Coolier - 新生・東方創想話

友達のつくりかた

2007/11/24 12:54:41
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そもそもの始まりはアリスと魔理沙が偶然に魔法の森で出会ったことだ。
正確には最近全く会いに来てくれない魔理沙をアリスが上海を使って監視し、ちょうど森で会えるように待ち伏せしていたので決して偶然ではなかったのだが、少なくとも魔理沙はそう感じたはずだ。

幻想郷は今ちょうど秋。
そろそろ魔理沙が森にあるキノコの収穫に乗り出すことを見越して、アリスはチャンスを待っていたのだ。
偶然を装い森で出会い、折角だからと家に招きいれてお茶、食事ともてなして、その時に2人っきりのお出掛けに誘う。
今まで何度もそれとなく誘おうとしたのだが、恥ずかしくて言い淀んでいるうちに途中で邪魔が入ったり、魔理沙が急いでいるからと飛んで行ってしまい失敗してきた。
それだけに今回にこめる意気込みは強かった。
今までの失敗を繰り返さないように何度も上海、蓬莱を相手に練習を重ねてきたのだ。


「よう、森で会うのは久しぶりだな。なにやってたんだ?」

久しぶりに聞いた魔理沙の声。魔理沙から話しかけてきてくれたことにアリスは内心とても喜んだが、それを隠すように落ち着いた声で魔理沙に答えた。

「特にこれといって用事はないわ。ちょっとした気分転換よ。魔理沙は何してるの?」
「ん、私か? キノコ狩りだよキノコ狩り。まとめて収穫してやろうと思ってな」

予想通りの展開に思わず笑みを浮かべるアリス。練習どおりに次の言葉を返す。

「そうなの?
ねぇ、折角久しぶりに会ったのだから、たまには家によってお茶していかない?
キノコ狩りならまた明日でも出来るでしょう?」

よし、言えた。
練習中に何度も失敗したセリフを無事に言い終えたアリスは成功を確信した。
2人で家の中にさえ入ってしまえばとりあえず多少のミスは上海達がカバーしてくれるし、邪魔者も絶対に来ない(魔理沙が家に入ったと同時に、一部の人形達に警戒に当たるよう指示してある)。
お茶はもちろん最高級のものを用意してあるし、食事にも魔理沙の好物を用意した。失敗はありえない。
ついに今までの苦労が報われると、笑顔でいっぱいのアリス。


そんなアリスに対して魔理沙は少し悩んだ後、今までの努力を全て無にする言葉をアリスにかける。

「そうだな。急に押しかけるのも悪いし、明日また2人で改めてキノコ狩りをしよう。
気分転換するんだったら、普段と違うことをやったほうがいいぜ。
なぁに、心配するなよ。道具とかは全部私が用意するからさ。
たまにはそういうのもいいだろ?」



…あまりのことにアリスの思考は一瞬停止した。
どうして自分は気分転換だなんて言ってしまったのだろう。それまでの笑顔が一転して悲しいもの変わっていく。


そして、そんなアリスを見た魔理沙は驚いた。
魔理沙はただアリスのためを思って言ってみただけなのだ。
普段気分転換などで森に入らないアリスが、しかも自分を積極的に家に誘ってきたことなどなかった。
何が原因かわからないが、きっと何か悪いことがあったのであろうことはわかる(良いことならアリスはそのことを自分に自慢げに話しているはずだ)。
そこで魔理沙はそれを忘れられるぐらい、アリスを気分転換させてやろうと思ったのだ。
笑顔で自分を誘ったのは、アリスが弱気なところをまだ見せたくないからだろうと勘違いしていた。

客観的にいえばそれはかなり強引だし、ひとまず話を聞いて相談に乗るといった選択肢もあったはずである。
たが魔理沙は、この程度のことは強引だなんて思っていなかったし、相談に乗るなんてことは頭になかった。
彼女の頭には元気に立ち直り、恥ずかしそうに自分に御礼を言うアリスがあったのだ。
自分の言ったことがアリスを悲しませるなんて思っていなかった。



