Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷のとある一日・慧音編

2007/11/04 21:38:50
最終更新
サイズ
33.59KB
ページ数
1
閲覧数
1156
評価数
16/45
POINT
2460
Rate
10.80
午前7時・慧音宅

「ん………んん~……………」
体内時計が朝だと告げ、私は目を覚ます。
七時か………頃合だな。
布団を畳んでから顔を洗いに行くとしよう。

ふむ、朝食は………まぁ、簡単な物で良いだろう。
食材もまだ余ってるから買い物に行く必要も無さそうだ。
今日は寺小屋もないからな………ゆっくりするとしようか。



午前8時

さて、朝食も済んだことだし、まずは洗濯から始めるか。
溜め込んでないから直ぐ終わるだろうし、そうしたら今度は掃除だな。
やはり自分の住む所くらい綺麗にしておきたいからな。



午前9時

洗濯物も干して掃除も終わった。
ふむ…………やる事がなくなったな。
今日は天気も良いし、外に出るとしようか。


通りまで出て来たが、既に結構人が行き交っている。
「慧音せんせ~おはよー!!」
「ああ、おはよう」
道を歩いていると寺小屋の教え子が挨拶をしてきた。
人と会ったらちゃんと挨拶をするようにと口うるさく言っているからな。
まぁ、子供達も親からもそう習っているだろうが。
「慧音様、おはようございます」
「ああ、おはよう」
歩いているとまた挨拶された。
この里の者達は私の事を半獣と知っても慕ってくれている。
嬉しい限りだ。
私もその想いに応えねばならない。
寺小屋を開いたり相談に乗ったりするのもその一環だ。
まぁ、私が単に人間が好きだと言う理由もあるが。
「あの~………上白沢慧音さん……ですよね?」
うん?聞きなれない声が聞こえてきた。
振り向いて納得した。
里の者ではない。
赤い髪に黒を基調とした服。
それに何より、背中にある蝙蝠の様な翼。
私はこの娘に見覚えがある。
確か………
「紅魔館のパチュリーの従者だったか?」
確かその筈だ。
「あ、はい!え~っと………名前は故あって明かせませんので、小悪魔と呼んでください。ああ、近しい人からはこぁと呼ばれているのでどちらでも構いませんよ。それで、いきなりなんですが質問してもよろしいでしょうか?あっと、私が慧音さんの事を知っているのは妹様の家庭教師をしている時にお見かけしたからでって、慧音さんは良く私の事知っていらっしゃいましたね。誰かからお聞きになりました?って本題からそれちゃいましたね。それでですね………」
返事をしたかと思ったら、そのまま一気に色々と喋りだした。
凄い早さだな………良く噛まないものだ。
確か、こんな語りの事を八雲紫が「ましんがんとーく」と言っていたな。
どういう由来かは知らないが、矢継ぎ早に話す事を指すと言う。
であるならば、彼女のこれは「ましんがんとーく」であろう。
っと、そんな事より………
「聞きたい事があるんだろう?」
途中で拾っておいた肝心な単語を私は聞き返した。
「ええ、そうなんですよ。めったに里に来ない私がここに来ているのには理由がありまして、その理由というのがパチュリー様のお気に入りのお茶が切れてしまったんですよ。普段なら咲夜さんが買いに行ってくれてるんですが、今日はなにやら手が離せない用事があるようでして、しかし妖精メイドに買いに行かせると何買って来るか解ったものじゃないので私に白羽の矢が立ったんですよ。いや、別に矢は刺さってませんけどね?で、来てみたは良いんですけど、考えてみれば右も左も解らない場所でして何処に何があるのやら途方に暮れていたら丁度慧音さんの名前が聞こえましたので声を掛けた次第でありまして………」
再びのましんがんとーく。
これは止めて置かないと何処までも喋り続けるな。
「つまり、目的の物が売っている場所が解らないから教えて欲しい、と言う事だな?」
「ええ、早い話がそう言う事です」
「で、そのお目当ての物……お茶だったか?どんなお茶なんだ?紅魔館では我々の良く飲む緑茶ではなく、紅茶なのだろう?」
私も行く度に出してもらっているから覚えている。
「はい、それも普通のじゃないんですが、咲夜さんはいつも里で買って来ているのでここにあるのは間違いないんですよ。ただ、その場所が解らなくて、今頃になって場所くらいは咲夜さんに聞いて置けば良かったと思ったんですが後の祭りという奴でして、戻っても良いんですけど面倒じゃないですか?で、行き当たりばったりで見つかるかと思いきや、これが何処に何があるのかサッパリと言う状況で、そんな折に先ほども言いましたとおり慧音さんの名前が聞こえまして………」
「解った解った。多くの種類の紅茶を売っている店なら知っているが………」
「が?何か?」
「そこは開店が10時からでな」
現在はまだ9時半にもなっていない。
「あ、そうなんですか。いや、でしたらお店の場所さえ教えて頂ければ、確認後に良い機会ですので里を見て回りますよ。ついでに何か珍しい物が見つかるかもしれませんし。こんな事もあろうかとお小遣いは溜めてあるので自分の物を買う余裕はあるんですよ。いや、まぁ、そんな大した額じゃないんですけどね?それでも美鈴さんのお給料よりは良い訳でして、と言うか美鈴さんと言えば、あんな少ない給料で良く働けますよね?普通にストライキ起こしてもおかしくないですよ。ああ、でもお嬢様相手にストライキ起こしても叩き潰されるのが落ちですよね。つまりは泣き寝入りするしかない訳ですが、これがまた美鈴さんは落ち込んでる様子がそれほど見受けられなくて、なんとも精神力の強い方だと常々感心する次第でありまして………」
本当に良く喋る娘だ。
無口そうなパチュリーとよく折り合いが合うものだな。
「まぁ、兎も角店の場所を教えよう」
私は簡単に店の場所を小悪魔に教えた。
現在地からだとさして遠くない場所にあり、道のりも単純なため、口頭で教える事が出来た。
「おや、では通り過ぎていましたか。いやはや、地理に疎いと言うのは厄介ですね。この間もちょっとお暇を頂いてうっかり森の中に入ったら人形使いさんの家に迷い込んでしまいまして、まぁ、あの方は偶に大図書館にご来訪なさるので私の事も存じていただいたお陰で丁重にお持て成しをして頂いた後に紅魔館に送り届けていただきました。空を飛べば上から見渡せると言う事に気付いたのは帰ってからパチュリー様に指摘されまして、いや、まぁ、あの時は大層笑われてしまいましたねぇ………」
「よ、よく喋るな………」
ついつい私も言葉に出してしまう。
「え?あ、いや~よく言われるんですよ。よくそんなに舌が回るもんだって。ほら、パチュリー様ってあまり喋らないじゃないですか。だから私が喋ってる間の方が長くなって、何時の間にかこんな風になっちゃいましてね?元からこうだった訳じゃないんですよ。ああ、でも、別にパチュリー様が悪いとかそんな事は全然無い訳でして、と言うか寧ろパチュリー様には感謝する事の方が多いので………」
「そ、そうか」
いや、本当に良く喋るな。
喋らない相手と一緒に居るとこうなるものなのか?
私の周りに極端な無口は居ないからなぁ…………解らん。
「それは兎も角、ご親切に教えていただいて有難う御座いました。今度妹様の件でご来訪なされた時はうんとお持て成しさせて頂きますよ」
「大した事をした訳じゃない。そこまでする必要はないさ」
道を尋ねられて応えただけだしな。
「いやいや、それが私ってほら、悪魔じゃないですか?こういう見た目だと人間の方は敬遠してまして、話が出来ない、もしくは話しかけ辛いんですよ。でも慧音さんは特に意識をする事無く話をしていただけたので、それだけでも十分に助かっていますよ」
ふむ……確かに、人間は同じ人間以外の相手だと、慣れてない相手の場合はどうしても警戒してしまうようだからな。
まぁ、相手に自分を殺せる能力があると解っていれば警戒もしたくなるか………彼女がそこまで力があるかは知らないが。
いや、それでも並の人間では太刀打ちできない力はあるだろうな。
なにせ、パチュリーの従者だからな。
「さて、それでは私は散歩しながら任務を遂行するといたします」
「ああ、気を付けてな」
「はい。ご親切に有難う御座いました」
小悪魔はペコリとお辞儀をすると去っていった。
ましんがんとーくは正直付いていけないが、素直な良い娘のようだな。
礼儀もしっかりとしていたしな。
さて、それじゃあ私も散歩を再開するとしようか。



