「はい?」
「だから、今日から貴女が門番。わたしと勝負して負けた一生の罰として紅魔館で門番の仕事をしてもらうから。いいわね?」
「え、ええ!?」
「いい返事じゃない。それで、貴女名前は?」
「美鈴、紅美鈴です……」
「それじゃあ任せたわよ、美鈴。そうそう、くれぐれも不法な侵入者は館に入れないでちょうだい。入れたときは、お仕置き……」
「ひッ……!」
「なんて、冗談よたぶん。まあなんにせよ、信じてるから。ちゃんと守りなさいよね」
「あ…………はい!」
◆◆◆◆◆◆◆
あふう、という可愛らしい欠伸。
今日も平和な一日が終わりそうな予感を胸にして紅美鈴は紅い霧が雲のようにのび渡っている暗黒の幻想郷を眺めてうーん、とのびを一つした。
急に命じられた門番という仕事。
レミリアが紅い霧を幻想郷に振りまき始めた時期とぴたりと一致する。
まさか、と紅美鈴はこの館に侵入するなんて、メリットの欠片もないという半信半疑の気持ちを心に描きつつも十六夜咲夜にこの仕事を任じられたのである。
正直なところは退屈で退屈でたまらなかった。
「あふう……」
本日三十五回目の欠伸。
退屈な日々も今日で六日目。
思えば、こうなってしまったのも全ては十六夜咲夜のせいだ。
“貴女、ちょっと自分の腕を人間相手に試してみない?”
なんていうのがきっかけだった。人間だと舐めてかかった挙句の果てが。
「あふう……」
この始末である。
第一、相手が人間だということがそもそもの罠だったのでは……。まんまと嵌められたのは確かだが、妖怪が人間に負けてしまうなんていう常識外れは思考の外だった。
まあ、本当に常識外れというか現実離れというか摂理から逸脱していたのは他でもなく十六夜咲夜だったということだ。
「はあ~あ……」
欠伸の次はため息がどっと出る。
本来ならば、もうすでにベッドの中でぐっすりなはずなのに、誰もいない門のまえで夜遅くまで仕事しなければいけないのはなぜだろう。
「そんなのわたしが門番だからですよ!」
自分で自分を突っ込んでみても楽しくはないし、むしろむなしいだけだった。
はあ~あ、とため息をついたあと、美鈴がぼーっと地平線の向こうを見て、本日三十七回目の欠伸をしようとした時に、
それは…………生理本能によって歯止めをかけられた。
ぞくん、とうねる恐怖のインパルス。
ざわざわと森が一陣の風で揺れるように心中がざわめく。
ぴし、と空間に亀裂が走る如きの嫌悪感。
「…………ッ!?」
欠伸が止め“られる”。圧倒的な存在によって欠伸どころか生体機能さえも止められるような受動性。能動的な行動を何一つさせてもらえず、その場に見えない何かで固定される。
おぞましいとしか表現できない。
気のせいか、この“相手”はすでに戦闘態勢に入っている。感情の起伏がもう感じられない。一直線の、激しいばかりの精神の昂りだけが認識される。
これは怒りだった。
美鈴にもわかる甚だしいほどの切り詰めた焦燥感の固まり。
それが――――突如として目の前に現れた。
かくして幕が上がった。
捉え所のない“それ”がこじんまりとしたステージに無理やり“華”を咲かせたのである。
◆◆◆◆◆◆◆
ぴん、と張り詰めた緊張の糸。
それが切れることはもうない。
それを揶揄するかのように一人の妖怪が地に降り立った。
張り詰めた糸が切られることはないかもしれないが、仮に張り詰め過ぎて左右から引く力によって切れてしまえばどうなるのだろうか。いや、その心配はないだろう。その張り詰めた“糸”というものが比較の対象を施せないくらい太いのだから、それは杞憂だった。
紅魔館は静まっていてこの緊張を認知している者はいない。なぜなら、目の前の妖怪が届かない範囲でその殺気を存分に蔓延させているからである。ちょうど、そう。美鈴の位置が右側の糸を引っ張っている地点であり、十メートルほど離れたその妖怪の位置が左側の力点だった。
よって誰も気づかない。気づいているのは美鈴だけ。よって助けも来ない。
ここまでの境遇は美鈴の人生の中でもぶっちぎりの一番過酷で。どう対処すればいいのやら、渦巻く思考がその答えを抽出しないままだった。
本当に予期していない“事柄”だったためか。それとも目の前の恐怖が肥大し過ぎていたのか。それは美鈴にもわからなかった。
ただ、一つだけ解るコトがあった。やらなければならないことがあった。
「――――――――」
あの、不吉な笑顔を浮かべた妖怪がこの館に侵入しようとしていることと、自分が門番としてそれを食い止めなければならないということだった。
構える。構えをとる。ここから先へは行かせないという思いをかろうじて体で表現した。
それを見た妖怪は持っていた傘をくるりと指で半回転させると、くすりと笑い、ゆっくりと前に、美鈴の方向へと歩き出した。
一歩。
体の奥で何か冷たいものが沸き起こる。
一歩。
ソレが頭の中枢に喰らいついて、理性を取っ払う。
一歩。
じとりと汗がにじみ出る。同時に眩暈の感覚。
一歩。
口内がカラカラに干上がる。唾液が全く作れなくなっていた。
一歩。
息が知らず上がる。心拍数が跳ね上がる。心臓が唸る。
一歩。
視界から色が消える。白黒の混沌とした世界が映し出される。
一歩。
