Coolier - 新生・東方創想話

随神(かんながら)・その4

2007/12/19 11:55:50
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「意地悪しちゃダメだよ!」
 巫女服の袖を、小さな手が強く引く。
「洩矢様、恐れながら」
 早苗は、諏訪子を見ていない。
 弾幕を撃ち合うには最適の距離を保ったままアイドリング中の魔女から、敵意のこもった視線を少しも逸らさずに、淡々と喋る。
「清らかなる神湖に無礼者の垢が浮いても、お気になさらぬと?」
「全然なさりません」
「……八坂様は何と仰せになるでしょう」
「はぁ?」
「確かに、神湖は洩矢様のご所有物。ですが同時に、八坂様のご管理下にもございます」
「どっちがどっちでもいいじゃない!」
「洩矢様と八坂様、どちらも尊き御方にして、その神格は同じ。どうか、ご相談の上で最終的な御宣託を下されるよう」
「わざわざ起こして来いって言うの?」
「まことに恐れながら」
 悠久の時を生きて来た割にはどこか稚気の抜けない諏訪子と違い、神奈子なら『大人の判断』をもって不信心者を追い払ってくれるはず。
 そう、早苗は信じていた。

(我が心の平穏を奪いし者に、罰を)

 早苗自身は、己の『祈り』が神を動かすに足るほど真摯なものだと信じ込んでいる。
 だがそれは、小さな敗北の屈辱に大きくこだわる視野狭窄が生み出した、身勝手な願望……言い換えるなら『呪い』に過ぎない。
「聞くまでもない、どうせあいつも私と同じ考えだよっ!」
 諏訪子の頬が引きつる。
 自分も神奈子も、本来は人に祟りをなすような神ではなかったのだから。
「直にお伺いを立て、己の耳でお赦しの言葉を聞かぬことには、この場を退くわけには参りませぬ」
「なんでよ?」
「それが風祝というものですゆえ」
「あーっ、またそうやってカゼハフリ、カゼハフリって! あんたにゃ融通ってもんがないのかっ!」
 先天性の楽天家である諏訪子も、ここまで意見を無視されては流石に語気を荒げざるをえない。
 ちらりと、早苗は困惑の瞳を諏訪子に向ける。
 その一瞬の、
「隙が命取り、だぜっ!」
 何の前触れもなく、魔理沙が箒を急発進させた。
「ひゃ……」
 驚く間もなく、早苗の手からすれ違いざまに三角帽がひったくられた。
 黙って人の話を聞くことも、手持ち無沙汰に停滞し続けることも、両方ながらに魔理沙の不得意分野である。
 だから、彼女はこうして直接的な実力行使に出た。
 その性急な性格を、知らぬわけでもなかったのだが……
(やられたっ)
 早苗が想定していたのは、弾幕勝負だ。
 念を凝らして弾の形に練りあげる用意は万端であったものの、足止め用の突風をもう一度呼び起こす『準備』の方は、していなかった。
 いかに熟練の風祝とて、あらかじめの心構えなくして『奇跡』を起こせる道理もなし。
 仕掛けるなら、早々に早苗の方から仕掛けるべきであったのだ。
 意表を突かれた不覚を悔やみつつ早苗は振り向くが、相手はすでに大鳥居の向こうだ。
「帽子さえ返してもらえれば、もう用はないぜ! 諏訪子、悪いけどその頑固女をしばらく大人しくさせといてくれ」
「こ、こらっ! 勝負するなら正々堂々と……」
「無駄な争いは悲しみしか生まないんだぜ! じゃあな石頭ー!」
 どの口が諭すのか、このトラブルメイカーが!
 と、いささか呆れながらも、魔理沙が山下より連れて来た客たちは互いに頷きあう。
 期待していたような激しい弾幕合戦こそ見られなかったものの、これはこれでなかなか滑稽な余興であった。

(山の妖怪がこぞって虜になったという神の魅力、どれほどのものかとワクワクしてたんだけど)
(従者の度量がこの程度なら……その主もまた推して知るべし、って感じ?)
(これだけの面子に押しかけられても気にせず寝ていられるなんて、とんだ大物ね。私たちの権勢を翳らせるほどの存在では、ない)

 出不精の6ボスたちが、魔理沙の唐突な誘いを受けて住処を離れた「真の狙い」は、ほぼ達成された。
 あとは風雅な湯治をゆるりと楽しんでいくだけだ。
 それなりに満足気な面持ちで、残りの八人――念のためにもう一度紹介すると、レミリア・咲夜・幽々子・妖夢・輝夜・永琳・鈴仙・紫――も、一斉に大鳥居をくぐる。

 あれ、八人?
 作者も知らぬ間に、ひとり増えている?

