Coolier - 新生・東方創想話

博麗霊夢のペーソス 前編

2007/12/22 08:11:39
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 秋もうららかな幻想郷。
 幻想郷と顕界を隔てる博麗大結界の外れに博麗神社がある。
 その縁側で、独創的な巫女服を纏った黒髪の少女がのんびりとお茶をすすっていた。
 楽園の素敵な巫女、博麗霊夢である。

「何事もないっていいわね」

 何事があったらいいのか、というふうにも聞こえる呟きだが霊夢自身は本心から言っているわけではない。
 ただ、何事もないから自分はのんびりできると口にしただけだ。
 けれど、何事もないということはやることもないから少しだけ寂しい。

 茶を切らせば香霖堂へ。異変が起きたら解決へ。それ以外はやることがないから霊夢はほとんど神社に常駐している。
 他に行かないのは霊夢自身、理解している。他のところへ目的なく行くことは、それ自体が加担であると。
 だから正当な目的や理由がなければ神社から動くことはない。それが時々、寂しいと思ってしまう。
 しかし、自分に哀愁など似合わないし、するべきではないとその思考を破棄した。

 それにしても茶の味が薄い。薄いと言っても、普段から茶ばかりすすっている彼女からすれば薄く、他人には水にしか思えないほど薄いが。
 ふと、木の葉が舞い落ちるのと同時に霊夢の頭に針が肌に触れた程度の感覚が走る。

「……そろそろ来る頃かしら」

 湯呑みを傾けながら思案顔で空を見上げると彼女の視界に黒い点が入ってきた。
 黒い点はちょうど神社の境内上空で停止すると、だんだんと高度を下げてきた。
 近づくにつれて、それは樫の箒に乗った人で、黒のエプロンドレスに魔女帽を被った少女であることが判明する。

「よう、霊夢。茶をいただきに来てやったぜ」
「およびでないわ」

 普通の魔法使い、霧雨魔理沙は箒から降りると遠慮する様子もなく、ずかずかと縁側にやってきた。
 そして霊夢の横に座ると適当に箒を立てかけて、盆にのせてあった茶菓子をひったくった。
 その間に霊夢は空いている湯呑みに茶を注ぎ、魔理沙に渡す。

「お、サンキュー。なんだかんだ言って、ちゃんと茶を出してくれるあたり律儀だな、霊夢は」
「甲斐甲斐しいと言ってほしいわ」
「お前が健気? そいつはウソだぜ」

 と、笑って魔理沙はさっそくと茶を飲む。
 魔理沙との付き合いは長い。
 それなりに良い間柄であると霊夢自身も思っているし、特に人間というカテゴリーでは魔理沙は一番親しい相手だ。

「あら、宴会をするたびに境内の掃除に勤しんでいるのは誰かしら」
「私には猫の額ほども関係ないぜ」
「ずいぶんと大きい猫だこと。きっと魔理沙に似たのね」
「そいつはおそらくウチの猫じゃないな。きっと、黒いヤツのことだ」

 あえて人間と称したのは、幻想郷に住まうのは人間ばかりではないからだ。
 顕界、つまり外の世界より忘れられた妖怪など実に多くの生物が絶妙なバランスのうえで共存し、生活が成り立っている。
 もちろん生きる幻想である妖怪に人間が立ち向かえるはずもない。その例外、特別な資質を持ったものが博麗の巫女、博麗霊夢その人である。
 博麗は常に妖怪と人間の狭間に位置する、いわば中立の存在。
 ゆえに妖怪によって引き起こされる災害“異変”や、妖怪の暴動などには霊夢が駆けつけて原因を究明、解決する。

「それは奇遇ね。ちょうど目の前に黒いのがいるわ」
「残念だが、猫度が足りてないぜ」

 これまでにも数々の異変を解決した霊夢。ところが不思議と彼女を慕う妖怪が多く、神社では彼女たちを交えた騒がしい宴会も開かれる。
 それゆえ、人里に住まう者たちは本来敬うべき博麗神社を敬遠しがちになり、霊夢はスズメの涙ほども入っていない賽銭不足にも苛まれている。
 そんななかで、霧雨魔理沙という人間の存在は霊夢にとって神社にやってくる妖怪と等しくも、ふと思い浮かべる程度には特別だった。

「ところで霊夢、聞かなくても分かっているんだが今日も暇だよな?」
「忙しいわ、暇すぎて」
「そうか、じゃあ手伝ってくれるんだな。助かるぜ」
「こらこら、勝手に話を飛躍させるんじゃないの」
「霊夢が遅すぎるんだ。私はいつでも普通だぜ」

 目的も言わずに突拍子なのも、また魔理沙の味。
 いつものことなので特に気にすることなく、霊夢は茶菓子をついばむ。
 と、正面の空から飛来してくる人影。また妖怪か何かが来た、と霊夢はため息とともにうな垂れる。
 まともに鳥居をくぐってこなかった連中は大抵が妖怪か、もしくは特殊な人間のどちらかである。