ざっ、と景色がふっ飛ぶ。近づいてくる妖怪しか目に映らなくなる。
いっぽ。
音が消える。まともな感覚が麻痺していく。
イッポ。
近い。手が届きそうなくらい近づかれる。視界がさらに凝縮される。
そして――――
最後の一歩を踏み出す前に、美鈴は目を閉じた。
◇◇◇◇◇◇◇
「あの、どうしてわたしを門番なんかに選んだんですか?」
満月も何も見えない夜の紅魔館の蚊帳の外、門前に佇んでいるのは人間と妖怪。その妖怪が不意に、そんなことを口走った。
「さあ? 貴女が適任だからじゃないかしら」
メイド姿の人間は興味なさ気にそう言った。
紅い霧が途方もなく空を紡いでいる深い夜。
二人がこうして話しているのも、恐らく気まぐれだろう。
「え? それだけですか?」
「ええそれだけ。なによ? なにか不満でも?」
「い、いえいえ。こんな楽な仕事をしているとなぜかそんな気分になっちゃうわけです」
「? そんな気分?」
「はい。申し訳ないような、面目がたたないような……」
「ふふ。馬鹿ね。そんな気分必要ないわ。貴女はその暇なお仕事を、胸を張ってやっていればそれでいいのよ。
それに、貴女は信頼に置ける妖怪なんだから。
最初にそう言ったでしょう? そんな気分に駆られる暇があったら――――いや、まあ、それがあるのか……」
「いえ、もう大丈夫です。わたし、ちゃんと守り抜いて見せます!」
「…………あ、そ。一応期待しないでおくわ」
妖怪のきらきらとした部分を見た咲夜は気づかれないように空を仰いで一笑した。
そんな咲夜を見た美鈴は理由もなく、とても晴れやかな気持ちになった。咲夜が笑ったことにも気づかなかったくせに、理由もなく心がいっぱいになったのだ。
しかし、これで門番をする“意義”というものが出来た。
美鈴は確かに二人の間でそれを掴めたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
一歩――――
その一歩を踏み込むと同時に両者は動き出した。
美鈴にとって自分が動けたことは奇跡に近かったと自負してしまうのは精神的に追い詰められていたからであり、その奇跡は目を閉じることにより目前の存在を一時的に消し去り、全ての感覚をフル回転させて再生させたからである。間一髪の境地で美鈴を救ったモノは“遮断”という敵の存在さえも忘れてしまうことであった。
逆に、敵にとってそれは意外な事実であった。美鈴の拳を傘の表面で流してバックステップで再び距離を取るという結果を生み出してしまった。甘く見すぎていたのではない。美鈴の感覚の蘇生がただ意外だったのだ。普通の妖怪ならば、もうこの世から消え去っていただろう。
ふうん。と。笑みを消して美鈴を観察する妖怪。
「こんばんは。ようやく話せる領域にまで持っていけたわ。最初は小物だとばかり思っていましたけれど、案外そうじゃないみたい」
そしてまた情緒がこもらない笑みを作り出した。
「そしてはじめまして。わたしの名前は風見幽香。しがない妖怪よ」
「む。そうですか。はじめまして。名乗られたからには名乗り返すのが礼儀ですよね? えー、こほん。わたしの名前は紅美鈴です」
美鈴ははっきりと自己紹介した。
緊張の糸は未だはちきれんばかりだが、美鈴がこれ以上、この状況では気後れすることはないだろう。
風見幽香もそれを感じていた。少し面倒なことになってしまった、と。
だが、この状況で幽香の圧倒的有利に変動はなし。ただ、動かない玩具が動く玩具になったというだけのことだ。尤も、幽香は初めから動かない玩具になど興味はなかったが。
幽香は依然として美鈴に興味を持っているわけではなかった。前の台詞で述べたように“話せる領域”、つまり“話し相手”にはなった、というだけで“敵”の領域まで届いていない、という意味を持っていた。つまり幽香から見る美鈴は敵でも何でもない、ただの“話せる空気”というだけの価値しか持っていないのである。
そのことを知らない美鈴は大きな勘違いをしている。敵が、己を“敵”として見做していないというのに、自分の相手を“敵”として捕捉してしまったということである。
美鈴の誤った捕捉が導き出すのは、戦闘の始まりの合図の無効化。
美鈴が幽香と戦うには、止めるには、この空間の空気を圧倒する殺意を相手に向かって投じなければならないのだ。
開幕したのはいいが、役者が劇の内容を掴めないのならば、そこで悲惨な結末を迎えることに直結する。
さて、美鈴がどう出るかは観客にとっての見物でもある。無論皮肉にも観客はいないが。
「ねえ、わたしはあくまで貴女に用はないのだけれども、どうしてこんなところにわたしがわざわざやって来たか承知してます?」
話し相手を得た幽香は当然のように話しかける。
「わかりません。でもあなたが危険だということは理解できます」
「そう。じゃあもう一つ。この紅い霧の根源は……ここでしょう?」
距離にして五メートル。一蹴りであそこまで接近し攻撃することは出来るが、その攻撃が相手に通じるかという問題に美鈴は頭を悩ませていた。
「そうですよ。それがどうかしたんですか?」
「知ってる? 花というものはね、日光なしでは生きていけないの」
なんだ? いきなり何かを話し始めたと思えば……“花”?
