拝啓どこかのだれか様。
静かで騒がしくて、落ち着けないけど落ち着ける、そんな所に住んでみたくはありませんか?
お引っ越しにも、ご案内にも、お金とか、食べ物とか、命とか、そういうものは一切頂いておりません。もし興味がおありでしたら、明日、お日様が空の真ん中までのぼったとき、幻想郷の真ん中の、綺麗な森の真ん前で、このお手紙をかざして下さい、お迎えに上がります。
六角印が空からやってくる月に、あなたの知らないだれかより。 敬具
はじめまして、そのお手紙を持っているということは、あなたがどこかのだれかさんですね。
こんにちわ、あなたの知らないだれかです。なかなか見つからないので来て下さらなかったのかなぁって、空で時間を潰していたんですよ。ところで念のためもう一度お手紙を……
……あ、はいはい、押しつけなくても見えてますから、っていうか押しつけられると見えません。わかりました、私のお手紙を受け取って下さったのはあなたに間違いないみたいですね。
当たり前とか言ってそんな怒らないで下さいな、一応確認しておかないと困るんです。だって住んでいる方についてちゃんと把握しておかないとダメじゃないですか。
え?まだ住むと決めたわけじゃない?みょうちくりんな手紙が来たから来てみただけ?
うう、そんなに妙だったのかな、人間さんにお手紙を出すのは久しぶりだから、お手紙の作法とか忘れてしまっていて……内容の問題?簡潔にまとめたつもりだったんですけどねぇ。
あ、はい、以前にも人間さんをお誘いしたことはありまして、お一人引っ越されてきた方もいらっしゃいます。それなりに気に入って頂けたらしく、今でも一人住んでらっしゃいます。
他にも元から棲んでおられる妖精さんとか妖怪さんとかもいらっしゃいますし、他の場所からこちらに引っ越してこられた方もおいでです。落ち着こうと思えば落ち着けるし、騒ごうとすれば騒げる、そんな場所なんですよ。どうやって住むかはあなた次第、ご自由になさって下さって結構です。
あ、もちろん今日行って気に入らなければそれでも構いません、ちゃんと帰りはこの場所までお送りします。
残念ですけど、住みたくないのに無理矢理住もうとしても、どちらにとってもいいことはないですしね。住んで下さるのでしたら大歓迎なんですけど。
と、事前の説明はこれ位でよろし……あはは、せっかちな方ですね。そんな急がなくとも目的地は逃げませんよーばっちりどっしりあなた様をお待ちしております。
質問もなく、あっさり承諾されたのは初めてです、もちろん嬉しいんですが。未知への好奇心旺盛みたいで、住む資格はばっちりですね。
でもよかった、人間の方は、まず不審な目でこっちを見たあと、1割方今の説明で帰ってしまわれるんですよ。
え?じゃあ残りの9割は来るのかって?
……あ~いえ、その、悲しいことに、お手紙を出しても10割中8割の方がそもそも来て下さらなくて、待ちくたびれた私は、ここで寂しく空にのの字を描いて飛んでいる羽目になるんですよ。そうそう、さっきみたいな……って気付いていたんなら声をかけて下さいよ!またすっぽかされちゃったのかなぁって悲しかったんですから。
面白かったからとか言わないで下さい、別な意味で悲しくなりますから……
こほん、何はともあれ参りましょう。では私につかまって、タイミングを合わせてぴょんっとやっちゃって下さい、ひとっ跳びで目的地の真ん前です。大丈夫、異世界でもなんでもなくて、幻想郷の中ですよ?あなたが行った事はないかもしれませんけど……
危険はあんまりありません。ええ、皆無ではありませんが、少なくとも私の側にいる限り、身の安全は保証いたします。
そんな疑わしそうな目で見ないで下さいよ。確かに凶悪な妖怪さんとかに攻撃されたらひとたまりもないですけど、攻撃を受けないようにするのは私の十八番なんです。どんなに弱い存在でも、戦わなければ『無敵』なんです♪
あの、呆れた目で見ないで下さい、さすがに恥ずかしくなるのです。
ではちょっとだけ目をつぶって下さいね、本当にひとっ跳びですから。準備はいいですね、いきますよ。
さぁ、私と一緒に……いっせっーので、ぴょんっ!!
