Coolier - 新生・東方創想話

大男と歴史書のかぐや姫

2007/11/11 05:15:50
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オリジナル要素が五割くらい占めてますのでご注意を。






 なよ竹のかぐや姫。竹からうまれ、最後には月へ帰ったという月の民…            
これは古き時代に記された嘘か真かもわからない物語、作者未詳。
 もしこの物語が事実だったとしたら、月に人が住んでいるということにも
なるが、まさか、そんなことはありえない、考えられない、だから創り話だろう。
と、ある一つの仮説が立つまではそう考えるのが普通だった…。





 山々に挟まれた、とある平地にある人里があった。人々は畑を耕し、飯をつくり
、夜になれば妖を恐れて家に篭る、と、特に何も変わらない日々を送っていた。
 強いていえば…ああ、そういえば背の高い男が一人、越してきたことぐらい。
やたらと筋骨たくましく、精悍な顔付きで、歳は30近くだった。
 なんでもその歳になっても親のもとでごろごろしていたらしく、でかい図体もあいまって、
家を追い出されたらしい。
 身体がたくましいのは前の村で喧嘩ばかりしていたからだとか。
親に勘当されたのがよほどこたえたと見え、里での働きぶりはまんざらでもない、
それになかなかに知識が豊富で里に役立つ事もその大きな身体をもってやってくれた。
 最近では里の守護をしてくださる親切な女妖怪様が持つ歴史書に興味を持ち、頻繁に訪ねていた。
 妖怪様はとても綺麗で優しく、それでいて毅然としてたくましい心の持ち主であったから、
そちらに惹かれたのだろうというのがもっぱらの噂だったが。
 


「毎日毎日、熱心なことだ。」
 里の守護妖怪であり、人の歴史の管理者でもある存在、上白沢慧音は、居間に居る
大男に声を掛けた。 この男はここ毎日のように家にきては、まるで憑かれたかの
ように歴史書を読み漁っている。
「ん~、俺にとっちゃあ、なかなかに難解な文字なんでねぇ。時間かかりますもんで」
 歴史書を睨んでいた大男が、はっとしたように顔を上げ、頭を掻きながらにこやかに答える。
 慧音は今自宅に帰ってきたところであった。昼間は寺子屋で子供達に学問を教えているのだ。
 玄関に自分のものではないわらじが一足あったので、また来ているのかと半ば呆れながら
居間に入ってきたのであった。
(それにしても、たいした集中力だ、声を掛けた時以外は周りが見えなくなって
いるのではないか?こやつは)
 妖怪であるにしろ女性でもある慧音が留守の時でも、男の出入りに目を瞑っているのはた
だならない集中力で、歴史書をひたすら読み続ける姿勢を見込んでのことだった。
 時既に夕方。
「っとぉ、もうこんな時間か、そんじゃ帰らせていただきます慧音様」
 そういって男は立ち上がる、正直でかい。慧音より頭二つと半分は大きい、
家の入り口につっかえるほどだ。
「そうか、帰り道は気をつけて行くように、夕方はすでに妖怪達がでてくる頃合だからな」
 と慧音は忠告した。
 慧音の家は里から少し離れた場所に建っている。夕方には出ないと里に帰るまでに暗く
なってしまうので危険だ。
 なにせ里まで通じる道は森に挟まれている。夜になれば慧音は里の見回りのために
家を空けるから、頭のいい妖怪は出てくるのだった。
 男が出て行った後、慧音は男が棚に戻した本の題名を見た。
(またかぐや姫か)
 あの男が初めて来たときからずっと読み続けている年代の記録だ。
 そこにはかぐや姫という人物が登場し、何人もの貴族を魅了した時から、最後には
人前から姿を消したとされているところまで記されていた。
 あの男が今読んでいるのは、まだ序盤だ。相当読むのに苦労しているようだが…。
(それでも奴が文字を読めることが以外なのだがな)
 慧音は苦笑した。 
 あの男はなにからなにまでつりあわない。
 やってることがあの巨大な外見からは想像つかないことばかりだ。
 「しかし、なぜかぐや姫なんだ?」
 そんな疑問がおもわず口にでた。


 これは、まだまだ永遠亭がその姿を晒してはいなかった、ずっと前のお話。


 