「この紅い霧のせいで花は咲きませんわ。わかります? 太陽は花にとって命の源。その源を絶たれてしまえば自然と花は死んでしまう。
そしてわたしはその穢れを知らない花をこよなく愛しているのよ。これでわたしがここに来た意味がわかったかしら?」
表情に変化はないが、彼女の存在自体が明らかに変化しつつある。
もう少しで、美鈴は“話し相手”としての意義を抹殺される。
「ふざけているとは思わない? 己の欲のために穢れのない数多の命を枯らせたなんて至って極上の罪だと思わない?」
ぎしり、と。空間に歪みが発生する。
「そんな理不尽なわがままを野放しておくほどわたしは温厚じゃないの。
……ああ、そういえば貴女、さっきまで“初めまして”だったわね――――」
くすりと邪悪に微笑む妖怪。
崩壊の言葉は優しいものだった。
「―――――――それじゃあ、さようなら」
四季のフラワーマスターと呼ばれる最強クラスの妖怪は美鈴に向かって突進した。美鈴の“話し相手”としての目的は今ここで散ったのだ。
結局……、美鈴は役者として失敗した。避けようのない攻撃を真正面から堂々とクリーンに受けるはめとなった。
折り畳んだ傘を使った高速の突きは美鈴に直撃した。
びしゃびしゃ、と貫いた部位から大量に出血する。
誰がどう見ても体の中心を貫いたその致命的な攻撃。
誰がどう見てもこれで幕が降ろされる、とそう思った。
それは幽香でさえ例外ではなかった。
……例外といえば、たった一人。
「…………ハアッ!」
ドン! という衝撃音。
「……!?」
幽香の顔に笑みが消え、驚きのそれが表れる。
前から来た衝撃を流すように後方に飛ばされる体を捻り、地面を使い足でスライドさせてブレーキを掛ける。
視線を上げるとそこには掌底を突き出した姿のまま静止した紅美鈴の姿があった。
――――ふうん。なるほどね。
その姿を見て幽香は一連の出来事を瞬時に悟った。
両の手のひらからの出血。それ以外の損傷はどこにも見られなかった。
ここでようやく幽香が初めて美鈴を“敵”として認識した。
「受け止められたのか。絶対に間に合わないと思ったのだけど、予想は外された、というわけね」
しょうがない、とでも暗示するかのような顔をしてから再び幽香が地面を蹴る。
先ほどよりも断然勝る、突くという行動を特化させた超直線的な一筋の軌道。
大気を二分して奔る。
美鈴にもわかる。避けられない死の流星。
ぶしゅう、と前の映像と同じように鮮血が辺り一帯に散る。
「……。……あら、やるじゃない」
血を吐き出したのは美鈴の両足。ちょうど腰と膝の中間点。
美鈴は限界と限界の隙間で膝を屈めて跳躍することで胴体をガードしたのだ。致命的なダメージだけは防ぐという美鈴の執念。そして、ここでやすやすと門をくぐらせまいとする常軌を逸した意地が成した防御体制だった。
減速をしらない幽香のスピードの中で両足を貫いている傘を左手で抜き取って地面に倒れこむ。無残にもゴミのように転がって激痛に耐えるように体を丸める。
――――終わりか。ただの妖怪にしてはよくやるほうだったわ。わたしが敵と見做したくらいだから、それも当然だけど。
そんな幽香の感想をよそに、美鈴は立ち上がった。血がどくどくと流れ出ているのにも関わらず、美鈴は三度構えなおした。
「…………」
幽香に同情の念はない。邪魔をするのならば突き崩すのみ。
幽香もまた、同じように突きの体制を作った。
そしてまったく同じように美鈴は血を流す。
今度は右肩を盾にした。
踊り狂う血液の散乱。
ずぼり、と左腕で傘を抜き取り門の前に仁王立つ紅魔館の門番。
「………、…」
幽香の顔に変化はない。彼女は慈悲という感情を取り揃えていない。
美鈴の呼吸は荒々しく、今にも崩れ落ちそうなほどガクガクと震えている。
その震えを止めて、四度目の構えに集中する。
彼女が命を賭して戦うのはこの館の主のためでも、それに仕える従者のためでも、彼女自身のためでもない。
四度目の突進が彼女を否応なしに襲い掛かる。
初めて漏れる悲痛の声。
左肩の負傷。
血の花がどばっと咲いた。
左に刺さった得物を抜き取って、門の前に。
「…、……、…」
幽香の表情に変化はない。
美鈴はそれでも戦うのを止めようとはしなかった。
そして、肉体的な震えを消して構えなおした。でも左手が上がらない。
彼女が戦う理由は二つも、三つもなく、たった一つだった。
されば、と。確実に息の根を止めるために幽香も構える。
五度目の突撃。
もうこれで終わりにするつもりなのか、今までの速さを軽く覆すほどの……。
――――ずぶり。と。
