午前6時
朝日が部屋に差込み、目が覚めた。
ん~…………
半身を起こして伸びをする。
よし、起きよう。
着替えて顔を洗い、目を覚まさせる。
まずは、師匠の所に行こうかな。
トントンッ
師匠の部屋の戸を叩く。
「何かしら?」
部屋から師匠の声がする。
「失礼します、師匠」
「うどんげね。入りなさい」
師匠の許可を得て私は室内に入る。
「お早う御座います、師匠」
「ええ、おはよう」
師匠は何やら薬を調合していたようだけど、手を止めてこちらを向いてくれた。
「これから朝ごはんの用意をしようと思うのですが、何かご注文はありますか?」
師匠は永遠亭の中で一番の早起きだ。
いや、早起きと言うのはどうだろうか?
あまり師匠が寝ている所を見た事が無い。
永遠の命を持つ蓬莱人故に、疲労も回復してしまう物かもしれない。
故、寝なくても大事無いと言う事は有り得ない話じゃない。
姫は毎日寝てるけど。
「そうねぇ………特に献立に注文は無いけど、重い物は避けて頂戴」
「はい。流石に朝から重い物は私もきついですから」
「それもそうね」
「時に師匠、何を調合してたんですか?」
私は師匠が調合していた物を尋ねてみた。
「ああ、これ?ただの退行薬よ」
「退行?」
幼児退行とかのあの退行だろうか?
「ええ、「昔」に戻る薬ね」
「若返り、ですか?」
「いいえ、「退行」よ。若返りなんて良いものじゃないわ」
何が違うんだろう?
「何が違うの?って顔してるわね」
ええ。
「簡単な事よ。生物は細胞分裂を繰り返している事は知ってるわね?」
「はい」
そりゃまぁ、月の都市はこの幻想郷よりも遥かに文明が進んでいましたからね。
それくらいは習っています。
「なら簡単よ。この退行薬は細胞分裂で消失した細胞を元に戻す薬なの」
「細胞を戻す?」
でも、それだとやっぱり「若返り」なのでは?
「ここで肝心なのは、脳の細胞分裂も戻してしまうと言う事」
あ、なるほど。
「脳は記憶を刻み込んでいる器官。その器官を戻すと言う事は?」
「今ある記憶を全て失う、と言う事ですね?」
「ええ、そうよ。だからこれは若返りでなく退行の薬なのよ」
「しかし、なんだってそんな物を?」
「暇だったからつい、ね」
いや、そんな頬に手を当てて困った様な笑顔されても、こちらが困りますよ。
「でも、それって退行したら元に戻れないんですよね?危険じゃないんですか?」
単純に、今ある人生をリセットする薬なのだから。
しかも、リセットした物は戻らなくなる。
「ええ、だから作るだけ作って危険物指定しておくわ」
師匠は数多の薬を作り、その中で危険性の高い物を危険物指定してどこかに封印している。
勿論、その場所は師匠以外誰も知らない。
姫でさえも。
多分、その場所を覗いたら恐怖で竦んでしまう事だろう。
知らぬが仏とはよく言ったものね。
「さて、それじゃあ、ササッと作っちゃうから、朝ご飯の用意お願いね」
そんなレンジでチン、みたいな言い方で危険物を作らないで下さいよ。
まぁいいや。
師匠が度の越えた天才だと言う事はとっくに解っている。
本当に私が朝ご飯を作る前に完成させてる筈だわ。
私は私でさっさと朝ご飯を作るとしましょう。
午前7時
ん、良い感じに朝ご飯が出来上がったわ。
「れ~せん、おはよ~………」
挨拶をされて振り返ると、そこにはまだ眠そうなてゐが居た。
「おはよう、てゐ。朝ごはん出来てるから早く顔洗ってらっしゃい」
「は~い」
たどたどしい足取りでてゐは洗面所へと向かっていった。
さて、後は姫、か。
まずはご飯を食卓に置いて来ようかな。
「あら、おはようイナバ」
居間へ行くと、既に姫が朝食を食べようとスタンバっていた。
「おはようございます、姫。何時起きられたんですか?」
姫の起きる時間は本当にランダムだわ。
起こしに行くまで寝ている時もあれば、私よりも早く起きている事もある。
やはり、蓬莱人に睡眠はそこまで重要なファクターではないのかもしれない。
「貴女がご飯作ってる時よ。ところで、永琳は?」
「師匠なら薬の調合をしてましたが、そろそろ来ると思いますよ」
師匠がこういう場所に遅れた事は無いから。
「そう。それじゃあ永琳とイナバを待って食事にしましょう」
「はい」
姫は私達の事をひっくるめて全員イナバと呼ぶ。
そのイナバが誰を指すかは前後の会話で読み取るしかない。
今回は、恐らくてゐを指していると思うけど。
その後、師匠とてゐが食卓に現れて、皆で朝食を摂った。
午前8時
朝食を終え、食後のお茶を持って私は再び居間に戻った。
「でっきるっかな、でっきるっかな」
居間に戻るとてゐが知恵の輪を解いていた。
「あれ?師匠、また新しい知恵の輪作ったんですか?」
「ええ、暇だったから」
本当、師匠は暇と言っては薬のみでなく、色々な物を作る。
最近は知恵の輪を作ってはてゐに解かせて遊んでいる。
そう、てゐが知恵の輪で遊んでるのでなく、てゐがどれだけ苦戦するかを見て師匠が遊んでいるのだ。
しかし、てゐもさる者、もとい、敵もさる者。
てゐはこう言うのは得意な様で、結構早く知恵の輪を解く。
それ故に、師匠も作り甲斐があるのかもしれない。
「でっきるっかな、でっきるっかな」
それは兎も角、さっきからてゐが口ずさんでいるこれは…………
「てゐ、貴女、その歌、何処で覚えたの?」
「へ?前に鈴仙が口ずさんでたんじゃない」
あれ?そうだったかしら?
「へぇ、そうだったの。これは何の歌なの?うどんげ」
「え?ああ、歌って言うほどの物じゃないんですけどね。月に居た頃、子供向けの教育番組で流れてたんですよ」
「ふ~ん………月にもそんなのあったのねぇ」
姫がそう言う。
が、別に月を懐かしがってるとかそんな様子は微塵も感じられない。
「そういえば、特徴的なのが、その番組のお兄さん役の人が決して喋らないんですよ」
「じゃあ、どうやって番組を進めるの?」
姫が尋ねてきた。
「えっと、一緒に居るマスコットみたいな着ぐるみが話しかけたりして、お兄さん役の人がジェスチャーなどで対応したりするんですよ」
「なるほどね~」
「ねぇねぇ、その着ぐるみなんて言うの?」
知恵の輪を解く手は止めずにてゐが尋ねてきた。
「え~っと………確か…………」
あの着ぐるみの名前は…………
「ボン太くん、だったかな?」
あれ?違ったかな?
確か、そんな感じの名前だと思ったけど。
「ふ~ん………で、そのお兄さんの名前は?」
再び姫が尋ねてきた。
「えっと、お兄さんの方は…………」
あの人の名前は確か……………
「ドッポさん、だったような……………」
んん?何か違う気もするわね…………
ま、いっか。
子供の頃の事だから、あまり覚えてないわ。
「へぇ…………あ、出来た!!!」
と、てゐが知恵の輪を解いて叫ぶ。
「あら、また解かれちゃったわ」
「もっと難しいのでも平気ですよ!」
得意気にてゐが言う。
「そうね。今度はもっと難しいのを考えておくわ」
てゐ、程々にした方が良いわよ。
師匠の本気の知恵の輪を出されたら、多分、解けるのはあの隙間妖怪くらいだと思うから。
でも、それはそれで見応えありそうな対決ね…………まぁ、見れないでしょうけど。
「さて、それじゃあ私は薬のチェックしてくるわね」
「はい」
そう言って師匠は居間を出て行った。
「姫はどうされますか?」
「ん~…………部屋で本でも読んでるわ」
なんと言うニート。
「イナバ、貴女、今失礼な事考えなかった?」
「滅相も無い」
バレた日にはどうなるか解ったものじゃないわ。
「まぁいいわ。それじゃあ後はお願いね」
そう言って姫も居間を出て行く。
そして、てゐは何時の間にか消えていた。
何時もの様に私が取り残され、何時もの様に私が後片付けをする。
まぁ、本当に何時もの事だから別に良いけどね。
午前8時30分
食器洗いなどを済ませて戻ってくると、何やら兎達が慌しかった。
「どうしたの?」
私は近くの妖怪兎に尋ねてみた。
「あ、大佐!」
誰が大佐よ。
「何やら強力な力を持った者が高速で竹林に接近しているとの事です!」
竹林には多くの妖怪兎達が交代制で見回りをしている。
そして、不審な侵入者が来ると知らせる事になっている。
「強力な力?誰かしら?」
不確かな言い方をすると言う事は、妹紅じゃないわね。
第一、妹紅は大抵は夜だし。
ん~………強力な力を持ってるなら私が出向いた方が良さそうね。
師匠や姫の手を煩わせる訳には行かないし。
「解ったわ。それじゃあ私が見てくるから、貴女達はそいつを刺激しないようにしておきなさい」
「イエッサァ!!」
ビシッと敬礼する妖怪兎。
それにしても、「妖怪兎」と言っても、今目の前に居るこいつらは、ただの喋る兎。
兎の格好で敬礼されても可愛らしくしか映らないわね。
まぁ、中にはてゐ見たいに人間みたいな姿をしてるのも居るけどね。
さて、取り敢えずその侵入者を見てきましょうか。
竹林を少し歩くと、てゐを発見した。
「てゐ、何してるの?」
「あ、鈴仙。侵入者が来たって言うから見に行くところ」
「強力な力持ってるらしいから、貴女は下がってなさい」
てゐもそれなりの力は有るけど、強力な力を持つ者には対抗出来るほどじゃない。
「え~!暇だから付いて行く!」
「あんたねぇ………」
「ほら!早く行こうよ!!」
遠足に行くんじゃないっつぅの。
ま、何かあったら時間稼ぎして逃がしてあげれば良いか。
午前9時
てゐを連れて目的地へ向かっていると、一匹の妖怪兎が目に入った。
「何してるの?」
「む、大佐」
だから、何で大佐なのよ。
「ターゲットを確認した。が、我々の手には余るようだ」
「ま、そうでしょうね」
こいつらの手に負える相手と言えば、妖精や低級妖怪くらいでしょう。
「でも、まぁ、少しくらい抵抗してみたら?」
私は少し意地悪く言ってみた。
「そうは言うがな、大佐」
「大佐じゃないっつぅに」
「食欲を持て余す」
グ~っと妖怪兎のお腹が鳴った。
「はい、人参」
「む、有難い」
「まぁ、腹が膨れてようが、貴方達の手に負える相手じゃ無さそうだから、後は私に任せて下がってなさい」
初めから期待してないし。
「ふむ、むぐむぐ、了解した。むぐむぐ、大佐。」
人参をかじるか喋るかどっちかになさい。
「ふんふんふんふん」
鼻をヒクつかせるな!
