それはどことも知れぬ場所、何時とも分からぬ時間に開かれる、
集まったメンバーは皆幻想郷の顔役ばかり、
この会議はそれほどに重要な意味を持っている。
「というわけで、幻想郷豊胸四天王はこれで決まりね」
円卓北側に座っているのは八雲紫、マヨヒガの主である、
彼女の背後には120インチのプラズマディスプレイが吊り下げられ、
その画面には四人の人妖が映し出されていた。
「紅魔館所属、紅美鈴、二つ名ヴィーナス美鈴、
人里所属、上白沢慧音、二つ名アルファゲル慧音、
永遠亭所属、八意永琳、二つ名フルムーン永琳、
冥府所属、小野塚小町、二つ名ダイナマイト小町」
紫が一人ずつ所属勢力と名前を読み上げる、
皆、幻想郷でも屈指のOPPAIを持つ者達だ。
「八意永琳が新しく四天王の仲間入り……主としてはどう思う?」
「まあ当然ね、永琳の巨乳が認められないなんてありえないもの」
円卓の東では輝夜がこれまた嬉しそうに従者を褒め称えた。
「ふん、どうせご自慢の薬とやらで作った偽者だろう?」
「私達蓬莱人には薬も効かないんだけど」
「でもー、蓬莱の薬を作った本人でしょう?」
円卓の西と北西には、レミリアと幽々子がそれぞれ座っていた。
「言ってくれるじゃない、紅魔の小娘は兎も角、四天王に掠りもしなかった冥界勢の主まで」
「黙れニート」
「黙りなさいひきこもり」
「誰がよ!」
「まぁまぁ、その辺にしないか、会議は始まったばかりだぞ」
やや熱中し始めた三人を諌めるのは、北東の席に座る慧音だった。
「黙れ、アルファゲル慧音」
「そうよ、何がアルファゲルよ、変な二つ名付けられちゃってる癖に~」
「んな!? あれはお前達がそんな物しか提案しなかったんじゃないか!
ミノタウロスとか、バケツプリンとか、ねり消しとか!!」
「月の姫の私でもさすがにアルファゲルはねぇ」
「紫がミノタウロスに一票入れてくれたらミノタウロス慧音だったのに」
「お前達、そんなに頭突かれたいか?」
『ごめんなさい』
さすがは慧音、この荒れた場を一言でぴたりと静めてしまった、
もし今日が満月であったのであれば三文字で十分でもある、
なお投票の内訳はアルファ二票、他全部一票である。
「では次の議題に行くわよ、毎度私達の頭を悩ませているこの議題に」
紫がパチンと指を鳴らすと、大画面の画面が切り替わる、
それと同時に、その場に居た輝夜以外の全員の顔が曇りはじめた。
「貧乳四天王、よ」
「またか、また選ばないといけないのか」
「これを伝えたときの愕然とした表情を見るのはもう嫌よ~」
「え?どうしたの?」
「……幻想郷のために耐えるんだ」
貧乳四天王、別に名誉でも何でもないその呼び名、
候補者は既にあらかた絞られており、それを選ぶだけなのだが……。
「私の方で選別したリストを配ります、各候補者の胸部周辺の詳細調査書を
よく確認した上で、その中から四名を選んでください」
各自の下へ、隙間越しにひらりと纏められた書類が舞い落ちる、
それを見た途端、悲しげな表情を浮かべるレミリアやら、
机に突っ伏する輝夜など、各自様々な行動を見せていた。
「い、異議あり!」
「あら、何かしら?」
その中で真っ先に手をあげたのがレミリアだった。
「さ、咲夜は、咲夜の胸は!」
「意外と従者思いなのね……でも、あなたもよく分かってるでしょう?」
「違うわ……咲夜は……咲夜は……」
しかしその手は力無く下げられる、
今度は反対側の輝夜が手を上げた。
「なんで私が候補に入ってるの!? よ、寄せてあげればギリギリBに!!」
「だーめ、何もしていない素の状態で選別されるのだから」
