12月24日、夜の博麗神社
「さて、そろそろ寝ようかしら
それにしても、クリスマスイブに寝られるなんていつ以来かしら?」
早く寝ていたらサンタさんが来てくれるかしら、などと考えながら床につく巫女。
夢想の名がつくスペルを使うだけあって、夢見る少女なのかも知れない。
12月25日 子の刻
「おーい、霊夢ー、おきろー」
真夜中に博麗神社の雨戸をたたくのは、普通の魔法使いこと霧雨魔理沙。
こんな夜中に訪れるのは非常識と言うのであって、あくまで彼女は普通である。
「五月蝿いわね……悪い子の所にはサンタさん来ないわよ……?」
「早く起きないとやばいことになるぞー」
>
魔理沙が言うなり神社に地響きが起こる。
「たく、なんなのよ……」
神社が荒れていたら冬の間は魔理沙にたかってやろうなどと考えつつ、表に出る。
そして彼女が見たものは、
「は~い、おじゃまするわ~」
亡霊の姫と、
『反魂蝶 ~一分咲~』
冬なのに何故か咲きかけている西行妖だった。
「これで終わりよっ!」
~夢境~『二重大結界』
死闘の末、何とか西行妖を抑え、息をつく霊夢。
そして一部始終縁側に座って眺めていた二人に詰め寄る。
「お疲れ様、はい、お茶とお煎餅」
「他人のものを勝手に飲み食いするな!」
「で、これはどういうことかしら、くだらない理由だったらただじゃ済まないわよ?」
「クリスマスツリーだぜ」
「そう、じゃ、死になさい」
「ま、待て、話を聞いてくれ!」
「遺言なら聞いてあげるわ」
「まあまあ、落ち着いて」
西行妖にも劣らぬ巫女の殺気をものともせずに言う天衣無縫の幽霊。
もう死んでいるので死ぬのは怖くない。
間もなくして、妖夢が来て高級羊羹を渡すと霊夢の機嫌は直った。
博麗の巫女は食べ物に弱い。
「クリスマスって、本来は25日にやるものだ。
それに、一部じゃプレゼント交換ってイベントもあるらしいぜ」
「うん」
「そこで今年は25日にパーティーを開くことにしたんだ。参加条件は一人一品プレゼントを持ってくること」
「でも、私はプレゼント用意してないわよ?」
「霊夢は会場を提供するってことで何も用意しなくていいぜ」
「でも、これだと何ももらえない人が出るわよ」
「そいつは、はずれという事で我慢してもらう。これはこれでスリルがあっていいだろ?」
「わかったわ。それで、後は誰が来るの?」
「私の知り合いほとんどに声かけといたぜ」
「つまり、いつも通りなのね」
「幽々子様、つまみ食いはやめてくださいって言ってるじゃないですか!」
「ちょっとぐらい、いいじゃな~い」
「幽々子様のちょっとはちょっとじゃありません!」
「もう、よーむのけち~」
「あ^、二人からも何か言ってくださいよ!」
「あんたたち仲がいいわね」
「うらやましいぜ」
頭を抱える妖夢。
尚、白玉楼の主従の周りに花が見えるのは気のせいではなく花の妖怪の仕業である。
「あんたも来たの?」
「ええ、呼ばれたから」
「ああ、呼んだぜ」
「それにしても貧相な桜ね」
「文句は幽々子に言ってよ」
「何よ~、貴方は咲かせられるの?」
「勿論」
「なら満開に咲かせてくれない?私まだ見たことないのよ」
「いいわよ」
「ちょっと、幽香!?」
西行妖に花が咲き、神社に花びらが舞う。
ただし、向日葵の。
幽々子が怒るのも当然である。
「ちょっと、ふざけないでよ!」
「いいじゃない、向日葵の花が咲く桜の木なんて初めてよ」
「馬鹿にしてんの!?」
「まあまあ落ち着いて。向日葵の種、美味しいわよ?」
「あら本当」
黙々と向日葵の種を食べ始める幽々子。
口いっぱいに種をほおばる幽々子を注意しようとした妖夢だが、可愛かったので止めた。
「自分の主を愛でるなんて貴方も大概よねー」
「な、私は別に……!」