「ほら、下がりなさい」
「了解した」
今度こそ妖怪兎は下がっていった。
「何あれ?また何か影響受けたの?」
ウチの妖怪兎は良くなんかしらの影響を受ける。
特に姫関連で。
「あ~………最近姫が、軍隊関連の書籍見てたからね~。それに影響されたのかも」
「また姫か…………」
解ってた事だけど。
「なんか、司令官を大佐と呼んで、自分達をスネークと言ってるみたいだね」
「兎の癖に何がスネークよ。大体、蛇って言ったら兎を食べる側じゃないの」
ほんと、あったま悪いわね………
「まぁ、暫くしたら収まるよ」
「飽きるのも早いものね」
それが良いか悪いかは解らないけど。
「さて、それじゃあ行くわよ、てゐ」
「は~い」
緊張感の無い返事ね………
さてと、それじゃあ波長を弄ってっと………
これで周りからは認識される事は無いわね。
私達は静かにその侵入者の場所へと向かった。
近づいてみて、少し安堵した。
こいつらなら恐らく「侵入者」の類ではないわ。
波長を戻して目的を聞いてみましょうかね。
「なんだ………侵入者が居るって言うから来て見れば……貴女達だったの」
居たのは紅魔館の主、レミリア・スカーレットとその従者の十六夜咲夜。
別に殺気立ってる訳でもないし、散歩にでも来たんでしょうね。
「ん?ああ、いつぞやの兎じゃない」
「鈴仙よ。好い加減覚えてくれないかしら?吸血鬼のお嬢様」
ま、言っても無駄でしょうけどね。
「ん?そっちの黒いのは?」
「ああ、この娘はてゐよ」
別に隠す意味も無いので、私は素直に教えた。
「いつかの賽銭兎ね」
ま、そう言う覚えられ方してるでしょうね。
あの天狗の新聞にも載ったし。
「それで?侵入者だって言ってたけど、私たちとやり合うつもり?」
「永遠亭に侵入するつもりならそうするわよ?」
敵わなくても時間稼ぎをして師匠と姫に準備期間を与えるくらいは出来るわ。
「まぁ、遊んであげてもいいけど………貴女のお師匠様にはちょっと借りがあるから止めておいてあげるわ」
ま、最初から戦うつもりなさそうだったけどね。
「そう。まぁ、こっちとしても昼間っから貴女達みたいなのとやり合いたくないから助かるけどね」
これは本音。
こいつらとやり合うには全力出さないといけなくなる。
朝っぱらから全力なんて出させられたらこの後が辛くなるわ。
「ねぇ、なんでここに来たの?」
突如、今まで静かにしてたてゐが尋ねた。
「ん~………日中普通に出歩けるようになったから、今まで行かなかった所に来てみただけよ」
ふ~ん………まぁ、確かに日傘無いと今まで出歩けなかったものね。
遠出するのも面倒だったでしょうに。
「その様子だと、師匠の薬の効果は良好のようね」
「ええ、そう伝えて置いて頂戴」
「そうするわ」
この薬とは、以前このお嬢様にあげた日光無効化薬「ヒヨケルミンS」の事だ。
しっかし、師匠。
毎回毎回、薬の名前はどっから取って来てるんでしょうか?
蓬莱の薬はまともな名前なのに。
「ボインダーZ」とか「マナイタンD」とか、最近のはなんか、妙な名前が多いのよねぇ…………
「所で、貴女の幸運にする能力。私達には効かないのかしら?」
レミリアがてゐに問いかけた。
「どうだろう?そういう話は聞いた事無いよ。人間だと効果あるのは良く聞くけどね」
そうでしょうね。
人間以外にも効果あるなら、私や師匠、姫なんて毎日がラッキーデーだわ。
「そう。まぁ良いわ。咲夜、そろそろ行くわよ」
「承知いたしました」
あら、もう帰るの?
「ここに来るのは良いけど、くれぐれも騒ぎを起こさないでよね」
念の為、私は二人に釘を刺す。
「喧嘩売られなければ騒がないわよ。子供じゃあるまいし」
あんたに喧嘩売る馬鹿はそうそう居ないでしょう。
しかし、子供じゃあるまいしって…………見た目、思いっきり子供よね。
さて、杞憂だったみたいだし、戻るとしましょう。
午前10時・永遠亭
「鈴仙様、永琳様が呼んでましたよ」
永遠亭に帰ると、妖怪兎が私に言伝を伝えにきた。
「師匠が?解ったわ」
私は直ぐに師匠の部屋へ向かった。
トントン
戸をノックする。
「うどんげ?」
「はい」
「入りなさい」
「失礼します」
師匠の許可を得て私は部屋に入る。
「うどんげ、今日は薬を売りに行く日よね?」
「はい、そうです」
私は定期的に人の里、及び依頼のあった者の所へ師匠の薬を売りに行っている。
「今日は人形遣いから依頼があったから、それを届けて頂戴」
そう言って師匠は私に商品を渡す。
「これは?」
瓶?
「栄養ドリンクよ。まぁ、魔法使いと言うのも徹夜で研究とかしてるみたいだから、必要なのかもしれないわね」
それは言えてるかも。
「人形遣いと言う事は、アリス・マーガトロイドで宜しいんですよね?」
「ええ、あの娘よ」
「解りました。では、これも含めて行って参ります」
「ええ、お願いね」
師匠に一礼して、私は部屋を出た。
「あら、イナバ」
「あ、姫」
廊下を歩いていると、姫に会った。
「あ、そうか。今日は薬売りの日だっけ?」
「ええ、これから用意をして行って来ます」
「そう。じゃあ、お昼は私が作ろうかしら」
「え~、またですか~?」
「何よ、不満?」
「かなり」
別に、姫の料理が嫌いだから不満なのではない。
と言うか、私が不在の時に作られるのだから、嫌いなら不満なわけは無い。
寧ろ逆。
姫は、師匠もだけど、とても料理が上手い。
前に八雲紫が言ってたように、長生きしている者は大抵、色々な物に手をつけている。
生活に関わる物なら、尚更なんでしょうね。
私も常人以上の腕前はあると思うけど、あの二人の前にはあっさりと霞む。
それくらい、姫も師匠も料理が上手い。
だから、その料理を食べれないのが悔しい。
「だって、最近全然姫の料理食べてないんですよ~」
「まぁ、貴女が居る時には貴女に任せてるものね」
「そりゃ、主である姫に作らせるのは礼に失するんでしょうけど、偶には姫の料理食べたいですよ」
「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない。解ったわよ、今度貴女が居る時に作ってあげるわ」
「本当ですか!?」
「ええ。それより、時間の方は大丈夫?」
「え?わっ!そろそろ準備しないと!!」
「気を付けて行ってらっしゃい」
「はい!有難う御座います!!」
私は姫にそう返して、自分の部屋へと急いだ。
午後0時・人の里
里に着いてある程度家を回ったところで、お昼になったので昼食を摂る事にした。
お弁当を持参する時もあるけど、今日はなんとなく外食な気分。
適当な食事処を見つけて店内に入った。
ん~………流石に昼時だけあって結構混んでるわ。
空いてる席は………………無い。
場所変えるしかないわね。
「あれ?鈴仙さん」
店を出ようとした時に、声を掛けられた。
声のした方を向くと。
「妖夢?珍しいわね、こんな時間にこんな所で」
そこに居たのは冥界の庭師、魂魄妖夢。
「それもそうですね。所で、鈴仙さんもここで食事を?」
「ええ。でも、席がいっぱいでねぇ………」
「でしたら、合席しますか?」
妖夢は二人用の席に座っていた。
「お邪魔して良いかしら?」
この様子だと、他の場所も混んでそうだし。
「どうぞどうぞ」
私は妖夢の向かいに座り、注文をとった。
「それにしても、貴女が一人でこんな所に居るなんて珍しいわね」
妖夢の主のお姫様と一緒なら解るんだけど。
あのお姫様、亡霊の癖に大食らいだから。
「ええ、今日は藍さんが来てまして、お昼は藍さんが作ってくださるそうなので、私は一人で外出して来いと言われました」
妖夢は困ったように笑いながらそう言う。
まぁ、あのお姫様の気遣いかしらね?
年中休まず働いてるから、こういう時に息抜きのような物をさせてるんでしょう。
「なるほどね~」
「時に、鈴仙さんは何をしにこちらへ?」
「私?私は薬売りよ」
「なるほど。そう言えば、定期的に里に売りに来てるんでしたね」
「昔はこんな事無かったけど、私達の事が知れてからは定期的にこうしてるわね」
昔は姫の為にその存在を隠してたからね。
そりゃ、怪しい薬売りなんて存在したら、いつバレるとも解らないものね。
「妖夢は昼済ませたらどうするの?」
「う~ん………それが、考えてないんですよねぇ……半ば放り出される形で出てきましたから」
まぁ、妖夢の場合そうでもしないとお姫様の側に居そうだしね。
「私はこの後薬売りの為に稗田家を訪問するんだけど、貴女も来る?」
「稗田家?御阿礼の子の?」
「ええ」
「そうですね………幻想郷縁起も完全に読んでませんし、それも良いかもしれませんね」
「じゃあ、そうしましょう」
「はい」
妖夢は笑顔で返事をした。
幻想郷縁起と言えば、妖夢の事をあまり迫力が無いと書いてたけど………
そりゃ、こんな笑顔をする子に迫力なんて無いでしょうよ。
その後、私達は昼食を食べながら話を続けた。
主に、互いの主の愚痴の話を。
午後1時・稗田家
「こんにちわ~」
「はい、どなたでしょう?」
稗田家の戸を叩いて声を掛けると、使用人と思しき女性が出てきた。
まぁ、流石は幻想郷有数の名家。
挨拶していきなり目的の人物が出てくる事は無い。
「あら、貴女は薬売りの………」
「悪いんだけど、ここのお嬢様は居るかしら?」
「阿求様ですか?少々お待ち下さい」
そう言って使用人は奥へと向かった。
「居ますかね?」
「どうでしょ?」
あまり外出し無さそうなイメージだけど、確実に居るわけじゃないしね。
と思っていると、奥から目当ての人物が姿を現した。
「やはり鈴仙さんでしたか。それに妖夢さんも」
「こんにちわ」
「こんにちわ」
私と妖夢が挨拶をする。
「はい、こんにちわ。それで、何か御用でしょうか?」
「用って程の物じゃないけど、今日は入用な人があまり居なかったから午前中であらかた回り終わっちゃってね」
「なるほど、暇つぶし、と言う訳ですね?」
「まぁ、そうとも言うわね」
「お邪魔でしたか?」
控えめに妖夢が尋ねる。
「いえ、丁度私も少し時間を持て余してた所ですよ。良ければ上がって行きますか?」
「ええ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
元より、暇つぶしに来たんだからね。
「お邪魔します」
私と妖夢は家に上がりこんだ。
稗田家・縁側
私達は縁側でお茶を飲みながら座っている。
「あ、そうだ。良ければ幻想郷縁起を見せていただけますか?」
妖夢が思い出したように阿求に尋ねた。
「解りました。少々お待ち下さい」
阿求は自分の部屋に行き、幻想郷縁起を持って戻ってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
妖夢は縁起を受け取って読み始める。
「私が前に見た時と変わりあるの?」
「いえ、現状はまだ変わりありません」
「ふ~ん」
「ですが、近い内に改編されるかもしれませんね」
「へぇ………なんでまた?」
「最近、妖怪の山の方で何やら騒動が起きたみたいでしてね」
「あの山で?あそこって確かかなり閉鎖的って聞いたけど………」
余所者には容赦しないとか。
「ええ、ですが、その山に最近巫女が入り込んで一騒動起こしたようなんですよ」
「ふ~ん……ちゃんと仕事はしてるのね」
「う~ん……どうでしょう?別に妖怪の山の妖怪が何か問題起こしたとかじゃないですからね………巫女の仕事、に分類されるかどうか」
「あ~…それは確かに」
あの巫女の仕事は妖怪「退治」であり、妖怪の「殲滅」では無い。
ぶっちゃけ、引き篭ってる妖怪に手を出すのは巫女の仕事とは言えないのよね。
「しかし、今まで閉鎖的で謎が多かった妖怪の山に楔が打ち込まれたのは確かです」
「と言うと?」
「今までの妖怪の山なら、確実に博麗の巫女を力ずくで叩き出していた筈です」
「そうなの?」
「ええ。本当にあそこは余所者には容赦が無いですから。今までの山なら例え博麗の巫女でも、加減はされるでしょうが、適度にボコボコにされて追い返されてたでしょうね」
そういえば、縁起にも妖怪の山その物は載っているけど、妖怪の山の妖怪については、あの鴉天狗の事しか書いてなかったわね。
「でも、そんな事にはならなかったのよね?」
「ええ。恐らくは、妖怪の山にとっても何らかの不都合な事があったのではと推測してます」
「なんらかの不都合………」
一体何かしらね?
