あらかじめ作品集46の『著 パチュリー・ノーレッジ』と『著 パチュリー・ノーレッジ+』を読んでおくといいかもしれません。けど、読まなくてもいいかもしれません。
私には憧れの上司がいます。
その人は常に完璧で瀟洒で、他人に厳しく、自分にはさらに厳しい。そんな憧れの人。
ある紅い霧が出ている日のこと、私はでたらめな強さを持つ巫女に叩きのめされた。それは酷い有様で、部下の肩を借りないと歩くことも出来ないくらい。
私は感じた、この強さは危険だと。憧れの上司やお嬢さまでも危ないと思うほどに。
そして一時間もしないうちに紅い霧は晴れた。私は悟った、お嬢さまでもあの巫女には勝てなかったことを。
それから直ぐだった、憧れの上司が私の前に現れたのは。
「情けないわ、紅魔館の門番がそんなんでどうするの? これは少し本格的なお仕置きが必要ね」
その人は私の有様を目にしてナイフを構えた。
それを見て私の肩を支えてくれている部下が抗議の声を上げた。あの巫女は強かった、現にお嬢さまでさえ……そう、言い切る前に私は部下の声を止めさせた。
いかなる理由があろうと、相手がいくら強くてもそんなのは関係ない。相手を通さない、それが門番なのだから。
それに、私にはわかっている。
「そう、おとなしく罰を受けるのね。いい心がけだわ」
そう言ってその人は私にナイフを射る。おとなしく受けるしかないじゃないですか、私にはわかってるんですから。
どんなに新しい服に着替えたってわかります、その服の下に沢山の生傷があることを。
どんなに背筋を伸ばしたってわかります、歩くことは愚か立つことだって出来ないくらいボロボロなのを。
どんなに気丈に振舞ってもわかります、誰よりもお嬢さまを思っているにも関わらずお嬢さまを守りきれず、その完璧で瀟洒な誇りがズタズタに切裂かれているのを。
だから私は受けます、普段の私なら指一本で弾き返せるほど力の篭っていないナイフを。今にも倒れてしまいそうな自分に鞭を打って部下に罰を与えに来たこの人に敬意を込めて。
そんな常に完璧で瀟洒で、他人に厳しく、自分にはさらに厳しい。そんな憧れの人は今……
「美鈴、私は毎日八時間あなたのことを見つめて、毎日あなたの写真を撮って、毎晩あなたの事を思って自分を慰るほどあなたを思っているのにどうして私の思いに答えてくれないの?」
そんな憧れの人は今……私のストーカーです。
「覗きに盗撮、その他もろもろという歪んだ愛情表現しか出来ないからじゃないですか?」
ここ、紅魔館門前にて私は咲夜さんの話を聞いている。
「歪んでいても愛情表現には違いないわ」
「残念ながら私はその手の趣向を持つ人の思いに答えることは出来ません」
何時からだろう、こんな会話がいつものやり取りになってしまったのは。
「大丈夫よ。私があなたを変えて見せるから」
「心の底から遠慮します」
「そんなものしなくていいわ! 私とあなたの仲じゃない!」
「親しき仲にも礼儀ありです」
いつまで続くんだろうこの会話。あ、咲夜さんがまた一歩私に近づいてきた。昨日、私の半径一メートル以内に入ってこないことって言ったばっかなのに。
「咲夜さん、こんな所で私とおしゃべりしててお仕事はいいんですか?」
「ふ、あなたとのかけがえの無い一時に比べたら仕事なんて……」
なんでこの人がメイド長なんだろう?
「私、お仕事しない咲夜さんは大嫌いです」
「さて、そろそろ仕事に戻るわ。いい天気だから洗濯物がよく乾きそうだし」
私がこう言わなければこの人はほんとに仕事をしなさそうなのが怖い。っていうかお嬢さまは咲夜さんを甘やかしすぎですよ。
これが私の午前の出来事。
昼食を食べて午後のお仕事。にしても誰も来ませんね、平和なのはいいことですが門番がこんなに暇でいいのかな?
と、思っていると誰か来る法則って言うのが最近私の中で確立してきています。
「こんにちわ、アリスさん」
「え、ええ、こんにちわ」
最近のアリスさんはなぜか私を見ると顔を真っ赤にするのはなぜでしょう?
「今日は本を借りに来たんですか?」
「ええ、本当は本を返すのが目的なんだけど、たぶん何か借りることになるでしょうね」
「そうですか、ちなみに最近はどんな本を借りてるんですか?」
「え、ええ!? ま、魔道書よ! 魔道書とか」
なぜか慌てて答え、顔をまた真っ赤にするのはなぜでしょう?