傘の先端が初めて胴体に突き刺さった。突き刺さったまま投げっ放しにして美鈴を門に叩きつけた。
幽香が視線を下げる。
幽香の立ち位置から門に至る直線の道は、赤の色で染め上げられていた。
幾度となく突き刺した。
幾度となく傷つけた。
それをこの道が証明していた。
「は…………」
血の匂いが充満した空間。
何分間足止めされたかわからない。
この門番はよくやった。
本当によくやった、と。
しかし。幽香の称賛の念は、視線を上げた直後に掻き消えていた。
傘が、地面にぱさりと落ちる。
時が止まったかのような静寂。
とどまりを知らない血液の流動。
門番は、
「咲夜さん、わたし、」
確かにそこに立っていた。
幽香の表情が翳る。
幽香が表情を変えたのは美鈴の全身から流された血液からの慈悲なんかじゃあなくて、一点の曇りもない、彼女の流す涙からだった。
ごふ、と美鈴の口から血が溢れる。
紅美鈴が命を賭けて戦う理由は決まっていた。
自分を信じてくれる、信頼してくれる人のため。
そして、それに応えるため。
涙を流したのは、それが出来なかったから。
そんな事情は誰も知らない。
これから紅美鈴は死ぬ。
それだけがここで起こる全て。
「約束、守れませんでした――――」
がくん、と膝をついて前のめりに倒れこむ。
悔しいというよりも、彼女に対する申し訳なさで心は埋め尽くされていた。
せっかく彼女が自分のために与えてくれた仕事をろくにこなすことも出来ないで、一人勝手に死んでいく。
信頼を、勝ち取ることが出来なかった――――
その無念。
「あ…………」
意識が、途切れる。
時間がなくなる。
もう、何も考えられなくなる。
ここまで持ち堪えた役に立たない体に感謝して、誰にも別れを告げることなく、美鈴の意識は無くなった。
■■■■■■■
「それで、その時って咲夜さんが助けてくれたんじゃないんですか?」
紅魔館の門の前。
広々と広がる草原を見渡しながら人間と妖怪は他愛のない話をしていた。
「ええまあ、そうだけど。わたしが来る前に貴女の傷は治っていたことになるわね、その場合」
「え? どういうことですか?」
「なにふざけた顔をしてるのよ。わたしが駆けつけてきたときにはもう貴女の傷は無くなっていたって言ってるの」
「ええー。そんなの考えられませんよー」
「わたしだって考えたくないわよ。それにわたしやお嬢さまには傷を治す能力はないんだもの」
「むう……。となると、パチュリーさまですかね?」
「それも考えられないわ。あの方が外に出歩くなんてわたしが生きている間に起こるか起こらないか、そのくらいの率よ」
「むむう……。となると、本当に誰でしょう?」
「さあ? ……あ、そうそう美鈴」
「なんですか、咲夜さん」
「そういえば貴女が意識を失って倒れていた所に枯れ果てた一輪の花が置いてあったわ。大きかったから気づいたんだけど、心当たりはある?」
「――――。そう、ですか。心当たりはありませんよ」
「…………あ、そ」
美鈴の笑顔に何か必ずある、と咲夜は踏んだが、詮索するのは止めておくことにした。なぜなら――――
「美鈴。初仕事、ご苦労さま」
この子もこの子なりに一生懸命だったのだから。今日くらいは勘弁してあげることにしたのだ。
咲夜の言葉を受けた美鈴の顔に大きな花が咲いた。
<終劇>
「だから、今日から貴女が門番。わたしと勝負して負けた一生の罰として紅魔館で門番の仕事をしてもらうから。いいわね?」
「え、ええ!?」
「いい返事じゃない。それで、貴女名前は?」
「美鈴、紅美鈴です……」
「それじゃあ任せたわよ、美鈴。そうそう、くれぐれも不法な侵入者は館に入れないでちょうだい。入れたときは、お仕置き……」
「ひッ……!」
「なんて、冗談よたぶん。まあなんにせよ、信じてるから。ちゃんと守りなさいよね」
「あ…………はい!」
◆◆◆◆◆◆◆
あふう、という可愛らしい欠伸。
今日も平和な一日が終わりそうな予感を胸にして紅美鈴は紅い霧が雲のようにのび渡っている暗黒の幻想郷を眺めてうーん、とのびを一つした。
急に命じられた門番という仕事。
レミリアが紅い霧を幻想郷に振りまき始めた時期とぴたりと一致する。
まさか、と紅美鈴はこの館に侵入するなんて、メリットの欠片もないという半信半疑の気持ちを心に描きつつも十六夜咲夜にこの仕事を任じられたのである。
正直なところは退屈で退屈でたまらなかった。
「あふう……」
本日三十五回目の欠伸。
退屈な日々も今日で六日目。
思えば、こうなってしまったのも全ては十六夜咲夜のせいだ。
“貴女、ちょっと自分の腕を人間相手に試してみない?”
