※ この作品は『東方放浪記 ~変化~』の続きです。
「私?……」
そこには博麗霊夢が二人いた。
「そうよ、どうしたの?私」
霊夢(?)は先ほど与一に見せたような笑顔で言った。
「あなた……誰よ」
「自分の顔も忘れちゃった?一度鏡で自分自身を見てみることをお勧めするわ」
「……もしかして与一さん?でも背は私より高かったし、声だって違う。紫に頼んだ?ん~、違うわね。低級妖怪で驚いてた与一さんがあいつと会ってるわけ無いし……」
「三回よ」
急に霊夢(?)が言い出した。
「回答権は三回まで。さぁ、当ててみなさい」
「まず一番ありそうな線で紫」
「外れ、その人じゃないわ。あと二回よ」
「ん?ちょっと待って。さっき言ったこともう一回言って」
「外れ、その人じゃないわ。あと二回よ。これでいいかしら?」
すると霊夢は不適に笑った。
だがそれも一瞬、普段の顔に戻りさも簡単といわんばかりに答えた。
「与一さんね」
「当たり、さすがに簡単すぎましたか。まぁ不自然ですよね。私が出て行って、もう一人の自分が現れるなんて」
元の姿に戻るのは手馴れたもので、十秒もかからなかった。
口調を変える必要はもう無い。
ばれてしまえば偽装など意味も無いのだから。
と言うよりももともと偽装する気なんてさらさら無かった。
ばれることが前提の偽装――それが意味をなすのはこれからなのだから。
「与一さん、あなたからぼろを出したのよ」
「私から、ですか……どこですかね」
「紫を人って呼んだところよ。一度でも紫に会ったことがあるのなら人なんて呼ばないわ。それに紫が人間じゃないなんて知らないのは、ついさっきここに着たばかりのあなたくらいよ」
「墓穴を掘ってしまいましたね。今後気をつけましょう。ところでこの変化について何か感想とか無いんですか?」
さりげなく核心を突く。
さあ、どう出る、博麗霊夢!
「ん?そうね、強いて言えばよく化けたわね」
「だけ?」
「だけ」
そう言って霊夢はゆっくりとお茶を啜った。
「もっとほら、単純な疑問とかあるでしょう?身長はどうしたとか、声はどうやったとか」
正直、私は焦っていた。
こんな反応は始めてである。
と言うよりも霊夢の無感動さに私のほうが感動しそうだ。
「冷静に考えてみるとね、人をだます存在なんて沢山いるのよ。狸とか狐とか」
「私は動物と同類ですか!?」
「最初の方はびっくりしたけど、案外普通だったわね」
嗚呼……なるほど、こっちの世界ではこんなのが普通なのか……。
だが、出会えた。
やっと――やっと出会えた。
私を受け入れてくれる存在に、やっと出会えた。
そんな興奮を胸に抱きながら尋ねてみた。
「霊夢、折り入って頼みがあります」
「何かしら?」
「ここに住ましてください」
「ぶほっ!」
霊夢は飲んでいたお茶を噴出した。
そのままゲホゲホと咳き込んでいる。
「ちょっ、何それ?」
「だから、ここに居候させてくださいと言っているんです」
「けほんっ、えーっとね、同じ屋根の下に男と女が住んでいると良からぬ噂が立つのよ。特にあの鴉天狗によって」
「簡単です。私が女になればいい」
「女装!?」
「誰がするかっ!」
霊夢よ、貴様はさっき何を見ていたのだ?
「言わせてもらいますとですね、私は男か女か分からないんですよ」
「どういうこと?」
「昔は変化なんて誰でもできると思っていたんです。だから最初がどっちであったかなんていちいち覚えてなくて。この能力が異常だと知った時はショックでした。そして気づいたんですよ。私は何にでもなれる代わりに自身には戻れないってね」
「…………」
「だから私には性別なんて無くて、身長も、体重も、声も、顔も、全て他人の物」
「その顔も?」
「ええ、以前あった人の顔です。気に入ってるから普段はこの顔なんですよ」
「その人はもしかして……」
「ええ、殺しましたよ。オリジナルを消してしまえばダミーこそがオリジナルになれますからね」
「そう、分かったわ」
「じゃあここに住んでも――」
「嫌よ」
「えっ……」
同情を誘う作戦は失敗に終わった。
「そんな物騒な話を聞いて誰が住まわすのよ。下の森にでも野宿してなさい」
どうやら最後のアレがいけなかったらしい。
くそっ!こうなったら最終手段!