「それが何かは解りませんが、あの山が他者を訳有りとは言え受け入れた。これは今まではなかった事です」
「なるほどね~」
「もしかしたら、この縁起に妖怪の山の妖怪を載せる事が出来るかもしれません」
「でも、妖怪の山の妖怪が他者を排除するような閉鎖的な者なら、こういった物に載せられるのも嫌うのでは?」
今まで本を読んで静かにしてた妖夢が言って来た。
「かもしれませんね。その辺りはやってみないと解りませんが」
「なるほどね~」
「時に、改編するに当たり、お二人のご自身の説明の希望などはありますか?」
この幻想郷縁起は、妖怪側の自身の説明の要望も受け入れている。
要は「もっと強そうに書いてくれ!」とか、「あまり詳細は書かないでくれ」とか、そう言うものだ。
「う~ん………私は手を加えなくて良いですよ。あまり捻じ曲げるのは好きじゃないですから」
自分の所の説明を見て、やや苦い顔をしながらも妖夢はそう言った。
「私は今まで通りで良いわ」
「良いんですか?」
「良いのよ」
「そうですか。こんなに話しやすいのに、あんな説明では危険な存在としか認識されませんよ?」
「良いのよ、それで。貴女や巫女、魔理沙や十六夜咲夜はともかく、他の人間とまで馴れ合おうとは思わないわ」
「そうですか」
「ええ」
私達、月の世界を蹂躙しに来た地上の者と同系列の存在………
そうそう信用できるもんじゃないわ。
「それにしても絵付とは……作るのに時間掛かりませんか?」
「そうですね。でも、文字だけで風貌を説明されるのと、姿を見れるのとでは、理解度が全然違うと思いますしね」
「それはそうね」
「それに、妖怪は人間と違って短い期間でそんなに容姿が変わりませんからね。私が生まれ変わる頃までにその中に容姿の改編をする必要がある方がどれだけ居る事やら」
それもそうね。
その後暫く、私達は縁起の事を交えながら話をした。
午後3時・慧音宅前
2時過ぎくらいには稗田家を出て、出た所で妖夢と分かれた。
その後、残った家を回り、この家で最後。
上白沢さんは里の人間からの人望が厚いから、何かあったら真っ先に手を差し伸べてもらえるでしょうからね。
だから、ここに来るのは一番最後。
家の前に着いた所で、丁度玄関が開いた。
「あら?お出かけ」
私は出てきた上白沢さんに尋ねた。
「ああ。それに今は入用な薬は無いよ、鈴仙」
「それは残念ね。って、美鈴も居たんだ」
上白沢さんに続いて美鈴が家から出てきた。
「ええ、お久しぶりです鈴仙さん。」
「ええ、お久しぶり。美鈴はどう?何か入用な薬はある?」
折角だから商売してみましょうかしら。
「生憎と、頑丈なだけが取り柄ですから」
「打ち身や切り傷、火傷なんかに効く薬もあるわよ?」
これらは貴女に必要そうだけど?
最後の火傷等に効くと言うのは、マスタースパークによる負傷用ね。
「う………そっちの方は使うかもしれませんが……まだ残ってるんで大丈夫です」
「そう、残念だわ」
今日は売り上げが芳しくなかったわね。
まぁ、あまり問題になるような事じゃないけど。
と言うか、薬の押し売りなんて意味が無い上に、最悪こちらの評判を落しかねないものね。
「鈴仙はこれで帰りか?」
上白沢さんが尋ねてきた。
「いえ、後一軒残ってるわ」
今日はちょっと特別なのが、ね。
「珍しいな……誰の家だ?」
「魔法の森の人形遣いよ」
「へぇ……手広くやってるんですね~」
美鈴が感心したように言う。
「まぁ、生きてれば大抵どんな奴でも薬のお世話になるでしょ?だから必然的に色んな所から依頼が来るのよ」
師匠の薬の効き目は人妖問わず、効果抜群だから、尚更ね。
「さて、それじゃあ私も行く所があるから失礼するよ」
「ええ、私も行くわ。結構離れた場所にあるからね」
まぁ、時間的にはまだまだ余裕だけどね。
「それでは、これで。慧音さん、今日はご馳走様でした」
「構わんさ。それじゃあな」
あら?美鈴は上白沢さんにご馳走してもらったんだ。
残念、私も食べてみたかったわ。
さて……っと、時間はまだ余裕だから、偶には少し店でも見てみようかしら。
っとと、ちょっと時間を忘れてたわ。
店を見て回ってたら何時の間にか4時近くになってた。
好い加減向かわないとまずいわね。
それじゃあ、行きましょうかしらね。
って、ん?
何やら通りの方が騒がしいわ。
何かあったのかしら?
まぁ、どうでも良いわね。
私は私のするべき事をするだけよ。
午後4時20分・魔法の森の入り口付近
里から出て結構経ったわね。
ここから先が魔法の森ね。
この森も不思議な力があって、結構迷い易いのよね………
まぁ、竹林で慣れてる私には問題ないけど。
パシッ……パシッパシッ…………
ん?
何の音?
小さな何かが葉っぱかなんかに当たったような……そんな音。
けどなんで?
辺りには何も居ないわ。
強い力を持つ物が居れば流石に解るし………
パシッパシッ!………パシシシシッ!!!
音が……近づいてくる………!!
何?何なの!?
私は警戒しながら音の近づく方を見ていた。
すると、森の中の狭い道に荷台が現れた。
二輪の、人間が引いていくタイプの物だ。
こんな所に荷台があるのも変だが、それ以上に変なのは…………
「だ、誰も居ない!?」
誰も居ない……荷物も無ければ引いている者も居ない。
そんな………馬鹿な!!
しかし、荷台は呆ける私なんて知った事かと目の前を猛スピードで通過していく。
「あ、そっちは…………」
森の木々で道が見えなくなってるけど、あそこは緩い右の後にキツイ左が待ってるのよ?
通ってきた私には解るわ。
荷台が軽く右に重心を傾ける。
が、直ぐ後にキツイ左が顔を出す。
あ~あ……遠心力で後ろの方が思いっきり出てるわ。
スピードが乗りすぎてるから立て直すスペースも無いわね。
クラッシュ確実だわ、あれ。
クゥン………
な……にぃ………!?
か……慣性ドリフト!?
ぬ、抜けた……あのスピードであのキツイ左を………
一つ目の右のカウンターは次の左の姿勢作りのフェイントだったなんて………
腹が立つくらいのスーパードリフト………あんなの使いこなせるのは師匠くらいだわ…………
「おやおや、呆けた顔してどうしたんですか?」
私がボーッとしてると、上から声が掛かった。
「貴女は、鴉天狗の………」
「射命丸文です。で、どうしたんですか?鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をして」
「あ…ありのままに今起こった事を話すわ」
「はい?」
鴉天狗はきょとんとした顔をする。
「無人の荷台が現れたと思ったら、猛スピードで慣性ドリフトをかまして去っていったわ」
「え?」
「な…何を言ってるのか解らないと思うけど、私も何が起きたのか解らなかったわ……頭がどうにかなりそうよ」
「あの~」
「夢とか幻だとかそんなチャチなもんじゃあない。もっと恐ろしい物の片鱗を見た気がするわ」
「はぁ………一度お医者さんに行った方が良いんじゃないんですか?」
「ウチには師匠が居るわよ」
「あ、それもそうでした。で、何が起きたんですか?」
「だから!私にも何が起きたか解らなかったのよ!!」
解ってれば説明してるわよ!
「あ、そう言えば」
一つだけ気になった事が。
「あの荷台、何故か音がしなかったのよね………」
そう、あれだけの猛スピードならもっと派手な音が鳴るはず。
なのに、目にするまでその存在に気付けず、あまつさえ、目の前を通り過ぎても音はしなかった。
「う~ん………にわかには信じがたい話ですが………現にここに今しがた付きましたと言わんばかりの車輪跡がありますからねぇ…………」
鴉天狗が地面を見ながら言う。
「私は嘘を吐いていないわよ」
あんたじゃないんだから。
「ちょっと!なんですか!?その「あんたじゃないんだから嘘は吐かないわよ?」って顔は!!」
あら?よく解ったわね。
「私は真実を追究する新聞記者!他の天狗記者と一緒にしないで下さい!」
「でも、少しくらい真実を捻じ曲げてる方が読者受け良いわよ?」
捻じ曲げすぎるとアレだけどね。
「う…ぐぅ………痛い所を……」
ああ、やっぱり売り上げ伸びない事を悩んでは居たのね。
「しかし、貴女の言う事が真実なら少し面白そうですね………他にネタも無かった事ですし、ちょっと追って見ますね」
「ええ、真相究明を期待してるわ」
気味が悪いから。
「お任せ下さい!では!!」
そう言って鴉天狗は飛んでいった。
いや、本当速いわね………
さてと、それじゃ私も仕事しないと。
午後5時・アリス宅前
ふぅ……やっと着いたわ。
迷いはしないけど、来づらいのよね、ここ。
ガチャッ
家に近づこうとしたら、家のドアが開いた。
「あら?お出かけ?」
出て来たのは家の主、アリス・マーガトロイド。
「ああ、永遠亭の。もしかして頼んでいた物持ってきてくれたの?」
「ええ、そうよ」
「丁度良かったわ。今から出掛ける所だったから」
出掛ける所だから丁度良い?
普通なら、危なかった、とか、タイミング悪い、じゃないかしら?
「丁度良いって言うのは?」
「頼んでた物は私が使うんじゃないの。図書館の館長さんへの差し入れに持っていこうと思ってたのよ」
図書館?
ああ、紅魔館の。
なるほど、それならこの栄養ドリンクも頷ける。
あそこの魔女は喘息持ちで年がら年中体調悪いって聞いてるものね。
これならその体調を一時的に良く出来るはずだわ。
「じゃあ、御代のほう頂いて良いかしら?」
「ええ、いくらかしら?」
「これよ」
私は料金表を見せる。
「解ったわ。はい」
彼女は直ぐにお金を出してくれた。
「毎度有難う。またよろしくお願いするわ」
「それはこっちも同じよ」
「それじゃ、私は帰るわね」
「ええ。今度気が向いたら遊びに来る?お茶とお菓子くらいは出すわよ」
「良いわね、それ。気が向いたらお邪魔させてもらうわ。多分、オマケと一緒に」
行き先知らせたら付いてきそうだものね、てゐは。
「別に構わないわよ。いつでも来て良いわ。それじゃあね」
そう言って彼女は立ち去り、私も魔法の森を後にした。
午後6時・竹林
ふ~……漸く家に帰れるわ。
帰ったら夕飯の準備しないとね。
「大佐!大佐ぁぁ!!」
あ~……もう、また姫の影響を受けた兎が来たわ。
こういう影響を受けるのは決まって獣型の兎の方。
人間型の方はそうそう影響を受けることは無いのよね。
「何よ?」
もう言い返すのが阿呆らしくなって来たわ。
「大変です!軍曹が!!」
軍曹?
誰よ?
「誰よ、軍曹って」
「てゐ軍曹です!!」
あ、てゐって軍曹なんだ。
って、やけに位が低くない?
大佐と軍曹って相当離れてるわよ?
てゐも立場的には私の次くらいの筈なんだけど…………
「で、てゐがどうしたの?」
「敵襲に遭い、身動きを封じられてしまいました!」
「なんですって!?」
てゐが!?
身動きを封じられたって………
「一体何があったの!?詳しく教えなさい!!」
「見た方が早いです!こちらへ!!」
まさか、私が居ない間に、一体誰が!?
こいつらだって単体戦力は低くても数は居る。
並みの奴等じゃ返り討ちのはずよ!?
走る私の耳に何かが聞こえてきた。
「………ぁぁぁぁぁん…………」
泣き声?
「うああぁぁぁぁぁん!!!」
てゐの泣き声だわ!
でも、これだけ大きな声で泣けると言う事は、致命傷を食らってる訳じゃ無さそうね。
それだけは一安心だわ。
それにしても一体何をされたの!?
現場に駆けつけて唖然とした。
「うああぁぁぁぁぁぁん!!!」
「て、てゐ!?」
「あ、鈴仙!!助けてよ鈴仙!!うああぁぁぁぁぁん!!!」
てゐは手足を縛られた上に竹に縛られていた。
縛り付けられているのではなく、手足を縛られた状態で、耳を竹に結び付けられていた。
なんて酷い事を………!!
