Coolier - 新生・東方創想話

優しい狐 (5/6)

2007/12/21 05:25:10
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「ねぇ幽々子。最近、退屈だと思わない?」
「またその話題?紫は本当、落ち着くことを知らないわね」
「あら失礼ね。これでも私、
幻想郷では一番落ち着いてる自信がありましてよ?」
「なら、今のまま風情を楽しみましょう。そうすればきっと・・・」
「そういうの、私嫌いなの。変化を見ているのが好き。
変化を起こすのが好き。変化に巻き込まれているのを見るのが大好きなの」
「私を巻き込むのはやめて欲しいのだけれど・・・」
「あらひどい。付き合いの長い友人と言えば、もうあなたくらいしか居ないのに」
「他の友人はあなたが手にかけたのかしら?
それともあそこから追い出した?」
「淘汰されたのよ。人間に」
「それはまた・・・」
「おかげ様で私は長生きです。感謝しております人間様。なんてね」
「本当にそのように思えるから恐ろしいわ」
「あら、私は今まで本音を言ったことがないのよ。失礼」
「まるで何かのたとえ話みたいね」
「そうかもしれないわ」
「違うかもしれないのね」


「紫様、ただいま戻りました」
子猫を抱き、帰宅する。
一応戸口で声はかけたが、
反応が無いので恐らく寝ているのだろうと口を脱ぎ、居間へと向かった。
「ミャー」
猫も私に倣ってか、抱えられたまま挨拶のようなものをする。
「紫様、寝てらっしゃるのですかー?」
起きないようにわざと抑え目に声を掛ける。
予想通りではあるが、私は苦労したというのに、なんとも暢気な事か。
しかし、それはそれで安堵するというもの。
とりあえず、この子を紫様と合わせる前に、心構えの一つも説いておかなければ。
「良いか?お前はこれから、この家の猫として暮らしていくんだ。
私は藍。そしてもう一人、私の主の紫様がいらっしゃる。
この方には逆らうんじゃないぞ?逆らうとだな・・・」
解っているのか居ないのか。
床に降ろし、心得を聞かせようと眼を見たのだが、
猫は瞳をぱちくりとさせ、そっぽを向いてしまった。
「あっ、こらっ」
何故私を正視しない。
少しだけ悔しくなり、向いた方へと移動して顔を近づける。
が、また別の方を向かれてしまう。
「な、なんでっ」
「当たり前じゃない。猫はね、目を合わせるのを極端に嫌うのよ」
「へっ?あ、わっ」
声がし、振り向くと・・・いつの間にそこに居たのか、
にやにやと口元を綻ばせて、主人がこちらを見ていた。
「あ、紫様。ただいま戻りました・・・その、猫を・・・」
「ええ、そうみたいね。ご苦労様。中々可愛い子じゃない」
気に入ってくれたらしい。
珍しい労いの言葉に、
少しだけ冷えていた手が暖かくなったように感じる。
「チチチチ・・・こっちいらっしゃい」
どうやってあやし方を覚えたのか、舌先で小さく音を鳴らし、
指を振る。
「にゃーっ」
ピクリと耳を動かし、紫様の指へと飛び掛る猫。
「にゃー、にゃーっ」
「ふふふ・・・可愛いわぁ」
うっとりとしながら右手、左手とあやす指を変え、遊ぶ。
まるでよくしつけられた飼い犬の様に、猫は紫様の思う様に右往左往する。
「・・・・・・」
ほっとした。
毛色等気にする方ではないとは思ったが、
それでも不吉だから駄目だと拒絶されるかもしれないという恐れも少しはあったのだ。
だが、この様を見る限り、やはり私の主人は寛容な方であったらしい。
「ふぅ・・・」
安堵の溜息が出る。
飽きずに子猫と遊ぶ主人を見、どこかほほえましいと感じながら、
私は椅子に座り、わずかながら疲れを癒した。


「―――賭けをしましょうか」
「賭け?」
「そう。賭け。私とあなたとで対等のものを賭けるの。
負けた方は賭けたものを失う。勝った方は倍になるわ」
「困るわ。私は今まで賭け事なんて・・・花札位しか」
「大丈夫よ幽々子。お嬢様でも大切な者は差し出せるわ」
「用人を質に入れるのは主としてどうなのかしら・・・」
「楽しければそれでいいわ」
「楽しければそれでいいのね。あなたは」
「あなたもでしょう?幽々子」
「そうかもしれないわね」
「それは確定なのよ」