一瞬遅れてアリスは自分の動揺が魔理沙をかなり驚かせていることに気づいた。
まだ少し頭はパニック状態だったが、急いで現状の整理をはじめる。

魔理沙はどうやら自分の提案を私が喜んで受けると思っていたらしい(でなければあそこまで驚かないだろう)。
今の状態から再び家にお茶を招待するのは少々無理がある。いくら自分が歓待しても魔理沙を混乱させるだけだ。
つまり、今の自分には魔理沙の提案を受け入れるか、気まずいまま分かれるかしか選択肢が残っていない。
もしこのまま別れたら次回いつまた会えるかわからないし、(自分が)笑って会えるかどうかもわからない。
逆に魔理沙の提案を受け入れれば少なくとも明日はまた会えるし、その時も魔理沙のことだから笑って自分のことを受け入れてくれるだろう。
今までの準備が無駄になったのは残念だが、それはこの際仕方ない。
それよりも明日のことは魔理沙から自分を誘ってくれているのだ。
あの魔理沙が私を……。

ここまで考えてさっきまでの悲しい顔から再び笑顔いっぱいになるアリス。
恥ずかしさのあまりアリスは少し赤くしていたが、軽く深呼吸をしてゆっくりと魔理沙に話しかける。

「ありがとう、魔理沙。じゃあ、明日はお願いね。
私、そうことほとんどやったことないから足引っ張っちゃうかもしれないけど、がんばるからいろいろ教えてね。
それと、道具とか任せちゃうけど、そのかわりご飯は私が作ってくるわ。
うまくできるかわからないから、あんまり期待しないでね。
時間は今日と同じでいいでしょ?
じゃあ、明日は楽しみにしているから。」

アリスはさっきまでとの急変にとまどいながらも頷く魔理沙を見ると、すぐに家に帰ってしまった。
急に悲しそうな顔をしたと思ったらまた笑顔になって、なんだかよくわからないが、とりあえず自分の提案は受け入れられ、アリスが喜んでくれたことを理解した魔理沙も家に帰った。




~アリス帰宅後~

「ちょっとみんな聞いて、魔理沙があたしを明日デートに誘ってくれたの。
予定していたお茶とお食事は中止になっちゃったけど、そのかわり明日のお弁当は私が
作ることになっているから、そこでの練習になったと思えば決して無駄じゃないわ。
あ、ここまでこれたのは本当にみんなのおかげよ、おりがとう」
  
一人で帰ってきたと思ったら急に魔理沙とのことを上海達に語りかけるアリス。
なんだかアリスが興奮していてよくわからないが、少なくとも今アリスが幸せいっぱいで、自分達に笑いかけてくれていることはとても嬉しいと感じる上海達だった。






                   翌日


「へ~、なるほどねぇ」
普段は魔道書を読んだり人形製作に勤しんでいるアリスは、昨日借りてきた1冊の本を手にずっと関心の声を上げながら読んでいた。
ちなみにこの本は紅魔館のパチュリーから借りてきたものだ。
本のタイトルは「おいしいキノコの見分け方」
普段のアリスには絶対に必要のないものである。
アリスが調べているのは別にキノコが急に大好きになったわけでも、人形の研究に活かすためでもない。
全ては今日の魔理沙とのお出掛けの為である。

昨日の去り際にアリスはキノコに関して自分が素人であることを魔理沙に伝えてはいるが、好きな人の前であまり恥はかきたくない。
付け焼刃でも最低限のことを知っておこうと思って借りてきたのだ。
本を読んでみてわかったが、キノコというのは基本的に毒をもっているものと、そうでないものとの区別がつきにくい。
はっきり言って、素人が1日調べて区別できるようになるのは不可能である。
勝手な判断でお互いの健康を害する事態は避けたいので、実際に狩りをはじめる前に魔理沙の説明をしっかり聞こうとアリスは心に決めた。
ただ、本の中には興味深いものも載っていた。アリスはそのページを何度も読み返し、静かに笑った。



