これは椎茸である。
エリンギでもマッシュルームでもベニテングタケでもなく椎茸である。
夕暮れ時、空は焔のような赤に染まっていた。
少し薄暗い神社の中で霊夢は籠に入った複数の椎茸達と向かい合っていた。
実りの秋、霊夢の食生活は他の季節よりは潤っていた。
しかも今日は珍しく紫が椎茸を土産に置いて行ってくれたのだ。
霊夢はそっと手を伸ばし籠の中の椎茸の一つを手に取りじっと見詰めた。
細く、そして雪の様に白い石突き。その感触はまるで幼女の肌のようにしっとりと霊夢の指に吸い付くようだ。
そして石突きの上に広がる傘はぷっくりと肉厚で、その弾力は幼い子供の頬を思わせるほど柔らかく、
さらに圧力を受けても直ぐに戻る適度な弾力も同時に霊夢の指に伝えた。
霊夢は椎茸を自分の口元に運び、寒さで少し赤みを失った唇でそっと傘に触れた後、
彼女のその小さな口を開き、その白く美しい指で彼女の口に椎茸を押し込んだ。
「あふっ…」
椎茸が霊夢の口内を圧迫し、霊夢は眉をひそめ少し苦しげな表情を浮かべたがなんとかその全てを口に含み、
目を閉じ、じっくりと租借をした後その細い喉をこくんと鳴らし、よく租借したそれを飲み込んだ。
そしてしばらく目を閉じ口内に残った味と香りを楽しんだ霊夢は、ほぅと溜息を吐き胸に手を当てて感心した。
「これはとても良い椎茸ね。」
霊夢はそう独り言じみた感想を述べるともう一度目を閉じた。そして訪れる静寂。
さわさわと落葉で少なくなった木々の囁きや、風に舞い擦れ合う落ち葉達の声が霊夢の耳に届く。
そして遠くで鳥の無く声。
ひゅるり
一筋の風が音を立てて霊夢を通り抜け、その髪や服を揺らし頬を撫でた。
夕暮れの静けさ、昼と夜の境目の妖しさ。それが音や感触や匂いとなり霊夢をやさしく包んでいた。
霊夢はそっと目を開け、目の前の椎茸を少し哀しげな瞳で見詰める。
「嗚呼、松茸にならないかなぁこの椎茸。」
そう言って霊夢は両手を突き出し目を堅く閉じた後、
広げた両手の平から何かエネルギーのようなものが出るイメージを浮かべ両手に力をしばらく込め、そして念じるように何度もこう呟き続けた。
「松茸になれ。松茸になれ。一本で良いですから松茸になって下さい。」
そして数十秒後、少し息を荒くした霊夢が目を開けるとそこには、
相変わらず上質で瑞々しい立派な生椎茸達が籠に入っていた。
「駄目か。」
霊夢は空しい疲労と脱力感を感じた。秋の風物詩の王と言っても過言ではない松茸。彼女はどうしてもそれを味わいたかった。
その願いを込めてみたのだがどうやら願いは届かず、
気分的になんとなく椎茸のうまみ成分が増加したような錯覚を起す程度の効果しかなかった。
霊夢は椎茸を松茸に変化させることを諦め、さてこの椎茸をどう料理しようかと思考しながら立ち上がった。
しかし彼女の足は痺れ立ち上がる力を持っていなかった。霊夢は、とさりと薄い座布団の上に尻餅をついた。そして数秒後襲い掛かる痺れ。
霊夢は足をピンと伸ばし、背中を少し丸め巫女服の袖口を甘く噛みながら、苦しげな表情でその痺れに耐える。
「あっ…あぅ…。つぅ…。」
しばしの悶絶の後痺れの波は徐々に引き、一気に流れ込んだ血液が彼女に両足の暖かさを感じさせた。
足の温かさに釣られたのか彼女の頬がほんのりと桃色に染まった。
しかし霊夢の体全体はすっかり太陽が沈み、本格的に闇が訪れた外の冷たい風により寒さを覚えていた。
霊夢は雨戸を閉めようと膝を使って移動する。そして彼女の目に良く晴れた夜の空が映った。