……あ、もう目は開いても大丈夫ですよ?別に目の前に化け物がいたりだとかはしませんから。一二の三で開きましょう。一二ってわわわ勝手に!?ええい、いいやっ!!
じゃじゃじゃーんっ!もうあなたの目の前がその目的地です。そう、そうですあなたの目の前に広がる、美しい魔法の森が私がご案内する場所でげふっ!?
っていきなりグーで殴らないで下さいよっ!ちょっとしたお茶目じゃないですか!
ただここが目的地です、だなんて言うよりも、こうやって一芝居やって気分を盛り上げた方が楽しいしありがたみも……痛い痛いっ!わかりましたアイムソーリーごめんなさい、いたずらとかじゃないんです、ここからは本当なんです!だから持ち帰ってスープにしてやるとか半分本気な瞳で言わないで下さい。
あ、いえ違うっていうのはさすがに分かってますけど、あんまり気持ちのいいものじゃないですよ~あはは。
自分が煮られるのを想像するなんて本当に……え、違う?そっちじゃないって、だから……
あれ?もしかして半分本気なんじゃなく、完全に本気……
さぁ行きましょう、私は嘘なんてついてないです。あなたをかつごうだなんて落ち葉についた露ほども思っていませんのですはい。
あ、手はもう離していいですよ?それにそんな強く握りしめなくても……あの……逃げないですから……
ところであなたは魔法の森に入った事ってありますか?
あーはい、そうでしょうね、普通の人間さんはあんまり入りたがらないのです。そう、よくご存じですね。お化けきのこさんが胞子をばらまいていたり、魔力が強かったりするので、本当は健康にはあまりよくないんですけどね。
でもご安心下さい、私が飛ばしたお手紙君は、魔法の森に耐性があって、きっときっと馴染むだろうなぁっていう方にだけ届くんです。というか、そんな方が生まれたら、そろそろかなっていう頃合いを見計らってお手紙を出すんですよ。なぜわかるかは企業秘密なのです♪
で、魔法に弱い傾向がある人間さんに、こうやってお手紙を出すのは何十年かに一回なんですけど、あなたは生まれつき魔法に耐性があるみたいですね。あ、お化けきのこさんの胞子も魔法みたいなものなので、魔法耐性があれば大丈夫ですよ?
それに、お化けきのこさんの中にはお話できる方もいるので、たまにおしゃべりすると楽しいかもなのです。
ほらほら、きのこと話せるかなんて言わないで下さい、人妖みな兄弟じゃないですか。あ、ちなみに、おばけきのこさんは正確には菌類と妖怪の真ん中ちょっと妖怪よりあたりだそうですけどね。ええ、本人から聞いたので正確です。
もちろん、環境の変化で最初は若干の体調不良があるかもしれませんが、すぐに慣れると思います。人妖慣れが大事なのですよ。
それに、今のあなたは平然としているでしょう?普通の方でしたら、待ち合わせ場所のあたりで、気分が悪くなっているはずなんです。私がそんなへまをするとは考えられないのですが、念には念を入れて、魔法の森に直接招待しないでいるわけなんです。まぁ、今までそんな方はいらっしゃいませんでしたけど♪
あ、それで魔法の森初体験のあなたにはちょっとだけご注意を、ええ、すぐ終わりますから聞いてくださいな。
まず、私のそばから離れないで下さいね。ここ重要です、テストに出ますよー
……流されて悲しんでいる私に、そんなとどめを刺すように本題早くしろ視線を送らないで下さいよ、あ、今うぜぇこいつ視線に変わりましたね!?人をそんな目で見てはいけません、あ、暴力もダメ!いじめ、かっこわるい!!
