そこは幻想郷の時代から幾年先か・・・遠く時間の進んだ時代
______宇佐見 蓮子____________現在・朝________
質素な天井と淡いカーテンから差し込む光。
夢から目が覚めかけて行く感覚を感じながら体を起こして行く、しかし体を起こすと、いつもなら有り得ない
現象が起こったのだ。
ゴツッ!
私の額になにかが勢い良くぶつかった、いつもなら体を起こした後に目をこすって朝の憂鬱さに浸って
いるはずなのだが、まだ眠気が覚めきっておらず何が起こったのか彼女には解らなかった。
しかも何かに額をぶつけた反動でベッドにまた仰向けになる形になってしまった、我ながら情けな
く感じる、朝が憂鬱でも二度寝をした事はなかったからだ。
解ることは自分が寝ていて起きると何かに額をぶつけたことだけ、眠気からか痛みをあまり感じ
無かったが意識がはっきりするにつれて痛みを感じてきた。
「いったぁー・・・」
しかし、声を先に出したのは自分では無かった
おかしい、ここは私の部屋で他に入ってくるような人は居ないはずだ、脳が上手く働かない、
呻き声をあげている何かは、自分の正面にいる事が声の位置で解った、五感は機能している。
ぼやけている視界をクリアにして行く、まだはっきりとは解らないが女性のようだ、
考えをまとめていると頬に何か液体が一滴降ってきた、液体は頬を伝って口の中に入ってしまった。
(しょっぱい?、塩水・・・にしては甘いような)
「痛いじゃない、蓮子・・・」
相手は私の名前を知っている、そこで覚めきっていなかった脳がようやく働いてくれた。
「あぁ、ごめん・・・」
相手は少し涙を流していて、謝っておいた方が良いようだ。
「でも、蓮子の寝顔可愛かったよ・・・ふふ」
その一言は衝撃的で一気に目が覚めた、私が目を覚まして一番最初に見たものは、マエリベリー・ハーンの笑顔だった。
「っ!なんでメリーがここに居るのよ!?」
「?だって昨日泊まっても良いって言ったのは蓮子よ?」
昨日の記憶をたどって行く、目が覚めていたので事はスムーズに進んだ。
こうなったら笑うしかないだろう・・・・
「あぁ、そうっだったわね、あはは・・・」
___宇佐見 蓮子______________|昨夜|___________
騒がしい駅のホーム、朝から夜にかけて人が絶える事は無い、行き交う人たちは何を求め
何の為に、この寒い雪の降る外に出かけるのだろう と、考え事をしながらホームの階段を上がる。
ホームから出ると、街と雪は街灯に照らされ、もうクリスマスのイルミネーションも飾ってあった、
少々気が早いのでは無いかと思ってしまったがこれはこれで趣きがある。
イルミネーションには目もくれず、雪の降る街を親友以上、夫婦未満、のメリーと共に目的地に向かっていた。
私達の吐く息は真っ白で、大きな雲のようだ。
隣を歩くメリーは寒いのに元気そうだ、少しでもその元気を分けて欲しいと思ったのは一体
何度目だろう。
「ん?どうしたの蓮子、じっと見つめて・・・何かついてる?」
「い、いや、何も・・・所でメリー、寒く無いの?」
「寒いわよ」
「じゃあなんでそんなゆっくり歩くのよ?」
「だって綺麗じゃない?イルミネーション」
今まで目もくれていなかったが、改めてじっくり見るとイルミネーションの光が雪に反射して
とても神秘的だった。
「あぁ、本当ね・・・」
「まるで違う世界に来ちゃったみたい」
クリスマスでは無いのだがクリスマスムードに二人で浸ってしまった
光に反射してキラキラ輝くメリーを私の心のアルバムに焼け付けた。
違う世界ねぇ・・・行った事は無いけれどメリーと見たことならあるのだ。
このいい感じのムードを壊したくは無かったのでその話は控える事にした。
誰もデート中にお墓とか幽霊の話はしないものだ、今はただメリーと素敵な夜を楽しみながら
楽しいひと時を過ごしたい。
メリーの手を引いて騒がしい商店街を抜けて行く、夜の商店街はまだ賑わいを保っていた。
「う~ん、そろそろ目的地に着くわね」
「目的地って・・・私の家じゃないの」
メリーは決まってデートをした日の最後には私の家に寄る、正直嬉しいんだか迷惑なんだか複雑だ、
しかし彼女が居て退屈した事は無いのは確かだ、今では欠けがいの無い存在と言える。
「ところで今何時か解る?」
「う~ん・・・」
メリーが突然話しかけて来たので驚いてしまったが、時間を気にしているのだろうか?、星を見るのも久しぶりだ。
私は曇った夜空を見上げる、二酸化炭素排出などの影響で京都の空も少しくぐもっていたが、私の能力に差し支え無い
程度だった、あたりを見回し今の季節で見える星座と方角位置を確かめて行く。
「ん・・・大体8:20分ってところじゃないの?」
「ふむふむ・・・おぉ!ぴったりよ蓮子」
メリーはポケットから携帯電話を取り出して時間を確認していた、最初から見れば良かったのに と、思ったのだが
これはいつもの事でメリーが珍しがって聴いて来る時があるのだ。
少し天文学を勉強すれば誰でも出来るような気がするのだが・・・
「メリーも物好きね、いちいち聞いてくるなんて」
本当にそう思う
「本当に蓮子の能力ってすごいわね、ふふ」
「能力って程でも無いし、メリーの能力の方が飛び抜けてすごいと思うんだけど・・・」
メリーの能力は実際に飛び抜けている、以前までは結界の境界が見えると言う能力で一緒にサークル活動として
結界のほつれに出来た境界から向こうの世界を覗いていたのだが、メリーに変化が起きたらしく結界を操る能力になっているらしい。
メリーは以前にその能力を使って何回か向こうの世界に行ってきたらしいが、よく解らないとしか答えない。
後から詳しく聞くと夢だったらしいが・・・
「そうよね・・・あれ?この間話したっけ?あの紫色の人の話」
「いいえ?、まぁそういう積もる話は私ん家でね」
「そうね、そろそろ冷えてきたし」
商店街から外れた裏路地を通る、俗に近道と呼ばれるものだ。
先ほどと違い全く人気が無い。
狭い裏路地はただでさえ薄暗いのに街灯も付いていないので夜は真っ暗だった、まるでこの空間に取り残されて
しまった錯覚に私は襲われる。
「それにしても真っ暗ね・・・」
「蓮子が居れば安心よ」
メリーはえらく張り切っている、私自身オカルトは好きなのだがホラーは全く苦手だった、オカルトはUFOとか
宇宙人とかそういう類の物であって幽霊や妖怪とはまた違う、似ても似つかない存在だと思う。
メリーは私と違ってそっちの類もふくめてオカルトは好きな方だった。
「言っておくけど何か出たら逃げるから、後はよろしく」
私は薄っすら見えるメリーに親指をビッと立てて合図を送る、こんな私が少し情けない。
「逃げたら怒るわよ?」
「じょ、冗談だって・・」
「冗談に聞こえなかったんだけど」
メリーは私がホラーを苦手としている事はとっくに知られていた、親友以上の仲なので隠し事は一切無い。
「メリーのバカ、知ってるクセに・・・」
「ゴメンゴメン、怒らないの、カルシウム足りてないんじゃない?」
メリーは私が怒るとたまにさっきのセリフを言ってくる。
実際カルシウムが足りていないのは確かで最近牛乳なんて物は飲んでないし、干した魚を骨ごと食べている訳でも無い。
胸だってメリーの方が大きいし、背も高い、カルシウム・・・取ってみようかな。
「またそれを言う・・・」
他愛もない話が弾みながら裏路地からようやく抜け出した、相対性精神学というものは話す相手にも影響があるの
かもしれない、話していると暗い路地裏に居た事なんて解らなくなってしまう位だった、それに比べて
私が専攻している超統一物理学なんてほとんど役に立っていないだろう。
「蓮子の家、見えてきたわ」
「ふぅ、なんか長かったなぁ」
「気のせいでしょ、それとも私とデートしてて疲れた?」
「そんな事ある訳ないでしょ」
「~♪」
メリーは上機嫌だ、彼女は決まって私の家に着く頃にはルンルン気分になっている。
いつからだったか、彼女と出かける行為がデートに変わってしまったのは・・・
ようやく家に着いた、家と言っても実家は東京にある、大学に通うために引っ越してきたのだが家には満足している。
見かけはまぁまぁ、お風呂にキッチン、二階まで付いているのだから文句を言ったら罰が当たってしまう。
合成木材で出来た無機質なドアのカギを開ける・・・・が
「あれ?ガギ開いてる・・・」
私は一瞬戸惑った、最近は物騒なもので空き巣や強盗なんてものはよくある、それがまさか自分の身に降りかかろうとは!
「メリー!緊急事態よ!空き巣が・・・!?」
「もしかして蓮子、カギかけ忘れた?」
メリーの言葉で今朝の事を振り返る、私は確か珍しく寝坊してメリーから電話が掛かってきたのだった、
その後大急ぎで玄関から飛び出して行った事を思い出す。
「あ・・れ?、あはは、嫌だなぁ」
顔には隠してあるが、とても恥ずかしかった。
「でも、空き巣って言う考えは有りね・・・調べましょ」
「う、うん」
メリーが先陣をきって我が家にずかずか入り込む、メリーは何回も遊びに来ているので家の構造は把握しているようだ、
台所、お風呂、リビング、隅々探したが荒らされた痕跡は無い。
「はぁ~、よかったぁ」
「いえ、安心するのはまだ早いわ・・・」
メリーはビシッと二階の階段を指差す、そこは紛れも無く私の部屋に通じる通路だった。
「あ、それもそうね」
「それじゃあ、さっそく調べましょう」
メリーがやけに張り切っている、この状況は何処かで・・・ 記憶がデジャヴする、この光景はいつだったか見た事があるのだ。
考え事をしていると人一人が通れる隙間の階段をメリーがドタドタ駆け上がって行く、まるで遊園地に来た子供のようだ。
「ちょっと!メリー?」
二階に上がるとメリーが私の部屋を物色していた、あんたが荒らしてどうする と、突っ込みを入れたかったが事態は
悪化していた、メリーが私のタンスを漁り始めたのだ! この光景はいつか見た事がある。
「うわ~派手な下着」
「な、何見てんのよ!」
「パンツ」
思い出した、この光景は一年前、ちょうど今ぐらいの時期だったか、メリーを家に招待した日にメリーがこの行動を取った。
最初はこたつでサークルの予定について話していたのだが、メリーは何を思ったのか人の部屋を物色し始めたのだ。
やめて!と止めたのだが言うことなど聴くはずが無い、そしてタンスから私の・・・
思い出すだけで恥ずかしい、もう二度と同じ過ちは繰り返さないようにしようと思っていたのだがすっかり忘れてしまっていた。
(あれ?たしか、パンツの次は・・・)
「うわぁ、可愛いブラね」
「どっちの意味でよ?」
下着の次は胸当てだった、私は確信した。
絶対私の胸、絶対バカにしてる。
「どっちもよ」
メリーはとにかく私より大きい、それが羨ましくもあり、憧れだったわけだが・・・
今はただ私のストレスを溜めて行くだけに成り果てた大きな山だった。
「はぁ、取り合えずしまったしまった」
「わかったわよもう、荒らされた様子もないし安心ね」
メリーに言われてから気が付いたが、部屋を荒らされた痕跡はタンス以外無かった。
ふぅ と、安堵の息がこぼれる、今度から戸締りには気をつけよう・・・
二人は落ち着きを取り戻し、冷え切った体を温めるためにこたつに入った。
「どっこいしょういち」
「はいそこ、変な言葉話さない」
「蓮子、これは”よっこいしょの原語よ」
「ふーん、そーなのかー」
メリーはどうでも良い知識をたくさん持っている、別の意味での知識人、この場合は雑学王かな?