「隠しても無駄よ、貴方半身に出るもの」
「っ、貴様!」
~天神剣『三魂七魄』~
「それ、貴方の主よ」
「はっ!?髪型と体系が似ていたから間違った!」
「あらー、いつかやるとは思っていたけど」
「主に手を上げるなんて、最近の若者はキレやすくて困るわね」
「年末で忙しくて気がたってるんじゃないか?」
「なら準備手伝ってあげなさいよ、主催者でしょ」
「私は寒がりなんだ」
吹っ飛んでいく亡霊と顔を青くしている従者。
そして炬燵から動く気配のない三人。
「こんにちはー」
「まりさー、今日は私もパーティーに出るよ!」
次に現れたのは門番と悪魔の妹。
フランドールは日よけのためか、フードつきの紅白のコートを着ている。
フードの頭には白い玉がついており、いわゆるサンタルックである。
残念ながらミニスカートではない。
尚、美鈴は普段着ている服のカラーリングが赤になっている。
「レミリア達はどうしたの?」
「お嬢様方は準備ができた頃に来るそうです」
妖夢を手伝って準備を始める美鈴。
そしてフランドールは魔理沙を引っ張り出そうとしていた。
「ねーまりさーあそぼーよー」
「私は寒がりだって言ってるだろー、中国に頼めよー」
「あら~、宴会の準備してるんだからだめに決まってるじゃな~い」
「うわ、いきなり出て来んな!」
「あんた紫に似てきたわね」
いつの間にか復活した幽々子。
炬燵の上には山と積まれた蜜柑。
吹っ飛ばされたついでに持ってきたようだ
「じゃあ、お前が代わりに遊んでくれるのか?」
「いやよ、下界は寒いもの」
「むー、あそんでくれないのー?」
「大丈夫、妖夢が遊んでくれるって」
「みょん!?私も宴会の準備してるんですよ!?」
「くすん、よーむが私の言うこと聞いてくれないわぁ~」
「主人に手を上げた上に頼みを聞かないなんて、従者失格だな」
「反抗期なのね」
「おねーさん、泣かないで」
泣き崩れる幽々子と冷たい視線を送る人間二人、そして心優しき悪魔の妹。
「はあ、わかりました、やりますよ、やればいいんですね」
「よかったわね、妖夢が遊んでくれるって」
「わーい、ありがとう!」
「すいません、妖夢さん」
「いえ、お気になさらず……」
「それじゃ、いっくよー!」
~禁忌『フォーオブアカインド』~
「おー、気合入ってるな」
「よーむーがんばってー」
「神社荒らしたら片付けてもらうわよ」
「やったー、わたしの勝ちー!」
「もう、妖夢ったらだらしないわね」
「みょーん……」
「うーん、意外と粘ったな」
「じゃ、蜜柑は私のものね」
外と炬燵の上で展開される喜怒哀楽。
一人準備する美鈴がいなければ、これからパーティーが開かれるとは誰も思わないだろう。
「ねー、次はだれが遊んでくれるのー?」
「幽々子が行けよ、従者が半人前なのは主にも責任があるぜ」
「あら、最初に指名された魔理沙が行くべきよ」
「は-やーくー!」
「暴れる前にさっさと行きなさいよ」
「遊んでほしいなら私が相手してあげるわ」
「ほんと?」
炬燵に魂を惹かれた三名の前に現れた救世主は永遠亭の主。
「あら~永琳、丁度よかったわ。妖夢を治してくれない?このままじゃ準備が進まないわ」
「おそらく貴方が原因なんでしょうけどね。どれ、見せてみなさい」
「てゐ、準備の手伝いするわよ」
「ほら、あんたはさっさと荷物運ぶ!」
「くそっ、調子に乗って……」
「だから止めておけと私は言ったんだぞ」
続いて現れた永遠亭のメンバーと健康マニアと半獣。
「ねえ、妹紅も遊ばない?」
「パス、こっちは荷物運びで疲れてるんだ」
「そう、なら負け犬のもこたんはそこで見てなさい」
「なにを!」
「妹紅、だから安っぽい挑発にあっさり乗るなと何度言ったら……」
「ねーねーはやくー」
「ふふ、ごめんなさい。さあ、いくわよ!」