「あははっ、バイバイ石頭!」
「邪魔よ石頭」
「んー、石頭っていかにも固くて食べにくそうよねぇ」
「この私に絶てぬ石頭など、あまり類を見ない!」
「ごきげんよう石頭さん」
「石頭に付ける薬……なかなか興味深い研究テーマだわ」
「ずいぶん波長の乱れた石頭ね」
「……うふふふ」
 通り過ぎざま、それぞれが好き勝手な捨て台詞を残していく。
 単位時間あたりの音声処理能力を超過する声の洪水に流され、早苗はしばらく口をポカンと開けて立ちすくんでいたが、耳に残った言葉の断片を改めて頭の中で吟味していくうちに、どうも自分は思いっきり虚仮にされたらしいということに気付き、ギリギリと下唇を噛んだ。
 聖職にあるまじきどす黒い瘴気が、ゴゴゴゴという迫力ある効果音と共に早苗の体から立ち昇る。
「……こ、こ、この……無法者どもめ……」
「あの、早苗……?」
「だ、れ、が、い、し、あ、た、ま……ですってぇ?」
 荒れ狂う風が、早苗の体を猛ダッシュでさらっていく。 
「もー怒ったっ! 待てっ狼藉者どもぉぉぉぉぉ!」
「ちょっ、どこ行くの待ってよ!」
 もはや神の声なんて聞いちゃいねぇ。
 諏訪子はものの見事に取り残された。
「あーうー……やぁれやれ」
 うなじの辺りを軽く掻き、諏訪子は渋々、こちらの気も知らずに高いびきのオーケストラを演じているであろう友人の寝所へ、足を向ける。


 世話が焼ける奴らだね、まったく!