こたつに入ったのは良いものの、電源が付いているわけでは無いので温かくは無かった。
「うーさみー」
「いつから蓮子は親父ギャグに目覚めたの?」
「知らないわよ、それよりそっちにスイッチあるでしょ?付けて」
うーさみー、我ながら上手い事言ったと思ったのだが・・・
メリーがこたつの中にあるスイッチを探り当てる、すると電気こたつの中心から暖かさと共に変な音が聞こえて来た。
家の電気こたつは比較的古いタイプなので仕方ない と、割り切っていたがやはり気になる。
電気こたつの音を気にしているとメリーが部屋を見回していた、観察と言った方が解りやすいだろう。
「ふい~温かい」
「蓮子の部屋は相変わらず質素ね」
「いいじゃない、私はその方が落ち着くの」
少し呆れ気味のメリーを諭す。
壁にはワイシャツが掛けてあり、そのハンガーにはネクタイ、フックに帽子と色々掛けてある。
男の子が着ているワイシャツが目立つので、女の子の部屋にはとても見えない。
ワイシャツや帽子などは大体同じデザインの物を選んで買うのだが、ネクタイは別である、ネクタイは黒や紺を基調に
しているが、気分に合わせて色やデザインを変えて着用している。
いわゆる紳士、淑女のたしなみだ、それにくらべてメリーの服はヒラヒラとフリルの付いたドレス系の服装が多い。
帽子だって不思議な帽子をかぶっている、今度どこで買ってくるのか聴いてみよう。
「所でメリー、テレビでも見ない?」
無音の部屋でボーっとしているのも何だかなぁ と、メリーに提案してみた。
「いいけど、何か面白い番組でもやってるの?」
こたつの上に放り投げてあった新聞紙を開く、もちろん番組欄だ。
項目を見て行くと、ドキュメンタリー番組に一際目を引く番組があった。
「あ、これなんてどう?”6年前に消えた神社の謎に迫る!”だって」
「あー・・・あの事件、どうなっちゃったのかしらね?」
「うん、神社とそこに居た女の子が消えちゃったって話ね」
過去の話題に触れながら、テレビのリモコンで電源を付けた。
まだ番組は始まっていないようでスポンサーのCMが次々と流れている。
『単独潜入、極限の緊張感が蘇る!「戦場にヒーローは居ない・・・」』
『喫煙はあなたにとって心筋梗塞の可能性を高めます』
「まだ始まらないのかしら?」
「後ちょっとだから落ち着きなさいって」
オカルト好きにはたまらないのだろう、書く言う私もこの手の番組は好きなのだが。
CMが終わったのか番組のテーマと共に画面に”突撃ミステリー”と言うデカデカとしたロゴが表示される。
ここでやはり司会者の長々しい説明が始まった。
『えー、みなさんこんばんは、今回は6年前に起こったミステリーについて・・・突撃!』
六年前にとある地方から跡形も無く消え去った諏訪神社、そしてそこの巫女さんに近い事をしていたと言う高校生の
行方不明事件、今考えても十分不思議な事件である。
ふとさっきまで楽しみにしていたメリーの顔をみると真剣な顔になっていた。
(どうしちゃったのかしら・・・)
いつもなら少しにやけ顔で番組を見ているのだが、今の顔はどうがんばってもにやけ顔にはみえなかった。
「ねぇ蓮子、さっき言ってた紫色の話なんだけど・・・」
「ん?むらさき?」
「うん、会う前にこの神社見てきたのよ」
「え?・・・」
私はメリーの言っている事がイマイチ解らなかった、現に神社は消えているのだ、それに私もメリーもテレビに
映っているこの神社を見たことが無いはずなのに・・・・
「あぁ、夢の話よ、でもテレビの写真とそっくりだったから」
「それで紫色の人の話は?」
「うん、なんだか神社に入ろうとしたらその人がいきなり後ろから出てきてね・・・」
疑問点が一つあった、それはメリーでも声を掛けられる距離に居る人になぜ気が付かなかったのか・・・
「それで?」
「それで四つ忠告されたの、この先の神社に入ってはいけない、博霊神社に近寄ってはいけない、むやみに探索しない事」
「博霊神社・・・どこかで聞いた事あったような」
「最後にあの人は”知らない人についていかない事、神隠しに遭っても知らないわよ”って」
「神隠しねぇ」
神隠しなんて良く聞くが実際はどうなんだろうと真剣に考えてみる、しかし結局思考が空回りするだけだ。
物理学で解決出来る問題じゃないと改めて思ってしまった。
「あれ、番組終わり?」
「あ、本当だ、やっぱり引っ張るだけ引っ張っておいて結局解らず仕舞いか」
まぁメリーの夢に出てきたって事は、解決出来る訳無いと解りきっていたのだが・・・
「私なりに推測するとね、多分その神社の中、絶対あの子居るわよ」
「蓮子、それは多分合ってるけど忠告は聴くものよ、あの人の笑った顔・・・不気味だったし」
「不気味って、どんな?」
「こんな感じで・・・」
メリーは私に顔で表現しようとしていたが、その顔は変にほくそ笑んだ顔にしか見えなかった。
このメリーの顔は新鮮で自然と笑いが込み上げてくる。
「ぷ、くく・・あはは!メリー・・その顔!」
「ちょっと!ひどいじゃない、結構怖かったんだから」
「はいはい、くっ・・・」
「笑うなんて、もう」
メリーは珍しく怒っている、こんなメリーも可愛いなぁ。
「わかったわかった、もうこんな時間だから何か作って食べましょう」
「蓮子がキッチンに立ったら生きて帰れないわ」
「・・・で?何、メリーが作ってくれるの?」
「冗談よ、一緒にやれば何でも作れるわ」
テレビの電源を消してしぶしぶと二人で暖かいこたつから抜け出る、こたつから出ただけで猛吹雪・・・
って言うのは激しすぎるだろうか?。
メリーが先に階段を下りる、するとメリーのブロンドの髪から良い匂いがする、シャンプーでも変えたのだろうか?
「メリー、シャンプー変えた?」
「あれ、解った?蓮子は変な所で鋭いのね」
「ふふ、まぁね」
よっし正解! とメリーの後ろでガッツポーズしてしまった、だがメリーには気づかれていないようだ。
髪の匂いは柑橘に近い甘い香りだった、そういえばミカンが食べたくなる季節だ、今度余裕があれば買ってこよう。
そんな事を考えていると台所に着いてしまった、台所からはまだ家庭の匂いと呼べる匂いが残っていた。
「で、蓮子は何が食べたいの?」
私は一応料理は出来る方なのだが、私の腕よりメリーの腕の方が二枚ほど上手だった。
「メリーに任せるわよ」
「う~ん、じゃあパスタなんかはどう?」
「そうね、確か三人分くらいは余りが・・・」
私は麺類がしまってある引き出しを開ける、すると案の定パスタが残ってくれていた。
メリーの料理はバリエーション豊富なのだが中華料理は苦手らしい、なので和風中華風を作る時は決まって私、
そして洋風全般はメリーとなっている。
「粉チーズなんかは?」
「あるわよ」
材料は腐らない程度に確保してあるので、二人分の料理を作る分には問題無いだろう。
粉チーズを要求する、イコール次は卵と言う確立が高いわね。
「じゃあ、それと・・・」
「卵でしょ?」
「?なんだか今日の蓮子は鋭すぎて怖いわ」
「簡単な予想よ、また作るんでしょ、カルボナーラ?」
「うん」
やっぱりカルボナーラか、メリーはソースから作るのですぐに予想が付いた。
それに前来た時もカルボナーラだったのだ、好きなのかな?カルボナーラ・・・
台所に様々な材料が並んで行く、ベーコン、玉ねぎ、キノコ、塩コショウ、黒コショウ
こんなに家に材料が揃っていたとは思わなかった。
「まずは卵を割って、・・・卵黄を取り出す」
「ふむふむ」
「次にボウルに移して粉チーズと混ぜる」
「ほー」
「次に・・・って蓮子!さっきから見てばっかりじゃない、少しは手伝ってよ」
「りょーかーい、ベーコンを切っておくね」
料理は着々と進んで行く、次は肝心のパスタを茹でる。
「いい?蓮子、取り合えずよだれ拭きなさい、ここが正念場よ、カルボナーラを最大限に生かすには
パスタの湯で具合、これが要よ。」
「う、うん」
メリーは今まさにこのパスタに情熱を注いでいる、パスタ(フェットチーネ)と呼ばれるカルボナーラにマッチする
太いパスタを使用する。
太いパスタにチーズとコショウの利いたソースが絡み付いて・・・・思い出しただけでよだれが出そうだ。
実際垂れそうになっていたが・・・
「すーーっ、はぁーーー」
メリーが深呼吸する、どうやったら料理にこんな真剣になれるのか、メリーの謎は尽きない。
メリーはさっきからパスタを入れるタイミングを見計らっている・・・
「今よ!!」
「うわっ!びっくりしたぁ・・・」
「静かに!集中よ・・」
メリーは時間を数えている、およそ五分を少し過ぎた時にメリーがアクションを起こした。
二人分のパスタをクツクツ煮ている鍋にパスタ専用の挟みで一気にパスタを掴み上げ、先ほど玉ねぎ
ベーコンを炒めてソースを和えておいたフライパンに湯きりしたパスタをぶち込んだのだ!
「それっ!」
「うわっ!、危ないじゃないメリー!」
「これで、・・・」
メリーはそっちのけでパスタを和えている、パスタの入射角は完璧でソースが飛び散る事は無かった。
メリーの動きは洗練されていて、頭の変な帽子がコック帽だったらさぞ似合っただろう。
「完成よ!!」
「わーーパチパチ(棒読み」
私とメリーで皿にパスタを盛って行く、この匂い・・・メリー、たまりません。
台所の椅子に腰を掛け、向かい会う形で食事は始まった。
二階に持って行くと片付けが大変だし、何より面倒だったからだ。
「「いただきます」」
やはりこの挨拶は大事である、その命を捧げてくれた生き物に感謝する。
パスタからは湯気が上がり、匂いを乗せて食欲を刺激する。
見た目、バランス、共に二重丸の出来栄えだ。
フォークでパスタをすくい、一口・・・・
メリーがこちらの様子を伺っているようだ、実に食べずらい。
気を取り直して一口、口に運んで行き十分に噛む、するとモチモチしたパスタと
口に広がるチーズ、コショウの味がたまらなかった。
「ん~、おいC~!」
「親父ギャグはいいから、早く食べましょう」
「そうね・・・」
親父ギャグかぁ・・・所詮私のネタは古いですよー
それにしてもメリーのパスタは美味しい、ほっぺが落ちるというのはこの事か。
無言になってしまう程に味が深いが、無言では二人で食べる食事の面白みが無い、ここは一つ雑学でも蓄えますか。
「ねぇメリー?カルボナーラってなんでカルボナーラって言うの?」
「それはね・・・」
始まった始まった・・・流石メリーとしか言い表せないわ
「ずばり、炭焼職人風ソースだからよ」
「ん?」
個人的にはもっと長い解説を求めていたのだが話のタネにはなるだろう。
確かにパスタに絡んでいる黒コショウが炭のように見える。
「なるほどねぇ、この黒コショウが炭っぽいって事ね」
「そう言う事になるわ」
「じゃあ、黒コショウがなかったら何になるの?」
「・・・・その発想は無かったわ、蓮子、新しい発見ね」
その会話からメリーは仕切りに考え事をしているようだった、そんなに新しい発見だったのかどうか
私には解らなかったがやはりメリーと一緒に居ると飽きる事がない。
「「ごちそうさまでした」」
締めもやはり挨拶が大事だ、命を頂いたのだから感謝するのは当然なのだ。
その後洗い物を二人でこなしていたのだが、なんと指先にヒビ切れが・・・
家の中も乾燥していたので仕方ない、後でカットバンでも貼っておこう、そう思っていたのだが・・・・・
「蓮子、指切れてるじゃない!ちょっと見せて」
「大丈夫だって」
するとメリーは私の手を掴んで、指の根元を抑え指先を咥えて血を吸ってきた。
突然の出来事で、私は一瞬硬直してしまった。
「ちゅ・・ん」
「ちょ、メリー!? あっ・・」
今まで感じた事が無い感覚に変な声を出してしまった、メリーがしばらくして口を離すと血が止まっていた。
正直このまま続けれれたら変な気が起きてたかもしれない・・・
「あーもう!びっくりしたじゃないの」
たぶん自分の顔は真っ赤になっているだろう、そしてメリーは可愛いなんて思っているに違いない。
「凝固因子を作っただけよ、赤くなっちゃって、可愛いんだから」
「・・・・」
思った通りだった、メリーに可愛いと言われるのは嬉しいのだがちょっと気恥ずかしい。
「とりあえずそこに座って待ってて、すぐ終わるから」
メリーが言った通り後は皿ぐらいしか残っていない、洗い物をしているメリーを見ているとなんだか
不思議な気分になる。
結婚したらメリーが奥さん?旦那さん?・・・何考えてるんだろ私
「食器はここでいいの?」
「う、うん」
(結婚かぁ、去年婚約したのは良いんだけど外国まで行くのも大変だし、日本の法律変わらないのかなぁ。)
「蓮子、考え事?」
「結婚、外国までいかなくちゃ行けないのかなぁってね・・・・って!違う違う!今のはスルーで!」
「いいじゃない、婚姻届けついでに新婚旅行に行けば一石二鳥よ」
満面の笑みで悩みを打ち砕かれた、なんたる失態!
