Coolier - 新生・東方創想話

クリスマス中止のお知らせ

2007/12/30 08:16:46
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※え?中止どころかもう終わってるだろって?
 何勘違いしてるんだ、俺のクリスマスはまだ終わってないぜハハハハ…… ムナシイorz



「なんだ輝夜、突然呼び出して……」

雪のしんしんと降り積もるある夜、妹紅は輝夜に呼ばれて永遠亭にやってきた。
……といっても、別に呼ばれなくてもいつも来るのだが。
呼べば来る、呼ばなくても来る、もうお前永遠亭に住めって永遠亭の兎の大半は思っていた。

「聞いてよもこたん、今日はクリスマスというそうじゃないの」
「ああ、名前ぐらいは聞いたことはあるな……正確には、きょうは『イヴ』だったと思うが」

そう、今日は十二月二十四日。
最近、幻想郷にもクリスマスが伝わったらしく、あちこちで恋人たちを中心にお祭り騒ぎとなっている。

「まあ、細かいことはいいじゃない。
 それより聞くところによると、お酒を飲んだり美味しいものを食べたりする日だそうじゃない」
「ほう……でも何でそんな日に呼び出すのが私なんだ?」
「だって……ほら、思い出してみなさいよ永遠亭の面々を」
「ああ……なるほどな」

思い出し、すぐに納得する。
鈴仙にてゐ、この二人は恋仲だ。
永琳も、慧音に気があるらしいし、慧音も悪くは思っていないようだ。
とにかく鈴仙とてゐにしろ、永琳と慧音にしろ、こういう日は二人っきりで過ごしたいはずだ。

「……まあ、本当ならこんなの絶対にお断りなんだが……しかたない、こんな日ぐらいは付き合ってやるか」

そういう妹紅の顔が、明らかに嬉しそうであったことはいまさら述べるまでもあるまい。

それはさておき。輝夜はすでに酒と肴を準備しており、
すぐに二人っきりのクリスマスが始まった。
……まあ、ここは純和風の屋敷、永遠亭であるため、どこをどうとってもクリスマスには見えないのだが。

「じゃ、まずは一杯」
「お、悪いな」

ちょうどいい口実を得た妹紅は、何の気兼ねもなく輝夜と呑んだ。
酒の力もあったのかもしれないが、今日の妹紅は、彼女にしては素直だった。

「さあさあ、どうぞどうぞ」

さて、そんな妹紅に輝夜はどんどんと酒を勧める。
勢いのついた妹紅は、それをどんどん受け入れていった。
蓬莱人でも酒には酔うのか、その勢いは増す一方だった。

「おいおい、何か企んでるんじゃないだろうな?」

あまりにも輝夜が酒を勧めるので、冗談半分で、笑いながら妹紅は言う。

……だが、やっぱり輝夜のこと、何か企んでいるのだった。


「……ねえ、妹紅?」
「んあ、なんだ?」

ある程度酒が進んだところで、輝夜は話を切り出す。
しかしそんなことにもお構い無しに妹紅はぐいぐいと酒を飲んでいた。

「クリスマスって、恋人と過ごす日なんですってね」
「んぐっ!?」

……そして、飲んでいる酒を噴き出しかけた。
何とか気合で飲み込むも、むせてしまう。

「げほっ、げほっ……そ、そういうことは先に言え!」
「あら、何か問題でも?」
「お……大有りだ!」

むせた状態から立ち直らないうちに、声を荒げて反論する。
そんな妹紅の姿に、輝夜は眉をひそめた。

「……まさか、恋人じゃなく嫁?まあ、気が早すぎるわよ妹紅」

もちろん、一連の動作も台詞も、狙ったものなのだ。
これで妹紅のツッコミを促し、そこから好きだと言わせる流れができるという寸法だ。

しかし。

「……だーっ!もう!つっこむのも面倒くさい!」

予測していたよりはるかに早く、妹紅は発狂した。
しまった、少し飲ませすぎたかと輝夜は心の中で舌打ちをする。
そんなことはお構い無しに、妹紅は輝夜の肩をがしっと掴む。