「や、やっぱり……?」
ちなみに今回候補にあげられたのは、以下の七名である。
霧雨魔理沙、十六夜咲夜、射命丸文、ルナサ・プリズムリバー、
魂魄妖夢、蓬莱山輝夜、四季映姫・ヤマザナドゥ。
「…………」
皆が用紙を食い入るように見る中、一人斜め下に視線をそらす紫、
まるで対面からの氷のような視線を避けるかのように。
「……やはり今年も候補に入るのですね」
円卓の南、すなわち紫の正面に座っていたのは七人目の候補であり、
楽園の最高裁判長でもある、四季映姫・ヤマザナドゥだった。
「どうしたのですか八雲紫、私は何も怒ってなどいませんよ?」
「ひ、額に青筋が浮いていますわ」
「どうかお気になさらず、さあ続きをどうぞ」
「はい……」
紫と言えども、機嫌の悪い閻魔様は相手が悪い、
他の四人はいまだに用紙を見つめている。
「(咲夜、胸はまだ大きくならないのね……)」
「(妖夢……大丈夫よ、あなたの胸はこれからだもの)」
「(うっわ、すっご、あの閻魔の胸って絶壁じゃない、むしろ垂直!?)」
「(ふむ、この中から四人となると……って、何で輝夜はそんなに楽しそうにしてるんだ?)」
各人、様々な思いを抱きながら投票用紙に名前を記入していく、
全員が記入し終えると、その紙は全て四季映姫へと渡される、
公正かつ完全な判断を下すための措置である。
「では、発表します」
映姫以外の全員が、ごくりと生唾を飲む。
「霧雨魔理沙…零票、十六夜咲夜…四票、射命丸文…二票、ルナサ・プリズムリバー…四票」
まずレミリアと幽々子ががっくりとうな垂れた。
「魂魄妖夢…二票、蓬莱山輝夜…三票」
「っ!」
「ええっ!?」
しかしここで幽々子の表情が一気に笑顔へと変化した、
対照的に輝夜の顔が驚きから悲壮な表情になる。
「やった、やったわ妖夢! あなたの努力が実を結んだのよ!」
「嘘……この輝夜が、この輝夜がぁぁぁ!」
七人の候補者に合計二十の票を投票するため、
そのボーダーラインは三票を超えるか否かが大体の分かれ目になる、
そしてついに最後の一人の投票数が発表された。
「し、し、四季…映姫……ヤマ…ザナドゥ………五票」
五票、投票者が五人しか居ないため、それは全員から貧乳と認定されたという事だ、
そんな彼女の手に握られた投票用紙がぐしゃりと潰れる音がする、
俯いてる為に顔は見えないが、歯軋りが聞こえる時点で容易に想像もつく。
「貧乳四天王は十六夜咲夜、ルナサ・プリズムリバー、蓬莱山輝夜、
四季映姫・ヤマザナドゥ……以上を持ちまして、発表を終わります」
だがそこは閻魔様、鉄の精神で何とか持ち直して気丈に終わらせた。
「えー、皆それぞれ辛いとは思うけど元気を出して!」
紫が特にレミリアと輝夜に向けて慰めの言葉をかける。
「本当に辛いのはこれからよ?」
そして落とす、まさに極悪非道である。
「それでは次の二つ名付けに入るわ」
二つ名、それは選ばれた存在として無くてはならない物、
紫から配られた用紙には既に四天王の名前が書かれており、
その横に各々が考え出した二つ名を書いていく。
「それでは集計します」
隙間越しに集められる用紙、これについて発表するのは今回に限って紫の仕事である、
誤魔化しようが無いのと、映姫の精神状態を考慮しての事だ。
「まず十六夜咲夜の二つ名から……一つ目、パーフェクト洗濯板」
このネーミングセンスは間違いなくレミリアの物である。
「(せめて……せめてまともな二つ名だけでも!)」
「えー、では続きまして……」
しかし、まともな二つ名かどうかは兎も角、レミリアの願いは儚く散ることになる。