「魔道書ですか、私にはさっぱりな物ですね」
「ええ、そうね。断じて顔見知りが題材のその手の小説とかじゃないわ」
今なにか深く問い詰めた方がいい単語が聞こえた気がしましたが、私の直感がスルーしたほうがいいと言っているので流します。
アリスさんの抱えている本のタイトルが『従者と門番』とか書かれていた気がしますがスルーします。
以前、咲夜さんが凄く似ている本を持って歩いていた所を目撃してもスルーしましたし、今回もスルーします。でも今度、図書館に殴りこみに行こうと思います。
「それではまた、帰るときにでも声をかけて下さい」
「ええ、また後で」
こうして館内に入っていくアリスさんを見届け一人に戻る。かと思いきや。
「美鈴、最近あの人形遣いがあなたを見るたびに顔を赤くするんだけど、ひょっとしてあなたに抱いてはいけない感情を抱いてるんじゃないかしら? だとしたら美鈴が誰の物なのか一度わからせなきゃいけないわね」
来ました、最近の私の悩みの種が。って言うか今まで覗いてたんですか? そして私は誰の物でもなく私の物です、百歩譲ってこの命は忠誠を誓ったお嬢さまの物です。
「咲夜さんも知ってるでしょう? アリスさんと魔理沙さんの砂を吐くような熱愛話を、だからそれは絶対にありえませんよ」
「そうなんだけど、だとすると原因はあの本かしら?」
なんの本なのか聞きたいけどさっきと同じ理由でスルーします。
「それよりお仕事はいいんですか? そろそろお嬢さまがお茶の時間ですけど」
「それなら大丈夫よ。丹精込めた手作りのランドグシャクッキーと血を垂らしたティーパックの紅茶をお出ししたから」
手が込んでんだか手抜きなのかわかりません。
「咲夜さん、唐突ですが咲夜さんはお嬢さまに忠誠を誓ってますか?」
「誓ってるわ。お嬢さまから頂いたこの名にかけて」
「お嬢さまがやれと言ったら何でもやりますか?」
「巫女や隙間妖怪でも喧嘩売るわ」
「お嬢さまが死ねと言ったら死にますか?」
「欲しいと言えばこの体に流れる血、全てお嬢さまに差し出すわ」
「……愚問でしたね、失礼しました」
嘘偽りの無い真っ直ぐな瞳でそう言えるのに、なぜ最高級のダージリンを淹れてあげないのだろう?
「美鈴、何を勘違いしたかは聞かないけど、私はあなたと同じでお嬢さまに拾っていただきこの名まで頂いた身。お嬢さまに対する思いだけでは誰にも負けないわ、無論貴方にも、よ」
それはわかっています。あの日、自分に鞭打って私に罰を与えた日から私は貴方には勝てないと思っています。だから憧れてるんです、憧れてるんですけど。
「咲夜さん、お話の途中すみませんがその懐に隠してある私の下着を返してください」
なんか色々台無しです。
「大丈夫よ、さっき洗濯する前に抜き取っておいた生モンだから」
何が大丈夫なのかまったくわかりません。後、生モン言うな。
「とにかく後で返してくださいね。夜までにはかならず」
「何言ってるの、むしろ夜こそ必要なんじゃない!」
咲夜さんこそ何言ってんだか今の私には理解できない。
「夜こそ嫌なんです、何に使われるかわからないから」
「何って、ナニに決まってるじゃない」
ナニが何なのかやっぱり今の私には理解できないし、理解したくない。
「私、人のもの勝手に取ったりする咲夜さんは大嫌いです」
「今すぐ洗ってあなたの部屋に戻しておくわ」
こうして私の前から姿を消す咲夜さん。その後、お帰りになるアリスさんを見送る。その手には『乱れる虹の川』と書かれた本があった気がしましたがやっぱりスルーしました。
これが私の午後の出来事。
夕食を食べて、夜のお仕事。夜のお仕事って言うとなんだか咲夜さんが反応しそうな言葉ですが案の定門番です。この時期は少し寒いです。
「美鈴、寒いでしょうから差し入れ持ってきたわよ」
「わざわざすみません」
私の上司は本当に気が利いています。
「それでこの熱いお茶を口移しであなたに飲ませようと思うのだけど?」
「わぁ、お茶請けまで用意してくれたんですか? ありがとうございます」
お茶請けはランドグシャクッキーでした。お嬢さまの分を作った時、一緒に作ったのでしょうか?
「ええ、このクッキーも口移しで食べさせてあげようと思って」
「後はもういいですよ。ここは寒いですし、咲夜さんもまだお仕事残ってるでしょうから」
「ごめんなさい、一緒にお茶してもいいかしら?」
「ええ、いいですよ」
なぜ、この人は普段からこうやって普通になれないんだろう?
こうして門前で二人して座り込み、バスケットに入ったクッキーを食べながら保温が利く水筒に入ったお茶を飲む。
所でこのお茶、以前お嬢さまが飲んでいたダージリンに香りが似ているんですが気のせいですか?
「ねぇ美鈴。少し相談があるのだけどいいかしら?」
「珍しいですね、咲夜さんが悩み事なんて。私でよければいくらでも聞きますよ」
本当に珍しいと思います。常に即時、即断、即答する完璧なこの人が誰かに相談するなんて、それも自分に。こんな完璧な人が自分を頼ってくれるのが少し嬉しかったりします。
「私ね、好きな人がいるの。凄く身近に」
「……知ってます」
急にこんな話をする咲夜さんを私はずるいと思いました。
「でもねその人は中々私の思いに答えてくれないの」
「何ででしょうね?」
「それがわからないのよ」
本当にわかってないんですか?
「それはきっと急に距離を縮めようとするからですよ。もっとゆっくり時間をかけて距離を縮めればいいと思いますよ」
「そう? 私はこう思うの、どんなに魅力的な人でも、距離を縮めるのが遅ければその人が他の人との距離が近づくかもしれない。なら直ぐにでも自分も思いを相手に伝えた方がいい。相手に自分の思いを知ってもらうことから距離は縮まるのだから」
「でもそれは時にさびしい結果を招く事もあります」
「かもしれないわ、でも私が何もしない間にその人が他の誰かの物になる、なんていうのだけは絶対に嫌なの」
ひょっとして……この人は他の誰かに取られるかもしれないからあんなにも捻じ曲がるほどストレートな事をしていたんだろうか?
アリスさんを疑うのもそんな理由ですか? だとしたらそれは凄く馬鹿ですよ?