月を隠す雲も無く星空がその輝きを主張する空。澄んだ空気はその全てを霊夢の目に素直に届けた。
そしてその星空を人型に塞ぐ何か。その何かは手から柔らかな光を出し自らの姿をぼんやりと映し出させた。
大きなとんがった帽子をかぶった少女が純粋な少年のような笑顔で霊夢に声をかける。
「霊夢。こんなに部屋を暗くして天体観測でもするつもりなのか?」
そう言った少女に霊夢はふるふると首を横に振り、少女を部屋の中に招き入れた。
少女を中に招き入れ雨戸を閉めた後、霊夢は明かりに灯を入れた。
その瞬間光が部屋の中を照らし、霊夢と少女の姿をはっきりとさせる。
霊夢は座布団に座ると、ついと少女に視線を向け少女に座るように勧めた。
少女は霊夢の対面の床に直接座ると霊夢と自分との間にある椎茸の籠に興味を示した。
「おぉ、これは良い椎茸だな霊夢。」
「ええ、さっき一つ味見したけど本当に良い椎茸よ。」
それを聞いて少女は霊夢の言葉を理解できなかったかのように、怪訝な顔をした。
「おいおい、椎茸は石突きごと生で食べるものじゃないぜ?」
「魔理沙は上品なのね。」
「お前がものぐさなだけだぜ。」
そう言って少女、魔理沙は苦笑した。そして魔理沙は目の前の椎茸を一つ取り上げ、しげしげと眺める。
「それにしても良い椎茸だな。料理をしたらうまそうだ。」
「一本たりともあげないわよ。今日の夕食なんだから。」
急須からお茶を注ぎながら霊夢は魔理沙にそう釘を刺した。
魔理沙は霊夢に出された少し薄めのお茶を一口すするとポンと手を叩く。
「じゃあこれと交換でどうだ?」
そう言って魔理沙は自分の後ろに置いてあった包みを霊夢の前に置き、その中身を晒した。
その瞬間霊夢の鼻に松茸の良い香りが届いた。包みの中には小振りながらも正真正銘の松茸がいくつも存在していた。
「群生していたのを採取したは良いが食べ切れないのでアリスの家にでも持って行こうと思っていたんだが。」
魔理沙はそっと霊夢の前にその包みを押し出し、困ったように笑った。
「駄目かな?」
霊夢は放心した瞳でゆっくりと首を横に振る。その口の端からは涎が糸を引き、彼女の巫女服の胸元を少し汚していた。
「ううん。椎茸は持って行って良いわ。」
冷静を装い、松茸の入った包みをそっと自分の下へ引き寄せそう言った霊夢の手を魔理沙はうれしそうに取り、
そして満面の笑みで霊夢に感謝の意を述べた。
「ありがとう霊夢!いやほんとうに済まないぜ。突然やって来てこんな良い椎茸をもらうなんて。」
そう言って上機嫌に椎茸の籠を抱えた魔理沙に霊夢も満面の笑みで返した。
「良いのよ。魔理沙が喜んでくれてうれしいわ。」
ぽたっ
霊夢の口元の涎がまた一滴服の胸元に滴り落ちた。
これは夢だろうか。それとも死ぬ前の幻想だろうか。霊夢は幸せの余りそう思ってしまった。
目の前に並ぶのは松茸ご飯に七輪で丁寧に焼いた焼き松茸、そして松茸の吸い物だ。
霊夢は箸で焼いた松茸を解し少し震えながら裂いた松茸を口に入れた。
彼女の口の中に松茸の香りが広がり、鼻腔に抜けていく。
霊夢は本当に丁寧に租借をし、名残惜しそうに松茸を胃に送った。
箸を置き椀に手を伸ばし、口をつけ少量の吸い物を流し入れる。
ずずっ
上品に味付けした汁と松茸の最高の味と香りが霊夢の舌と心を溶かしていった。
「あはぅ…。」
椀を両手で捧げ持ったまま恍惚の表情を霊夢は浮かべ、ぺろりと舌で唇に付いた吸い物を慈しむ様に舐め取った。
そして松茸ご飯。ふっくらと炊き上がった味の付いたご飯の中で存在感を示す松茸。