「魔理沙ー」

 やってくる人影も、やはり見知った人間だった。いや、彼女の場合は妖怪に近い人間か。

「おいでなすったぜ」
「どうせまた、あんたが置いていったんでしょうが」

 魔理沙が手伝わせたい用件はやってくる少女に関連するらしいが、それにしても無視して神社へ来るとは速度加減を知らないのか。
 かんらかんらと笑う魔理沙とは対照的に、霊夢はやれやれとやや呆れながら茶をすすって待つ。

 そうして境内に降り立った人影は優雅に、そして肩で息をすることもなくふぅと嘆息する。白のブラウスに青い薄手のワンピースの少女、七色の人形遣いアリス・マーガトロイドはわずかに乱れた髪を手で直しながら二人に歩み寄る。

「やっと追いついた。まったく、もうすこし落ち着いて飛べないのかしら」
「落ち着いていたら日が暮れるぜ」
「これだからせっかちな田舎者は余裕がなくて困る」

 腰に手を当てて挑発的な笑みを浮かべるアリス。さながら、落ち着きのない妹を諌める姉といった感じがあり、冷たい大人びた印象が映える。
 アリスと魔理沙は同じ魔法の森の住人でお隣さん。趣味もよく似ていることから交流もある二人の会話には親しみを感じる。

「あー? 私ほど余裕に満ち溢れているヤツはいないぜ。アリスこそ遅すぎて余裕がなかったぜ。時間は光速だから私ぐらい早くないと置いていかれる」
「あんたは人間だから光速、私は魔法使いだからこれが普通なの。それに今の私は霊夢に用事があるので、余裕な魔理沙の相手をしている暇はないのでした」
「ひどいぜ……」

 遠まわしに、茶を飲んでいる暇人に付き合っていられないわ、と言ったアリスによって撃沈される魔理沙。それを見てアリスは小気味よく笑った。
 やはり、二人は仲がいい。

 自分と魔理沙の関係に比べると、まったく別の次元だとアリスと魔理沙のやりとりも見ながら思う。
 結局、そこでいつもと同じ結論に至るのだ。幻想郷に生きるすべてが立場の自由を与えられているのに、自分だけが中立だからこんな風に思うだけ、と。

 博麗は人間に加担してはならない。
 博麗は妖怪と親密になってはならない。

 一定以上の線を越えられない。それが博麗霊夢としての役目であり、絶対不変の足場。崩せば必ず一方に引っ張られ、もう一方と敵対する。だから「一」に固執してはならない。どちらの地に着くこともなく浮いていること、「零」であること。そして霊夢は中立になる。

 なればこそ、霊夢は二人の会話に割り込むことなく遠い目で眺めながら茶をすする。

「で、霊夢はこれからどうするのか説明されたかしら」
「ん? ああ、手伝いをするんでしょ、あんたの」
「ええ、手伝いをしてもらうのよ…………って、魔理沙ぁ?」
「了承はもらったぜ」
「手伝うなんて言った覚えはない」

 なんだか勝手に話が進められているが、大筋はアリスの手伝いで合っているらしい。
 こちらの回答が気に食わないのか、それとも魔理沙の大雑把さに呆れたのか両方ともとれる表情でアリスは軽く肩をすくめた。

「はあ。とりあえず内容を掻い摘むとね、今日は神社で宴会があるでしょう?」
「あるわね」
「それで魔理沙と二人でちょっとした準備をしたいのだけど、その間に霊夢には神社から離れていてもらいたいのよ」
「何よ、場所を貸すのに持ち主は見ちゃいけないっていうの?」

 持ち主というと多少語弊があるが、間違ってはいない。神社は霊夢の家なのだから準備とやらについて見る権利がある。
 知らない間に物を盗られたりしないか。魔理沙がそこにいるなら尚更。

「霊夢が見ないのも準備のうち」
「紫とか萃香はどうするのよ」
「大丈夫だろ。あいつら、面白いことを簡単に言いふらすような連中じゃないしな」

 いいのか。

「というわけで行ってらっしゃい」
「面倒だからパス」

 パリッと煎餅がいい音をたてて割れる。
 やっぱりな、と魔理沙が霊夢を見もしないで茶をすする。彼女のことだ、説明しなかったのはきっと断ると分かっていたから。
 一方、断られたアリスは仕方ないなあ、と眉をひそめて。