なんていうのがきっかけだった。人間だと舐めてかかった挙句の果てが。
「あふう……」
この始末である。
第一、相手が人間だということがそもそもの罠だったのでは……。まんまと嵌められたのは確かだが、妖怪が人間に負けてしまうなんていう常識外れは思考の外だった。
まあ、本当に常識外れというか現実離れというか摂理から逸脱していたのは他でもなく十六夜咲夜だったということだ。
「はあ~あ……」
欠伸の次はため息がどっと出る。
本来ならば、もうすでにベッドの中でぐっすりなはずなのに、誰もいない門のまえで夜遅くまで仕事しなければいけないのはなぜだろう。
「そんなのわたしが門番だからですよ!」
自分で自分を突っ込んでみても楽しくはないし、むしろむなしいだけだった。
はあ~あ、とため息をついたあと、美鈴がぼーっと地平線の向こうを見て、本日三十七回目の欠伸をしようとした時に、
それは…………生理本能によって歯止めをかけられた。
ぞくん、とうねる恐怖のインパルス。
ざわざわと森が一陣の風で揺れるように心中がざわめく。
ぴし、と空間に亀裂が走る如きの嫌悪感。
「…………ッ!?」
欠伸が止め“られる”。圧倒的な存在によって欠伸どころか生体機能さえも止められるような受動性。能動的な行動を何一つさせてもらえず、その場に見えない何かで固定される。
おぞましいとしか表現できない。
気のせいか、この“相手”はすでに戦闘態勢に入っている。感情の起伏がもう感じられない。一直線の、激しいばかりの精神の昂りだけが認識される。
これは怒りだった。
美鈴にもわかる甚だしいほどの切り詰めた焦燥感の固まり。
それが――――突如として目の前に現れた。
かくして幕が上がった。
捉え所のない“それ”がこじんまりとしたステージに無理やり“華”を咲かせたのである。
◆◆◆◆◆◆◆
ぴん、と張り詰めた緊張の糸。
それが切れることはもうない。
それを揶揄するかのように一人の妖怪が地に降り立った。
張り詰めた糸が切られることはないかもしれないが、仮に張り詰め過ぎて左右から引く力によって切れてしまえばどうなるのだろうか。いや、その心配はないだろう。その張り詰めた“糸”というものが比較の対象を施せないくらい太いのだから、それは杞憂だった。
紅魔館は静まっていてこの緊張を認知している者はいない。なぜなら、目の前の妖怪が届かない範囲でその殺気を存分に蔓延させているからである。ちょうど、そう。美鈴の位置が右側の糸を引っ張っている地点であり、十メートルほど離れたその妖怪の位置が左側の力点だった。
よって誰も気づかない。気づいているのは美鈴だけ。よって助けも来ない。
ここまでの境遇は美鈴の人生の中でもぶっちぎりの一番過酷で。どう対処すればいいのやら、渦巻く思考がその答えを抽出しないままだった。
本当に予期していない“事柄”だったためか。それとも目の前の恐怖が肥大し過ぎていたのか。それは美鈴にもわからなかった。
ただ、一つだけ解るコトがあった。やらなければならないことがあった。
「――――――――」
あの、不吉な笑顔を浮かべた妖怪がこの館に侵入しようとしていることと、自分が門番としてそれを食い止めなければならないということだった。
構える。構えをとる。ここから先へは行かせないという思いをかろうじて体で表現した。
それを見た妖怪は持っていた傘をくるりと指で半回転させると、くすりと笑い、ゆっくりと前に、美鈴の方向へと歩き出した。
一歩。
体の奥で何か冷たいものが沸き起こる。
一歩。
ソレが頭の中枢に喰らいついて、理性を取っ払う。
一歩。
じとりと汗がにじみ出る。同時に眩暈の感覚。
一歩。
口内がカラカラに干上がる。唾液が全く作れなくなっていた。
一歩。
息が知らず上がる。心拍数が跳ね上がる。心臓が唸る。
一歩。
視界から色が消える。白黒の混沌とした世界が映し出される。
一歩。
ざっ、と景色がふっ飛ぶ。近づいてくる妖怪しか目に映らなくなる。
いっぽ。
音が消える。まともな感覚が麻痺していく。
イッポ。
近い。手が届きそうなくらい近づかれる。視界がさらに凝縮される。
そして――――
最後の一歩を踏み出す前に、美鈴は目を閉じた。
◇◇◇◇◇◇◇
「あの、どうしてわたしを門番なんかに選んだんですか?」
満月も何も見えない夜の紅魔館の蚊帳の外、門前に佇んでいるのは人間と妖怪。その妖怪が不意に、そんなことを口走った。
「さあ? 貴女が適任だからじゃないかしら」
メイド姿の人間は興味なさ気にそう言った。
紅い霧が途方もなく空を紡いでいる深い夜。