午前10時

見回りも兼ねて里を歩いていると、目の前から見知った顔が歩いて来た。
「お早う御座います、上白沢様」
「ああ、おはよう。阿求」
稗田阿求。
九代目の御阿礼の子だ。
「上白沢も散歩ですか?」
「ああ、天気も良い事だし、見回りも兼ねてな」
「そうですか、ご苦労様です」
阿求はそう言ってお辞儀をした。
流石に格式のある家の子だけあって、礼儀作法がしっかりしている。
「幻想郷縁起の方はどうだ?」
「ぼちぼち……といった所でしょうか。まぁ、現状で完成する筈も無いですが」
「まぁ、それはそうだな」
「それはそうと上白沢様。風見幽香を見ませんでしたか?」
「風見幽香……あのフラワーマスターか?もしかして、里に来ているのか?」
「ええ」
フラワーマスター風見幽香。
妖怪の中でもとりわけ強力な力を持つ一体だ。
己を最強と自負するその力は決して過信ではなく、本当に強い。
満月の時ならいざ知らず、普段の私では到底敵わない。
とは言え、そこまで強いと逆に普通の人間には興味を持たない為に、こちらからちょっかいさえ出さなければ安全な相手だ。
完全に安全、とは言えないかもしれないが。
「風見幽香が何かしたのか?」
よもや騒ぎを起こすような事はしてないだろうな………流石に、あいつが暴れたら私では救援が来るまでの時間稼ぎが精々だ。
因みに、救援とは妹紅か霊夢を指す。
「いえ………少々悪質な悪戯をされたもので…………」
「悪質な悪戯だと?」
そう言えば、あの妖怪はいじめるのが好きだと聞いた事があるな。
まったく持って性質の悪い性格だ。
「まぁ、端折って申し上げますと、転ばされた上に下着を見られた、と言った所ですが………」
「十分悪質だな」
女にとって下着を見られる事がどれほど恥ずかしい事か………
まぁ、中には意識して見せていると言うけしからん者も居る様だがな。
「彼女の事ですから、表立って何かすると言う事は無いとは思いますが………遭遇したらお気をつけ下さい」
「ああ、そうするよ」
あいつは能力自体は大した事は無いが、身体能力と妖力が桁外れに高い。
まさに、妖怪らしい妖怪と言った所だ。
能力が特異なのでなく、基礎能力が半端無く高いと言う、単純明解な強さであるが、それ故に弱点がまったく見当たらない。
そしてその高い身体能力と妖力を無駄な方面に使いまくる。
この辺りも高位の妖怪に良く見られる。
下手に遭遇すれば私もその力の前に翻弄され兼ねん。
出会わない事を願うとしようか。



午前11時

一応、風見幽香が何かしていると困るので、警戒しつつ見回りをしたが、特に何も無かった。
もしかしたら、阿求と別れた後直ぐに里を出たのかもしれない。
元々あまり人前に姿を現す妖怪ではないからな。
辺りに強い妖気も感じないし………ん?
べらぼうに強いと言う訳ではないが、強い妖気を感じる…………
まさか、まだ里に居たのか?
何かあってからでは遅いからな…………様子を見に行こう。


様子を見に行って安堵した。
完全に取り越し苦労だった。
「やれやれ………強い妖気を感じて来てみれば、お前だったのか」
「その様子から察するに、何かあったんですか?」
「あったと言えばあったし、無かったと言えば無かったな」
「そうですか………まぁ、私は問題を起こす気は無いのでご安心ください」
「ああ、その事については信用しているさ。美鈴」
そこに居たのは紅魔館の門番、紅美鈴だった。
「時に美鈴。門番の仕事はどうしたんだ?」
「今はシフトで自由時間です」
「なるほど。しかし、こうして里に来ると言う事は、給金が上がって余裕でも出来たのか?」
「いえいえ、相変わらずのお給料ですよ。今日はほんの気晴らしです」
ニッコリと笑って美鈴は言うが、美鈴の給料は1月で3日分の食費程度の給料しか貰えていない。
度重なる失敗(主に魔理沙の侵入)で、給料が削りに削られまくっていると言う。
「なるほどな。ここで会ったのも何かの縁だ。ウチで飯でも食べて行くか?」
「え?良いんですか!?」
「ああ、何せしょっちゅうタダ飯食らいが来るからな。食料はいつも多めに置いてある」
「では、お言葉に甘えさせてもらって宜しいですか?」
「ああ、構わんぞ」
「やった!」
私は喜ぶ美鈴を連れて家に戻った。