こほん、ふざけているのではなく本当に大事……え?だったら最初からまともに話せって?いやだなぁ、サービスですよ、サービス♪事務的な説明だけだとつまらないじゃないですか。
ともかく、まだ住民仮登録のあなただと、魔法の森単独行動は危険なんです。外縁部ならたまに入ってこられる方がいらっしゃいますが、ある程度中に入ってしまいますと、慣れない人妖さんでは、空を飛べでもしない限り強制的に永住する事になってしまいますからね。
特に、今日は行きませんが深奥部、ここは本登録した後も慣れるまでは入らない方が賢明だと思いますよ?
養分になってくださるのは嬉しいんですけどね、袖すり合うも多生の縁と申しますし、折角知り合って、あわよくば……けほん、よろしければ住人に、という方を養分にしてしまうのはやっぱり気分がいいものじゃないのですよ、案内役失格ですしね。
ちなみに、仮登録というのが私から案内状、あのお手紙が届いた時の段階ですね。つまり今のあなたです。そうです、そこのあなた!って後ろ見ないで下さいよ……誰もいないじゃないですか。
でも、あなたは単に森に入る資格があるというだけなので、耐性がある程度あるという事以外は普通の人間さんとあんまり変わりありません。なので、案内役の私から離れると色々と不都合が起きてしまうのですよ、命の危険とかその他色々。
ちなみに、本登録して契約すると豪華な特典が色々ありまして、その中に『魔法の森では迷わない』っていうのもあるんです、耐性も強くなりますしね、おすすめですよー本登録。そこら辺はおいおいお話ししますが。
二つめは、妖怪さんとかには勝手に手や魔法を出したりしないで下さい。
説明の必要はありませんよね、私一人なら逃げ切る事も可能ですが、あなたを連れてというのはちょっと厳しいのですよ。
危ない方たちには近づきませんし、それ以外の方々は、私と一緒ならそうそう手を出して来たりはしないんですけどね、こちらから手を出すと、当然反撃されてしまうわけでして。何より、今後の住人関係を大切にするのならおとなしくしているのが賢明かと。
三つめは、変な植物を見かけても勝手に近づかない事、です。
魔法の森には食妖植物さんや食人植物さんとかが結構生えてらっしゃるので、迂闊に近づくとどーろどろです、もしくはぶーらぶら。
たまにいらっしゃるんですよ、綺麗な花だなぁって近づいてぱっくんとか、この蔦実がなってるぜーって手を出してぐーるぐるとか。
すぐに消化されるわけではないので、みなさんご無事なのですが、やっぱり服とか溶けちゃう事もありますし、助けるのも結構大変なんです。
四つめはお手紙はなくさないようにして下さい。
あれは証明書兼護符みたいな役割を持っておりまして、今回限定で、森の魔力をある程度遮断できるんです。いくら耐性があるっていっても、最初は身体が慣れていませんからねぇ。
まぁ書くのと力を込めるのに一週間位かかっちゃったんですけど、おかげでちゃんとしたものができました。
案内が終わった後も記念にしていただけると嬉しいのですよ。
え、何照れてるんですか?
ちり紙用にとっておいてよかった?説明が長いから紙飛行機にしようか迷ってた!?
ちょっとあなた人のお手紙を何だと思ってるんですかっ!読まずに食べるよりはましとか言わないで下さい!同意せざるを得なくなってしまうじゃないですかぁ……
こほん、ともかく大事な注意事項は以上です。これだけは守って、あとは常識と良識に基づいて行動して下さい、そんなもの私には存在しないとか真顔で言わないで下さいよ。
あーあ、お手紙出したの失敗だったのかなぁ。いえ、頷かれても困るんですけど……
まぁ気を取り直して出発です。
さっきの注意事項はちゃんと守って下さいね……って言っている側から、私を置いてずんずか先に行かないで下さいな、どうなっても知りませんよ!もう。
さて、入ってみていかがですか?
