「まるで犬ね」
人に呼ばれて、怒りを覚えた
人に呼ばれて、諦めた
敵に呼ばれて、不敵に笑った
主に呼ばれて、微笑んだ
彼女は、まるで犬だと――そう云われている
犬、即ち家寝
主の家で寝るモノ
主に尻尾を振って生きるモノ
主に忠義を尽くすモノ
友であり、従者
慕い、尊敬している主が居る
彼女のために、完全であろうとしてきた
そして、これからもそうするであろう
完全で瀟洒な従者なのだから
それが、運命であるかのように
人ではない、別の生物であると錯覚させる程に
奇妙なまでに、彼女は従者だった
従者としての彼女には、ぴったりの呼び名と言う者も居る
だがしかし、犬と呼べば彼女は怒る
……当然だ
犬と呼ばれて喜ぶ人間は少数だろう
犬畜生と言う様に、人間は犬を人に劣る存在だと云う
それは、相手を下等な存在であると侮辱すること
そして、その主人をも侮辱する行為に他ならないのだから
まるで犬だと――そう言われて、怒りを覚えた
この、野良犬めと――彼女は云われたた
野良犬、それは野生化した家犬
野良犬も野犬も違いは無い
どちらも同じ家犬
ただ、狩場が違うだけ
街か、山か……ただ、その違いだけ
薄汚れた牙を持つ、それだけのモノ
不思議な力が在った
ただ、在った
当たり前のように在ったため、それが特殊なモノだとは知らなかった
ただ、そこに在った
だから、使った
無知で無邪気な子供だったのだから
時間を操る
それが、在ったモノ
今でこそ
今でこそ、その方向、加減を制する事が出来る
だが、無知で無力な子供だった
考えもせず、それを使った
考えることなど必要無かった
それは、転がっていた筆で落書きをする行為と
それは、夜になれば眠る行為と
それは、手足を動かす行為と
一体、どれほどの違いが在ったというのか
花が咲いた
雛鳥は卵を産み落とし、人は土塊となった
父の大切にしていた銀時計は、時を刻んだ
螺旋が切れるまでただ、刻み続けた
銀時計の、時間を
気付けば、私の周りには誰も居なかった
父も、母も、誰も
だが、生きていた
生きようとした
理由はない
生きるため、生きていた
盗みを繰り返した
その頃には、力の方向性を操作出来たはずだ
捕まった記憶が無いのだから
薄汚れた彼女にはぴったりの呼び名だと言う者が居た
何度も、何度も、そう言われた
好きで野良犬になった訳では無いのに
これは運命なのだ
捨てられたことも、こうして生きていることも
そうでなければ、捨てられた理由など分からなかった
まるで犬だと――そう言われて、諦めた
彼女は、まるで山犬だと――そう、云われていた
山犬、正しくは豺。転じて病犬
一見、狼にも見える獰猛な犬
家犬とは違う、真の狩人
死の牙を持つ、大きな脅威
鬼を、狩っていた
別に、こうなることを望んだわけでは無い
ただ、気付けば、こうなっていた
狩りが、好きだった訳ではない
ただ、生活はできた
生きることが出来た
どうして、私はこうなったか
変えられぬ運命なら、考えたく無かった
狩りの間は、考えることなくそれに集中出来た
だから、鬼を、狩っていた
人を喰らう、鬼を
山犬は、人間の最大の脅威であった
その爪が、牙が、人間へ死を運んだ
その脚が、鼻が、人間へ喰らい付いた
逃げることも、倒すことも敵わぬ
山犬は、人間の最大の脅威であった
病犬を、人は恐れた
その牙は、必ず死を運ぶのだから
その瞳は、狂気に魅入られたモノだから
病犬を、人は恐れた
獲物を逃がさぬ彼女にはぴったりの呼び名だと云う者が居た
なるほど、彼女は狩人だった
彼女の刃は確実に死を運んだ
彼女の脚は決して獲物を逃すことは無かった
獲物を追う紅い瞳は、病犬の狂気を宿していた
まるで犬だと――そう言われて、不敵に笑った
彼女は、まるで子犬だと――そう言われた事がある
子犬、子供の犬
力なき存在
愛玩の対象
だが、
いつもと同じように、ただ、狩るだけだった
いつもと違ったのは、ただ、力の差だけだった
