Coolier - 新生・東方創想話

死神さんたら

2007/10/22 07:33:58
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「人間って奴ぁ、本当に自分勝手だねぇ」
 そう、いかにもな口ぶりと声音で語る女がいる。
 彼女が操る小さな舟には、一人――と、表現することが出来るかどうかはわからない――の客が乗っていて、彼女の言葉に『そうだそうだ』と言わんばかりにうなずいていた。
「他人のことは理解しようともしない。そのくせ、自分の都合は押しつける。
 そういうさ、何て言うのかね。ぎくしゃくしたものっていうか、価値観の相違というか。一種のわがままみたいなもんなんだろうね。自分はこんなに何とかなのに、相手は何にもこっちを気にしてくれない、とかさ」
 その視線の向こう側に、岸が見えてきた。
 ぎこぎこと、耳障りではあるものの、決して邪魔にならない音を立てながら櫂を操る彼女は、「でもさ」と言う。
「世の中にゃ、超能力者ってのは、案外少ないもんさ。
 口に出さなくても言葉が伝わるってのは、一種の理想ではあるけれど、まぁ、そんなのは滅多にないもんさね。口に出さなきゃわからないことだって、たくさんあるもんさ。
 そうだろう?」
 その言葉に。
 舟の客は、はっとしたような反応を見せた。ま、そういうもんさ。彼女はそう言って、その客を岸へと降ろす。「お疲れさん」と、それをねぎらって。
「ま、だけど、あんたは意外と人がいいみたいだ。こんなに早く向こう岸に渡れた奴なんて、そうはいないよ。
 その辺り、もう一回、自分のことを考え直した上で、閻魔様に申し開きするんだね」
 そう、諭すように言う彼女――小野塚小町の言葉に、本日、二人目の『客』は、深々と頭を下げて去っていくのだった。

「この頃、妙に業務にいそしんでいるようですが」
「やー、何て言うんですかねー。人生相談、っていうんですか? そんなもんの面白さに目覚めちまいましてねー」
 答える言葉はもっともであるが、内心では、『相手の身の上話を聞くのが楽しくて仕方ない』と言っているのは、もはや言うまでもないだろう。
 彼女の反応に、その上司、四季映姫女史は、はぁ、とため息をついた。
「……まぁ、姉御肌の、話のわかる船頭にほだされました、というのがかなり増えてきましたからね。それはそれでよしとするべきなのでしょうが」
 手にした勺で、ばしん、と彼女の頭を一発。
「他人の人生に対して軽率な発言は控えなさい。全く、あなたは軽挙妄動の端的なものでしょうか。よろしいですか、そもそも――」
「あ~、はいはい」
「こら! 小町! 聞いてますか!?」
「聞いてますよ~」
 彼岸花咲き乱れる川辺に寝そべって、大あくび。
 こいつめ、どうしてくれよう、という目で映姫は彼女を見るのだが、悲しいかな、この頃、小町はこうやって叱られることに慣れてきてしまっているのか、なかなか、昔のようにしおらしい態度を見せることはなくなっていた。
 彼女も、内心では、映姫が本気で怒っているわけではないことを悟っているのだろう。映姫自身、別段、彼女をとがめようと言うのではなく、ほんの少し、その素行について注意をしているだけなのだ。無論、映姫がマジギレした時は、小町は平身低頭、土下座どころか下半身まで地面にめり込むのである。
「……全く。
 まぁ、いいでしょう」
「お、今日は早かった」
「本日は一日、あなたに休暇を申し渡します。私も、少々、席を外す用事が出来てしまいましたので」
 こんな時に、裁きを待つ霊魂を連れてきてもらっても困ります、というのが映姫の言い分だった。
 小町は、「珍しいですね」と答えつつ、内心で『よっしゃ!』とガッツポーズを取る。
「なので、昨日以来、幻想郷のもの達の様子がどのように変わってきているのか、実に興味があります。偵察してきなさい」
「いやー……あいつらは、もう、未来永劫、ずーっとあんな感じじゃないですかねー……。正直、川を永遠に渡りきれなさそうなのが多数……」
「そう思うなら、あなたの自慢の『姉御肌』で何とかしてくればいいんじゃないですか?」
「……ぐはぁ」
 痛烈な嫌みだった。
 訂正。映姫は、確かに本気では怒っていないようだ。しかし、『怒っている』という事実にもまた、変わりはなかったのである。

「偵察してこいと言われても……」
 正直、どうしたもんだか。
 ぼやく小町は、のんびりふよふよと辺りを漂いながら幻想郷を目指す。ぶっちゃけ、サボってその辺りで昼寝でもしておきたいところだが、映姫のことだ。きっと、小町がサボるような素振りを見せようものなら、いきなりどこからともなく現れて攻撃して来るに違いない。
