Coolier - 新生・東方創想話

鬼の子の最初の恋

2007/12/14 07:25:15
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 今日は冬のわりに暖かいから、彼女は気まぐれに、酒の相手をしてくれそうなを誰か探していた。
 二本の大きな角と、それに釣り合わない幼い体躯。
 幻想郷で唯一の鬼は、のんびりゆったり、その幼い体でぐびぐびと瓢箪の中身の酒をあおりながら、幻想郷の外れにある大木の枝に座っていた。
 伊吹萃香。
 彼女は、今日は自身の能力を使うでもなく、誰かがそこを通り過ぎるのを気まぐれで、そして少しだけの期待を込めて待ってみた。
 もしかしたら誰も来ないかもしれない。だけど、来るかもしれない。
 そんなちょっとした気まぐれの遊び。
 いつもなら付き合いのいい、八雲や、その式。そして博麗の巫女や里の半獣辺りに相手をしてもらうのだが、今日はそれもちょっと詰まらない。
 ふわふわと、せっかくのこんないい天気なのだから、久しぶりに他の誰かと酒を飲んだり騒いだりしたい。
 伊吹萃香はそんな風に考えながら、日差しの心地よい太い枝の上。誰か来ないかと待っていた。
 爽やかでゆるやかな陽気。
 こんな日には、やっぱり酒を飲むのが一番だと、その最初に通りすがった相手が誰であろうと無理矢理につき合わせる心持ちで、萃香はごくごくと瓢箪の中身を水みたいに飲み続ける。

 早く誰か通り過ぎないものかと。
 
 萃香は青い空を見る。
 酒で退屈こそはしないが、それでもずっとこうしていると眠くなる。
 萃香は湧いてくる眠気を首を振って霧散して、この眠気を誘う陽気にへにゃりとだらしなく笑う。
「あー、あったかいなぁ」
 誰かと飲むのもいいが、昼寝もいいかもしれないと、ちょっと心が揺れ動いてしまった、そんな午後の事。
 そんな時に、さあぁっと、全身をすり抜け通り過ぎる、心地よい風の感触。
「ん」
 幼い顔を酔いで染めた赤い笑顔で、萃香は日差しと、そして優しい風を全身で感じる。
 いい風だった。
 と、萃香は右目を瞑ったまま、左目をあげて、空を見る。

「……んむ?この風の匂いは、あいつか?」

 萃香は、その気持ちのいい風の流れとその見知った匂いに、ふと視線をあげてから、すぐににまりと笑う。
「うんうん、あいつなら、酒の相手には申し分ない」
 よいしょと立ち上がり、風の流れてくる方向を見つめて、ぐっと腕を回して。すぐにでも弾幕を打てる体勢になる。
 ざああぁ、と。
 木の葉が一際大きく揺れてさざなみ、そして髪が巻き上がる大きくていい匂いの風が吹く。


 黒い翼を、大きく滑らかに羽ばたかせる、風に愛される天狗の少女。
 ばさっと、翼を動かす音が聞こえて、彼女がぐんっと少しスピードを上げたのが、遠くからでも分かる。何とも気持ちの良さそうな飛び方。


 ああ、本当に、気持ち良さそうに飛ぶんだなぁ。
 と、萃香は一瞬だけ目を見開いて、それに見惚れる。だが、すぐにはっとして、ぼうっとはしていられないと、僅かに慌ててぐぐっと腕に力を込めて。 放った。

 少しだけ大きめの、だけれど簡単に避けられるだろう弾幕を一発。

「え?あやや?」

 上の方で、ちょうどタイミングよく弾幕の攻撃を受けて、避けたらしい彼女の声に、萃香は満足げに頷く「うんうん、あれに当たるのでは話しにならんぞ?」とでも言いたげな、ちょっと偉そうな笑顔だった。
「ち、ちょっと、何をするんですか唐突に?!」
「うっす」
「いや、うっすじゃなくて……」
 すぐさまくるんと方向転換して、逆さまの顔を見せて抗議する天狗の少女。
「じゃあ天狗」
「は?」
「酒を飲むから付き合え」
「……はあ?」
 最初に、此処を通った天狗の少女。
 だから、萃香は当初の予定通りに彼女に酒に付き合ってもらおうと笑顔でそう言う。それに天狗の少女、射命丸文はあまりに唐突なその申し出に、逆さまの状態のまま器用に固まってみせる。
 片方はにこりと酔った笑顔で、片方は目を点にした呆気にとられた顔で。