 「ただいま~っと。遅くなりましたお紗江さん」
 ガラリと一軒家の戸を開け、大男こと佐伯嘉治(サエキ ヨシハル)は中へ入る。
 辺りはすでに暗くなっていた。
 中から、慌ただしい声が聞こえてくる。
「こらこら、アンタ。あぶなっかしいじゃないのさ」
 と言いながら居間の方から一人のおばさんが現れた。
 ヨシハルが居候になっているこの家の旦那の妻、お紗江さんである。
 「遅くなったじゃないの、てっきり妖怪と喧嘩でもしてるんじゃないかと思ってたよ」
 …ちょっと心配のされかたがおかしい。しかしこれがヨシハルという男に対する周りの認識である。
「スンません。つい夢中になっててねぇ」
 ヨシハルは頭を下げながら居間へ行く。
 そこにはすでに夕飯にありついていた家主の姿があった。
「おう、遅かったなぁ。慧音様を口説いてでもいたのか?ははっ、けしからんぞお前さん」
 などと、へんなことをおっしゃる。この男、里の中でもノリのよいおっさんで
知られている元三郎(ゲンサブロウ)さんである。
「口説く余裕なんてないね元の親父、それよりメシメシ」
 そう言ってヨシハルはちゃぷ台の横にどっかりと座った。
「あいよ」
ちょうどお紗江さんが玄米を茶碗に盛って来た。ちなみに量は普通。
「どうも、んじゃいただきます、と」
 食事の挨拶をすると、ヨシハルはついでに運ばれてきた質素な味噌汁と一緒に玄米をちまちま
と食べはじめたのだった。
 



 食後、ヨシハルは居間の端っこでころがっていた。なにやら考え事をしている様子。
 「場所…近いか?…わからな…だらけで…んー」
 そんなふうにぶつくさ言ってるところに元のおやじがつっこむ。
 「慧音様んとこいってからこのかた、なぁにをぶつぶついっとんだお前さんは」
 とのこと。
 「んあ?ああ、これだけは勘弁してくれって元さん。俺の日課なんだよ」
 ヨシハルは神妙な顔付きのままそう答えただけ。
 「ふぅん、まあ、とくに聞きたいってわけでもねぇけどよ」
 といぶかしげながらも元三郎は追求するのをやめた。
 そんなこんなで居候の大男と周り人達の日々は過ぎていく。

(つづく)
 
 はじめまして、カザカミと申します。
 永遠亭と月の民、月の文明という部分を考えていたらなんとなく
お話が頭に浮かび、書いてみようということになりました。
 時代的には霊夢や魔理沙がうまれるより数百年前の幻想郷。
 地域的には人間の里付近を限定しています。
 投稿するのは初めてで、字数が足りているか少ないかが
よくわかりませんでしたので、少ないと思われたら言ってもらえると
助かります。
カザカミ
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コメント



0.50簡易評価
1.40名前が無い程度の能力削除
はじめまして。
いきなりですが、まず誤字報告を。
以外→意外ですね。

それはそうと話はまだ始まったばかりですね。
簡潔な文章で読みやすかったですよ。
是非、完結目指して頑張って下さいね。
2.無評価名前が無い程度の能力削除
文章は読みやすいですし、雰囲気も好きです。先が非常に気になるいい作品だと思います。
ただ、これで完結するのならともかく、あまりに短すぎて現状では評価できません。
細かく分けてしまうと、読みにくくてついてこない読者さんも多いと思いますし、そのせいか、創想話では短く分割された作品は得点が伸び悩んでいるものが多いようです。よさそうな作品なのにもったいないです。
分割するのでしたら、一度最近の作品集をご覧になり、分割されている作品の長さを見てみた方がよろしいかと思います。
字数について意見をお求めだったようですので、私見ですが申し上げました。
繰り返しになりますが、導入部分としてはとても面白そうなので、先に期待しております。得点はその時に。
3.無評価カザカミ削除
どうも、お二人ともご意見、ご指摘をありがとうございます。
是非、参考にさせていただきます。ご期待に応えられるよう
尽力させていただきますね。
4.無評価名前が無い程度の能力削除
ひとつの物語には大きな起承転結があります。そして、その中には更に細かな起承転結が繋がっているのです。
この作品の場合、一番最初の起承だけで切られている印象があります。
だから、評価出来ないということになるのは仕方ない。

>「それぞれで完結している・話の展開上そこで区切りがつく」事
とトップにも書かれています。文章量よりも、その物語における区切りを意識したほうが良いのでは?

面白そうな予感はします。
予感だけでは終わらせて欲しくないのですよ……読者の我が侭ですけど
5.無評価カザカミ削除
 確かに起の部分しかありませんね、ほんとに申し訳ない。
全く頭にありませんでした。以後、最優先事項にします。
ご指摘と注意をありがとうございました。それではこれで。