 あの人の神出鬼没っぷりにはかなわないね、と彼女は肩をすくめて。
「おや、妖夢じゃないかい」
「あ、小町さん、こんにちは」
 たまたま、銀髪おかっぱの少女一人とすれ違う。
 そう言えば、こいつも、四季さまに何事かを言われていたねぇ。そんなことを思い出し、「どうだい? 景気は」と訊ねる。
「景気……ですか。正直に言えば、あんまり、ですね。
 まぁ……私の苦労はいつも通りのことですし……。あ、でもですね、最近、白玉楼の庭に柿の木がうまい具合に育ちまして。どうですか? 小町さんもお一つ」
「お、いいねぇ。是非とも……と、言いたいところだが、あたいはこれから、ちょっとばかり下界でお仕事さね」
「お仕事……ですか。珍しい」
「おいこら」
「あ、い、いや、冗談ですよ!」
 全く、素直な娘である。嘘がつけないというか、ある意味、歯に衣を着せないというか。
 ともあれ、小町は、何とか妖夢の暴言を大人の度量でもってスルーして、「ま、まぁ、そういうことなのさ」と言葉を返す。ただし、ちょっぴり、声は引きつっている。
「お仕事……ですか。ご苦労様です」
「ああ、まぁ、ね……」
「私も、お仕事、頑張らないといけないんですけどね……」
「ん? 何かあったのかい?」
「ああ、いえ……。これは私事なんですけれど、最近、どうにも剣の腕がなまってきているように感じていまして」
 やっぱり、相手が木の杭や丸太ではダメかもしれません、と妖夢は笑った。
 ふぅむ、と小町はうなずいてから、「あれだね。あのお姫さんはどうだい?」と訊ねる。もちろん、そのお姫様は、妖夢の言うことなんてまるで聞こうとはせず、今頃はお屋敷の縁側で『柿はまだかしら~わくわくうきうき』としていることだろう。
「あはは……まぁ、幽々子さまはいつもの調子でして」
「いや、案外、そんなこともないんじゃないかい?」
「……と、言いますと?」
「あのお嬢さんは、ほんと、あんたのことをかわいがってるからね。素直に事情を話せば協力くらいはしてくれるだろうさ。
 あんたの役目も果たせて、ついでに剣術の訓練も出来る。いいことずくめじゃないかい」
 そういうものの考え方もあるか、と妖夢は腕組みをして悩み出してしまった。真面目なことこの上ないが、それも、度が過ぎれば、少々無粋である。
「そんなに難しく考えることはないよ。
 あれさ。さしずめ、自分の子供が『一緒に遊ぼう』って言ってきているのに断る大人はいないだろう?」
「……私、子供じゃないです」
「そういうセリフが臆面もなく出てくるうちは、まだまだ子供なのさ」
 むぅ、とほっぺた膨らます妖夢の頭をぽんぽんと叩きながら。
 両者の背の高さが如実に表れるそれに、妖夢はますますへそを曲げたようだが、小町はそんなことは気にせずに、「ちょっくらお願いします、って言ってみたらどうだい?」と笑顔で語りかけた。
「……まぁ、それなら、考えてみます」
「だろう?
 結局ね、何だかんだ言って、親とか家族ってのは、最後は自分の味方に回ってくれるもんさ」
「私……その……」
「あんたにとっちゃ、そして、お姫さんにとっちゃ、お互い、大事な家族なんだろう?」
 気にすることはないさ、と。
 そんな言葉に、妖夢は何を感じたのだろう。「ありがとうございました」と頭を下げて、彼女はその場を去っていく。「……おっと。四季さまからのお使いを、早速ミスっちまったね」と、小町は頭をかくのだが、もはやそれは後の祭りである。遠ざかっていく妖夢の足の速さに追いつくのは難しいことであるし、それに加えて、ちょっぴりではあるが、彼女の横顔に期待の色があったのだ。よけいな横やりを入れて、その熱を冷まさせることもないだろう。
 そう判断して、小町は踵を返す。幻想郷にはうまい酒が多かったねぇ、などと思いながら。

 なお、その後の妖夢であるが。
「それじゃぁ、そうねぇ。久々にぃ、相手をぉ、してあげるわぁ」
「は、はい!」
「それじゃぁ、行くわよぉ」
「わかりました、幽々子さま!」
 ――ああ、ありがとうございます、小町さん! 小町さんの仰った通り、幽々子さまは、やっぱり私のことを……。
「奥義! 乱れ西行妖ぃっ!」
「って、幽々子さま、それは大剣技じゃなかったでしたっけしかもアレンジ加わってるきゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 と言う具合に、ソウルスティールされていたのでしたとさ。

「さて、まずどこに行こうかねぇ?」