「今ほどいてあげるわ!!」
私は直ぐにてゐの耳をほどいた。
そしてその跡直ぐに手足の縄も解く。
「うああぁぁぁぁぁん!!」
縄を解いた瞬間、てゐは私に飛び込んできた。
「大丈夫よ、てゐ。もう大丈夫だから」
「鈴仙…!!れーせぇぇぇぇん!!!」
私の胸で泣きじゃくってるてゐ。
この子は嘘泣きを良くするけど、それを良く見てるだけに解る。
これは本当に泣いている。
「あんた達!なんで黙って見てたのよ!!」
私は近くの妖怪兎達を怒鳴りつけた。
「そうは言うがな、大佐」
「何よ!!」
下らない理由だったら承知しないわよ!?
「縄を解けない」
妖怪兎達はをの手足を見せて私に言った。
あ~………確かに、その手足じゃ無理よね。
「因みに、縄を解く為に人型の者への救援は呼びに行きました。まぁ、直ぐに大佐が見つかったわけですが」
と言う事は、これをやった奴はまだ遠くに行ってない?
「もう一つ、あんたらてゐがこんな目に遭ってたのに何してた訳?」
今度は睨み付けて尋ねる。
「そうは言うがな、大佐」
「何よ?」
「花の妖怪相手では我々の手を持て余す」
花の妖怪………?
風見幽香!!
あいつか…………
くそ……あいつ相手じゃ今から追って行っても返り討ちが関の山だわ………
しょうがない、師匠の知恵を借りないと………
「兎に角、帰りましょう、てゐ」
「………うん」
落ち着いたてゐを連れて永遠亭へと向かった。
午後6時半・永遠亭・永琳の部屋
「成る程、話は解ったわ」
私は師匠に事のあらましを話した。
「けど、うどんげ。残念だけど、貴女の手に負える相手じゃないわ」
「何でですか!?大結界異変の時に戦いましたが、策さえ弄じれば………!!」
真正面からは無理でも……!!
「無理ね」
「どうしてですか!?」
「あの時は貴女と戦ったのはお遊び程度の力だったんでしょうね。貴女から攻撃を仕掛けて本気を出されたら、貴女じゃどう足掻いても無理よ」
「そ、そんなに強いんですか?あいつは………」
「長生きする妖怪には共通する点が多いわ」
突如、師匠がそう言った。
「一つは知恵が回る。頭が良いから、決して自分の命が危機に晒されるような事はしない」
確かに、頭の悪い奴は直ぐに身の程知らずな戦いをして死んでいくわね。
「もう一つは強大な力を持つと言う事。強いから死なない。当然よね」
確かに。
「勿論、片方だけで生き延びて居る者も居るわ。てゐがそうよね。あの子は賢さで上手く立ち回って生き延びている」
そう言えば、あの子も結構長く生きてるのよね………
「で、風見幽香はその両方を持つタイプ。力が強くて頭も良い。どちらも貴女より上よ。加えて、長生きしてる分経験も多い。どう?これだけ負ける要素が揃ってるのよ?」
ぐ………反論のしようが無い…………
あれは傍若無人な性格の癖に長生きしている。
それはつまり、誰も手に負えなかったという証拠………即ち、強い。
今は確かに活動が花畑周辺だけになったと言う理由もあるだろうけど……それでも、そうなるまでずっと殺されずに居た。
あの性格で今の今まで生きているのは強いと言う何よりの証。
私では………敵わないの………!?
「私としてもね、うどんげ。極めて負ける確率の高い相手に優秀な助手を戦わせて殺されたくないのよ。だから………」
「私が行くわ」
突如聞こえてきた第三者の声。
この声は………
「あら、姫。聞いていたんですか?」
「イナバの元気が無かったから何かあったと思ってね。で、永琳の所に来たら案の定と言うわけ」
「姫が行かれるんですか?」
「不満かしら?イナバ」
「い、いえ……ですが………」
出来れば、私の手で………
「今は諦めなさい、イナバ。現状じゃ貴女の手に負える相手じゃないわ。悔しければもっと強くなりなさい」
姫にまで言われた………やはり、今の私では勝てないのか………
「で、姫。行って頂けるのですか?」
「ええ、偶には妹紅以外と遊ぶのも悪くないわ。運動を兼ねて少しお仕置きしてくるわね」
「はい、行ってらっしゃいませ」
師匠がそう言うと、姫は踵を返して行った。
「じゃあ、うどんげ。姫が帰って来た時に直ぐにご飯が出せるよう、準備をしておいて頂戴」
「あ、はい」
私は師匠に言われて食事の準備をしに行った。
午後9時永遠亭・居間
漸く姫が帰ってきた。
「お帰りなさいませ、姫。遅かったですね」
やっぱり、あいつは相当手強かったのだろうか?
「ん~………色々他のが居て、まともな戦いが出来なかったわ」
「え?」
「他の、とは?」
師匠が尋ねた。
「隙間の式神でしょ、冥界のお姫様、それに紅魔館の魔女に妹紅」
「何でまたそんなに?」
何か遭ったのかしら?
「あの妖怪、他でも色々やってたらしく、それでそれぞれの代表者が出張って来たって所かしら?」
「あ、じゃあ、もしかして、あの妖怪。死にました?」
殺されるでしょうね………その面子じゃ。
「いえ、式神にお姫様、それに魔女が足の引っ張り合いをしまくってくれた所為で寸での所で巫女の邪魔が入って逃げられたわ」
い、生きてる!?
姫も合わせた、その実力者達相手に生き延びている!?
そんな馬鹿な!!
「妹紅も居たんですか、姫」
師匠が再び尋ねた。
「ま~ね~。ま、今回はお互い目的があったから邪魔しないようにしてたわ。他が邪魔しまくってくれたけど」
「しかし、巫女の邪魔、とは?」
なんで巫女が邪魔を?
「私はそれほど地理に明るくない上に暗かったし、他のは熱くなって周りが見えてなかったんでしょうね。何時の間にか神社の近くに居たのよ」
「ああ、それで、騒いでるから巫女が出てきたんですね?」
なるほど、確かにあの巫女の神社の近くで暴れてれば、あいつは絶対出てくるわ。
「そ。で、突然巫女が暴れだして、皆力を消耗してたみたいだからそれで解散になったわ」
いくら消耗してたとは言え、それだけの者達を解散させられるとは………博麗の巫女、恐るべし。
「まぁ、これで大人しくなってくれれば良いんだけどね」
なるかしら………
「それより、ご飯にしましょう。お腹空いちゃったわ」
「私もお腹すいた」
てゐがそう言った。
少しは元気を取り戻した見ただけど、まだ少し暗さが残ってるわね。
無理も無いか。
「はい、準備は出来てます」
私は用意しておいた料理を持ってきた。
「あれ?皿が多いような…………」
私が作った時より皿が少し多い。
「私が追加で作ったのよ」
師匠がそう言った。
「へ~、何作ったの、永琳」
「キノコ料理です」
「何時の間に………」
相変わらず、師匠は短い時間であっと言う間に作業をこなすなぁ………
「さて、まずは食べましょう。もうお腹ペコペコよ」
姫がそう言う。
「そうですね、それでは」
「「「「いただきます」」」」
皆同時に手を合わせてそう言う。
「じゃあ、早速私は師匠の料理を頂きますね」
私は師匠が作ったというキノコ料理に手を付ける。
師匠も料理が上手いから期待できる。
でも、何のキノコかしら?
「師匠、これ、何のキノコですか?」
私は一口食べ終えてから尋ねた。
「ああ、それ?」
師匠が口に入ってる物を飲み込んでから返事をする。
口に物が入ったまま喋るのは行儀が悪いですからね。
「ベニテングダケよ」
「ぶふーーーーっ!!!」
「イナバ、汚いわよ」
「鈴仙、汚い~」
いや、そんなこと言ってる場合じゃ………
「ど、毒キノコじゃないですか!!!!」
げ、解毒剤!解毒剤!!!
「ふふ……冗談よ」
「笑えません!!!」
本気で!!!
「止めてくださいよ、そう言う冗談は………」
私はお茶を啜りながらそう言う。
「冗談に決まってるじゃない。それはただのワライダケよ」
「ぶっはぁぁぁ!!!」
盛大にお茶を吹いた。
「汚いわよ、イナバ」
「あはははは!!鈴仙変な顔~!!!」
「やぁね~うどんげったら、冗談が通じないんだから」
「ぐ……がはっ!がはっ!!」
咽た。
く………
「師匠の場合本当にありそうで怖いんですよ!!!」
「失礼ね、本気で盛るつもりだったら味も匂いもしない粉末状にして盛るわよ」
「思いっきり怖い事言わないで下さい!!!」
「イナバ、食事中にうるさいわよ」
「うぐっ………」
「あはははは!!!」
うるさいならてゐも同じじゃ………って、あれ?
てゐが笑ってる?
さっきまで暗かったのに。
見ると、その様子を見て姫も師匠も微笑んでいる。
そうか………姫も師匠もてゐの気を紛らわす為にこんな事を………
そんな事も解らないとは、私はダメね………
でも、出来ればもっと別の方法にして欲しいんですけど…………
翌日
永遠亭に新聞が二つ投げ込まれた。
一つはあの鴉天狗、射命丸文の文々。新聞。
どうやら、昨日のあの荷台の事が判明したようだ。
けど、開けてみればなんて事は無いカラクリだったわ。
それに、残念だけど、もう一つの新聞のインパクトに今回も文々。新聞は食われるわね。
内容は博麗の巫女がバツイチだとか何とか………
阿呆臭い。
そんな事あるわけが無い。
けど、これを見た巫女はどう思うかしらね?
また一騒動起こらなければ良いけど………
ま、私には関係ないか。
さて、今日はどうしようかしら?
「鈴仙~!!」
考えてるとてゐが走ってきた。
もうすっかり大丈夫みたいね。
あ、そうだ。
アリス・マーガトロイドに招待受けてたんだっけ。
折角だから言ってみようかな?
この子と一緒に。
朝日が部屋に差込み、目が覚めた。
ん~…………
半身を起こして伸びをする。
よし、起きよう。
着替えて顔を洗い、目を覚まさせる。
まずは、師匠の所に行こうかな。
トントンッ
師匠の部屋の戸を叩く。
「何かしら?」
部屋から師匠の声がする。
「失礼します、師匠」
「うどんげね。入りなさい」
師匠の許可を得て私は室内に入る。
「お早う御座います、師匠」
「ええ、おはよう」
師匠は何やら薬を調合していたようだけど、手を止めてこちらを向いてくれた。
「これから朝ごはんの用意をしようと思うのですが、何かご注文はありますか?」
師匠は永遠亭の中で一番の早起きだ。
いや、早起きと言うのはどうだろうか?
あまり師匠が寝ている所を見た事が無い。
永遠の命を持つ蓬莱人故に、疲労も回復してしまう物かもしれない。
故、寝なくても大事無いと言う事は有り得ない話じゃない。
姫は毎日寝てるけど。
「そうねぇ………特に献立に注文は無いけど、重い物は避けて頂戴」
「はい。流石に朝から重い物は私もきついですから」
「それもそうね」
「時に師匠、何を調合してたんですか?」
私は師匠が調合していた物を尋ねてみた。
「ああ、これ?ただの退行薬よ」
「退行?」
幼児退行とかのあの退行だろうか?
「ええ、「昔」に戻る薬ね」
「若返り、ですか?」
「いいえ、「退行」よ。若返りなんて良いものじゃないわ」
何が違うんだろう?
「何が違うの?って顔してるわね」
ええ。
「簡単な事よ。生物は細胞分裂を繰り返している事は知ってるわね?」
「はい」
そりゃまぁ、月の都市はこの幻想郷よりも遥かに文明が進んでいましたからね。
それくらいは習っています。
「なら簡単よ。この退行薬は細胞分裂で消失した細胞を元に戻す薬なの」
「細胞を戻す?」
でも、それだとやっぱり「若返り」なのでは?