「紅魔館に行ったら咲夜に最高級の玉露を出してもらえるかも」

 彼女は金色の髪を指で弄びながらぼそっと小さく呟いた。
 玉露、それも最高級の? 霊夢のなかで天秤が惰眠から玉露へと傾く。

「永遠亭に行ったら兎から和菓子がもらえるよな、きっと」

 今度は魔理沙がアリスに呼応するように彼女に問う。
 和菓子。それもまた魅力な響き。玉露側に饅頭が落ちてきて、さらに天秤は傾く。

「そうね。いい事ずくめね」
「……そんなんで追い出されはしないわ。だいたい、連中が快く迎えてくれるかどうかさえ怪しいっていうのに」
「強情だぜ」
「褒めても出て行かないけど」

 弾幕ごっこに発展したらさらに面倒。そう考えたら天秤が惰眠へと一気に傾いた。
 うん、やっぱり寝るのが一番だ。彼女たちの準備とやらはほどほどに見守ることにして、睡魔を迎え入れよう。

「あ、小銭が」

 わざとらしい声をあげてアリスが賽銭箱に近寄る。その手には、数枚の銭が握られており。
 ちゃり、ちゃりん。
 アリスの小銭が賽銭箱に吸い込まれていったのと同時に、心の天秤が破壊される程度の勢いで傾いた。

「あら、呼ばれているわ。ちょっと行ってくるから留守をよろしく頼むわね」

 ふわり、縁側に座ったまま浮いてそのまま飛翔。

「……現金なやつだ」

 魔理沙が何かを言っていたがすでに神社から離れている身には届かない。
 思えば、目的地のない放浪は今回が初めて。そのまま適当な場所でも回っていこうと、のんびりと霊夢は飛んでいくことにした。





 ――――――――――――――――――act.1 





 人里を越えて森を抜けた霊夢を迎えたのは霧に覆われた湖だった。
 霧、といっても以前の紅霧事件とは違って無害なただの細かな水滴である。

「面倒な霧ねえ。おかげでほとんど見えやしない」

 それでも目的地へとしっかり進んでいるあたりは流石で、寸分の狂いもなく紅魔館へと向かっていた。

「ちょっと、そこの紅白!!」

 そろそろ門が見えてきたところで目の前に若草色をした大陸風の衣装に赤毛の少女、紅美鈴がやってきた。
 だが、残念。霊夢は彼女の名前を覚えていなかった。

「お嬢様に何の用!?」
「用がないと来たらいけないのか?」
「困るの! 主に私が咲夜さんに怒られる!!」

 さいですか、と霊夢は適当に聞き流して札を取り出す。

「まあ、私にとっちゃアンタがこのあとどうなろうが知ったところではないのよ。そういうわけで退いてくれるなら手加減するけど」
「うう……、朝のことといいアンタといい、どうして人間ってやつは身勝手なのヨ……っ!?」

 憤慨している門番、もとい美鈴だったが突如その動きが止まる。
 何事かと見ていたがよく観察すると彼女の被っている若草色の帽子に柄の短いナイフが二本ほど刺さっていた。

「人間って、それはもちろん私のことも含まれているのよね、中国?」

 可哀想に。美鈴はあまりの恐怖に振り向けないで涙目になりながら震えている。
 考えれば分かるだろうに。人間、といったら彼女もそのなかに入ることを。

「さ、さささ咲夜さん!!? ちっ、違います、今のはほんの冗談で決して咲夜さんは人間じゃないや、とかそういう意味合いで言ったつもりではアッ――――!!!!」

 あわてて弁解しようと振り向いた美鈴だったが、文字通り時すでに遅し。
 全方位に多数のナイフが一瞬で現れ、門番は成す術もなく地上へと落下していった。
 助けなくても大丈夫だろう。妖怪だし、と霊夢はのほほんとしながら美鈴が弁解していた相手を見ながら苦笑した。

「自分から門番を使い物にならなくしてもいいの?」
「このくらいで廃棄処分になるようなら初めから門番など勤めさせていませんわ」

 典型的なメイド服を着た銀髪の少女は身のこなしと身嗜み、どちらも完全にして瀟洒。銀の刃のごとき鋭く細められた青い眼がきらりと光る。
 彼女、十六夜咲夜はくすくすと笑いながらスカートの裾を摘んで会釈してみせた。

「ずいぶんと塀の高いこと。それで、私は歓迎してもらえるのかしら」
「まさか。……と、言いたいところだけど魔理沙から話は聞いているわ。神社で宴会の準備をするから追い出されたのでしょう?」
「そうなのよ。なんだ、話が通っているなら最初から素直に言えばいいのに魔理沙ったら」

 おかげで無駄な戦闘を避けることができたのだが、もはやそんなことはどうでもよくなりつつあった。

「素直じゃない普通の傍若無人に何を言っても無駄ですわ」
「まるで同類を知っているような口ぶりね」
「さあ、どうかしら」

 二人は笑いあう。案外、こちらのほうが似たもの同士だ、と地上で痙攣している門番が呟いたが誰も聞いていない。
 霊夢と咲夜。立場や性格が違っても二人はまるで十年来の親友に見えた。