 やってきたはいいものの、どこで何をしたらいいか、とんと見当が付かず、風に流されるようにふわふわと漂いながら。
 そうだ、と小町は手を打った。
 どうせだから、茶を飲ませてくれるようなところがいいね。
 思い立ったが吉日。最初に向かったのは紅の悪魔の館である。ここの連中は、それなりに、外部の相手に対して敬意を表すると聞いている上、何やら、『レストラン』みたいなものも営んでいると言うではないか。
 軽く顔を出して、ちょこっと時間を過ごして、そのついでにお茶とお菓子が出てくれば最高である。頭の中を打算まみれにしながら、小町は、その館へとやってきて。
「……おや?」
 何やら、館の中が騒がしいことに気づいて首をかしげる。
「あー、えっと……」
「門番隊のみんなも協力してっ! 何とかしないと、館がっ! 私たちのおうちがこの世から消滅するわよマジでっ!」
「私、まだ雨宿りの出来るところが見つかってないのよっ! こんなところでめげてたまるもんですかぁぁぁぁぁぁっ!」
「左舷、弾幕薄いわよ! 何やっているのっ!」
「こっちは精一杯なのよっ!」
「ケンカはいいから何とかしなさいよっ!」
「あー、すまないんだけどね」
 手にした鎌を、相手の首筋に突きつけながら、
「ちょいとばかり、何が起こってるのか、説明して欲しいんだがねぇ?」
 一人のメイドを捕まえて、その耳元に、そっと口を寄せてささやくように一言。
 どう見てもアレな光景に、その場のメイド達は戦慄し、捕まったメイドは「い、命だけはぁっ!」とがくぶる命乞いを始める。
「いや、あたしゃ、死神だけど、何も好き好んで相手の魂持って行ったりはしないさ。
 ちょっくら用事があって立ち寄ったんだけど、こんな状況じゃ、もてなしは期待できないからねぇ」
 だから、今、何がどうなっているのかを教えてくれ、ということだった。
 小町の言葉に、捕まったメイドではなく、そのそばにいたメイドが『実は――』と口を開く。
「……アホらしい」
「あ、アホらしいのは誰もが認めていますっ! で、ですが、私たちにとっては切実なんですっ!」
「そうですよっ! 今の言葉を撤回してくださいっ!」
「今後、私たちのお給料は!? 宿は!? お食事は!? どうなるというんですか!」
「……自分のことばっかりかい」
 つくづく、忠誠心のない奴らである。ある意味、幻想郷らしいっちゃ幻想郷らしいが、彼女のセリフを館の主が聞いたら膝小僧抱えてうずくまりそうだ。
「んで? 真っ先に、騒ぎをどうにかしなきゃいけない、あんた達のところのお嬢さんはどこいったのさ」
「真っ先に流れ弾で撃墜されてました」
「『いい加減にしなさいよあなた達きゃー』って、見事な撃墜っぷりだったわよね」
「そこがまたかわいいのよ~」
「でも、あれ、かなり当たり所が悪かったみたいよ。パチュリー様が顔を真っ青にしてたし」
「……何という」
 日々、急降下が噂されるお嬢様のカリスマであるが、もはや落ちるところまで落ちたと言うところか。
 いやいや、まだまだだ。案ずるな、小町。きっと彼女なら、一日もすれば奇跡的な復活を遂げるさ。そう信じておけば、きっと、空だって飛べるんだ。
 何だかよくわからない自己葛藤と矛盾の果てに結論を出した小町は、「一体、どういう状況なのさ?」と声をかけて。
 ――そして、気づけば、館の中に案内されてしまっていた。
「あー……」
 その、館の一角の応接間。
 ソファに、完璧にふてくされた顔で座っているのは、館のメイド達を束ねるメイド長。そして、その対面には、館の一角を間借りして不健康な毎日を送っている魔法使いの姿があった。
 なお、部屋の隅では、館の主の妹様がぐすぐすと泣いていて、それをメイド達が必死にあやしている光景がある。
「別に、私は悪くありません」
「だから、何もあなたが悪いと言っているわけではないでしょう。
 ただね、咲夜。世の中には調和と均衡というものがあって……」
「わかっています。皆に迷惑をかけたことも事実です。
 ですから、わたくし、十六夜咲夜は、本日の失態を払拭するべく、以後、業務に精進致します。それでは」
「だから、待ちなさいと言っているの。もう」
 本当に困った子なんだから、と言わんばかりにため息をつくパチュリーの視線が、メイド達に案内されて、その場にやってきていた小町へと向いた。
「何をしに来たの? 今、ちょっと忙しいから……」
「あー、まぁ、連中から話は聞いたよ。
 しっかし、まぁ……」
 彼女は頭をかくと、
「痴話喧嘩で、よくもまぁ」
「痴話喧嘩ですって!? 誰と誰がよっ!」
「咲夜。相手は客人よ」