メリーの発想は素晴らしいのだが、スルーして欲しかった想いは変わらない。
「蓮子、真剣に考えてくれたんだ・・・ありがとう」
「うん、もう決めた事だし、その、筋は通さないとね」
何だか変な空気が流れてしまった・・・・
実家の両親にもメリーと付き合っている事を一緒に打ち明けたのだが、両親は全く反対する様子は無かった。
むしろ喜んでいたようで私の両親からお墨付きをもらったのだ、その後メリーと婚約を交わした。
私は何があってもメリーと結婚したい。
私は何があっても蓮子と結婚したい。
この想いは誰にも譲れない、二人だけの約束。
「ふふ、じゃお腹もふくれたし部屋に戻りましょうか」
部屋に戻るまで二人は無言だった、さっきの空気の所為だろう。
だが決まってメリーが空気を和らげてくれる、こんなシュチュエーションは初めてではなかったの
だが、やはりぎこちなくなってしまう。
「ほら蓮子!いつまでも下向かないの」
「うん、じゃあ気晴らしにお風呂行って来る・・・」
「気晴らしって・・・」
メリーを後に部屋を出る、やっぱり心の洗濯は大事である。
家のお風呂は広い方では無いのでゆったりとは行かないのだが・・・
お風呂の扉を開ける、衣服を脱いで風呂場に向かう、お湯はガスと言う便利な物がある
のですぐに湯船をお湯で満たす事が出来た。
冬のお風呂は寒いなぁ・・・
「先に髪の毛洗っとこうっと」
私の髪はメリーみたいに長くは無いので洗うのに時間は掛からない、コンビニで買ってきた
安物シャンプーを手のひらに取り、髪に馴染ませて行く。
所で髪の毛を洗っている時にこう思った事は無いだろうか?
後ろに誰か居るのでは無いだろうか?
私はよくあるのだが、やっぱり考えすぎだろうか?
髪に泡をつけたまま体を洗う、節約にも繋がると思うのだが面倒だからそうしているだけである。
視線を自分の胸に移す
「・・・はぁ」
どうしようも無い真実を素直に受け入れよう、きっと同じ悩みを抱えている人は大勢居るハズ!
体系だって標準だし・・・いや?太ったか?
ゴシゴシと体を洗う、細かい表現は色々マズイので省略しておくわ。
(ん?、今誰に説明したんだろ?まぁいっか)
シャワーで泡を洗い流す、う~んサッパリした!
お湯が溜まった湯船に浸かる、いやはやこれは良い湯加減ですなぁ。
「ふぅ~、温か~」
やっぱり寒い日のお風呂はたまらない物がある、疲れがお湯に溶けていくようだ。
お風呂の素晴らしさに浸っていた、その刹那・・・
ガラガラ
!?
いきなりお風呂の戸が何者かによって開け放たれたのだ!
うぉい!?メリー・・・マジすか?
「蓮子、一緒に入ってもいいでしょ?」
「ダメダメ!絶対ダメー!!」
「蓮子、私の事嫌いになっちゃったんだ・・・・」
「違うから!そしてちゃっかり服脱ぐな!」
「いいじゃない、減るもんじゃ無いし」
「・・・仕方ないわね」
どうせ意地張っても折れないんだから入れてしまえ、もしかして頭洗ってる時から後ろに居たんじゃ・・・
なんだろう、お風呂に浸かっているのに寒くなってきたぞ。
「ねぇ蓮子?髪の毛、洗ってくれない?」
「良いけど、恥ずかしいから壁向いててね!」
「え~」
「え~、じゃない!」
「解ったわよ」
私は湯船から身を乗り出す形でメリーの髪を洗ってあげる、メリーの髪は長いので洗うのが大変そうだ。
洗っているとメリーの髪に指が引っかかってしまった、テンパ?
「痛いわ蓮子、もっと優しく・・・・ね?」
「変な誤解招く発言は禁止、メリーってテンパ?」
「失礼ね!ウェーブよ」
「でも綺麗な金髪よね」
「それはありがと・・・ふふふ」
メリーの髪ってウェーブかけてたんだ・・・全く知らなかったわ。
「ね、次は体洗ってくれない?」
「後ろだけね」
「いや、前も」
「不可能です」
「いいえ可能だわ」
「物理で説明するならニュートン力学を根元からへし折る位不可能よ」
「いいえ可能よ」
「作用・反作用の法則が働いているから私はこれ以上手を前に出せないわ」
「・・・仕方ないわねぇ、じゃあ前は自分で洗うわよ」
「解ればよろしい」
危なかった、何とか折れてくれたみたいだ、このまま折れなかったらメリーが風邪を引いてしまう。
メリーから渡されたスポンジで背中を洗って行く。
やっぱり華奢だなぁ、出るとこは出てるし・・・
背中を綺麗にしているといきなりメリーが洗っている私の手を掴んできた。
まさか・・・
「やっぱり届くじゃない」
「ちょ、止めてよ!」
「良いではないか、良いではないか」
「どこの悪代官よ!?」
やっぱり簡単には折れてくれなかったみたいだ、私の手がメリーの好きなように操られている。
「あん、もう蓮子ったら大胆ね」
「ーーーっ、あんたどこに・・・」
メリーは私の手に握っているスポンジで胸を洗い始めた、ちくしょー嫌味か!
それにしても、柔らかい・・・・くっ!
「さてさて、お次はっと」
メリーの手はだんだん下に下げられて行く、これはマズイ。
「離して!駄目よメリー」
「女の子同士なんだから気にしないの」
「止めて!ヤバイってば!・・・・いっ」
「蓮子、そろそろ私のカスリ点よ!」
「いやぁあああ!ボムる!」
少女奮闘中・・・・・・
「はぁはぁ、凄い・・・グレイズ」
「残機がもう無い!?メリーあんたって人は!」
|
--・--
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ティウンティウン・・・・
SpellBonus!!
58000000
「はぁはぁ、あ、危なかった・・・・」
「><;」
「はい変な顔文字使わない」
「もう、あんなに暴れる事無いじゃない」
「当たり前でしょ!悪乗りがすぎるのよ」
「今度は私が蓮子の洗ってあげようか?」
「の って何よ!?を でしょ!」
「何だって良いじゃない、冗談よ」
「冗談じゃなかったら死んでた」
「そしたら私が生き返らせるわ」
「無理ね」
「うん無理」
お風呂を二人であがる事にしたのだが、重要な事に気が付いた
「あーー!!!、着替え持って来てない!」
「大丈夫よ蓮子、あなたの部屋から持って来てるわ」
「メリーの着替えは?」
「前にあなたのタンスに入れさせてもらったから大丈夫よ」
なんだってー!!
もう何が何だか解らない状態のまま二人でお風呂を後にする、メリー中々の策士ね。
部屋に戻る途中の階段で気が付いたのだが、メリーの髪の匂いが安っぽくなってしまっていた。
あぁ、私はなんて勿体無い事を・・・
部屋に戻るとこたつにまた戻る、こたつは冷え切っていて今は火照った体に気持ちよかった。
「ねぇ、今日は泊まってっても良いかしら?」
「ん?いいわよ」
「そう?じゃあ遠慮無くそうさせてもらうわね」
「寝るにはまだ早いし・・・トランプでもやる?」
「いいわよ、精神学共に心理学を学んだこの力、勝てると思わないでね」
何だか私とメリーの間に火花が散っているような、いないような・・・
オーソドックスにババ抜きをする事にした、心理学ねぇ。
揃ったカードが切られて山になって行く、そして本当のバトルが今始まった。
(メリーはババを持っている、残り4枚・・・・)
一番右のカードに手を伸ばす、するとメリーはニヤリと笑っている。
「そんな手には乗らないわ、フェイクだって事はお見通しよ!」
カードを抜き取る、すると・・・
「ノォォォオオオオ!!!」
「裏をかくって言葉を知らないの?」
くそ、メリーめ!こしゃくな手を!この私にババを引かせるとは・・・
「さて、準備は?」
「ちょっと待って・・・」
カードを混ぜる、私のカードは5枚、そして真ん中にババを配置する。
きっとメリーなら真ん中にババを配置すると見せかけて、別のカードを配置すると考え
真ん中のカードを引くだろう。
「うん、オッケー」
「じゃあ・・・うーん」
うんうん、悩んでる、このペースは良い感じだ。
「これね」
「あっ!」
「後3枚よ・・・」
メリーは一番左のカードを引いていた。
なぜだ!?私の読みは完璧のハズだ・・・
・・・・なるほど、真ん中はトラップの確立が1/2、しかしその他で考えれば1/4でババの確立が低い。
「さて、1枚引いて」
「くう」
「はい、後2枚」
私は後3枚、こうなったらランダムだ!目も合わせるもんか。
「どうぞメリー」
「なかなか面白い手ね・・・」
「はい」
メリーは返事をしたのでカードは引いたはずだ、ババなら試合続行、違えば敗北だ。
カードを見る、ババがある、しかしカードは3枚のままだった。
「じゃあ引くわね」
「・・・・・」
明らかにメリーは私の目を見ていた、そして私がババの在る無しを確認した瞬間にカードを引いてきた。
もちろん目線でババの位置はばれている、私の負けだった。OTZ
「はい、蓮子の番よ」
「はぁ」
メリーの最後の一枚を引く、これでメリーの完全勝利は確定した。
「あがりね」
「うぅ・・・ずるい」
「ずるくないわ、心理戦よ」
「メリーには敵わないわ」
カードゲームは終了し、私は敗北した。
流石メリーね・・・今度はなんとか勝つ方法を作らなければ
部屋の電気を消しメリーと一緒にベッドに寝る、なんだか新婚さんって感じだ。
するとメリーが体を絡ませてくる、またですかいメリーさんよ。
「ん~♪、温かい」
「ちょっと、くるっし・・・」
「すー、すー」
「?寝ちゃったの?メリー」
「すー、・・・すー」
「無呼吸症!?やばいわね・・・」
メリーの将来が心配だ・・・
「隙あり!」
「きゃ!メリー!?」
「甘いわね、私が先に寝ると思うの?」
「どこ触って・・・っく」
「ほーら、気合でよけれれるかしら?」
「そこは・・・卑怯者!」
少女抵抗中・・・・
「いきなりチャージショット?臆病ね」
「ノーミス!?彼岸花レベルにするんじゃなか・・・」
ピチューン!