肌に水分がまとわりつくような適度な湿気、燦々と降り注がない日差し、よどんだ空気!深く暗い森は、待ち伏せするにはもってこいです、何を待ち伏せするかはあなた次第。でも、待ち伏せされている可能性もあるのでご注意下さい。何はともあれ棲むのには最適な場所ですよね。
お、頷いて下さったということは同意して頂けたということですね。この口上を聞くと、妖怪さんはみんな頷いて下さって……
ってあれ、あなた人間さんじゃなかったでしたっけ、間違えた?気にするなって……いいのかなぁ、人間さん用の口上もあるんですが聞きます?いらない、そうですか……ホントに?そうですか……
こほん、と、ちなみに、このあたりは森の外縁部にあたります。食妖植物さんも数は少なくて、植生は幻想郷の他の場所とあまり変わりありません、とねりこなど生えてます。まぁ密度が少し濃い位ですね。
人間さんにはお薦めのエリアで、慣れるまではこのあたりにお住みになるとよろしいかと。
やはり、誰しも他の方との交流が必要ですしね、特に人間さんは……ですので、しばらくは外とも比較的行き来しやすい外縁部にお住みになられるのが一番です。
もちろん出ていくのに制限はありません。転出ということでしたら、私に一言言って頂けたらとは思いますが、お買い物とかでしたらもうご自由にです。
あはは、私には必要ないと仰いますが、しばらくすると寂しくなってきますよ。意地を張ってもいいことなんてありませんってば。本当、実体験から申し上げておりますのです、はい。
あ、それでちょうどこのエリアにいい物件があるんですよ、これからご案内しようと思っていたんですが。
お家賃とかは必要ないです、魔法の森はゆりかごから墓場まで、完全無料をモットーとしておりますので、えへん。
歩いて一時間位でしょうか、木さんにお願いして道はあけてもらいましたので……え?どうやってって、普通に頼んだんですけど……
まぁそれはどうでもいいじゃないですか、魔法の森の常識は、他とはほんの少しだけ違うんです。慣れてしまえば、そんな些細なことは気にならなくなりますよ。住めば都と言うでしょう。
さぁさぁ行きましょう。先は長いですよっ!
さて、結構歩きましたがどんな感じですか?体調に異常は……はい、そうですか。でも万が一気分が悪くなったら言って下さいね。
目的地まで半分位ですね。あ、そこに川が流れていますので気をつけて下さい、飛び石をうまく伝って下さいね、川下りの季節じゃないですし。
それと、すぐ側に泉があるんですがご覧になりませんか?やはり、魔法の森と言うからには泉の一つや二つ必要だと思いまして、ええ、私が言うのもなんですが、とても綺麗な泉なんです。
魔法の森三景の一つにも数えられていま……あ、いえ、あとの二つは鋭意選定中でして、何かいいのがあったら教えて下さいね。ともかく、綺麗な泉なんですよー
深い森の中で静かに湧き出る泉。どんなに空が曇っても、どんなに風が吹こうとも、巡る季節のどの時も、誰にも知られることなく静かに水は生まれ続けます……
空を覆う木々の所々から木漏れ日が射し込んで、深い地の底から湧き出た清水は、きらきらと輝きます。そして、彼らは、長い旅のほんの少しの休息の後、やがて小川となって流れていくんです。
冬は暖かさを森に伝え、夏には妖精達が涼みに来る、そんな憩いの場所……水がなければ森は生きていけませんし、そこの住人達が生き延びていくこともできないでしょう。まさに命の泉ですね。
すぐ側ですし、ちょっと足を延ばしてって……あのーだれかさん?どこかのだれかさんどこいきました?ちょっとー
って何ですたすた歩き去ってるんですか!迷子になりま……いえ、確かにその方向ですが、あなたなんでもうこんなに慣れちゃってるんですか。超人?変人?あ、いえいえ、普通ではないと思いますよ、絶対。
まぁそれは置いておいてですね、あなたはもうちょっと人の話を聞くという選択肢を持つべきだと思うのですよ!せっかくの人間さん向けの口上なのにっ!!滅多に言う機会がないのに、いつか言うことがあるかと毎日練習しておりましたのにっ!まだ続きがあるんですよ~
いや、つまんないしってそんなはっきり……ここまで来た数少ない人間さんも、皆この泉には惜しみない賞賛を送って下さるんですよ、ねぇ。
と言っている間にもてくてく歩きっぱなしですか、もう。家についても鍵がかかっているから開きませんよ、壊すとか言わない!