「さ、出来たぞ」
出来上がった昼食を机の上に並べる。
「うわ、美味しそう!」
「まぁ、大した物じゃないからあまり期待しないでくれ」
別段、普通の者が食べてる物と大差ないからな。
「それでは、いただきます」
「ああ、いただきます」
私と美鈴は手を合わせてそう言った。
「ん……やっぱり美味しいですよ!」
「そうか?あまり特別な事はしてないんだがな………」
とは言え、そこまで喜んで貰えるのは、やはり作った者として嬉しい限りだ。
「いや~、こういう普通の料理を食べるのは久しぶりですね~」
「……普段は何を食べてるんだ?」
そう言えば、前に給料から食費は捻出出来ないから自給自足状態だと言っていたな。
「ん~………近くに居る動物とか山菜とかですね。お米なんて何ヶ月ぶりだろう?」
随分とまぁ厳しい生活をして居るものだ。
それでもケロッとしている所を見ると、やはり妖怪なんだなと思う。
普通にしていると人間と見分けが付かないからな、美鈴は。
「あ、そうだ。ちょっと聞きたいんですが、こぁちゃん見かけませんでした?」
「こぁ?……それは赤い髪に黒い服を着て蝙蝠の翼が生えた小悪魔の事か?」
確か、あの娘は近しい人はこぁと呼ぶと言っていたな。
「ああ、その娘です。今日里に来る時に会ったんですけど、凄く元気が無かったので、何かあったのかな?と」
「う~ん………私と会った時は物凄い勢いで喋ってたからな………少なくとも、元気が無いとは思えなかったぞ」
「と言う事は、慧音さんに会った後か………」
「しかし、里の人間では恐らく手に負える相手ではないだろう?彼女も」
「そうですね……そこまで強い訳ではないですが、悪魔族だけあって、そこらの人間じゃ相手にもなりませんね」
だろうな。
「そんな相手にちょっかい出すような者も居るとも思えんが………なにやら買い物に来ていたようだったから、目当ての物が見つからなくて落ち込んでたんじゃないか?」
「そうなのかな?それにしては落ち込み過ぎだった気もするけど…………」
「そうか……普段の彼女がどうなのか詳しく知らないから私もよくは解らないな」
「それもそうですね~」
「そう言えば、何故彼女は名前を名乗れないんだ?」
理由はあるのだろうが、名前を名乗れない理由とはなんだろうか?
「ああ、こぁちゃんは悪魔族ですからね。悪魔族は真名と言うのがあるんです」
「真名?」
「ええ、読んで字の如く。本当の名前です」
「それがどうかするのか?」
「悪魔族にとって真名を知られると言う事は命を握られてると同意義なんだそうですよ」
「そうなのか?」
そんな事もあるのか………
「ええ、ですから偽名は兎も角、真名は絶対に名乗れないんですよ」
「成る程な……それは確かに名乗れないな」
「恐らく彼女の真名を知ってるのはパチュリー様くらいだと思いますよ。でもまぁ、パチュリー様はこぁちゃんの事を小悪魔としか呼ばない為、こぁちゃんもこっちでの明確な名前が無いので小悪魔で収まっちゃってるんです。けど、それだと呼び辛いんで私とかは「こぁちゃん」って呼んでますけどね」
そう言う理由だったか。
色々あるのだな、悪魔族は。
弱点がやたらと多い吸血鬼然り。
「まぁ、名前を呼ばれないと言えば、未だに私も中国とか呼ばれる事ありますからね~。あ、おかわりって貰えます?」
「ああ、沢山あるから遠慮なく食べて良いぞ」
妹紅で慣れてるからな。