「まぁ、女ってぇ奴は恋をすると周りが見えなくなるというからねぇ。あたいにゃ、そう言う経験はないから何にも言えないけどさ」
「なら、向こうの部屋で、少々、お待ちになっていてください。ただいま、お茶を用意して参りますので」
「まあまあ。そうかりかりするもんじゃないって。
 ほら、あれだろ? ケンカなんてもんは、雨降って何とやらさ。いいきっかけだと思えばいいじゃないか」
「別に、誰ともケンカなんてしていません。どうぞお気遣いなく」
 さっきからこの調子なの、とパチュリーが視線で語る。
 館の中でも、大した地位のものが仲裁に出てきているというのにこれだ。普段は沈着冷静、クールなメイド長も、今回ばかりは、色んな意味で腹に据えかねたと言うことなのだろう。
 困ったもんだねぇ、と小町は笑う。
「何がおかしいの?」
「いやね、かわいいもんだね、と思ってさ」
「かわいい、って……!」
「おっと。怒るな怒るな。
 いいもんじゃないか。そんだけ腹立つくらい、相手とは親しいんだろう? そんなら、それをプラスに考えるもんだって」
「……だけど……」
「そもそもの原因は何なのさ。ん?」
「……別に、あなたに話したって……」
「おっと。
 別段、あたいが聞きたいってわけじゃない。そちらさんが、聞きたそうな顔をしているからね。そこで、代弁しただけさ」
 自分を引き合いに出すな、とパチュリーは言いたげにしていたものの、しかし、そもそもの原因自体は、どうやらつかめていなかったらしく、抗議の声を上げてくることはなかった。
 咲夜はしばし沈黙すると、ぽつぽつと語り始める。
 ――話の内容を要約すると、ある理由で作ったケーキのできがうまくいかなかった。そこで、それを隠して、『こんなケーキがあったんだけど』と、その相手に声をかけてみたら、一刀両断に『まずい』と言われてしまったのだという。
 もちろん、相手は事情を知らない。それ故か、アドバイスのつもりだったのだろう。こと細かに、ここはどうしたらいい、だの、ここが悪い、だの、指摘をしてくれたのだそうだ。それを聞いているうちに咲夜は、言い知れない理不尽な怒りを覚えて『わかったわよ!』と相手を怒鳴りつけ――『何で怒るんですか?』という、相手の無神経な問いかけ(もちろん、咲夜の思いこみ)に、完全にぶち切れてしまったとのことだった。
「あきれた。それは、あなたが完全に……」
「まあまあ。
 ん~……そうだね。あたいの目から見りゃ、そのお相手さんも同罪だね。あんたが、こっそりと、乙女心を隠して声をかけたんだ。それに気づかずに、無神経なこと言われりゃ、そりゃ腹も立つってもんさね」
「そ、そうよね? わかる? あなた、意外と……」
「わかるわかる。あんたが怒るのも無理ないね」
 どういうつもり? そんな言葉を視線に載せてくるパチュリーは無視しながら、小町はにかっと笑った。
「だけどさ、だからって、一方的に怒鳴り散らすってのもあれだね」
「それは……」
「そこで、『実は私がこれを作ったんでした』とかなんとかやってさ。ジョークの一発くらいかます余裕を持たないと。
 気分がささくれ立っている時にそんなのは無茶ってもんだろうけど、こういうことが出来るかどうかが、心の余裕ってもんを示すわけさ。言うなれば、度量さね」
「……」
「あんたがいくつなのかは知らないけど、まぁ、あたいから見りゃ、若い若い。青春してるなぁ、って思うわ」
 なお、そんなことを言う小町の年齢も、その場の誰もが知らないのだが、それはともあれ。
「ちょうどいい具合に、何か学べたところじゃないのかい? 人間同士の意思疎通ってやつがさ」
「……それは……その……」
「ま、人間だけに留まらず、男も女も、みんなすれ違いをしてでっかくなっていくもんさ。ケンカの一つもせずに、平和に育ってきた奴なんていやしないよ。
 そういうところで、物事ってのは学べるもんだ。よく言うだろ? 失敗は成功の母、ってさ。一回や二回、ミスったくらいじゃ、世間様はどうこう言うことはないよ。ましてや、こんなちっぽけで狭い場所でのことだ。
 あんたが何を気にしているのかは知らないけどさ。悪いと思ったなら素直に謝る。そうじゃないならとことん言い争う。そんくらいでいいんじゃないかね?」
 もちろん、答えは当人の中でとうに出ていることなのだろう。
 黙り込んだ咲夜に背を向けて、「今日は、ちょいと用事を済ますどころじゃなさそうだね」と彼女は苦笑しながら、その場を去った。閉められたドアの向こう、人の気配が遠ざかっていく中、咲夜が立ち上がる。
「……申し訳ありませんでした」