~難題『龍の頸の玉 -五色の弾丸-』~
永遠亭の従者達+慧音が加わったことで準備は急ピッチで進み始めた。
ちなみにフランドールは遊びつかれたのか輝夜の膝枕で寝ている。
妹紅のおかげで縁側でも寒くない。
冬の妹紅はモテモテである。
「パーティーが昨日だったらよかったのにね」
「昨日はお前ん所でやっていただろ」
「だって今日は満月じゃないでしょ?」
「あー、あの慧音は傑作だったな」
「そうそう、角生やして着ぐるみ着て赤鼻つけて。永琳てば笑い死にしてたわね」
「それにしても、くじに細工するなんて悪趣味だな」
「あら、一緒になって嵌めてたのはだれかしら?」
トナカイのボディースーツを着たキモケーネ、実に見てみたいものである。
尚、この会話が聞こえていた慧音は妹紅を鳴かすことを決意した。
「おいーす、準備のほうは順調みたいだねぇっへっへ」
「おー、やっぱり来たか」
現れたのは幻想郷唯一の鬼。
どうやらすでに出来上がっているようで足取りが危なっかしい。
「魔理沙ぁ~」
「うわ、酒臭さ、近寄んな!」
「宴会にこの私を呼ばないとはどういう了見よ~」
「だってお前探しても見つからなかったし。てか酒臭いから近寄るなよ」
「そういえば妖怪の山で忘年会のはしごしてたんだっけ」
そう言ってカンラカンラと笑う萃香。
見かけは幼女だが実におっさん臭い。
おっさん臭いと胡散臭いは響きが似ているが、友人に隙間妖怪がいることと関係あるのだろうか。
「ところで、プレゼントは持ってきたのか?」
「だいじょ~ぶ、今萃めるから」
と、集めたのは、煎餅、大福、高級羊羹、etc...
「何だ、ずいぶんとちゃちだ……な……?」
圧倒的なプレッシャーを感じて振り返った先には、先ほどまで亡霊と蜜柑の皮の汁を飛ばしあっていた巫女。
相手だった亡霊は巫女の姿を見て恐怖におびえている。
「ちゃちだって……?私の茶菓子のことかーー!!」
「お、落ち着け霊夢、萃香、お前のせいだぞ、何とかしろ!」
あわてて萃香のほうを見ると
~疎符『六里霧中』~
「一人で逃げやがったー!」
「萃香は後でじっくりお仕置きするとして、まずはあんたからケヒよ」
博麗神社に魔理沙の悲鳴が響いた。
静まり返った博麗神社。
阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられる中、ある者は必死に準備に没頭し、ある者は蜜柑の皮の粒を数え、
ある者は肩を寄せ合って暖を取っていた。
そして巫女は、ぼろ雑巾を足蹴にして汗を拭い、
「これでクリスマスは気持ちよく迎えられそうだわ」
と晴れやな笑顔でのたまった。
気を失わないように手加減しているあたり、実に非道である。
「あぁ……うぅ……」
ぼろ雑巾がうめくと、突然人影が現れた。
「他人のスペルのみならず、神の台詞までパクろうなんていい度胸ね!」
「カリスマなしのくせに何言ってんのよ」
「うわーん、さなえー、霊夢がいじめるー」
登場するなり巫女の一言で早苗に泣きつくは守矢神社の二柱の片割れ。
精神年齢は同じEXボスのフランドールといい勝負である。
「ほら、飴玉上げますから泣き止んでください」
「わーい」
諏訪子をなだめてため息をつくのは守矢神社の風祝。
その存在が知れて以来、天狗の新聞の幻想郷苦労人ランキングの上位には必ず彼女の名前がある。
因幡薬局の胃薬の世話になるのもそう遠い将来ではないだろう。
彼女達のを見て目頭が熱くなった者は一人ではない。
「貴方が来るなんて珍しいわね」
「神社にいると忘年会に誘われるので……」
「酒が苦手なのも大変ね」
「萃香の角を煎じて飲ませてやりたいぜ」
「あんた絶対に人間じゃないでしょ!?」
「私は普通だぜ」
復活した魔理沙の後ろには、空の薬ビンを笑顔でしまう薬師の姿が。
