『はじめまして、大和の使者さん』
『あなたが……漏矢の諏訪子だと言うの?』
『そーだよ』
『子どもの悪ふざけに付き合っている暇はないの。命が惜しければ、さっさと真の支配者の居場所に案内して』
『んー、支配なんて大仰な仕事をしてるつもりはないんだけど……一応、この社の主祭神は私なのよね』
『……なるほど、見た目は幼くとも神威は十分に蓄えているようね。よくよく目を凝らせば、あなたの背後には尋常ならざる恐れの念が渦巻いて見えるわ』
『あ、分かる? 流石は中央の者ね。これだけ多くの恐怖を背負うと、すごーく肩が凝って大変なのよー』
『虫も殺さぬような顔をして……恐ろしい子ね。まつろわぬ者どもの頂点と評判になるだけのことはある』
『いやいや、それほどでもー』
『荒ぶる神よ。今の地位を築くために、これまで一体どれほどの祟りで民草を脅かし続けてきたのか?』
『あ、あーうー! そ、そ、それは誤解なの! 私はただ、外から来た厄神たちをやっつけて手なづけただけなのに……』
『ふん。祟りに勝つ者は、すなわち祟りを支配する者。いつ新たなる災厄に化け、牙を剥くか分からない』
『逆よ逆! 私が祟りを飼い慣らしたのは、それが山の仲間にふりかかるのを防ぐため!』
『そう。その気高き覚悟こそが、結果として洩矢の信仰を一段と強いものとした』
『む、むむ……』
『ひいては、あなたの神徳と領地を一段と拡張する原因となった』
『わ、私が望んだことじゃないよ! あの小さな山さえあれば、私は満足だったんだ! なのにみんな、遊んでばかりいたら私に祟られる、私の栄光を高めるために粉骨砕身働かなきゃ恐ろしい目に遭うって、勝手に思い込んで……』
『……我ら大和は、あなたの存在を見過ごすことが出来ない』
『あう……う……』
『どんな事情があろうと、そこに大和の理想を阻む可能性があるのなら……排除するまで!』
諏訪子に襲いかかろうとする自分自身に向けて、神奈子は必死に制止の言葉を届けようとする。
だが、不可能だ。
なぜなら目の前の情景は、神奈子の見ている夢……かつての忌まわしい「記憶」に過ぎないから。
いかに自然の力を思いのままに操れる神とて、過去に起こってしまった出来事を変えることはできない。
今の神奈子に許されているのは、繰り返される歴史をひたすら見守ること。
そして、後悔に奥歯をかみ締めること。
ただそれだけ、だ。
『あっははははは! 天晴れだわ! 我が王国の誇る鉄器も、こんな簡単に打ち破られちゃ形無しだわ! すごいね、あんた!』
『ぬ……?』
『感動しちゃったよ私ゃ! はははははは! あはははははは!』
『な、何がおかしい!』
『あはっ、あははは……はぁーあ。これで私も遊び納め、か……あは、は。あっはっはっはっはっは、はははのはー!』
『なぜ笑う! 田舎の祟り神風情が、私を愚弄するか!』
『はは、は……ふ、これはこれは失礼をば。愚弄などとんでもない、ただ、あなたに心からの賞賛を送りたくなっただけです。うふふ』
『貴様……!』
『どうやら私の力は、えへへ、あなたの足下にも及ばぬ模様。こちらの負けを認めます、大和の猛き神よ。あー馬鹿馬鹿しい』
呆け面め、敗北の衝撃で正気を失ったか。
噂ほどの器ではなかったようだな。
漏矢の民も、このようなチビに従うより『中央神話』を拝じた方が遥かに幸福というもの……
……そんな侮蔑の意に満ちた視線を諏訪子にぶつけながら、神奈子は辺りを取り囲む大和の軍勢に向けて号令を発する。
『捕えろ。堕ちし神とはいえ、まだ利用価値がある』
(やめるんだ、私)
現在の神奈子は、昔の自分に向かって、心から願う。
(諏訪子を逃がしてあげて)
(こいつは私たちなんかより、遥かに賢明だったのよ)
(上から下への一方的な支配は、かえって神と人間の距離を遠ざけるだけ)
(諏訪子は、それを良く知っていた! だから思いっきり笑い飛ばして見せたんだ、私たちの押し付けがましさを!)