「ふぅ………ご馳走様でした」
「お粗末様」
3人前は食べたか………体を動かす事が多いのだから、当然と言えば当然か。
「はぁ……こんなに食べたのは久しぶりですよ」
「それは良かった。まぁ、そうそう馳走してやる事は出来んがな」
「いやいやいや、そんな事は考えてませんよ」
美鈴は顔の前で手をブンブンと振る。
確かに、美鈴はそんなに意地汚くは見えないな。
私は食器を片付けて、食後のお茶を持ってきた。
「粗茶ですまんがな」
「いやいやいや、出して頂けるだけで十分ですよ」
そう言って美鈴は茶を啜る。
「ん~………粗茶なんてとんでもない。良いお茶じゃないですか」
「そうか?それなら良いのだが」
流石に客人用のお茶はそれなりの物を用意してはあるが、格段に良いと言う訳ではないからな。
「ああ、そうだ。美鈴」
「はい?何ですか?」
丁度良い機会だから気になってたあの事を聞いて見るか。
「お前と妖夢、一体どっちの方が強いんだ?」
気にはなっていた。
二人ともスペルカードルールでは少々枷を背負っていると言える。
何せ、接近戦が主なのに、弾幕の美しさを競うと言う接近戦とはかけ離れたルールで戦っているのだから。
「そうですね~………冷静に判断して、強いのは恐らく妖夢さんですね」
「ふむ………」
まぁ、あの西行寺家の庭師を務めているくらいだしな。
「ですが、事接近戦に限れば、多分私が勝ちますよ」
「ほう?」
それはまた興味深い話だな。
「妖夢さんの場合は万能型よりやや接近よりと言った戦闘タイプですが、私は殆ど純接近戦タイプですから」
「ああ、確かに」
美鈴も美しい弾幕は張るが、やはり他と比べて放出方法に見劣りがある。
簡単に言えば、避け易い。
まぁ、他と比べて、だが。
それに比べて妖夢のはかなり避けにくい。
「だが、妖夢とて西行寺家の庭師だ。剣の腕も相当なものだと思うが?」
「そうですね。腕は良いと思いますし、才能もあると思いますよ。年月を重ねれば私では太刀打ち出来なくなるでしょうね」
「だが、勝てる、と?」
「付け加えるなら、今は、ですが」
「その理由は?」
「引き出しの多さ。それに尽きますね」
なるほど。
美鈴はこう見えてかなり永い年月を生きている。
そして、その間に何度も紅魔館を訪れる者と戦闘を繰り広げて来ている筈だ。
人妖を問わず。
となれば当然、武器、すなわち刀を使う人間との戦い方も熟知しているはずだ。
妖夢の腕は人間のそれとは比べ物にならないと言っても、基本的な対処方法は変わらないのだろう。
であるならば、現状なら対処方法や戦術を多く知っている美鈴の方が有利と言うわけか。
「とは言え、直接手合わせをした事がないのでなんとも言えませんが………」
「砕月異変の時に戦わなかったのか?妖夢も紅魔館に行ったと聞いたが?」
「あ~………あの時は、その前に博麗の巫女と霧雨魔理沙が連続で尋ねて来てたので…………」
要するに、二人に完膚なきまでに伸された、と。
「……そう言えば、砕月異変と言えば、お前は鬼の伊吹萃香とも戦ったと聞いたが?」
何処で聞いたかは忘れたが、そう聞いた事がある。
「まぁ………向こうから見れば戦ったと言うよりは暇潰しに遊んだ程度でしょうけど」
ズズズ……と茶を啜りながら美鈴は言う。
「遊んだ……か」
「幻想郷をして幻想となった鬼の力は本物ですね。恐らく、満月の夜じゃないとお嬢様でも危ないと思いますよ」
「それほどか………」
実際相対した事が無いから伊吹萃香の力は解らんのだが………やはり、鬼とは恐るべき者か。
「しかし、魂魄妖夢………か」
美鈴が突如呟く。
「どうした?」
「…………いえ……機会があれば手合わせしてみたいな、と思いましてね」
薄く笑った美鈴の顔は私が知っているそれとは違っていた。
まるで大物と相対した狩人のような………そんな顔だ。
「やるのはお前達の自由だが、くれぐれも周りに迷惑を掛けるような場所で戦うなよ」
「そうですね……それは気を付けましょう」
「やれやれ………お前にもそう言う所はあったんだな」
「そりゃまぁ、一応武道家ですから」
そう言って笑って美鈴の顔は、私が良く知っている顔に戻っていた。
その後は他愛も無い話などを交えながら時を過ごした。



午後3時・慧音宅

「あ、もうこんな時間でしたか」
「む?3時か」
「探したい物もありますので、そろそろ失礼しますね」
「ああ、私も出掛ける用事があるから丁度良い」
私達は一緒に玄関を出た。
「あら?お出かけ」
すると玄関を出たところでまたまた見知った顔に出会った。
「ああ。それに今は入用な薬は無いよ、鈴仙」
永遠亭からの薬売りの鈴仙だった。
「それは残念ね。って、美鈴も居たんだ」
「ええ、お久しぶりです鈴仙さん。」
「ええ、お久しぶり。美鈴はどう?何か入用な薬はある?」
「生憎と、頑丈なだけが取り柄ですから」
美鈴は笑ってそう言った。
「打ち身や切り傷、火傷なんかに効く薬もあるわよ?」
「う………そっちの方は使うかもしれませんが……まだ残ってるんで大丈夫です」
「そう、残念だわ」
「鈴仙はこれで帰りか?」
鈴仙は大抵私の家を最後に回す。
鈴仙曰く「何かあっても必ず誰かが助けてくれてるだろうから、後回しにしてるの」だそうだ。
そんな事は無いと思うのだが……まぁ、半獣なだけに常人よりは頑丈ではあるようなので問題は無いが。
「いえ、後一軒残ってるわ」
「珍しいな……誰の家だ?」
「魔法の森の人形遣いよ」
アリスか。
「へぇ……手広くやってるんですね~」
「まぁ、生きてれば大抵どんな奴でも薬のお世話になるでしょ?だから必然的に色んな所から依頼が来るのよ」
永琳の薬の効き目は絶大だからな………そりゃ依頼も多いだろう。
「さて、それじゃあ私も行く所があるから失礼するよ」
「ええ、私も行くわ。結構離れた場所にあるからね」
「それでは、これで。慧音さん、今日はご馳走様でした」
「構わんさ。それじゃあな」
そうして私達は別れて、各々の目的地目指して歩いていった。


博麗神社・参道

相変わらずここは妖気が充満してるな。
これでは普通の人間は通れまい。
私くらいの実力があれば、向こうから近寄ってくる事は無いが………常人ならたちまち襲われるぞ。
とは言っても、霊夢はどうにかする気が無さそうだがな…………
まったく、困った巫女だ。
……………ん!?
強い妖気が………神社から降りてくる?
誰だ?
八雲紫?いや、あいつなら隙間から現れて隙間に消えるはずだ。
幽々子?だとしたら妖夢の妖気もある筈だ。
同様にレミリアも有り得ん。
ならば、誰だ?
かなり強力だ………最高位に位置するくらいの…………それでいて、巫女が普通に見逃す相手……?
やがてそれは姿を現した。
「あら、半獣」
「会うなり随分と無礼な物言いだな。風見幽香」
フラワーマスター風見幽香。
なるほど、道理で強力な訳だ。
「そう?私の方が長く生きてる、つまり年配者。多少の無礼は良いんじゃない?」
「そう言う問題ではないと思うがな………時に、風見幽香」
「何?」
「今日の昼、阿求に何やらちょっかいを出したようだな?」
「ちょっかい?」
「阿求が言うには、転ばされて下着を見られてと言っていたが?」
阿求が嘘を吐くとは思えんしな。
「ああ、あれ?誤解よ誤解」
「誤解?」
「そう。あの娘が足元に石に気付かないで転びそうになったから掴んで止めてあげようと思ったの。そうしたらうっかり袴の裾を掴んじゃったのよ」
「なんで裾を掴むんだ。普通にやったら掴めんだろう」
足元の方にあるのだから。
「掴んじゃったものはしょうがないじゃない。それとも何?私が嘘を吐いているとでも?」
「ああ」
阿求とこいつ。
どちらを信じるかなど考えるまでも無い。
「信用されてないのね~」
「されてると思ってたのか?」
「全然」
これだから高位の妖怪は………
人を馬鹿にする事を楽しみとしている様な奴等ばかりだ。
「まぁ、信じなくても良いわ。どの道実質的な被害は被ってないでしょう?」
「精神的な被害は被ってるはずだが?」
「事故よ、事故。事故の事まで責任問われちゃ敵わないわ」
「仮に事故だとしても、直ぐに疑われないよう、普段の行いを気を付けたらどうだ?」
「あら?他人の顔を伺えって言うの?冗談じゃないわ」
「誰もそこまで言ってないだろう」
「大体ね、半獣」
「上白沢慧音だ」
「どうでもいいわ」
この………!
「私は妖怪なの。解る?」
「人間の理屈など通じん。そう言う訳だな?」
「そう言う事。貴女は理解が早いから助かるわ」
「はぁ………お前とは話が通じんようだな」
「理解し合えないって悲しいわね………」
「お前が言うな」
「ま、兎に角。人間に傷負わせたりしたんじゃないから良いじゃない。それとも何かしら?貴女が文句を言う理由が出来るように、今から里を襲ってあげましょうか?」
「貴様………!!」
本気で言っているなら、今この場で本気で止めねばなるまい。
例え、私がどうなろうとも!!
「冗談よ、冗談。そんな怖い顔しないで頂戴」
「性質の悪い冗談だな」
「これくらい流せる様にならないと老けるの早くなるわよ?」
「大きなお世話だ」
お前のような者が居なければ大体がそんな事にならん!!
「ま、良いわ。私はこれで失礼するわね」
「里で問題を起こしたら容赦なく攻撃を仕掛けるからな」
「はいはい、覚えておくわ」
何処までも人を馬鹿にしたような女だ………
とは言え、真正面からこいつと事を構えても返り討ちになるだけだ。
取り敢えず、この場はこれで終えよう。
「貴女に似合う色は…………水色かしら?」
すれ違いざまに風見幽香はそう呟いた。
「??何を言って?」
そう言った刹那………