とか言っている間にもう目の前……なんか疲れた気がします。うう……
こほん!ともかく、ここが目的地のお家です。
里からの距離は多少遠いですが、飛べるようになればすぐに来られるようになりますよ?
え?その内空を飛べるようになるような口振りだなって……あ、そうでした。この森に住む……そう、本契約の一番のセールスポイントを忘れていましたよ。
あのですね、この森は『魔法の森』なんです。ここに住めば、人間さんでも、だんだんと魔力を得たり、魔法を使えるようになったりできるようになるんです。魔法使いを志す方とかには特におすすめだったりするんですよ。まぁ、あなたをはじめ、素質がある方、つまり魔法耐性がある方ばかりお誘いしているっていうのもあるんですけどね。
目の色が変わりましたね?もしかして魔法使い志望さんだったりしますか?
ええ、すぐです、人によりますが、空を飛ぶだけなら一年も必要ないです。
魔力濃度が濃いこの森で過ごしていれば、早い人なら半年位で空を飛べるようにになります。空を飛ぶのは初歩の魔法ですし……あなたみたいな方でしたら、もっと早く飛べるようになるかもしれませんね。
あ、もちろん攻撃魔法を使ったり、飛ぶにしても自由自在に空を駆けめぐる、位のレベルまでは十年二十年と必要ですが。あはは、大層な自信ですが、さすがに2、3年じゃ無理だと思いますよ?
それに、他にも特典は色々ありまして、森に生えている山野草その他は採り放題です、まれに地面に出ている鉱石とかもいいのです。魔法を発動させる為の原材料には事欠きませんから、ええ、ホント魔法使いを目指しておられるのでしたら今すぐにでも転居するべきですよ!
もう、あなたも人が悪いですねぇ、最初からそう言って下されば、あっさりと決まりましたのに♪
あ、あの、無視して歩いて行かないで下さい、鍵かかっているって何回言えば……
さて、立派なお家でしょう?多少古めのデザインですが、しっかりした造りで、住み心地は良好です。
しばらく誰も使っていなかったのですが、私が毎日お手入れしておりましたので、ほこりが積もっていたりするということもないですよ♪
なので、扉だって鍵を開ければすぐに……すぐに……あれ……むむ……でいっ!!
こほん、すぐに滑るように開きます。新品同様でしょう?
軋んだような音が聞こえたのは鳥ですよ。魔法の森にはぎーぎー鳴くぎーぎー鳥が生息しているので、きっと彼らの仕業でしょう。
ああ、少し手間取ったのは……その、えっと、外の世界から導入した『おーとろっく』装置のせいでしょう。出かけると自動的に扉が開きにくくなるんだそうです、泥棒対策には便利ですよ?
あ、もちろん入るにあたっての注意事項なんかはありません。クリームを塗りたくれだの、塩をもみこめだのは言いません、どうかご安心を。
さて、それで内装は見ての通りです。家具から何から全部揃っていますよ?全て魔法の森製のブランド品、当森林では地産地消を計画実行しておりまして、このお家も魔法の森オリジナルです。近いうちに、魔法の森ブランドを幻想郷中に広めて、色々便利なものを作れるようになって……この森をもっと住みやすく棲みやすく、そして賑やかにしようと思うのですよ。
あなたのように住んでくれる人妖さんが増えれば、暗い森が少しだけ明るくなって、とても賑やかになるのです。
森の小径を行き交う人妖さん、木の葉舞う空を飛び交う鳥妖さん……
あの泉だって、妖精が戯れる、もっともっと素敵な場所になるでしょう。霧の湖、大蝦蟇の池に次ぐ第三の水辺を目指しているんです。
そうやって、住む人が増えれば来る人も増えます。大勢の人妖さんが来てくれるようになれば、魔法の森は暗いだの、不気味だの、住み難いだのと言われることもなくなると思うんですよ。
素敵な事だと思いませんか?明るく綺麗な魔法の森、ええ、きっと引っ越して下さる方はひっきりなしになりますよ?
魔法耐性だって、きっときっと来続けてる内に慣れてくれます。何十世代かすれば……ってあの、だれかさん?話聞いてます?