(そうよ……いくら中央の命令とはいえ、侵略戦争になんて加担するべきではなかった)
(やめなくちゃ、こんなこと!)
強く願う。
(もう……やめて……)
祈る。
『そうか、民どもはあくまで我らに仕えることを拒むか。ミシャグジさまに祟られるぐらいなら我らに処刑されたほうがマシだと、そう申しておるのだな?』
(そうよ、ひどい話でしょ? さあ気づくのよ私。諏訪子が抱えていた孤独の深さを、理解してあげて)
『よかろう。ならばその厄の威、潰れ蛙に代わって我が借りるまで。中央にはこう伝えておけ。八坂神奈子に策あり。すなわち蛙を飲むは蛇、モリヤを知ろしめすはモリヤなり、とな……』
(駄目! そんな小細工を弄したせいで、後々私たちはすごく苦しむ羽目になるのよ!)
『とまあ、そういうことになったわけ。どう、すごくいい考えだと思わない?』
『……うん。武勇のみならず才知にも優れているのね、神奈子は』
『ふふん、遠慮せずにもっと喜んでいいのよ諏訪子! あなたはこれからも漏矢の地で崇められ続けるし、私も立派に役目が果せる。完璧な大団円だわ!』
『……大団円? 違うわ、これは凋落の始まり……』
『ん? なんか言ったかしら』
『いいえ、何も』
『相変わらず暗いのね、あなたは』
『暗くもなるわよ、ずっとこんなところに引きこもっていたら』
『敗残の将の分際で、贅沢言わないの! むしろ、あなたを消さなかった私の寛大さに感謝してもらいたいものだわ』
『はいはい』
『ま、それはそれとして……ふっふーん、今日は久しぶりに宴会でも開こうかしら。人間が山ほど貢物を持ってくるようになったおかげで、倉がいっぱいになっちゃったのよー!』
『……へぇ』
『もちろん、あなたにも後で珍味佳肴の数々を差し入れしてあげるわよ』
『いらない。そんなもの、食べたくない』
『どうして遠慮するのかしら? 他でもないあなたが集めてくれたご馳走……あなたに寄せられた信仰なのよ?』
『あぁ……うぅ……』
『ふふふふ。これからも末永く仲良くしましょうね、すーわこっ!』
(いい加減にしてってばぁ! ああもう私の馬鹿! お願い、誰か昔の私を止めてぇぇぇぇっ!)
祈る。
必死に祈る。
しかし無駄だ。
人間の真摯な願いは、神が聞き届けてくれる。
罪を犯した人間は、神に祈ることで禊ぎを得ることができる。
ならば、迷える神は一体どこの誰にすがれば良いのか?