バサッ!!!



「貴女に似合う下着の色を考えてたのよ。あら残念、白。でもそれも似合ってるわよ」
な!?な!?な!?!?
「な、何をする!!!」
この女……後ろから私のスカートを思いっきりめくり上げたぞ!!
私は急いで振り向く勢いで風見幽香の手からスカートを引き剥がして、手で押さえた。
「清楚な白。それも良いわね」
そう言うと同時に風見幽香は空へと舞い上がっていった。
「待て!貴様!!!」
「ふふふ……真っ赤になったその顔、とても可愛いわよ」
こ、この………!!!
「またね、半獣ちゃん」
そう言って猛スピードで飛び去っていった。
あれは私の速度では追いつかない。
くそ………なんて事をする奴だ!!
う~…………まぁ、今は神社に行く事が先決か。
どの道追っても無駄だしな。
あいつに対する対策は後で考えておこう。


博麗神社

「今日は珍しく来訪者が多いわねぇ………」
霊夢は開口一番そう言った。
「そうか。それは良い事だな。相手が妖怪でなければ、だがな」
ここに来るのは十中八九妖怪だからな。
違うと言えば霧雨魔理沙くらいか。
「残念ながら殆ど妖怪だったわよ、慧音」
「まぁ、そうだろうな。先ほど風見幽香とすれ違った所だ………」
……名前を口にしたら先ほどの事を思い出してしまった。
まったく、何て事をする奴だ、本当に……!!
「慧音?どうしたの?ちょっと顔赤いわよ?」
!?
し、しまった……!!思い出したせいで、恥で顔が上気してたか!?
「っ!!そ、そうか…?す、少し長く歩いたから体温が上昇してるんだろう」
ご、誤魔化せるか?
「長く歩いたんなら喉も渇いたでしょ?お茶要る?」
「そうだな……貰えると有難い」
誤魔化せた…か?
そうだと信じよう。
「ん、ちょっと待ってて」
そう言うと、霊夢は神社の奥へと引っ込んでいった。
さて、この間に賽銭を入れておくとしよう。
霊夢も一応妖怪退治などはしっかりと行っている。
里の者の中にも助けられたりする者も居て、感謝の意も込めて賽銭を入れようとする者は居る。
が、如何せん、参道が危険過ぎる為にこの神社に来る事が出来ない。
そこで、代わりに私が里を代表して賽銭を入れに来ている。
その分の賽銭は里の者から任意で集めている物だ。
任意だから、賽銭の多寡は霊夢の働きに掛かってると言って良い。