SpellFalead!
No Bonus・・・
「そこは、う・・・あぁ、ふあ・・」
「ほら、蓮子のここ・・・もうこんなに」
・・・・・・もうされるがままでいいや・・・・・・・
「まいどお馴染み紫色の人よ、色んな事情で黒文字と白文字の境界を弄らせていただいたわ、
特別な能力があればドラッグ&スクロールで文字が読めると思うんだけど」
「蓮子、ごちそうさま」
「・・・・・・・」
「あら、寝ちゃった?仕方ないわね、私も疲れたし・・・」
メリーは深い眠りにつく、そして夢の世界へ・・・
___マエリベリー・ハーン____夢の中の幻想郷________
「ここは?」
見たことがある竹林の前、竹やぶからはパチパチと竹が焼ける音が聞こえてくる。
空を見上げると白い煙が月に照らされ月まで延びていた。
奥から声が聞こえる・・・・
「せっかく出してもらったんだから、運動しないとねぇ!」
「輝夜!見ない内に随分インドアになっちゃって、体脂肪でも蓄えてたかい?」
「減らない口ね、久しぶりに本気で殺るわよ!」
「そりゃ楽しみだ!体脂肪だけでも燃やしていきなさい!」
長い銀髪にワイシャツ、もんぺを穿いた少女と長い黒髪の着物を着た女性が啖呵を切って
凄い剣幕で争っている。
煙は銀髪の少女の後ろに生えている竹からだった。
黒髪の女性は手を上に掲げた、手には褐色の玉を持っている。
「いくわよ!”ブリリアントドラゴンバレッタ”!」
何か技の名前だろうか、黒髪の女性の周りにカラフルな球体が浮かび、周りから尖った弾が
放射される。
銀髪の少女はその攻撃をもろに受けた、彼女の体には無数の穴が開きその場に倒れてしまった。
(死んじゃったの・・・?これは、何?)
黒髪の少女はその場で相手の出方を伺っているようだった、即死の状態なのに何を警戒しているのか?
「あら?もうお仕舞い?そんな訳無いわよね」
「ゴフッ、挨拶にしては上出来だ」
何かしゃべっているようだが私には遠くて聞き取れない、話が終わった瞬間、銀髪の少女の体が
いきなり燃えだした。
(人が燃えてる・・・)
すると彼女の体の穴は塞がって行く、いったいどうなっているのか私には解らなかった。
ここに蓮子が居なくて良かったと思う、居たら大声を出してあの二人に気づかれていただろう。
「凱風快晴”フジヤマヴォルケイノ”!」
「火にはこれよ・・・”サラマンダーシールド”!」
「ふん!、わざわざ肝だめしに客をよこすなんて、輝夜らしい考えね!」
「そういうあなたは負けたんでしょ?」
「むきー!どうせ輝夜だって負けたんでしょー!?」
「そうよ!悪い!?」
ふたりの口論と攻撃は激しさを増して行く、すると流れ弾がこちらに飛んで来た!
(これはヤバイわ・・・)
細かい弾が私に向かってくる、夢なのだから大丈夫だと思い避けない洗濯を選んだのだが
少し不安だ、当たってしまったらどうなるのか・・・
そんな事を考えていたのだが時間は止まってくれない、私に当たる瞬間、目の前に奇妙な形をした
”スキマ”が現れ流れ弾がスキマに入って行く。
「もう、あなたは人間なんだからこんな所にいちゃだめよ」
「あっ、あなたは・・・」
「こっちいらっしゃい」
その紫色の人がスキマから手招きしている、ここは素直に従うべきだろう。
「何ここ?」
「境界の中よ」
「教会?」
「Borderよ何にも境界はあるわ」
「空間の境界・・・」
「それにしてもさっきのあなた、凄かったわね・・・フフ」
「え?なんの事?」
「彼女としてたでしょ」
「み、見てたの!?」
「えぇそれはもう、くんず解れず・・・若いっていいわねぇ」
「そういうあなたも若いと思うんだけれど・・・」
「見た目で判断するのはいけない事よ、真実は一つ先の境界を越えないと見えないわ」
「じゃあ一体何歳よ?」
「そうね、あなたは特別だから教えてあげる・・・」
ゴニョゴニョ・・・
「・・・・・境界って便利ですね」
「なんで敬語になるのよ」
「いえ、なんでもありません、妖怪って事とかにもつっこみません」
「ここは危険がいっぱいよ、さっさと現実に引き返しなさい」
「はい、あなたは一体・・・」
「そうね、しいて言うなら人攫いかしら」
「人攫いって・・・」
「妖怪は人を食べるの、そして妖怪は巫女に退治されるものよ」
「大変なんですね、私はあなたに・・・」
「大丈夫よ、あなたは食べられるより食べる側みたいだし」
「もう!プライベートは覗かないで下さいね!」
ちょくちょく覗かれたんじゃたまったもんじゃないわ・・・
「解ってるわよ、しっかし同姓で結婚ねぇ、あっち側は変わってるわね」
「いいじゃないですか、好きあう者同士が結ばれる事はいけない事ですか?」
「いいえ、いいんじゃない?自由な考えは好きよ」
理解してくれる人がいると安心できる、私は確信した。
この人は良い人だ
「さて、そろそろ夜明けだし、眠くなってきたわ」
紫色の人は軽くあくびをしている、夜行性なのだろうか?
「じゃあそろそろ戻りますね」
「ええ、そこの境界をくぐりなさい、愛しの彼女が待ってるわよ」
「・・・それじゃあまた会いましょう、境界に住む不思議なお姉さん」
「また会いましょう、境界能力を持つお嬢さん」
___マエリベリー・ハーン______現在・朝_____
境界をくぐると私の目が覚めた、目覚めは少し悪かったが貴重な経験だったなぁ。
(蓮子、まだ寝てる・・・可愛い)
「蓮子、昨日は無理やりごめんね・・・」
「ん、うぅん・・」
ゴツッ!
「ーったぁい」
いきなり蓮子が起きたので額をぶつけてしまう、結構痛いので涙腺から涙だ少し出てしまう
(あ、零れた・・・)
「ん?」
(な、飲んだーーー!!)
涙を飲んだ事に驚いたがまずは起きているかの確認を兼ねて・・・
「痛いじゃない、蓮子・・・」
「あぁ、ごめん・・・」
おぉ、起きてる。
「でも、蓮子の寝顔可愛かったよ・・・ふふ」
さて、どんな反応を示すのかなぁ、ワクワク・・・
「っ!なんでメリーがここに居るのよ!?」
「?だって昨日泊まっても良いって言ったのは蓮子よ?」
昨日の事忘れちゃったのかな?それはそれで良いんだけど
「あぁ、そうっだったわね、あはは・・・」
笑ってごまかしたな、蓮子の得意技だ。
___マエリベリー・ハーン編_____終了_____
______宇佐見 蓮子編______現在・朝2___
昨日の事を思い出して行く、パスタを食べてお風呂に入って
カードゲームして・・・・・
(そうだ、私メリーに・・・)
「ねぇ、メリー あなた昨日・・・」
「昨日の事は謝るわ、無理強いしちゃってごめん」
メリーは軽く頭を下げた、メリーらしくもない。
別に嫌では無かったし・・・ちょっと嬉しかったし
「ううん、いいの、メリーが望むなら・・・」
「蓮子・・・」
「だから今度はちゃんと言っておいてね!、いきなりは良くないわ」
「うん、善処するわ」
「はいこの話は終了、今日の予定は?」
「ウエディングプランでも立てに行く?」
いつもならここで私はあまり乗り気では無かっただろう、でも今は違う。
昨日メリーが私を変えるきっかけを作ってくれたから・・・結婚しても心配は要らないだろう
「それもいいわね、じゃあ朝ごはん食べたら出発ね」
メリーは一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔に戻った。
「わかったわ、今日は和食がいいわね」
「それじゃ着替えしたら台所行きましょうか」
メリーは私のタンスの一番下にある引き出しから紫の洋服を取り出して着替えを始める、私は
シワが綺麗に伸びたワイシャツに袖を通しスカートを穿く、ネクタイカラーは灰色と黒のチェック、
最後に帽子をかぶる。
「よし!行きましょうか」
「そうね」
今日は調子が良い、こんな清々しい日は久しぶりだ。
私はこんな日がいつまでも続くと信じている、もちろんメリーも同じだろう。
だからメリーを信じてこのままゴールインしたいと本気で思う
その気持ちはお婆ちゃんになっても変わらない
There is no borderline in Mary and my bonds.
The train that took Mary and me straight straight like the rail following infinity
began to cruise.
(私とメリーの絆に境界線なんて無い。
無限に続くレールのようにまっすぐ、まっすぐに
私とメリーを乗せた電車はゆっくり走り出した。)
_____えんど____
後日談
「紫様!いい加減起きてください」
「う~、昨日おそく寝たから眠いのよ・・・」
「何してたんですか?」
「藍には関係無い事よ・・・」
「あの人間ですか?」
「あなたの鋭い所、嫌いよ」
「すみません、紫様もほどほどにお願いしますね」
「わかってる、ちょっと興味があるだけよ」
興味があるって言う事が一番厄介なんですよねぇ
この間の夜の事件だって散々コキ使われたし
低速ボタンを押すたびに何度呼び出された事か・・・・・
「藍様~!お客様ですよー」
「あぁ、チェン今行くよ、それではごゆっくりお休み下さい」
紅白の巫女が家に来ていた、これは珍しい。
「ちょっと、誰でもいいから竹林の消火活動、手伝ってちょうだい」
「あぁ、じゃあちょっと待っててくれ」
紫様に聴かない事には出かけられない
「藍、行ってきなさい、きっと蓬莱人の仕業よ、昨日ドンパチやってたし・・・ふぁーあ」
地獄耳だなぁ・・・
「紫はいつも寝てるわね・・・」
「妖怪なんだから仕方ないでしょ」
幻想郷は今日も騒がしい
現実界では・・・
プルルルル、プルルルルル・・・
「あら?メリーから電話だわ・・・もしもし?」
「・・・・」
「もしもーし」
「私、メリー」
「それは解るわよ」
「今、あなたの・・・・」
「え?」
後ろには誰も居ない・・・
「お家にいるの」
「・・・っ!!」
私は全力ダッシュだ、電車はゆっくりなのに
メリーは連結車両を次々渡り、私の指定席に
座ってお茶を飲んでいる・・・・
「あら、おかえりなさいあなた」
「ハァハァ、今帰ったわ、メリー」
「お風呂にする、それともご飯?それとも私?」
「まず合鍵を返してもらおうか・・・・」
「いいわよ、まだ3つ残ってるし」
「ホームセンターの電話番号って何番?」
同じく騒がしくなりそうだ・・・・
_________________________________________
______宇佐見 蓮子____________現在・朝________
質素な天井と淡いカーテンから差し込む光。
夢から目が覚めかけて行く感覚を感じながら体を起こして行く、しかし体を起こすと、いつもなら有り得ない
現象が起こったのだ。
ゴツッ!