「そんなお馬鹿な咲夜さんに一つアドバイスをします」
「……謹んで聞かせてもらうわ」
「咲夜さんの心配は全く無駄な心配です。なぜなら――」
そう、全く必要ない心配。
「なぜなら?」
聞き返す咲夜さんに、私は持てる限りの笑顔で答えたと思う。
「その人が咲夜さん以外の物になるなんてありえないからです」
それはあの日、力の篭ってないナイフを受けた時から決まっていたこと。
「その人は、完璧で瀟洒で他人にも自分にも厳しい咲夜さんが大好きで、ずっと憧れてるんですから」
咲夜さんよりもずっと長いこと思い続けてきたんですよ。
「だから常に完璧で瀟洒でいてください」
それが私から咲夜さんにするアドバイスで、お願いでもあります。
「ありがとう、美鈴。少し……いえ、かなり参考になったわ」
「どういたしまして」
不意に咲夜さんは立ち上がり背を向ける。
「それじゃ、私は行くから。まだ仕事少し残ってるし」
「いいんですか? こういったいい空気の時に距離を縮めるのが完璧で瀟洒だと思うんですが」
正直、今このタイミングで完璧で瀟洒な咲夜さんに迫られたら受け流す自信がまるっきり無いです。
「いいのよ。だって人前で涙を流すなんて、完璧でも瀟洒でもない姿を見せるわけにはいかないから」
「そうですか、では次の機会に期待しています」
「そう長くは待たせないわ。機会なんて待つものじゃなく作る物だから」
「それでこそ完璧で瀟洒です。惚れ甲斐があります」
そうして姿を消す咲夜さん。それを見届けてから今の会話を思い出す。
うわ、私勢いに任せてもの凄く恥ずかしいこと口走ってません? って言うかこれ告白って思われてもおかしくないですよ? いや、まあ半ばそのつもりで口にしたんですけど、なにが急に距離を縮めすぎですか、それは私の方じゃないですか、そして最後に惚れ甲斐がありますとか言っちゃてるし。
これが私の夜の出来事。
それから仕事を終えた私は頭を悩ませながらシャワーを浴びベットに入る。
明日、咲夜さんの顔を直視できるだろうか? 多分出来ない。ああ、でもいつも通り変態的な咲夜さんだったら私もいつも通り受け流せるだろうけど。って違う、あの変態的な咲夜さんが異常であって普段の咲夜さんは完璧で瀟洒なはずだ。多分、きっと、そうだったらいいなぁ。
そうして私は眠りに付く、明日から完璧で瀟洒でかっこいい咲夜さんでありますようにと願って。
「そうやって眠りに付いたはずなんですけどねぇ……こんな形で咲夜さんの顔を見ることになるとは思いませんでした」
「なにが起こるかわからないから生きるとは面白いことだと思わない?」
突然やってきた体の違和感に私は目を覚ます。そこは眠っていたはずの私の部屋ではなく恐らく咲夜さんの部屋、そのベットの上に下着姿で鎖に縛られてる私、そして私に跨る咲夜さん。
「咲夜さん、出来れば当たって欲しくない考えなんですけど、これって夜這いですか?」
「話が早いわね。我ながら完璧で瀟洒な手並みだったと思うわ」
ただ単に時止めて私をひん剥いて鎖で縛ってここまで拉致っただけでしょう。
「咲夜さん。私のアドバイス、もう忘れちゃったんですか?」
「憶えてるに決まってるじゃない」
じゃあ意味を理解していなかったとしか思えません。
「私はね、こう考えたの。その子が私以外の物にならないと言うのなら、逆に考えればいつかは私の物になる。ならそれは早いほうがいいじゃない?」
やっぱり意味を理解していなかったようです。しかも勘違いまでしています。
「私、相手の気持ちを考えず無理やり襲っちゃう咲夜さんは大嫌いです」
「ふ、美鈴。ここまで来てしまった以上、私も引けないわ」
ついには開き直りましたよ? これはちょっと本気で怒ってもいいんじゃないんでしょうか。
「そうですか。そんな聞き分けの無い咲夜さんは少しお仕置きです」
「あなたこそ、置かれた状況を見て諦め――」
私はそんな咲夜さんの言葉を無視し、体をくねらせ鎖から抜け出す。
「……ただのロープじゃ力ずくで引きちぎるだろうから鎖にしたんだけど、こんな縄抜けなんて……奇術師の二つ名はあなたに譲るわ」
「いえ、結構です。手品でもなんでもなく、ただあちこちの関節を外して抜け出ただけですから。それより覚悟はいいですか?」
私は全身の関節をはめ直し、拳を軽く握る。
「それじゃあ最後に、いつだったら素直に夜這いを受けてくれる?」
「知りません」
私は拳を思い切り咲夜さんへと突き出す。咲夜さんは咄嗟に目を瞑る。
「んっ……」
でも、その拳は咲夜さんの鼻先すれすれ、それ以上先に進むことは出来なかった。
つくづく私は馬鹿だなと思う。ここでちゃんと叱らないから咲夜さんは変わらないんじゃないかと思っているのになぜか出来ない。
だって、それが咲夜さんに憧れた理由だから。ちゃんと人を叱れる咲夜さんに憧れた理由だから
そして咲夜さん目を開き、目の前にある私の拳を不思議そうに見つめる。
私は咲夜さんと違ってそんなに厳しくなることは出来ない。
でも、その違いを直そうと思ったことも無い。なぜなら、直してしまったら咲夜さんに憧れる理由がなくなってしまう。
私は咲夜さんに憧れていたいから。
「咲夜さん、これに懲りたらもうこんな――」
「美鈴! 優しいのね。その優しさはやっぱり愛ゆえに来る物なのうきゃぁぁ!」
やっぱり我慢できませんでした。私は突き出した拳をそのままでこピンに変え、咲夜さんを吹っ飛ばした。
「私、人の話を聞かない咲夜さんは大嫌いです」
やれやれと息づきながら、気を失った咲夜さんの下へ歩み寄り抱きかかえ、そのままベットへと投げ捨てる。
「これでよしと」
自分を襲ってきた相手をわざわざベットへ入れてあげるとは、本当に私は厳しくなれない。
さて、さっさと自分の部屋に帰って寝るとしますか。明日からもこの人の相手しないと行けませんし。
「ん……んん……」
咲夜さんがうなされ気味なのとその真っ赤に腫れあがったおでこはきっと無関係でしょう。