「それじゃあさっそく、ご好意に甘えて最高級の玉露を頂こうかしら」
「あら、そんなことまで約束した覚えはありませんわ。お得意の空耳ではなくて?」
「魔理沙がアンタから聞いたんだからアンタが約束したのも当然じゃない」
「そんな法則はメンガーのスポンジよりも穴だらけで成り立たない」

 咲夜がナイフを片手に三本携えている。おそらく、普通の茶で我慢しないなら出て行ってもらうという意思表示。
 しかし霊夢とて簡単に諦めはしない。最高級の玉露と聞いてやってきたのだから、普通の茶では道中の労い賃にもならない。

「……というのは冗談で」
「冗談なの?」
「こんなに心地よいお天道様のしたでは麗しいお嬢様も眠るから、束の間の戯れに興じたかったのだわ」
「つまり門番でストレス発散ね。あのお嬢様に仕えていたらストレスが溜まるわ」

 紅魔館であのお嬢様といえばレミリア・スカーレットしかいない。曰く、ブラド・ツェペシュの末裔で小食な運命の吸血鬼。
 風の噂で絶賛カリスマ低下中とのことだが、あの幼女然りとした姿を見ればカリスマなど感じようもない。
 加えて、ワガママで傍若無人。そのうちいつか部下に見限られるだろう。

「ま、アンタのことなんてどうでもいいのよ。さっさと茶さえ出してくれれば」
「焦ったら玉露もただの絞り汁。黙って騙されれば最高級に早変わり」
「アンタなら騙さなくてもすぐに作れるでしょうに」
「せっかちは損よ」
「多少せっかちじゃないと茶が冷めるの」
「ごもっとも。それはともかく寒いでしょう、中へどうぞ」

 手で促し、紅魔館のなかへと飛んで行く咲夜のあとを追って霊夢も飛ぶ。
 名のとおり赤い壁が映えるのだが目に優しくない。しかし吸血鬼の館らしく太陽の光が大量に差し込んでこないだけ幾分はマシだった。

 やがて客間らしき場所に通された。さっそく霊夢が適当な椅子に座ると、いつの間にか盆に湯呑みと茶瓶をのせた咲夜が傍に立っていた。

「はい、どうぞ」
「ありがと」

 差し出された湯呑みを受け取り、茶を注いでもらうと一口。さらにもう一往復してからほぅと息をもらす。
 そんな彼女を、相席に座った咲夜が自分の湯呑みにも茶を注ぎながらじっと見ていた。

「何よ、人の顔をジロジロ見て」
「本当に茶をおいしそうに飲むのね。見ていて面白いわ」
「実際においしいんだもの、仕方ないじゃない。……あん? そういえばココって紅茶が主流よね。この湯呑み誰の?」
「私のよ」

 思わず霊夢は咳き込んだ。俗に言う間接キッスなのだが、そんな場合ではなくて。

「ちょっ……自分のものだと分かってて差し出したの!?」
「そのかわり私は美鈴のものに口づけるわけで。……はい、完了。これで共犯ね」
「アンタはいいかもしれないけど私は最悪よ! 本人の目の前でやっちゃったじゃない!!」

 猛抗議する霊夢だったが咲夜はそ知らぬ顔をしたまま音もなく茶を堪能している。

「そうは言うけど、霊夢はいちいちどの湯呑みに口づけたかなんて覚えているのかしら」
「私はちゃんと客用の湯呑みと自分の湯呑みを分けているわよ!!」
「残念。私が霊夢のファースト(間接)キスを奪ったなんて知れたらお嬢様がお怒りになるわ」
「夢想封印してもイイデスカ?」
「冗談よ。こんなことぐらいで動揺するなんて本当、可愛いわねえ」

 からかわれたと知った途端、急激に顔の温度が上がっていくのを感じた霊夢はさっと顔を逸らす。なんというか、負けた気がするだけではなく弄ばれたのが悔しくて何もなかったかのように茶を飲んだ。

 可愛い、というのは不本意ではあったが咲夜からすれば自分はきっと幼く見えるのだろう。少しずつ冷静になりながら霊夢は考える。
 十六夜咲夜という人間は可愛いという表現はあてはまらないかわりに、綺麗と大人っぽい表現が似合うのは誰の眼から見ても間違いない。容姿、姿勢ともに隙がない。咲夜から見れば霊夢などまだまだ少女で可愛く映ってしまうのだろう。

「よかった」
「へ?」

 唐突な呟きに考えごとをしていた霊夢には聞こえなくて、思わず間抜けな声を出してしまう。
 構わず、咲夜は肩肘を突きながら霊夢の顔を見つめてくる。吸い込まれてしまいそうなほど深い青の瞳に思わずドキッとしてしまう。