二人がこうして話しているのも、恐らく気まぐれだろう。
「え? それだけですか?」
「ええそれだけ。なによ? なにか不満でも?」
「い、いえいえ。こんな楽な仕事をしているとなぜかそんな気分になっちゃうわけです」
「? そんな気分?」
「はい。申し訳ないような、面目がたたないような……」
「ふふ。馬鹿ね。そんな気分必要ないわ。貴女はその暇なお仕事を、胸を張ってやっていればそれでいいのよ。
それに、貴女は信頼に置ける妖怪なんだから。
最初にそう言ったでしょう? そんな気分に駆られる暇があったら――――いや、まあ、それがあるのか……」
「いえ、もう大丈夫です。わたし、ちゃんと守り抜いて見せます!」
「…………あ、そ。一応期待しないでおくわ」
妖怪のきらきらとした部分を見た咲夜は気づかれないように空を仰いで一笑した。
そんな咲夜を見た美鈴は理由もなく、とても晴れやかな気持ちになった。咲夜が笑ったことにも気づかなかったくせに、理由もなく心がいっぱいになったのだ。
しかし、これで門番をする“意義”というものが出来た。
美鈴は確かに二人の間でそれを掴めたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
一歩――――
その一歩を踏み込むと同時に両者は動き出した。
美鈴にとって自分が動けたことは奇跡に近かったと自負してしまうのは精神的に追い詰められていたからであり、その奇跡は目を閉じることにより目前の存在を一時的に消し去り、全ての感覚をフル回転させて再生させたからである。間一髪の境地で美鈴を救ったモノは“遮断”という敵の存在さえも忘れてしまうことであった。
逆に、敵にとってそれは意外な事実であった。美鈴の拳を傘の表面で流してバックステップで再び距離を取るという結果を生み出してしまった。甘く見すぎていたのではない。美鈴の感覚の蘇生がただ意外だったのだ。普通の妖怪ならば、もうこの世から消え去っていただろう。
ふうん。と。笑みを消して美鈴を観察する妖怪。
「こんばんは。ようやく話せる領域にまで持っていけたわ。最初は小物だとばかり思っていましたけれど、案外そうじゃないみたい」
そしてまた情緒がこもらない笑みを作り出した。
「そしてはじめまして。わたしの名前は風見幽香。しがない妖怪よ」
「む。そうですか。はじめまして。名乗られたからには名乗り返すのが礼儀ですよね? えー、こほん。わたしの名前は紅美鈴です」
美鈴ははっきりと自己紹介した。
緊張の糸は未だはちきれんばかりだが、美鈴がこれ以上、この状況では気後れすることはないだろう。
風見幽香もそれを感じていた。少し面倒なことになってしまった、と。
だが、この状況で幽香の圧倒的有利に変動はなし。ただ、動かない玩具が動く玩具になったというだけのことだ。尤も、幽香は初めから動かない玩具になど興味はなかったが。
幽香は依然として美鈴に興味を持っているわけではなかった。前の台詞で述べたように“話せる領域”、つまり“話し相手”にはなった、というだけで“敵”の領域まで届いていない、という意味を持っていた。つまり幽香から見る美鈴は敵でも何でもない、ただの“話せる空気”というだけの価値しか持っていないのである。
そのことを知らない美鈴は大きな勘違いをしている。敵が、己を“敵”として見做していないというのに、自分の相手を“敵”として捕捉してしまったということである。
美鈴の誤った捕捉が導き出すのは、戦闘の始まりの合図の無効化。
美鈴が幽香と戦うには、止めるには、この空間の空気を圧倒する殺意を相手に向かって投じなければならないのだ。
開幕したのはいいが、役者が劇の内容を掴めないのならば、そこで悲惨な結末を迎えることに直結する。
さて、美鈴がどう出るかは観客にとっての見物でもある。無論皮肉にも観客はいないが。
「ねえ、わたしはあくまで貴女に用はないのだけれども、どうしてこんなところにわたしがわざわざやって来たか承知してます?」
話し相手を得た幽香は当然のように話しかける。
「わかりません。でもあなたが危険だということは理解できます」
「そう。じゃあもう一つ。この紅い霧の根源は……ここでしょう?」
距離にして五メートル。一蹴りであそこまで接近し攻撃することは出来るが、その攻撃が相手に通じるかという問題に美鈴は頭を悩ませていた。
「そうですよ。それがどうかしたんですか?」
「知ってる? 花というものはね、日光なしでは生きていけないの」
なんだ? いきなり何かを話し始めたと思えば……“花”?