「う、ん……美、鈴」
「……」
「お願い、ずっと……一緒に」
私は、本当に厳しくなれない。
「いますよ、一緒に。今も、これからも」
咲夜さんの前髪をかき上げ、真っ赤なおでこをなでる。
「美、鈴……」
ほんの少し咲夜さんの顔が安らいだように見える。
でもずっとこうしてるわけにもいかないですから、今日はこれで我慢してくださいね。
こうして私は部屋を出た。最後にそっとそのおでこにキッスをしてから。
これが私の深夜の出来事。
「ねぇパチェ、最近本格的に咲夜が私のことを蔑ろにしている気がするんだけど」
「そう、大変ね」
「パチュリー様、その反応は冷たすぎるのでは……」
「小悪魔。あなた、私のこと心配してくれるの? 嬉しいわ、あなたのような子が近くにいてくれて」
「大げさですよ、お嬢さま」
「で、具体的にはどんな感じなの? 咲夜は」
「そうね、まず今日はティーパックの紅茶を出されたわ」
「お嬢さま、そういう時は私を呼んでください。一応、紅茶くらいは淹れれますから」
「あなた、本当にいい子ね。どう? 私の専属にならない?」
「レミィ。その子は私のよ、あげないわ。それと咲夜のことは本来、貴方達の問題だから私が口を挟むべきではないと思うけど、たまには叱らなくちゃダメよ?」
「そうね、ありがとう。パチェ」
「そうですよ。何かあったときは私がパチュリー様とお嬢さまのお世話をこなして見せますから」
「小悪魔、あなたって本当に――」
「レミィ、あなたはまず小悪魔のそれが優しさではなく哀れみだと気づきなさい」
「さすがパチュリーね。基本である長女受けを守りつつ、状況に応じて攻守を目まぐるしく変えていく事で読者を飽きさせない。見事ね」
「何してんだアリス」
「ま、魔理沙! あなたいつも唐突に現れるわね!」
「それよりアリス。またパチュリーの所行ってただろ」
「え、ええ。最近はよく本を借りに……」
「なぁ。私といるより、本を読んでるほうが楽しいか?」
「ま、魔理沙? 何を言って――」
「だってそうだろ! いつも私から強引に誘わなきゃ何もしないじゃないか!」
「お、落ち着いて魔理沙。それとこれとは別の――」
「ああ、そうさ! 別の話さ! そんなのわかってる!」
「ま、魔理沙……」
「わかってる、頭じゃわかってるんだ。でも、お前を前にすると止められないだ……」
「魔理沙。あなたがそこまで考え込んでるなんて……」
「そう、止められないんだ、感情を、思いを……」
「ごめんなさい、私が悪かったわ。あなたの思いに気づかず……」
「ああ、そうだ。お前が悪い、だから責任とって貰うぜ」
「ええ、私が悪いわ。だから好きにして…魔理沙の好きな様に」
「当然だ、泣いても許さない。お前が私しか見れなくなるまで……」
私には憧れの上司がいます。
その人は常に完璧で瀟洒で、他人に厳しく、自分にはさらに厳しい。そんな憧れの人。
ある紅い霧が出ている日のこと、私はでたらめな強さを持つ巫女に叩きのめされた。それは酷い有様で、部下の肩を借りないと歩くことも出来ないくらい。
私は感じた、この強さは危険だと。憧れの上司やお嬢さまでも危ないと思うほどに。
そして一時間もしないうちに紅い霧は晴れた。私は悟った、お嬢さまでもあの巫女には勝てなかったことを。
それから直ぐだった、憧れの上司が私の前に現れたのは。
「情けないわ、紅魔館の門番がそんなんでどうするの? これは少し本格的なお仕置きが必要ね」
その人は私の有様を目にしてナイフを構えた。
それを見て私の肩を支えてくれている部下が抗議の声を上げた。あの巫女は強かった、現にお嬢さまでさえ……そう、言い切る前に私は部下の声を止めさせた。
いかなる理由があろうと、相手がいくら強くてもそんなのは関係ない。相手を通さない、それが門番なのだから。
それに、私にはわかっている。
「そう、おとなしく罰を受けるのね。いい心がけだわ」
そう言ってその人は私にナイフを射る。おとなしく受けるしかないじゃないですか、私にはわかってるんですから。
どんなに新しい服に着替えたってわかります、その服の下に沢山の生傷があることを。
どんなに背筋を伸ばしたってわかります、歩くことは愚か立つことだって出来ないくらいボロボロなのを。
どんなに気丈に振舞ってもわかります、誰よりもお嬢さまを思っているにも関わらずお嬢さまを守りきれず、その完璧で瀟洒な誇りがズタズタに切裂かれているのを。
だから私は受けます、普段の私なら指一本で弾き返せるほど力の篭っていないナイフを。今にも倒れてしまいそうな自分に鞭を打って部下に罰を与えに来たこの人に敬意を込めて。
そんな常に完璧で瀟洒で、他人に厳しく、自分にはさらに厳しい。そんな憧れの人は今……
「美鈴、私は毎日八時間あなたのことを見つめて、毎日あなたの写真を撮って、毎晩あなたの事を思って自分を慰るほどあなたを思っているのにどうして私の思いに答えてくれないの?」
そんな憧れの人は今……私のストーカーです。
「覗きに盗撮、その他もろもろという歪んだ愛情表現しか出来ないからじゃないですか?」
ここ、紅魔館門前にて私は咲夜さんの話を聞いている。
「歪んでいても愛情表現には違いないわ」
「残念ながら私はその手の趣向を持つ人の思いに答えることは出来ません」
何時からだろう、こんな会話がいつものやり取りになってしまったのは。
「大丈夫よ。私があなたを変えて見せるから」
「心の底から遠慮します」
「そんなものしなくていいわ! 私とあなたの仲じゃない!」
「親しき仲にも礼儀ありです」
いつまで続くんだろうこの会話。あ、咲夜さんがまた一歩私に近づいてきた。昨日、私の半径一メートル以内に入ってこないことって言ったばっかなのに。
「咲夜さん、こんな所で私とおしゃべりしててお仕事はいいんですか?」
「ふ、あなたとのかけがえの無い一時に比べたら仕事なんて……」
なんでこの人がメイド長なんだろう?