「私に謝ってくれても仕方ないわ。レミィとかにも、よろしくね」
「はい」
「恋愛のイロハは、私にはよくわからないわ。だから、そう言うことを知っていそうなメイド達に聞くのが一番ね」
「……はい」
「ケンカをするのは悪いことじゃない、というあの死神の言葉には賛同せざるを得ないわね」
 足早に、咲夜はその場を駆けだしていく。困ったものね、とため息をついたパチュリーは、さて、と立ち上がる。
「フラン。いつまでも泣いてないで。
 図書館にいらっしゃい。小悪魔が、美味しいプリンを用意して待ってるわ」
 その言葉に、泣きじゃくっていた妹様は、わずかに顔に笑顔のようなものを浮かべると、うん、と小さくうなずいたのだった。

 さて。
「……あの」
「今日一日は、私たちの業務が増えます。問答無用です」
「でも……」
「何か言いたいことがあるのでしたらどうぞ」
「……いいです」
 世の中、雨降って地固まると言います。
 ついでに言えば、痴話喧嘩だの夫婦喧嘩だのというのは、ほったらかしておけば、勝手に元の鞘に戻ると言うことも。
 ――ひたすら、館の窓の掃除をしながら訊ねたメイドの言葉に、咲夜に代わり、今日一日、メイド達の指揮を執っている女性は一言の元にそれを切って捨てた。
「いいじゃないですか。これを機に、お二人の関係が進んでくれれば」
「だからって、壊れたものの修理から通常業務からレストランから喫茶店までっ! 紅魔館って、一体何者なんですかっ!?」
「……お嬢様の意思です」
「私たちの仕事、増えすぎですよ~……メイド長に、早く通常業務に戻ってくださるよう、言ってくださいよぉ~……」
「私の仕事も同じだけ増えました」
「そのメガネは何のためのメガネなんですかー!」
「……いや、何のため、って」
 泣きながら、一生懸命、お仕事を頑張るメイド達。
 その中を離れ、一人、彼女は紅魔館の中を行き。そっと、一枚のドアの前で足を止める。
「……桃色ね」
 それを果たして、幸せの色というのかどうか。いや、言うんだろうな、きっと。
 そんな風に思いながら、頭痛をこらえるようにして、彼女は大きなため息をついた。とりあえず、咲夜の荒れっぷりは収まったものの、別のところで、また問題が起きてしまっている現状を、一体どのように処理したらいいものかと悩んでいるのだろう。
「……そう言えば、お嬢様、大丈夫かしら。メイド長のナイフが眉間に命中していたし……」
 けれど、意外と、咲夜さまって頭に血が上るタイプなのね。
 そう思って、『だけど』と思い直す。
 恋に一途な乙女というものは、意外とそういうものなのかもしれないな、と。
「のこぎりとか包丁とか持ち出さなかっただけ、まだマシかもしれませんね」
 ついでに言えば、ある意味、ケンカの仲裁役を果たしてくれたあの女性は、メインのお仕事が『船頭』だったな、と。
 何となくそんなことを思い出してしまって、彼女は一人、『今日一日、どうしよう……』とため息をつきながら歩いていく。そして、その彼女の後ろのドアの向こうでは、まぁ、何というか、砂糖菓子をチョコレートでコーティングして、さらにたっぷりのクリームをトッピングしたかのような甘ったるい世界が広がっているのだった。

「あっちこっち回れと言われてもさぁ」
 のんびりふよふよ。風にながれて、東へ西へ。
 幻想郷ってのも広いんだよ、四季さま。ぽつりと愚痴をこぼして、彼女は空を行く。紅魔館での一件が、ある意味でこたえているらしく、ちょいと、ここらで気休めでもしていこうかね、と向いた視線の先には小さな集落があった。
「あそこで、向こうさんでいただけなかったお茶でももらおうかね」
 茶店か、もしくは人のいい家の一つや二つはあるだろうという考えから、彼女はその集落へと舞い降りて。
「出来ることなら、村の中へは、歩いて入ってきてもらいたいものだな」
 後ろからかけられた声に振り向けば、そこには、腕組みして佇む女が一人。無論、彼女の顔見知りである。
「おお、慧音さんじゃないかい」
「あなたに『さん』づけされると、どうにもバカにされているような気がしてならないのでね」
「お、そうかい?」
「ああ」
 そういうはすっぱな口調で喋られるのは慣れてない、ということだった。
 なるほど、さすがはがちがちの堅物なだけはあるということか。それならそれで相手にあわせてやろうかね、と珍しく小町は殊勝な考えを浮かべると、「それで?」と訊ねた。
「村の人間にとっては、死神などというものは、この世の中で最も歓迎したくない類の、いわば祟り神だ。出来ることなら、その鎌も隠してもらいたいものだな」
「あいよ。そりゃ、気が利かなかったね」