……分からない。
神の不始末は、神にも覆せない。
「ねー、いいかげん起きてよ神奈子ぉ」
目覚めの感触は、最悪だ。
瞼の裏がやけに熱っぽくて、なかなか枕から頭を離すことができない。
胸がむかつく。
この不調は、昨日の酔いがまだ抜けきっていないせいか……いや、それだけではない。
何かものすごく不愉快な夢を見ていたような気がする。
が、それがどんな内容であったかは、頭痛に阻まれ思い出せない。
「んんん……うーん……あと五分だけ」
布団を剥こうとする手に、必死に抗う。
「その五分の間に、何本か御柱をへし折っておいてあげようか?」
「ちょっ、物騒なこと言わないでよ!」
慌てて飛び起きると、目の前には諏訪子のにやけ顔があった。
「ずいぶんと遅いお目覚めねぇ。もう夕方よ?」
「あー、そう。道理で」
ぐううう。
神の威厳なぞ皆無の情けない音が、寝所の中に木霊する。
「お腹が空いていると思った。どれ、早苗に頼んでブレックファ……じゃなくてディナーの用意をしてもらわなくちゃ」
今日は休肝日、つまり一切の宴会を中止にする日だと前々から決めていたのだ。
人知を超えたアルコール分解能力を誇る神とはいえ、酒豪揃いの天狗族を相手に毎日飲み比べを続けるのは、流石に辛い。
それに、たまには近しい者だけで静かに食卓を囲むのも悪くはない。
諏訪子も、早苗も、自分にとっては今や『家族』と呼べる存在なのだ。
『家族』なら、時には団欒が必要であろう。
「あ、そういや早苗は今どこにいるのかしら。夕食の買い出し、行ってくれてると助かるんだけど」
「その早苗なんだけどね」
「ん?」
「今、ちょっと大変なの」
「何? なんかあったの?」
「聞こえるでしょ、早苗の呼んでる声」
「……う」
とくとく参られよ、旋風に身を乗せとくとく参られよ、応えられよ我が神……
あまりにも剛直すぎる祈りが、二日酔いの頭に容赦なく突き刺さる。
「ぐぐぐ……こ、これは余程の事態みたいね」
「まぁ、事件と言えば事件よねぇ。何せ、あの箒に乗った魔女がバケモノをぞろぞろ引き連れて山を登って来ているわけだから」
「なんですって!」
まさか、この神社の存在を快く思わぬ者たちが攻撃を仕掛けてきたのか?と、一瞬思ったが。
自分の驚き顔を見てクスクス笑う諏訪子の様子から察して、実際のところは大した案件でもないのだろう。
しかし、それにしては早苗の切羽詰ったエマージェンシーコールが気になる。
「しょうがない子ねぇ。近隣住民との気持ちのすれ違い、ってやつ?」
「あの子、私のことも一応尊敬してくれてはいるし、ある程度なら言うことも聞いてくれるんだけどね。やっぱり、最終的にはあなたが宥めてあげないと駄目みたい」
「やれやれ。それじゃ、様子を見に行ってあげましょうか」
布団をはねのけて、ふらふら、神奈子は立ち上がった。
(続く)
『あなたが……漏矢の諏訪子だと言うの?』
『そーだよ』
『子どもの悪ふざけに付き合っている暇はないの。命が惜しければ、さっさと真の支配者の居場所に案内して』
『んー、支配なんて大仰な仕事をしてるつもりはないんだけど……一応、この社の主祭神は私なのよね』
『……なるほど、見た目は幼くとも神威は十分に蓄えているようね。よくよく目を凝らせば、あなたの背後には尋常ならざる恐れの念が渦巻いて見えるわ』
『あ、分かる? 流石は中央の者ね。これだけ多くの恐怖を背負うと、すごーく肩が凝って大変なのよー』
『虫も殺さぬような顔をして……恐ろしい子ね。まつろわぬ者どもの頂点と評判になるだけのことはある』
『いやいや、それほどでもー』
『荒ぶる神よ。今の地位を築くために、これまで一体どれほどの祟りで民草を脅かし続けてきたのか?』
『あ、あーうー! そ、そ、それは誤解なの! 私はただ、外から来た厄神たちをやっつけて手なづけただけなのに……』
『ふん。祟りに勝つ者は、すなわち祟りを支配する者。いつ新たなる災厄に化け、牙を剥くか分からない』
『逆よ逆! 私が祟りを飼い慣らしたのは、それが山の仲間にふりかかるのを防ぐため!』
『そう。その気高き覚悟こそが、結果として洩矢の信仰を一段と強いものとした』
『む、むむ……』
『ひいては、あなたの神徳と領地を一段と拡張する原因となった』
『わ、私が望んだことじゃないよ! あの小さな山さえあれば、私は満足だったんだ! なのにみんな、遊んでばかりいたら私に祟られる、私の栄光を高めるために粉骨砕身働かなきゃ恐ろしい目に遭うって、勝手に思い込んで……』
