Coolier - 新生・東方創想話

静かなる恐怖

2007/12/16 07:20:26
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注:オリジナル設定含みます。



それは誰にも気がつかれずにひっそりと、しかし確実にその影響を及ぼしていた。
そして気がついた時には既に手遅れであった。






































「スカートのホックが締まらない・・・」
幻想郷でもレティが活発に活動を開始する12月。
秋も終わり、春秋用の薄手のメイド服から冬用のメイド服に変えようとした咲夜が彼女らしくなく顔を真っ青に染めて脂汗をだらだらと流して固まった。
スカートは去年の冬に着た物だ。
そのスカートのホックが締まらない。
それはイコール太「いやぁぁぁぁぁ!言わないでぇぇぇぇぇ!」ビュン!こ、こら!作者にナイフを投げるんじゃ!ザクッ!ぎゃー!分かった!言わないからやめてぇ!
・・・ごほんっ。
兎に角女性にとっては決して無視しては居られない事態に咲夜はまずはどれぐらいなのかを確認しに浴場へと時を止めて移動した。

「・・・」
全裸になり、さらにこれでもかと髪の毛を束ねているリボンすら外して体重計に乗る咲夜の顔は真っ青を通り越して死人のそれになっている。
目は瞳孔が開き、口は半開き、顔色はこれぞ土気色、全身を小刻みに震わせてただただ悪魔の数値を見つめ続ける。
油断していた。
毎年秋は色々な物を食べてきた。
それでも彼女はちゃんと制限してきた。
しかし、今年はある一点の最大にして最強の項目をすっかり忘れていた。
それは恋愛に鈍感だった美鈴と恋仲になる事が出来たと言う事だった。
なぜそれに問題があるのか。
それは美鈴が尽くす女性だった事だ。
中華風な格好から見てのとおり中華料理が得意な彼女だったが愛する人の為にと洋食に和食にその他様々な国の料理を勉強しまくったのだ。
そして出来て一番に食べてもらうのが当然ながら恋人の咲夜である。
元々器用な美鈴が作る料理はどれも一級シェフが料理したものよりも美味しかった。
あまりに美味しさに調理部主任メイドが退職願を出して実家に帰ろうとして大騒ぎになった事すらある。
しかし愛する二人にはそんなの関係ぇねぇ!とばかりに美鈴は料理を作り続けた。
咲夜も嬉恥ずかしと照れつつも美鈴の愛情料理を食べてきた。
だが美鈴は妖怪、咲夜は人間。
しかも重労働の美鈴に比べれば咲夜の仕事は運動量が少ない。
さらに美鈴の作る量は1人前が普通の人の2人前くらいの量があった。
また元々が中華料理が得意なだけあって中華料理が並ぶ事が多い。
自分の為だけに作ってくれるのが嬉しいしあまりの美味しさについついいつもの自制を忘れて食べ続けてきた。
その結果が今彼女に重くのしかかっている。
「・・・痩せなくちゃ」
小さなつぶやきにはまさに乙女の決意が溢れ出ていた。

まずどうやって痩せるかを咲夜は考える。
食べないという項目は一瞬にして却下する。
美鈴の食事が食べられないなんて考えられない、と食べる量を減らさずに痩せる方法を考える。
「・・・やっぱり運動が一番ね」
しかし咲夜の自由に出来る時間はかなり限られる。
屋敷の掃除の見回りからレミリアの世話、その他諸々の雑業が含まれるからである。
自由に出来る時間は精々1時間。
「・・・1時間を2時間・・・いえ、5時間に延ばして走るのよ!」
こうして咲夜の奮闘は始まった。

「はぁ!はぁ!はぁ!」
時の流れを通常の5分の1にして咲夜は紅魔館の周辺を走っている。
流石にメイド服では走りづらいのでジャージ姿である。
「はぁ!後!2時間!はぁ!はぁ!」
咲夜は必死に走り続ける。
その形相はまさに鬼といえそうなものだ。
「がんばれ私!痩せる為に!」
自分に言い聞かせるように気合を入れなおすと咲夜は走り続けた。

そして咲夜がダイエットを始めて1週間がたった。
「・・・咲夜、最近妙に疲れてるみたいだけれどもどうかしたの?」
「なんでもありませんお嬢様、少し寝不足なだけです」
「そう・・・ならいいけど」
レミリアはどう見ても寝不足とは思えない疲労感を漂わせている咲夜を見て呆れ顔をする。
「今日は私の世話はいいから寝不足なら寝ておきなさい」
咲夜が真面目過ぎて無理をする事が多々あるのを長年の付き合いで知っているレミリアは休むようにいう。
「ありがとうございますお嬢様。心配をかけて申し訳ありません」
一礼してふらふらと部屋を出て行く昨夜を見てレミリアはどうしたものかとこめかみを押さえた。

「あの~・・・咲夜さん?」
「何?美鈴」
いつものように美鈴の自室で食事を食べる為にやってきた咲夜に美鈴が恐る恐る声をかける。
「随分とお疲れのようですけど・・・何かあったんですか?」
「何でもないわ美鈴。ちょっと忙しかっただけよ」
「ならいいんですけど・・・」
実はレミリアに休みを言い渡された後ぶっ続けで走り続けていたのだ。
全てはただ痩せる為だけに・・・。
「今日も美味しそうな料理ね。いただくわ」
「あ、はい」
咲夜は箸を持つと早速美鈴お手製チンジャオロースに手をつけた。