「もう嫁でいい!お前は私の嫁!」

そしてこんなことを言い出す妹紅。
さすがに輝夜もこれは予想外だった。
妹紅から嫁宣言を受けるなど、この先一万年はないと思っていたのに。

困惑する輝夜だが、それにもかまわず妹紅は抱きつく。

「お前も、私の気持ち分かってるんだろ?分かっててあの手この手で言わそうととしてるんだろ!?」

なんだ、自覚あったのねと輝夜は思ったが、舌の根も乾かぬうちの妹紅の叫びにその台詞を言うことなく阻まれた。

「そんなに聞きたきゃ、言ってやるよ!好きだよ!好きになっちまったよ!」

ようやく、輝夜の望んでいた台詞が飛び出した。

しかし、こんな台詞は素面では絶対に聞けないだろう。
なんせ酒に酔っている今でさえ、抱きついて顔が見えないような体勢でないと言えないのだから。
輝夜から表情は見えないが、おそらくただでさえ酒で赤くなった顔がよりいっそう赤くなっていることだろう。

「妹紅…………妹紅?」

へんじがない。
別に屍ではない……というか、なりようがないのだが。

「寝ちゃったのね」

ふぅ、と息を吐いて心を落ち着かせると、母親のような優しい表情で妹紅を見つめる。

「……あっ」

と思いきや、すぐにその表情は後悔のものに変わる。

「……録音機のスイッチ押し忘れてた……」

こんなことなら、多少怪しまれても最初にスイッチを入れておくべきだったと、肩を落とす輝夜。
今回の作戦の最も重要なところだったのに。

しかし、そこは長年気楽に蓬莱人をやっている輝夜。
立ち直りは早かった。

「……まあいいわ。酔っていたとはいえ、あの台詞が聞けただけでも御の字ね」

次は、素面でこの台詞を言わせてやろう、と決意を新たにする輝夜。
そんなことはつゆ知らず、妹紅は輝夜の胸の中でぐっすりと眠っていた。

音もなく、ゆっくりと雪は降り積もっていく。
それはまるで、輝夜の計画の進行を象徴するように。


   ★★★


ここは紅魔館。悪魔の館である。
しかし神に関係する行事のクリスマスも当然のごとく行われる。
もちろん、館の主レミリアが騒ぎたいだけなのだが。

さて、昼間に行われたパーティもすっかり終わり、今日はそれにあわせて夜にみんな眠る。
人間も妖精も吸血鬼も。

しかしまあ、急に昼夜を逆転させようとしても少々無理があったわけで。
パーティ中に少し寝てしまったフランドールは、眠れない夜を過ごしていた。

そんなとき、何か物音が聞こえた。
眠いときなら気のせいで済ませるような小さな音だったが、フランにははっきりと認識できた。
一体誰だろう、と音のした方を見るとそこには、

「……魔理沙?」
「なんだ、起きてたのかフラン。よい子は早く寝ないと駄目だぜ?」

フランの大好きな白黒魔法使いが、いつもと変わらぬ様子で立っていた。
いや、少し違った。いつものように強奪用の風呂敷を担いでいるのかと思ったら、
今日はなぜか白い袋を担いでいた。

「魔理沙こそ、なんで私の部屋に来てるの?」
「何だお前、サンタクロースを知らないのか?」
「サンタ……」

聞き覚えのある名に、フランは過去の記憶をたどる。
そうだ、確かだいぶ昔、絵本で読んだ気がする。
ひげを生やしていて、小太りで……思い出した!