 鬼の少女と天狗の少女は、今日という暖かい冬の午後に出会った。













 場所を変えて、見晴しのいい崖の上。
 その岩場に適当に座って、文は無理矢理に酒を飲まされていた。
「……意味が分かりませんよ?」
「なんで?」
 文のそれに、萃香は瓢箪から直接酒を飲みながら首をかしげた。
「いい天気で、いい気分で、だから誰かとお酒を飲みたくて、それであんたが来たから誘った。どこがおかしいのさ天狗?」
「本気で心底不思議だ、という顔で首を傾げないで下さいよ…」
 とほほ、と。文は目の前でにこにこと上機嫌に酒を飲む萃香の前でがっくりと項垂れる。
「ほらほら、そんな顔してないで飲む飲む!」
「昼間から無茶を言わないで下さいよ」
「天狗が何をほざいてるのか」
 お酒好きなら鬼にも負けない天狗のそれに、鬼は軽く笑い飛ばすが、文は困った顔をするのみだ。
 文も勿論お酒は好きだ。だが、だからといって昼間から飲みまくるというのは抵抗があるし、何より文は今から里の方に取材に行くつもりだったのだ。なので、適当に萃香に付き合った後、そちらの業務に戻るつもりの文は、萃香の勢いに付き合って飲むわけにもいかないし、そのつもりも無かった。
「ほらほら、いいから飲めー!」
「あー、もう分かりましたよ。……はぁ、幻想郷唯一の鬼の機嫌を損ねて、変に天狗に恨みをもたれても困りますしねぇ」
「む?失礼な天狗だなお前は」
 いまいちノリの悪い文に、萃香はむぅっと頬を膨らませて、無理矢理に文の杯に酒を注いでいく。
「わっ?!ち、ちょっと多すぎですよ」
「いいから飲めー!」
「ああ、もう分かりましたってば!」
 何が何でも、そして物好きにも自分と酒を飲むつもりなのだと、文は目の前の幼い鬼に、愛想笑いをしながらも理解して、やれやれと内心肩をすくめる。
「あのですね萃香さん。私は」
「と、そうだ。お前の名前って何だっけ?」
「……以前、取材の際に自己紹介をしたと思ったのですがね」
「悪い悪い、で?」
 酔った鬼は、人間もだが大抵は悪びれない。
 文は酔っ払いの相手は嫌だーと心の中で叫びながらも、とりあえずはもう一度自己紹介をする。
「どうぞお見知りおきを、伊吹萃香さん。私は射命丸文と申します」
 軽く頭を下げて。ちょっとだけ文はおどけてみせた。
「ふぅん。文か」
 そんな文に、萃香は何だか嬉しそうににまにま笑い、ぐいっと瓢箪を煽る。
 どうやら、とりあえずは文の事を気に入っているらしい。
「……って、いきなり呼び捨てですか」
「酒の席でかたっくるしいぞ文ー」
 ぶんっと、萃香がわははと豪快に笑いながら瓢箪をまわして、それが文の頭にごんっと当たる。地味に痛そうだった。文は頭を押さえてちょっと恨みがましい目になっている。
「……酔っ払い」
「ん、何か言った?」
「……いえ、別に」
 鬼の機嫌を損ねるのも、ついでに変に恨みを買うのも本当に避けたい、天狗の社会に生きる文は、無用の火種を起こさない様にと、やれやれと萃香の相手をする事を何とか自分に納得させる事にする。
 本当はさっさとここから立ち去りたいが、まあ、鬼と酒を飲むのも、何かネタになるものがあるかもしれないか、と。
「んあ?そういや、文は何処にいこうとしてたわけ?」
「ええ、萃香さんに邪魔されなければ里に取材に行くつもりでしたよ」
「?あんな外れから」
「私は空を飛ぶのが普通に好きなんですよ。だから、ちょっと寄り道です」
 こほんと咳払いして、文は萃香をじと目で見ながら言う
 できれば今すぐにでも向かいたいんですがねぇ、とは言わずに、文はやけになってぐいっと酒を飲む。喉が一気に熱くなる感覚に、もう少し味わうべきだったかな?とも思いつつ、ごくりと飲み干す。
「おー♪」
 それに、萃香が何故か嬉しそうに顔を輝かせて擦り寄ってくる。
「な、何ですか?」
「よしよし。飲め飲め!」
「はぁ……じゃあいただきます」
「うんうん」
 にやにやと、いきなり上機嫌になる鬼に、文は杯を差し出しながら、瓢箪からとくとくと零れていく酒を見て、何となく頭に浮かんだそれを、何となく口にする。