「ここで肝心なのは、脳の細胞分裂も戻してしまうと言う事」
あ、なるほど。
「脳は記憶を刻み込んでいる器官。その器官を戻すと言う事は?」
「今ある記憶を全て失う、と言う事ですね?」
「ええ、そうよ。だからこれは若返りでなく退行の薬なのよ」
「しかし、なんだってそんな物を?」
「暇だったからつい、ね」
いや、そんな頬に手を当てて困った様な笑顔されても、こちらが困りますよ。
「でも、それって退行したら元に戻れないんですよね?危険じゃないんですか?」
単純に、今ある人生をリセットする薬なのだから。
しかも、リセットした物は戻らなくなる。
「ええ、だから作るだけ作って危険物指定しておくわ」
師匠は数多の薬を作り、その中で危険性の高い物を危険物指定してどこかに封印している。
勿論、その場所は師匠以外誰も知らない。
姫でさえも。
多分、その場所を覗いたら恐怖で竦んでしまう事だろう。
知らぬが仏とはよく言ったものね。
「さて、それじゃあ、ササッと作っちゃうから、朝ご飯の用意お願いね」
そんなレンジでチン、みたいな言い方で危険物を作らないで下さいよ。
まぁいいや。
師匠が度の越えた天才だと言う事はとっくに解っている。
本当に私が朝ご飯を作る前に完成させてる筈だわ。
私は私でさっさと朝ご飯を作るとしましょう。
午前7時
ん、良い感じに朝ご飯が出来上がったわ。
「れ~せん、おはよ~………」
挨拶をされて振り返ると、そこにはまだ眠そうなてゐが居た。
「おはよう、てゐ。朝ごはん出来てるから早く顔洗ってらっしゃい」
「は~い」
たどたどしい足取りでてゐは洗面所へと向かっていった。
さて、後は姫、か。
まずはご飯を食卓に置いて来ようかな。
「あら、おはようイナバ」
居間へ行くと、既に姫が朝食を食べようとスタンバっていた。
「おはようございます、姫。何時起きられたんですか?」
姫の起きる時間は本当にランダムだわ。
起こしに行くまで寝ている時もあれば、私よりも早く起きている事もある。
やはり、蓬莱人に睡眠はそこまで重要なファクターではないのかもしれない。
「貴女がご飯作ってる時よ。ところで、永琳は?」
「師匠なら薬の調合をしてましたが、そろそろ来ると思いますよ」
師匠がこういう場所に遅れた事は無いから。
「そう。それじゃあ永琳とイナバを待って食事にしましょう」
「はい」
姫は私達の事をひっくるめて全員イナバと呼ぶ。
そのイナバが誰を指すかは前後の会話で読み取るしかない。
今回は、恐らくてゐを指していると思うけど。
その後、師匠とてゐが食卓に現れて、皆で朝食を摂った。
午前8時
朝食を終え、食後のお茶を持って私は再び居間に戻った。
「でっきるっかな、でっきるっかな」
居間に戻るとてゐが知恵の輪を解いていた。
「あれ?師匠、また新しい知恵の輪作ったんですか?」
「ええ、暇だったから」
本当、師匠は暇と言っては薬のみでなく、色々な物を作る。
最近は知恵の輪を作ってはてゐに解かせて遊んでいる。
そう、てゐが知恵の輪で遊んでるのでなく、てゐがどれだけ苦戦するかを見て師匠が遊んでいるのだ。
しかし、てゐもさる者、もとい、敵もさる者。
てゐはこう言うのは得意な様で、結構早く知恵の輪を解く。
それ故に、師匠も作り甲斐があるのかもしれない。
「でっきるっかな、でっきるっかな」
それは兎も角、さっきからてゐが口ずさんでいるこれは…………
「てゐ、貴女、その歌、何処で覚えたの?」
「へ?前に鈴仙が口ずさんでたんじゃない」
あれ?そうだったかしら?
「へぇ、そうだったの。これは何の歌なの?うどんげ」
「え?ああ、歌って言うほどの物じゃないんですけどね。月に居た頃、子供向けの教育番組で流れてたんですよ」
「ふ~ん………月にもそんなのあったのねぇ」
姫がそう言う。
が、別に月を懐かしがってるとかそんな様子は微塵も感じられない。
「そういえば、特徴的なのが、その番組のお兄さん役の人が決して喋らないんですよ」
「じゃあ、どうやって番組を進めるの?」
姫が尋ねてきた。
「えっと、一緒に居るマスコットみたいな着ぐるみが話しかけたりして、お兄さん役の人がジェスチャーなどで対応したりするんですよ」
「なるほどね~」
「ねぇねぇ、その着ぐるみなんて言うの?」
知恵の輪を解く手は止めずにてゐが尋ねてきた。
「え~っと………確か…………」
あの着ぐるみの名前は…………
「ボン太くん、だったかな?」
あれ?違ったかな?
確か、そんな感じの名前だと思ったけど。
「ふ~ん………で、そのお兄さんの名前は?」
再び姫が尋ねてきた。
「えっと、お兄さんの方は…………」
あの人の名前は確か……………
「ドッポさん、だったような……………」
んん?何か違う気もするわね…………
ま、いっか。
子供の頃の事だから、あまり覚えてないわ。
「へぇ…………あ、出来た!!!」
と、てゐが知恵の輪を解いて叫ぶ。
「あら、また解かれちゃったわ」
「もっと難しいのでも平気ですよ!」
得意気にてゐが言う。
「そうね。今度はもっと難しいのを考えておくわ」
てゐ、程々にした方が良いわよ。
師匠の本気の知恵の輪を出されたら、多分、解けるのはあの隙間妖怪くらいだと思うから。
でも、それはそれで見応えありそうな対決ね…………まぁ、見れないでしょうけど。
「さて、それじゃあ私は薬のチェックしてくるわね」
「はい」
そう言って師匠は居間を出て行った。
「姫はどうされますか?」
「ん~…………部屋で本でも読んでるわ」
なんと言うニート。
「イナバ、貴女、今失礼な事考えなかった?」
「滅相も無い」
バレた日にはどうなるか解ったものじゃないわ。
「まぁいいわ。それじゃあ後はお願いね」
そう言って姫も居間を出て行く。
そして、てゐは何時の間にか消えていた。
何時もの様に私が取り残され、何時もの様に私が後片付けをする。
まぁ、本当に何時もの事だから別に良いけどね。
午前8時30分
食器洗いなどを済ませて戻ってくると、何やら兎達が慌しかった。
「どうしたの?」
私は近くの妖怪兎に尋ねてみた。
「あ、大佐!」
誰が大佐よ。
「何やら強力な力を持った者が高速で竹林に接近しているとの事です!」
竹林には多くの妖怪兎達が交代制で見回りをしている。
そして、不審な侵入者が来ると知らせる事になっている。
「強力な力?誰かしら?」
不確かな言い方をすると言う事は、妹紅じゃないわね。
第一、妹紅は大抵は夜だし。
ん~………強力な力を持ってるなら私が出向いた方が良さそうね。
師匠や姫の手を煩わせる訳には行かないし。
「解ったわ。それじゃあ私が見てくるから、貴女達はそいつを刺激しないようにしておきなさい」
「イエッサァ!!」
ビシッと敬礼する妖怪兎。
それにしても、「妖怪兎」と言っても、今目の前に居るこいつらは、ただの喋る兎。
兎の格好で敬礼されても可愛らしくしか映らないわね。
まぁ、中にはてゐ見たいに人間みたいな姿をしてるのも居るけどね。
さて、取り敢えずその侵入者を見てきましょうか。
竹林を少し歩くと、てゐを発見した。
「てゐ、何してるの?」
「あ、鈴仙。侵入者が来たって言うから見に行くところ」
「強力な力持ってるらしいから、貴女は下がってなさい」
てゐもそれなりの力は有るけど、強力な力を持つ者には対抗出来るほどじゃない。
「え~!暇だから付いて行く!」
「あんたねぇ………」
「ほら!早く行こうよ!!」
遠足に行くんじゃないっつぅの。
ま、何かあったら時間稼ぎして逃がしてあげれば良いか。
午前9時
てゐを連れて目的地へ向かっていると、一匹の妖怪兎が目に入った。
「何してるの?」
「む、大佐」
だから、何で大佐なのよ。
「ターゲットを確認した。が、我々の手には余るようだ」
「ま、そうでしょうね」
こいつらの手に負える相手と言えば、妖精や低級妖怪くらいでしょう。
「でも、まぁ、少しくらい抵抗してみたら?」
私は少し意地悪く言ってみた。
「そうは言うがな、大佐」
「大佐じゃないっつぅに」
「食欲を持て余す」
グ~っと妖怪兎のお腹が鳴った。
「はい、人参」
「む、有難い」
「まぁ、腹が膨れてようが、貴方達の手に負える相手じゃ無さそうだから、後は私に任せて下がってなさい」
初めから期待してないし。
「ふむ、むぐむぐ、了解した。むぐむぐ、大佐。」
人参をかじるか喋るかどっちかになさい。
「ふんふんふんふん」
鼻をヒクつかせるな!
「ほら、下がりなさい」
「了解した」
今度こそ妖怪兎は下がっていった。
「何あれ?また何か影響受けたの?」
ウチの妖怪兎は良くなんかしらの影響を受ける。
特に姫関連で。
「あ~………最近姫が、軍隊関連の書籍見てたからね~。それに影響されたのかも」
「また姫か…………」
解ってた事だけど。
「なんか、司令官を大佐と呼んで、自分達をスネークと言ってるみたいだね」
「兎の癖に何がスネークよ。大体、蛇って言ったら兎を食べる側じゃないの」
ほんと、あったま悪いわね………
「まぁ、暫くしたら収まるよ」
「飽きるのも早いものね」
それが良いか悪いかは解らないけど。
「さて、それじゃあ行くわよ、てゐ」
「は~い」
緊張感の無い返事ね………
さてと、それじゃあ波長を弄ってっと………
これで周りからは認識される事は無いわね。
私達は静かにその侵入者の場所へと向かった。
近づいてみて、少し安堵した。
こいつらなら恐らく「侵入者」の類ではないわ。
波長を戻して目的を聞いてみましょうかね。
「なんだ………侵入者が居るって言うから来て見れば……貴女達だったの」
居たのは紅魔館の主、レミリア・スカーレットとその従者の十六夜咲夜。
別に殺気立ってる訳でもないし、散歩にでも来たんでしょうね。
「ん?ああ、いつぞやの兎じゃない」
「鈴仙よ。好い加減覚えてくれないかしら?吸血鬼のお嬢様」
ま、言っても無駄でしょうけどね。
「ん?そっちの黒いのは?」
「ああ、この娘はてゐよ」
別に隠す意味も無いので、私は素直に教えた。
「いつかの賽銭兎ね」
ま、そう言う覚えられ方してるでしょうね。
あの天狗の新聞にも載ったし。
「それで?侵入者だって言ってたけど、私たちとやり合うつもり?」
「永遠亭に侵入するつもりならそうするわよ?」
敵わなくても時間稼ぎをして師匠と姫に準備期間を与えるくらいは出来るわ。
「まぁ、遊んであげてもいいけど………貴女のお師匠様にはちょっと借りがあるから止めておいてあげるわ」
ま、最初から戦うつもりなさそうだったけどね。
「そう。まぁ、こっちとしても昼間っから貴女達みたいなのとやり合いたくないから助かるけどね」
これは本音。
こいつらとやり合うには全力出さないといけなくなる。
朝っぱらから全力なんて出させられたらこの後が辛くなるわ。
「ねぇ、なんでここに来たの?」
突如、今まで静かにしてたてゐが尋ねた。
「ん~………日中普通に出歩けるようになったから、今まで行かなかった所に来てみただけよ」
ふ~ん………まぁ、確かに日傘無いと今まで出歩けなかったものね。
遠出するのも面倒だったでしょうに。
「その様子だと、師匠の薬の効果は良好のようね」
「ええ、そう伝えて置いて頂戴」
「そうするわ」
この薬とは、以前このお嬢様にあげた日光無効化薬「ヒヨケルミンS」の事だ。
しっかし、師匠。
毎回毎回、薬の名前はどっから取って来てるんでしょうか?