薬の世話には絶対にならない、早苗がそう決意した瞬間だった。
「で、もう一人の神様はどうしたんだ?」
「さあ、忘年会に出掛けたきり、帰って来られませんので……」
「ま、そのうち来るんじゃない?」
「ですが、追いて行かれたたことをご存知になったら……」
「そんなのあっちが悪いのよ。あ、入って入って。その格好じゃ寒いでしょ」
((お前が言うな))
この場にいたすべての人妖がそう思った。
さっきの魔理沙みたいになりたくないので、口に出す⑨はここにはいない。
「わたしも炬燵に入るー」
「あんたの入るスペースはないわよ、冬眠してなさい」
「さっきから神様に対する暴言の数々、許せないわ、覚悟しなさい」
「上等よ、かかってきなさい!」
庭に躍り出る一人と一柱。
「ねえ、霊夢は何であんなに諏訪子様に冷たいのでしょうか?」
「豊かさに対する妬みじゃない?」
そしていつの間にか現れた人形遣い。
「はっ、神様といってもこの程度かしら?」
「あーうー、こうなったら!」
~土着神『七つの石と七つの木』~
結局、霊夢のハングリーパワー?が勝利を収めた。
早苗に泣きつくケロちゃんの姿に皆が和んだ。
「あら、ずいぶん集まっているわね」
「……そうですね」
「ずいぶんと機嫌が悪いわね」
「こんな格好させられたらだれでも機嫌悪くなりますよ」
現れた紅魔の主従と図書館コンビの姿に、ほとんどの人妖が唖然とし、一部は爆笑した。
レミリアはフランドールとお揃いのサンタルック。
パチュリーが妖精で小悪魔が天使なのも許容範囲だろう。
しかし咲夜はトナカイの着ぐるみだった。
「おいおい、ああいう格好は中国がするもんじゃないのか?」
「わかってないわね、魔理沙。レミィがサンタの格好ならその従者がトナカイなのは当然でしょ」
得意げに解説するパチュリーの後ろで咲夜の笑みに黒い成分が混ざっているのは気のせいではないだろう。
「ところでフランは?先に来ているはずだけど」
「奥でアリスの人形劇見ているわよ」
「鈴蘭畑に、コンパロコンパロコンパロリーン♪」
「そう、私も見てみようかしら。咲夜、貴方も自由にしてていいわよ」
「ありがとうございます」
どうやら巫女よりも妹のほうが重かったようである。
単に人形劇が見たかっただけかもしれないが。
残されたのは主を見送る従者と、冷や汗を流す紫もやし。
そして咲夜の姿が消えた。
「ぐふふ、瀟洒なメイド長の愉快な姿。これで明日のネタは決定です!」
博麗神社の屋根の上でほくそ笑む烏天狗。
だが次の瞬間、カメラは咲夜の手の中にあった。
「な、返してください!」
「返してあげるわよ、フィルムを処分してからね」
「報道の自由を奪うなんて許せません、幻想郷最速の天狗の名において成敗してあげます!」
~岐符『天の八衢』~
「あら、咲夜は?」
「はい、ここに」
「あら、私は着替えていいと言った覚えはないわよ」
咲夜の格好はいつものメイド服に戻っていた。
「申し訳ありません。ですがこのパパラッチを料理した際に汚れてしまったため着替えてまいりました。」
そしてどこからともなく大きな鳥肉を見せる。
人一人ほどもありこれなら幽々子でも満足しそうである。
「すいませーん、文さん見ませんでしたか?」
文を探すのは白狼天狗。
咲夜は鳥肉を見せて一言。
「これよ」
能力を使われた訳でもなく椛の時が止まる。
そして次の瞬間、
「な、いくら文さんの太ももが美味しそうだからって本当に食べるなんて!せっかく私が機を見計らって美味しくいただいた後に美味しくいただくつもりだったのに!その肉は私一人で食べるので寄越しなさい!」
問題発言とともに咲夜に切りかかる椛。
対する咲夜は涼しい顔で待ち受ける。
「ぎゃああああ!!」