霊夢はご飯と松茸を一緒に口に運んだ。
ふっくらとしたごはんの熱さが松茸の香りをより鮮明にし、その味と香りの筆舌に尽くしがたい交差の喜び、
霊夢は自分の理性が少し薄れていくのを感じた。しかし松茸の誘惑の前に彼女はただ目の前の幸福を享受し続ける。
ただ味と香りの快楽に身を任せ、霊夢は松茸に溺れ切っていた。
食卓を挟んでアリスと魔理沙は仲良く座っていた。二人の目の前には大鍋のシチューと手作りパンとバター。
質素だがとてもおいしそうなそのメニューを囲み、二人は笑顔だった。
「ありがとう魔理沙。椎茸をシチューの具にしたの。いっぱい食べて。」
そう言って照れくさそうに魔理沙にシチューを取り分けた皿を差し出し、アリスは恥ずかしそうに俯いた。
魔理沙はシチューを一口食べるとにっこり笑い。ただ一言だけ思いを込めて言った。
「おいしいぜ。アリス。」
アリスは顔を上げた。その顔はまだ恥ずかしそうに笑っている。魔理沙は自分のシチューをスプーンですくい上げ
アリスの目の前に差し出した。
「ほら。うまいぜ。あ~ん。」
アリスは少し恥ずかしそうに目を伏せたが、魔理沙の差し出したシチューを口に入れた。椎茸と鶏肉がとてもおいしい。
アリスもニッコリ笑って頷いた。
「うん。おいしいね。」
そして二人は取り留めの無い話をしながらバターを塗ったパンを食べ、椎茸と野菜と鶏肉だけのシチューを食べた。
しかし二人はとても幸せだった。二人で一緒に夕食を食べる時間、それは二人にとってなによりのご馳走なのだ。
「なぁアリス。」
「なぁに?魔理沙。」
パンにバターを塗るアリスに魔理沙は意地悪そうな笑顔を向けた。
「さっきのスプーン間接キスだな。」
その瞬間アリスの頬は林檎のように真っ赤になる。彼女はスプーンを取り落とし、両手を熱くなった頬に手を当てた。
「や…やだ…魔理沙…。もぅ…からかわないでよ。」
そう言ってアリスは床に落ちたスプーンを拾って、まだ紅潮した頬のままそっぽを向いた。
「デザートのアップルパイ…食べさせてあげないんだから。」
魔理沙は苦笑いしながら椅子から立ち上がりアリスの後ろに立った。
そしてふわりとその両手で後ろからアリスを抱きしめるとその耳元で砂糖菓子のように甘く囁く。
「ごめんごめん。あんまりアリスが可愛いからついな。」
「もぅ…魔理沙のばか…。」
アリスはそう言いながら両手をスカートの上から太ももで挟んで恥ずかしそうに俯いた。
魔理沙はその頬に優しくキスをする。アリスはさらに真っ赤になって自らの幸せを感じていた。
暖かで幸せで。アリスと魔理沙は心から自分を幸福だと思っていた。
夜は更け、寒さは強くなる。しかし彼女達にそれは伝わることはないだろう。
幸福と言う名の太陽が彼女達の上に燦然と輝いているのだから。
おしまい
エリンギでもマッシュルームでもベニテングタケでもなく椎茸である。
夕暮れ時、空は焔のような赤に染まっていた。
少し薄暗い神社の中で霊夢は籠に入った複数の椎茸達と向かい合っていた。
実りの秋、霊夢の食生活は他の季節よりは潤っていた。
しかも今日は珍しく紫が椎茸を土産に置いて行ってくれたのだ。
霊夢はそっと手を伸ばし籠の中の椎茸の一つを手に取りじっと見詰めた。
細く、そして雪の様に白い石突き。その感触はまるで幼女の肌のようにしっとりと霊夢の指に吸い付くようだ。
そして石突きの上に広がる傘はぷっくりと肉厚で、その弾力は幼い子供の頬を思わせるほど柔らかく、
さらに圧力を受けても直ぐに戻る適度な弾力も同時に霊夢の指に伝えた。