いや、棚の上をつつーっとかやっても埃はつきませんから、あと値切る必要ないですよ、ただです、みんなただ!何回も言いませんでしたっけ?全部聞いてない……あの、胸張って言うことじゃないと思うんですが……
何はともあれ、どうです?広いでしょう。お一人、いえ、二人三人で住んでも大丈夫な広さです。
だんなさんとかできたらいつでも一緒に住めますよ、お子さんも大丈夫、家が傷むからとかそんな野暮は言いませんから、どんどん産んで、じゃんじゃん住んで下さいな。
私には結婚なんて必要ないとかとか、もう、でもそういう方に限ってすぐ結婚なさるんですよねーって叩かないで下さいよっ!痛いっ!!
うーそんな暴力ばっかりふるってるとホントに結婚できませんよ……って痛い!痛いっ!?必要ないって言うんならなんでさらに強く叩くんですかっ!
……わかりましたごめんなさい、謝ります、謝りますしもう言いませんから叩かないで下さい、私か弱いんですよー
うう、傷薬とかも常備していたんですが、まさか自分の為に使う羽目になるとは思いませんでした。使用期限は永遠だそうなので大丈夫でしょう、さすがは永遠亭ブランドですが、私も負けてはいられません。大体向こうのお薬だって、材料の過半はここから確保しているんですから、ここは原産地が新鮮さをアピールして逆襲に出るべきです。採れたて新鮮な傷薬……うーん、何やらアピール力に欠けるような気はしないでもないですが。
ところでだれかさーん?どこいきました?また消えた……
ってこちらにいたんですね。うう……せっかく派手に宣伝しようと思っておりましたのに、あっさり見つかってしまいました。一緒にいて下さいよー袖引っ張るなって言っても、引っ張らないと居なくなっちゃうじゃないですかっ!もう……
と、若干登場のタイミングが遅れてしまった気もするのですが、このお家地下室もついているんですよ、吸血鬼さんにもばっちり対応して棺桶まで備えております。ちなみに、桐と石、どちらかお好きな方をお選びいただけますがどちらに……桐ですか、かしこまりました。
って冗談のつもりだったんですけど……あなた人間さんじゃなかったんですか?お風呂にする?いや、確かにゆったりできそうですけど……ゆったりしすぎてそのまま三途の川を越えないで下さいね。せっかく引っ越してくださった方が、不慮の事故でまた転居などというのは悲しいのですよ。
ん?あれ?もしかしてそしてそう言って下さったということは転居して下さるという事ですか?
そうだってそんなあっさり……いいんですか?親兄弟一族郎党みんな振り切って、海のものとも山のものとも、それとも森のものともしらない場所へ引っ越してくるわけですよ?不安とかそういうのはないんですか?
いあ、自分で言うのも何ですけど、突然来た手紙をあっさり信じるとか……不用心すぎません?猪突猛進型なんですねー
あ、いえ、止めるつもりは毛頭ございませんが、こんなにあっさり承諾されたのは初めてなもので、あ、ちょっとほっぺた引っ張って頂けません?
いたたたたっ!?うう……強すぎる気がしましたが、間違いはないみたいです。
あ、ええ、もちろん説明内容に嘘はありません。出入りは自由ですし、お家賃はただですし、案内料も……え、違うんですか?あ、いえ、堂々とあっても踏み倒すとか言われても困るんですけど……ああ、魔法関係ですか?ええ、もちろん嘘じゃないですよ。
この森の魔力濃度なら、すぐに魔法使いになれます。強くなるには相応の努力と才能が必要ですが、空を飛んだり、灯りをつけたりする程度なら普通の方でも大丈夫です。
こないだは、泉に引っ越してきた蛍さんが力をつけて妖怪さんになりましたし、あなたなら結構強い魔法使いになれると思います。
あ、いえ、そんなせかさなくても、先着何名様とかじゃないんですから、なくなることはありませんってば。ホントに魔法使いになりたいんですね、ええ、頑張る方は応援しますよー
で、こことここにサインを、ええ、大丈夫です。霧雨魔理沙さん、いいお名前ですね。あ、一字同じです。ご縁がありますねーきっとここに住むために生まれて来たのですね♪
いやー本当に嬉しいのです、これでまた魔法の森も賑やかになりますよ♪どうかこれからもよろし……え?私の名前ですか?