「そうやって、こちらの言葉を素直に受け入れてくれる相手は、本当に気が楽だよ」
 どうにも、幻想郷というやつは、奇人変人が多すぎる。
 彼女はそう言って、大きなため息と一緒に頭を抱えた。色々な苦労を抱えているのだろうが、とりあえず、それは小町には関係ないことである。それに、大半は、慧音が好きで首を突っ込んだことが原因なのだろう。それならば、その責任を負うのは自分だ。だから、小町は何も言わず、「どっかで茶でも飲ませてもらえないかね?」と訊ねてみた。
「ここは、見ての通り、何もないところさ。お茶なら、私が用意しても構わないのだが、あいにくと、私の家はここからずいぶん離れたところにある」
「……おや、そいつは残念」
「それよりも、どうしてあなたはこんなところにいるんだ? 彼岸の渡し守は、ついに暇を出されたのか?」
「ある意味、そうだね」
 今日一日、上司の命令で幻想郷を見て回っているのだと答えると、ほう、と彼女はうなずいた。
「さしずめ、見回りと言うところか」
「まぁ、そうだろうね。
 ……おかげで苦労したよ。ほんと」
「ん?」
「夫婦喧嘩は犬も食わない、ってのは、ありゃほんとだね」
 一体何があったのかと、珍しく、慧音の瞳に興味の色が輝いた。
 しかしながら、そこは、彼女は自分をしっかりと律する分別ある大人と言うところだろうか。「大変だったようだな」と答えるだけで、特段、訊ねてくるようなことはしなかった。
 ほんと、世の中、こういう奴ばっかりなら苦労しないですむんだろうけどね。色々と。
 そんな考えを思い浮かべながら、小町は軽く頭をかく。
「そんなら、どっかで腰を落ち着けたいところだけど……」
「永遠亭にでも足を運んでみたらどうだ? 少し、事情を話せば、多少の休憩は取らせてくれるだろう」
「いやー……あたいは、あの、『病院』ってやつが苦手でね。辛気くさいというか何というか」
「それは仕方のないことさ。
 まぁ、しかし、小町殿の言うことにも一理ある。私は、この村の見回りを終えたら、一度、家に戻って休むつもりだが。どうだろうか? その時、一緒に」
「お、ありがたいね」
 どれくらいで終わるんだい? という問いに対して、慧音は、「半時もあれば充分さ」と答えた。
 何でも、今日、ここにやってきたのは、特別な事情があるためなのだとか。その『特別な事情』というものには、いたく興味が湧いたが、そこは小町も、一応の大人である。慧音と同様、『そうかい』と答えるだけだ。
「それなら、適当に、あたいはその辺りをぶらついてるよ」
「ああ。
 そうだな……。待ち合わせ場所は、ここで構わないだろうか?」
「あいよ。それじゃ、また後でね」
 慧音と手を振って、背を向けて。
 さて、どうしたもんかね、と田んぼのあぜ道をぶらぶらと歩いていく。
「……ほんと、平和そうな村だねぇ」
 暮らしている人間は、みんな、のどかな顔をしていた。流れている空気も、どこか柔らかくて暖かい。将来、年を取ったら、こういうところに隠居して暮らすのも楽しいかもしれない。そんなことを思いながら、「どうだーい? 景気はー?」と、田んぼの手入れにいそしむ老夫婦に声をかけて、つと、彼女は踵を返す。
「ん?」
 子供達が、わいわいと騒いで遊んでいる光景が見えた。
 自分よりも遙かに体の小さい、恐らく、年齢ならば五つに満たないくらいの子供達だろう。わーわーと、大声を上げて駆け回る姿というのは、無条件に『安らぎ』というものを運んでくるものだった。
 いいもんだねぇ、と笑いながら、彼女はそちらへと向かって歩いていく。
 当然、彼らの邪魔にならないように、その手前で迂回するように道を変えるのだが――、
「あっ」
 その声に振り向けば、一人の少女が、どうやら、足下の石ころか何かにでも躓いたのだろう、派手に転んでしまう光景を目撃する。
「おやおや」
 手を貸してやった方がいいかな。
 そんなことを思いつつ、彼女は、その少女へと歩み寄ろうとして――、
「大丈夫? 湯芭ちゃん」
「うん……大丈夫」
 転んだのは、やっぱり痛かったのだろう。目元にじんわりと涙を浮かべながらも、彼女は服の袖で、ぐしぐしとそれをこすって立ち上がる。
「血、出てるよ。一度、おうちに……」
「ううん、大丈夫。転んだくらいで泣いてちゃ、ママに笑われるもん」
「うん……でも……」
 その彼女を心配するように声をかける少女に『いいの』と彼女は笑った。
「何でもかんでも、ママ達のことを当てにしていたらダメなんだ、ってママに教えられてたんだ。甘えんぼは、独り立ち出来ないんだよ、って」
「……おやおや」