アリスにとっての今日の目標は別にたくさんの食用キノコをとることではない。
もちろん楽しめるようにキノコ狩りの努力はするが、第1目標は別にある。
そう、アリスの今日の1番の目標は魔理沙と仲良くなることである。
もっと自然に魔理沙と話をできるようになりたいし、もっとたくさんの時間を魔理沙と過ごしたい。
2人でどこかに出かけたり、お互いの家で一緒にご飯を食べたりもしたい。
たまにはお泊り会なんかもして、夜遅くまでいろんなことを話し合う。
もちろん眠るときは2人で同じベッドに入る。


アリスは顔を赤くしながら都合の良いことを想像しながらも、手は着々と料理を完成させ、お弁当箱に詰めていく。
シンプルなお弁当箱に色とりどりの料理と、仕上げのデザートが添えられる。
アリスは出来上がりに満足したのか、まだ妄想から抜け切っていないのか満面の笑みを浮かべ最後の準備に取り掛かった。
上海達にお留守番をお願いした後、鏡の前で髪や服装のチェックをし、忘れずに水筒とお弁当を持って家を出る。



約束の時間よりも早く到着したアリスは深呼吸し心を落ち着けると静かに魔理沙を待った。
ほどなく魔理沙は箒にたくさんの道具をつめた袋と大きな籠を括りつけて飛んできた。

「アリス、お待たせだぜ」
「いいえ、今来たところよ。
それよりその荷物ちょっと多くない?」
「ん、そうでもないぜ。
なんせ今日は2人分だからな。
たくさんとって、夕食は家でキノコ料理をお前に食わせてやるぜ」
「え…、ほ、本当。
で、でも良いの? 食べても?
魔理沙の大事な食料なんでしょ?」
「なに言ってんだ、良いに決まってるだろ?
キノコはこの時期またすぐに生えてくるし、この森の中には食べられる奴が多いから困ることなんかないぜ。
それに、自分で取った奴を食べるのもなかなか良いもんだ。
せっかくとったのなら、しっかり最後まで責任とらなくちゃな」
「わかったわ。せっかくだしね。
じゃあ、そろそろはじめましょう?」
「OK。じゃあ、簡単に説明するぜ」

キノコ狩りをするに当たって基本的なやり方と、どのキノコを採るのかといったことを丁寧に説明する魔理沙。
もちろんアリスは真剣な表情でそれを聞いていたが、頭では同時に別のことも考えていた。

ど、どうしよう。魔理沙のほうから夕食によんでくれるなんて。予想よりかなりの急展開だわ。
でも、せっかく廻ってきたチャンスなんだから活かさなきゃ。だいたい私は採ったキノコをどうするかあまり考えていなかったし。
この際、魔理沙と一緒に食事をするだけじゃなくて、帰り際にまた今度食べさせて欲しい、とか言って次回の約束をお願いすれば魔理沙の家に行く機会が増えるわ。
当然私がお礼に家に魔理沙を招待するのも不自然ではなくなる。そうやってだんだんと一緒の時間を増やしていけば、きっと魔理沙との中も今よりもっと良くなるに違いない。

…ん? それに確か魔理沙は最後まで責任取らなくちゃ、と言っていた。
今日は魔理沙から私を誘ってきたのよね‥‥
もしかしたら、もしかして私まで食べられちゃうかもしれない。
ど、どうしよう。将来的にはそうなるかもと思ったことはあるけど、それはまだまだ先のことだし、ほとんど考えてこなかった。
でも、嫌ってわけじゃないわ。魔理沙は大好きだし。
でも、やっぱりまだ受け止められない。まだ早いと思うのよ。
魔理沙もきっとわかってくれる。そうよ。きっと大丈夫だわ。でも、万が一それがもとで嫌われちゃったらどうしよう。
 


アリスの頭の中ではどんどん妄想が広がりループにはまって大変なことになっていたが、それでも魔理沙の説明をしっかりと聞いていた点はさすがである。

魔理沙はアリスがしっかりと説明を聞いて理解しているようなので、地面に生えているキノコのとり方を実演で見せた後、とったキノコを入れる籠をアリスに渡した。

「な、簡単だろ。今が1番の収穫時期だからここら一帯には山ほどあるんだ。
2人で手分けしてとるから、わからないやつがあったら言ってくれ。
ずっと同じところでとってもつまらないだろうから、しばらくしたらまた別のところに採りにいこう」
「ええ、わかったわ。
じゃあ、私はこっちをとるから魔理沙はあっちね」
「よし、はじめるぜ」