「……えっと、悪い子供の枕元に、臓物とかを置いてくる人だよね?」
「……それはブラックサンタだぜ……」

こいつの姉はいったいどういう教育をしてるんだ……と頭を抱えそうになった魔理沙だが、
ってそういえばフランは495年間閉じ込められてたんだったな、と思い出してやめた。

「確かに私の格好は黒いけどな……そこまで悪趣味なことはしないぜ。
 よい子にはプレゼントをあげて、悪い子はせいぜいさらっていく程度だぜ」
「…………」

フランはその言葉を聞いて、少し考え込む。

おそらく、よい子アピールをしようと考えているのだろう。
長生きな吸血鬼でも、見た目どおりの子供だな、と魔理沙は微笑む。

「……あのね、魔理沙!」
「おう、なんだ?」

上目遣いで魔理沙を見つめるフラン。
それだけで魔理沙はノックアウト寸前だったが、堪えてフランの話に耳を傾ける。

「昨日、お姉さまのクッキーをこっそり食べちゃったの」

しかし、フランの台詞は魔理沙の予想とは大きく違っていた。
魔理沙は少々困惑する。

「それから、パチェの本に落書きしたわ、それから……」
「おいおい、それじゃ悪い子じゃないか」
「うん、私は悪い子なの」

相変わらずフランは嬉しそうに魔理沙を見つめる。
魔理沙は、少しの間訝しげにフランを見下ろしていたが、
しばらくして魔理沙は袋を下ろして、にやり、と笑う。

「……そうだな、そんな悪い子はさらってしまわないとな」

魔理沙はフランをお姫様抱っこで抱えようとする。
フランも、おとなしくそれに従う。
それどころか、自分から身体を寄せていった。

「きゃーさらわれちゃーう!」

棒読み気味に、悲鳴を上げる。
軽く抵抗するふりもしてみる。
「へっへっへ、暴れたって無駄だぜ」と魔理沙もノリノリである。

あとは、魔理沙の家に行くだけだ。

が。

「フラァーーーーン!」

館の主の紅い悪魔が、
大事な大事な妹がさらわれると聞いて飛んできた。

「あんたね!私の妹をさらおうって奴は!パチェの大事な本ももっていっちゃうし、今日という今日はゆるさな……」
「禁忌『レーヴァテイン』!」

おおっと!
レミリアくんふっとばされたーっ!

「!?」
「禁忌『フォーオブアカインド』!」

魔理沙にもレミリアにも何が起こったかが分からないうちに、フランは次のスペルを発動させる。
本体入れて四人の悪魔の妹が、宙に浮いたレミリアを取り囲んだ。

「必殺『分身剣』!」

四人のフランが、それぞれさらに分身し、レミリアに斬りかかる。

9999超のダメージ、×4。
推定ダメージ4万超の破壊力がレミリアに襲い掛かる。

程なくして、断末魔さえあげずに、どさ、とレミリアは墜落した。

そしてフランはあっけに取られる魔理沙の手を取り、自分の服を掴ませる。

「きゃーさらわれちゃーう!」

……これは、魔理沙もさらわざるをえなかった。
すぐにフランをお姫様抱っこして歩き出す。

「ま……待ちなさい……フラ……」

もはや虫の息のレミリアは、それでもなお身体を引きずり、
妹を取り戻すために立ち向かう。

が、しかし。

「……お姉さま……最近、『トゥエルブオブアカインド』ってスペルを開発したんだけど、試す?」

十二人の妹様による予想ダメージ、12万。
『破壊するもの』すら瞬殺するその威力には、さすがのレミリアも口を噤むしかなかった。

「じゃ、行こう?魔理沙!」
「……ああ、そうだな」

絶対に、フランを怒らせてはならない。
そう痛感した魔理沙であった。


   ★★★


「れーいーむー!」

クリスマス本番の朝。
そうかんけいないねとばかりに部屋の中でいつもの朝を過ごしていた霊夢のもとに、やたらに元気な来訪者が。

「あら、チルノじゃない。どうしたのこんな朝に」
「とりっくおあとりーと!」


それは天使がとてとてと通過していくのが見えそうなほどに見事な沈黙だったという。
わざとなのか、マジボケなのか。
チルノの場合後者もありうるため、霊夢は困っていた。