完璧な手ごたえとともに椛が見たものは、絶叫と血飛沫をあげる文だった。
「な、文さん!?どうして!?」
「いくらなんでも天狗を食べるわけないでしょ。肉が少なそうだし」
「そ、それより手当てを!この場にお医者様はいませんか!?」
「あらー動脈までざっくりいっちゃってるわねー」
「ど、どうしましょう!?」
「止血したいんだけど、包帯がね」
「持ってないんですか、医者なのに!」
「持ってきたんだけどね、ほら、あれ」
「そーれ、くるくるー」
「あーうー」
「なにやってるんですか!」
「だめよ、子供に罪はないわ」
「お嬢様、お可愛いですわハアハア」
包帯で遊ぶ幼女達と生暖かい目でそれを見る変態。
今日はまだ十六夜で新月ではないはずである。
「どーすんですか!このまま文さんを見殺しにするつまりですか!?」
「大丈夫、冷やせば血は止まるわ」
「わかりました、氷はどこですか?」
「神社にあるわけないじゃない」
「そうだ、雪で冷やせば」
「パーティー会場が寒くならないよう、半径10km以内の雪はすべて吹き飛ばしたぜ」
「なんか変だと思ったらそれだったのね」
「ど、どうしましょう!?」
「冷やせばいいの?」
「できるんですか!?」
「あたいにまかせなさい!」
~雪符『ダイアモンドブリザード』~
「貴方すごいわね。妖夢、あなたはどう思う?」
「見事な腕前です、私もあの域にまで達するにはまだまだ修練が足りません」
「よかったわね、妖夢のお墨付きよ」
「は、はあ……」
結局文は永琳の薬で持ち直した。
咲夜が持っていた肉は無謀にも咲夜に襲い掛かった妖怪のものだった。
チルノは一斉攻撃を食らって伸びている。
「で、お前たちも参加するつもりか?」
「もちろん、ちゃんとプレゼントも持ってきたよ」
それぞれ持ってきたものを見せるバカルテットと保護者。
「あら、私がプレゼントとかやらないの?」
「食われてたまるもんか!」
「貴方は何を持ってきたのかしら?」
「ひ、秘密だよ」
「これ、肉?」
「そーなのだー」
「大きな結晶ね」
「食べ物ばかりじゃつまらないでしょ」
「あら、いい香り」
「えへへ、私が作ったハーブです」
「チルノは何を持ってきたんだ?まさかそこの凍った河童じゃないだろうな」
「これはここに来る途中、川に流れていたから拾ってきただけよ、あたいのはこれ!」
チルノが取り出した物は凍った果物。
「凍らしとけばいつでも食べられるのよ、あたいってば天才ね!」
これが、幻想郷における冷凍保存の始まりである、ってけーねが言ってた。
「で、こいつどうする?」
「溶かせばいいでしょ、妹紅、お願い」
「ああ、わかった」
適度な火力でにとりを溶かす妹紅。
⑨とは違って力の使い方を知っている。
「あー、助かった。川の水を飲もうと思っていたら足滑らしてさ」
「あんたアホでしょ」
「そういや、萃香はいる?こっちの宴会に来るっていってたけど」
「あそこにいるぜ」
魔理沙の指差した先には早苗に絡む萃香の姿が。
「やめてください!まだパーティーは始まってないんですよ!」
「別にいーじゃん、私の酒が飲めないっての?」
「……萃香のお仕置きはまだだったケヒね」
霊夢が殺気を高めつつ立ち上がると天から光が降り注いだ。
~審判『十王裁判』~
「――嫌がる人に無理やり飲ますとは何を考えているのですか貴方はましてや早苗さんはお酒が苦手なのですからもっと気を使ってあげるべきですただでさえ飲ん兵衛の多い幻想郷の宴会の中で下戸の彼女がどういう気持ちでいたか考えたことがありますか貴方は考えたこともないでしょうね話を聞くときは相手の目を見なさいそもそもあなたは少し酒癖が悪すぎる――」
説教が始まってもう半刻がたっただろうか。
正座で息をつかずに延々と説教をする閻魔姿は地獄の獄卒も裸足で逃げ出すに違いない。