「・・・減って・・・ない・・・」
寧ろ悪魔の数字は増え・・・げふんげふん、悪魔から大悪魔くらいになっていた。
1週間暇を見つけては走り続けた。
しかも時間の流れを遅くしてまで、だ。
しかし悪魔は大悪魔になっただけで悪化するだけだった。
「・・・もっと走らなきゃ・・・」
まるで幽霊のようにふらりと浴場から咲夜は立ち去ると着替える為に自室へ向かった。

そしてさらに1週間。
「・・・咲夜」
「・・・ね・・・寝不足です」
ふらふらというかへろへろというかやばい状況の咲夜に流石のレミリアも言葉をなくす。
それでも寝不足と言い張る咲夜にレミリアは強制的に休みを取らせる事にする。
「・・・ふんっ!」
「ぐっ!」
普段の咲夜であればあっさりと避けれるであろうレミリアの攻撃を受けて咲夜は気絶する。
「全く・・・何を考えてるのよ」
レミリアはそう言って咲夜を運ぼうとする。
「う・・・重いわね」
「言わないでぇ!」
ザクザクザクッ!
「ひぎゃぁぁぁ!」
禁句に見事なまでに反応した咲夜がレミリアの頭を銀のナイフでメッタ刺しにする。
「な!何事ですかお嬢様!」
「頭が~!頭が灰になる~!」
偶然部屋の前を通りがかった美鈴が気で治療をほどこしてくれたおかげでレミリアは頭無し吸血鬼になる事を避けられた。

「・・・で、主の命を危険にさらすほどにまで動揺するほど太ったのかしら?」
「うう・・・」
頭に包帯を巻きつけてターバンみたいな状態になっているレミリアが涙を流す咲夜を尋問する。
その後ろでは美鈴が気を送って怪我の治療を行っている。
レミリアとて女性だから体重やスタイルを気にするのは分かる。
だがいくらなんでも自分の命が危うい状況にされても許せるほど甘くは無い。
「うう・・・実は・・・最初はベスト体重から300グラムオーバーしてたんですけど・・・」
「最初はって、今はどうなの?」
「その・・・なぜか知りませんが今は1キロほど増えてるんです・・・」
「はぁ?運動は死ぬほどやったんでしょ?能力まで使って12時間分走ったのよね?」
「はい・・・」
普通運動したら痩せるはずである。
しかし逆に重くなっている。
そんな矛盾した状況にレミリアは腕を組んで考え込む。
「それは筋肉が付いたんですよ」
「美鈴?どういう事?」
美鈴が言った言葉にレミリアが疑問を投げかける。
「筋肉は脂肪より比重が高いんです。意外かもしれませんけど私って結構重いんです。それは私が脂肪が少なくて筋肉が多いからなんです」
美鈴のスタイルは非常に痩せている。
胸は確かに紅魔館一を誇るサイズだが腕や足腰なんかは非常にほっそりとしている。
毎日の鍛錬が美鈴の体を引き締めているのだ。
「咲夜さんは今まで運動は人並み程度でしたから筋肉と脂肪のバランスはやや脂肪に傾いていたんです。ところが急に激しい運動を始めたから普段あまり使われない筋肉が刺激されて急激に成長したんですよ。だから脂肪は減ったんですけど筋肉が増えちゃって体は痩せたんですけど逆に体重は増えちゃったんです。それに咲夜さんがお疲れの様子でしたから体力が付いたり栄養が豊富な食べ物を選んで食事を作ったから余計に筋肉を増やしやすくしちゃったんですね」
そう言って美鈴は咲夜に近寄っていく。
「多分今の咲夜さんのウェストサイズは以前より痩せてると思いますけど違いますか?」
「そう言われてみれば・・・丁度よかったこのスカートが今はゆるく感じられるわ」
ちなみに今咲夜が履いているスカートは本人は疲れきっていて気がついていなかったのだが最初にホックが締まらなかったスカートだ。
「ですからもう無理なダイエットはしなくてもいいですよ。それに私は咲夜さんが太っていても痩せていても大好きですから」
「は、恥ずかしい事をこんな所で言わないで!」
「砂吐きそうだから他所でやってくれるかしら・・・」
今日も紅魔館は平和だった。

おわり
題名だけ見てシリアスだと思った方はごめんなさい。最初は後ろに(女性限定)をつける予定だったのですがギャップを持たせてみたいと思った私が居ます。秋はいろんな食べ物があってついつい食べ過ぎてしまいますね。せっかく痩せた体重が戻ってしまったとか自分は大丈夫とか思っていてある日偶然体重計に乗ったら悲惨な結果に鬱になったり・・・。だからと言って過激なダイエットは危険ですので12時間マラソンとか絶対にやらないようにしてくださいね。(人間にできるか!)

咲夜さんのキャラが激しく壊れてますが咲夜さんスキーには申し訳ない。いつもは冷静な人がちょっとした事で取り乱すというシュチュエーションが好きなんです。こんなの咲夜さんじゃない!等の苦情は受け付けますが冒頭部分にオリジナル設定を含みますと記述しておいたのでそこはオリジナル設定という事で了承願いたいです。前回の一人称問題からの対策です。

感想お待ちしております。
夢を綴る程度の能力
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コメント



0.360簡易評価
1.40名前が無い程度の能力削除
内容自体は面白く、結構好きなんですが
作者と咲夜さんの掛け合いはいらないかな、と思います。