「ああ、そういえば、萃香さんが口をつけてた瓢箪ですから、この場合は間接キスですね」


 陽気で無邪気でおおざっぱで豪快な鬼、伊吹萃香。
 こういうことには頓着しないだろうという、文の思考からきた台詞だった。
 だから、文はこの台詞に別段深い意味をこめたつもりもなく、単に会話に華を咲かせるための、ちょっとした種のようなものだった。だから文には本当に深い意味は無かった。
 だが、
「へ?」
 ぴたりと、
 今まで文の事情など全く気にせずに当たり前のように自分に付き合せていた、かなり強引な鬼の幼女の動きが途端に止まった。
「はい?」
 文も、それにきょとんとした顔になり、酒に酔って胡坐をかいて、先程までへらへらしていた少女を見つめる。
 心なしか、酔うという意味とは違う意味で、顔が赤い気がした。
「か、間接、き、キス?」
「え?ええ、この場合は私と萃香さんが」
「………」
 沈黙。
 何故か萃香は瓢箪を傾けたまま硬直し、文の持つ杯からとくとくと酒が溢れて零れていく。
「な、なな、何を言ってんだ?!」
「はあ?」
「そ、それなら私は霊夢とか紫とかと、飲んでるから!別にそういう他意は欠片も」
「ああ、それなら萃香さんは、霊夢さん達とも間接キスをしたって事ですよね?」
 勿論、文には深い意味は欠片も無い。何故か過剰反応する鬼に、文としては不思議に思いつつも事実を口にしただけだ。
 伊吹萃香は、見た目は確かに完璧に幼女だが、その実は何百年も生きているだろう鬼だ。その鬼が一々間接キスという単語と行為ぐらいで反応するとは、文は全然思っていなかった。むしろ笑い飛ばして「そんなの一々気にするなー!」とごっくごっくと酒を飲むタイプだと思っている。
 だが、何故か文の予想は大きく外れて、萃香はさらに固まって、赤い顔をさあっと一瞬白くして、だが次の瞬間にはすぐに真っ赤に染める、という不思議な異変を起こしていた。
「萃香さん?」
「にゃ、にゃんでもない!」
「は、はあ、そうですか」
 噛みながら怒鳴られた。瓢箪で頭も殴られた。
 ちょっと、いやかなり文は理不尽なものを感じつつ、やれやれと、自身の手を盛大に濡らしてくれた酒をぐいっと勢いを弱めずに飲む。
 酔っている時は鬼にも人間にも、何を言っても無駄だと、文は経験上良く知っていた。
 だが少しは気になるので、文は横目で萃香を観察すると、萃香は無限に酒のでる瓢箪をごっくごっくと勢いよく、文以上に飲んでいた。ちょっとこのペースは異常だった。
「す、萃香さん?」
「何だよ馬鹿天狗!」
「な、何で切れるんですか、いきなり?!」
 上機嫌が今は顔を真っ赤にして不機嫌だった。半分は酒のせいなのだろうが、この鬼がこの程度でそこまで酔うわけがない。よってほとんど萃香自身が怒っているのだ。
「……り、理不尽だ」
 文は、はあっと溜息を吐いて、逃げようにも、何故か服の裾を握っている鬼の幼女のせいでそうはできず、諦めて酒を飲むのだった。
 暫し、沈黙を肴に、のんびりと心地いい陽気と風にあたりながら酒を飲む文と萃香。
「……」
 文にとって、それはなかなかに悪くなく、たまになら、本当にたまになら、こういうのもいいかもしれないと酒をじんわりと味わい思う。
「ん、おいしい」
「……」
 その様子を、いつの間にか文の隣に座って瓢箪を傾けていた萃香がちらりと見上げて、すぐに不機嫌そうに目を逸らす。
「……文」
「はい?」
「さっきの、間接キスの奴だけど」
「は?」
 間接キス?と文は首を傾げる。何というか、文はすでにどうでもいい事として記憶していなかった。
「……本当に、他意はないからな」
 ぶっすぅと、ちょっとぶっきらぼうな萃香の言い草に、文は「はあ」と頷いて見せて、鬼とは変な事に拘るものだと不思議に思いながら残った酒を一気に飲む。
 萃香は萃香で、隣で酒を飲む天狗が、何でそんなに余裕があるんだ?!とかなりご立腹で、不機嫌そうに酒を飲みながら考える。
 間接キス。
 はっきりと、それが萃香を意識させていた。
 伊吹萃香という鬼は、毎日酒を飲んで、たまにきまぐれに人間と遊んで、勝手気ままに好き放題に、そういう風にして今まで過ごしてきた。
 だからというか何というか、萃香はそういった経験はゼロに誓い。
 というより、萃香の容姿でそういう経験が多分にあるほうが非常に恐ろしいが、ともかく、萃香は普通の下世話で酒の席の下ネタなんかは楽しく笑ってかるーく流せるが、間接キスとか、とにかくそういうちょっとピュアというか、酒の席ではちょっとあざとく言いそうなそんな単語を、先程の文みたいに素の状態であっさりと普通に改めて言われるというのは、全く慣れていないのだ。いや、初めての経験だといってもいい。
 それも、二人きりで向かい合って座っている時に。
「……うー」
 だから、文のそれに過剰に反応してしまい、そして文が間接キスの相手?!と意味無く意識してしまい、慌てて酒を飲んで気にしないように努めていた。
「あーくそ!今日はどうしたんだー!」
「萃香さん?」
「酔えないー!」
「……鬼ですしねぇ」
 お酒には強いでしょうと、全く違う事をのんびりと言う文に、萃香は途端に怒りがこみ上げる。どちらかというと、そういう感情はあんまり湧かない萃香だが、この文の態度にはこう、くるものがあった。
「おい文」
「はい、何ですか萃香さん………って、何か目が据わってるんですが」
 睨み付けると、文が「ええ?!」とぎょっとした顔になって、わたわたしだす。背中の羽がぱさぱさと小さく動くのを、何か可愛いなと思って、すぐに萃香は「違ーう!」と頭を抱えて叫ぶ。
「な、何だ今のはっ?!」
「それはこっちの台詞ですよ!!」
 いきなりの萃香の絶叫に、胸を押さえて一歩下がりながら怒鳴り返す文。が、今は萃香はそんな些細な事に構っていられない。
 今、萃香はふと自分の心に浮き上がった単語に非常に慌てて愕然としていた。
(な、何だ、今の可愛いって?!頭の中に勝手に出てきて、ついでにちょっと見惚れって違う!これは違う!断じて違う!違うもん!)
 何が違うのかは知らないが、彼女は小さな体で「うぅぅぅ?!」と唸って小さくなって、それからがばっと文をじいっと見る。それはもう穴があきそうなほどにみる。
「………はい?」
「うん。よし!大丈夫!」
(可愛い、とは思わない!欠片も、些細も、微塵も!)
 萃香は嬉しそうに救われた顔をすると、うんうんと涙ながらに頷いて、ばんばんと文の肩を叩く。
「あーびっくりした!」
「……あの、いい加減に、少しぐらいの状況説明が欲しいんですがねぇ」
 萃香が勝手に騒いで勝手に納得して、文は非常に迷惑そうな顔になる。何だかもう帰りたいと彼女は思っていた。天狗の印象とか恨みとか、そういうのは考えずに、さっさと逃げちゃおうかなともちらりと考えた。
「あー、びっくりした。そうだよなうん!」
 きっと変に酒が作用して、あんなおかしな事を考えたのだと結論づけた萃香の顔は、非常に眩しいものだった。
「……何を納得しているのかは知りませんが、とりあえず。お酒くれません?」
 この幼女のテンションについていくには、こちらも酔うしかないと文はある意味で腹をくくり、今日の取材は諦めた。
「おお!やっと素直になった、か」
 そして萃香もぐいっと瓢箪を押し付けるように出して、文の、ちょっと小首を傾げたお願いポーズ(無意識)の上目遣いをモロに見た。
 暫し、文には普通の、しかし萃香には一秒が一時間ぐらいに、それに見惚れて固まった。