萃香が助けを求めようにも誰も目を合わしてくれず、すぐさま映姫に注意され説教が長引く悪循環である。
早苗は死神に声をかけられるとその胸に飛び込んで泣き出した。
おそらくは加奈子に似た安心感があったのだろう、主に胸の辺りに。
「誰だい、うちの早苗を泣かしたのは」
背中によって目を回した雛を背負い、両手に秋姉妹をぶら下げて現れたのは守屋のもう一柱。
三人も抱えてくるとはガンキャノンは伊達じゃない。
「あなたが自分の巫女のピンチにもかかわらず酒をかっくらっていた神様ね」
「ほう、吸血鬼風情がよく言うわ」
いきなりけんかを始めるレミリアと神奈子。
神と悪魔、熟女と幼女はやはり相容れないものなのか。
「幻想郷からも逃げ出すがいい、信仰を失った神よ!」
「神の力を思い知るがいい、西洋の物の怪!」
高まる力、吹き出す風。
「まずいわ、このまま二人が激突したら、神社が壊れ、料理がそこらじゅうに飛び散るわ!」
「何ですって!?咲夜、早苗、止めなさいよ!」
「お嬢様のカリスマを見せ付けるいい機会ですわ」
「元からないだろ」
「早苗!」
「しっ、起こしちゃかわいそうだよ」
「張っていた糸が切れたんだな、きっと」
「ああもう、誰か止められるやつはいないの!?」
「ゆかりんにお任せ♪」
「紫!」
「呼ばれて飛び出てぇ……」
~式神『八雲藍+』~
藍がレミリアと神奈子の攻撃を一身に受け、神社はその落ち着きを取り戻した。
「あんなこと言って悪かったわね、謝るわ」
「いや、貴方がが言うことももっともです。肝心なときに私は早苗を助けてあげられなかった」
「幻想郷へようこそ、八坂の神様」
「末永い友好を、紅魔の主」
争っていた二人の溝も埋まった。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
プリズムリバー三姉妹がレクイエムを奏でる。
「藍さん、しっかりしてください!」
「妖夢……冥界に行った後もよろしくな……」
「藍さま、死んじゃやだ!」
「橙、泣かないでおくれ……最後にお前の顔が見れないのが残念だ……」
「藍さま……もう、目が……」
「橙……お前の主で、本当に……」
「せっかくのパーティーを湿っぽくしてどうすんのよ」
「ひでぶ!?」
容赦なく式の頭を蹴飛ばす隙間妖怪。
BGMも軽い曲に変わっている。
「何するんですか!橙との感動のシーンだったのに!」
「こんなアホなことしていると橙の教育によくないわ」
「貴方はいつもそうだ!いつも私と橙の間に入って来る!」
「当然よ、橙は私の式の式である以前に、私の家族なんだから」
にらみ合う式とその主。
湿っぽさはなくなったが場は重くなった。
「大変だ、紫がまともなことを言い出したぜ!」
「しっかりしなさい、紫!」
そうでもなかった。
「家族?そうでしょうね、貴方にとって橙は孫のようなものでしょうから」
「あら、そんな口利いてどうなるかわかってるのかしら?」
「私は今日こそ貴方を越える!食らえ、愛と、怒りと、悲しみの!」
~式神『十二神将の宴』~
「馬鹿ねぇ、私に勝てるわけないじゃない」
「つい、カッとなってやりました。今では反省しています」
結果はいうまでもないだろう。
隙間から血達磨となって吐き出されれた藍だが、永琳と鈴仙の治療のおかげで何もなかったのように元気である。
「余計な時間食っちゃったわね、さっさと始めましょう」
「よし、霊夢、音頭を頼むぜ」
「それじゃあ皆、いいかしら?」
『メリークリスマス!』
そして、この宴は忘年会、新年会と変化し、6日になってようやく終わった。
『時刻』→『地獄』ではないかと。
なんということだ。おお、なんということだ
チルノの大発見(大発明?)に驚いた
さすが最強