霊夢は椎茸を自分の口元に運び、寒さで少し赤みを失った唇でそっと傘に触れた後、
彼女のその小さな口を開き、その白く美しい指で彼女の口に椎茸を押し込んだ。
「あふっ…」
椎茸が霊夢の口内を圧迫し、霊夢は眉をひそめ少し苦しげな表情を浮かべたがなんとかその全てを口に含み、
目を閉じ、じっくりと租借をした後その細い喉をこくんと鳴らし、よく租借したそれを飲み込んだ。
そしてしばらく目を閉じ口内に残った味と香りを楽しんだ霊夢は、ほぅと溜息を吐き胸に手を当てて感心した。
「これはとても良い椎茸ね。」
霊夢はそう独り言じみた感想を述べるともう一度目を閉じた。そして訪れる静寂。
さわさわと落葉で少なくなった木々の囁きや、風に舞い擦れ合う落ち葉達の声が霊夢の耳に届く。
そして遠くで鳥の無く声。
ひゅるり
一筋の風が音を立てて霊夢を通り抜け、その髪や服を揺らし頬を撫でた。
夕暮れの静けさ、昼と夜の境目の妖しさ。それが音や感触や匂いとなり霊夢をやさしく包んでいた。
霊夢はそっと目を開け、目の前の椎茸を少し哀しげな瞳で見詰める。
「嗚呼、松茸にならないかなぁこの椎茸。」
そう言って霊夢は両手を突き出し目を堅く閉じた後、
広げた両手の平から何かエネルギーのようなものが出るイメージを浮かべ両手に力をしばらく込め、そして念じるように何度もこう呟き続けた。
「松茸になれ。松茸になれ。一本で良いですから松茸になって下さい。」
そして数十秒後、少し息を荒くした霊夢が目を開けるとそこには、
相変わらず上質で瑞々しい立派な生椎茸達が籠に入っていた。
「駄目か。」
霊夢は空しい疲労と脱力感を感じた。秋の風物詩の王と言っても過言ではない松茸。彼女はどうしてもそれを味わいたかった。
その願いを込めてみたのだがどうやら願いは届かず、
気分的になんとなく椎茸のうまみ成分が増加したような錯覚を起す程度の効果しかなかった。
霊夢は椎茸を松茸に変化させることを諦め、さてこの椎茸をどう料理しようかと思考しながら立ち上がった。
しかし彼女の足は痺れ立ち上がる力を持っていなかった。霊夢は、とさりと薄い座布団の上に尻餅をついた。そして数秒後襲い掛かる痺れ。
霊夢は足をピンと伸ばし、背中を少し丸め巫女服の袖口を甘く噛みながら、苦しげな表情でその痺れに耐える。
「あっ…あぅ…。つぅ…。」
しばしの悶絶の後痺れの波は徐々に引き、一気に流れ込んだ血液が彼女に両足の暖かさを感じさせた。
足の温かさに釣られたのか彼女の頬がほんのりと桃色に染まった。
しかし霊夢の体全体はすっかり太陽が沈み、本格的に闇が訪れた外の冷たい風により寒さを覚えていた。
霊夢は雨戸を閉めようと膝を使って移動する。そして彼女の目に良く晴れた夜の空が映った。
月を隠す雲も無く星空がその輝きを主張する空。澄んだ空気はその全てを霊夢の目に素直に届けた。
そしてその星空を人型に塞ぐ何か。その何かは手から柔らかな光を出し自らの姿をぼんやりと映し出させた。
大きなとんがった帽子をかぶった少女が純粋な少年のような笑顔で霊夢に声をかける。
「霊夢。こんなに部屋を暗くして天体観測でもするつもりなのか?」
そう言った少女に霊夢はふるふると首を横に振り、少女を部屋の中に招き入れた。
少女を中に招き入れ雨戸を閉めた後、霊夢は明かりに灯を入れた。
その瞬間光が部屋の中を照らし、霊夢と少女の姿をはっきりとさせる。
霊夢は座布団に座ると、ついと少女に視線を向け少女に座るように勧めた。