「はい、お待たせ」
暫くして霊夢がお茶を持って戻ってきた。
「ああ、ありがとう。賽銭は入れておいたぞ」
「ありがと」
霊夢は素直に礼を言った。
この娘も素直な時は可愛いのだがな………
「霊夢、好い加減参拝の道をどうにか出来んのか?」
このままでは何時まで経っても実入りは増えんし、何より霊夢も年頃だ。
そろそろ出会いの一つ二つあっても良かろうに。
「やろうと思えば出来るわよ?」
「では、何故やらない?」
何か深い事情でもあるのか?
「あのね、そこらの低級妖怪なら効くけど、ウチに来るのは大規模な結界なら安易にすり抜けるような奴ばかりよ?」
「むぅ………」
かと言って強力な結界を張れば、霊夢が殆どこの場を動けん状態になるな………
「結界を弱い状態で張ったって何の安全保証にもならないでしょ?」
まったくだ。
安全の保証がなされない限り人は来ないだろう。
「それに、一番厄介なのは大物がウチに来るからでしょ?」
確かにな………
だが、ここに来る連中は大抵人間に興味が無いため、危険性はそれほど高くないのだが………一般人にそれを解れと言うのは無理があるな。
なにせ、その気になれば一瞬で自分達の命を消し飛ばせる奴等だ。
見るだけでも怖かろう。
「で、そいつらが来るなと言って来なくなると思う?」
「いや、有り得ん」
それで済むならこんな問題に発展していない。
「でしょ?だからいくら道を安全にした所で余り意味ないのよ」
「難しい問題だな………」
そう簡単に解決する問題ではなかったか………
「まぁ、こうして慧音が来てくれるのと、正月の稼ぎで何とか持ってるけどね」
「正月か………流石にあの時ばかりはこの神社も大盛況だからな」
「ええ、あの日だけは全力で結界を張ってるわ。稼ぎ時だもの」
妖怪も情緒を楽しむ奴が多いので、正月に殺戮して回るなどという無粋な輩は居ない。
それゆえか、正月だけは人も神社に大勢来る。
まぁ、その時だけは強力な結界が張られているというお陰もあるが。
「ん~………今回は魔理沙やアリスに巫女の仕事手伝ってもらおうかしらね~」
あの二人か………
アリスは兎も角、魔理沙はまともに巫女の仕事が出来るのか?
「そうだ、慧音。慧音も巫女やらない?」
「なんで私が………」
いきなり何を言い出すんだ、この巫女は………
「結構似合いそうだし、慧音がやったらお客増えそうなのよね~……特に男の」
「最後のに凄まじく不純な動機を感じるのだが?」
集客目当てで巫女を雇うな。
まったく。
「気のせいよ」
「誤魔化されんぞ」
私とてそこまで馬鹿ではない。
「大体、人を雇って給金を払えるのか?」
この神社はただでさえ実入りが少ないというのに。
「お茶」
おい。
「それはタダ働きと言うんだ」
「羊羹も付けるわ」
「変わらん」
「がめついわねぇ………」
「お前がな」
まったく……本当に相変わらずだな、霊夢は。
「ついでだから、暇そうな妖夢とかウドンゲ辺りにも巫女やってもらおうかしら?」
「いや、あいつらは恐らく相当忙しいと思うぞ?」
妖夢は幽々子の世話で忙しいだろうし、鈴仙は永遠亭の事で忙しいだろうからな。
「そうなの?妖夢なんて幽々子と一緒に居ると思うから、幽々子を出店かなんかで神社に繋いでおけば巫女の仕事手伝わせられそうなんだけど」
「幽々子は犬か」
「でも、実際繋ぎとめられそうじゃない?」
う………むぅ…………
神社に居ついて、出店の屋台を食い荒らしている幽々子を容易に想像できてしまう………
「…………否定できんな」
もう少し、冥界のお姫様としての威厳を持って欲しいな、あいつには………
「それに、あの二人の巫女ならお客増えそうだし。特に男の」
「だから動機が不純すぎるぞ、霊夢」
集客目当てで巫女を雇うな。
「切羽詰ってるのよ、色々と」
主に金銭関係だろうがな。
「やれやれ…………っと、そろそろ帰るとするか」
洗濯物を取り込んで買い物にも行かんとな。
行く前に洗濯物を取り込んでおくんだったな………失敗した。
「そう?気を付けて帰ってね」
「ああ」
私は巫女と別れて岐路へと着いた。



午後4時・人の里

ん?何だ?
にわかに通りの方が騒がしいな。
行っていると、道の真ん中辺りで牛が2頭、取り押さえられていた。
農耕用の牛だな、あれは。
「何かあったのか?」
私は近くの人間に聞いた。
「あ、慧音様。実は、あの2頭の牛が突然暴れだして、往来の方へと出てきたんですよ」
「何だと!?それで、被害は!?」
牛が暴れたとなれば、最悪死人だって出るぞ!
「あ、いえ。それが、偶々居合わせた2人の妖怪……で良いんですかね?まぁ、兎も角、その方々が牛を押さえつけてくれました。お陰で被害は無いです」
2人の妖怪?
「それが誰だか解るか?」
「え~…っと、一人は紅魔館の門番ですね。あの特徴的な服に紅く長い髪はまず間違いないかと」
美鈴か………今度あったらまた飯をおごってやらんとな。
「もう一人は、あの冥界の庭師の子ですね。銀髪におかっぱ頭の刀使いでしたから、こちらも間違いないかと」
ふむ、妖夢か。
あいつにも何か礼をせんとな。
「まぁ、被害が無かったのなら何よりだ」
恐らくその牛達は蛇か何かにでも驚いて暴れだしたんだろう。
牛や馬が暴れる理由としては良くある事だ。
特に周りへの被害も無さそうなので、私はその場を後にして家へと向かった。


ガララララ………
さて、家に着いてまずやるべき事は、洗濯物の取り込みだな。
「ああ、おかえり慧音」
「不法侵入という言葉を知っているか?妹紅」
居間に行くと、何故か妹紅が茶を啜っていた。
「まぁいいじゃない。私と慧音の仲だし」
「では、親しき仲にも礼儀あり、という言葉は知っているか?」
「知ってるよ。まぁ、洗濯物がこの時間でも出しっぱなしだったから取り込んで、ついでに茶を勝手に頂いてたのよ」
む?確かに洗濯物が取り込まれている。
「むぅ……その事については礼を言うが、その後に我が物顔で居間に居座るのもどうかと思うぞ」
私も以前、妹紅の忘れ物を届けるついでに出しっ放しだった洗濯物を取り込んでおいた事はある。
が、流石にその後その家に居座るという事はしなかったぞ。
「いや、ちょっと喉渇いちゃってね」
「ああ、もう。解った解った」
これ以上問答してものらりくらりとかわされるだけだな。
本当に……長生きしている奴等は、どうしてその貴重な経験の積み重ねをこんな事にしか使えんのだ。
「まぁ、私も妹紅に用があったから丁度良い」
「用?」
「前に言った何かあったら手伝ってもらうとの事だが………早くもその時が来たようだ」
「って事は、力仕事系……だよね?」
安心しろ。
お前に細かい仕事を頼む気は無い。
「何の事は無い。妖怪退治だ」
妹紅ならあいつ相手でも引けは取るまい。
「妖怪退治ぃ?そんなの霊夢に任せれば良いじゃない」
「ちょっと事情があってな」
私は今日の事を簡単に妹紅に説明した。
「……なるほどね。おいたが過ぎたその花の妖怪を懲らしめろって訳か」
「ああ。だが奴は相当に強い。私では満月にでもならんと相手にならん」
いや、満月の夜でも勝てるかどうか………
それほどまでにあいつは強い。
「了解。約束したしね。力になるよ」
「すまんな」
正直、こういう時は妹紅は本当に頼りになる。
「じゃあ、報酬の前払いで晩御飯よろしく」
「待て待て待て。なんでそうなる?今までのタダ飯のツケの様なものだぞ?」
何故そこに報酬が発生する。
「腹が減っては戦は出来ぬ、って言うじゃない」
「やれやれ………その代わり、しっかりと仕事しろよ」
「解ってるって」
「では、食材を買って来ねばな」
奴と戦うのだから、それなりの物でも作ってやるか。
「あ~い。んじゃ、私はここでゴロゴロして待ってるよ」
…………ここは私の家だよな?



