点はあくまで霊夢ですので、彼女本来の持ち味たるマイペースさをなるべく崩さないように心がけました。
ただ、読み手を退屈させることだけは無いように、淡々としたなかにもアクセントのようなものを散りばめるようには気をつけたつもりです。
うまく機能したのなら幸いですw 読んでいただいてありがとうございます~
36.100名前が無い程度の能力削除
これはいい幻想郷ですね。
なんといっても雰囲気がすばらしい。
次回作に期待してます
38.無評価名前が無い程度の能力削除
面白かったです
幻想郷の景色やキャラの表情まで浮かんでくるようでした
過ぎさる季節の寂しくて、それでいて温かい雰囲気が最高です
39.無評価名前が無い程度の能力削除
あっさりしてて読みやすい、なのに続きが気になる。
みんなが言うとおり雰囲気の良い作品でした。
きちんと全部が繋がってて面白かったです。
41.100名前が無い程度の能力削除
点数のつけ忘れです
42.100レグルス削除
淡々としていて、物静かに進んでいくのだけれども美しい。
なんだかそんな日本的な優雅さが感じられました。
淡い水彩画が似合いそうな物語ですね。
良かったです。

そしてコタツの萃香に吹いた。
43.80削除
雪月花って月の出ている時期(時間?)や花が咲き乱れる時期にも
お話しとして出てきていいはずなのに、雪が降る冬に出てくることが多いですね。

Seji Murasameさんのこのお話も雪月花のようでしたよ。
44.100時空や空間を翔る程度の能力削除
心が幻想郷に溶けて行く・・・
淡雪のように・・・
46.無評価Seji Murasame削除
>01-16 23:50:43の名無し様

ありがとうございます~。次回作も楽しんでいただけるよう頑張ります!

>01-17 22:12:27の名無し様

とても嬉しいお褒めのお言葉をありがとうございます~。幻想郷の自然の美しさや儚さをうまく表現できてればいいなあと思います。

>01-17 22:42:32の名無し様

続きを読みたいと言っていただけるのは本当に作家冥利に尽きます。次回作も頑張りますので、是非読んでみてください!

>レグルス様

読んでいただいてありがとうございます~。幻想郷はやっぱり日本、それも「古き良き日本」が舞台ですので、
侘び寂びとまではいかなくとも、そういった風情をうまく表現できればいいなあと思いました。
適度に読者サービスを盛り込むと読み手も喜ぶとばっちゃがいってた! ていうかむしろ私が書きたかった! 
これが終わったら、ちょっと神社にしばかれに行ってきます。

>⑨様

月や花は季節ごとにそれぞれ存在しますが、雪は冬だけですからね。
春に降るような捻くれ者の雪ではなく、やはり冬に降る本物の雪のなかでこそ美しさはより映えるのかもしれませんね。
とはいえ、私の作品など本物の雪月花に比べればまだまだ紛い物もいいところ。いつか真に幻想のような作品を書き上げたいものです。

>時空や空間を翔る程度の能力様

溶けゆく淡雪はおおいなる大気と化し、やがて幻想郷を包み込んでいった。
淡雪にこめられた想いもまた、山を覆い、里を満たし、いつしか――あらたな幻想を芽吹かせてゆく。

このような素晴らしい世界を作り出してくれた東方Projectと神主に、心からありがとうと言いたいです。
48.100「」削除
堅苦しい文章は苦手なので
面白かった!! ありがとうッ!!
51.90rock削除
面白かったですー。
54.90名前が無い程度の能力削除
すでに言い尽くされてますが、実に雰囲気がいいですね。
まさしく幻想郷。
次回以降も、楽しみにしています。
57.無評価Seji Murasame削除
>「」様
>rock様
>01-24 18:57:12の名無し様

コメントありがとうございます~。
現在少しずつですが、二作目を執筆中です。次回作もどうぞよろしくお願いします!
59.100小山田削除
読み始めてから最後の風の描写に至るまで、常に幻想郷の情景が心に広がっていました。
現在、清涼な読後感を味わっております。
霊夢の心情の推移を読み手が自然になぞっていける構成に脱帽です。
60.90名前が無い程度の能力削除
ゆったりとした雰囲気や、景色のイメージが伝わってきて
とても良い作品だと思いました。
62.80ももたろ削除
読み始めるまでに時間かかっちゃってすまない