「……かわ」

 いい、と言いそうになった所で、萃香は突如として地面、というか岩に強烈な頭突きをかました。
 とても洒落にならない音が、とても洒落にならない音量で文の耳を直撃する。それはもうずがんと。
「―――は、はあっ?!」
「……な、何でもない。ちょっと、そこに、蚊がいたんだ」
「この季節に蚊?!というか、こんな酸素の薄い場所に?!」
「最近の蚊は、根性あるからな……」
「というか、何故に頭突きで全力でつぶす必要があるんですかっ?!」
「確実に止めを、ね」
 かなり無理矢理な理由だった。
 萃香自身、これはちょっと無理があるかなぁとも思ったが、そこで素直に嘘とは言えない。
「……私は、どうしたんだ一体」
「そ、それは私のほうが非常に気になりますよ」
 ばっくんばっくんする心臓を、奇しくもお互いが押さえて、鬼の幼女も天狗の少女も沈黙する。
「……帰る」
「そ、そうですか!」
 是非そうしてくださいと、文はがくがくと頷く。よくは分からないが萃香が情緒不安定。ある意味で文の命が危険だった。鬼の破壊力を舐めてはいけない。
 しゅううっと軽い穴があいた岩と、無傷な萃香の額を見て、文は恐怖を感じる。
 そして萃香も、よく分からないが今日の自分はおかしいと自覚して、文から即刻はなれようと決意する。
「じ、じゃあな文!」
「ええ、そ、それじゃあまた今度ですね」
 また今度。
 その言葉に、何故か萃香は、変に心臓の辺りがきゅうっとしたのを感じて、返事もそこそこにその場から飛んでいく。
 それを見送る文は、どうしたのだろうと疑問満載の顔と共に、この場の後片付けを始めるのだった。












 おかしいと、これは非常におかしいと、伊吹萃香は頭を抱えていた。
「ま、まさか、天狗の妖術とか?」
 なんて口走るが、文がそんなけったいな技をだした気配は微塵も無かった。ならば何故、自分はこんなにも動揺しているのかと、萃香はふらふらと飛びながらも考える。
 んぐっと瓢箪を加えて、どうしたんだろうと何度目の問いを自分にして、そして、咥えた瓢箪に文の「間接キス」という発言を思い出してぶはあっと酒を霧にしてしまう。

「お、おいおい、勿体無いなぁ」
「……どうでもいいけど、あんたの目って、一体どうなってるのよ」

 げっほげっほとむせて、萃香が目を上げると、そこにはいつぞやの魔法使いと人形遣いが並んで飛んでいた。
「あ?」
 萃香があまりに突然の事に目を丸くする。
「なんだよアリス?私の目が優秀だってのがそんなに嬉しいのか?」
「いいえ、どうしたらあんな所からこの鬼を見つけられたのか疑問で、それが非常に薄ら寒かったのよ」
「失礼な奴だな。私は目がいいんだよ。魔法使いだからな」
「ああそう。まあ、どうでもいいけど、こうしてここに来た以上。この鬼に何か用事があったんでしょうね?」
「いやないぜ?ちょっとアリスと競争してみようと思っただけだ」
「そうなの。お願い死んで」
 笑顔で仲が良いのか悪いのか不明なやり取りをする二人だった。
 いつの間にか萃香の存在を忘れたかのようなそれに、萃香は酒を飲みながらのんびりと眺める。鬼はどんな状況でも楽しむ事を忘れないものだ。例え、自分がちょっといつもと違っておかしくても、そこに楽しそうなものがあれば観察するのを忘れない。
 おかげで、萃香は随分と落ち着いていた。
 暫くそれを酒の肴にしながら、ふと萃香は、この知識だけはやたらと溜め込む魔法使いという人種に、先程の事を訪ねてみようかと考えた。
 何とも都合よく目の前にいるのだし、聞いてみて損はないかと、萃香はぺろりと唇を舐める。
「なあおい」
「あん?」
 意外そうな顔で、魔法使い、霧雨魔理沙は振り返り、それから萃香を暫しまじまじと見つめた。
「なに?」
「あ、いや?……お前、もしかして酔ってないのか?珍しいな」
「あら。本当ね」
 今の萃香の顔は、いつもの赤ら顔のご機嫌ではなく、僅かに赤みの取れた、そして理性のある普通の表情だった。
 それに、萃香自身も気付いていたので、ちょっと罰が悪い気分になる。
「……ん、ちょっと色々あって、酔いは完全に冷めちゃってね。今酔いなおそうとしているところ」
 ぐいっと煽るように酒を飲むと、人形遣い、アリス・マーガトロイドが目を細めて、腕に人形を抱いたまま「そう」とだけ答える。
「それで?」
 魔理沙が楽しげに顔を寄せる。どうやら話は聞いてくれるらしいが、どうにもこの態度には信用するべき何かが圧倒的に足りず、萃香は話そうとした口を曲げて、くるりとアリスの方に向き直る。
「ちょっといい?」
「ええ。構わないわ」
「おい……」
 じと目になる魔法使いを、二人で出来る限り無視して、萃香はとりあえずと、空に浮いたままなのも何なので、地面に降りて座る。