「お願いします!ここに住まわしてください!何でもしますから!」
最終手段――つまりは土下座。
我ながらしょぼい最終手段だと思う。
「何でも――ねぇ、今何でもするって言ったわよね」
思いのほか霊夢が食いついてきた。
「はい!そりゃあもう、何でもし……ま、す」
途中まで言いかけて自分の言っていることの重大さにやっと気づいた。
このいかにも人をこき使いそうな巫女に何でもだなんて……。
多分人生で二番目くらいに後悔した。
「いいわよ、ここで暮らしてね。その代わり掃除とか炊事とか資金集めとか手伝ってもらうからね」
霊夢は飛び切りの笑顔で言いのけた。
「は……ははは……」
私も笑うしかなかったよ。
これから何が待っているのか大体予想が付いた。
恐らく体力の続く限り雑用だ。
「はは……逃げてぇ……」
自分から言い出してなんだが、素直にそう思った。
晩には早速食事の準備を命じられた。
「食材は?」と聞くと、「無い」ときっぱり言われたのでただいま買出し中。
出かける前に魔除けとして渡されたお守りをいじりつつ、人里とやらを目指す。
そんなに遠い距離ではないのだが、徒歩だといかに不便かがよく分かった。
「こんな時だからこそ、文明の利器が欲しいもんですね……」
あちらに居たころは大型二輪の免許を持っていたので楽に移動できた。
無免許でいいなら何でも乗れるが。
だがここには免許はおろか、自転車すらない。
「自転車くらい作ろうか」
だがあの森の中を自転車で突っ走る勇気は無い。
絶対に行き来するごとに服が襤褸切れになってしまう。
森――そういえばさっきも通ったが今回は何とも出会ってない。
「やっぱりこのお守りのおかげかな」
今までいじっていたお守りを見てみる。
どこにでも売ってそうな量産品にしか見えないんだが……。
しかしなんとなくではあるが、清らかな感じがしてこないわけでもない。
巫女だけに、そういうのには精通してそうだし。
「霊夢を少しだけ見直したような気がしますよ」
再び前を向いて歩こうとした瞬間、
ぶつかった。
その反動で少しよろめく。
「あう」
そんな声が聞こえた気もしたが、私にはそんなことをいちいち耳に入れている暇など無かった。
なぜならここがぶつかるものが何も無いような平野だったからだ。
ぶつかるものは何もなく、人と言う線もあるが気配があれば気づくはずだ。
ならば一体何にぶつかったのだ?
慌てて前を見ると、そこには金髪の綺麗な女性がいた。
いた、と言うよりも別次元から出てきた、といった方が相応しいだろう。
その女は別次元から上半身だけ出し、逆さまになってそこに存在しているのだから。
「あなた……一体……」
「ちょっと、ぶつかっておいてお詫びも言葉もないの?」
女は少し頬を膨らませて言った。
「えっ……ああ、すみません――じゃなくてですね!なんなんですか!?いきなり逆さまに出てきて!」
「私は八雲紫よ」
「八雲――紫!」
「あら、知ってるようね。なら本題に入らせてもらっていいかしら?」
「いえ、全く知りません」
紫が落っこちた。
下は地面だから痛いだろうに……。
「じゃあさっきの反応はなんだったのよ!」
紫は立ち上がりながら言った。
「いや、紫って聞いたときに晩御飯には紫をかけたご飯もいいかな、って思ってしまいまして……。大丈夫ですか?」
「何か調子狂うわね……まぁいいわ。改めまして、私が八雲紫よ。境界の妖怪、なんて呼ばれてるわね」
「…………妖怪?」
「ええ、そうよ」
霊夢~、このお守り効かないよ~。
「あら?そのお守り、霊夢からもらったのね」
紫は私が手に持っているお守りに気づいたようだ。
「あなたと会ったことでこのお守りが効かないってことが分かりましたけどね」
「違うわ。そのお守りは並みの妖怪なら近づけもしないはずよ」
並みの妖怪なら――裏を取れば並でない妖怪なら近づけるという話。
さらに言うとこれを持って出会った妖怪は並じゃないってこと。
「で、その境界の妖怪様が私に何の用ですか?さっきは本題とか言ってましたけど」
ここで私にできることといえば余裕を見せることくらい。
余裕があるということは相手を上回る何かがあるということ。
この場合、私には何も無いが上っ面だけの余裕を見せている。
「ふふふ、そんなに警戒しなくても大丈夫よ」
どうやら読まれているらしい。
読心術でも心得ているのか?