「私、お仕事しない咲夜さんは大嫌いです」
「さて、そろそろ仕事に戻るわ。いい天気だから洗濯物がよく乾きそうだし」
私がこう言わなければこの人はほんとに仕事をしなさそうなのが怖い。っていうかお嬢さまは咲夜さんを甘やかしすぎですよ。
これが私の午前の出来事。
昼食を食べて午後のお仕事。にしても誰も来ませんね、平和なのはいいことですが門番がこんなに暇でいいのかな?
と、思っていると誰か来る法則って言うのが最近私の中で確立してきています。
「こんにちわ、アリスさん」
「え、ええ、こんにちわ」
最近のアリスさんはなぜか私を見ると顔を真っ赤にするのはなぜでしょう?
「今日は本を借りに来たんですか?」
「ええ、本当は本を返すのが目的なんだけど、たぶん何か借りることになるでしょうね」
「そうですか、ちなみに最近はどんな本を借りてるんですか?」
「え、ええ!? ま、魔道書よ! 魔道書とか」
なぜか慌てて答え、顔をまた真っ赤にするのはなぜでしょう?
「魔道書ですか、私にはさっぱりな物ですね」
「ええ、そうね。断じて顔見知りが題材のその手の小説とかじゃないわ」
今なにか深く問い詰めた方がいい単語が聞こえた気がしましたが、私の直感がスルーしたほうがいいと言っているので流します。
アリスさんの抱えている本のタイトルが『従者と門番』とか書かれていた気がしますがスルーします。
以前、咲夜さんが凄く似ている本を持って歩いていた所を目撃してもスルーしましたし、今回もスルーします。でも今度、図書館に殴りこみに行こうと思います。
「それではまた、帰るときにでも声をかけて下さい」
「ええ、また後で」
こうして館内に入っていくアリスさんを見届け一人に戻る。かと思いきや。
「美鈴、最近あの人形遣いがあなたを見るたびに顔を赤くするんだけど、ひょっとしてあなたに抱いてはいけない感情を抱いてるんじゃないかしら? だとしたら美鈴が誰の物なのか一度わからせなきゃいけないわね」
来ました、最近の私の悩みの種が。って言うか今まで覗いてたんですか? そして私は誰の物でもなく私の物です、百歩譲ってこの命は忠誠を誓ったお嬢さまの物です。
「咲夜さんも知ってるでしょう? アリスさんと魔理沙さんの砂を吐くような熱愛話を、だからそれは絶対にありえませんよ」
「そうなんだけど、だとすると原因はあの本かしら?」
なんの本なのか聞きたいけどさっきと同じ理由でスルーします。
「それよりお仕事はいいんですか? そろそろお嬢さまがお茶の時間ですけど」
「それなら大丈夫よ。丹精込めた手作りのランドグシャクッキーと血を垂らしたティーパックの紅茶をお出ししたから」
手が込んでんだか手抜きなのかわかりません。
「咲夜さん、唐突ですが咲夜さんはお嬢さまに忠誠を誓ってますか?」
「誓ってるわ。お嬢さまから頂いたこの名にかけて」
「お嬢さまがやれと言ったら何でもやりますか?」
「巫女や隙間妖怪でも喧嘩売るわ」
「お嬢さまが死ねと言ったら死にますか?」
「欲しいと言えばこの体に流れる血、全てお嬢さまに差し出すわ」
「……愚問でしたね、失礼しました」
嘘偽りの無い真っ直ぐな瞳でそう言えるのに、なぜ最高級のダージリンを淹れてあげないのだろう?
「美鈴、何を勘違いしたかは聞かないけど、私はあなたと同じでお嬢さまに拾っていただきこの名まで頂いた身。お嬢さまに対する思いだけでは誰にも負けないわ、無論貴方にも、よ」
それはわかっています。あの日、自分に鞭打って私に罰を与えた日から私は貴方には勝てないと思っています。だから憧れてるんです、憧れてるんですけど。
「咲夜さん、お話の途中すみませんがその懐に隠してある私の下着を返してください」
なんか色々台無しです。
「大丈夫よ、さっき洗濯する前に抜き取っておいた生モンだから」
何が大丈夫なのかまったくわかりません。後、生モン言うな。
「とにかく後で返してくださいね。夜までにはかならず」
「何言ってるの、むしろ夜こそ必要なんじゃない!」
咲夜さんこそ何言ってんだか今の私には理解できない。
「夜こそ嫌なんです、何に使われるかわからないから」
「何って、ナニに決まってるじゃない」
ナニが何なのかやっぱり今の私には理解できないし、理解したくない。
「私、人のもの勝手に取ったりする咲夜さんは大嫌いです」
「今すぐ洗ってあなたの部屋に戻しておくわ」
こうして私の前から姿を消す咲夜さん。その後、お帰りになるアリスさんを見送る。その手には『乱れる虹の川』と書かれた本があった気がしましたがやっぱりスルーしました。
これが私の午後の出来事。
夕食を食べて、夜のお仕事。夜のお仕事って言うとなんだか咲夜さんが反応しそうな言葉ですが案の定門番です。この時期は少し寒いです。
「美鈴、寒いでしょうから差し入れ持ってきたわよ」
「わざわざすみません」
私の上司は本当に気が利いています。
「それでこの熱いお茶を口移しであなたに飲ませようと思うのだけど?」
「わぁ、お茶請けまで用意してくれたんですか? ありがとうございます」
お茶請けはランドグシャクッキーでした。お嬢さまの分を作った時、一緒に作ったのでしょうか?