「あなた、さっきよりも自然な感じがするわ。ちょうど肩に力が入ってなくて、年相応らしくなった」
「……褒めているのかしら」
「どちらでも。けど、私は今の霊夢のほうが好きよ。博麗霊夢じゃない、自然体の霊夢が」

 自然体、と言われても日頃から自然体に振舞っているのだから今さらどうしろというのか、と恨みがましい目で咲夜を非難する。

「そうね、自然体にしようとしているあなたそのものがすでに博麗霊夢なのよ」
「心を読まないの」
「だったら分かりやすい顔をしないこと。顔に書いてあったわよ、何をどうすればいいんだって」

 再び咲夜に笑われて、霊夢は気恥ずかしい思いでまた彼女から目を逸らす。

「霊夢、日常にまで線引きをするのは止めたら? 異変のとき、弾幕ごっこのとき、小競り合いのとき、臨機応変に自分を使いわけるの」
「ほっといてよ。そもそもアンタには関係ないことよ、咲夜」

 突き放すように鋭く言い放つと霊夢は勢いよく席を立つ。まだ茶も残っている。彼女自身ももったいないと思いつつも、このまま咲夜と一緒にいるよりはいいと思っていた。
 余計な詮索などいらない。いつでも自分は博麗霊夢で、他人に余計なことまで踏み込まれるのは嫌だから。
 そうして逃げるように客間を去ろうとする霊夢を、咲夜はまったく見向きもしないで声だけで引き止める。

「そうでしょうね、ええ、きっとそう。自分でも余計なお節介だと思っているわ。そもそも私が他人のことに口出しする権利なんてない」
「だったら私の生き方に口を挟まないでよ」
「わかったわ、霊夢。でも――――――」

 一瞬の間。それは彼女お得意の時間操作のようなわずかな間。

「“寂しい”と思っているのは、あなただけかしら」
「…………」

 咲夜が言い終えるのと同時に霊夢の足音が聞こえ、だんだんと遠ざかっていく。

「……本当に、あなただけじゃないのよ」

 残された咲夜は特に何をすることもなく優雅に一人、茶の薫りと味を堪能する。
 さきほど霊夢に言ったすべてはからかったわけではない。彼女の本心からの感想でもあり、願いそのもの。
 普段から人付き合いらしい付き合いをしない霊夢という少女への呼びかけは、果たして彼女に届いたのか。

 霊夢が変わるのか。それはきっと今夜の宴会で明らかになる。そのために魔理沙の口車に乗ってやり、わざわざ最高級の玉露を用意したのだから。
 仕事だって一時間ほどの余裕をもたせられる程度に片付けて、霊夢が来るのを今か今かと待ち構えていたのだ。
 すべては、たったひとりの少女のために用意した時間。

「どうだった?」

 客間に響く幼い声は相反して威厳に満ちていた。

「ああ、そのままでいいわよ。せっかくの休憩を無駄にさせたのでは主として失格だ」

 立ち上がろうとするのを声で制され、咲夜は浮きかけた腰を再び下ろす。
 そうして入ってきた声の主は、先刻まで霊夢の座っていた椅子に腰掛ける。
 ピンクのドレスに身を包んでいる永遠に赤い幼き月、紅魔の主、レミリア・スカーレットは微笑を浮かべながら咲夜を見据えた。

「霊夢の様子は?」
「予想通り、ふられてしまいましたわ」
「そう。けどそんなに落ち込むこともないわよ。どうやら、“賭け”は咲夜の勝ちみたいだし」

 表情こそ明るかったが、声だけは不満で一杯の主に瀟洒な従者は笑みを噛み殺して茶を啜る。
 賭け。そう、賭けだ。
 咲夜は主とある賭けをしていた。そのためにレミリアは表に出てこず、従者と霊夢の団欒を許した。

「それにしても意外だったよ。咲夜があそこまで霊夢に甘いなんて」
「恥ずかしいですわ」

 甘い、だろうか。霊夢に言ったことを思い浮かべながら、ぼんやりと咲夜は湯呑みへと視線を落とす。

「ああ、でも妹みたいだとは思っていますけれど」
「けれど?」
「きっと無理ですわ。そのまえに霊夢のほうがそうは思ってくれないでしょう。霊夢は我慢が上手で、私に似て甘えるのが下手ですから」
「なんだ、そんなことか。まったくらしくないな」

 ふん、と腕を組んで呆れながら苦笑するレミリアが途端に大人びた。
 ただし彼女の手が、落ち着きなく霊夢の飲んでいた湯呑みをなぞったり遊んでいたりしていなければ。

「思う、思わないという問題ではないよ。要は当人たちの身勝手だ。霊夢が甘えるもよし、咲夜が甘やかすもよし」
「でしたら私の気遣いが、もれなくお嬢様から霊夢へとすべて流れていきます。加えて、お嬢様の恋敵として立候補させていただきます」
「は? ちょっと! そこまですることないじゃない!! 何よ、咲夜、あなた最近反抗期でも迎え、た……ッ!!??」