いつもと同じように、ただ、死が訪れるだけだった
何時もと違ったのは、ただ、訪れる相手が違うだけだった
つまり、そう思える程度には、運命と諦めていた
だから、それが私の最後の言葉
――仕方がないこれが運命だ、と
「運命?そんなの、私が触れれば曲がる程度の繊弱なモノよ
今の言葉によって、私が興味を覚えた様に、ね」
私をそう言って、見下した紅い、紅い瞳
私が立ち向かうことを諦めた存在
それを、繊弱と笑い飛ばす強い、強い力
恐怖。恐怖。恐怖。
狂気など、すでに消え去っていた
恐怖。恐怖。恐怖。
これが、恐怖か
死をも運命と諦めた時から、暫く忘れていた感情
これが、恐怖だったか
「まるで子犬ね」
月光を、その翼に受け、私を嗤う、小さく、巨大なモノ
その、美しい姿に気付いた
その、見下す瞳に気付いた
その、圧倒的力に気付いた
これが、恐怖などでは無いと
そう、これは、その有様への、憧れ
私は、それに、無意識に手を伸ばした
「なるほど、子犬ならば拾ってみるのも悪くない」
彼女にしてみれば、ただの気まぐれだったろう
捨てられた子犬を拾うことは
だが、少なくとも、私はこの日初めて運命に抗ったのだ
手を伸ばすことによって
微弱な運命は、方向を変えたのだ
この日、力なき子犬は誓った
主に対して、尽くす家犬になりましょうと
この日、力なき子犬は誓った
主の敵を、喰らう山犬となりましょうと
力なき子犬は、自ら運命を曲げた
だから、主は、誓いに答えた
「なら、紅茶の入れ方と言葉遣いの訓練から始めてちょうだい」と
十六夜咲夜は、
まるで犬だと――そう言われて、微笑んだ
「ええ、もう子犬ではありませんわ」と
人に呼ばれて、怒りを覚えた
人に呼ばれて、諦めた
敵に呼ばれて、不敵に笑った
主に呼ばれて、微笑んだ
彼女は、まるで犬だと――そう云われている
犬、即ち家寝
主の家で寝るモノ
主に尻尾を振って生きるモノ
主に忠義を尽くすモノ
友であり、従者
慕い、尊敬している主が居る
彼女のために、完全であろうとしてきた
そして、これからもそうするであろう
完全で瀟洒な従者なのだから
それが、運命であるかのように
人ではない、別の生物であると錯覚させる程に
奇妙なまでに、彼女は従者だった
従者としての彼女には、ぴったりの呼び名と言う者も居る
だがしかし、犬と呼べば彼女は怒る
……当然だ
犬と呼ばれて喜ぶ人間は少数だろう
犬畜生と言う様に、人間は犬を人に劣る存在だと云う
それは、相手を下等な存在であると侮辱すること
そして、その主人をも侮辱する行為に他ならないのだから
まるで犬だと――そう言われて、怒りを覚えた
この、野良犬めと――彼女は云われたた
野良犬、それは野生化した家犬
野良犬も野犬も違いは無い
どちらも同じ家犬
ただ、狩場が違うだけ
街か、山か……ただ、その違いだけ
薄汚れた牙を持つ、それだけのモノ
不思議な力が在った
ただ、在った
当たり前のように在ったため、それが特殊なモノだとは知らなかった
ただ、そこに在った
だから、使った
無知で無邪気な子供だったのだから
時間を操る
それが、在ったモノ
今でこそ
今でこそ、その方向、加減を制する事が出来る
だが、無知で無力な子供だった
考えもせず、それを使った
考えることなど必要無かった
それは、転がっていた筆で落書きをする行為と
それは、夜になれば眠る行為と
それは、手足を動かす行為と
一体、どれほどの違いが在ったというのか
花が咲いた
雛鳥は卵を産み落とし、人は土塊となった
父の大切にしていた銀時計は、時を刻んだ
螺旋が切れるまでただ、刻み続けた
銀時計の、時間を
気付けば、私の周りには誰も居なかった
父も、母も、誰も
だが、生きていた
生きようとした
理由はない
生きるため、生きていた
盗みを繰り返した
その頃には、力の方向性を操作出来たはずだ
捕まった記憶が無いのだから
薄汚れた彼女にはぴったりの呼び名だと言う者が居た
