Coolier - 新生・東方創想話

月の兎の夢現

2007/12/10 23:36:59
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「月の兎の夢現」
 
※捏造設定多し・・・?
 酔っぱらいの戯言は適度に聞き流しましょう。
 
 
 
 その夜はよく晴れていた。
 毎度のごとく家主の事情などお構いなく、博麗神社で始められた宴会は騒がしいものだった。
 普通の魔法使いがそれだけで殺傷能力を持ちそうな長大な辞書を片手にした少女に追われ、その様子を赤髪の少女が不安げに見つめている。
 宴会の中央ではあれよあれよという間に大量の食糧が消えていき、その惨状のただなかでは二刀流の少女が放り投げられた魚や肉を斬り、放物線を描くそれを、直に食したり醤油につけたりたれにつけたりと大忙しの様子でおしとやかそうな女性が口に放り込んでいる。
 その他にもあちらでは巨大な御柱が、こちらでは不死鳥が顔を出し―――
 やりすぎたところで紅白の少女がまとめて打ち伏せていた。
 
 その喧騒から少し離れて、縁側の隅にとある四人が居た。
 中央に居る女性の右肩にもたれかかるようにして寝息を立てる美しい黒髪の女性。
 中央の女性の左肩には頭に兎の耳をつけた清朝の低い少女が同じように寝息を立てている。その顔が少し赤いところからして、酒をちょろまかしたのだろう。
 そして中央の女性の膝枕―――へにょった兎の耳が目立つ少女が、これまた寝息を立てていた。
 それを眺めて、八意永琳は幸せそうな笑顔を作り―――
「居るんでしょう?」
 そう、虚空に向かって呼びかけた。
 虚空・・・何もないはずのそこがまるで裂けるかのように、いや実際に裂けている。得体のしれない目玉がぎょろついたそこから出てきたのは、胡散臭い笑顔をその顔に貼りつかせた女性。
「あら、気づいてたの?」
「まったく、出歯亀はどこぞの新聞屋だけかと思っていたわ」
 宴会場のどこかで小さなくしゃみが響いたが、意に介さずに女性―――八雲紫はスキマから降り立った。
 その顔は、赤い。
「酔ってるのね?」
「酔ってる? この私が? ありえないありえないありえない! この楽園を統べるスレンダーでグラマーなこの私がガロン単位程度の酒で酔うなど魔法使いの一人称が“俺”になるほどありえないィィイィィィィイ!」
「・・・酔ってるのね」
 片手を宙に突き出してそんなことを力説する紫に、今度は問いかけではなく確信を持ってそう永琳は呟いた。
 その反応に気分を害した風もなく、紫は黒髪の女性―――蓬莱山輝夜と兎耳の少女―――因幡てゐを見、最後に膝枕をされているへにょり耳―――鈴仙・優曇華院・イナバをしばし見つめてから、自らの創り出したスキマに腰かけた。
 
 宴会の喧騒は、遠い。

「ねぇ、こんな話をどう思う?」
 紫が、そう話を始めた。永琳もそれを止めずに聞き続ける。
「とある兎が月から逃げ出しました。その兎は月に侵攻してきた地上人との戦争から逃げ出してきました。そして現在は地上で暮らしています」
「ありふれた話ね」
 自らの膝の上の少女に目を向けながら、永琳はそう相槌を打つ。
「でもね、月の技術は地上が百年進もうとも足元に及ばないほどのものなのよ。それなのに、その兎は月が劣勢だと言います。さて、どう思う?」
「あなたの見立てが間違っているか・・・その兎が嘘をついているか」
 鈴仙の耳を弄びながら、永琳はそう答える。
 その行為に鈴仙が何やら甘い吐息を寝ながら漏らしているが、二人は気にしない。
「そう、その通りよ。でも、見たところその兎は嘘をついているようには見えない。そしてその兎には見た者を狂わせる眼がありました。ここから出される推論は?」
 雲をつかむようなその質問に、だが永琳は答える。
「・・・自分に自分の、眼をつかう」
 それは、鏡があれば事足りること。
「そうよ~、狂気を操る兎が自らを狂気に陥れ、記憶を捏造する。その理由は悲しい過去か、凄惨な現在か、凶悪な未来か」
 