アリスは魔理沙が用意してくれた軍手を着けてゆっくりとキノコ狩りをはじめた。
どうやらここ一面に広がるキノコはどれも食用らしく、安全らしい。
頭の中で嵌っていたループからようやく抜け出せた(夜まで時間があるし、深く考えると怖いので無理やり考えないようにした)アリスは、籠にとったキノコを入れながらチラチラと自分の周りにある木の高さを確認していた。
アリスは探しているのはキノコである。もちろん今自分が採っているものではなく、特別なものである。
昨日パチュリーから借りてきた本の中で見つけたもので、見た目が特徴的なので素人のアリスでも間違える心配はないが、なかなか見つからない。
もともと数が少ないものだと書いてあったので、そう簡単に見つけられるとはアリスも思っていないが、可能性がある以上は探してしまう。
そして見つけた後のことを考えると自然と笑みがこぼれた。
なぜそこまでしてアリスが探しているのかというと、本にはこう書かれていたのだ。

アイゼンダケ・・特に高い木の根元に生えるピンク色の食用キノコ。鮮やかな色が特徴。
          数が少なく、美味。俗説だが、2人で食べると恋人になれるという。




……欲しい。
これを見たアリスはすぐにそう思った。幸いなことに魔法の森は他に比べて特に高い木が生い茂ってできているので、可能性は十分ある。
俗説とはいえ、わざわざ本にまで載っているとなると効果もかなり期待できる。
呪いの心配もしたが、食用と書いてある以上、以前に食べた人は特に害を受けなかったのだろう(実際に手にとって見れば、危ないかどうかぐらい自分ならわかる)。アリスはそう判断し、アイゼンダケを見つけることを目標の中に加えていた。


アリスがそんなものを探しているとは知らない魔理沙は、木やキノコの周りをあちこち動き回り、時に笑顔を浮かべるアリスの姿を見て優しく笑った後、せっせとキノコを集めていた。







~2時間後~


「おーい、アリスー。
そろそろ移動するけどいいか?」
「いいわよ。任せるわ」

魔理沙は箒に紐で籠を括りつけて、アリスは魔法で浮かべてゆっくりと移動していく。
アリスの籠にはいくつかの種類のキノコが入っていたが、お目当てのピンク色のアイゼンダケはない。やはり見つからなかったのだ。

「さ、着いたぜ。荷物を降ろそう」
「え、ここで?」

2人が移動してきたのはちょうど小川が流れる少し開けた場所だ。風通しもよく、木が直射日光から守ってくれている。
地面も土ではなく上流から流れてきた石でできており、とてもキノコがあるとは思えない。

「動いたらお腹が空いたんだ。昼飯にしよう。
ここは涼しいし、自然の中での食卓も悪くないぜ」

魔理沙はそう言うと、そこらに転がっている石の中から大きめのものを椅子、テーブルがわりに見立ててアリスを呼ぶ。

「ほらほら、早く準備してくれよ。
私はアリスのお弁当を楽しみにしてたんだぜ」
「魔理沙………。
しょ、しょうがないわね、全くもう。
でも、私の繊細で上品な味付けがあなたにわかるかしら?」
「ふふ、いってくれるぜ。
そいつはぜひとも味わわせてもらわないとな」

軽口を叩いたアリスだったが、魔理沙が自分の為に昼食を早めてくれたことはわかっていた。
都会派魔法使いを自負しているアリスには、長時間の森での作業は少し堪える。
早めに食事休憩をしてくれた魔理沙に、アリスは心の中でお礼を言った。
 

「ふー、おいしかったぜ。
やるなぁ、アリス。お前和食も上手に作れたんだな」
「あ、当たり前でしょ。
私は和食だろうが洋食だろうが(あなたの為なら)なんでも出来るのよ」