蓬莱の薬はまともな名前なのに。
「ボインダーZ」とか「マナイタンD」とか、最近のはなんか、妙な名前が多いのよねぇ…………
「所で、貴女の幸運にする能力。私達には効かないのかしら?」
レミリアがてゐに問いかけた。
「どうだろう?そういう話は聞いた事無いよ。人間だと効果あるのは良く聞くけどね」
そうでしょうね。
人間以外にも効果あるなら、私や師匠、姫なんて毎日がラッキーデーだわ。
「そう。まぁ良いわ。咲夜、そろそろ行くわよ」
「承知いたしました」
あら、もう帰るの?
「ここに来るのは良いけど、くれぐれも騒ぎを起こさないでよね」
念の為、私は二人に釘を刺す。
「喧嘩売られなければ騒がないわよ。子供じゃあるまいし」
あんたに喧嘩売る馬鹿はそうそう居ないでしょう。
しかし、子供じゃあるまいしって…………見た目、思いっきり子供よね。
さて、杞憂だったみたいだし、戻るとしましょう。
午前10時・永遠亭
「鈴仙様、永琳様が呼んでましたよ」
永遠亭に帰ると、妖怪兎が私に言伝を伝えにきた。
「師匠が?解ったわ」
私は直ぐに師匠の部屋へ向かった。
トントン
戸をノックする。
「うどんげ?」
「はい」
「入りなさい」
「失礼します」
師匠の許可を得て私は部屋に入る。
「うどんげ、今日は薬を売りに行く日よね?」
「はい、そうです」
私は定期的に人の里、及び依頼のあった者の所へ師匠の薬を売りに行っている。
「今日は人形遣いから依頼があったから、それを届けて頂戴」
そう言って師匠は私に商品を渡す。
「これは?」
瓶?
「栄養ドリンクよ。まぁ、魔法使いと言うのも徹夜で研究とかしてるみたいだから、必要なのかもしれないわね」
それは言えてるかも。
「人形遣いと言う事は、アリス・マーガトロイドで宜しいんですよね?」
「ええ、あの娘よ」
「解りました。では、これも含めて行って参ります」
「ええ、お願いね」
師匠に一礼して、私は部屋を出た。
「あら、イナバ」
「あ、姫」
廊下を歩いていると、姫に会った。
「あ、そうか。今日は薬売りの日だっけ?」
「ええ、これから用意をして行って来ます」
「そう。じゃあ、お昼は私が作ろうかしら」
「え~、またですか~?」
「何よ、不満?」
「かなり」
別に、姫の料理が嫌いだから不満なのではない。
と言うか、私が不在の時に作られるのだから、嫌いなら不満なわけは無い。
寧ろ逆。
姫は、師匠もだけど、とても料理が上手い。
前に八雲紫が言ってたように、長生きしている者は大抵、色々な物に手をつけている。
生活に関わる物なら、尚更なんでしょうね。
私も常人以上の腕前はあると思うけど、あの二人の前にはあっさりと霞む。
それくらい、姫も師匠も料理が上手い。
だから、その料理を食べれないのが悔しい。
「だって、最近全然姫の料理食べてないんですよ~」
「まぁ、貴女が居る時には貴女に任せてるものね」
「そりゃ、主である姫に作らせるのは礼に失するんでしょうけど、偶には姫の料理食べたいですよ」
「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない。解ったわよ、今度貴女が居る時に作ってあげるわ」
「本当ですか!?」
「ええ。それより、時間の方は大丈夫?」
「え?わっ!そろそろ準備しないと!!」
「気を付けて行ってらっしゃい」
「はい!有難う御座います!!」
私は姫にそう返して、自分の部屋へと急いだ。
午後0時・人の里
里に着いてある程度家を回ったところで、お昼になったので昼食を摂る事にした。
お弁当を持参する時もあるけど、今日はなんとなく外食な気分。
適当な食事処を見つけて店内に入った。
ん~………流石に昼時だけあって結構混んでるわ。
空いてる席は………………無い。
場所変えるしかないわね。
「あれ?鈴仙さん」
店を出ようとした時に、声を掛けられた。
声のした方を向くと。
「妖夢?珍しいわね、こんな時間にこんな所で」
そこに居たのは冥界の庭師、魂魄妖夢。
「それもそうですね。所で、鈴仙さんもここで食事を?」
「ええ。でも、席がいっぱいでねぇ………」
「でしたら、合席しますか?」
妖夢は二人用の席に座っていた。
「お邪魔して良いかしら?」
この様子だと、他の場所も混んでそうだし。
「どうぞどうぞ」
私は妖夢の向かいに座り、注文をとった。
「それにしても、貴女が一人でこんな所に居るなんて珍しいわね」
妖夢の主のお姫様と一緒なら解るんだけど。
あのお姫様、亡霊の癖に大食らいだから。
「ええ、今日は藍さんが来てまして、お昼は藍さんが作ってくださるそうなので、私は一人で外出して来いと言われました」
妖夢は困ったように笑いながらそう言う。
まぁ、あのお姫様の気遣いかしらね?
年中休まず働いてるから、こういう時に息抜きのような物をさせてるんでしょう。
「なるほどね~」
「時に、鈴仙さんは何をしにこちらへ?」
「私?私は薬売りよ」
「なるほど。そう言えば、定期的に里に売りに来てるんでしたね」
「昔はこんな事無かったけど、私達の事が知れてからは定期的にこうしてるわね」
昔は姫の為にその存在を隠してたからね。
そりゃ、怪しい薬売りなんて存在したら、いつバレるとも解らないものね。
「妖夢は昼済ませたらどうするの?」
「う~ん………それが、考えてないんですよねぇ……半ば放り出される形で出てきましたから」
まぁ、妖夢の場合そうでもしないとお姫様の側に居そうだしね。
「私はこの後薬売りの為に稗田家を訪問するんだけど、貴女も来る?」
「稗田家?御阿礼の子の?」
「ええ」
「そうですね………幻想郷縁起も完全に読んでませんし、それも良いかもしれませんね」
「じゃあ、そうしましょう」
「はい」
妖夢は笑顔で返事をした。
幻想郷縁起と言えば、妖夢の事をあまり迫力が無いと書いてたけど………
そりゃ、こんな笑顔をする子に迫力なんて無いでしょうよ。
その後、私達は昼食を食べながら話を続けた。
主に、互いの主の愚痴の話を。
午後1時・稗田家
「こんにちわ~」
「はい、どなたでしょう?」
稗田家の戸を叩いて声を掛けると、使用人と思しき女性が出てきた。
まぁ、流石は幻想郷有数の名家。
挨拶していきなり目的の人物が出てくる事は無い。
「あら、貴女は薬売りの………」
「悪いんだけど、ここのお嬢様は居るかしら?」
「阿求様ですか?少々お待ち下さい」
そう言って使用人は奥へと向かった。
「居ますかね?」
「どうでしょ?」
あまり外出し無さそうなイメージだけど、確実に居るわけじゃないしね。
と思っていると、奥から目当ての人物が姿を現した。
「やはり鈴仙さんでしたか。それに妖夢さんも」
「こんにちわ」
「こんにちわ」
私と妖夢が挨拶をする。
「はい、こんにちわ。それで、何か御用でしょうか?」
「用って程の物じゃないけど、今日は入用な人があまり居なかったから午前中であらかた回り終わっちゃってね」
「なるほど、暇つぶし、と言う訳ですね?」
「まぁ、そうとも言うわね」
「お邪魔でしたか?」
控えめに妖夢が尋ねる。
「いえ、丁度私も少し時間を持て余してた所ですよ。良ければ上がって行きますか?」
「ええ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
元より、暇つぶしに来たんだからね。
「お邪魔します」
私と妖夢は家に上がりこんだ。
稗田家・縁側
私達は縁側でお茶を飲みながら座っている。
「あ、そうだ。良ければ幻想郷縁起を見せていただけますか?」
妖夢が思い出したように阿求に尋ねた。
「解りました。少々お待ち下さい」
阿求は自分の部屋に行き、幻想郷縁起を持って戻ってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
妖夢は縁起を受け取って読み始める。
「私が前に見た時と変わりあるの?」
「いえ、現状はまだ変わりありません」
「ふ~ん」
「ですが、近い内に改編されるかもしれませんね」
「へぇ………なんでまた?」
「最近、妖怪の山の方で何やら騒動が起きたみたいでしてね」
「あの山で?あそこって確かかなり閉鎖的って聞いたけど………」
余所者には容赦しないとか。
「ええ、ですが、その山に最近巫女が入り込んで一騒動起こしたようなんですよ」
「ふ~ん……ちゃんと仕事はしてるのね」
「う~ん……どうでしょう?別に妖怪の山の妖怪が何か問題起こしたとかじゃないですからね………巫女の仕事、に分類されるかどうか」
「あ~…それは確かに」
あの巫女の仕事は妖怪「退治」であり、妖怪の「殲滅」では無い。
ぶっちゃけ、引き篭ってる妖怪に手を出すのは巫女の仕事とは言えないのよね。
「しかし、今まで閉鎖的で謎が多かった妖怪の山に楔が打ち込まれたのは確かです」
「と言うと?」
「今までの妖怪の山なら、確実に博麗の巫女を力ずくで叩き出していた筈です」
「そうなの?」
「ええ。本当にあそこは余所者には容赦が無いですから。今までの山なら例え博麗の巫女でも、加減はされるでしょうが、適度にボコボコにされて追い返されてたでしょうね」
そういえば、縁起にも妖怪の山その物は載っているけど、妖怪の山の妖怪については、あの鴉天狗の事しか書いてなかったわね。
「でも、そんな事にはならなかったのよね?」
「ええ。恐らくは、妖怪の山にとっても何らかの不都合な事があったのではと推測してます」
「なんらかの不都合………」
一体何かしらね?
「それが何かは解りませんが、あの山が他者を訳有りとは言え受け入れた。これは今まではなかった事です」
「なるほどね~」
「もしかしたら、この縁起に妖怪の山の妖怪を載せる事が出来るかもしれません」
「でも、妖怪の山の妖怪が他者を排除するような閉鎖的な者なら、こういった物に載せられるのも嫌うのでは?」
今まで本を読んで静かにしてた妖夢が言って来た。
「かもしれませんね。その辺りはやってみないと解りませんが」
「なるほどね~」
「時に、改編するに当たり、お二人のご自身の説明の希望などはありますか?」
この幻想郷縁起は、妖怪側の自身の説明の要望も受け入れている。
要は「もっと強そうに書いてくれ!」とか、「あまり詳細は書かないでくれ」とか、そう言うものだ。
「う~ん………私は手を加えなくて良いですよ。あまり捻じ曲げるのは好きじゃないですから」
自分の所の説明を見て、やや苦い顔をしながらも妖夢はそう言った。
「私は今まで通りで良いわ」
「良いんですか?」
「良いのよ」
「そうですか。こんなに話しやすいのに、あんな説明では危険な存在としか認識されませんよ?」
「良いのよ、それで。貴女や巫女、魔理沙や十六夜咲夜はともかく、他の人間とまで馴れ合おうとは思わないわ」
「そうですか」
「ええ」
私達、月の世界を蹂躙しに来た地上の者と同系列の存在………
そうそう信用できるもんじゃないわ。
「それにしても絵付とは……作るのに時間掛かりませんか?」
「そうですね。でも、文字だけで風貌を説明されるのと、姿を見れるのとでは、理解度が全然違うと思いますしね」
「それはそうね」
「それに、妖怪は人間と違って短い期間でそんなに容姿が変わりませんからね。私が生まれ変わる頃までにその中に容姿の改編をする必要がある方がどれだけ居る事やら」
それもそうね。
その後暫く、私達は縁起の事を交えながら話をした。
午後3時・慧音宅前
2時過ぎくらいには稗田家を出て、出た所で妖夢と分かれた。
その後、残った家を回り、この家で最後。
上白沢さんは里の人間からの人望が厚いから、何かあったら真っ先に手を差し伸べてもらえるでしょうからね。
だから、ここに来るのは一番最後。
家の前に着いた所で、丁度玄関が開いた。
「あら?お出かけ」
私は出てきた上白沢さんに尋ねた。
「ああ。それに今は入用な薬は無いよ、鈴仙」
「それは残念ね。って、美鈴も居たんだ」
上白沢さんに続いて美鈴が家から出てきた。
「ええ、お久しぶりです鈴仙さん。」
「ええ、お久しぶり。美鈴はどう?何か入用な薬はある?」
折角だから商売してみましょうかしら。
「生憎と、頑丈なだけが取り柄ですから」
「打ち身や切り傷、火傷なんかに効く薬もあるわよ?」
これらは貴女に必要そうだけど?