 もわもわ、ほこほこ。
 湯気を放ち始めた水面を、ほとりに立って見下ろしている魔理沙の表情は実に満足気だ。
 そのすぐ隣では、やはりどこかしら誇らしげな態度で箒が直立している。
 箒の身には糸の端の部分がきつく結いつけられている。
 その反対側の先端は、ミニ八卦炉(出力控えめ)を亀甲縛りにした状態で湖の底に沈められている。
「我ながらいいアイデアだぜ」
 アリスの家からパクっ……もとい借りてきた人形操作用の糸は、見た目こそ蜘蛛の吐くものより細くて脆そうなのだが、実際は魔法によって極限まで強度を鍛え上げられており、ちょっとやそっとの張力あるいは熱を加えたところで切断の恐れはない。
 だから湯加減の調整が終わった後、箒を天に舞い上がらせれば、ミニ八卦炉は簡単に回収できる。
「ほんと、あなたにしては面白い思いつきだったわね」
 薬箱の中を漁りながら、永琳が感心したように相槌を打つ。
「何言ってるんだ。私の思いつくことは、いつだって面白かっこいいぜ」
「その奇行癖のせいで、私たちが普段どれだけ振り回されてると思ってるの」
 木陰でワンピースの赤い水着に着替えながら(流れの速い河川は苦手でも、静謐な佇まいの湖なら平気らしい)、レミリアが憎まれ口を叩く。
「まったくです。食料庫の食料も、パチュリー様の本も、欲しい時に勝手に持って行ってしまうのだから困ります」
 受け取った衣服を丁寧に畳んでいる咲夜も、同調する。
「ま、いいじゃないか。そうやって得たカロリーと知識が、こんなにも立派な山おこし事業として花開いてるんだから」
 一同、舌打ち。
 こいつは、生まれてこの方「反省」という行為をしたことがあるのだろうか……?
「あ、ところで」
 輝夜が顎の下に人差し指を当てる。
「霊夢は来なかったの?」
「一応、誘ってはみたんだが」
 少し残念そうに、魔理沙は答える。
「調べなきゃいけない事件があるってんで、来なかった」
「事件、とは?」
 鈴仙の長耳が、ぴくり、微動する。
「昨日から幻想郷のあちこちで、謎の小型木造建築物が目撃されてるらしいぜ。どれもこれもデザインは似ているのに、誰が何のために造ったものかは分からない。で、里の人間たちが気持ち悪がってて」
「巫女の出番とあいなった、と」
「そういうこと」
「よくあるパターンね」
 咲夜と魔理沙は微笑みを見せ合った。
「小型木造建築って……もしかして、不細工な犬小屋みたいなもの?」
 茶色のガラス瓶を手に、永琳が魔理沙の隣に立って問う。
「私は実際に見たわけじゃないが……霊夢の話だと、確かに犬小屋だか蛸壺だかに似てるって言ってたな」
 犬小屋と蛸壺は全くの別物だ、という指摘はさておき。
 瓶に詰まった白い粉末を湖に撒きつつ、永琳は首をかしげる。
「今朝、それらしきものを竹林の近くで見たわよ。里に薬を売りに行く途中で」
 夕陽を浴びて茜に染まっていた湖が、じわじわと暗緑色に浸食されていく。
 魔理沙と永琳以外の者たちも、その様子を観察しに水辺へと集合する。
「震度二の地震であっけなく崩壊しそうな、究極の手抜き工作だったわ。なんなんでしょうね、あれ」
「……おおかた、イナバあたりのイタズラじゃないの?」
「滅相も!」
 永琳の言葉を受けて輝夜が何気なくつぶやいた一言をさらに受け、鈴仙がものすごい勢いで首を横に振る。
「そんなミステリアスな大工仕事など、私は断じて!」
「やだなあ、あなたじゃなくて、地球産のイナバの方よ」
「地球産……あ、てゐのことですか。ええ、確かにその可能性は高いかも……」
「いや、それはない。あの子は絶対に無実よ」
「おや師匠、珍しくあいつの肩を持つのですか?」
「自白剤を投与したのに、何も喋らなかったのよ」
 流石は師匠。
 鈴仙の背骨を、敬意と戦慄の混合体が一気に駆け上がる。
「ま、『異変』と呼ぶにも値しない、つまんない事件だぜ。今のところ実害もないし。明日には全てが解決してるさ」
「それはそれとして、他にも気になってることがあるんだけど」
 きょろきょろ、輝夜が辺りを見渡す。
「なんだよ輝夜」
「さっきから、八雲紫の姿が見えないわ」
「出たり消えたり忙しい奴だからな、ほっとけほっとけ! そのうちまた、スキマからヌッと顔を出すよ」
「ふぅん……あ、あともうひとつ」
「今度は何だよ!」
「冥界組も、消えたまま……だよね?」
「あ」








「妖夢、見て見てー! あっちにギンナンがいっぱい落ちてるわよぉ」
「幽々子様、勝手にフラフラ出歩いては危のうございますっ!」
「こんなに素晴らしいイチョウの林に巡り合えるなんて! 今夜は茶碗蒸しで決まりね!」
「はいはい。ご要望は承りましたから、もう戻りましょうよ……」
「あ、でも茶碗蒸しだけじゃボリューム不足よねぇ」
「は?」
「ねぇ妖夢、足りないのは何だと思う?」
「な、なんでしょうか」
「うー」
「むー」
「ううー」
「むむー」
「うううー」
「むむむー」
「あ、分かった!」
「みょ、みょんっ!?」
「そうだ、松茸よ! 足りないのは松茸ご飯と松茸の炭火焼と松茸のお吸い物と松茸の焼酎漬けと、それに松茸のソース・ド・アメリケーヌ、夜雀のヤキトリ添え!」 
「いや……イチョウの木の下に松茸は生えないと思うのですが」
「まっつたっけ、まっつたっけ、どこかしらー。まっつたっけ、3キロ、一気食いー……」
「はっ、話を聞いて下さいお待ち下さーい幽々子様! ゆーゆーこーさーまー……」