アリスのお弁当は魔理沙に大変好評だった。
魔理沙は和食派であり、味付けもなかなかうるさい。出されたもの物は食べるが、不味いと思ったらそのまま不味いと素直に言う。
アリスが出した料理は魔理沙にとって満足いく出来だったのだ。もっとも、それは当たり前といえば当たり前である。
アリスはいつか自分の料理を魔理沙が食べてくれる日が来ることを信じて、魔理沙の好きな味付けを(上海達を使って)研究し練習を繰り返してきたのだから。
 
「ねぇ、魔理沙。この後どうするか決めているの?」
「ん? そうだなぁ。午前中でもう十分集まったからな、少しゆっくりしようぜ」
  
魔理沙はそう言うと別の大きい石の上に横になって、帽子を顔の上にのせた。
ゆっくりと昼食をとったが、まだまだ時間には余裕がある。

「そうね。たまにはのんびりするのも悪くないわ」

アリスは魔理沙の隣に腰を下ろしてしばらく風に当たっていると、魔理沙の寝息が聞こえてきた。
「私を放っておいて寝るなんて、何考えているのよ。
いろいろお話したかったのに」

アリスは小さな声で不満を漏らす。もっとも、食後にこの暖かい秋の気候と優しい風に当てられれば、眠くなるのも無理はない。
魔理沙を見ていたアリス自身、疲れもあってだんだんと瞼が重くなってきた。
「しょうがないわね。魔理沙もしばらくは起きないだろうし、私も少し眠るわ」
アリスはそうつぶやくと、そのまま眠ってしまった。










~3時間後~

「ん~、まだ寝てるのか。
起きろよー。もうすぐ夕方だぞ」
「う~……、魔理沙~」
「なんだ、まだ寝ぼけてるのか。」
しょうがないやつだなぁ、ほら」
「きゃあ。な、何するのよ!
もう少し優しく起こしてよ」
「なんだ、そんなに驚くなよ。
先に声かけたけど、起きなかったのはアリスだぜ」
「え、そうなの。
ご、ごめんなさい。ちょっと寝すぎたみたい。
まだ少しぼうっとしてて……」

魔理沙はアリスの身体を揺らして起こしたが、そんなに激しく揺らしたわけではない。
アリスが驚いたのは起きて目の前に魔理沙の顔があったからと、寝顔を見られたのが恥ずかしくて少し取り乱したからだ。
別に魔理沙が悪いわけではないが、顔を覗き込むのは心臓に悪いからやめて欲しいとアリスは思った。

「お前が寝てる間にあちこちからキノコを集めてきたぜ。
ほら、お前に夕食を御馳走してやるって言っただろ?
どうせなら色んな種類のものを使って作ってみたくなってな」

確かに良く見ると昼食時には籠の7割ぐらいしか入っていなかったが、今はほぼいっぱいである。大きさや色がばらばらなので、それぞれちがった種類のものなのだろう。
状況を把握したアリスは魔理沙に任せて寝ていた自分に落胆したものの、自分のために魔理沙が頑張ってくれた事が嬉しくて、魔理沙にお礼を言おうと口をあける。


「あ、その…… ありがとう、魔理沙。
私が眠っちゃったせいで、全部あなたに任せてしまったのね。
せっかく2人でやろうって約束したのに…… ごめんね、魔理沙。
怒った?」
「怒る? なんで? 怒るわけないだろ。
夕食のことを言い出したのは私だし、勝手にいろいろ探し回っただけなんだからさ。
アリスは十分午前中一緒にがんばってくれただろ? お弁当もおいしかったし、気にすることないぜ」
「そ、そう? そういってもらえると嬉しいわ。
…まぁ、私の料理がおいしいのは当然だけど、魔理沙の夕食も楽しみにしているのよ。
なんてったって、これだけの種類を使うんだ・・か・ら・」
 