キャラも立ってて面白かったからさらっと読めたよ
宴会の場面が結構お気に入り
66.100削除
雰囲気が素晴らしく、読んでいる内に自然と背景が描写されるようなそんな作品でした。
次回作も期待!
67.100名前が無い程度の能力削除
雪、月、花は一度に眺められない。まさに幻想ですね。
澄んだ情景描写が素晴らしかったです。ゆったりとした雰囲気の中にテーマがしっかりと見えました。
本当にいい作品をありがとうございます。次回作期待しております。
69.無評価Seji Murasame削除
まさか4000点を突破するとは……
読んでくださった方、また評価を入れていただいた方、本当にありがとうございます。
評価ひとつひとつを貰えるたび、投稿してよかったと心から思えてしまいます。
次回作がなかなか形に仕上げることができていませんが、頑張っています。
気長にお待ちいただければと思います。

>小山田様
コメントありがとうございます~。
いささかご都合主義的な展開もありますが、物語の流れが語り手にどれだけ影響していったか、
そういったものも演出の一つとして組み込んだつもりです。しんでいただけたのならなによりです。
小山田さんの作品も本当に楽しみにしているので、お互い頑張りましょうw

>02-02 01:08:19の名無し様
>ももたろ様
>マ様

ありがとうございます~。楽しんでいただけたようで光栄です。
次回作以降もよろしくお願いします~。

>02-10 19:25:22の名無し様
暖かい感想を本当にありがとうございます。
投稿して一ヶ月、今にして思えば色々と反省点も多い作品ですが、
現段階では私の書ける最高の作品をお送りできたと思っています。
次回は、これをさらに越える作品になるよう頑張りたいと思っています。
これからもよろしくお願いします。
70.100名前が無い程度の能力削除
言い尽くせぬ感動をいただきました。幻想郷の、日本の自然の美しさがこれでもかと言うほど表現されていると思います。私の中で勝手に「SS版・少女が見た日本の原風景」に認定させていただきました。あとコタツ萃香は性交、じゃなかった成功だと思います。見事に踊らされて喜んでる者がここにw
71.100名前が無い程度の能力削除
美しき、素晴らしき幻想郷のライト・サイド。
存分に堪能しました。

言いたいことは概ね下の方々に先を越されていますが、
どうしても一つだけ。

霊夢の一人称が凄い。
いや、彼女って公式でも二次でも「とっつきにくい主人公」っぽい
イメージなんですよね。その内面を違和感なく、かつ自然に感情移入出来る
描写に脱帽です。
72.無評価Seji Murasame削除
突発で思いついたSSをもそもそと書いています。
うまくいけば今月中に発表できるかなあ。できるといいなあ。

>02-18 00:44:00の名無し様

読んでいただいてありがとうございます~。
その上原曲タイトルの認定までww光栄過ぎて目が眩みそうです。
コタツネタは、まあ、なんというか、書いた後やっちゃった感が凄いことになってましたが、
不思議と消す気はまったくおきませんでした。あれ、なんか目の前にお払い棒gあwせdrftgyふじこlp;@:「

>02-20 00:54:13の名無し様

今回の作品は、霊夢視点による語りだからという理由もありますが、
基本、何が起きようとも必要以上に引き摺ったり、後腐れのようなものを残したりせず、
ただありのままに受け止めて、通り過ぎていく、というように書きました。
物事に執着も拘りもしない、というのが霊夢の本来の持ち味ですので、霊夢一人称による語りは、
今回のような方向性の作品には良い方向に嵌ってくれたんだと思います。
まあもともと語彙も少ないので、視点によって明確に書き分けるようなことも出来ませんが、
また霊夢視点のお話は何かの折に書いてみたいなあとも思います。
読んでいただいてありがとうございます~。
75.90名前が無い程度の能力削除
いやぁ、すっかり引き込まれてしまいました。

幻想郷らしい、そう。本当にありそうなちょっとしたお話。

それが上手く描かれていたと思います。



事件の無い幻想郷は、さりとてはしゃいだり、楽しんだり、そしてちょっと感傷的になったり。

そんなのが普通の場所なのかもしれませんね。

個人的には100点、といきたいのですが。

Seji Murasame様の更なる成長を期待してやまないので。

あえて、90点とさせていただきました。

ではでは。
86.90名前が無い程度の能力削除
まさに幻想。素晴らしい。
移ろい行く季節を感じさせる風景、
儚くも美しく咲く雪月花…
そして最後まで引き込ませる文章に脱帽しました。

惜しむらくは、蒸し暑い夜に読んだせいで季節感が半減したこと…(自業自得
97.80名前が無い程度の能力削除
まあ皆さんと同じ感想しかでませんねw
101.90名前が無い程度の能力削除
こういうの好きです。
103.100名前が無い程度の能力削除
パッチェさん、かっこいい。
108.100名前が無い程度の能力削除
100!
109.100名前が無い程度の能力削除
いいですねぇ。こういう作品は好きです。
114.100非現実世界に棲む者削除
幻想の儚さがしみじみと感じられました。
ゆゆさま素敵な解説をありがとうございました。
作者さんも素晴らしい作品をありがとうございました。