「この紅い霧のせいで花は咲きませんわ。わかります? 太陽は花にとって命の源。その源を絶たれてしまえば自然と花は死んでしまう。
そしてわたしはその穢れを知らない花をこよなく愛しているのよ。これでわたしがここに来た意味がわかったかしら?」
表情に変化はないが、彼女の存在自体が明らかに変化しつつある。
もう少しで、美鈴は“話し相手”としての意義を抹殺される。
「ふざけているとは思わない? 己の欲のために穢れのない数多の命を枯らせたなんて至って極上の罪だと思わない?」
ぎしり、と。空間に歪みが発生する。
「そんな理不尽なわがままを野放しておくほどわたしは温厚じゃないの。
……ああ、そういえば貴女、さっきまで“初めまして”だったわね――――」
くすりと邪悪に微笑む妖怪。
崩壊の言葉は優しいものだった。
「―――――――それじゃあ、さようなら」
四季のフラワーマスターと呼ばれる最強クラスの妖怪は美鈴に向かって突進した。美鈴の“話し相手”としての目的は今ここで散ったのだ。
結局……、美鈴は役者として失敗した。避けようのない攻撃を真正面から堂々とクリーンに受けるはめとなった。
折り畳んだ傘を使った高速の突きは美鈴に直撃した。
びしゃびしゃ、と貫いた部位から大量に出血する。
誰がどう見ても体の中心を貫いたその致命的な攻撃。
誰がどう見てもこれで幕が降ろされる、とそう思った。
それは幽香でさえ例外ではなかった。
……例外といえば、たった一人。
「…………ハアッ!」
ドン! という衝撃音。
「……!?」
幽香の顔に笑みが消え、驚きのそれが表れる。
前から来た衝撃を流すように後方に飛ばされる体を捻り、地面を使い足でスライドさせてブレーキを掛ける。
視線を上げるとそこには掌底を突き出した姿のまま静止した紅美鈴の姿があった。
――――ふうん。なるほどね。
その姿を見て幽香は一連の出来事を瞬時に悟った。
両の手のひらからの出血。それ以外の損傷はどこにも見られなかった。
ここでようやく幽香が初めて美鈴を“敵”として認識した。
「受け止められたのか。絶対に間に合わないと思ったのだけど、予想は外された、というわけね」
しょうがない、とでも暗示するかのような顔をしてから再び幽香が地面を蹴る。
先ほどよりも断然勝る、突くという行動を特化させた超直線的な一筋の軌道。
大気を二分して奔る。
美鈴にもわかる。避けられない死の流星。
ぶしゅう、と前の映像と同じように鮮血が辺り一帯に散る。
「……。……あら、やるじゃない」
血を吐き出したのは美鈴の両足。ちょうど腰と膝の中間点。
美鈴は限界と限界の隙間で膝を屈めて跳躍することで胴体をガードしたのだ。致命的なダメージだけは防ぐという美鈴の執念。そして、ここでやすやすと門をくぐらせまいとする常軌を逸した意地が成した防御体制だった。
減速をしらない幽香のスピードの中で両足を貫いている傘を左手で抜き取って地面に倒れこむ。無残にもゴミのように転がって激痛に耐えるように体を丸める。
――――終わりか。ただの妖怪にしてはよくやるほうだったわ。わたしが敵と見做したくらいだから、それも当然だけど。
そんな幽香の感想をよそに、美鈴は立ち上がった。血がどくどくと流れ出ているのにも関わらず、美鈴は三度構えなおした。
「…………」
幽香に同情の念はない。邪魔をするのならば突き崩すのみ。
幽香もまた、同じように突きの体制を作った。
そしてまったく同じように美鈴は血を流す。
今度は右肩を盾にした。
踊り狂う血液の散乱。
ずぼり、と左腕で傘を抜き取り門の前に仁王立つ紅魔館の門番。
「………、…」
幽香の顔に変化はない。彼女は慈悲という感情を取り揃えていない。
美鈴の呼吸は荒々しく、今にも崩れ落ちそうなほどガクガクと震えている。
その震えを止めて、四度目の構えに集中する。
彼女が命を賭して戦うのはこの館の主のためでも、それに仕える従者のためでも、彼女自身のためでもない。
四度目の突進が彼女を否応なしに襲い掛かる。
初めて漏れる悲痛の声。
左肩の負傷。