 この主従は、すでに目的を見失っているようだ。














 早苗は全速力で急いでいた。
 自分がこうしている間にも、死守すべき湖は黒き魔手により汚されまくっているのだ。
 焦りに焦り、全力で追い風を呼ぶ。
 それなのに、目的地はまだまだ遠いのに。
(す、進まない!)
 秒速五センチメートルという甘酸っぱい速度が、今の早苗に出せる限界である。
 つい先ほど、逃げていたと思ったらいきなりUターンしてきた長身のメイドにひと睨みされた。
 メイドは特に攻撃を繰り出すでもなく、そのまま再び奥へと去っていってしまったが、それ以来なんだか体が重くて仕方がない。
 おそらく、何がしかの邪悪な術中にはまってしまったのだろう。
 一日のうちに二度も「不意打ちされる→不覚をとる」というパターンに陥ってしまった己の愚昧ぶりに、早苗の自責は膨らむ一方だ。

「おーい早苗ー! なんでそんなにノロノロしてるのよー」

 聞きたかった声が、背後から追って来ている。
「風の制御が全然できてないじゃないの。あなたらしくもない」
 ものすごくゆったりとした動作で、振り向けば。
 確認するまでも無く、あぐらをかいたまま宙を飛ぶ神奈子の姿があった。
「やぁぁぁぁぁぁさぁぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁさぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁ……」
 間延びしたカセットテープに録音した声をさらにスロー再生したかのようなおぞましい声と、憂いに満ちた乙女の表情とでは、ギャップが深すぎる。
 神奈子はつい、早苗の肩を叩こうとした手をひっこめてしまった。
「ど、どうしちゃったの?」
「もぉぉぉぉぉぉしぃぃぃぃぃぃわぁぁぁぁぁぁけぇぇぇぇぇぇごぉぉぉぉぉぉざぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃまぁぁぁぁぁぁせぇぇぇぇぇぇんんんんんんん……」
「その声やめてよ、怖いわホラーだわ!」
「たぶん、十六夜咲夜……あいつの仕業ね!」
 神奈子の脇に、諏訪子が追いつく。
「イザヨイ?」
「ほら、いつだったか宴会の席で話題になってたことがあったでしょ? 紅魔館ってところのナンバーツー」
「ん……」
 酔いの霧が晴れぬ記憶の貯蔵庫を、必死に検索する。
「ああ、思い出した! なんでも時間を操る程度の能力を持ってるって……天狗の間でも恐れられているそうね」
「主のレミリア=スカーレットと並んで、扱いづらい相手みたい」
「なるほど。今日は新入りにちょっとしたご挨拶を、ってわけね」
「他に来ていたのは……」
「説明は無用よ、いでたちを見れば大体どんな奴らか察しはつくでしょうし」
「あらら、ボケ気味のアル中が言ってくれるじゃない?」
「腐っても神、重要事項は忘れないわよ」
 神奈子が妖怪を招いてひっきりなしに酒宴を開くのは、当然美酒と美味をこよなく愛しているからであるが、それ以外にも秘めた目的があった。
 つまり……幻想郷の要注意勢力についての、情報収集。
 アルコールは人の口も妖怪の口も、時には神の口でさえも、等しく軽くする。
 華やかな酒宴を利用しての地盤固めは、神代の頃からずっと神奈子の得意技であった。
「神奈子、早苗をこのままにしてはおけないよ」
「ゆぅぅぅぅぅぅだぁぁぁぁぁぁんんんんんんんしぃぃぃぃぃぃまぁぁぁぁぁぁしぃぃぃぃぃぃ……」
「ごめん早苗、ちょっとだけ黙っててくれる? 不気味だから」
「うぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅ……」
「さっさと湖まで行って、術を解いてもらわないと」
「ふふん、その必要はないわ」
「え?」
「忌鎌持ち、荒草朽木、刈り果てて……諏訪子、続きをお願い」
「へ? え、えっと……芽吹息吹を、人に恵まん……で、良かったんだっけ?」
「よし、上出来!」
 一瞬、神奈子と諏訪子の体から光の柱が立ち昇り、早苗を照らした。
 徳にあふれる神の言葉には、確かな言霊が宿る。
 その威力をデュエットでぶつければ、いかに複雑に編まれた妖術の網であろうと快刀乱麻、全く造作も無く打ち破ることができる。
 早苗の体内に、暖かな活力が急速に流れ込んで行く。
「気分はどう、早苗?」
「はぁぁぁぁいぃぃぃ……どぉぉうぅやぁらサクッと元に戻ったようです」
「ん、やっぱり早苗はその可愛い声でなきゃ!」
「か、か……かしこくもお手数をおかけしてしまい、なんとお詫び申し上げればよいのかっ!」
「別に構わないわよ、このぐらい」
 所在なさげにぺこぺこ、必死になって頭を下げる早苗に、神奈子は会心の秋波を送って見せた。
 止まっていた風たちが嬉しそうに周囲を飛び跳ねているのを感じ、早苗は頬を染めてはにかむ。
「驚いたな。破魔の法なんて、二千年ぶりに試したけど」
 諏訪子もまた、顔がにやけるのを止められずにいる。
「効果てき面、だったでしょ?」
「一発じゃないの! まだまだ全盛期には及ばないとは言え……私たちの力は、確実に戻りつつあるのね」
「そういうこと! さぁて、突然のお客様方に格の違いってモノを教えてあげましょうかっ!」
「おーっ!」
「はいっ!」
 二柱とひとりは、軽快に走り出す。