 たとえば鈴仙が発見された時。
 彼女が嘘をついている様子は、永琳には見受けられなかった。
 だがそれは、鈴仙自身がそれを嘘だと思っていないから。
 
 たとえば月からの連絡。
 わざわざ鈴仙を月に呼び戻す理由が見受けられない。
 それが、“自分は月から逃げてきた”ということへの信憑性を裏付けるた
 めのものだとしたら。

 
 どこかで、星が空を駆け抜けていた。

「穴の多い理論ね」
「あらそう? 私の頭脳は65%の正答率を誇るのよ。“レイセン”が、本当に真実を喋っていると、あなたは確証を持てるの?」
 その問いに、永琳はしばし口を閉ざす。
 自らの主を見、詐欺兎を見、そして―――

「それ以上は許さないわよ、八雲紫」
「?」
 怒気も含んだ答えに、だが紫は面白そうな顔をする。
「鈴仙・優曇華院・イナバは、姫のペットであり詐欺兎のからかい相手であり私の可愛い弟子(いじり相手)であり、そして、

 私たちの家族よ。

 家族への侮辱は、私たちへの侮辱。これ以上は、いくら貴方でも許さない」
「たとえ、“レイセン”が貴方たちに、危機をもたらすとしても?」
「すでにその時点で間違っているわ、八雲紫」
 やはり面白そうな表情でそう告げる紫に、永琳は首を振って答える。
「彼女は―――私たちの家族は“鈴仙・優曇華院・イナバ”よ。“レイセン”じゃない」
 
 力強く、彼女はそう答えた。


「・・・酔いが、覚めてきたわね。飲みなおしてくるわ」
 しばしの沈黙ののち、紫はそう言ってスキマを広げた。そこに入ろうとして、彼女は振り返る。
「何があろうと、覚悟はできているのね?」
「もちろん―――家族の道を正すのは、同じ家族なのよ」
「・・・・・・うらやましいわね」
 そう言って、胡散臭い女性はスキマへと消える。
 それを見届けて、永琳は大きく一つ、息を吐いた。
「酔っぱらいの戯言は、本当に厄介ね」
 彼女の言葉は、誰にも届かず闇へと消えた。
 
全ては偽か真か
少女は夢と現を彷徨い続けるのか
 
 
 
 
こちらでは初めまして、プチでご存じなら二度目まして、RYOと申します。
ふとシリアスっぽい(あくまで“っぽい”)作品を書いてみようと思ったのですが、
どうも話が短い上に設定も滅茶苦茶なようで。
誤字・脱字ございましたら、胡散臭い笑みで受け流すか紅白的に指摘するか、よろしくお願いします。
 
では、またいずれ。
次回はまたしても優曇華+シリアスっぽいになるかもしれません。
 
12月17日 誤字修正(清朝ってなんだよ清朝ってorz)
RYO
[email protected]
http://book.geocities.jp/kanadesimono/ryoseisakuzyo-iriguti.html
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コメント



0.190簡易評価
2.60名前が無い程度の能力削除
>自分に自分の、眼を
それなんてランペルージ?
5.無評価名前が無い程度の能力削除
えーりん動けねぇwwwwww
ていうかもこたん調子乗りすぎwみんな酒が回ってんだからよく燃えちゃうwww


>中央の女性の左肩には頭に兎の耳をつけた清朝の低い少女が
たぶん、身長の誤変換っす

えと、宴会から離れてる静けさってーかさびしさってーか、雰囲気をもちょっと描写してくれると、
シリアス雰囲気についていきやすいかも。
うどんげが甘い息はいてるのが、笑えるとかほほえましいより
「空気嫁」って感じだったっす。
7.70名前が無い程度の能力削除
よかったよ~