血の花がどばっと咲いた。
左に刺さった得物を抜き取って、門の前に。
「…、……、…」
幽香の表情に変化はない。
美鈴はそれでも戦うのを止めようとはしなかった。
そして、肉体的な震えを消して構えなおした。でも左手が上がらない。
彼女が戦う理由は二つも、三つもなく、たった一つだった。
されば、と。確実に息の根を止めるために幽香も構える。
五度目の突撃。
もうこれで終わりにするつもりなのか、今までの速さを軽く覆すほどの……。
――――ずぶり。と。
傘の先端が初めて胴体に突き刺さった。突き刺さったまま投げっ放しにして美鈴を門に叩きつけた。
幽香が視線を下げる。
幽香の立ち位置から門に至る直線の道は、赤の色で染め上げられていた。
幾度となく突き刺した。
幾度となく傷つけた。
それをこの道が証明していた。
「は…………」
血の匂いが充満した空間。
何分間足止めされたかわからない。
この門番はよくやった。
本当によくやった、と。
しかし。幽香の称賛の念は、視線を上げた直後に掻き消えていた。
傘が、地面にぱさりと落ちる。
時が止まったかのような静寂。
とどまりを知らない血液の流動。
門番は、
「咲夜さん、わたし、」
確かにそこに立っていた。
幽香の表情が翳る。
幽香が表情を変えたのは美鈴の全身から流された血液からの慈悲なんかじゃあなくて、一点の曇りもない、彼女の流す涙からだった。
ごふ、と美鈴の口から血が溢れる。
紅美鈴が命を賭けて戦う理由は決まっていた。
自分を信じてくれる、信頼してくれる人のため。
そして、それに応えるため。
涙を流したのは、それが出来なかったから。
そんな事情は誰も知らない。
これから紅美鈴は死ぬ。
それだけがここで起こる全て。
「約束、守れませんでした――――」
がくん、と膝をついて前のめりに倒れこむ。
悔しいというよりも、彼女に対する申し訳なさで心は埋め尽くされていた。
せっかく彼女が自分のために与えてくれた仕事をろくにこなすことも出来ないで、一人勝手に死んでいく。
信頼を、勝ち取ることが出来なかった――――
その無念。
「あ…………」
意識が、途切れる。
時間がなくなる。
もう、何も考えられなくなる。
ここまで持ち堪えた役に立たない体に感謝して、誰にも別れを告げることなく、美鈴の意識は無くなった。
■■■■■■■
「それで、その時って咲夜さんが助けてくれたんじゃないんですか?」
紅魔館の門の前。
広々と広がる草原を見渡しながら人間と妖怪は他愛のない話をしていた。
「ええまあ、そうだけど。わたしが来る前に貴女の傷は治っていたことになるわね、その場合」
「え? どういうことですか?」
「なにふざけた顔をしてるのよ。わたしが駆けつけてきたときにはもう貴女の傷は無くなっていたって言ってるの」
「ええー。そんなの考えられませんよー」
「わたしだって考えたくないわよ。それにわたしやお嬢さまには傷を治す能力はないんだもの」
「むう……。となると、パチュリーさまですかね?」
「それも考えられないわ。あの方が外に出歩くなんてわたしが生きている間に起こるか起こらないか、そのくらいの率よ」
「むむう……。となると、本当に誰でしょう?」
「さあ? ……あ、そうそう美鈴」
「なんですか、咲夜さん」
「そういえば貴女が意識を失って倒れていた所に枯れ果てた一輪の花が置いてあったわ。大きかったから気づいたんだけど、心当たりはある?」
「――――。そう、ですか。心当たりはありませんよ」
「…………あ、そ」
美鈴の笑顔に何か必ずある、と咲夜は踏んだが、詮索するのは止めておくことにした。なぜなら――――
「美鈴。初仕事、ご苦労さま」
この子もこの子なりに一生懸命だったのだから。今日くらいは勘弁してあげることにしたのだ。
咲夜の言葉を受けた美鈴の顔に大きな花が咲いた。
<終劇>
私相手に良く戦ったわね。みたいな称賛の為に助けたんでしょうか?
でも、まあ根性ある美鈴は大好きです。
しかし、その幽香に対して一歩も引かなかった中ご……もとい美鈴GJ!!