午後7時

「さてっと………飯も食ったし、腹ごなしの運動でもして来ますか」
居間で茶を飲んでいた妹紅は立ち上がってそう言う。
「頼んだぞ。だが、くれぐれも気をつけてな……あいつの最強の妖怪と言う肩書きは満更嘘でもないからな」
「任しておいてよ。最近永遠亭の連中ばっかで飽きて来てた所さ。偶には気分転換もしないとね」
そんな気分転換はどうかと思うが………
「疲れて帰るのが億劫だったら、今日は私の家に泊まっても構わんぞ」
「ん~……そうだね。疲れ具合によってはそうさせてもらうよ」
あいつ相手では結構消耗するだろうからな。
「んじゃ、行って来るね」
「ああ、気をつけてな」
「無用な心配だね」
「それでも、だ」
「あいよ。気をつけるよ」
そう言って妹紅は飛んでいった。
まぁ、妹紅なら大丈夫だろうが。



午後8時

今頃は戦闘の真っ最中かな?
よもや妹紅が負けるとは思えんが………少し心配だな。
…………ん?
妖気が……近い!?
私は急いで外に出た。
やけに強力な妖気が近くに来ている。
いや、里からは離れているが…………
しかも、1,2,3………6!?
6つも強力な力を感じる。
妖気だけではない。
私は力を感じる方に向かっていった。
すると、突然、新しく強力な力が現れた。
な、なんという凄まじい力だ。
他の6つを飲み込みかねん程の力…………何者!?
って、あ、あの光景は………
極彩色の球体が乱れ飛んだり結界が張られたり………
れ、霊夢!?
あの力は霊夢なのか!?
ここまで強力な力を持っていたのか、あいつは………
その中で火の鳥やら蝶やらが舞っているが………ダメだ、あの霊夢の前に飲み込まれている。
む、集まっていた6つの力が散った。
どうやら撤退を選んだようだな………
無理も無い、あの霊夢の強さは異常だ。
なるほど、風見幽香を一度退治した事があると聞いていたが………眉唾では無さそうだ。
っと、妹紅がこちらに向かってきた。
「慧音?」
「大体の事は見ていた。取り敢えず、戻ろう。妹紅」
「ああ、そうするよ」
私は妹紅を連れて家に戻った。


「あ~………酷い目にあった」
居間に腰を下ろすと同時に妹紅はそう呟く。
私は茶を持ってきて妹紅に出した。
「ありがと」
「一体何があったんだ?」
私は事の次第を妹紅に聞く事にした。
あそこに居たのは妹紅だけじゃない。
スペルから察するに幽々子、そして紫が居たはずだ。
何故あいつらが?
「いやね、あの妖怪。他でも色々やってたらしくてさ。その悪戯の対象になった奴等の保護者が怒り心頭にやって来てたのよ」
「自業自得……だな」
あの妖怪……他でも色々やってたのか。
「けどまぁ、あいつも口だけじゃないね。私達を相手になんとか凌いでたんだから。ま、もう少ししてたら撃沈してただろうけどね」
「妹紅以外に誰が居たんだ?」
「ん?藍だろ、それに幽々子。後は馬鹿輝夜に紅魔館の魔女だね」
ふむ………これまた最上位の奴等が集結したもんだ。
ん?
「八雲紫は居なかったのか?」
「紫?いや、あいつは居なかったよ。藍が居たしね」
「そうなのか?おかしいな………先ほど見てる時に、確かに奴のスペルカードを見たのだが………」
「気のせいじゃない?」
「………かもな」
それともう一つ気になってた事が。
「よく輝夜と共同戦線を張ったな」
「ん~………今回はお互い目的があったからね。協力してたつもりは無いけど、お互いに邪魔をしないようにしてただけよ」
「ふむ………しかし、何故あんな場所で戦闘を?」
最初からあそこでしていなかったのは解っている。
博麗神社の近くでドンパチやるなど、霊夢の怒りを買うだけとは誰でも解っているからな。
「いや、最初はもっと離れた場所だったんだけど、段々移動しててね………あいつが上手く避けるもんだから、つい熱中して周りが見えて無かったよ」
で、神社の上空まで来てしまったと。
それで霊夢が怒り、あの結果、か。
「まぁ、疲れただろう。今日は風呂に入ってゆっくりすると良い」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「明日思いっきりこき使うんだからな。ゆっくり休めよ」
「はい!?」
「当然だろう?タダ飯のツケも払えず、更にさっきの夕飯で上乗せだ。働いてもらわんと見合わんからな」
「ちょっ!?あれは不可抗力………」
「知らん」
「うそぉ!?」
「本当だ」
幸い、力仕事が必要そうな、里の人間からの頼み事も何個かあったからな。
「あうぅぅぅ………」
「朝と昼くらいは馳走してやるから、我慢しろ」
う~ん………こういう事を言う辺り、私も甘いのか?
「はぁ……それじゃあ、今日はゆっくり休もうかな」
「そうしておけ。明日は思いっきりこき使うからな」
「慧音の鬼ぃぃぃぃ」
「誰が鬼か」
まったく、失礼な奴だ。



翌日

妹紅を働きに送り出した私は、ふと一つの新聞に目が行った。
何時の間にか置かれていたその天狗の新聞には馬鹿馬鹿しい事が書かれていた。
霊夢が既婚者だとか、そんな内容だ。
有り得ないな。
そんな話は一度たりとて私は聞いた事が無い。
博麗の巫女の婚姻に関する話が私の耳に入らない筈が無い。
しかし………
これを見た霊夢はどう思うか?
鼻で笑うか?
それとも……………


後日、その結果が判明した。
霊夢は激昂して妖怪の山に殴りこんで行ったという。
藍からその詳細を聞き、あまりの原因の下らなさから、私は満月を待ってその一件を無かった事にした。
まったく………私の能力は証拠隠滅にあるんじゃないと言うに………
はぁ………相変わらず苦労が減らんな、私も。
本気で苦労を分かち合う伴侶を持つ事を考えようかな……………