「ええ、このクッキーも口移しで食べさせてあげようと思って」
「後はもういいですよ。ここは寒いですし、咲夜さんもまだお仕事残ってるでしょうから」
「ごめんなさい、一緒にお茶してもいいかしら?」
「ええ、いいですよ」
なぜ、この人は普段からこうやって普通になれないんだろう?
こうして門前で二人して座り込み、バスケットに入ったクッキーを食べながら保温が利く水筒に入ったお茶を飲む。
所でこのお茶、以前お嬢さまが飲んでいたダージリンに香りが似ているんですが気のせいですか?
「ねぇ美鈴。少し相談があるのだけどいいかしら?」
「珍しいですね、咲夜さんが悩み事なんて。私でよければいくらでも聞きますよ」
本当に珍しいと思います。常に即時、即断、即答する完璧なこの人が誰かに相談するなんて、それも自分に。こんな完璧な人が自分を頼ってくれるのが少し嬉しかったりします。
「私ね、好きな人がいるの。凄く身近に」
「……知ってます」
急にこんな話をする咲夜さんを私はずるいと思いました。
「でもねその人は中々私の思いに答えてくれないの」
「何ででしょうね?」
「それがわからないのよ」
本当にわかってないんですか?
「それはきっと急に距離を縮めようとするからですよ。もっとゆっくり時間をかけて距離を縮めればいいと思いますよ」
「そう? 私はこう思うの、どんなに魅力的な人でも、距離を縮めるのが遅ければその人が他の人との距離が近づくかもしれない。なら直ぐにでも自分も思いを相手に伝えた方がいい。相手に自分の思いを知ってもらうことから距離は縮まるのだから」
「でもそれは時にさびしい結果を招く事もあります」
「かもしれないわ、でも私が何もしない間にその人が他の誰かの物になる、なんていうのだけは絶対に嫌なの」
ひょっとして……この人は他の誰かに取られるかもしれないからあんなにも捻じ曲がるほどストレートな事をしていたんだろうか?
アリスさんを疑うのもそんな理由ですか? だとしたらそれは凄く馬鹿ですよ?
「そんなお馬鹿な咲夜さんに一つアドバイスをします」
「……謹んで聞かせてもらうわ」
「咲夜さんの心配は全く無駄な心配です。なぜなら――」
そう、全く必要ない心配。
「なぜなら?」
聞き返す咲夜さんに、私は持てる限りの笑顔で答えたと思う。
「その人が咲夜さん以外の物になるなんてありえないからです」
それはあの日、力の篭ってないナイフを受けた時から決まっていたこと。
「その人は、完璧で瀟洒で他人にも自分にも厳しい咲夜さんが大好きで、ずっと憧れてるんですから」
咲夜さんよりもずっと長いこと思い続けてきたんですよ。
「だから常に完璧で瀟洒でいてください」
それが私から咲夜さんにするアドバイスで、お願いでもあります。
「ありがとう、美鈴。少し……いえ、かなり参考になったわ」
「どういたしまして」
不意に咲夜さんは立ち上がり背を向ける。
「それじゃ、私は行くから。まだ仕事少し残ってるし」
「いいんですか? こういったいい空気の時に距離を縮めるのが完璧で瀟洒だと思うんですが」
正直、今このタイミングで完璧で瀟洒な咲夜さんに迫られたら受け流す自信がまるっきり無いです。
「いいのよ。だって人前で涙を流すなんて、完璧でも瀟洒でもない姿を見せるわけにはいかないから」
「そうですか、では次の機会に期待しています」
「そう長くは待たせないわ。機会なんて待つものじゃなく作る物だから」
「それでこそ完璧で瀟洒です。惚れ甲斐があります」
そうして姿を消す咲夜さん。それを見届けてから今の会話を思い出す。
うわ、私勢いに任せてもの凄く恥ずかしいこと口走ってません? って言うかこれ告白って思われてもおかしくないですよ? いや、まあ半ばそのつもりで口にしたんですけど、なにが急に距離を縮めすぎですか、それは私の方じゃないですか、そして最後に惚れ甲斐がありますとか言っちゃてるし。
これが私の夜の出来事。
それから仕事を終えた私は頭を悩ませながらシャワーを浴びベットに入る。
明日、咲夜さんの顔を直視できるだろうか? 多分出来ない。ああ、でもいつも通り変態的な咲夜さんだったら私もいつも通り受け流せるだろうけど。って違う、あの変態的な咲夜さんが異常であって普段の咲夜さんは完璧で瀟洒なはずだ。多分、きっと、そうだったらいいなぁ。
そうして私は眠りに付く、明日から完璧で瀟洒でかっこいい咲夜さんでありますようにと願って。
「そうやって眠りに付いたはずなんですけどねぇ……こんな形で咲夜さんの顔を見ることになるとは思いませんでした」
「なにが起こるかわからないから生きるとは面白いことだと思わない?」
突然やってきた体の違和感に私は目を覚ます。そこは眠っていたはずの私の部屋ではなく恐らく咲夜さんの部屋、そのベットの上に下着姿で鎖に縛られてる私、そして私に跨る咲夜さん。
「咲夜さん、出来れば当たって欲しくない考えなんですけど、これって夜這いですか?」
「話が早いわね。我ながら完璧で瀟洒な手並みだったと思うわ」
ただ単に時止めて私をひん剥いて鎖で縛ってここまで拉致っただけでしょう。
「咲夜さん。私のアドバイス、もう忘れちゃったんですか?」
「憶えてるに決まってるじゃない」
じゃあ意味を理解していなかったとしか思えません。
「私はね、こう考えたの。その子が私以外の物にならないと言うのなら、逆に考えればいつかは私の物になる。ならそれは早いほうがいいじゃない?」
やっぱり意味を理解していなかったようです。しかも勘違いまでしています。