 慌てて椅子から立ち上がるレミリア。しかしその際、テーブルの角に足をぶつけて悶絶する。涙目で床を転がる主、なんとも情けない。まさしくへたレミリアここにあり。

「お嬢様」
「……なによ」

 痛みを堪えながら立ち上がるが、すでに威厳は消えた。それはもう綺麗さっぱり。
 それはともかく姉とか恋敵とか言うまえに主にお伝えねばなるまい。咲夜は恭しく立ち上がると、ニィとわざとらしい挑発的な笑顔で主の前に立ち。

「霊夢のファースト(間接)キス、奪わせていただきました。それはもう瑞々しい新春のイチゴの味がしましたわ」
「こんの腐れメイドがあぁぁッッッ!!!!! そこに直れッ、今すぐ八つ裂きにしたらあぁぁぁッッッ!!!!!!!」

 その日、紅魔館の歴史のなかでも最凶と言わしめた弾幕ごっこが繰り広げられたのはまた別の話。





 ―――――――――――――――――――act.2





「……咲夜がいじめた」
「って、なんでそれを私に言うのよ。あとウソ泣きしないの」

 人里の近く、竹林のなかを飛ぶ二つの影。
 ひとつはさっきまで紅魔館で茶を頂いていた霊夢で、もうひとりはしなびた感じの兎耳の少女、鈴仙・優曇華院・イナバ。
 紅魔館を飛び立った霊夢が永遠亭を探して飛んでいると、偶然にも鈴仙と出くわしたので案内を頼んでいたのだった。

「鈴仙、可愛いわ。ペットにしたいくらい」
「いきなり何ソレーっ!!?」
「私だけいじめられるのは公平じゃないでしょ」
「だからって無関係な私をいじめ………あれ? もしかして私、いじめられてる?」

 自分でいじめられていると思うあたり、日頃からいじめられているのが窺えた。
 鈴仙、哀れ。
 されども霊夢の気が晴れたわけではない。今でも咲夜の言葉が耳から離れなくて、ずっと彼女の心の奥はモヤモヤしていた。

『寂しいと思っているのは、あなただけかしら』。
 誰が、いつ、寂しいとも言っていないのにまるで霊夢という人間を知ったような振りで言われた。彼女は他人なのに。どうせ彼女に博麗霊夢のすべてを知りえるはずもないのに。
 どうしてか、今の霊夢は無性に腹立たしい気持ちでいっぱいだった。

「到着したわよ」
「……ん」

 声をかけられて前を向く。気がつけば、前方に永遠亭の玄関が見えていた。
 浮力を減らし、着地。

「えっと、それで何の用だったの?」
「別に用はないのよ。神社に戻れないから、しばらく時間を潰しているだけ」
「……え、もしかしてまた」
「いじめてないし、いじめる気もないわよ。だからアンタもそんなに警戒しないでいいの」

 おずおずと後退する鈴仙を見て呆れながら、霊夢は飄々として永遠亭にあがる。

「相変わらず味気のないところねぇ」
「まさか、神社よりは風情があるでしょ。師匠、師匠―。お客様ですよー」

 鈴仙がさっきまでの弱気な声とは違って、はきはきとした声で奥へと呼びかける。
 その声に反応したのか、関係のない兎がひょこっと目と耳を廊下や部屋から覗かせていたが、やがて廊下の奥から赤と青の独特な衣装に身を包んだ女性がやってきた。
 蓬莱の薬師、八意永琳。最近は人里でも医者業に勤めているという慈愛に溢れた笑顔が魅力的な女性は霊夢を見ると頬に手を当てて笑った。

「あらあら、いらっしゃい霊夢。今日は何の用かしら?」
「今日はどいつもこいつもそればっかりね。用がなかったら来たらダメなのか、私は?」
「そんなことはないけれど……ねぇ?」

 笑ったまま、永琳は弟子の鈴仙に目配せをする。

「霊夢が来るときは大抵が厄介ごとや面倒ばっかりだから……」
「失礼ね! 魔理沙と一緒にしないでよ!!」

 実際、魔理沙と似たようなものだと二人の薬師は心のなかで毒づく。

「まあそれはともかく、目的は茶菓子でしょう。アリスから聞いているわ。今用意させるから遠慮なくあがって頂戴。鈴仙」
「はい」

 霊夢より先に鈴仙があがって、廊下の奥へと消えていく。おそらく茶菓子を用意しに行ったのだろう。

「こっちよ」

 永琳に呼ばれ、彼女のあとについていく。
 すぐ近くの客間に入ると兎がいっぱいいたが、永琳が来ただけで蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
 カリスマなのか、それともマッドサイエンティストの登場に己の危機を感じたか。