「……ハロウィンは10月よ?」
「…………し、知ってるわよ!わざとよ!ついよ!」

どっちよ、とツッコミを入れて、またいつもの朝に戻ろうとする霊夢。
だが、そうは問屋が卸さない。

「それはともかく、プレゼントちょうだい!」
「……なんでよ」
「だって、今日はクリスマスでしょ?紅白の人がプレゼントをくれる日だって、魔理沙が言ってた」

あの黒白、余計なことを言いやがって。
霊夢はそんな心境であった。

でも当然、プレゼントなど用意していない。
そもそも宗教が違うのだから、霊夢はいつもと同じように過ごそうとしていたのだ。

しかし、目を輝かせ、わくわくと言う擬音が目に見えてしまいそうなほどに期待に胸を膨らますチルノを、
心無く突っぱねることなど、誰ができようか。いや、できない。
他人に関心がないといわれている霊夢とて、それは例外ではなかった。

「……しかたないわね」

霊夢は、チルノの肩を寄せてそっと額に口付けをした。

刹那、時が止まったかのようにチルノから動きが消える。

「・…………な、なな……」
「……これでいいかしら」

チルノは霊夢の攻撃で、完全に うごけない! 状態になっていた。
うつむいて、表情も見えない。
何か言葉を発しようとしているようだが、言葉になっていない。

「……ちょっと、今のはつっこむところよ?」
「!」

そんなチルノに、霊夢は呆れたように言った。

「……そ、そうよ!私はこんなのでごまかされないわよ!」

まったく、可愛いんだから、と霊夢はチルノの頭をかき撫でようと手を伸ばす。
が、その手は手前で止まる。

チルノが顔を赤らめて、もじもじとこちらを見ていたのた。

「……その、もっと、ちゃんと……」

今のチルノの言葉で、霊夢がちゃんと聞き取れたのはこれだけであった。
そこから先は、小さくて聞き取ることができなかった。
だが、チルノの望むことは理解することができた。

霊夢は戸惑っていた。
ほんの冗談のつもりだったのに。

ちゃんとしたキスなど、初めてだ。
いままで、それに値する相手はいなかったから。

じゃあチルノではどうか、と自問自答してみる。
結論から言えば、OKだ。
この純粋でまっすぐな少女に、霊夢はいつの間にか惹かれていたのだ。

そして霊夢は、覚悟を決めた。

「……じゃあ、いくわよ」

チルノは黙ってうなずき、目を瞑る。
それを合図に、ゆっくりと、ゆっくりと顔を近づける。

焦らすつもりはなかったが、どうしても少しづつの接近になってしまっていた。
初めての、唇同士のキスなのだ。
それも、無理のないことであった。

霊夢の身体は、いつにない強張りを見せていた。
いつもの、余裕のある彼女の姿は、そこにはない。
博麗の巫女などという、実質的に幻想郷を牛耳っている立場も、
吸血鬼だろうと蓬莱人だろうと問答無用で捻じ伏せるその圧倒的なまでの強さも、
今は、その姿からは微塵も見て取れない。
そこにいるのは、同性の、氷精を愛しているということを除けば、ごく普通の少女であった。

やがて、焦れたのかチルノが少しだけ片目を開いた。
その様子は大層可愛らしかったのだが、霊夢にはそれを堪能するだけの時間と余裕はなかった。
いよいよ霊夢は覚悟を決めなおして、さらに接近する。

「……ん…………」

ようやく触れた唇から、どちらともなく声を漏らす。
人間と妖精の体温差を、唇から、そして全身から感じ取る。
霊夢にとってはとても冷たい、チルノにとってはとても熱い感触。
しかし、それは決して不快なものではなかった。