「実はさ」

 そして、つい先程のあまりに不可解なそれを、アリスと、そして後ろで興味深そうにしている、追い払っても無駄そうな魔理沙に聞かせる。
 話は数十分で終わる、簡単なものだ。だが萃香には自分に何が起こったのか分からない。
 それを素直に人形遣いに伝えると、アリスは真面目に聞いてくれていた。後ろでにやにやがましてきた魔法使いとは全然違った。
 萃香は真面目な顔で、これはどういう事だろうとアリスに聞く。勿論魔理沙はいないものとして扱っていた。
「ふぅん」
 アリスは、萃香の話に驚くでも不思議がるでもなく、普通に人形の髪を撫でながら、何故か楽しそうにニヤニヤ笑って口を開こうとした魔理沙の頭を掴んでそのまま地面と勢いよくキスさせて、頷いた。
「つまり、その誰かとお酒を飲んだ後の、自分がおかしい、と?」
「うん」
「それで、その誰かの事を、何故かうっかり可愛いと思ってしまったと」
「…うん」
 これはどういうことだと、萃香は頷く。
 確かに、あの天狗は可愛い方だとは思うが、自分がそれをその天狗に感じるこの異常事態が信じられない。
 そんな萃香に、アリスは余計な事を言いそうになる魔理沙を、地面にぐりぐりと回転を加えて押し付けながら、口を開く。
「簡単よ」
「?」
「つまり、貴方はその誰かが気になっている」
「ん、まあ気にはなるかな」
 そりゃあ、天狗にしては面白い奴だし、何よりあの飛ぶ姿が気持ち良さそうで、あいつの隣にいるだけで、風がどうしようもなく気持ちいい。
 あの天狗は間違いなく風に愛されている。
 だからこそ、あいつの周りには常にいい香りの風が漂って、それがたまらなく気持ちいいと、すでに萃香は知っていた。
「なんていうか、ほんの少しだけしか酒は飲まなかったけど、うん、楽しかった」
 始終、苦笑気味に、だけれど付き合いよく、何か打算があったのかもしれないが、それでもちゃんと最後まで付き合ってくれた。
 それに、やっぱり風が気持ちよくて、話しながら何だか眠くなるぐらいに心地よかった。
「そう、なら結論を言うわ」
「ん?」
「一般的にだけどね。一定の誰かが気になる。ちょっといいなと思う。何より、その人の事をずっと考える。そしてまた会いたいなと思う」
「ふんふん」
 全て当てはまったので、萃香は頷いたままアリスににじり寄っていく。そんな萃香にアリスは無表情に人形を抱いて、ついでに、場の空気を間違いなく壊すだろう魔理沙の暴言を封じる為に、腕に体重を更にかける。下の魔理沙がばたばたと騒がしい音がした。