「どうぞ、何もないところだけど」
「師匠、茶菓子をお持ちしました」
「はいはい。じゃあそれ、霊夢に出してあげて」
「わかりました」

 すぐさまやってきた鈴仙が茶菓子のモナカと、ついでに粗茶を出したのでさっそく霊夢は茶から頂いた。


 ……静けさが部屋を支配している。
 永琳はテーブルの反対側でニコニコしていて、鈴仙は盆を抱えて部屋の入り口で同じく正座している。
 二人が何も話さないので自身も何も話さず、茶とともに菓子を堪能する。

 元より俗世とは切り離された幻想郷のなかでもさらに奥地にある永遠亭は、かなりの大所帯でありながら中はとても静かで竹林で鳥のさえずる音すらも耳に届く。
 こういう場合は何を言っても下手になる。霊夢は自分から話すのも面倒だな、と沈黙を守る。

 不意に、永琳が口を開いた。

「ねえ、霊夢」
「何よ」
「美味しい?」
「今さらそれを聞くか。……美味しいわよ、とても」
「そう? よかった、それ私の手作りなのよ」
「あっそう」

 霊夢は興味なさげに軽く流したが、実は内心では思いきり褒めてしまったと後悔していた。
 初めから永琳が作ったものだと知っていれば他に言いようがあったのに。そう思って。
 寂しいと。またしても、彼女の脳裏に咲夜の言葉が蘇った。

 再び湧き上がるモヤモヤ。気持ちを抑えようと、ぐいっと茶を飲み干したがそれが間違い。

「んぐっ!? けほ、こほっ」
「あらあら、大丈夫?」

 むせた霊夢の背中を、優しく永琳の手がさする。

「だ、大丈夫よ、アンタもわざわざ介抱しなくていいの」
「強がらないの。辛いときくらいは頼りなさいな」
「無免許のヤブ医者に言われても説得力ないわ」

 永琳の手を払いのけると、そそくさと距離をとる。
 もとより藪から毒蛇が出てきてもおかしくない類の人種、蓬莱人という不老不死の存在で感性のおかしい月の人間。
 面白かったら人に毒を盛るような連中を信頼できるはずもない。

「今日は毒蛇不在よ、私にだって寸暇は必要だからね」
「賢明だわ。私に噛みつこうものなら串焼きにして食べていたかもしれないもの」
「鈴仙!! 寝床の用意を!!」
「本気にするな!!! というか食べる意味が違うでしょうに!!」

 すこーんといい音を立てて永琳の頭に針を命中させる。あまりに彼女の目が本気だったので貞操の危機を感じて思わず小袖の袋に手を入れていた。
 見事に人中に当てたが、不老不死の彼女のことだから問題ない、というか容赦はしない。

「そうそう、霊夢はそのくらいのほうがいいわ」

 針を抜きながら微笑む永琳の言葉に、もう一度針を投げようとしていた手が止まる。

「何よ、アンタも咲夜みたいに説教しようっての?」
「説教なんてとんでもない。あなたは要領がいいし、文句なんてつけようがない」
「まあ普通よ、普通。そんなにべた褒めされると逆に気持ち悪いわ。で、結局何が言いたいわけ?」

「もう少しだけ、霊夢に触れたいわ」

 静かに、滑らかになりだしていた波が再び立つ。

「あなたは他人と接することがほとんどない。用だけすませてハイさようなら。宴会の時だって絡まれそうになると逃げて、酒を押しつけるだけ押しつけて一人で飲んでいる」
「あんたらに巻き込まれると厄介だからよ。ただでさえ神社に人が来ないのに、これ以上関わっていたら何を言われることか」

 きっとそれはウソだ。そんなこと、初めから考えていないくせに。
 関わっていたらというのも詭弁。だったら初めから異変の解決をしたり、妖怪退治なんて請け負わなければいいだけ。
 博麗としての役目だから仕方ない。バランスを保たなければ危険だから、自分を正当化する理由がなければ動かない。

 だとしたらそれ以外はすべて無駄で、間違いで、やってはいけないことなのだろうか。

「建前も一流ね。でもね霊夢、例えそうだとしてもあまりにも味気がなさすぎるわ」
「そんなもの無くて当たり前よ。私は空、元から味なんて感じる必要なんてない。いい加減しつこいと針で刺すわよ」
「馬鹿ね」
「あ?」

 正当な言い分に対して、馬鹿と言われて黙っていられるほど霊夢も寛容ではない。即座に手に針を収める。
 それでも永琳は静かに目をふせたまま。

「博麗霊夢は空っぽなんかじゃない。あなたは私たちのような蓬莱人も妖怪も受け入れるだけの器がある、見えないくらい、大きな大きな器があるじゃない」
「……しつこいわね、だったら一体なんだっていうのよ」