「二つ目、パッド長、三つ目、パッド長、四つ目、パッド長、五つ目、ヘイパッド長!」
「んなっ!」
悲しいかな、十六夜咲夜=パッドという図式があまりにも広まりすぎていたのだ。
「えー、二つ以上の同様の提案があるので、パッド長で決定ね」
「ごめんなさい……咲夜……」
レミリアは泣いた、人目もはばからずに泣いた、
己の無力さを知った彼女は、これを糧にまた一歩成長するだろう。
「続いて、ルナサ・プリズムリバーの二つ名よ」
そんなレミリアを意に介さずに、淡々と紫が案を述べていく、ネガティヴァリ、
ストラディヴァリ、ストラディヴァスト、ストラディヴァスター、ネガティヴァスター……。
「……って、何でループしてるのよ!!」
『かっこいいから!』
紫が机に用紙を勢いよく叩きつけると、それにあわせて一斉に親指を立てる他五人、
これほどの曲者でなければ選別者は務まらない。
「えー、それじゃ各々、コレと思った物を言って頂戴」
「ネガティヴァスターね」
「メガティヴァスターよ~」
「ハイメガティヴァスターだな」
「ハイメガティヴァスターキャノンだって」
「ツインハイメガティヴァスターキャノンですよ」
「パワーアップしなくていいから!」
鬱砲『ネガティヴァスター』範囲内の相手を胸のことでネガティブにさせる程度の威力。
「まったくもう、いい加減にしないと靴下嗅がせるわよ? 次、蓬莱ニートの二つ名~」
「誰が蓬莱ニートよ!」
「あなたがよ」
「昔は働いてたわよ、現在進行形ニートとおっしゃい!」
「ニートは否定しないのね」
厳密にはニートですらない(年齢的な意味で)。
「えーと、一つ目がニュームーン」
「輝夜か」
「輝夜ね~」
「輝夜の考案だな」
「黒一色ですね」
「え、なんで即バレ!?」
ニュームーン、即ち新月、意味的には胸が無いという事である。
「続いての二つ名候補は……いい加減仕事探せ、ね」
「それのどこが二つ名!?」
「続きましてー……従者が可哀想」
「私を通り越して永琳に!?」
「続きましてー……光合成ぐらいしたらどうだ?」
「植物?! ついに植物扱い!?」
「最後は、とっとと冥府に来いや、ヤッマヤマにしてやんよ」
「どう考えてもある方の個人的感情です、本当にありがとうございました」
「以上の四つの中からコレと思ったものを選んで頂戴」
「一つ忘れてる! 一つ忘れてるってば!」
投票の結果、蓬莱山輝夜の二つ名は『従者が可哀想』となりました。
「永琳……地球人が苛めるの……」
「はいはーい、落ち込んだ月人は放っておいて最後の……閻魔様の二つ名づけです」
さっきまでのハイテンションは何処に行ったのか、
途端にしおらしくなる閻魔様以外の他五名。
「え、えーと、それでは一つ目から……」
紫は用紙を覗き込んだ後、ちらりと映姫の座っている方向を見る、
どうやら何かをしでかしそうな雰囲気ではなさそうだ。
「……断崖絶壁」
「けぶっ!!」
「ひっ!?」
一つ目の候補を述べた途端、左隣に座っていた慧音の脳天に悔悟の棒が突き刺さる。
「え、閻魔様!?」
「お気になさらず、続きをどうぞ……」
甘かった、紫の判断は甘すぎたのだ、
閻魔様ともなればそのような雰囲気を出さずとも、
まるでギロチンが無機質に首を落とすように行動できるのだ。
「う、うう……」
「どうしたのですか? 八雲紫さん?」
紫がちらりちらりと他のメンバーを見ると、みな青ざめた顔で見つめ返してくる、
慧音は脳天に棒を突き刺したまま微動だにしない。
「こうなれば死なばもろともよ!」