「本題って言うのは忠告――いえ、もう警告ね。里に近づかない方がいいわ。人食いが出てるのよ」
「人食いって……妖怪のことじゃないんですか?」
妖怪とは、人を食い、人と対立する、常に人のとって最大の敵である――そう霊夢からは教えてもらった。
ならばこの場合の人食いも妖怪ではないのだろうか。
「確かに妖怪は人食いだけど、人食いが全て妖怪だとは限らないわ。人と妖怪が争ってるんだったら介入できるけど、人と人との争いは介入できないわ。だから私にできることは注意を促すくらい」
「そうですか、ご忠告感謝します。では……」
そう言って里に向かって歩を進める。
「あなた、人の話を全然聞かないのね」
紫は少し呆れた声だった。
「すみませんね、私もいい加減腹が減ってるんですよ。それに――
食人種なら知り合いに一人いますから」
「もういいわ、精々気をつけることね」
今度こそ紫は呆れ声だった。
「さてと……」
再び歩を進める。
「『完全消滅』(オールクリア)、到来かな……」
「私?……」
そこには博麗霊夢が二人いた。
「そうよ、どうしたの?私」
霊夢(?)は先ほど与一に見せたような笑顔で言った。
「あなた……誰よ」
「自分の顔も忘れちゃった?一度鏡で自分自身を見てみることをお勧めするわ」
「……もしかして与一さん?でも背は私より高かったし、声だって違う。紫に頼んだ?ん~、違うわね。低級妖怪で驚いてた与一さんがあいつと会ってるわけ無いし……」
「三回よ」
急に霊夢(?)が言い出した。
「回答権は三回まで。さぁ、当ててみなさい」
「まず一番ありそうな線で紫」
「外れ、その人じゃないわ。あと二回よ」
「ん?ちょっと待って。さっき言ったこともう一回言って」
「外れ、その人じゃないわ。あと二回よ。これでいいかしら?」
すると霊夢は不適に笑った。
だがそれも一瞬、普段の顔に戻りさも簡単といわんばかりに答えた。
「与一さんね」
「当たり、さすがに簡単すぎましたか。まぁ不自然ですよね。私が出て行って、もう一人の自分が現れるなんて」
元の姿に戻るのは手馴れたもので、十秒もかからなかった。
口調を変える必要はもう無い。
ばれてしまえば偽装など意味も無いのだから。
と言うよりももともと偽装する気なんてさらさら無かった。
ばれることが前提の偽装――それが意味をなすのはこれからなのだから。
「与一さん、あなたからぼろを出したのよ」
「私から、ですか……どこですかね」
「紫を人って呼んだところよ。一度でも紫に会ったことがあるのなら人なんて呼ばないわ。それに紫が人間じゃないなんて知らないのは、ついさっきここに着たばかりのあなたくらいよ」
「墓穴を掘ってしまいましたね。今後気をつけましょう。ところでこの変化について何か感想とか無いんですか?」
さりげなく核心を突く。
さあ、どう出る、博麗霊夢!