今度は慧音編でした。
小悪魔のマシンガントークの所が少し見づらいかもしれません……が、マシンガントークを表現しようとすると、ああする以外思いつかなかったです(´・ω・`)
後、今更ながら、幽香のしゃべり方はあんな感じでいいのかな?
実は良く解ってないです(ぁ
いや、花映塚の台詞くらいは見ましたけどね?
まだまだ、全然伏線部分が明らかになってませんが、というか更に増えてますが、今後でちゃんと明らかになってきます。
いや、ちゃんと考えてますって、本当。

それでは、好評不評問わず、待ってます。
華月
[email protected]
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1200簡易評価
2.60名前が無い程度の能力削除
けーねは苦労が絶えないですね。
しかし小悪魔って、ああいうキャラだったのか…。
ところで紫のスペル云々は結局、慧音の見間違いと言う事でOK?
3.90イスピン削除
あれ?砕月異変では美鈴は寝ていたんじゃないの?(ストーリモードにはひとかけらも出てこないため)

しかしまぁ、小悪魔もキャラが安定しな……ゲフンゲフン、マシンガントークには驚きですねー。
真名なんかも面白い話でした。

さて、いったい幽香は何やったんでしょうか…次回を楽しみにしています。
4.90華月作品を読み漁る程度の能力削除
ここは原作に忠実な設定で、ってところではないので問題ないんでしょうけど
パチュリーや幽々子がそのくらいで出張ってくるかなぁ……と思いました。
まぁ、以前の作品にあった作戦会議っぽいところにも出張ってましたけどね。

……っていうか幽香強ぇっ!あのメンツ相手にやりあえるのかよ!
そしてそいつらを一網打尽にする(食い物の恨みor安眠妨害されたw)霊夢は
華月さんの中では幻想卿最強ということですかね?
ま、最強議論はどこまで行っても終わりませんけどね。面白かったです。
6.90名前が無い程度の能力削除
幽香ってそんなに早く飛べるの?花映塚なんかメッチャ鈍足じゃん!!くそ~、旧作をやってない自分に殺意をおぼえる。
8.80ani削除
ラスボス2人にEXルート出現中ボス2名相手ってwww
中ボス幽香としては普通に考えたら瞬殺されてそうだな

こぁは自分的にはパチュリーに合わせたそこそこ策士系ムダ口なし大人なイメージだったんで
マシンガントーク設定はなんだか新鮮でした
10.80名前が無い程度の能力削除
マシンガントークはそんなに見づらくなかったです。
やったら長いとなんですが、あれくらいならいいんじゃないですかね。
彼女の翼について、背中だけで頭の方は触れてないのは仕様でしょうか?
小悪魔が落ち込んでてパチュリーが出て来たということは、彼女もひがいしゃですか・・・
11.80名前が無い程度の能力削除
いつもながら思わず「これは複線?」などと思いつつ見ています。
次回が読みたいですね、楽しみに待ってます。

それと美鈴に会った時の時刻はミスでしょうか?
午後11時になってますが。
13.80名前が無い程度の能力削除
霊夢編でのちょっとした伏線を思い出して成る程、だから神社の上空にあの面子がいたんだなと。

小悪魔も作者それぞれのイメージがありこれはこれで良いねぇ。
16.70名前が無い程度の能力削除
マシンガントークに描写は問題ないと思います。
強いて言うならもっと中身が無い話を羅列するほうがマシンガントークらしいかな、と思いましたが。
17.無評価名前が無い程度の能力削除
怒り心頭のあのメンバーを長時間は無理とはいえ凌いだのはちょっとね
18.100時空や空間を翔る程度の能力削除
慧音様の純白に萌えたぜ、

今度は誰が主人公か楽しみ~。
19.無評価華月削除
>午後11時になってますが
ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。

>怒り心頭のあのメンバーを~
>……っていうか幽香強ぇっ!
>中ボス幽香としては普通に考えたら瞬殺されてそうだな
>旧作をやってない~
ん~……他所様のを見たり、求聞史記を見る限り、幽香は相当強いと言うイメージが自分の中であったのですが………実際の所そうでもないんですかね?
まぁ、その戦闘模様については別キャラの視点で載せます。
納得がいかれるかは解りませんが^^;
因みに、自分も旧作はやってません^^;
あと、幽香が猛烈なスピードを出せたのはちょっとした理由があります。
それも、他の視点で載せるつもりです。

>霊夢は華月さんの中では幻想卿最強
ぶち切れた霊夢はある意味最強だと思ってます^^

>紫のスペル云々は結局、慧音の見間違いと言う事でOK?
そのあたりの詳細も別視点で載せます。

>中身が無い話を羅列するほうが~
あまり意味の無い台詞を羅列しすぎると、単なる行稼ぎに見えてしまいそうなので、一応それなりの中身の会話にしました。

>小悪魔もキャラが安定しな……
>小悪魔も作者それぞれのイメージが~
小悪魔は明確なキャライメージが無いので、自分の作品で登場する小悪魔は、「華月版小悪魔」とでもご認識ください^^;

>彼女の翼について、背中だけで頭の方は触れてないのは仕様でしょうか?
忘れてた!!Σ( ̄□ ̄

>慧音様の純白に~
服の色とあわせて青も考えましたが、個人的好みで白!!
でも、幽香の言うとおり、水色でも良かったかな~(´・ω・`)
22.50名前が無い程度の能力削除
幽香を過大評価していたというより、明らかに相手側を過小評価しすぎですね
そこ以外は面白かったです
24.60名前が無い程度の能力削除
誤字指摘をひとつ。
> 今に居座るのもどうかと思うぞ

個人的には幽香の力はラスボス級だと思ってますので、
力関係についての描写は違和感ありませんでした。
26.70名前が無い程度の能力削除
幽香は幻想郷の中で最強レベルだと思いますが、相手の中にも同レベルの者がいるような他も高レベルだし
>最上位の奴等
ということです
27.80名前が無い程度の能力削除
逆に人数多すぎなので幽香大丈夫だったのでしょうか?
それと霊夢のところに流れ着いたのって偶然?
何の歴史なかったことにしたのか楽しみです。
36.100名前が無い程度の能力削除
けーねのパンツは白だと!?
ぶふぉ(鼻血)
37.80名前が無い程度の能力削除
むぅ