新しく魔理沙が採ってきてくれたキノコを見ていたアリスは信じられないものを見つけた。
少し下のほうに埋まっていたが、籠の隙間から見えたピンク色は間違いなくアイゼンダケである。
午前中自分が必死になって探して見つからなかったキノコを魔理沙は見つけて採ってきていたのだ。
よく考えて見れば、魔法の森にあるキノコならば魔理沙が知っている可能性が高い。
でも、なぜ今ここにあるのだろう。魔理沙はあのことを知っているのか。知っていて今日の2人の夕食に出してくれるというのだろうか。
気づかない振りをすることはアリスにはできず、それとなく魔理沙に聞いた。

「……ねぇ、魔理沙。これってアイゼンダケよね。
その… これも今日の料理に使うの?」
「ん? アリス、お前なんでその名前知っているんだ?
これは数が少ないし、そんなに出回っているキノコじゃないだろ?
採ってきたんだからもちろん食べるさ。これは結構いけるんだよ。今日の料理にも使う予定だぜ」
「本当? 楽しみだわ。でもね、魔理沙。
もしかしたらなんだけど、そのキノコって何か特別な意味があったりしない?
いや、私が知っているわけじゃないのよ。私が知っているのは名前だけなの。
ただ、他のとは見た目がぜんぜん違うし、さっき数も少ないって言ってたじゃない?
もし知っていたらで良いから、話してくれないかしら?」
「ん~。私が知っているのは名前と食べるとうまいってことと、数が少なくて研究には向かなかったってことぐらいだぜ。むしろお前のほうが何か知ってるんじゃないのか?」
「私は本当に何も知らないわ。でも、そうなんだ。急に変なこと聞いて悪かったわね。」
「なんか気になるな。まぁ良いか。
そろそろ家に帰って準備したいから戻ろうぜ」

そう言ってまた荷物を箒に括りつけた。籠の中にはキノコがいっぱいなので、落とさないようにネットを張った。
魔理沙はアリスが何か知っていることに気づいたが、どうやら話したくないらしいこともわかった。後で2人で食べることに反対しなかったことから、身体に害があるわけでも呪いがかかっているわけでもなさそうだ。そもそも安全性については自分で一度確かめているし、特に気にしなくても良いかと追求するのをやめたのだった。

対してアリスはなんとか魔理沙からの追及を免れほっとしていた。危険(?)を犯して
なんとか魔理沙に確認をとったが、どうやら本当に知らないらしい。
魔理沙は自分の興味あることはとことん調べるが、興味がないものは放置するタイプだ。今回のような俗説的で根拠のないものまで調べようとは思わなかったのだろう。
安心した気持ちと残念に思う気持ちを抱えながら、アリスは移動の準備をした。




アリス邸

「ただいまー。みんなお留守番ご苦労様。」

すでに時刻は夕方。
途中、魔理沙に好きなものや嫌いなものを(すでに上海達から聞いて知っていたが)聞いたり、聞かれたりしながら楽しくゆっくりと飛んできたアリスは、魔理沙邸の前で荷物を降ろすと空になった弁当箱や水筒などの荷物をいったん家に置いてくるからと自宅に戻った。
魔理沙は魔理沙で夕食の前に部屋の片付けをやらなければならなかったし(2人が快適に食事するには部屋の空きスペースが少なすぎた)、準備に時間がかかるので一度わかれのだ。


「あのね、予想通り魔理沙は私のお弁当を喜んで食べてくれたわ。
それに今日この後、魔理沙の家で夕食に招待されてるの。
それだけでも十分嬉しいのだけど、難しいと思っていたアイゼンダケを魔理沙が見つけてきてくれて、今日一緒に2人で食べようって言ってくれたの。
魔理沙に聞いたら恋人になれるという話は全然知らないみたいだけど、知ってるかどうかなんて関係ないわ。
効果のほどはまだわからないけど、もしかしたら本当に魔理沙も私を好きになってくれるかもしれないじゃない?
そのためにも今日は大事よ。魔理沙はまだ夕食まで時間が結構かかるって言っていたし、下手に急いで行ったら急かしているみたいよね。
少し遅めに着くぐらいで間違いないわ。うん、きっとそう。
じゃあ、そういうことだからお風呂に入ってくるわね」 