「私、相手の気持ちを考えず無理やり襲っちゃう咲夜さんは大嫌いです」
「ふ、美鈴。ここまで来てしまった以上、私も引けないわ」
ついには開き直りましたよ? これはちょっと本気で怒ってもいいんじゃないんでしょうか。
「そうですか。そんな聞き分けの無い咲夜さんは少しお仕置きです」
「あなたこそ、置かれた状況を見て諦め――」
私はそんな咲夜さんの言葉を無視し、体をくねらせ鎖から抜け出す。
「……ただのロープじゃ力ずくで引きちぎるだろうから鎖にしたんだけど、こんな縄抜けなんて……奇術師の二つ名はあなたに譲るわ」
「いえ、結構です。手品でもなんでもなく、ただあちこちの関節を外して抜け出ただけですから。それより覚悟はいいですか?」
私は全身の関節をはめ直し、拳を軽く握る。
「それじゃあ最後に、いつだったら素直に夜這いを受けてくれる?」
「知りません」
私は拳を思い切り咲夜さんへと突き出す。咲夜さんは咄嗟に目を瞑る。
「んっ……」
でも、その拳は咲夜さんの鼻先すれすれ、それ以上先に進むことは出来なかった。
つくづく私は馬鹿だなと思う。ここでちゃんと叱らないから咲夜さんは変わらないんじゃないかと思っているのになぜか出来ない。
だって、それが咲夜さんに憧れた理由だから。ちゃんと人を叱れる咲夜さんに憧れた理由だから
そして咲夜さん目を開き、目の前にある私の拳を不思議そうに見つめる。
私は咲夜さんと違ってそんなに厳しくなることは出来ない。
でも、その違いを直そうと思ったことも無い。なぜなら、直してしまったら咲夜さんに憧れる理由がなくなってしまう。
私は咲夜さんに憧れていたいから。
「咲夜さん、これに懲りたらもうこんな――」
「美鈴! 優しいのね。その優しさはやっぱり愛ゆえに来る物なのうきゃぁぁ!」
やっぱり我慢できませんでした。私は突き出した拳をそのままでこピンに変え、咲夜さんを吹っ飛ばした。
「私、人の話を聞かない咲夜さんは大嫌いです」
やれやれと息づきながら、気を失った咲夜さんの下へ歩み寄り抱きかかえ、そのままベットへと投げ捨てる。
「これでよしと」
自分を襲ってきた相手をわざわざベットへ入れてあげるとは、本当に私は厳しくなれない。
さて、さっさと自分の部屋に帰って寝るとしますか。明日からもこの人の相手しないと行けませんし。
「ん……んん……」
咲夜さんがうなされ気味なのとその真っ赤に腫れあがったおでこはきっと無関係でしょう。
「う、ん……美、鈴」
「……」
「お願い、ずっと……一緒に」
私は、本当に厳しくなれない。
「いますよ、一緒に。今も、これからも」
咲夜さんの前髪をかき上げ、真っ赤なおでこをなでる。
「美、鈴……」
ほんの少し咲夜さんの顔が安らいだように見える。
でもずっとこうしてるわけにもいかないですから、今日はこれで我慢してくださいね。
こうして私は部屋を出た。最後にそっとそのおでこにキッスをしてから。
これが私の深夜の出来事。
「ねぇパチェ、最近本格的に咲夜が私のことを蔑ろにしている気がするんだけど」
「そう、大変ね」
「パチュリー様、その反応は冷たすぎるのでは……」
「小悪魔。あなた、私のこと心配してくれるの? 嬉しいわ、あなたのような子が近くにいてくれて」
「大げさですよ、お嬢さま」
「で、具体的にはどんな感じなの? 咲夜は」
「そうね、まず今日はティーパックの紅茶を出されたわ」
「お嬢さま、そういう時は私を呼んでください。一応、紅茶くらいは淹れれますから」
「あなた、本当にいい子ね。どう? 私の専属にならない?」
「レミィ。その子は私のよ、あげないわ。それと咲夜のことは本来、貴方達の問題だから私が口を挟むべきではないと思うけど、たまには叱らなくちゃダメよ?」
「そうね、ありがとう。パチェ」
「そうですよ。何かあったときは私がパチュリー様とお嬢さまのお世話をこなして見せますから」
「小悪魔、あなたって本当に――」
「レミィ、あなたはまず小悪魔のそれが優しさではなく哀れみだと気づきなさい」
「さすがパチュリーね。基本である長女受けを守りつつ、状況に応じて攻守を目まぐるしく変えていく事で読者を飽きさせない。見事ね」
「何してんだアリス」
「ま、魔理沙! あなたいつも唐突に現れるわね!」
「それよりアリス。またパチュリーの所行ってただろ」
「え、ええ。最近はよく本を借りに……」
「なぁ。私といるより、本を読んでるほうが楽しいか?」
「ま、魔理沙? 何を言って――」
「だってそうだろ! いつも私から強引に誘わなきゃ何もしないじゃないか!」
「お、落ち着いて魔理沙。それとこれとは別の――」
「ああ、そうさ! 別の話さ! そんなのわかってる!」
「ま、魔理沙……」
「わかってる、頭じゃわかってるんだ。でも、お前を前にすると止められないだ……」
「魔理沙。あなたがそこまで考え込んでるなんて……」
「そう、止められないんだ、感情を、思いを……」
「ごめんなさい、私が悪かったわ。あなたの思いに気づかず……」
「ああ、そうだ。お前が悪い、だから責任とって貰うぜ」
「ええ、私が悪いわ。だから好きにして…魔理沙の好きな様に」
「当然だ、泣いても許さない。お前が私しか見れなくなるまで……」
ということでニヤニヤしながら読ませていただきました。
あと、被るとアレなので既刊一覧とかあるといいかもです。
そんな私は『古きカミのマツリ ~絶倫無双オンバシラー』とかいう某仏国書院みたいなタイトルを推してみますがあれどうしましたすw(ケロ
瀟洒な咲夜さんと変態的な咲夜さんの按配がいいですね。上手い!