はい、魔法の森と申します。
~それはずっと昔の物語~
黒い森に霧が降る。うねうねと茂る不思議な木々は、皆寒そうに身をすくめ、暖かな日射しを待ちわびる。
なのに昼なお暗い森の中、朝の太陽は寝不足気味に日射しを渋り、それは地面には届かない。冬の寒さは厳しくて、生き物の声は聞こえない。深い森に風は止められ、木々は黙って時を過ごす。
小さなきのこは霧に濡れ、落ち葉のふとんにくるまって、ただ黙々と時を過ごす。小川のせせらぎは、霧に押し込められたように暗く響いて、生き物の気配はどこにもなかった。
朝が来たのに森は眠り、世界は明るく変わらない。森の木々は、霧の毛布を身に纏い、ゆっくりと眠り続けていた。
誰も来る事はなく、誰も見向きもしない寂しげな、静かな朝の景色。
太古の昔から変わらず続く不思議な森の景色は、幻想郷が出来ても変わることはなかった。
永久不変、そんな言葉が似合う暗い森がこの魔法の森。誰も訪れることがなく、そして出ていくこともない、独りぼっちの森だった。
きっと誰かが来てくれる、いつか私と話してくれる……彼女は静かに待っていた。
だけどだけれど誰も来ない、魔法の森には誰も来ない。何回朝を重ねても、何回夜を重ねても、季節がいくら巡っても、誰も誰も森には来ない。
魔法の森は考えた、ならば誰かを呼べばいい、話してくれる人妖を、ここに呼んでみればいい。
沢山の人妖を呼び込んで、みんな一緒に住めばいい。
それならお手紙を出してみよう、いつかいつかいつの日か、ここが賑やかになるように。
『おしまい』
中盤辺りで受取人は魔理沙かな~とは思いましたが、差出人が魔法の森とは…。脳内イメージは何故か小悪魔でしたw
~それはずっと を読んで魔法の森の孤独に切なくなっちまったんだぜ。
ちょっと中だるみやくどさを感じましたが、全体的には良かったです。
途中で招待されているのが魔理沙だというのは分かりましたが、
まさか招待しているのが魔法の森自身だったとは……
……魔法の森が可愛いなぁw
なんとなく、この魔法の森はゆのつさんの所の小悪魔に似てますねw
途中の蛍とはやっぱりリグルの事ですかね?
個人的には最後の詩の様な所が感慨深かったですね。
なんにせよ、斬新な作品で楽しめました。
以後も期待させていただきます^^
魔理沙がマスタースパークで森荒らさないといいけど……w
将来的には妖怪の山と結婚するに違いないw
二人目の移住成功者はアリスですか。魔界にパンフレットでも送ったかな?
ていうか、住みたくなった
ま、それはさておき、がんばれ森まずは目標10人だ。
何人か成功している様なので二人目ではないでしょうが、アリスも誘われてそうですね
差出人が魔法の森とは意外でした。何となく小悪魔っぽいなぁとは思ってたり。
最初は紫が魔理沙にでも、と思ってたけどね。
結局魔法の森に済んだ新しい住人は誰だったんだろうか?
この森さんとお友達になりたんですよ!
>結局魔法の森に済んだ新しい住人は誰だったんだろうか?