そして紫は覚悟を決め、大きく息を吸い込んだ。
「二つ目! 胸と背中の平行線!」
「ぐやっ!?」
「三つ目! サイズイズunknown!」
「れみっ!?」
「四つ目! 摩擦係数0!」
「ゆゆっ!?」
一つずつ発表するたびに、鈍い音とともに力なく倒れこむ他のメンバー、
残ったのは映姫と、その正面に座する紫のみ。
「……しまったわ、私としたことが今頃気づくなんて」
「何をですか?」
「あなたが……この会議を潰そうと考えてることに」
「ふふ、さすがは八雲紫……と、言いたい所ですが」
とん、と映姫が席を立つ。
「こうなることもあなたは全て予測していた、違いますか?」
悔悟の棒の先端を紫へと向け、睨みつける。
「……大正解、気弱な進行役を演じるのは結構疲れますのよ?」
紫もふわりと宙に浮き、作り出した隙間へと腰掛けた。
「何故です? ここまで分かっていたのなら、止めることも出来た筈」
「四天王の選別は止められない、なら如何にして最後まで終わらせるか」
「終わりませんよ、あなたがここで私に倒されて全てはご破算です」
「それはどうかしら?」
「……?」
扇子の陰に隠れた不敵な笑みに、表情を曇らせる映姫。
「もし、あなた以外の五人がものの一、二分ほど速く来ていたら?」
「何が言いたいのです?」
「あなたが来る前に、あなたの二つ名を決めていたとしたら?」
「……っ!?」
「甘い、甘すぎるわ四季映姫・ヤマザナドゥ! 私たちは蓬莱山輝夜の二つ名付けを
終了した時点で、すでに貧乳四天王を選び終えていたのよ!!」
そう、スト2で例えればすでにガイルはザンギエフの投げの範囲内に入っていたのだ。
「くっ、ならばここであなたの存在を抹消すれば!」
「残念だけど、私の腰掛けてるこれは隙間よ?」
「はうっ!」
さらに例えればぴよぴよしている状態だ。
「ま、待ってください、もう貧乳四天王などと無益なものは……!」
「駄目よ、胸に悩む女性達に巨乳四天王が希望を与え、貧乳四天王が安らぎを与える、
それは変えられない、変えてはいけない古くからの決まり――」
「二百回だけは! 二百回連続貧乳四天王だけは! 待っ……うわぁぁぁぁぁん!!」
無慈悲に隙間に消えていく紫の姿、
映姫は必死に走りよって隙間へと手を伸ばすも、何もつかめずに宙を切る、
そのまま地面に倒れこみ、溢れんばかりの涙を流しながら彼女は泣き続けた。
「ひくっ……うっ……」
「もう、元気を出しなさい、同じ苦しみは私も抱えてるのよ?」
「…………あ」
優しくかけられた声に導かれ、顔を上げればそこにいたのは蓬莱人、
永遠に生き続ける輝夜と、使者を裁く映姫、分かり合えぬと思っていた二人は、
何の因果か共通の苦しみと悩みを分かち合い、今、心が結ばれた。
「輝夜、輝夜ぁ……!」
「映姫……!」
抱きしめあい、涙を流しあい、慰めあう両者、
その二人を祝福するかのように、レミリアや幽々子、慧音が起き上がって拍手を送る。
そして此度の幻想胸会議は、輝夜と映姫による慧音への憂さ晴らし的ふるぼっこで幕を下ろした。
これは間違いなく、他の巨乳(貧乳)の者を巻き込むことになる。
ていうか、後書きのジョルジュは紅魔館の食料庫行きだな。
↓
紫が一人ずつ所属勢力と名前を読み上げる。
点数は予想胸囲
それはともかくGJ!!
おっと、あっきゅんもね
個人的には豊胸四天王より貧乳四天王の方が
でもこれが現実か・・・ガクリ
死者を裁く映姫では?
成長しそうな人は、除外ですかね?w
…チルノは成長するんですかね?w
あと魔理沙より格下と認定された咲夜さんは泣いて良いと思う