 やはり、八坂様は頼りになる。
 私が耐えて来た鬱憤なぞ一気に吹き飛ばす、痛快無比な神威をこれからお奮い下さるに違いない。
 
 そうとも。
 妖怪どものご機嫌を取るばかりの雌伏期間とは、そろそろ決別するべきなのだ。
 『神』とはすなわち、天を覆う気力。
 地に無双の膂力。
 そして、絶対なる権力を意味する。

 早苗は思い出す。
 『外の世界』で散々見せつけられてきた、自称「神の化身」たちの浅ましい顔、顔、顔顔顔顔顔を。
 彼らは定められた寿命しか持たぬ哀れで卑小な人の身の分際で、不遜にも自らを無謬の存在だと称していた。
 そして金儲けのためだけに宗教団体を興し、単なる奇術を流用した偽の奇跡で大衆をたぶらかし、過去の聖典を曲解した文句で世間を脅し、他にもありとあらゆる涜神行為を行い……
 その上で、あろうことか、眩いばかりの栄光を手にしていた。

 あんな醜い俗物どもでさえ、多くの人間から忠誠を捧げられ、恐るべき支配者として傲慢に振舞うことが出来たのだ。
 ならば正真正銘、本物の神であらせられる八坂様と洩矢様には、その何百倍、何千倍……いや!
 他者と比べることすら無意味になるような、無限の『信仰』が寄せられねばならない。
 この世に生けとし生ける全ての者が、直截に尊顔を仰ぐことを憚って自然とひれ伏す輝かしい存在……
 逆らえばことごとく打ち滅ぼされる、
 それこそが……

 『神』、なのだ!


 
(ああ! こうして『神』のお傍に侍ることのできる私は、なんて幸せなんだろう!)
 吹き付ける涼やかな秋の風も、早苗の胸に宿る熱を冷ますことはできない。
 広がる笑みが、似非神を信じる狂信者のそれをなぞるかのように、少しずつ歪んでいく。
 だが、早苗自身はそのことに全く気づいてはいなかった。
 ……付け加えるなら……闖入者たちに対する神奈子の意図が、自分の期待をまたしても裏切るものであることも、まだ知らずにいた。




(続く)
眠いです。
例によって話があまり進んでいませんが、投稿の間隔を開けすぎるのもアレでナニだと愚考し、とりあえず出来たところまで晒させていただいた次第。


眠いけど、ケロちゃん可愛い可愛い可愛すぎて眠れない……
ケロリズム
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コメント



0.540簡易評価
6.80名前が無い程度の能力削除
早苗に全く敬われてないケロちゃんに涙が
敬語が余計に何ともはや
8.80名前が無い程度の能力削除
続きが気になるなあ。