「紫様、そろそろ夕餉の時間ですよー」
「あらそう。じゃあいただこうかしら」
数日程経ったある日の事だった。
いつもの様に食事の旨を伝えると、紫様は程なくして部屋から出てきた。
しかし、連れてきてからというものずっと肌身離さなかった猫が見当たらない。
「あの・・・紫様?」
「うん?どうかしたの?」
「あ、いえ・・・その、猫は・・・?」
「猫?ああ、あの子。さぁ?」
(さぁ、って・・・さぁ、って・・・)
昨日までの可愛がりぶりからして、随分と違う態度ではないだろうか。
まるで別人のような。
「な、何かあったんですか・・・?」
「そう・・・そうなのよ、聞いてよ藍。あの子ったらね、ひどいのよっ
寝てる私の夢に出てきて、私の豆大福を食べちゃったの!!許せないわ」
「ゆ、夢ですか・・・」
「もうこれは躾が必要ね。とりあえず当分の間ご飯はあげないわ。
豆大福の恨みは天狗のお山より高いのよ」
「えっ、ちょ、いくらなんでもそれは・・・」
「私はあげないわ。あげたければあなたが好きにしなさい」
乱暴にその場に座り、用意してあった茶碗を手に取ると、
がっ―――と勢い良くご飯をがっついた。
「けふっ、けほっ・・・けほ・・・」
しかし、元々喉の細い主の事、
勢いよく放り込んだ所為でむせてしまう。
「だ、大丈夫ですか紫様っ!?いきなりかっこむから・・・」
「うぅ・・・だって、だって悔しいんだものっ
飼い犬に手を噛まれたならまだしも、
飼い猫に手を噛まれた女なんてきっと幻想郷じゃ私だけよ?」
そりゃ、猫を飼うのが珍しいんだから、それはそうなのかもしれないけど・・・
そもそもあの子は噛んでない。
勝手に紫様が被害感抱いてるだけだし・・・
「別に殺したりはしないわよっ
でも、反省するまでご飯は抜きっ
いいっ?私は絶対にあげないからねっ」
「は、はぁ・・・」
その剣幕たるや、視線だけで人を殺せるのではないだろうか。
それほどに怒りを顕にするのも珍しいと思いながら、
そういえば私自身、昔理由も聞かされず食事を抜きにされた事があったなと思い出し、
ああこれだったのか、と勝手に納得してしまう。
しかしそれはまぁ、いいとして。
新しく家族になった猫に、主人とはいえ少し酷いのではないだろうか。
「あの・・・」
「何っ!?」
「・・・いえ、ごゆっくり召し上がってください」
「わかってるわよ・・・ふんだ」
拗ねながら、今度はむせない様に食べる主人を見ながら、
やはり思ったとおりの事は言えないなと、心で溜息をついた。

「ほら、おあがり」
紫様も床に就いた明け方。
流石に主人の目に付く場所で餌をあげるのははばかられ、
床に就くのを見計らい、餌受けに温めた牛乳を注いでやった。
紫様が居る時はまるで姿を現さなかったので心配したが、
寝室に入るのと同じタイミングで私の前に現れ、鼻を足にこすりつけてきた。
空腹だと言わんばかりにみぃみぃ可愛らしく鳴いていたのだ。
不憫という他ないが、猫自身も何かを感じたのか、
紫様には近づかないでいてくれたらしい。それが救いではある。
「全く、本当に可哀想な子だよ。お前は」
私なんかに見つかった所為で。
紫様のペットになった所為で。
しかし何より、黒猫として生まれたことそのものがこの子にとって不幸なのかもしれない。
せめて白ければ。
「こんなに可愛いのにな・・・」
猫には罪もないのに、何故こうも差が在るのか。
「ミィ・・・」
何か私から感じ取ったのか。
不安げに首をかしげ、私を見つめた。
視線は合わせなかったが、確かに私を見ていた。
「・・・大丈夫だからね」
心配してくれたとも思えないが、
その仕草に、せめて私だけでも守ってやろうと心に決めた。

(続く)
こんばんわ、小悪亭・斎田です。
5話です。
この辺りから描写抜きの会話文多くなってきてます。
ちょっと読みにくいかもしれません。
もし読んでて疲れたらごめんなさい。

訂正:「あおがり」→「おあがり」
申し訳ありませんでした。
普通に読み過ごしてしまったらしく見落としました、ご指摘ありがとうございました。

さて、次で最後です。
それではでは。
小悪亭・斎田
http://www.geocities.jp/b3hwexeq/mein0.html
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コメント



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1.無評価名前が無い程度の能力削除
「おあがり」が「あおがり」になってますよ。

点数は最後にします。