初めてのキスに対する戸惑いが、チルノの表情から見て取れる。
しかしそれは一瞬で、やがて恍惚の表情へと変わった。

その一連の動作は、やはり可愛くて。

「……んんっ!?」

チルノの口の中に、予想だにしなかった侵入者。
霊夢の舌が、やや窄めた唇を抉じ開けてチルノの口内を這いだしたのだ。

そうした理由など、なかった。
なぜか、そうしたい衝動に駆られた。
あとはただ、本能に従って動いただけだった。
ただ、チルノをもっと感じたい。
その一心であった。

まるで時の止まったかのような、十秒足らずの時間。
その最中は長く感じられたが、終わってみるとあっという間だった。

二人の唾液が、糸を引く。
体温に差があるだけに、その余韻は長く続いていた。


その余韻が切れるころ、霊夢は我にかえっていた。

求めてきたのが向こうだとはいえ、こんな幼い子に何してるんだろう……と。

さすがの霊夢も、少々反省した。

だが、チルノの目に涙が浮かんでいるのをみると、そこに後悔が加わった。

「……ごめん」

うつむきながら、搾り出すように霊夢は言う。
しかし、二の句をつごうとすると、それをチルノは遮った。

「……ううん、違うの。ちょっとびっくりしただけ……」

そういってチルノは微笑む。
少々ぎこちないものであったが、それは決して不快感から来るものではなかった。

霊夢は何も言わず、ただチルノを優しく抱きしめた。




ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ

♪てれれってれててって
  てれれってれてれって
   てれれてれれて てれれてれれて
    てれれれってれってーてーてーーーーーーーーれーーーーーーーー
(BGM:怪傑ホワイトロックのテーマ ~ Couples shall die! ~)

突如、黒い衣装をまとった黒幕が、天井裏から降りてきた。

「だれが はいっていいといった!」
「わたしよ!そのこからてをひきなさい!」
「れ、レティ!?こんどはなんなの!?」
「レティ……そうね、クリスマスやバレンタインの時期以外はそう呼ばれているわね」

そういうとレティは、マントを翻してポーズを決める。

「……今のわたしは、怪傑ホワイトロック。
 聖夜にいちゃつく不埒な連中に、鉄槌を下す者よ」

そして腰に差した小剣を抜いて再びポーズを決める。

「クリスマスの本来の意味を理解せずに、ただいちゃつく口実に利用しようとは許せない!」
「あ、あうぅ……」
「は!幻想郷にキリスト教徒などいるものかしら。能書きはいいわ、かかってきなさいホワイトロック。
 あなたを血祭りに上げ、あらためてチルノといちゃついてやる!」

戸惑うチルノと対照的に、霊夢はノリノリである。

「笑っていられるのも、ここまでよ。行くわよ、霊夢!」

♪てーてけてーてーてーてー
  てーてけてーてーれーてー
   てーてけてーてーてーてー
    てっってっってっっ!! ………



(BGM:Fight! LAX!)

残念ながら、怪傑ホワイトロックは幻想郷において支持を集めることはできなかった。
しかし、孤独な人々を救うため、
あらたなるヒーローが僕らの前に現れる!

正義は!?

Does justice ever exit?


新番組

Loneliness Alice X

Coming soon


   ★★★


「そういえば、早苗。幻想郷にクリスマスってあるのかしら?」

ちょうどお昼前、もうすぐご飯の支度を始めるころに、
フランクな神、神奈子が早苗に問いかける。

「ええ、あるみたいですよ。最近伝わってきたもののようですが……」

彼女たちは、最近幻想郷へやってきた。
本来は外の世界のものであるクリスマスのことも、当然知っていた。

「まあ、外の世界のものからかなり捻じ曲がって伝わってるようですが……」
「へえ……どんな感じだい?」
「簡単に言えば、恋人たちがいちゃいちゃする日、ですね」
「ってそれじゃ、全然変わらないじゃないの」
「……そうかもしれませんね」

神奈子は豪快に、早苗は控えめに笑う。

「でも、外の世界の人は本来クリスマスって言うのがなんなのか……それはたいてい理解してます」
「……まあ、確かにそうね」
「幻想郷では、最初からそういう行事だという風に伝わってるようなんです」
「ふぅん……それは妙な話ね……」

神奈子は首をひねる。
が、それはそう長い時間ではなかった。

「……ま、それはたいした問題じゃないわね。
 それよりも、郷に入れば郷に従え……わかるわね?」
「ええ、今日は……子供は早く寝ることにしますね」

また二人で笑う。
今度は、しょうぐんさまもワルでいらっしゃる、
なにをいう、きさまもじゅうぶんワルではないかといった雰囲気であったが。


ちゃらりーらりらる「なんだ!このおんがくは!」
「神奈子ー!聞いて聞いて、幻想郷でもクリスマスやってるんだって!」

ケロちゃんが、妙にかっこいい音楽を伴って、
とってもきらきらした笑顔で飛び込んできた。

「だから……ね?」

すわこは うわめづかいでかなこをこうげき!