少女は霊夢の対面の床に直接座ると霊夢と自分との間にある椎茸の籠に興味を示した。
「おぉ、これは良い椎茸だな霊夢。」
「ええ、さっき一つ味見したけど本当に良い椎茸よ。」
それを聞いて少女は霊夢の言葉を理解できなかったかのように、怪訝な顔をした。
「おいおい、椎茸は石突きごと生で食べるものじゃないぜ?」
「魔理沙は上品なのね。」
「お前がものぐさなだけだぜ。」
そう言って少女、魔理沙は苦笑した。そして魔理沙は目の前の椎茸を一つ取り上げ、しげしげと眺める。
「それにしても良い椎茸だな。料理をしたらうまそうだ。」
「一本たりともあげないわよ。今日の夕食なんだから。」
急須からお茶を注ぎながら霊夢は魔理沙にそう釘を刺した。
魔理沙は霊夢に出された少し薄めのお茶を一口すするとポンと手を叩く。
「じゃあこれと交換でどうだ?」
そう言って魔理沙は自分の後ろに置いてあった包みを霊夢の前に置き、その中身を晒した。
その瞬間霊夢の鼻に松茸の良い香りが届いた。包みの中には小振りながらも正真正銘の松茸がいくつも存在していた。
「群生していたのを採取したは良いが食べ切れないのでアリスの家にでも持って行こうと思っていたんだが。」
魔理沙はそっと霊夢の前にその包みを押し出し、困ったように笑った。
「駄目かな?」
霊夢は放心した瞳でゆっくりと首を横に振る。その口の端からは涎が糸を引き、彼女の巫女服の胸元を少し汚していた。
「ううん。椎茸は持って行って良いわ。」
冷静を装い、松茸の入った包みをそっと自分の下へ引き寄せそう言った霊夢の手を魔理沙はうれしそうに取り、
そして満面の笑みで霊夢に感謝の意を述べた。
「ありがとう霊夢!いやほんとうに済まないぜ。突然やって来てこんな良い椎茸をもらうなんて。」
そう言って上機嫌に椎茸の籠を抱えた魔理沙に霊夢も満面の笑みで返した。
「良いのよ。魔理沙が喜んでくれてうれしいわ。」
ぽたっ
霊夢の口元の涎がまた一滴服の胸元に滴り落ちた。
これは夢だろうか。それとも死ぬ前の幻想だろうか。霊夢は幸せの余りそう思ってしまった。
目の前に並ぶのは松茸ご飯に七輪で丁寧に焼いた焼き松茸、そして松茸の吸い物だ。
霊夢は箸で焼いた松茸を解し少し震えながら裂いた松茸を口に入れた。
彼女の口の中に松茸の香りが広がり、鼻腔に抜けていく。
霊夢は本当に丁寧に租借をし、名残惜しそうに松茸を胃に送った。
箸を置き椀に手を伸ばし、口をつけ少量の吸い物を流し入れる。
ずずっ
上品に味付けした汁と松茸の最高の味と香りが霊夢の舌と心を溶かしていった。
「あはぅ…。」
椀を両手で捧げ持ったまま恍惚の表情を霊夢は浮かべ、ぺろりと舌で唇に付いた吸い物を慈しむ様に舐め取った。
そして松茸ご飯。ふっくらと炊き上がった味の付いたご飯の中で存在感を示す松茸。
霊夢はご飯と松茸を一緒に口に運んだ。
ふっくらとしたごはんの熱さが松茸の香りをより鮮明にし、その味と香りの筆舌に尽くしがたい交差の喜び、
霊夢は自分の理性が少し薄れていくのを感じた。しかし松茸の誘惑の前に彼女はただ目の前の幸福を享受し続ける。
ただ味と香りの快楽に身を任せ、霊夢は松茸に溺れ切っていた。
食卓を挟んでアリスと魔理沙は仲良く座っていた。二人の目の前には大鍋のシチューと手作りパンとバター。
質素だがとてもおいしそうなそのメニューを囲み、二人は笑顔だった。
「ありがとう魔理沙。椎茸をシチューの具にしたの。いっぱい食べて。」
そう言って照れくさそうに魔理沙にシチューを取り分けた皿を差し出し、アリスは恥ずかしそうに俯いた。