最後の火傷等に効くと言うのは、マスタースパークによる負傷用ね。
「う………そっちの方は使うかもしれませんが……まだ残ってるんで大丈夫です」
「そう、残念だわ」
今日は売り上げが芳しくなかったわね。
まぁ、あまり問題になるような事じゃないけど。
と言うか、薬の押し売りなんて意味が無い上に、最悪こちらの評判を落しかねないものね。
「鈴仙はこれで帰りか?」
上白沢さんが尋ねてきた。
「いえ、後一軒残ってるわ」
今日はちょっと特別なのが、ね。
「珍しいな……誰の家だ?」
「魔法の森の人形遣いよ」
「へぇ……手広くやってるんですね~」
美鈴が感心したように言う。
「まぁ、生きてれば大抵どんな奴でも薬のお世話になるでしょ?だから必然的に色んな所から依頼が来るのよ」
師匠の薬の効き目は人妖問わず、効果抜群だから、尚更ね。
「さて、それじゃあ私も行く所があるから失礼するよ」
「ええ、私も行くわ。結構離れた場所にあるからね」
まぁ、時間的にはまだまだ余裕だけどね。
「それでは、これで。慧音さん、今日はご馳走様でした」
「構わんさ。それじゃあな」
あら?美鈴は上白沢さんにご馳走してもらったんだ。
残念、私も食べてみたかったわ。
さて……っと、時間はまだ余裕だから、偶には少し店でも見てみようかしら。
っとと、ちょっと時間を忘れてたわ。
店を見て回ってたら何時の間にか4時近くになってた。
好い加減向かわないとまずいわね。
それじゃあ、行きましょうかしらね。
って、ん?
何やら通りの方が騒がしいわ。
何かあったのかしら?
まぁ、どうでも良いわね。
私は私のするべき事をするだけよ。
午後4時20分・魔法の森の入り口付近
里から出て結構経ったわね。
ここから先が魔法の森ね。
この森も不思議な力があって、結構迷い易いのよね………
まぁ、竹林で慣れてる私には問題ないけど。
パシッ……パシッパシッ…………
ん?
何の音?
小さな何かが葉っぱかなんかに当たったような……そんな音。
けどなんで?
辺りには何も居ないわ。
強い力を持つ物が居れば流石に解るし………
パシッパシッ!………パシシシシッ!!!
音が……近づいてくる………!!
何?何なの!?
私は警戒しながら音の近づく方を見ていた。
すると、森の中の狭い道に荷台が現れた。
二輪の、人間が引いていくタイプの物だ。
こんな所に荷台があるのも変だが、それ以上に変なのは…………
「だ、誰も居ない!?」
誰も居ない……荷物も無ければ引いている者も居ない。
そんな………馬鹿な!!
しかし、荷台は呆ける私なんて知った事かと目の前を猛スピードで通過していく。
「あ、そっちは…………」
森の木々で道が見えなくなってるけど、あそこは緩い右の後にキツイ左が待ってるのよ?
通ってきた私には解るわ。
荷台が軽く右に重心を傾ける。
が、直ぐ後にキツイ左が顔を出す。
あ~あ……遠心力で後ろの方が思いっきり出てるわ。
スピードが乗りすぎてるから立て直すスペースも無いわね。
クラッシュ確実だわ、あれ。
クゥン………
な……にぃ………!?
か……慣性ドリフト!?
ぬ、抜けた……あのスピードであのキツイ左を………
一つ目の右のカウンターは次の左の姿勢作りのフェイントだったなんて………
腹が立つくらいのスーパードリフト………あんなの使いこなせるのは師匠くらいだわ…………
「おやおや、呆けた顔してどうしたんですか?」
私がボーッとしてると、上から声が掛かった。
「貴女は、鴉天狗の………」
「射命丸文です。で、どうしたんですか?鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をして」
「あ…ありのままに今起こった事を話すわ」
「はい?」
鴉天狗はきょとんとした顔をする。
「無人の荷台が現れたと思ったら、猛スピードで慣性ドリフトをかまして去っていったわ」
「え?」
「な…何を言ってるのか解らないと思うけど、私も何が起きたのか解らなかったわ……頭がどうにかなりそうよ」
「あの~」
「夢とか幻だとかそんなチャチなもんじゃあない。もっと恐ろしい物の片鱗を見た気がするわ」
「はぁ………一度お医者さんに行った方が良いんじゃないんですか?」
「ウチには師匠が居るわよ」
「あ、それもそうでした。で、何が起きたんですか?」
「だから!私にも何が起きたか解らなかったのよ!!」
解ってれば説明してるわよ!
「あ、そう言えば」
一つだけ気になった事が。
「あの荷台、何故か音がしなかったのよね………」
そう、あれだけの猛スピードならもっと派手な音が鳴るはず。
なのに、目にするまでその存在に気付けず、あまつさえ、目の前を通り過ぎても音はしなかった。
「う~ん………にわかには信じがたい話ですが………現にここに今しがた付きましたと言わんばかりの車輪跡がありますからねぇ…………」
鴉天狗が地面を見ながら言う。
「私は嘘を吐いていないわよ」
あんたじゃないんだから。
「ちょっと!なんですか!?その「あんたじゃないんだから嘘は吐かないわよ?」って顔は!!」
あら?よく解ったわね。
「私は真実を追究する新聞記者!他の天狗記者と一緒にしないで下さい!」
「でも、少しくらい真実を捻じ曲げてる方が読者受け良いわよ?」
捻じ曲げすぎるとアレだけどね。
「う…ぐぅ………痛い所を……」
ああ、やっぱり売り上げ伸びない事を悩んでは居たのね。
「しかし、貴女の言う事が真実なら少し面白そうですね………他にネタも無かった事ですし、ちょっと追って見ますね」
「ええ、真相究明を期待してるわ」
気味が悪いから。
「お任せ下さい!では!!」
そう言って鴉天狗は飛んでいった。
いや、本当速いわね………
さてと、それじゃ私も仕事しないと。
午後5時・アリス宅前
ふぅ……やっと着いたわ。
迷いはしないけど、来づらいのよね、ここ。
ガチャッ
家に近づこうとしたら、家のドアが開いた。
「あら?お出かけ?」
出て来たのは家の主、アリス・マーガトロイド。
「ああ、永遠亭の。もしかして頼んでいた物持ってきてくれたの?」
「ええ、そうよ」
「丁度良かったわ。今から出掛ける所だったから」
出掛ける所だから丁度良い?
普通なら、危なかった、とか、タイミング悪い、じゃないかしら?
「丁度良いって言うのは?」
「頼んでた物は私が使うんじゃないの。図書館の館長さんへの差し入れに持っていこうと思ってたのよ」
図書館?
ああ、紅魔館の。
なるほど、それならこの栄養ドリンクも頷ける。
あそこの魔女は喘息持ちで年がら年中体調悪いって聞いてるものね。
これならその体調を一時的に良く出来るはずだわ。
「じゃあ、御代のほう頂いて良いかしら?」
「ええ、いくらかしら?」
「これよ」
私は料金表を見せる。
「解ったわ。はい」
彼女は直ぐにお金を出してくれた。
「毎度有難う。またよろしくお願いするわ」
「それはこっちも同じよ」
「それじゃ、私は帰るわね」
「ええ。今度気が向いたら遊びに来る?お茶とお菓子くらいは出すわよ」
「良いわね、それ。気が向いたらお邪魔させてもらうわ。多分、オマケと一緒に」
行き先知らせたら付いてきそうだものね、てゐは。
「別に構わないわよ。いつでも来て良いわ。それじゃあね」
そう言って彼女は立ち去り、私も魔法の森を後にした。
午後6時・竹林
ふ~……漸く家に帰れるわ。
帰ったら夕飯の準備しないとね。
「大佐!大佐ぁぁ!!」
あ~……もう、また姫の影響を受けた兎が来たわ。
こういう影響を受けるのは決まって獣型の兎の方。
人間型の方はそうそう影響を受けることは無いのよね。
「何よ?」
もう言い返すのが阿呆らしくなって来たわ。
「大変です!軍曹が!!」
軍曹?
誰よ?
「誰よ、軍曹って」
「てゐ軍曹です!!」
あ、てゐって軍曹なんだ。
って、やけに位が低くない?
大佐と軍曹って相当離れてるわよ?
てゐも立場的には私の次くらいの筈なんだけど…………
「で、てゐがどうしたの?」
「敵襲に遭い、身動きを封じられてしまいました!」
「なんですって!?」
てゐが!?
身動きを封じられたって………
「一体何があったの!?詳しく教えなさい!!」
「見た方が早いです!こちらへ!!」
まさか、私が居ない間に、一体誰が!?
こいつらだって単体戦力は低くても数は居る。
並みの奴等じゃ返り討ちのはずよ!?
走る私の耳に何かが聞こえてきた。
「………ぁぁぁぁぁん…………」
泣き声?
「うああぁぁぁぁぁん!!!」
てゐの泣き声だわ!
でも、これだけ大きな声で泣けると言う事は、致命傷を食らってる訳じゃ無さそうね。
それだけは一安心だわ。
それにしても一体何をされたの!?
現場に駆けつけて唖然とした。
「うああぁぁぁぁぁぁん!!!」
「て、てゐ!?」
「あ、鈴仙!!助けてよ鈴仙!!うああぁぁぁぁぁん!!!」
てゐは手足を縛られた上に竹に縛られていた。
縛り付けられているのではなく、手足を縛られた状態で、耳を竹に結び付けられていた。
なんて酷い事を………!!
「今ほどいてあげるわ!!」
私は直ぐにてゐの耳をほどいた。
そしてその跡直ぐに手足の縄も解く。
「うああぁぁぁぁぁん!!」
縄を解いた瞬間、てゐは私に飛び込んできた。
「大丈夫よ、てゐ。もう大丈夫だから」
「鈴仙…!!れーせぇぇぇぇん!!!」
私の胸で泣きじゃくってるてゐ。
この子は嘘泣きを良くするけど、それを良く見てるだけに解る。
これは本当に泣いている。
「あんた達!なんで黙って見てたのよ!!」
私は近くの妖怪兎達を怒鳴りつけた。
「そうは言うがな、大佐」
「何よ!!」
下らない理由だったら承知しないわよ!?
「縄を解けない」
妖怪兎達はをの手足を見せて私に言った。
あ~………確かに、その手足じゃ無理よね。
「因みに、縄を解く為に人型の者への救援は呼びに行きました。まぁ、直ぐに大佐が見つかったわけですが」
と言う事は、これをやった奴はまだ遠くに行ってない?
「もう一つ、あんたらてゐがこんな目に遭ってたのに何してた訳?」
今度は睨み付けて尋ねる。
「そうは言うがな、大佐」
「何よ?」
「花の妖怪相手では我々の手を持て余す」
花の妖怪………?
風見幽香!!
あいつか…………
くそ……あいつ相手じゃ今から追って行っても返り討ちが関の山だわ………
しょうがない、師匠の知恵を借りないと………
「兎に角、帰りましょう、てゐ」
「………うん」
落ち着いたてゐを連れて永遠亭へと向かった。
午後6時半・永遠亭・永琳の部屋
「成る程、話は解ったわ」
私は師匠に事のあらましを話した。
「けど、うどんげ。残念だけど、貴女の手に負える相手じゃないわ」
「何でですか!?大結界異変の時に戦いましたが、策さえ弄じれば………!!」
真正面からは無理でも……!!