かなこのりせいは バラバラになった!


「……早苗」
「はい?」
「ごめん、夜まで待てないわ」
「わかりました。じゃあ、ちょっと買出しにでも行ってきますね」
「……あ、あの、神奈子?」
「諏訪子ぉっ!」
「え、いや、そうじゃなくクリスマスプレゼンッ……」


最後の一文字は、何かに遮られて早苗には聞こえなかった。
早苗は、少々呆れ顔で山を下りていく。

さっきの音楽、本当になんだったんだろうなぁとか考えながら。


   ★★★


マヨヒガの夜。
夕食を済ませた紫は、居間でまどろんでいた。

座布団を枕代わりに、ごろーんと畳の上に寝転ぶ。
しばらくぼへーっとしていたが、やがて口を開いた。

「……らーん」

自分の式の名を呼ぶ。
あまり大きな声ではなかったが、距離もそう遠くなく、雑音も少なかったため、それはきちんと藍に届いた。

「どうしました、紫様?」
「どうしたもこうしたも、今日はクリスマスよ?少しはいちゃつきましょうよ」
「……そうはいいますが、まだ洗いものが……」
「そんなの後でいいでしょ、お皿が汚くったって、死にはしないわ」
「はいはい……」

藍は呆れ顔で、紫のもとへ歩み寄る。
しかしそれは決して嫌がっている表情ではなかった。

紫の隣に、すっと腰を降ろす。
それに合わせて紫は起き上がり、藍に体重を預けた。

「……あんまり我侭言わないでくださいよ?まだ家事がいっぱい残ってるんですから」
「だって、藍ってば全然かまってくれないんだもの」
「かまってあげられないほどこき使ってるのは、どこの誰ですか?」
「まあ、誰かしら。許しちゃおけないわ」

呆れた藍は、つっこむ代わりに紫の肩を抱き寄せ、口付けをする。
口を離してその後、余韻の消えぬうちにまた藍は口を開く。

「……そんな白々しいことを言うのは、この口ですか?」
「なかなか、やるようになったわね藍」
「紫様の式ですから」

今度は、紫が藍に口付けをした。
少し深めのキスは、ちょっとだけ糸を引いた。

「……そんな生意気な口をきくのは、この口かしら?」
「それもぜーんぶ、紫様の教育の賜物です」

さらに少し肩を寄せて、二人は暫くキスの余韻を味わう。
二人の間に言葉はなかった。
むしろ、必要なかった。
後はもう、二人で寄り添っていられれば十分だった。

暫くして、紫はつぶやく。

「……そろそろ限界かしらね……」

紫は、だんだんと自分の身体が重くなるのを感じていた。
それは藍にも、確実に伝わっていた。

「……やっぱり、私が冬の行事に参加しようってのも無理があったみたいね……」
「もしかして紫様……そのために起きてらしたんですか?」
「それだけじゃないわ、アレも私がやったことなのよ」
「アレって……このためだけに、ですか?」
「まあね。でも、外の世界にも望んでた人は沢山いたわ」
「かもしれませんね……間違ったものは、いつか正さないといけません」