魔理沙はシチューを一口食べるとにっこり笑い。ただ一言だけ思いを込めて言った。
「おいしいぜ。アリス。」
アリスは顔を上げた。その顔はまだ恥ずかしそうに笑っている。魔理沙は自分のシチューをスプーンですくい上げ
アリスの目の前に差し出した。
「ほら。うまいぜ。あ~ん。」
アリスは少し恥ずかしそうに目を伏せたが、魔理沙の差し出したシチューを口に入れた。椎茸と鶏肉がとてもおいしい。
アリスもニッコリ笑って頷いた。
「うん。おいしいね。」
そして二人は取り留めの無い話をしながらバターを塗ったパンを食べ、椎茸と野菜と鶏肉だけのシチューを食べた。
しかし二人はとても幸せだった。二人で一緒に夕食を食べる時間、それは二人にとってなによりのご馳走なのだ。
「なぁアリス。」
「なぁに?魔理沙。」
パンにバターを塗るアリスに魔理沙は意地悪そうな笑顔を向けた。
「さっきのスプーン間接キスだな。」
その瞬間アリスの頬は林檎のように真っ赤になる。彼女はスプーンを取り落とし、両手を熱くなった頬に手を当てた。
「や…やだ…魔理沙…。もぅ…からかわないでよ。」
そう言ってアリスは床に落ちたスプーンを拾って、まだ紅潮した頬のままそっぽを向いた。
「デザートのアップルパイ…食べさせてあげないんだから。」
魔理沙は苦笑いしながら椅子から立ち上がりアリスの後ろに立った。
そしてふわりとその両手で後ろからアリスを抱きしめるとその耳元で砂糖菓子のように甘く囁く。
「ごめんごめん。あんまりアリスが可愛いからついな。」
「もぅ…魔理沙のばか…。」
アリスはそう言いながら両手をスカートの上から太ももで挟んで恥ずかしそうに俯いた。
魔理沙はその頬に優しくキスをする。アリスはさらに真っ赤になって自らの幸せを感じていた。
暖かで幸せで。アリスと魔理沙は心から自分を幸福だと思っていた。
夜は更け、寒さは強くなる。しかし彼女達にそれは伝わることはないだろう。
幸福と言う名の太陽が彼女達の上に燦然と輝いているのだから。
おしまい
感覚無くなってるのに気付かず立ち上がろうとすると、とっても危険
立ったら立ったで動けない
それはともかく、私は魔理沙アリスペアを選びます
とはいえ、相手がいないから自動的に松茸の無い霊夢側
GJ!!
良いですなぁマリアリ・・・・・・
霊夢側も魅力的ですが、大勢で楽しい食事の方が俺は好きです!!
それが好きな相手同士なら尚のこと。
よって、魔理沙アリスペアに一票。
1人で松茸料理堪能する「霊夢」と
2人恋人と食べる椎茸シチュー「アリス」
どっちが幸せでしょうか?
判断は皆さんに委ねます。
あるかと問うたら在るけれど、今は目の前の幸せでおなかいっぱい
霊夢のお腹は膨れるし、魔理沙とアリスは良い御仲って訳ですね?(何言ってんだ俺)
もちろん松茸だと言わせてもらうっ
食事は好きな相手と食べるのが一番だと思うのでアリス魔理沙ペアに一票。
松茸は知らないけど椎茸は知ってる魔理沙可愛いよウフフ
されているように見えるのですが。
「香り松茸味しめじ」とかよくいいますけど、実際どうなんでしょうね
喰っちゃったら次の日、病院行きだぜ?
一週間後、ローカルニュースで痴態を晒すハメに…orz
故に私にゃ魔理沙とアリスの二人の方が幸せに映った。
関係ありませんでしたね。
よかったです。
松茸を食べてみたいけど、恋人同士もいいなぁ。と真剣に悩んでしまいましたw
なので、一概にこちらが幸福と断定できないです。しかし、どちらも羨ましい。