「ん?そうね、強いて言えばよく化けたわね」
「だけ?」
「だけ」
そう言って霊夢はゆっくりとお茶を啜った。
「もっとほら、単純な疑問とかあるでしょう?身長はどうしたとか、声はどうやったとか」
正直、私は焦っていた。
こんな反応は始めてである。
と言うよりも霊夢の無感動さに私のほうが感動しそうだ。
「冷静に考えてみるとね、人をだます存在なんて沢山いるのよ。狸とか狐とか」
「私は動物と同類ですか!?」
「最初の方はびっくりしたけど、案外普通だったわね」
嗚呼……なるほど、こっちの世界ではこんなのが普通なのか……。
だが、出会えた。
やっと――やっと出会えた。
私を受け入れてくれる存在に、やっと出会えた。
そんな興奮を胸に抱きながら尋ねてみた。
「霊夢、折り入って頼みがあります」
「何かしら?」
「ここに住ましてください」
「ぶほっ!」
霊夢は飲んでいたお茶を噴出した。
そのままゲホゲホと咳き込んでいる。
「ちょっ、何それ?」
「だから、ここに居候させてくださいと言っているんです」
「けほんっ、えーっとね、同じ屋根の下に男と女が住んでいると良からぬ噂が立つのよ。特にあの鴉天狗によって」
「簡単です。私が女になればいい」
「女装!?」
「誰がするかっ!」
霊夢よ、貴様はさっき何を見ていたのだ?
「言わせてもらいますとですね、私は男か女か分からないんですよ」
「どういうこと?」
「昔は変化なんて誰でもできると思っていたんです。だから最初がどっちであったかなんていちいち覚えてなくて。この能力が異常だと知った時はショックでした。そして気づいたんですよ。私は何にでもなれる代わりに自身には戻れないってね」
「…………」
「だから私には性別なんて無くて、身長も、体重も、声も、顔も、全て他人の物」
「その顔も?」
「ええ、以前あった人の顔です。気に入ってるから普段はこの顔なんですよ」
「その人はもしかして……」
「ええ、殺しましたよ。オリジナルを消してしまえばダミーこそがオリジナルになれますからね」
「そう、分かったわ」
「じゃあここに住んでも――」
「嫌よ」
「えっ……」
同情を誘う作戦は失敗に終わった。
「そんな物騒な話を聞いて誰が住まわすのよ。下の森にでも野宿してなさい」
どうやら最後のアレがいけなかったらしい。
くそっ!こうなったら最終手段!
「お願いします!ここに住まわしてください!何でもしますから!」
最終手段――つまりは土下座。
我ながらしょぼい最終手段だと思う。
「何でも――ねぇ、今何でもするって言ったわよね」
思いのほか霊夢が食いついてきた。
「はい!そりゃあもう、何でもし……ま、す」
途中まで言いかけて自分の言っていることの重大さにやっと気づいた。
このいかにも人をこき使いそうな巫女に何でもだなんて……。
多分人生で二番目くらいに後悔した。
「いいわよ、ここで暮らしてね。その代わり掃除とか炊事とか資金集めとか手伝ってもらうからね」
霊夢は飛び切りの笑顔で言いのけた。
「は……ははは……」
私も笑うしかなかったよ。
これから何が待っているのか大体予想が付いた。
恐らく体力の続く限り雑用だ。
「はは……逃げてぇ……」
自分から言い出してなんだが、素直にそう思った。
晩には早速食事の準備を命じられた。
「食材は?」と聞くと、「無い」ときっぱり言われたのでただいま買出し中。
出かける前に魔除けとして渡されたお守りをいじりつつ、人里とやらを目指す。
そんなに遠い距離ではないのだが、徒歩だといかに不便かがよく分かった。
「こんな時だからこそ、文明の利器が欲しいもんですね……」
あちらに居たころは大型二輪の免許を持っていたので楽に移動できた。
無免許でいいなら何でも乗れるが。
だがここには免許はおろか、自転車すらない。
「自転車くらい作ろうか」
だがあの森の中を自転車で突っ走る勇気は無い。
絶対に行き来するごとに服が襤褸切れになってしまう。
森――そういえばさっきも通ったが今回は何とも出会ってない。
「やっぱりこのお守りのおかげかな」
今までいじっていたお守りを見てみる。
どこにでも売ってそうな量産品にしか見えないんだが……。
しかしなんとなくではあるが、清らかな感じがしてこないわけでもない。
巫女だけに、そういうのには精通してそうだし。
「霊夢を少しだけ見直したような気がしますよ」
再び前を向いて歩こうとした瞬間、
ぶつかった。
その反動で少しよろめく。
「あう」
そんな声が聞こえた気もしたが、私にはそんなことをいちいち耳に入れている暇など無かった。
なぜならここがぶつかるものが何も無いような平野だったからだ。
ぶつかるものは何もなく、人と言う線もあるが気配があれば気づくはずだ。
ならば一体何にぶつかったのだ?