私の額になにかが勢い良くぶつかった、いつもなら体を起こした後に目をこすって朝の憂鬱さに浸って
いるはずなのだが、まだ眠気が覚めきっておらず何が起こったのか彼女には解らなかった。
しかも何かに額をぶつけた反動でベッドにまた仰向けになる形になってしまった、我ながら情けな
く感じる、朝が憂鬱でも二度寝をした事はなかったからだ。
解ることは自分が寝ていて起きると何かに額をぶつけたことだけ、眠気からか痛みをあまり感じ
無かったが意識がはっきりするにつれて痛みを感じてきた。
「いったぁー・・・」
しかし、声を先に出したのは自分では無かった
おかしい、ここは私の部屋で他に入ってくるような人は居ないはずだ、脳が上手く働かない、
呻き声をあげている何かは、自分の正面にいる事が声の位置で解った、五感は機能している。
ぼやけている視界をクリアにして行く、まだはっきりとは解らないが女性のようだ、
考えをまとめていると頬に何か液体が一滴降ってきた、液体は頬を伝って口の中に入ってしまった。
(しょっぱい?、塩水・・・にしては甘いような)
「痛いじゃない、蓮子・・・」
相手は私の名前を知っている、そこで覚めきっていなかった脳がようやく働いてくれた。
「あぁ、ごめん・・・」
相手は少し涙を流していて、謝っておいた方が良いようだ。
「でも、蓮子の寝顔可愛かったよ・・・ふふ」
その一言は衝撃的で一気に目が覚めた、私が目を覚まして一番最初に見たものは、マエリベリー・ハーンの笑顔だった。
「っ!なんでメリーがここに居るのよ!?」
「?だって昨日泊まっても良いって言ったのは蓮子よ?」
昨日の記憶をたどって行く、目が覚めていたので事はスムーズに進んだ。
こうなったら笑うしかないだろう・・・・
「あぁ、そうっだったわね、あはは・・・」
___宇佐見 蓮子______________|昨夜|___________
騒がしい駅のホーム、朝から夜にかけて人が絶える事は無い、行き交う人たちは何を求め
何の為に、この寒い雪の降る外に出かけるのだろう と、考え事をしながらホームの階段を上がる。
ホームから出ると、街と雪は街灯に照らされ、もうクリスマスのイルミネーションも飾ってあった、
少々気が早いのでは無いかと思ってしまったがこれはこれで趣きがある。
イルミネーションには目もくれず、雪の降る街を親友以上、夫婦未満、のメリーと共に目的地に向かっていた。
私達の吐く息は真っ白で、大きな雲のようだ。
隣を歩くメリーは寒いのに元気そうだ、少しでもその元気を分けて欲しいと思ったのは一体
何度目だろう。
「ん?どうしたの蓮子、じっと見つめて・・・何かついてる?」
「い、いや、何も・・・所でメリー、寒く無いの?」
「寒いわよ」
「じゃあなんでそんなゆっくり歩くのよ?」
「だって綺麗じゃない?イルミネーション」
今まで目もくれていなかったが、改めてじっくり見るとイルミネーションの光が雪に反射して
とても神秘的だった。
「あぁ、本当ね・・・」
「まるで違う世界に来ちゃったみたい」
クリスマスでは無いのだがクリスマスムードに二人で浸ってしまった
光に反射してキラキラ輝くメリーを私の心のアルバムに焼け付けた。
違う世界ねぇ・・・行った事は無いけれどメリーと見たことならあるのだ。
このいい感じのムードを壊したくは無かったのでその話は控える事にした。
誰もデート中にお墓とか幽霊の話はしないものだ、今はただメリーと素敵な夜を楽しみながら
楽しいひと時を過ごしたい。
メリーの手を引いて騒がしい商店街を抜けて行く、夜の商店街はまだ賑わいを保っていた。
「う~ん、そろそろ目的地に着くわね」
「目的地って・・・私の家じゃないの」
メリーは決まってデートをした日の最後には私の家に寄る、正直嬉しいんだか迷惑なんだか複雑だ、
しかし彼女が居て退屈した事は無いのは確かだ、今では欠けがいの無い存在と言える。
「ところで今何時か解る?」
「う~ん・・・」
メリーが突然話しかけて来たので驚いてしまったが、時間を気にしているのだろうか?、星を見るのも久しぶりだ。
私は曇った夜空を見上げる、二酸化炭素排出などの影響で京都の空も少しくぐもっていたが、私の能力に差し支え無い
程度だった、あたりを見回し今の季節で見える星座と方角位置を確かめて行く。
「ん・・・大体8:20分ってところじゃないの?」
「ふむふむ・・・おぉ!ぴったりよ蓮子」
メリーはポケットから携帯電話を取り出して時間を確認していた、最初から見れば良かったのに と、思ったのだが
これはいつもの事でメリーが珍しがって聴いて来る時があるのだ。
少し天文学を勉強すれば誰でも出来るような気がするのだが・・・
「メリーも物好きね、いちいち聞いてくるなんて」
本当にそう思う
「本当に蓮子の能力ってすごいわね、ふふ」
「能力って程でも無いし、メリーの能力の方が飛び抜けてすごいと思うんだけど・・・」
メリーの能力は実際に飛び抜けている、以前までは結界の境界が見えると言う能力で一緒にサークル活動として
結界のほつれに出来た境界から向こうの世界を覗いていたのだが、メリーに変化が起きたらしく結界を操る能力になっているらしい。
メリーは以前にその能力を使って何回か向こうの世界に行ってきたらしいが、よく解らないとしか答えない。
後から詳しく聞くと夢だったらしいが・・・
「そうよね・・・あれ?この間話したっけ?あの紫色の人の話」
「いいえ?、まぁそういう積もる話は私ん家でね」
「そうね、そろそろ冷えてきたし」
商店街から外れた裏路地を通る、俗に近道と呼ばれるものだ。
先ほどと違い全く人気が無い。
狭い裏路地はただでさえ薄暗いのに街灯も付いていないので夜は真っ暗だった、まるでこの空間に取り残されて
しまった錯覚に私は襲われる。
「それにしても真っ暗ね・・・」
「蓮子が居れば安心よ」
メリーはえらく張り切っている、私自身オカルトは好きなのだがホラーは全く苦手だった、オカルトはUFOとか
宇宙人とかそういう類の物であって幽霊や妖怪とはまた違う、似ても似つかない存在だと思う。
メリーは私と違ってそっちの類もふくめてオカルトは好きな方だった。
「言っておくけど何か出たら逃げるから、後はよろしく」
私は薄っすら見えるメリーに親指をビッと立てて合図を送る、こんな私が少し情けない。
「逃げたら怒るわよ?」
「じょ、冗談だって・・」
「冗談に聞こえなかったんだけど」
メリーは私がホラーを苦手としている事はとっくに知られていた、親友以上の仲なので隠し事は一切無い。
「メリーのバカ、知ってるクセに・・・」
「ゴメンゴメン、怒らないの、カルシウム足りてないんじゃない?」
メリーは私が怒るとたまにさっきのセリフを言ってくる。
実際カルシウムが足りていないのは確かで最近牛乳なんて物は飲んでないし、干した魚を骨ごと食べている訳でも無い。
胸だってメリーの方が大きいし、背も高い、カルシウム・・・取ってみようかな。
「またそれを言う・・・」
他愛もない話が弾みながら裏路地からようやく抜け出した、相対性精神学というものは話す相手にも影響があるの
かもしれない、話していると暗い路地裏に居た事なんて解らなくなってしまう位だった、それに比べて
私が専攻している超統一物理学なんてほとんど役に立っていないだろう。
「蓮子の家、見えてきたわ」
「ふぅ、なんか長かったなぁ」
「気のせいでしょ、それとも私とデートしてて疲れた?」
「そんな事ある訳ないでしょ」
「~♪」
メリーは上機嫌だ、彼女は決まって私の家に着く頃にはルンルン気分になっている。
いつからだったか、彼女と出かける行為がデートに変わってしまったのは・・・
ようやく家に着いた、家と言っても実家は東京にある、大学に通うために引っ越してきたのだが家には満足している。
見かけはまぁまぁ、お風呂にキッチン、二階まで付いているのだから文句を言ったら罰が当たってしまう。
合成木材で出来た無機質なドアのカギを開ける・・・・が
「あれ?ガギ開いてる・・・」
私は一瞬戸惑った、最近は物騒なもので空き巣や強盗なんてものはよくある、それがまさか自分の身に降りかかろうとは!
「メリー!緊急事態よ!空き巣が・・・!?」
「もしかして蓮子、カギかけ忘れた?」
メリーの言葉で今朝の事を振り返る、私は確か珍しく寝坊してメリーから電話が掛かってきたのだった、
その後大急ぎで玄関から飛び出して行った事を思い出す。
「あ・・れ?、あはは、嫌だなぁ」
顔には隠してあるが、とても恥ずかしかった。
「でも、空き巣って言う考えは有りね・・・調べましょ」
「う、うん」
メリーが先陣をきって我が家にずかずか入り込む、メリーは何回も遊びに来ているので家の構造は把握しているようだ、
台所、お風呂、リビング、隅々探したが荒らされた痕跡は無い。
「はぁ~、よかったぁ」
「いえ、安心するのはまだ早いわ・・・」
メリーはビシッと二階の階段を指差す、そこは紛れも無く私の部屋に通じる通路だった。
「あ、それもそうね」
「それじゃあ、さっそく調べましょう」
メリーがやけに張り切っている、この状況は何処かで・・・ 記憶がデジャヴする、この光景はいつだったか見た事があるのだ。
考え事をしていると人一人が通れる隙間の階段をメリーがドタドタ駆け上がって行く、まるで遊園地に来た子供のようだ。
「ちょっと!メリー?」
二階に上がるとメリーが私の部屋を物色していた、あんたが荒らしてどうする と、突っ込みを入れたかったが事態は
悪化していた、メリーが私のタンスを漁り始めたのだ! この光景はいつか見た事がある。
「うわ~派手な下着」
「な、何見てんのよ!」
「パンツ」
思い出した、この光景は一年前、ちょうど今ぐらいの時期だったか、メリーを家に招待した日にメリーがこの行動を取った。
最初はこたつでサークルの予定について話していたのだが、メリーは何を思ったのか人の部屋を物色し始めたのだ。
やめて!と止めたのだが言うことなど聴くはずが無い、そしてタンスから私の・・・
思い出すだけで恥ずかしい、もう二度と同じ過ちは繰り返さないようにしようと思っていたのだがすっかり忘れてしまっていた。
(あれ?たしか、パンツの次は・・・)
「うわぁ、可愛いブラね」
「どっちの意味でよ?」
下着の次は胸当てだった、私は確信した。
絶対私の胸、絶対バカにしてる。
「どっちもよ」
メリーはとにかく私より大きい、それが羨ましくもあり、憧れだったわけだが・・・
今はただ私のストレスを溜めて行くだけに成り果てた大きな山だった。
「はぁ、取り合えずしまったしまった」
「わかったわよもう、荒らされた様子もないし安心ね」
メリーに言われてから気が付いたが、部屋を荒らされた痕跡はタンス以外無かった。
ふぅ と、安堵の息がこぼれる、今度から戸締りには気をつけよう・・・
二人は落ち着きを取り戻し、冷え切った体を温めるためにこたつに入った。
「どっこいしょういち」
「はいそこ、変な言葉話さない」
「蓮子、これは”よっこいしょの原語よ」
「ふーん、そーなのかー」
メリーはどうでも良い知識をたくさん持っている、別の意味での知識人、この場合は雑学王かな?