『……我ら大和は、あなたの存在を見過ごすことが出来ない』
『あう……う……』
『どんな事情があろうと、そこに大和の理想を阻む可能性があるのなら……排除するまで!』
諏訪子に襲いかかろうとする自分自身に向けて、神奈子は必死に制止の言葉を届けようとする。
だが、不可能だ。
なぜなら目の前の情景は、神奈子の見ている夢……かつての忌まわしい「記憶」に過ぎないから。
いかに自然の力を思いのままに操れる神とて、過去に起こってしまった出来事を変えることはできない。
今の神奈子に許されているのは、繰り返される歴史をひたすら見守ること。
そして、後悔に奥歯をかみ締めること。
ただそれだけ、だ。
『あっははははは! 天晴れだわ! 我が王国の誇る鉄器も、こんな簡単に打ち破られちゃ形無しだわ! すごいね、あんた!』
『ぬ……?』
『感動しちゃったよ私ゃ! はははははは! あはははははは!』
『な、何がおかしい!』
『あはっ、あははは……はぁーあ。これで私も遊び納め、か……あは、は。あっはっはっはっはっは、はははのはー!』
『なぜ笑う! 田舎の祟り神風情が、私を愚弄するか!』
『はは、は……ふ、これはこれは失礼をば。愚弄などとんでもない、ただ、あなたに心からの賞賛を送りたくなっただけです。うふふ』
『貴様……!』
『どうやら私の力は、えへへ、あなたの足下にも及ばぬ模様。こちらの負けを認めます、大和の猛き神よ。あー馬鹿馬鹿しい』
呆け面め、敗北の衝撃で正気を失ったか。
噂ほどの器ではなかったようだな。
漏矢の民も、このようなチビに従うより『中央神話』を拝じた方が遥かに幸福というもの……
……そんな侮蔑の意に満ちた視線を諏訪子にぶつけながら、神奈子は辺りを取り囲む大和の軍勢に向けて号令を発する。
『捕えろ。堕ちし神とはいえ、まだ利用価値がある』
(やめるんだ、私)
現在の神奈子は、昔の自分に向かって、心から願う。
(諏訪子を逃がしてあげて)
(こいつは私たちなんかより、遥かに賢明だったのよ)
(上から下への一方的な支配は、かえって神と人間の距離を遠ざけるだけ)
(諏訪子は、それを良く知っていた! だから思いっきり笑い飛ばして見せたんだ、私たちの押し付けがましさを!)
(そうよ……いくら中央の命令とはいえ、侵略戦争になんて加担するべきではなかった)
(やめなくちゃ、こんなこと!)
強く願う。
(もう……やめて……)
祈る。
『そうか、民どもはあくまで我らに仕えることを拒むか。ミシャグジさまに祟られるぐらいなら我らに処刑されたほうがマシだと、そう申しておるのだな?』
(そうよ、ひどい話でしょ? さあ気づくのよ私。諏訪子が抱えていた孤独の深さを、理解してあげて)
『よかろう。ならばその厄の威、潰れ蛙に代わって我が借りるまで。中央にはこう伝えておけ。八坂神奈子に策あり。すなわち蛙を飲むは蛇、モリヤを知ろしめすはモリヤなり、とな……』
(駄目! そんな小細工を弄したせいで、後々私たちはすごく苦しむ羽目になるのよ!)
『とまあ、そういうことになったわけ。どう、すごくいい考えだと思わない?』
『……うん。武勇のみならず才知にも優れているのね、神奈子は』
『ふふん、遠慮せずにもっと喜んでいいのよ諏訪子! あなたはこれからも漏矢の地で崇められ続けるし、私も立派に役目が果せる。完璧な大団円だわ!』
『……大団円? 違うわ、これは凋落の始まり……』
『ん? なんか言ったかしら』
『いいえ、何も』
『相変わらず暗いのね、あなたは』
『暗くもなるわよ、ずっとこんなところに引きこもっていたら』
『敗残の将の分際で、贅沢言わないの! むしろ、あなたを消さなかった私の寛大さに感謝してもらいたいものだわ』
『はいはい』
『ま、それはそれとして……ふっふーん、今日は久しぶりに宴会でも開こうかしら。人間が山ほど貢物を持ってくるようになったおかげで、倉がいっぱいになっちゃったのよー!』
『……へぇ』
『もちろん、あなたにも後で珍味佳肴の数々を差し入れしてあげるわよ』
『いらない。そんなもの、食べたくない』
『どうして遠慮するのかしら? 他でもないあなたが集めてくれたご馳走……あなたに寄せられた信仰なのよ?』
『あぁ……うぅ……』
『ふふふふ。これからも末永く仲良くしましょうね、すーわこっ!』
(いい加減にしてってばぁ! ああもう私の馬鹿! お願い、誰か昔の私を止めてぇぇぇぇっ!)