 もううんざりだ。聞きたくない。
 これ以上踏み込まれるのが怖くて巫女は月の頭脳を睨みつける。

「じゃあどうして、霊夢は神社に訪れる私たちみたいな妖怪を受け入れるの?」

 瞬間、嗚咽と聞き紛うような声に向き直る。
 それは永琳ではなく鈴仙から出たものだった。

「おかしいよ霊夢、そんなの変。だったら最初から妖怪にも人間にも関わらなければいいじゃない」
「それは………幻想郷が、人間と妖怪の共存のためにあるから……」
「何よそれ!! 霊夢は認めるのが怖いんだっ! 自分の意志で行動していることを否定したいだけなんだっっ!!!!」
「違うッ!!!」

 叫ぶ。叫んでから後悔してしまうが、目の前の兎が言っていることに耐え切れなくてまた怒りがこみ上げる。
 冷静でなくてはならないのに。自分は、博麗霊夢なのに。
 ただの妖怪兎の涙なんかに今まで積み上げてきた壁が崩されてしまう。

「違わない!! 霊夢は優しいから、私たちを突き放せないんだっ!!! それで私たちとの関係を曖昧にして、今の状況に甘えていたいんだ!!!!」
「違うッ!!!!」
「霊夢のウソつき!!! 霊夢の卑怯者!!! 霊夢なんか……霊夢なんかいなくなっちゃえばいいんだっ!!!!」
「この、いい加減にっ……!!!」

 ついに頭にきた。武器などいらない、単純に針を持っていないほうの手を振り上げる。鈴仙が涙目のまま驚いて、自分が叩かれる光景を恐れて目を瞑る。
 無垢な平手が彼女に迫る。そしてそのまま。

「………え?」

 永琳の手が、鈴仙の頬をはたいていた。
 状況がよく飲み込めていない霊夢は、平手を構えたまま硬直していた。

「し、師匠……?」
「鈴仙、自分の部屋で頭を冷やしてきなさい」
「……はい」

 呆然とする霊夢を置き去りにして永琳は鈴仙を退室させる。そして彼女の姿が見えなくなるのと同時に、高まっていた熱が冷めていくのを感じた。
 脱力、それからゆっくりと腕を下ろして嘆息。

 まったくもって自分らしくない取り乱し方をしたどころか、もう少しで彼女を殴りつけようとしていた。
 なんていう愚行。自らの感情に流されて暴力を行おうとしていた。こんなこと、博麗の巫女としてあるまじき行為。

「ごめんなさいね、普段はあんなことを言う子じゃないのだけれど」
「別に。私もみっともなかったと思ってるし、お互い様」

 そう、痛み分けだ。鈴仙は霊夢の領域に無遠慮に踏み込んできて、霊夢はそれを突き飛ばそうとした。
 無遠慮な連中ならいくらだっているのに、それでも彼女だけを許せなかったのはきっともっと違う理由。
 彼女の言葉がわずかに霊夢の心を抉ったから。

「霊夢、鈴仙のことを嫌わないでくれるかしら」
「何度も念を押されなくてもそんなことしないわよ」
「こんなこと、あなたには侮辱に聞こえるかもしれないし私から言うべきじゃないと思うけど、きっとあの子は霊夢に自分の姿を重ねていたと思うの。
 状況に甘えるっていうのはたぶんそういうこと。あの子もまだ、過去のことを引きずっているのよ」
「……そんなの、私には猫の額ほども関係ないわ」
「そうね。でもこれだけは知っていてほしいの。人間であれ、妖怪であれ、きっと誰もがあなたのことをもっと知りたいと思っている。金や物に吊られる博麗霊夢という現象よりも、あなたを」
「ごちそうさま。もう、行くわ」

 永琳を押しのけて霊夢は部屋を出て行く。
 やけに足が重い。知らず、鉄の鎖がまとわりついたみたい。

 鈴仙には謝らなければならなかったかもしれない。でも、今はそんなことできるはずもなかった。
 嬉しい出来事に緩んだり、嫌悪すべきことを前にして険しくなったりする顔を見せることができても、わずかに歪んだ泣き顔だけは見せたくなかった。
 逃げる、きっと逃げている。
 霊夢は今までどんな敵を前にしても逃げたことはない。なのに、弾幕ごっこ以外のことで彼女は逃げていた。
 そうしてまた、これが正しいことなのだと心に言い聞かせて。




 初めまして、和と差を操る程度の能力というものです。
 ゲームではノーマルをクリアするのがやっとのヘタレシューターです。


 ※ 12月22日 永琳を永淋と間違えていたところを修正しました。
和と差を操る程度の能力
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コメント



0.930簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
とりあえず永琳の字を間違えていますよ、とだけ