魔理沙(&アリス)の話はサイドでも一本でも氏の書きやすい方で。
どちらでもdokoでも嬉しいです。
それでは『博麗家の巫女と境界少女 ~歪な愛と身代わりの愛~』とかw
なんでそうビーンボールばっかり投げるんだ。
直球ど真ん中で勝負をかければ美鈴は恋心というバックスクリーンまで特大の一発を打ち返してくれるだろうに。
『小悪魔と小さい悪魔 ~哀れみでも構わない~』
『従者と門番』一章 逆転する昼夜、二章 奪われる思い、三章 堕ちていく二人
『白黒と七色の魔法使い』一章 操られる人形遣い、二章 壊れ行く魔法使い
『吸血姉妹と魔女』一章 始まりの宴、第二章 砕けたプライド
『庭師と兎』一章 狩る者と狩られる者
『紅白と蒼白の巫女』一章 混じり合う赤と青
『乱れる虹の川』
既刊のサブタイトルなんかも募集しています
完璧で瀟洒な変態に改名したらどうだ?wwww
ってか自重しようぜ咲夜さんw
僭越ながら一つ『宵闇に散る巫女 ~貴女は食べても良い人間?~』なんていかがでしょう?
パロディチックに書いていただけると嬉しいです。
しかし・・・
美鈴さん大変だな~、色々と・・・
おぅ、お嬢様も忘れてた・・・。(笑
ネタ切れでしたかパチュリー様。
『新聞記者と下っ端哨戒天狗~手抜き戦の制裁~』なんていかがでしょ?
ところでラングドシャじゃなかったでしたっけ?
うん、ここまで壊れたメイド長を見るのも久しぶりだwww
で、パチュリー先生にネタ提供をば。
「マヨヒガデイズ―――藍様、中に何も居ないじゃないですか―――」
新刊のタイトルは既に幾つか提供されているようなので、既刊のサブタイトルをば。
『吸血姉妹と魔女』
姉妹の絆 ~ クランベリートラップ
ブラインドベットはコイン1枚
フォーオブアカインド
目覚めるワイルドカード
ファイブオブアカインド
ショーダウン ~ 吸血姉妹と魔女
ノーリミットゲーム
ってことで-50点+小悪魔カワユス病の10点を加えてこの点数です。
新刊のタイトルですか…
「永遠の恋物語」(輝夜×妹紅)
「溶ける氷精 -あぁっ!あたいとけちゃうようっ!-」(妹紅×チルノ)
「CAVED!!」一巻:鳳凰の舞(妹紅) 二巻:幼女の悲鳴(阿求) 連載中。(慧音×誰か シリーズ物)
「おなかがすいた幽々子様」一巻:虹の味はいろんな味(虹川三姉妹)二巻:神様踊り食い(神綺×諏訪子×神奈子) 連載中。(幽々子×誰か シリーズ物)
「封じられたもの」(ルーミア×フランドール)
これくらいでしょうか。
けど、咲夜さんは変態でも可愛いよ。そして美鈴かっこいいよ
巫女もので 「暴かれた聖域」「神楽」
吸血鬼で 「落ちる月」
なんていかがでしょう?てか他の人うますぎる。
とりあえず、がんばれ美鈴w
~あの子は渡さない~
~彼女は返さない~
~小悪魔の想い~
~三匹の魔~
壊れた友情は 情へと姿を変え、小悪魔は決断を下す
勢いで考えた。反省はしていない。
タイトル・サブタイトルよりも、紹介文の方にやたら時間掛かった
では僭越ながらパチュリー先生にネタを少々。
『骨まで愛して』幽々子×みすちー
『西行寺万華鏡』妖夢×幽々子
『隙間に堕ちる』紫×だれでもw
つ 『淫れ桜 ~みょんな庭師と反魂蝶~ 』
つ 『個人授業 ~満月の夜に~ 』
~紫*第14代目霊夢・第15代目霊夢~
人間と妖怪との時間の流れは違えど、思い出や想いは次の代に紡がれるのでしょうか?
超長編「紫物語」第一章 八雲藍 第二章 初代博麗 以下続巻
「厄を求めて… 鍵山雛乱れ旅」
「神綺さまたくましいなw」
「隙間に咲く向日葵 夜の幻想郷最強は誰か!?」
「風神録X-rated そそり立つ御柱」
「ケロちゃん児ポ法にも負けず」
とかどうでしょう?w
他の甘いカプも出てくるのか少し楽しみです。
タイトルなら
紅白と蒼白の巫女「巫女神交」とか。
えーりん×鈴仙で「望月のレッスン-教えて師匠」などはいかがでしょう?
『花の蜜を吸う蟲』
『宵酔の蜜月』
『語られざる諏訪の戦い』
『さぁ、狂いましょう』
『遅効性の淫毒』
『乱れの秋』
どんどんタイトルが思い浮かぶ俺はもう駄目だな。
なにをするだァー!を思い出した
紅白と蒼白の続きが気になります!!
何ていうか…好みが出るなあ。
マリアリは甘く、さくめーは……www