祈る。
必死に祈る。
しかし無駄だ。
人間の真摯な願いは、神が聞き届けてくれる。
罪を犯した人間は、神に祈ることで禊ぎを得ることができる。
ならば、迷える神は一体どこの誰にすがれば良いのか?
……分からない。
神の不始末は、神にも覆せない。
「ねー、いいかげん起きてよ神奈子ぉ」
目覚めの感触は、最悪だ。
瞼の裏がやけに熱っぽくて、なかなか枕から頭を離すことができない。
胸がむかつく。
この不調は、昨日の酔いがまだ抜けきっていないせいか……いや、それだけではない。
何かものすごく不愉快な夢を見ていたような気がする。
が、それがどんな内容であったかは、頭痛に阻まれ思い出せない。
「んんん……うーん……あと五分だけ」
布団を剥こうとする手に、必死に抗う。
「その五分の間に、何本か御柱をへし折っておいてあげようか?」
「ちょっ、物騒なこと言わないでよ!」
慌てて飛び起きると、目の前には諏訪子のにやけ顔があった。
「ずいぶんと遅いお目覚めねぇ。もう夕方よ?」
「あー、そう。道理で」
ぐううう。
神の威厳なぞ皆無の情けない音が、寝所の中に木霊する。
「お腹が空いていると思った。どれ、早苗に頼んでブレックファ……じゃなくてディナーの用意をしてもらわなくちゃ」
今日は休肝日、つまり一切の宴会を中止にする日だと前々から決めていたのだ。
人知を超えたアルコール分解能力を誇る神とはいえ、酒豪揃いの天狗族を相手に毎日飲み比べを続けるのは、流石に辛い。
それに、たまには近しい者だけで静かに食卓を囲むのも悪くはない。
諏訪子も、早苗も、自分にとっては今や『家族』と呼べる存在なのだ。
『家族』なら、時には団欒が必要であろう。
「あ、そういや早苗は今どこにいるのかしら。夕食の買い出し、行ってくれてると助かるんだけど」
「その早苗なんだけどね」
「ん?」
「今、ちょっと大変なの」
「何? なんかあったの?」
「聞こえるでしょ、早苗の呼んでる声」
「……う」
とくとく参られよ、旋風に身を乗せとくとく参られよ、応えられよ我が神……
あまりにも剛直すぎる祈りが、二日酔いの頭に容赦なく突き刺さる。
「ぐぐぐ……こ、これは余程の事態みたいね」
「まぁ、事件と言えば事件よねぇ。何せ、あの箒に乗った魔女がバケモノをぞろぞろ引き連れて山を登って来ているわけだから」
「なんですって!」
まさか、この神社の存在を快く思わぬ者たちが攻撃を仕掛けてきたのか?と、一瞬思ったが。
自分の驚き顔を見てクスクス笑う諏訪子の様子から察して、実際のところは大した案件でもないのだろう。
しかし、それにしては早苗の切羽詰ったエマージェンシーコールが気になる。
「しょうがない子ねぇ。近隣住民との気持ちのすれ違い、ってやつ?」
「あの子、私のことも一応尊敬してくれてはいるし、ある程度なら言うことも聞いてくれるんだけどね。やっぱり、最終的にはあなたが宥めてあげないと駄目みたい」
「やれやれ。それじゃ、様子を見に行ってあげましょうか」
布団をはねのけて、ふらふら、神奈子は立ち上がった。
(続く)
二回で終わらせるという決心もいいですが、話の流れ(と妄想具合も少々)も考えて、いざとなったら変更するのも手の一つ。まあ、どうやって二回で終わらせるのかも気になるといえばなりますが
この過去のケロちゃんもいいね!