Coolier - 新生・東方創想話

優しい狐 (3/6)

2007/12/18 11:18:44
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なんとか今日見る分の結界の監視を終え、マヨヒガに戻る。
外はもう茜に染まり、このマヨヒガをも闇に包み込もうとしていた。

「紫様、ただいま戻りま―――」
「藍。今日はお祭があるらしいわ。お祭」
挨拶する間もなく目の前に紫様が居て、驚かされる。
が、驚きの声すらも紫様の矢継ぎ早な言葉でかき消されてしまった。
「お・・・お祭ですか?」
「そうよ。博麗神社のお祭。あなたも知ってるでしょ?」
「ええ、先程空から見ましたよ。人が多くて、賑やかでした」
こんなにも幻想郷は人が住んでいたのかと思う程に、
普段里で見かけるのとは桁違いな人数が神社に集まっていた。
「だから、私達も行くのよ」
「え・・・行くんですか?」
ものぐさな主人としては珍しく、主導的に動こうとしている。
外ももう冷え込む時期だというのに、何がここまで突き動かすのだろうか。
「今のお祭は、色々と屋台が出てるらしいじゃない。だ・か・ら~」
「はぁ・・・まぁ、紫様がそう仰るのでしたら」
「あ、尻尾は隠しなさいね。妖術か何かでてきとーに」
「あ、それは得意ですのでなんとか・・・
というか、そんな事しなくても私、
既に人間の里とかにそのままで出没してるんですが・・・」
一度、寝ぼけて尻尾を隠さずに行った事があった。
その時は大層驚かれたが、人間たちは自分の住処だと気が強くなるのか、
私が悪さをしないのだと解ると、
警戒こそされても敵意を向けられる事はほとんどなかった。
それ以来、尻尾を隠す事はしていない。
「・・・私の式なのに無防備なのかしら。
それとも私の式だからこんなにゆるいのかしら・・・」
言い出した主は頭を抱え何やら考え込んでいる。
「ま、いいわ。考えるのやめましょ」
しかし、そんなのはいつも通り、あっという間に解決してしまったらしい。
「じゃ、行くわよ。支度は良い?」
「お財布は常備してます」
「そう、助かるわ」
どうやら紫様が支払うつもりは更々ないらしい。解ってはいたけれど。
「うふふ、お祭なんて久しぶり。楽しみだわ~」
何をしでかすつもりなのだろう。
思いつきでとんでもない事をするこのご主人の事。
側に居る身も落ち着いてはいられない。

「あら、これは何?五平餅?美味しいの?ねぇ藍、藍ったら~」
「ちょ、まっ、今アユの塩焼きを食べたばかりではないですか。
もう少し間隔をあけないと・・・ああもうっ」
言ってる間にも次へと走り出してしまう。聞いてやしない。
まだ神社にも着いていないのに、
そこまでの道のりに出ている屋台に気を取られてしまっていて、
全然進まない。
(これでは子供・・・)
しかしながら、他にも色々あるのに、
先ほどからえらく年寄り臭いものにばかり目が行くのは、
やはり年齢からだろうか。
「藍~?早く着なさいったら、貴方に似合いそうなの見つけたわっ」
「えー?何ですかー?」
言われるまま、今度は何かと溜息をつきながら向かう。
「じゃんっ」
と、嬉しそうにお面を差し出す主人。
「・・・狐の・・・面、ですか?」
「そうそう、これつけなさいよ~
ほら、ぴったり」
ぺた、と私の顔に押し付けてくる。
穴から見えるのはけたけたと笑ういやらしい顔。
「・・・狐が狐面って・・・」
何か・・・何か虚しいような・・・
「あっ、あっちの七味唐辛子売りが面白そうだわっ
行きましょっ」
途方に暮れているとがっと手を取られ、そのまま走り出す。
「うわっ、とっ、お、代っ」
慌てて財布から適当な銭を店主に向けて投げ、
転倒しそうになりながら引っ張られていった。

そして少ししてやっと神社に着く。
「ふーっ、楽しかったわ」
縦横無尽に暴れまわった結果、紫様はつやつやと一仕事終えたように息をついた。
「はぁ・・・はぁ・・・じ、神社に着く前にくたびれましたよ・・・」
対する私は、代金支払いや迷惑のかかった人達に対する謝罪など、
後始末だけですさまじい疲労に襲われていた。
「いやいや。お祭というのはこういうのが醍醐味じゃなくて?」
言うだけなら楽なのだけれど。
「何ですかそれは・・・あ、神楽をやるみたいですよ」
悪態をつきながらやっと着いた境内を見やると、
巫女装束を着た女性を中心に場が設けられていた。
人だかりはそこに集まっているらしい。
「ふぅん・・・博麗の巫女最後の舞、か・・・」
「最後・・・ですか?」
「女の子供が産まれたらしいわ。
このお祭も、それを祝うものなのよ。
そして、それと同時に代替わりを示す儀式でもあるわ」
呟く主人は、どこか寂しそうに見える。
「代替わり・・・生まれたばかりの子供に、ですか?」
「博麗の巫女としての力は一子相伝。
産まれたその時に全て受け継がれるの。
だから・・・あの娘には既に、巫女としての力は無いわ」
「ではもう博麗の巫女では・・・」
「・・・人はそうは思わない。
何かの区切り目がなければ、それまでの気持ちに整理をつけられないものなのよ」
「面倒ないきものですね。人間とは」
「そうでしょう。でも・・・
舞は能力に関係なく、人を魅了するわ・・・
惜しいわね。あの娘、もう長くないのよ」
「え・・・?」
何を知っているのか。
それきり紫様は何も語らず、じっ―――と、その舞を眺めていた。

神楽は程なくして終わり、後は怠惰に任せ適当にぶらつく程度で終わった。
何が目的だったのか解らないけれど、
主人は神楽を見てから暴走しなくなり、随分楽になった気がする。
何か思う事があったのかもしれない。


私は最近この奔放な主人が、
実は酷く神経質な、少しの事で心を痛める、そんな人なのではないかと思うようになった。
人をからかい笑うその無神経な笑顔が、
どこか無理をして反転鏡の態度を取っているのではないかと感じるようになっていた。
未だ確信には至らない、何の確証もない事なのだけれど。

(続く)
はいまたまたこんばんわ。小悪亭・斎田です。
ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます。
ここで折り返しです。ご苦労様でした。

祭です。
何と言う名の祭りなのかも、何時頃の時代の博麗神社なのかも不明ですが。
祭を行わせるにはどうすればいいかというのを考えて、
とりあえず何か奉ればいいんじゃないかと思い、一瞬魅魔様が浮かんだこともあったんですが、
あれは元々悪霊の類らしいとどこかに書いてあったし、
じゃあ何奉るん?と思い、ならいっそ巫女さん自体を祝うお祝いにすればいいんじゃないかと思いつき、
このような感じに。

しかし、ここまででは正直、タイトルの意味なんて解りません。
その点で疑問を抱いた方、申し訳ありませんがもう少しお待ちください。

ではこの辺りで、ではでは。
小悪亭・斎田
http://www.geocities.jp/b3hwexeq/mein0.html
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コメント



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続きマダー?
7.60名前が無い程度の能力削除
もうちょい1話の感覚長くていいよ~