?質問の意味が分かりません。少なくても、この話の移住者は名前が出てるし・・・
あと魔理沙の前の住人はこーりんでしょう
個人的には結構冒険作のつもりでしたので、意外な好評に嬉しかったり恥ずかしかったりしています。
そして、まず最初に少しわかりにくかった点についてお詫びを(あえてぼかしていたというのもあったのですが)最初の住人なのですが、実はアリスを想定していたりしています。
求聞史紀におけるアリスの記述『元々人間だったという事もあり、普通の人間を襲うことは滅多にないだろう』が記憶に残っていて、少し書いてみたかったりしていたので…orz
文章力不足でわかりにくくなってしまった事、お詫びいたします。
あと、小悪魔に似ているとのご意見多数なのですが…実は、書いている途中で自分でもそう思っていたのです(苦笑)書き分けって難しい…orz
それと、ずいぶん遅れてしまったのですが、前作の方にもレス返しをしておきましたので、よろしければ…(平伏)
>名前が無い程度の能力様
~それはずっと…の部分は、実は最初書こうと思っていたお話の序文だったりするのです。魔法の森の視点から、少しシリアス風味に進めようとしていたのですが、作者が最初に寂しさに耐えきれなくなりそうだったので…orz
>雨虎様
どうしても文章が単調になってしまいまして…orzこれからはもっと頑張りたいと思います。
さびしんぼうは、結構はしゃぐと思うのですw
>⑨様
>>最初は紫が外の世界から誰かを招待しているのかと。
実はそれも考えていたのですが(笑)紫主役だと、あまりほのぼの風味が出せないかなぁと思っ(スキマ)
>華月様
何から何までバレバレなようで(苦笑)
最後の部分は、私自身が結構気に入っていたりするので、そう言って頂けますと嬉しいですw
>翼様
魔法の森の嘆きと後悔の声が聞こえてきそうですw
ただ、きっと打たれ強いと思うので大丈夫ですよ(荒らされる事前提)
>二人目の名前が無い程度の能力様
森萌えときましたかw
妖怪の山と結婚したら、幻想郷の相当なエリアに勢力を持つことに…w
>三人目の名前が無い程度の能力様
ですねぇ…賑やかな魔法の森というのも、ありなのではないかと思うのですw
>幻想入りまで一万歩様
10人てw多いのか少ないのか…ふむむ、判断に悩むところですねw
>四人目の名前が無い程度の能力様
是非、住んであげて下さいですwもしかしたら、大喜びで料理でも振る舞ってくれるかもしれませんw
>三文字様
博麗の名を継ぐ霊夢と違い、普通の魔法使いと称する魔理沙は、一体どうやって魔法を使えることになったのかな…みたいに思っておりましてw
>五人目の名前が無い程度の能力様
森はいいですよー春の森とかは実に素敵です(森違いorz)
新しい住人なのですが、今回誘われたのは魔理沙、以前誘われたのはアリスリグル等々…と考えていたりします。説明不足、申し訳ないのですorz
>六人目の名前が無い程度の能力様
その為には頑張って魔力耐性をつけないといけません。
ただいま、イナバ製薬から発売中の『魔法耐性爆発的向上薬USA-4』を先着1名様に大特価販売中ですw
>丸々様
実は香霜も出そうと思っていたのですが、いかんせん原作を知らなかったもので(平伏)
あと、私のはもうほんとうにまだまだですので(土下座)でもありがとうございますw
いやいや、この頃はアリスは魔界に居るでしょう!?
ロリで
・・・・・・えっ?
それはちょっと無理
ああ!短期間だけ親離れを兼ねた修行に来てたとか?
スパルタだなあ
あう、見事にやらかしてしまいましたorzそして、返信が遅れて申し訳ないのです。
旧作をやっていないので、そちらのアリスを意識していませんでした。不勉強の為、不愉快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。
尚、後書きの文章なのですが、修正すると、コメント欄が何が何やらわからなくのでそのままにしておきますorz
毎日がんばって口上を練習する森萌えw
よくできてる分、細かいところが気になってしまうのですが、
×永遠邸
○永遠亭
ついでに言うと、この頃はまだ永遠亭は存在を知られてないんじゃないのかなぁ、と。
うわ、今回ダメダメじゃん私orz
ということで、ご指摘とご感想ありがとうございました。速やかに…コメントに気付くことができず、誤字ようやく修正致しました。申し訳ありませんorz
えと…永遠亭が知られる前というのは完全にこちらのミスです、ここをずらすと、色々と穴があいてしまうので教訓として残させて下さい(平伏)
ほのぼのして頂けたのなら何よりですw
ほのぼのとしたお話ありがとうございました