 ずいぶんと、先進的な教育をする親だね。
 小町は苦笑しながら、彼女たちの後ろを通り抜ける。
「転んだくらいで泣かないもん」
「……そっか」
「いこ、すくめちゃん」
「うん」
 二人、手をつないで、先に走っていってしまった友人達を追いかけていく。
「……ま、いい教育方針といっちゃ、間違ってないけどね」
 子供ってのはそういうもんだ、と彼女。
 子供を育てるのは誰なのか。その単純な問いに対しての答えは、また単純である。その子供の親なのだ。子供は、親が育てるものなのである。
 どんな親に恵まれるか、子供はそれを選べない。もしかしたら、ろくでもない親に出会ってしまうかもしれない。そうなった場合、最大の不運は、子供なのだ。そう言えば、四季さまのところには、そう言う霊魂も来ていたな、と小町は思い出す。
 いい親に恵まれる。それは、人生の中で、一番と言ってもいいくらいの幸運なのかもしれない。
「元気に育つんだよ。んで、あたいのところに来る時には、一杯、面白い話を聞かせられるようになりな」
 去っていった彼女たちの後ろ姿に優しい眼差しを注いで。
 小町の足は、村の中を、のんびりと回っていく。

「……け、慧音……。何がどうしたってんだい……?」
 そして、それから三十分後。
 合流した慧音は、ずたぼろのぼろくそになっていた。
「……ああ、まぁ、いや……。心配をかけて申し訳なかった……」
「……もしかして、何か、遠くで聞こえた爆音に関係あるのかい……?」
 今から、およそ十分ほど前。
 何だか村の遠くの方から、「受け取って! これが私の夢想封印!」などという声と共に七色に輝く弾幕と爆音と真っ赤な炎が上がったのを、小町は目撃していた。一体、何事かと思ったのだが、声に『夢想封印』という単語が混じっていたことから、なぜか潜在的な恐怖心が湧き起こり、すたこらさっさと、巻き込まれることのないであろう距離にまで逃走していたのだ。
「……あの巫女さんが、何の理由もなく攻撃……してくることがあるのかもしれないけど、まぁ、ないと仮定して」
「いやまぁ……霊夢殿は、関係あるんだが関係ないんだ……。気にしなくていい……小町殿……」
「しかし、まぁ……えらい派手にやられたもんだね……」
「妹紅は、あっちで気を失っている……。丸一日は目を覚まさないだろう……」
「……あいつも巻き込まれたのかい……」
「……最近は、私たちの手に負えなくなってきてな……」
 どうしたもんだか、と悩む慧音の目元には、何だか疲れ切った色が浮かんでいた。
 本当に、一体何があったんだ。
 聞いてみたかったのだが、それを聞くと、そこはかとなく怖い結末が待っていそうで、小町は言葉を飲み込んだ。
「……一度、お母さんに来てもらった方がいいかもしれないな。元気いっぱいなのはいいんだが……手加減ってものを覚えてもらわないと……」
 ぶつぶつつぶやきながら、慧音は踵を返す。
 こんな状況でお茶をごちそうになるというのは、色んな意味で『悪い』ような気がして、小町は「い、いや、いいよ」とその場を立ち去った。
 去り際に。
 上空から見下ろした村の一角に、超巨大なクレーターが出来ていて、その爆心地で、真っ黒に焦げた人物がぴくぴくけいれんしているのが目に入ったが――とりあえず、小町はそれを見なかったことにしたのだった。

「しっかし、あれだねぇ……。
 幻想郷ってやつぁ、本当に広いもんだねぇ……」
「おや、お客さん。何かあったんですか?」
「ああ、いや、ね……。今日一日、あっちこっち回ってみたんだけど……」
 ぐいっ、と手元のグラスを傾ける。中身の、アルコール度数がっつりの日本酒は、きれいに彼女の胃袋の中へと消えていく。
「ほんと、ここにいる連中で、あたいの顔見知りってのは、とことんあの世に来て欲しくないよ」
「あはは、まぁ、そういうこともありますわな。
 だけどさ、お客さん。人生ってのは無常なものなんですわ。昨日と同じ今日がないのと同じように、今日と同じ明日が来ることもない。一日、日を変えてみるだけで、全く別の顔が見られるから、人の一生ってのは見ていて面白いものなんですよ」
 こと、あたしらみたいに長生きする連中はね、と最近はすっかり屋台のおやじが板に付いたミスティアが、手元の串焼き焼きつつ答える。
 なお、そろそろ季節は冬に向かうと言うことで、ヤツメウナギ連中を捕まえるのが難しくなっているために、最近では、店のラインナップは、もっぱら川魚に化けていたりする。
「ああ、そりゃ間違いないねぇ。少なくとも、あんだけ波瀾万丈な人生を送っていれば、人生の土産話に苦労はしないさ」
「でしょう?