これで最後とばかりに、二人は深い口付けを交わす。

「……おやすみ、藍」
「……おやすみなさいませ、紫様。来年は、もう少しかまってあげられるよう、努力しますね」
「ええ、期待してるわ」

紫はそのまま、スキマへと消えていった。
それでも、藍はそこから動こうとしなかった。
紫のぬくもりを味わうように。
しかしやがてそれも消えていった。

この寂しさを、藍は毎年味わっている。
もちろん、一向に慣れないのだが。

いつ橙が来るかも分からないのに、泣くようなみっともない真似はすまいと思っていたが、
どうも身体は言うことを聞いてくれない。

別れが辛くなるからと、お互いあまり深くは求めないようにしていた。
でも、やはり別れが近づくと相手のぬくもりを求めてしまう。
空白の期間を耐え抜くために。

雪は、相変わらず知らん顔で降り積もる。
すっかり枯れた木にも、苔のむさない岩にも。
「ねえ、メリー」
「どうしたの?」
「最近、クリスマスがなんか変だと思わない?」
「確かにね……イルミネーションを飾る家も、めっきり減っちゃったし」
「恋人たちも、休日として常識的なぐらいしか歩いてないわ」
「クリスマスそのものがなくなっちゃったわけじゃないみたいだけど、
 なんというか……まるで恋人たちがどうのこうのっていう辺りの習慣がなくなっちゃったみたい」
「そうね……でも、私たちには関係のないことじゃない?」
「……それは、どういう意味で言ってるの?」
「さあてね……じゃ、乾杯、メリー」
「ん、乾杯、蓮子」



つまり、俺にまともなクリスマスがなかったのは紫様の陰謀だったんだよ!

……チクショウorz


そんなわけで、クリスマスもへったくれもないような時期に投下します。
普通にクリスマスがあったとしても間に合うか微妙でしたが……

タイトルの意味、皆さんはどれぐらいのタイミングで気がつきましたか?
……ここ読んでる段階でまだ気がついてもらえてなかったらどうしよう……
そもそも、つっこみどころが結構ありそうな気がする……((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル

それにしても、うちの高校のカリキュラム組んだ奴は悪鬼羅刹だ……orz

1/3追記
>体制
うわ本当だ……ご指摘ありがとうございました。
卯月由羽
http://park.geocities.jp/y0uy0u2003/
簡易評価

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コメント



0.1300簡易評価
4.80三文字削除
うふふ、早くクリスマスでイチャイチャする習慣が幻想入りしますように
イブは野郎三人でバイトでしたねぇ・・・あれ?眼から水が・・・・・・
と、それはいいとして、妹様外道すぎです。
個人的には、紫様と藍様の話が一番良かったです。いいなぁ、こういう主従関係。
5.90名前が無い程度の能力削除
フランちゃん強えぇぇぇぇ!!!!元から十分すぎるほど強いのにw
レミリア頑張れ!いつかフランが姉の大事さを分かってくれる日が来る…のか?
それと霊夢、しょっぱなからソレは流石巫女だw
小ネタがちりばめられすぎで腹筋が痛いんだぜ?w
>Loneliness Alice X この番組名に泣いた。
早苗ちゃんいいなぁ。スッと引くトコがいい。 話はレミリアとフランのバトルが一番良かったです。面白すぎw
9.100創製の魔法使い削除
霊夢さん、やってくれましたねぇ・・・・・・
本当にGJ!!

久々に良いレイチルみたよー。レティも最高!
10.90名前が無い程度の能力削除
どこのクリスマスのよかったです
意味はいろいろですがW
それでも・・・羨ましいな!こんちくしょおお!!

それでかまわず恋人どうしどうのこうのな秘封倶楽部が大好きです
11.80削除
生まれて此の方二十余年、くりすますと呼ばれる日は家族と過ごしております。
今年も例年と何ら変わりなかったので、ゆかりんの陰謀は我が家には届かなかったようですね。

ロンリネスアリスXは注目の番組ですね。ゆけ!僕らのなんとかマスク!みたいなノリで。
アベックどもは皆殺しじゃーい。しっとの心は父心ー。
14.80名前が無い程度の能力削除
どこも熱々なことで……特にもこてる組が最高でした。
>顔が見えないような体制
体勢では?
16.90蝦蟇口咬平削除
魔理沙がどんなプレゼントを・・・と思ったらお持ち帰りーーー!!(爆)お嬢様、お大事に・・・
もこてるにもかなすわにも腹がよじれるかと思いました
17.80nama-hane削除
今回はマリフラが特に好きでした。
わざと悪い子になるなんて本当に悪い子です。(にやにや)
って、アリスがかわいそうなことになってるじゃないですか!?ww
21.90名前が無い程度の能力削除
アスラ様は元気かなぁ・・・
28.100名前が無い程度の能力削除
いいね
29.80名前が無い程度の能力削除
クリスマスは喪に服す日でしょ知ってますょ
44.100名前が無い程度の能力削除
「って夢オチかよ」にしてほしかった