帰ってくるなり魔理沙とのできごとをまくし立てたアリスは、さっさとお風呂に入ってしまった。
出迎えた上海達はいつもの(静かで冷静に淡々と研究を進める)アリスとのギャップに驚いたが、笑顔で魔理沙とのことを話してくれたアリスのことを考えると自然と笑みを浮かべ、アリスの服を用意した。

 


2時間後の霧雨邸


アリスは今魔理沙の家の玄関前にいる。
今日の態度から魔理沙が自分のことを友達として見てくれていることはわかった。
そして今、その先に進むための第一歩を自分は踏み出そうとしている。
魔理沙は霊夢やパチュリーなど友人が多いが、誰かを好きだという話はまだ聞いていない。
恐らく女同士で本気になるということを魔理沙には想像できないのだと思う。だがそれは自分にとってある意味好都合だ。
下手に警戒されるよりもずっとやりやすい。
アリスはゆっくりと深呼吸をして気合を入れた後、ドアをノックして部屋に入った。


「魔理沙、遅くなっちゃってごめんなさい。待たせちゃったかしら」
「いや、ちょうど出来上がるところだぜ。
あと少しだからそのへんで待っててくれ」

家の中にはまだいくつか魔道書の類が置いてあるものの、かなり綺麗に掃除されていた。
アリスはソファーに座って魔理沙の背中を見ながら、静かに待った。

「よーし、出来上がり。いっぱい作ったからな、遠慮せず食べてくれよ」
魔理沙が料理を食卓に並べてさあ食べよう、としたその時だった。




「魔~理~沙~~、見つけたわよ~~」
「げ、霊夢。
お前どうして───」
「どうして? 今どうしてって言ったの?
あなたを探しに来たに決まっているでしょう?
あたしとの約束を破ってあなたはアリスと楽しくお出かけしてたのね。
紫から聞いたわ。
おまけにこれから楽しく夕食? 
ふふふ‥‥、魔理沙、覚悟は良いかしら?」
「お、落ち着けよ霊夢。
約束を破ったのは悪かったぜ。
お前が怒るのもわかるが、この話はまた明日するってことで‥‥」
「はぁ? ふざけないでよ。
あなた自分が何したかわかってんの?
あなたが来なかったから私は‥‥」
「ちょっ、ちょっと待って。
どういうこと?
確かに魔理沙は今日私と出掛けていたけど、昨日魔理沙のほうから‥‥」
「あ、ばか。それは‥‥」
「魔理沙~~、どうやら1から説明してもらう必要がありそうね~」
「あ~、もうわかったよ。
ちゃんと説明する。だからその手に持っている霊符を離してくれよ」

魔理沙はしかたなく1から事情を霊夢とアリスに説明した。
魔理沙は以前から博麗神社の裏山にある食料集めの手伝いをする約束を霊夢としていたのだが、それが今日だったのだ。
魔理沙はアリスのことが心配で、霊夢のことはどうせ1人でも出来るだろうと、アリスを優先することにした。
だが霊夢にとって今の時期の食糧確保は冬を越すためにも、非常に重要なものである。
お賽銭による現金収入が少ないので、しっかりと食料を溜め込んでおかないと大変なことになる。
結局1人で裏山を飛び回り食糧確保は何とか出来たものの、怒りの収まらない霊夢は紫に魔理沙のことを聞いてここに飛び込んできたのだ。


「ま、まぁ結局なんとかなったんだし良かったじゃないか霊夢。
約束破ったのは謝るから許してくれよ。
ほ、ほら。今ちょうど夕食作ったところだし、ご馳走するぜ。
見たところ飛び回ってお腹空いてるんじゃないか?」
「駄目よ。それだけじゃあたしの怒りは収まらないわ。
ご飯はもちろん貰うけど、そのほかにも何かもらってくからね」

霊夢は席に着くと料理をどんどん平らげていく。よほど空腹だったらしい。
魔理沙は霊夢におかわりの世話をしながらアリスにすまなそうに視線を向ける。
アリスは笑顔で首を横に振り、魔理沙にだけ聞こえるように小さな声でありがとうと言った。
霊夢との約束よりも自分の心配を優先してくれたことが、アリスには本当に嬉しかった。