こたつに入ったのは良いものの、電源が付いているわけでは無いので温かくは無かった。
「うーさみー」
「いつから蓮子は親父ギャグに目覚めたの?」
「知らないわよ、それよりそっちにスイッチあるでしょ?付けて」
うーさみー、我ながら上手い事言ったと思ったのだが・・・
メリーがこたつの中にあるスイッチを探り当てる、すると電気こたつの中心から暖かさと共に変な音が聞こえて来た。
家の電気こたつは比較的古いタイプなので仕方ない と、割り切っていたがやはり気になる。
電気こたつの音を気にしているとメリーが部屋を見回していた、観察と言った方が解りやすいだろう。
「ふい~温かい」
「蓮子の部屋は相変わらず質素ね」
「いいじゃない、私はその方が落ち着くの」
少し呆れ気味のメリーを諭す。
壁にはワイシャツが掛けてあり、そのハンガーにはネクタイ、フックに帽子と色々掛けてある。
男の子が着ているワイシャツが目立つので、女の子の部屋にはとても見えない。
ワイシャツや帽子などは大体同じデザインの物を選んで買うのだが、ネクタイは別である、ネクタイは黒や紺を基調に
しているが、気分に合わせて色やデザインを変えて着用している。
いわゆる紳士、淑女のたしなみだ、それにくらべてメリーの服はヒラヒラとフリルの付いたドレス系の服装が多い。
帽子だって不思議な帽子をかぶっている、今度どこで買ってくるのか聴いてみよう。
「所でメリー、テレビでも見ない?」
無音の部屋でボーっとしているのも何だかなぁ と、メリーに提案してみた。
「いいけど、何か面白い番組でもやってるの?」
こたつの上に放り投げてあった新聞紙を開く、もちろん番組欄だ。
項目を見て行くと、ドキュメンタリー番組に一際目を引く番組があった。
「あ、これなんてどう?”6年前に消えた神社の謎に迫る!”だって」
「あー・・・あの事件、どうなっちゃったのかしらね?」
「うん、神社とそこに居た女の子が消えちゃったって話ね」
過去の話題に触れながら、テレビのリモコンで電源を付けた。
まだ番組は始まっていないようでスポンサーのCMが次々と流れている。
『単独潜入、極限の緊張感が蘇る!「戦場にヒーローは居ない・・・」』
『喫煙はあなたにとって心筋梗塞の可能性を高めます』
「まだ始まらないのかしら?」
「後ちょっとだから落ち着きなさいって」
オカルト好きにはたまらないのだろう、書く言う私もこの手の番組は好きなのだが。
CMが終わったのか番組のテーマと共に画面に”突撃ミステリー”と言うデカデカとしたロゴが表示される。
ここでやはり司会者の長々しい説明が始まった。
『えー、みなさんこんばんは、今回は6年前に起こったミステリーについて・・・突撃!』
六年前にとある地方から跡形も無く消え去った諏訪神社、そしてそこの巫女さんに近い事をしていたと言う高校生の
行方不明事件、今考えても十分不思議な事件である。
ふとさっきまで楽しみにしていたメリーの顔をみると真剣な顔になっていた。
(どうしちゃったのかしら・・・)
いつもなら少しにやけ顔で番組を見ているのだが、今の顔はどうがんばってもにやけ顔にはみえなかった。
「ねぇ蓮子、さっき言ってた紫色の話なんだけど・・・」
「ん?むらさき?」
「うん、会う前にこの神社見てきたのよ」
「え?・・・」
私はメリーの言っている事がイマイチ解らなかった、現に神社は消えているのだ、それに私もメリーもテレビに
映っているこの神社を見たことが無いはずなのに・・・・
「あぁ、夢の話よ、でもテレビの写真とそっくりだったから」
「それで紫色の人の話は?」
「うん、なんだか神社に入ろうとしたらその人がいきなり後ろから出てきてね・・・」
疑問点が一つあった、それはメリーでも声を掛けられる距離に居る人になぜ気が付かなかったのか・・・
「それで?」
「それで四つ忠告されたの、この先の神社に入ってはいけない、博霊神社に近寄ってはいけない、むやみに探索しない事」
「博霊神社・・・どこかで聞いた事あったような」
「最後にあの人は”知らない人についていかない事、神隠しに遭っても知らないわよ”って」
「神隠しねぇ」
神隠しなんて良く聞くが実際はどうなんだろうと真剣に考えてみる、しかし結局思考が空回りするだけだ。
物理学で解決出来る問題じゃないと改めて思ってしまった。
「あれ、番組終わり?」
「あ、本当だ、やっぱり引っ張るだけ引っ張っておいて結局解らず仕舞いか」
まぁメリーの夢に出てきたって事は、解決出来る訳無いと解りきっていたのだが・・・
「私なりに推測するとね、多分その神社の中、絶対あの子居るわよ」
「蓮子、それは多分合ってるけど忠告は聴くものよ、あの人の笑った顔・・・不気味だったし」
「不気味って、どんな?」
「こんな感じで・・・」
メリーは私に顔で表現しようとしていたが、その顔は変にほくそ笑んだ顔にしか見えなかった。
このメリーの顔は新鮮で自然と笑いが込み上げてくる。
「ぷ、くく・・あはは!メリー・・その顔!」
「ちょっと!ひどいじゃない、結構怖かったんだから」
「はいはい、くっ・・・」
「笑うなんて、もう」
メリーは珍しく怒っている、こんなメリーも可愛いなぁ。
「わかったわかった、もうこんな時間だから何か作って食べましょう」
「蓮子がキッチンに立ったら生きて帰れないわ」
「・・・で?何、メリーが作ってくれるの?」
「冗談よ、一緒にやれば何でも作れるわ」
テレビの電源を消してしぶしぶと二人で暖かいこたつから抜け出る、こたつから出ただけで猛吹雪・・・
って言うのは激しすぎるだろうか?。
メリーが先に階段を下りる、するとメリーのブロンドの髪から良い匂いがする、シャンプーでも変えたのだろうか?
「メリー、シャンプー変えた?」
「あれ、解った?蓮子は変な所で鋭いのね」
「ふふ、まぁね」
よっし正解! とメリーの後ろでガッツポーズしてしまった、だがメリーには気づかれていないようだ。
髪の匂いは柑橘に近い甘い香りだった、そういえばミカンが食べたくなる季節だ、今度余裕があれば買ってこよう。
そんな事を考えていると台所に着いてしまった、台所からはまだ家庭の匂いと呼べる匂いが残っていた。
「で、蓮子は何が食べたいの?」
私は一応料理は出来る方なのだが、私の腕よりメリーの腕の方が二枚ほど上手だった。
「メリーに任せるわよ」
「う~ん、じゃあパスタなんかはどう?」
「そうね、確か三人分くらいは余りが・・・」
私は麺類がしまってある引き出しを開ける、すると案の定パスタが残ってくれていた。
メリーの料理はバリエーション豊富なのだが中華料理は苦手らしい、なので和風中華風を作る時は決まって私、
そして洋風全般はメリーとなっている。
「粉チーズなんかは?」
「あるわよ」
材料は腐らない程度に確保してあるので、二人分の料理を作る分には問題無いだろう。
粉チーズを要求する、イコール次は卵と言う確立が高いわね。
「じゃあ、それと・・・」
「卵でしょ?」
「?なんだか今日の蓮子は鋭すぎて怖いわ」
「簡単な予想よ、また作るんでしょ、カルボナーラ?」
「うん」
やっぱりカルボナーラか、メリーはソースから作るのですぐに予想が付いた。
それに前来た時もカルボナーラだったのだ、好きなのかな?カルボナーラ・・・
台所に様々な材料が並んで行く、ベーコン、玉ねぎ、キノコ、塩コショウ、黒コショウ
こんなに家に材料が揃っていたとは思わなかった。
「まずは卵を割って、・・・卵黄を取り出す」
「ふむふむ」
「次にボウルに移して粉チーズと混ぜる」
「ほー」
「次に・・・って蓮子!さっきから見てばっかりじゃない、少しは手伝ってよ」
「りょーかーい、ベーコンを切っておくね」
料理は着々と進んで行く、次は肝心のパスタを茹でる。
「いい?蓮子、取り合えずよだれ拭きなさい、ここが正念場よ、カルボナーラを最大限に生かすには
パスタの湯で具合、これが要よ。」
「う、うん」
メリーは今まさにこのパスタに情熱を注いでいる、パスタ(フェットチーネ)と呼ばれるカルボナーラにマッチする
太いパスタを使用する。
太いパスタにチーズとコショウの利いたソースが絡み付いて・・・・思い出しただけでよだれが出そうだ。
実際垂れそうになっていたが・・・
「すーーっ、はぁーーー」
メリーが深呼吸する、どうやったら料理にこんな真剣になれるのか、メリーの謎は尽きない。
メリーはさっきからパスタを入れるタイミングを見計らっている・・・
「今よ!!」
「うわっ!びっくりしたぁ・・・」
「静かに!集中よ・・」
メリーは時間を数えている、およそ五分を少し過ぎた時にメリーがアクションを起こした。
二人分のパスタをクツクツ煮ている鍋にパスタ専用の挟みで一気にパスタを掴み上げ、先ほど玉ねぎ
ベーコンを炒めてソースを和えておいたフライパンに湯きりしたパスタをぶち込んだのだ!
「それっ!」
「うわっ!、危ないじゃないメリー!」
「これで、・・・」
メリーはそっちのけでパスタを和えている、パスタの入射角は完璧でソースが飛び散る事は無かった。
メリーの動きは洗練されていて、頭の変な帽子がコック帽だったらさぞ似合っただろう。
「完成よ!!」
「わーーパチパチ(棒読み」
私とメリーで皿にパスタを盛って行く、この匂い・・・メリー、たまりません。
台所の椅子に腰を掛け、向かい会う形で食事は始まった。
二階に持って行くと片付けが大変だし、何より面倒だったからだ。
「「いただきます」」
やはりこの挨拶は大事である、その命を捧げてくれた生き物に感謝する。
パスタからは湯気が上がり、匂いを乗せて食欲を刺激する。
見た目、バランス、共に二重丸の出来栄えだ。
フォークでパスタをすくい、一口・・・・
メリーがこちらの様子を伺っているようだ、実に食べずらい。
気を取り直して一口、口に運んで行き十分に噛む、するとモチモチしたパスタと
口に広がるチーズ、コショウの味がたまらなかった。
「ん~、おいC~!」
「親父ギャグはいいから、早く食べましょう」
「そうね・・・」
親父ギャグかぁ・・・所詮私のネタは古いですよー
それにしてもメリーのパスタは美味しい、ほっぺが落ちるというのはこの事か。
無言になってしまう程に味が深いが、無言では二人で食べる食事の面白みが無い、ここは一つ雑学でも蓄えますか。
「ねぇメリー?カルボナーラってなんでカルボナーラって言うの?」
「それはね・・・」
始まった始まった・・・流石メリーとしか言い表せないわ
「ずばり、炭焼職人風ソースだからよ」
「ん?」
個人的にはもっと長い解説を求めていたのだが話のタネにはなるだろう。
確かにパスタに絡んでいる黒コショウが炭のように見える。
「なるほどねぇ、この黒コショウが炭っぽいって事ね」
「そう言う事になるわ」
「じゃあ、黒コショウがなかったら何になるの?」
「・・・・その発想は無かったわ、蓮子、新しい発見ね」
その会話からメリーは仕切りに考え事をしているようだった、そんなに新しい発見だったのかどうか
私には解らなかったがやはりメリーと一緒に居ると飽きる事がない。
「「ごちそうさまでした」」
締めもやはり挨拶が大事だ、命を頂いたのだから感謝するのは当然なのだ。
その後洗い物を二人でこなしていたのだが、なんと指先にヒビ切れが・・・
家の中も乾燥していたので仕方ない、後でカットバンでも貼っておこう、そう思っていたのだが・・・・・
「蓮子、指切れてるじゃない!ちょっと見せて」
「大丈夫だって」
するとメリーは私の手を掴んで、指の根元を抑え指先を咥えて血を吸ってきた。
突然の出来事で、私は一瞬硬直してしまった。
「ちゅ・・ん」
「ちょ、メリー!? あっ・・」
今まで感じた事が無い感覚に変な声を出してしまった、メリーがしばらくして口を離すと血が止まっていた。
正直このまま続けれれたら変な気が起きてたかもしれない・・・
「あーもう!びっくりしたじゃないの」
たぶん自分の顔は真っ赤になっているだろう、そしてメリーは可愛いなんて思っているに違いない。
「凝固因子を作っただけよ、赤くなっちゃって、可愛いんだから」
「・・・・」
思った通りだった、メリーに可愛いと言われるのは嬉しいのだがちょっと気恥ずかしい。
「とりあえずそこに座って待ってて、すぐ終わるから」
メリーが言った通り後は皿ぐらいしか残っていない、洗い物をしているメリーを見ているとなんだか
不思議な気分になる。
結婚したらメリーが奥さん?旦那さん?・・・何考えてるんだろ私
「食器はここでいいの?」
「う、うん」
(結婚かぁ、去年婚約したのは良いんだけど外国まで行くのも大変だし、日本の法律変わらないのかなぁ。)
「蓮子、考え事?」
「結婚、外国までいかなくちゃ行けないのかなぁってね・・・・って!違う違う!今のはスルーで!」
「いいじゃない、婚姻届けついでに新婚旅行に行けば一石二鳥よ」
満面の笑みで悩みを打ち砕かれた、なんたる失態!