「その状態を。世間一般には、初恋というわ」

 初恋。成程と萃香は頷く。
 ぶはああ?!
 と、魔理沙がやっとアリスの魔手から抜け出した音がして、だが萃香は気にせずほうほうと頷く。
「成程、初恋か。初恋ね……うん、ん?……はつこい?」
「はあっ、はあっ、し、死ぬかと思ったぁぁあ!!」
「ちっ。……死ねばよかったのに」
「アリス!最近私への愛情を全く感じないぜ!」
「魔理沙に愛情なんて抱いていないもの。当然だわ」
「さらりと酷いぜ!」
 顔を青くしてぜはぜはする魔理沙は、叫びすぎてさらに酸欠になって苦しそうだ。だがアリスは気にもしない。今は魔理沙より萃香だと顔が物語っていた。
「……信じられないかしら?」
「いや、いやいや。それは違うよ。うん!だって、別に、今日ちょっと気まぐれに酒を飲もうと誘っただけだし、偶然だったし」
「そう?」
 何故だか、萃香は両手をぱたぱたと無意味に動かして、ひくひくと口元を引きつらせながら、手にしていた瓢箪を持ち上げる。
「……そ、そそ、それに。だって」
 それを、酒を飲もうとして、また文の「間接キス」という発言が頭をよぎって、ぴたりと止まる。
「え、えっと?」
 赤い顔で、今までにない反応でおろおろとしている萃香。アリスは、その萃香の目元に困惑の涙が浮かんでいるのを可愛いなぁと思い、それを興味深げに見る魔理沙は野次馬根性で可愛くないなとはっきりと思った。そしてアリスは人形の頬を撫でる。
「……そうね。話を聞くだけでも、あまりに唐突だわ」
「いやいや、アリス、相手はあの幼女キラーの文だからな、萃香がときめくのも無理はなへぎょぶ」
 魔理沙は、アリスの拳を頬に遠慮なくいれられて、地面に痛みでうずくまる。アリスは気にせず萃香をじっとみる。
「まあ、この馬鹿の発言は気にしないとして」
「ちちょっと待て?!な、なんで、相手が文だって知って?!」
「話を聞けば誰だって分かるわよ。そんな特徴を持つのは、幻想郷広しといえ、あの天狗しかいないでしょう?」
「うぐっ?!」
 知られてしまった。
 というように、あの鬼の子が、今まで見せた事もないような泣きそうな顔になる。
 可哀想にさらに固まり、目元の涙が盛り上がっていく萃香。可愛い人形を愛しているともいえるアリスは、可愛い人形みたいな元気のいい鬼の子も勿論愛しい。なので、可哀想なのですぐに口を開く。
「萃香」
「……ぅ」
「なら、勘違いね」
「う?うう?」
「ええ、私の間違いだわ。貴方はあの天狗を好きなんて事はない。大体、初恋というものは、普通なら十歳前後の子供がするもので、ほとんどはあの子可愛いな、ぐらいのそれが初恋といえるのよ?」
「うう……?」
 生まれて最初に家族以外の誰かを「いいな」と意識する。それが、一般的に初恋といえるのだと、アリスは言う。
「だから、貴方の年齢から、それが初恋ではないという事もできるわ。ただ、大人の気分で子供を可愛いと思うようにね」
「……」
 萃香は、やはりという何というか初恋はまだだった。同属も人間も、確かにいいなと思う奴は確かにいたが、それは初恋というのかといわれれば首を傾げるものだし、文みたいに変な感じになったのは初めてで、なので、これが初恋かどうかは理解不能だった。
「……いや、だけど」
 でも、別段、文を嫌いとも苦手とも思えず、むしろ好ましいし、何より、やっぱり空を飛んでいる姿はあんまりに気持ち良さそうで羨ましくて、いつか一緒に、
「じゃないぃぃぃ?!」
 どうした伊吹萃香、と萃香は自分の頭を殴る。
「あーあ。見ていられないぜ」
「あら、もう痛みから回復したのね。もっと食い込ませれば良かったわ」
「……アリス。分かった。ごめんなさい。アリスの人形を壊してすいませんでした。……だからそろそろ機嫌を直して下さい……さすがに三日連続でその態度は、私も辛いぜ……」
「無理な相談よ。……魔理沙、私ね、まだ怒りが収まらないの」
「……ぐぐ」
 実は静かに燻るように怒っているらしいアリスの様子に、魔理沙は頭を抱えて、どうしようと考える。どうやらこの二人にも複雑な事情があるらしい。
 だが萃香も今は自分の事で一杯で、ぶんぶんと角を振り回して「あー、くそー、何だ畜生ー」と叫んでいた。

「ああ、もう面倒臭いー!!」

 ついには、ぶちっと切れたらしい萃香。それに魔理沙とアリスはおやっという顔になる。
 ごくごくごくごく。
 決して弱くはない、むしろ強い瓢箪の中身を一気に胃に収めて、萃香は赤い顔でしっかりと地面に立つ。
「わかった!私は、文が好きで、アリスの言う初恋なのかもしれないっていうか、多分そうだ!」
「そ、そう…」
 何だか、いきなりあっさりと認めた萃香に、アリスは僅かに唖然とした顔で、頷く。
 普通は、もう少し自分の心の変化に戸惑い、否定するものだから、アリスと魔理沙は思わず顔を見合わせた。
「だから、鬼として、私もはっきりする事にする!」
「はん?」
 急に強気な鬼の幼女の発言に、魔理沙は「流石だな幼女キラー」と文に拍手を送りながら萃香に注目する。

「間接キスの責任を取って、私は文を嫁にする!!」

 どかん、と鬼の幼女の本気の告白だった。
 感動したのか、アリスと魔理沙は仲良く地面に一緒に煙を巻き上げて顔から倒れた。
 萃香は、すでに二人に背を向けているので、その様子には気付かない。
「待ってろ文!」
 拳を握り締め、雄雄しくそう宣言する鬼の子。
 ちょっと格好良かった。
「……魔理沙、どうしよう。もしかしてこの鬼、馬鹿?」
「………か、かつて無いほどの衝撃を受けたぜ……流石は鬼だ」
 地面に転がったまま、二人は顔を見合わせて、萃香の小さな背中を見る。
 いつの間にか地面を蹴って飛んでいく萃香に、アリスと魔理沙は、非常に複雑な表情になる。
「ねえ魔理沙。あんたも萃香を見習って、さっさと霊夢に、えっと変化球だっけ?で告白に行けば?」
「…断るぜ。私は直球で行く!……それならアリスも、とっとと自立人形の所に行けばいいだろう?」
「……最近は、警戒されまくって……」
「アリス。お前は人形のことになると一気に周りが見えなくなる癖、やめた方がいいぜ?あの自立人形、マジで逃げてたしな……」
「……そうね。つい、可愛くて」
 取り残された二人の、ちょっと切ない会話だった。