「ふう、ご馳走様。結構おいしかったわ。
この料理って今日採ってきたキノコで作ったんでしょ?
じゃあ、これ籠ごと貰って行くわね。それで今回のことは許してあげる」
「え、おい。これ全部はちょっと多くないか?
せめてもう少し……」
「あのね、今回はこれでも大目に見てあげてるのよ。
魔理沙、次に約束破ったら転がっているマジックアイテムを売り払うからね。
それとアリス。
あんたは今回なにも知らなかったんだし、見逃してあげる。
せいぜいがんばりなさい」
「霊夢!?」
「じゃあね」

どうやら霊夢は紫から聞いて今回のことだけでなく、自分が魔理沙を好きなことまで知っていたようだ。
神社に向かって飛んでいった霊夢にアリスは心の中で感謝した。




ちなみにアイゼンダケを使った料理はほとんど霊夢に食べられ、残っていたキノコも籠ごと全て霊夢が持って行ってしまった。

魔理沙はがんばって集めたキノコを持っていかれて悔しそうにしていたが、アリスは笑って魔理沙に話しかけた。

「また今度とりに行けばいいじゃない。
その時はまた私を誘ってよ」
「ん? なんだアリス、そんなにキノコ狩りおもしろかったのか?
それとも料理が気に入ったのか?」
「ええ、おもしろかったし、おいしかったわ。
でもね、それって私達が頑張ったからだと思うの。
ねぇ魔理沙。また一緒にやらない?」
「ああ、いいぜ。
今度はもっと集めるか。それを肴にみんなで宴会して騒ごうぜ」
「ええ、良いわね。約束よ?」
「ああ、約束だ」



魔理沙がアリスに思うこと、アリスが魔理沙に思うこと。
すれ違いもあるけれど、重なり合うこともある。
魔理沙はアリスを、アリスは魔理沙を大切に思っている。
そんな2人の関係を、友達という。

どうもはじめまして、白玉と申します。

初投稿ですが、楽しんで頂けると嬉しいです。
批評・感想もよろしければお寄せ下さい。

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コメント



0.1230簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
おもしろかったです。アリスが微妙にヤンデレ気味なのがなんともはや。
アリスの想いが伝わる時は来るのだろうか・・w
6.無評価名無し妖怪削除
話の流れが自然でとても良かったです。面白かった。
脱字が気になりました。投稿前に何度か読み直すといいと思います。
7.90名無し妖怪削除
すいません。点数入れ忘れ。
8.70名前が無い程度の能力削除
ニヤニヤが止まらないとはまさにこのこと
13.100Admiral削除
コレはよいアリマリ。
ニヤニヤしてしまった。
アリス可愛いなぁ。
15.70ess削除
程よいアリマリですね~w
霊夢よりアリスを気にしてる魔理沙ってのがらしいといえばらしい。

後は脱字の修正をすればもう少し気持ちよく読めたかもしれないですね^-^;
16.無評価白玉削除
脱字を修正しました。
ご指摘ありがとうございます。

面白いと思って頂ける方がいて、とても嬉しいです。
20.80名前が無い程度の能力削除
GJ!!これは良いアリマリ。アリスかわいいよアリス。
21.90名前が無い程度の能力削除
とても丁寧な心理描写で読みやすかったです
妄想はしても暴走はせず、せいぜい迷走する程度のこのアリス……実に良いですね
>お互いの健康を害する辞退
事態ではないでしょうか
>お弁当もおしかった
脱字ではないでしょうか
>どうやら本当に知らないい。
脱字ではないでしょうか
>一度分かれたのだ。
別れたの方が良いのでは
26.無評価白玉削除
名前が無い程度の能力様
ご指摘ありがとうございます。

脱字を修正しました。
30.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙の絶妙な鈍感具合が最高w
32.100時空や空間を翔る程度の能力削除
アリス ファイト!
応援するよ~。