慌てて前を見ると、そこには金髪の綺麗な女性がいた。
いた、と言うよりも別次元から出てきた、といった方が相応しいだろう。
その女は別次元から上半身だけ出し、逆さまになってそこに存在しているのだから。
「あなた……一体……」
「ちょっと、ぶつかっておいてお詫びも言葉もないの?」
女は少し頬を膨らませて言った。
「えっ……ああ、すみません――じゃなくてですね!なんなんですか!?いきなり逆さまに出てきて!」
「私は八雲紫よ」
「八雲――紫!」
「あら、知ってるようね。なら本題に入らせてもらっていいかしら?」
「いえ、全く知りません」
紫が落っこちた。
下は地面だから痛いだろうに……。
「じゃあさっきの反応はなんだったのよ!」
紫は立ち上がりながら言った。
「いや、紫って聞いたときに晩御飯には紫をかけたご飯もいいかな、って思ってしまいまして……。大丈夫ですか?」
「何か調子狂うわね……まぁいいわ。改めまして、私が八雲紫よ。境界の妖怪、なんて呼ばれてるわね」
「…………妖怪?」
「ええ、そうよ」
霊夢~、このお守り効かないよ~。
「あら?そのお守り、霊夢からもらったのね」
紫は私が手に持っているお守りに気づいたようだ。
「あなたと会ったことでこのお守りが効かないってことが分かりましたけどね」
「違うわ。そのお守りは並みの妖怪なら近づけもしないはずよ」
並みの妖怪なら――裏を取れば並でない妖怪なら近づけるという話。
さらに言うとこれを持って出会った妖怪は並じゃないってこと。
「で、その境界の妖怪様が私に何の用ですか?さっきは本題とか言ってましたけど」
ここで私にできることといえば余裕を見せることくらい。
余裕があるということは相手を上回る何かがあるということ。
この場合、私には何も無いが上っ面だけの余裕を見せている。
「ふふふ、そんなに警戒しなくても大丈夫よ」
どうやら読まれているらしい。
読心術でも心得ているのか?
「本題って言うのは忠告――いえ、もう警告ね。里に近づかない方がいいわ。人食いが出てるのよ」
「人食いって……妖怪のことじゃないんですか?」
妖怪とは、人を食い、人と対立する、常に人のとって最大の敵である――そう霊夢からは教えてもらった。
ならばこの場合の人食いも妖怪ではないのだろうか。
「確かに妖怪は人食いだけど、人食いが全て妖怪だとは限らないわ。人と妖怪が争ってるんだったら介入できるけど、人と人との争いは介入できないわ。だから私にできることは注意を促すくらい」
「そうですか、ご忠告感謝します。では……」
そう言って里に向かって歩を進める。
「あなた、人の話を全然聞かないのね」
紫は少し呆れた声だった。
「すみませんね、私もいい加減腹が減ってるんですよ。それに――
食人種なら知り合いに一人いますから」
「もういいわ、精々気をつけることね」
今度こそ紫は呆れ声だった。
「さてと……」
再び歩を進める。
「『完全消滅』(オールクリア)、到来かな……」
口調や行動も世界観に溶け込んでいて自然だと思います。
次回も期待させてもらいます。
次回も期待してますよ!