 あたしゃ、細く長く生きるのもいいと思いますが、太く短く生きるのも充実していいと思いますよ。どっちが人生、充実してるかって聞かれたら……う~ん……まぁ、一概には答えられませんがね。
 要は、どんだけ当人が満足できる人生送ったか、とか」
「三途の川の渡り賃を、がっぽりもらえる人生ってのも悪かないけど、そうじゃない奴らの身の上話ってのは、また面白いものがあったりするのさ。これが」
 ほんと、そういう奴らは気の毒だよね、と小町。
 あっさりと川を渡りきれてしまって、しかもこっちがどんな話を振っても、たいしたことを言わない奴というのはいるものだ。そう、彼女の瞳は語っていた。世の中において『善人』と呼ばれ、閻魔様の裁判をあっさりとすり抜けるような奴でも、小町から見たらつまらない奴なのだ、と。
「そう考えるとさ、悪人って奴は、波瀾万丈だよね」
「そうですねぇ。
 まぁ、だからって、あたしは誰彼を刺した殺した、なんてことやって巫女さんに追いかけ回されるのは、もうこりごりですがね」
「人間でもそうなのかもね。悪いことすりゃ罰が下る。そりゃ、当たり前のことさ。
 ま、不謹慎かもしれないけどさ、そう言う奴らの逃亡人生の話を聞いてると、案外、面白かったりもするのさ。とんでもない凶悪犯が、山の中で迷っていた子供を助けて人里に連れて行ったら正体ばれて捕まって、とかね」
 因果なもんだよ。
 その人間は、たった一つの『いいこと』をしたがために身を破滅させたのだから、とつぶやいて。
「人間の本性ってさ、決して、全部が全部悪いものじゃないんだよね」
「何が原因で、閻魔様に嫌われるようなことになっちまうんでしょうかね」
「さあねぇ。
 こんなセリフを使うのは嫌いだけど、こいつも運命ってやつなのかもしれないねぇ」
 そう言えば、『運命』って名前の子供が、さっき、いたな、と思いつつ。……あの子は無事だったのかな、となぜか思ってしまってから、
「今日一日、ほんと、楽しいって言うか何て言うか。
 山あり谷ありだったよ」
「どんなことがあったのか、よかったら聞かせてもらいたいもんですね。お客さんに対する、あたしの話のネタになりそうだし」
 こいつはおごりますからさ、と新たに川魚に塩をふって差し出してくるミスティアに、仕方ないねぇ、と言わんばかりの顔を浮かべて、小町は今日のあれこれを語り始めた。
 それはそれは、とミスティアは笑いながら聞いているのだが、いくつかの話については、聞きながら笑顔を引きつらせていたり、頬に汗を一筋流していたりするのだが。
「一日、退屈せずにすんだけど、こいつはどんなもんなのかねぇ。あんたの目から見て」
「あー……いや……まぁ……コメントしづらいんですがねぇ……。
 とりあえず、世の中、広いんですよ」
「ほんとだねぇ……。語らなければわからないこともあるけど、わかりたくないことだってあるんだよねぇ」
 ふっ、と笑って、小町はもう一度、グラスを傾ける。
「そう言えば、お客さん。帰らなくていいんですかい? そろそろ、上司の頭に角が生える頃じゃないんですかね?」
「あー、そういやそうだね。
 そんじゃ、この一杯で終わりにするよ」
 休日も、もう少しで終わり。明日から、また、渡し守としての仕事が待っている。そして、乗客から、あれやこれやの土産話を聞いて『聞き上手の姐さん』と呼ばれたりもするのだ。
 ちなみに、実際に、彼女、彼女が渡し守を担当したもの達からはそのように呼ばれていたりもするらしい。
「あたしも、そろそろ客が増えてくる頃合いですからねぇ。夜は稼ぎ時ですよ」
「頑張ってちょうだいや。
 そんじゃ、そろそろおいとまするよ。また今度、うまい酒を仕入れておいておくれ」
「はいな。ありがとさん」
 少々、多めに代金をそこに置いて、小町は地面を蹴った。
 空に上がれば、いい加減、夜風が冷たい頃合いである。こりゃ、ほろ酔い気分も一発だね、と笑いながら。
 彼女は、相変わらず、のんびりと自分の家に向かって戻っていくのだった。


「ところでさ」
「んあ?」
「昨日、小町があっちこっちうろついてたそうだけど」
「あー、そういやな。私のところにも来たぜ」
「何で私のところに来なかったわけ?」
「そりゃお前、これ以上ないほどの笑顔で焼き芋焼いてたからだろ。誰か客が来たら『取られる!』と思って攻撃仕掛けたりとか」
「バカなこと言わないでよね」
「お? わけるのか?」
「取られるなんて思わないわよ。『奪いに来たなこの野郎』くらいで」
「……だから来なかったんだよ」
「何か知らないけど、最近は夢想封印がメジャーになりつつあるから、今度は私、封魔陣をメインにしようかなと考えていたり」
「それに何の意味があるんだよ」
「……いやね? 遠距離から攻撃された場合、結界術ガードが一番効果的じゃない?」
「……お前、どんだけ因果な人生送ってんだよ」
たまにはこまっちゃんでまったりとしてみたかった。
その裏面は、いつだって修羅の気配が漂うのは仕方ないとして、表向き、平和な世界が形成されているのが幻想郷だと思います。
平和が一番よ、って神社の巫女さんもお茶飲みながら言ってました。間違いないでしょう。
つまるところ、「Nice 幻想郷」
haruka
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コメント



0.2040簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
屋台の親父ことみすちーがなんか良い感じでした。
8.90名前が無い程度の能力削除
Nice boat.
12.90名前が無い程度の能力削除
Nice幻想郷 紅白の悪魔が元気そうで嬉しいw
19.80削除
Nice幻想郷。咲夜さんへの説得のくだり、「ああ、確かにこれくらい温めてやった方が相手の頭は冷えてくれるもんだよ」とか実体験がいやーな感じに頭をよぎったり。
20.100ぶちうさ削除
harukaさんのSSは相変わらず面白い
そして相変わらずのクロスオーバーの嵐w
まぁharukaさんの作品はほとんど読んでるので全部わかりましたがw
22.90蝦蟇口咬平削除
死神はつらいよ
なんて電波来た、なぜかw