何度も、何度も、そう言われた
好きで野良犬になった訳では無いのに
これは運命なのだ
捨てられたことも、こうして生きていることも
そうでなければ、捨てられた理由など分からなかった
まるで犬だと――そう言われて、諦めた
彼女は、まるで山犬だと――そう、云われていた
山犬、正しくは豺。転じて病犬
一見、狼にも見える獰猛な犬
家犬とは違う、真の狩人
死の牙を持つ、大きな脅威
鬼を、狩っていた
別に、こうなることを望んだわけでは無い
ただ、気付けば、こうなっていた
狩りが、好きだった訳ではない
ただ、生活はできた
生きることが出来た
どうして、私はこうなったか
変えられぬ運命なら、考えたく無かった
狩りの間は、考えることなくそれに集中出来た
だから、鬼を、狩っていた
人を喰らう、鬼を
山犬は、人間の最大の脅威であった
その爪が、牙が、人間へ死を運んだ
その脚が、鼻が、人間へ喰らい付いた
逃げることも、倒すことも敵わぬ
山犬は、人間の最大の脅威であった
病犬を、人は恐れた
その牙は、必ず死を運ぶのだから
その瞳は、狂気に魅入られたモノだから
病犬を、人は恐れた
獲物を逃がさぬ彼女にはぴったりの呼び名だと云う者が居た
なるほど、彼女は狩人だった
彼女の刃は確実に死を運んだ
彼女の脚は決して獲物を逃すことは無かった
獲物を追う紅い瞳は、病犬の狂気を宿していた
まるで犬だと――そう言われて、不敵に笑った
彼女は、まるで子犬だと――そう言われた事がある
子犬、子供の犬
力なき存在
愛玩の対象
だが、
いつもと同じように、ただ、狩るだけだった
いつもと違ったのは、ただ、力の差だけだった
いつもと同じように、ただ、死が訪れるだけだった
何時もと違ったのは、ただ、訪れる相手が違うだけだった
つまり、そう思える程度には、運命と諦めていた
だから、それが私の最後の言葉
――仕方がないこれが運命だ、と
「運命?そんなの、私が触れれば曲がる程度の繊弱なモノよ
今の言葉によって、私が興味を覚えた様に、ね」
私をそう言って、見下した紅い、紅い瞳
私が立ち向かうことを諦めた存在
それを、繊弱と笑い飛ばす強い、強い力
恐怖。恐怖。恐怖。
狂気など、すでに消え去っていた
恐怖。恐怖。恐怖。
これが、恐怖か
死をも運命と諦めた時から、暫く忘れていた感情
これが、恐怖だったか
「まるで子犬ね」
月光を、その翼に受け、私を嗤う、小さく、巨大なモノ
その、美しい姿に気付いた
その、見下す瞳に気付いた
その、圧倒的力に気付いた
これが、恐怖などでは無いと
そう、これは、その有様への、憧れ
私は、それに、無意識に手を伸ばした
「なるほど、子犬ならば拾ってみるのも悪くない」
彼女にしてみれば、ただの気まぐれだったろう
捨てられた子犬を拾うことは
だが、少なくとも、私はこの日初めて運命に抗ったのだ
手を伸ばすことによって
微弱な運命は、方向を変えたのだ
この日、力なき子犬は誓った
主に対して、尽くす家犬になりましょうと
この日、力なき子犬は誓った
主の敵を、喰らう山犬となりましょうと
力なき子犬は、自ら運命を曲げた
だから、主は、誓いに答えた
「なら、紅茶の入れ方と言葉遣いの訓練から始めてちょうだい」と
十六夜咲夜は、
まるで犬だと――そう言われて、微笑んだ
「ええ、もう子犬ではありませんわ」と
せめて中華を食わせてやってくださいな。
文章がちとくどいかなとも思いますが、それもまたこの小説の味。そう思って読めました。
あなたは書くなといわれても書きまくってどんどん力を蓄えていけると思いますよ?
その方がたくさんの作品見れて私もうれしいですし。
それにしてもこの中国、大トラである
虎と吸血鬼の組み合わせってどうだろ?
才能が無いって事はないと思いますよ?
正直、本当にひどい文章ってのは感想が付かないくらいだと思いますし。
吸血鬼の僕といえばわーウルフと多胎がーですし