メリーの発想は素晴らしいのだが、スルーして欲しかった想いは変わらない。
「蓮子、真剣に考えてくれたんだ・・・ありがとう」
「うん、もう決めた事だし、その、筋は通さないとね」
何だか変な空気が流れてしまった・・・・
実家の両親にもメリーと付き合っている事を一緒に打ち明けたのだが、両親は全く反対する様子は無かった。
むしろ喜んでいたようで私の両親からお墨付きをもらったのだ、その後メリーと婚約を交わした。
私は何があってもメリーと結婚したい。
私は何があっても蓮子と結婚したい。
この想いは誰にも譲れない、二人だけの約束。
「ふふ、じゃお腹もふくれたし部屋に戻りましょうか」
部屋に戻るまで二人は無言だった、さっきの空気の所為だろう。
だが決まってメリーが空気を和らげてくれる、こんなシュチュエーションは初めてではなかったの
だが、やはりぎこちなくなってしまう。
「ほら蓮子!いつまでも下向かないの」
「うん、じゃあ気晴らしにお風呂行って来る・・・」
「気晴らしって・・・」
メリーを後に部屋を出る、やっぱり心の洗濯は大事である。
家のお風呂は広い方では無いのでゆったりとは行かないのだが・・・
お風呂の扉を開ける、衣服を脱いで風呂場に向かう、お湯はガスと言う便利な物がある
のですぐに湯船をお湯で満たす事が出来た。
冬のお風呂は寒いなぁ・・・
「先に髪の毛洗っとこうっと」
私の髪はメリーみたいに長くは無いので洗うのに時間は掛からない、コンビニで買ってきた
安物シャンプーを手のひらに取り、髪に馴染ませて行く。
所で髪の毛を洗っている時にこう思った事は無いだろうか?
後ろに誰か居るのでは無いだろうか?
私はよくあるのだが、やっぱり考えすぎだろうか?
髪に泡をつけたまま体を洗う、節約にも繋がると思うのだが面倒だからそうしているだけである。
視線を自分の胸に移す
「・・・はぁ」
どうしようも無い真実を素直に受け入れよう、きっと同じ悩みを抱えている人は大勢居るハズ!
体系だって標準だし・・・いや?太ったか?
ゴシゴシと体を洗う、細かい表現は色々マズイので省略しておくわ。
(ん?、今誰に説明したんだろ?まぁいっか)
シャワーで泡を洗い流す、う~んサッパリした!
お湯が溜まった湯船に浸かる、いやはやこれは良い湯加減ですなぁ。
「ふぅ~、温か~」
やっぱり寒い日のお風呂はたまらない物がある、疲れがお湯に溶けていくようだ。
お風呂の素晴らしさに浸っていた、その刹那・・・
ガラガラ
!?
いきなりお風呂の戸が何者かによって開け放たれたのだ!
うぉい!?メリー・・・マジすか?
「蓮子、一緒に入ってもいいでしょ?」
「ダメダメ!絶対ダメー!!」
「蓮子、私の事嫌いになっちゃったんだ・・・・」
「違うから!そしてちゃっかり服脱ぐな!」
「いいじゃない、減るもんじゃ無いし」
「・・・仕方ないわね」
どうせ意地張っても折れないんだから入れてしまえ、もしかして頭洗ってる時から後ろに居たんじゃ・・・
なんだろう、お風呂に浸かっているのに寒くなってきたぞ。
「ねぇ蓮子?髪の毛、洗ってくれない?」
「良いけど、恥ずかしいから壁向いててね!」
「え~」
「え~、じゃない!」
「解ったわよ」
私は湯船から身を乗り出す形でメリーの髪を洗ってあげる、メリーの髪は長いので洗うのが大変そうだ。
洗っているとメリーの髪に指が引っかかってしまった、テンパ?
「痛いわ蓮子、もっと優しく・・・・ね?」
「変な誤解招く発言は禁止、メリーってテンパ?」
「失礼ね!ウェーブよ」
「でも綺麗な金髪よね」
「それはありがと・・・ふふふ」
メリーの髪ってウェーブかけてたんだ・・・全く知らなかったわ。
「ね、次は体洗ってくれない?」
「後ろだけね」
「いや、前も」
「不可能です」
「いいえ可能だわ」
「物理で説明するならニュートン力学を根元からへし折る位不可能よ」
「いいえ可能よ」
「作用・反作用の法則が働いているから私はこれ以上手を前に出せないわ」
「・・・仕方ないわねぇ、じゃあ前は自分で洗うわよ」
「解ればよろしい」
危なかった、何とか折れてくれたみたいだ、このまま折れなかったらメリーが風邪を引いてしまう。
メリーから渡されたスポンジで背中を洗って行く。
やっぱり華奢だなぁ、出るとこは出てるし・・・
背中を綺麗にしているといきなりメリーが洗っている私の手を掴んできた。
まさか・・・
「やっぱり届くじゃない」
「ちょ、止めてよ!」
「良いではないか、良いではないか」
「どこの悪代官よ!?」
やっぱり簡単には折れてくれなかったみたいだ、私の手がメリーの好きなように操られている。
「あん、もう蓮子ったら大胆ね」
「ーーーっ、あんたどこに・・・」
メリーは私の手に握っているスポンジで胸を洗い始めた、ちくしょー嫌味か!
それにしても、柔らかい・・・・くっ!
「さてさて、お次はっと」
メリーの手はだんだん下に下げられて行く、これはマズイ。
「離して!駄目よメリー」
「女の子同士なんだから気にしないの」
「止めて!ヤバイってば!・・・・いっ」
「蓮子、そろそろ私のカスリ点よ!」
「いやぁあああ!ボムる!」
少女奮闘中・・・・・・
「はぁはぁ、凄い・・・グレイズ」
「残機がもう無い!?メリーあんたって人は!」
|
--・--
|
ティウンティウン・・・・
SpellBonus!!
58000000
「はぁはぁ、あ、危なかった・・・・」
「><;」
「はい変な顔文字使わない」
「もう、あんなに暴れる事無いじゃない」
「当たり前でしょ!悪乗りがすぎるのよ」
「今度は私が蓮子の洗ってあげようか?」
「の って何よ!?を でしょ!」
「何だって良いじゃない、冗談よ」
「冗談じゃなかったら死んでた」
「そしたら私が生き返らせるわ」
「無理ね」
「うん無理」
お風呂を二人であがる事にしたのだが、重要な事に気が付いた
「あーー!!!、着替え持って来てない!」
「大丈夫よ蓮子、あなたの部屋から持って来てるわ」
「メリーの着替えは?」
「前にあなたのタンスに入れさせてもらったから大丈夫よ」
なんだってー!!
もう何が何だか解らない状態のまま二人でお風呂を後にする、メリー中々の策士ね。
部屋に戻る途中の階段で気が付いたのだが、メリーの髪の匂いが安っぽくなってしまっていた。
あぁ、私はなんて勿体無い事を・・・
部屋に戻るとこたつにまた戻る、こたつは冷え切っていて今は火照った体に気持ちよかった。
「ねぇ、今日は泊まってっても良いかしら?」
「ん?いいわよ」
「そう?じゃあ遠慮無くそうさせてもらうわね」
「寝るにはまだ早いし・・・トランプでもやる?」
「いいわよ、精神学共に心理学を学んだこの力、勝てると思わないでね」
何だか私とメリーの間に火花が散っているような、いないような・・・
オーソドックスにババ抜きをする事にした、心理学ねぇ。
揃ったカードが切られて山になって行く、そして本当のバトルが今始まった。
(メリーはババを持っている、残り4枚・・・・)
一番右のカードに手を伸ばす、するとメリーはニヤリと笑っている。
「そんな手には乗らないわ、フェイクだって事はお見通しよ!」
カードを抜き取る、すると・・・
「ノォォォオオオオ!!!」
「裏をかくって言葉を知らないの?」
くそ、メリーめ!こしゃくな手を!この私にババを引かせるとは・・・
「さて、準備は?」
「ちょっと待って・・・」
カードを混ぜる、私のカードは5枚、そして真ん中にババを配置する。
きっとメリーなら真ん中にババを配置すると見せかけて、別のカードを配置すると考え
真ん中のカードを引くだろう。
「うん、オッケー」
「じゃあ・・・うーん」
うんうん、悩んでる、このペースは良い感じだ。
「これね」
「あっ!」
「後3枚よ・・・」
メリーは一番左のカードを引いていた。
なぜだ!?私の読みは完璧のハズだ・・・
・・・・なるほど、真ん中はトラップの確立が1/2、しかしその他で考えれば1/4でババの確立が低い。
「さて、1枚引いて」
「くう」
「はい、後2枚」
私は後3枚、こうなったらランダムだ!目も合わせるもんか。
「どうぞメリー」
「なかなか面白い手ね・・・」
「はい」
メリーは返事をしたのでカードは引いたはずだ、ババなら試合続行、違えば敗北だ。
カードを見る、ババがある、しかしカードは3枚のままだった。
「じゃあ引くわね」
「・・・・・」
明らかにメリーは私の目を見ていた、そして私がババの在る無しを確認した瞬間にカードを引いてきた。
もちろん目線でババの位置はばれている、私の負けだった。OTZ
「はい、蓮子の番よ」
「はぁ」
メリーの最後の一枚を引く、これでメリーの完全勝利は確定した。
「あがりね」
「うぅ・・・ずるい」
「ずるくないわ、心理戦よ」
「メリーには敵わないわ」
カードゲームは終了し、私は敗北した。
流石メリーね・・・今度はなんとか勝つ方法を作らなければ
部屋の電気を消しメリーと一緒にベッドに寝る、なんだか新婚さんって感じだ。
するとメリーが体を絡ませてくる、またですかいメリーさんよ。
「ん~♪、温かい」
「ちょっと、くるっし・・・」
「すー、すー」
「?寝ちゃったの?メリー」
「すー、・・・すー」
「無呼吸症!?やばいわね・・・」
メリーの将来が心配だ・・・
「隙あり!」
「きゃ!メリー!?」
「甘いわね、私が先に寝ると思うの?」
「どこ触って・・・っく」
「ほーら、気合でよけれれるかしら?」
「そこは・・・卑怯者!」
少女抵抗中・・・・
「いきなりチャージショット?臆病ね」
「ノーミス!?彼岸花レベルにするんじゃなか・・・」
ピチューン!