「文ー!!」
「へぼっ?!」
 突然のキック。それも鬼の。
 それを受けた天狗は、背中を強打してがくんと力任せにぶっとんでいく。
「あ!ごめん!」
「誠意を感じない!!」
 はっとした萃香と、頭から血を流した文だった。ちなみに文の現在地は地面の上で、先程の魔理沙達のようにうずくまっていた。
「今度は何ですか一体?!」
「……ぁう」
 途端、先程までの萃香の勢いがしょんぼりと小さくなる。
 どうやら文を目の前にして、意識したからこそどうにも収まらない心臓のばっくばっくんと鳴り止まないそれに動揺しているらしい。
「な、なんだこれ?!」
 胸を押さえて叫ぶ萃香。
「はい?!」
「心臓が苦しい!だけど嫌じゃない!」
「支離滅裂ですよ!」
 初めてのその感覚に、萃香はみるみる赤くなり、そしてすでに酔いなんて完全に冷めていた。
 今の萃香の顔の赤みは、完璧に、文を意識しての萃香の、正直な反応だった。
「もう、萃香さん。相当に飲みましたね?」
 だが、文から見れば、萃香は一定以上の酒を飲み、それによりいつもより酔いが激しく、それで支離滅裂で乱暴になったとしか見えなかった。
「全く、あれから今度は誰を誘って飲んむぐぐぐっ?!」
「飲・ん・で・な・い!」
 瓢箪を文の口に無理矢理押し付けて、文に強制的に酒を飲ませる。
「ん、んぐぐぐ?!」
 地面に座りなおしたばかりの文には、鬼の力を撥ね退けるだけの力も、それを実行するだけの冷静な頭もなく、反射で口の中の酒を飲んでいく。

「よ、よし!飲んだな」
「は、はひ?」

 本気でこの鬼は何がしたいんだという顔になる文だが、その顔は今は酒のせいで赤く、涙が浮いていた。
(う…可愛い。いや、うん。これ可愛い)
 今度は正直に、萃香は思う。
 別に、萃香はどちらかというと文は好みのタイプではないとちゃんと理解している。容姿や性格なら、むしろ霊夢とか紫みたいなタイプが好ましい。だが、何故かこう、文にはどうしても無視できない、何か萃香をひきつける何かがあって。
「……ぅ」
 文の前に、文の足の間に、小さな萃香は座る。そうすると萃香は文の足の間に簡単にすっぽりと入る。
「?」
 訝しげな顔で、汚れた口元をぬぐう文。
 それに、萃香は自然に動いていた。
 文の唇に触れられた手をどかして、そのまま、勢いを殺すことなく、すがりつくように。

 ちゅう。

 触れるだけ、というよりも、押し付けるだけといった。幼稚な、キス。
 精一杯に、萃香は、背すじを伸ばして、文の唇を奪っていた。
「は?」
 ぎしっと固まる文。
だが萃香は気にせずに、ばっくんばっくんな、うるさくて、だけど嫌じゃない感覚と、体が熱くて熱くて、酒とは違う高揚感に、もう頭がぐちゃぐちゃで。
「……あや」
「へ?」
「キスした」
「あ、ふあ?!いや、そうですけど?!ええっ?!」
「だから、責任を取る」
「せ、せぇきにん?!」
 噛む文を気にせずに、萃香は、
(私は鬼だ!はっきりと、きっぱりと、ちゃんと)
 ぐいっと顔を上げる。
「私の嫁になって、下さい!文が、好きだから!」
 赤い赤い。
 流石の文でも気付く、お酒だけではだせない。桜色の肌。
 そして、彼女のそれが、お酒を飲んだが故の戯れでも冗談でもないと分かる、真摯な瞳。

「す、萃香さ」
「さん、はいらない」
「っ?!」

 幻想郷唯一の鬼。伊吹萃香。
 彼女は、二の足を踏むなんてしない。相手の都合なんて考えない。ただ全身で全霊で自分の気持ちをぶつけるだけ。
 だから、萃香はもう一度、背すじを伸ばして、唇をそっと尖らせる。













 幻想郷最速を自負する天狗の少女は、今日はかなり疲れた顔で自身の家の中ぐったりしていた。
 先程まで、彼女の家には多大な馬鹿と凄まじい保護者を持った、どうにも憎めないちょっとだけ可愛いと思える妖精と、自分の部下で幼馴染な関係の、最近告白までしてきた天狗仲間が来ていたのだ。