「無理ね」
「どうしてですか!?」
「あの時は貴女と戦ったのはお遊び程度の力だったんでしょうね。貴女から攻撃を仕掛けて本気を出されたら、貴女じゃどう足掻いても無理よ」
「そ、そんなに強いんですか?あいつは………」
「長生きする妖怪には共通する点が多いわ」
突如、師匠がそう言った。
「一つは知恵が回る。頭が良いから、決して自分の命が危機に晒されるような事はしない」
確かに、頭の悪い奴は直ぐに身の程知らずな戦いをして死んでいくわね。
「もう一つは強大な力を持つと言う事。強いから死なない。当然よね」
確かに。
「勿論、片方だけで生き延びて居る者も居るわ。てゐがそうよね。あの子は賢さで上手く立ち回って生き延びている」
そう言えば、あの子も結構長く生きてるのよね………
「で、風見幽香はその両方を持つタイプ。力が強くて頭も良い。どちらも貴女より上よ。加えて、長生きしてる分経験も多い。どう?これだけ負ける要素が揃ってるのよ?」
ぐ………反論のしようが無い…………
あれは傍若無人な性格の癖に長生きしている。
それはつまり、誰も手に負えなかったという証拠………即ち、強い。
今は確かに活動が花畑周辺だけになったと言う理由もあるだろうけど……それでも、そうなるまでずっと殺されずに居た。
あの性格で今の今まで生きているのは強いと言う何よりの証。
私では………敵わないの………!?
「私としてもね、うどんげ。極めて負ける確率の高い相手に優秀な助手を戦わせて殺されたくないのよ。だから………」
「私が行くわ」
突如聞こえてきた第三者の声。
この声は………
「あら、姫。聞いていたんですか?」
「イナバの元気が無かったから何かあったと思ってね。で、永琳の所に来たら案の定と言うわけ」
「姫が行かれるんですか?」
「不満かしら?イナバ」
「い、いえ……ですが………」
出来れば、私の手で………
「今は諦めなさい、イナバ。現状じゃ貴女の手に負える相手じゃないわ。悔しければもっと強くなりなさい」
姫にまで言われた………やはり、今の私では勝てないのか………
「で、姫。行って頂けるのですか?」
「ええ、偶には妹紅以外と遊ぶのも悪くないわ。運動を兼ねて少しお仕置きしてくるわね」
「はい、行ってらっしゃいませ」
師匠がそう言うと、姫は踵を返して行った。
「じゃあ、うどんげ。姫が帰って来た時に直ぐにご飯が出せるよう、準備をしておいて頂戴」
「あ、はい」
私は師匠に言われて食事の準備をしに行った。
午後9時永遠亭・居間
漸く姫が帰ってきた。
「お帰りなさいませ、姫。遅かったですね」
やっぱり、あいつは相当手強かったのだろうか?
「ん~………色々他のが居て、まともな戦いが出来なかったわ」
「え?」
「他の、とは?」
師匠が尋ねた。
「隙間の式神でしょ、冥界のお姫様、それに紅魔館の魔女に妹紅」
「何でまたそんなに?」
何か遭ったのかしら?
「あの妖怪、他でも色々やってたらしく、それでそれぞれの代表者が出張って来たって所かしら?」
「あ、じゃあ、もしかして、あの妖怪。死にました?」
殺されるでしょうね………その面子じゃ。
「いえ、式神にお姫様、それに魔女が足の引っ張り合いをしまくってくれた所為で寸での所で巫女の邪魔が入って逃げられたわ」
い、生きてる!?
姫も合わせた、その実力者達相手に生き延びている!?
そんな馬鹿な!!
「妹紅も居たんですか、姫」
師匠が再び尋ねた。
「ま~ね~。ま、今回はお互い目的があったから邪魔しないようにしてたわ。他が邪魔しまくってくれたけど」
「しかし、巫女の邪魔、とは?」
なんで巫女が邪魔を?
「私はそれほど地理に明るくない上に暗かったし、他のは熱くなって周りが見えてなかったんでしょうね。何時の間にか神社の近くに居たのよ」
「ああ、それで、騒いでるから巫女が出てきたんですね?」
なるほど、確かにあの巫女の神社の近くで暴れてれば、あいつは絶対出てくるわ。
「そ。で、突然巫女が暴れだして、皆力を消耗してたみたいだからそれで解散になったわ」
いくら消耗してたとは言え、それだけの者達を解散させられるとは………博麗の巫女、恐るべし。
「まぁ、これで大人しくなってくれれば良いんだけどね」
なるかしら………
「それより、ご飯にしましょう。お腹空いちゃったわ」
「私もお腹すいた」
てゐがそう言った。
少しは元気を取り戻した見ただけど、まだ少し暗さが残ってるわね。
無理も無いか。
「はい、準備は出来てます」
私は用意しておいた料理を持ってきた。
「あれ?皿が多いような…………」
私が作った時より皿が少し多い。
「私が追加で作ったのよ」
師匠がそう言った。
「へ~、何作ったの、永琳」
「キノコ料理です」
「何時の間に………」
相変わらず、師匠は短い時間であっと言う間に作業をこなすなぁ………
「さて、まずは食べましょう。もうお腹ペコペコよ」
姫がそう言う。
「そうですね、それでは」
「「「「いただきます」」」」
皆同時に手を合わせてそう言う。
「じゃあ、早速私は師匠の料理を頂きますね」
私は師匠が作ったというキノコ料理に手を付ける。
師匠も料理が上手いから期待できる。
でも、何のキノコかしら?
「師匠、これ、何のキノコですか?」
私は一口食べ終えてから尋ねた。
「ああ、それ?」
師匠が口に入ってる物を飲み込んでから返事をする。
口に物が入ったまま喋るのは行儀が悪いですからね。
「ベニテングダケよ」
「ぶふーーーーっ!!!」
「イナバ、汚いわよ」
「鈴仙、汚い~」
いや、そんなこと言ってる場合じゃ………
「ど、毒キノコじゃないですか!!!!」
げ、解毒剤!解毒剤!!!
「ふふ……冗談よ」
「笑えません!!!」
本気で!!!
「止めてくださいよ、そう言う冗談は………」
私はお茶を啜りながらそう言う。
「冗談に決まってるじゃない。それはただのワライダケよ」
「ぶっはぁぁぁ!!!」
盛大にお茶を吹いた。
「汚いわよ、イナバ」
「あはははは!!鈴仙変な顔~!!!」
「やぁね~うどんげったら、冗談が通じないんだから」
「ぐ……がはっ!がはっ!!」
咽た。
く………
「師匠の場合本当にありそうで怖いんですよ!!!」
「失礼ね、本気で盛るつもりだったら味も匂いもしない粉末状にして盛るわよ」
「思いっきり怖い事言わないで下さい!!!」
「イナバ、食事中にうるさいわよ」
「うぐっ………」
「あはははは!!!」
うるさいならてゐも同じじゃ………って、あれ?
てゐが笑ってる?
さっきまで暗かったのに。
見ると、その様子を見て姫も師匠も微笑んでいる。
そうか………姫も師匠もてゐの気を紛らわす為にこんな事を………
そんな事も解らないとは、私はダメね………
でも、出来ればもっと別の方法にして欲しいんですけど…………
翌日
永遠亭に新聞が二つ投げ込まれた。
一つはあの鴉天狗、射命丸文の文々。新聞。
どうやら、昨日のあの荷台の事が判明したようだ。
けど、開けてみればなんて事は無いカラクリだったわ。
それに、残念だけど、もう一つの新聞のインパクトに今回も文々。新聞は食われるわね。
内容は博麗の巫女がバツイチだとか何とか………
阿呆臭い。
そんな事あるわけが無い。
けど、これを見た巫女はどう思うかしらね?
また一騒動起こらなければ良いけど………
ま、私には関係ないか。
さて、今日はどうしようかしら?
「鈴仙~!!」
考えてるとてゐが走ってきた。
もうすっかり大丈夫みたいね。
あ、そうだ。
アリス・マーガトロイドに招待受けてたんだっけ。
折角だから言ってみようかな?
この子と一緒に。
ツッコミながら読んでましたwwwww。
冒頭に出てきた退行の薬は、またどこかで出てくるんですかね?
それと、月にものっ○さん居るのか・・・・・・
今回は正直、消化不良でした。
前回は小悪魔に対する描写それなりにあったと思うのですが、
今回はてゐ自身に対する描写が少ないため状況が掴めない……と感じました。
まぁ、この不満も期待が大きいからこそなんですけどね。
幽香と小悪魔・てゐとのやり取りは別のお話で補完されるんでしょうか?
それと荷台の件も気になります。次回作品お待ちしてます。
……美鈴と妖夢の件はまだかなぁ?ワクワク♪(笑)
ちょいと描写が少なかった気もしますがまぁ、もともと他との接触が少ない永遠亭組みだからしょうがないとも言えるか…?
毎回読むたびに続きが気になります。
しかし個人的な感覚ですが
新たなる伏線>伏線消化
な比率で毎回進んでいるように感じてしまい
書ききれるのかな~?と、ちょっぴり不安になったりします。
最終的に処分セールにならないようにがんばってください・・・と、勝手ながら応援させていただきます。
×確立○確率
この書き間違いは他でもよく見ますな・・・
さておき、ちょこちょこ伏線回収されてきてますねぇ。
幽香編が解答編になりそうかな・・・?
あのおっさんが無言でジェスチャーしながら物を作る姿は想像したくねぇなw
きっと菩薩の手で全てを打ち抜いていくんでしょうねぇ。
でっきるっかな でっきるっかな
の合図に合わせて図工している姿を思い描いて吹いたw
永琳の本気の知恵の輪は3次元じゃ済まなそうですね。5~6次元あったりして。
でっきるっかな、でっきるっかな、ふむふむ~(無理です!)
誤字報告:午前8時30分の地の文の「不振な侵入者」は「不審な」
その後の因幡と会って下がっているように注意する場面の地の文「強力な力を持つ物」
は「者」
慧音と別れた直後の「店を診て回ってたら」は「見て回ってたら」
個人的にラビット・スネークと命名
気になったんで一箇所だけ指摘を
>我々の手を持て余す
手に負えない・手に余る等が正しいかと
ラピッド・スネークはタイムリーすぎてツボが!ツボが!(ハマったようです)
>>我々の手を持て余す
あえてその表現を持ち出したのでは?
スネークといえば「それ」ですしね。
なるほど、そういわれるとそうですね。ご指摘ありがとうございます。
NOっぽさんも懐かしいネタ。
お話も面白いしネタ満載でも私は一向に構わん!―――です。
次作を楽しみにしています。
総じて高い評価を頂、ありがとうございます^^
>ツッコミ所満載
ネタ知ってる人ならそうなるだろうと作ってて思いました^^;
>今回はてゐ自身に対する描写が少ないため
言われてみれば、確かに……次に出す時はもうちょっと描写が多くなると思います。
>ドッポネタ
まぁ、ご存知のとおり、愚地先生です^^;
このネタを考えた時に、自分も笑いました。
周りから見たら、さぞ怪しい人だったでしょう………(´・ω・`)
>新たなる伏線>伏線消化
>たしかに伏線が消化されるよりどんどん増えていっています
ん~………確かに^^;
ただ、次くらいから段々消化の方が比率が高くなる予定です。
まぁ、これ以上無駄に増え続けるたらアレですしね………
>スネークネタ
気に入って頂けた様で何よりです^^
自分も気に入ってるので、多分、今後もちょくちょく出てきます。
>×確立○確率
>不振な侵入者」は「不審な」
>強力な力を持つ物」は「者」
>店を診て回ってたら」は「見て回ってたら」
ご指摘ありがとうございます、誤字修正いたしました。
スネークな兎のこれからの活躍に期待ですw
アリスの家に行く二人?二羽?の話も読みたいですねw
ありがとうございました
>妖怪兎達はをの手足を見せて私に言った
妖怪兎達はその手足を見せて私に言った