SpellFalead!
No Bonus・・・
「そこは、う・・・あぁ、ふあ・・」
「ほら、蓮子のここ・・・もうこんなに」
・・・・・・もうされるがままでいいや・・・・・・・
「まいどお馴染み紫色の人よ、色んな事情で黒文字と白文字の境界を弄らせていただいたわ、
特別な能力があればドラッグ&スクロールで文字が読めると思うんだけど」
「蓮子、ごちそうさま」
「・・・・・・・」
「あら、寝ちゃった?仕方ないわね、私も疲れたし・・・」
メリーは深い眠りにつく、そして夢の世界へ・・・
___マエリベリー・ハーン____夢の中の幻想郷________
「ここは?」
見たことがある竹林の前、竹やぶからはパチパチと竹が焼ける音が聞こえてくる。
空を見上げると白い煙が月に照らされ月まで延びていた。
奥から声が聞こえる・・・・
「せっかく出してもらったんだから、運動しないとねぇ!」
「輝夜!見ない内に随分インドアになっちゃって、体脂肪でも蓄えてたかい?」
「減らない口ね、久しぶりに本気で殺るわよ!」
「そりゃ楽しみだ!体脂肪だけでも燃やしていきなさい!」
長い銀髪にワイシャツ、もんぺを穿いた少女と長い黒髪の着物を着た女性が啖呵を切って
凄い剣幕で争っている。
煙は銀髪の少女の後ろに生えている竹からだった。
黒髪の女性は手を上に掲げた、手には褐色の玉を持っている。
「いくわよ!”ブリリアントドラゴンバレッタ”!」
何か技の名前だろうか、黒髪の女性の周りにカラフルな球体が浮かび、周りから尖った弾が
放射される。
銀髪の少女はその攻撃をもろに受けた、彼女の体には無数の穴が開きその場に倒れてしまった。
(死んじゃったの・・・?これは、何?)
黒髪の少女はその場で相手の出方を伺っているようだった、即死の状態なのに何を警戒しているのか?
「あら?もうお仕舞い?そんな訳無いわよね」
「ゴフッ、挨拶にしては上出来だ」
何かしゃべっているようだが私には遠くて聞き取れない、話が終わった瞬間、銀髪の少女の体が
いきなり燃えだした。
(人が燃えてる・・・)
すると彼女の体の穴は塞がって行く、いったいどうなっているのか私には解らなかった。
ここに蓮子が居なくて良かったと思う、居たら大声を出してあの二人に気づかれていただろう。
「凱風快晴”フジヤマヴォルケイノ”!」
「火にはこれよ・・・”サラマンダーシールド”!」
「ふん!、わざわざ肝だめしに客をよこすなんて、輝夜らしい考えね!」
「そういうあなたは負けたんでしょ?」
「むきー!どうせ輝夜だって負けたんでしょー!?」
「そうよ!悪い!?」
ふたりの口論と攻撃は激しさを増して行く、すると流れ弾がこちらに飛んで来た!
(これはヤバイわ・・・)
細かい弾が私に向かってくる、夢なのだから大丈夫だと思い避けない洗濯を選んだのだが
少し不安だ、当たってしまったらどうなるのか・・・
そんな事を考えていたのだが時間は止まってくれない、私に当たる瞬間、目の前に奇妙な形をした
”スキマ”が現れ流れ弾がスキマに入って行く。
「もう、あなたは人間なんだからこんな所にいちゃだめよ」
「あっ、あなたは・・・」
「こっちいらっしゃい」
その紫色の人がスキマから手招きしている、ここは素直に従うべきだろう。
「何ここ?」
「境界の中よ」
「教会?」
「Borderよ何にも境界はあるわ」
「空間の境界・・・」
「それにしてもさっきのあなた、凄かったわね・・・フフ」
「え?なんの事?」
「彼女としてたでしょ」
「み、見てたの!?」
「えぇそれはもう、くんず解れず・・・若いっていいわねぇ」
「そういうあなたも若いと思うんだけれど・・・」
「見た目で判断するのはいけない事よ、真実は一つ先の境界を越えないと見えないわ」
「じゃあ一体何歳よ?」
「そうね、あなたは特別だから教えてあげる・・・」
ゴニョゴニョ・・・
「・・・・・境界って便利ですね」
「なんで敬語になるのよ」
「いえ、なんでもありません、妖怪って事とかにもつっこみません」
「ここは危険がいっぱいよ、さっさと現実に引き返しなさい」
「はい、あなたは一体・・・」
「そうね、しいて言うなら人攫いかしら」
「人攫いって・・・」
「妖怪は人を食べるの、そして妖怪は巫女に退治されるものよ」
「大変なんですね、私はあなたに・・・」
「大丈夫よ、あなたは食べられるより食べる側みたいだし」
「もう!プライベートは覗かないで下さいね!」
ちょくちょく覗かれたんじゃたまったもんじゃないわ・・・
「解ってるわよ、しっかし同姓で結婚ねぇ、あっち側は変わってるわね」
「いいじゃないですか、好きあう者同士が結ばれる事はいけない事ですか?」
「いいえ、いいんじゃない?自由な考えは好きよ」
理解してくれる人がいると安心できる、私は確信した。
この人は良い人だ
「さて、そろそろ夜明けだし、眠くなってきたわ」
紫色の人は軽くあくびをしている、夜行性なのだろうか?
「じゃあそろそろ戻りますね」
「ええ、そこの境界をくぐりなさい、愛しの彼女が待ってるわよ」
「・・・それじゃあまた会いましょう、境界に住む不思議なお姉さん」
「また会いましょう、境界能力を持つお嬢さん」
___マエリベリー・ハーン______現在・朝_____
境界をくぐると私の目が覚めた、目覚めは少し悪かったが貴重な経験だったなぁ。
(蓮子、まだ寝てる・・・可愛い)
「蓮子、昨日は無理やりごめんね・・・」
「ん、うぅん・・」
ゴツッ!
「ーったぁい」
いきなり蓮子が起きたので額をぶつけてしまう、結構痛いので涙腺から涙だ少し出てしまう
(あ、零れた・・・)
「ん?」
(な、飲んだーーー!!)
涙を飲んだ事に驚いたがまずは起きているかの確認を兼ねて・・・
「痛いじゃない、蓮子・・・」
「あぁ、ごめん・・・」
おぉ、起きてる。
「でも、蓮子の寝顔可愛かったよ・・・ふふ」
さて、どんな反応を示すのかなぁ、ワクワク・・・
「っ!なんでメリーがここに居るのよ!?」
「?だって昨日泊まっても良いって言ったのは蓮子よ?」
昨日の事忘れちゃったのかな?それはそれで良いんだけど
「あぁ、そうっだったわね、あはは・・・」
笑ってごまかしたな、蓮子の得意技だ。
___マエリベリー・ハーン編_____終了_____
______宇佐見 蓮子編______現在・朝2___
昨日の事を思い出して行く、パスタを食べてお風呂に入って
カードゲームして・・・・・
(そうだ、私メリーに・・・)
「ねぇ、メリー あなた昨日・・・」
「昨日の事は謝るわ、無理強いしちゃってごめん」
メリーは軽く頭を下げた、メリーらしくもない。
別に嫌では無かったし・・・ちょっと嬉しかったし
「ううん、いいの、メリーが望むなら・・・」
「蓮子・・・」
「だから今度はちゃんと言っておいてね!、いきなりは良くないわ」
「うん、善処するわ」
「はいこの話は終了、今日の予定は?」
「ウエディングプランでも立てに行く?」
いつもならここで私はあまり乗り気では無かっただろう、でも今は違う。
昨日メリーが私を変えるきっかけを作ってくれたから・・・結婚しても心配は要らないだろう
「それもいいわね、じゃあ朝ごはん食べたら出発ね」
メリーは一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔に戻った。
「わかったわ、今日は和食がいいわね」
「それじゃ着替えしたら台所行きましょうか」
メリーは私のタンスの一番下にある引き出しから紫の洋服を取り出して着替えを始める、私は
シワが綺麗に伸びたワイシャツに袖を通しスカートを穿く、ネクタイカラーは灰色と黒のチェック、
最後に帽子をかぶる。
「よし!行きましょうか」
「そうね」
今日は調子が良い、こんな清々しい日は久しぶりだ。
私はこんな日がいつまでも続くと信じている、もちろんメリーも同じだろう。
だからメリーを信じてこのままゴールインしたいと本気で思う
その気持ちはお婆ちゃんになっても変わらない
There is no borderline in Mary and my bonds.
The train that took Mary and me straight straight like the rail following infinity
began to cruise.
(私とメリーの絆に境界線なんて無い。
無限に続くレールのようにまっすぐ、まっすぐに
私とメリーを乗せた電車はゆっくり走り出した。)
_____えんど____
後日談
「紫様!いい加減起きてください」
「う~、昨日おそく寝たから眠いのよ・・・」
「何してたんですか?」
「藍には関係無い事よ・・・」
「あの人間ですか?」
「あなたの鋭い所、嫌いよ」
「すみません、紫様もほどほどにお願いしますね」
「わかってる、ちょっと興味があるだけよ」
興味があるって言う事が一番厄介なんですよねぇ
この間の夜の事件だって散々コキ使われたし
低速ボタンを押すたびに何度呼び出された事か・・・・・
「藍様~!お客様ですよー」
「あぁ、チェン今行くよ、それではごゆっくりお休み下さい」
紅白の巫女が家に来ていた、これは珍しい。
「ちょっと、誰でもいいから竹林の消火活動、手伝ってちょうだい」
「あぁ、じゃあちょっと待っててくれ」
紫様に聴かない事には出かけられない
「藍、行ってきなさい、きっと蓬莱人の仕業よ、昨日ドンパチやってたし・・・ふぁーあ」
地獄耳だなぁ・・・
「紫はいつも寝てるわね・・・」
「妖怪なんだから仕方ないでしょ」
幻想郷は今日も騒がしい
現実界では・・・
プルルルル、プルルルルル・・・
「あら?メリーから電話だわ・・・もしもし?」
「・・・・」
「もしもーし」
「私、メリー」
「それは解るわよ」
「今、あなたの・・・・」
「え?」
後ろには誰も居ない・・・
「お家にいるの」
「・・・っ!!」
私は全力ダッシュだ、電車はゆっくりなのに
メリーは連結車両を次々渡り、私の指定席に
座ってお茶を飲んでいる・・・・
「あら、おかえりなさいあなた」
「ハァハァ、今帰ったわ、メリー」
「お風呂にする、それともご飯?それとも私?」
「まず合鍵を返してもらおうか・・・・」
「いいわよ、まだ3つ残ってるし」
「ホームセンターの電話番号って何番?」
同じく騒がしくなりそうだ・・・・
_________________________________________
良いなぁこんなラブラブな夫婦?は・・・・・お風呂で何をかすったんでしょうねうふふ
それと紫様、俺の能力では無理なので是非とも内容の方を教えて(スキマ
まあ、それ故に
目覚めろ!マイ、パワァァアアアア!!
>6年前に消えた神社の謎に迫る!
幾年先かって、6年後では?幻想郷に越えるときに、時代も越えた?
紫様、デバガメしすぎwww
何とうらやま
お幸せに
>スイッチあるでしょ?付けて
点けてです。
>書く言う私も
斯く言うです。
>パスタの湯で具合
茹で具合です。
>実に食べずらい。
食べづらいです。
>くんず解れず
解れつです。なお文科省的にはくんずですが、組みつの転訛なのでくんづの方が語源的に正しかったり。
>同姓で結婚ねぇ
同性です。