「……き、きつい。こ、これが世間一般のモテ期という奴ですか?」

 やけに年齢層が低めなのは気になるが、文はむむっと考え込む。
「そ、それならもしかしたら、もうちょっと年上のもっと落ち着いた感じの美人さんが私を好きになってくれたり」
「するか馬鹿」
「……って、ちょっとぐらい、夢見させてくださいよ」
 とほー、と涙を浮かばせる彼女は、いつの間にか室内にいた、というか何処にでも出現できるだろう鬼の幼女の姿に、馴れた態度で接する。
「こんばんは。萃香」
「うん、こんばんは文」
 瓢箪をぶらぶらと下げて、にへらと笑う酔った萃香。それに文はやれやれと肩をすくめる。
「でさ」
「はい?」
「文は、私と妖精と部下と、誰が一番気になってるわけ?」
「正直に言うなら別に、皆が可愛いらしいなと思いつつ、そういう感情では見られないというのが現状ですが…」
 過去に、萃香には嘘をつかないと約束をしてしまった文。
 だから、文は非常に言いづらそうにしながらもはっきりと本音を言う。それに萃香は、幾分余裕の表情でふーんと酒を飲む。
「………つまり、本気にさせた者が勝ちって事かぁ」
「………」
 かなり嫌そうな顔で顔を背ける文を、萃香はいつもの事と気にしない。
「文」
 だから、鬼の少女はにんまり笑う。
「先手必勝って事で、押し倒していい?」
 とんでもない台詞と共に。
「き、却下!!約束しましたよ!嘘を吐かない代わりに力に任せて襲わないって!」
「……ちっ」
 瓢箪をぶんぶんと、そして不機嫌そうに、鬼の幼女はぶうたれて、そして文の腕に飛び込んでくる。
「あー。あんな約束するんじゃなかった」
「私は、あの約束をしていて良かったと心の底から思いますよ」
 いくらなんでもこんな小さい子に襲われてたまるか。という意地とプライドで、文は本気でほっとする。
「……はあ。大体、何で私が嫁なのか」
「いや、嫁じゃん」
「私はどちらかといえば婿でしょうが!」
 押しに弱くて、天狗の癖に弱いものにもうっかり優しい、そんな天狗の少女。
 風に愛される少女の、風の香りが一杯に広がる腕の中で萃香は「分かってないなぁ」ととろける様に笑って、のんびりゆったり、気ままに文のぬくもりを一杯に感じる。

「文」
「はい?」
「見てなさいよ?大きくなったら、それはもう、文の方から求婚するぐらいにいい女になるんだからね」

 にまにま笑う幼女に、立場上逆らえない文はちょっと目を見張って、それもいいなぁと少しだけ考える。
 その場合は、あの妖精や部下も、いい女になってるといいなぁと、かなり浮気根性を滲ませる思考を交えながら。

 


文と萃香もいいなと急に目覚めて書きなぐったモノ。

いつの間にか文が保母さんできそうなぐらいに、面倒見がよくなってました。

夏星
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コメント



0.1870簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
ニヤニヤが止まらなかった
3.80名前が無い程度の能力削除
文ちゃんはモテ期!
既に思いを寄せてくれている子がいるのにすっげぇ煮え切らない!
俺の中であややがヘタレキャラになってきたんだけどどうしよう
4.100名前が無い程度の能力削除
萃香とアリスが最高です。
5.90三文字削除
鬼っ子可愛いよ鬼っ子・・・・・・
にしても、文ちゃんモテの期羨ましい・・・
6.90名前が無い程度の能力削除
あやややや
すばらしい幼女バスターだなww
8.90名前が無い程度の能力削除
蟲の王様から始まり、とうとうここまで。
チル×文ってどうなのよって感想を持っていましたが、スイカまで。
これはもう、ニヤニヤが止まりませぬ。
この後どうなるんでしょうか、気になりますね

続きを期待する意味で90点を。
14.90名前が無い程度の能力削除
これは純粋で可愛い萃香。
何気ない一言で意識しちゃって、文を好きになるまでの描写がいい!
好きになってからの戸惑いや想いも可愛すぎる。
キスで責任とって結婚とまで言う萃香は正に幻想の鬼w
続きが気になる。期待してます。
16.100イスピン削除
ニヤニヤがとまらない君3号がここにいるぜ
萃香も交えて、これがうわさのはに○みトラ○アングル?(色々な都合により伏字を使わせてもらっています)

そしてさりげなく伏線(アリ×メディか?)を置いておく夏星さんに感動したw
17.100名前が無い程度の能力削除
はい、毎度ごちそうさまです
次もこの調子でお願いします
私は百合の蜜を吸って生きてますんで
20.100名前が無い程度の能力削除
ついに萃香まで…
この調子で全キャラコンプリートを

あとこのアリス最高。
23.90名前が無い程度の能力削除
これは珍しい萃香^^良かったです^^
27.90名前が無い程度の能力削除
文は総攻めのロリコンという印象があったが、こういうのも悪くないね
30.30名前が無い程度の能力削除
>「一般的にだけどね。一定の誰かが気になる。ちょっといいなと思う。何より、その人の事をずっと考える。そしてまた会いたいなと思う」
>「その状態を。世間一般には、初恋というわ」
この部分が強引過ぎるw
一般論とせずに単なるアリスの感想、そして「初恋」ではなく「恋」に置き換えてようやく納得できるかどうかというレベル。

つか萃香が文を気にするのは単なるインプリティングのような気がしないでもない。
37.100名前が無い程度の能力削除
好きになるキッカケってのは色々だけど、萃香www
嫁と婿と、そんなに気になるのか文はw
読みやすいし、面白かったです。
60.100名前が無い程度の能力削除
浮気性な文ちゃんGood
いい百合だ