Coolier - 新生・東方創想話

てゐと鈴仙秋の一日。終わりは宴会。

2007/10/21 10:11:55
最終更新
サイズ
10.76KB
ページ数
1
閲覧数
850
評価数
6/26
POINT
1340
Rate
10.11

永遠亭には、因幡てゐと鈴仙(名前省略)という二人の兎が住んでいます。
二人とも種族こそ違いますが、絆は誰よりも固いと言えるでしょう。
現在彼女らは、1人のお姫様と1人の薬剤師に仕えています。
竹林のように落ち着いているような日常かと思えば、騒がしい日常も過ごしている彼女たち。
そんな二人の永遠亭でのお話です。



―――――――――――――――



季節は夏から秋へと移り変わり、気温も下がって肌寒くなってきたこの季節。寒くて仕方ないので、永遠亭でもコタツを出した。
てゐと鈴仙は居間にあるコタツ入り、ぬくんでいる所だった。
現在、少女炬燵中・・・。

「ねえ、鈴仙。何か食べたい」
「分かる、分かるわその気持ち」
「もうちょっと細かく言うと、みかんが食べたいの」
「みかんかあ、今が旬かしら?」

コタツにみかん、という代名詞があるように、コタツにみかんは欠かせないものである。
みかんは冬が旬といえる果物だが、秋にも生産はされている。
緑色、もしくは黄色の皮が、秋のみかんの特徴だろう。多分。

「それでね、鈴仙に買ってきてもらいたいの」
「えー、めんどくさいわよー。そりゃあ私も食べたいけれど、外寒いし」
「そんなあ・・・。お願いよう」
「自分で買ってくればいいじゃないー。このinコタツの至福の時を手放したくないわ」
「今度何でもするからあ」

えー、と鈴仙はそっぽを向く。
だがなんとなく、鈴仙は横目でてゐの方を・・・チラッ

「お願い~」

もう一度、さりげなく・・・チラッ

「食べたいの~」

「うー・・・もう、しょうがないわね。買ってくるわよ」
「やったあ!ありがとう、鈴仙」

てゐは嬉しさの余り、鈴仙に抱きついた。
感謝感謝と呟きながら、頬をすりつける。

「感謝だよ~感謝だよう」
「う・・・恥ずかしいわね」

とかいいながらも、満更でもないご様子。

さて、頼まれれば断れない性分というべきか、頼んだ相手がてゐだったからか、どちらにせよ鈴仙はみかんを買いに行った。


―――――――――――――――


「みかんくださーい」
「あいよー」

うん、やっとのこさ買い終わった。
みかんは10個ほどで十分だろうし、こんなものでいいだろう。

「あ、そういえば神社の宴会へ持ち寄せる具材を買っておかないと」

そう、今夜は博麗神社で宴会が催される。
そろそろ寒くなってきたとかで、鍋物になったとのこと。
基本的な具材は巫女が用意すると言っていたが

「あんたらも何か具材を用意してきなさい。そうねえ、松茸でしょ・・・あと松茸でしょ・・・それに松茸・・・冗談よ」

とも言われた。もちろん、私は松茸を買う気は無し。高いもんねー。
だけど、何も用意してこないのも失礼かと思う。

「ていってもねー、基本的な具材は巫女が準備したって言ってたし・・・何を買おうかしら?」

適当にぶらついて思案を巡らせていると、ふと頭に浮かんだ食材があった。
うどんげ・・・いや違う。

「ああ、うどんだわ」

鍋は残り汁を使って、雑炊かうどんを食べるととてもおいしい。よし、今夜の宴会、締めはうどんだ。
それにもう夕方近いし、そろそろ帰らないと。
私はうどんを手に入れるため、お店へと歩行を進めた。


―――――――――――――――


一方、永遠亭のてゐは、こたつで昼寝をしていた。
ついさっき起きた所だが、すでに時計は5時を回っている。

「鈴仙遅い・・・もう夕方よう。でも、わざわざ頼まれてくれたんだし、こんなこと言うもんじゃないね」
「感心感心。さっさと帰ってこいノロマ、とか言っていたなら張っ倒していたわよ」
「あ、お帰りなさい。みかんは?」
「これね」

コタツの上にどさっと置かれた袋を覗き見ると、それはまさしくみかんであった。
おおう、暖か!と鈴仙はコタツに滑り込む。

「ああ、鈴仙!あんたを見直したわ」
「え?え?私って買い物もできないお馬鹿さんって設定だったの?」
「そういう意味じゃないわよ」

てゐは苦笑しながらみかんに手を伸ばした。
2つを手に取り、1つを鈴仙に渡す。

「いや、でもね、今日はありがとうね」
「いいのよ。てゐと私の仲だしね」

じゃあ食べようか、と二人は皮をむきむき。
そして一房パクっと口に入れた。

「甘くておいしい~」
「酸味も丁度いいし、甘さもよし。あの店は良店ね」

「うんうん、みかんの味は世界一ね。あ、私は柑橘類では断然みかん派よ。オレンジは認めないわ」

扉の向こうから声が聞こえたと思ったら、それはえーりんであった。

「私にも一房ちょうだい」
「まだたくさんありますし、一房と言わず師匠も1個どうぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「私が皮をむきましょうか」
「あら、てゐありがとう」
「いえいえ」

てゐはみかんを1つ手に取り、皮をむいてえーりんに差し出した。
え、どっこいせ。と婆臭いかけ声と共にコタツに入り込み、えーりんはみかんを受け取って口に放り込んだ。
えーりんの口内に、甘く、尚且つ酸味を含んだみかんが広がる。

「ん~うまうま。それにしても、やっぱコタツにみかんって合うわね」
「ですよねー」
「それにコタツもぬくいわあ・・・うーさぶさぶ。突然だけど、ミカンの上にあるみかん。なーんてね」
「ダジャレもさぶいですね」
「あら、渾身の一作なのに」
「あ、でも事前にダジャレを言う事を教えていただければ、永琳様がどーんなに寒いダジャレを発しても笑ってあげられますよ」
「ギャグに申告制って、意味無くない?」
「だってそうじゃないと、永琳様のダジャレは絶対笑えませんって」
「あら!てゐったら!言ってくれるじゃない」
「ぷっ・・・は!あはははははは。違いない!そうに違いない!」

えーりんは苦笑し、てゐは微笑し、鈴仙は大笑い。
ダジャレの寒さはコタツの暖かさにかき消されたようである。

「あ、そうそう。今夜の宴会に私は行けないから」
「どうしてですか?」
「あんね、実験が長引いてしまってね。どうも宴会には間に合わない感じなのよ」
「あれま」
「永琳様、残念ですね」
「まあ、仕方ないわ・・・残念無念また来週」

「そういや姫様は?」
「ネトゲだって」

えーどれどれ、実験に戻りますか。二人で楽しんでいってね。・・・と、えーりんは居間から出て行った。

「てゐ、そういえば、巫女の宴会に行くのって何時頃だっけ?」
「えーと、夜の8時よ」
「帰りは何時頃になるのかしら?」
「う~ん、11時くらい・・・もしかしたら深夜回るかもね」

今現在の時刻は6時半過ぎなので、博麗神社に到着するまでの時間も入れて、後1時間ほど経ったら出発である。
それまで鈴仙とてゐの二人は、コタツでのんびりと過ごしていた。


―――――――――――――――


「着いたわ」
「うん、皆はもう集まっているみたいね」

こちらは今夜宴会場となる、博麗神社である。
今回の宴会は、ずばり鍋だ。寒い時期には鍋と酒、まさに宴会の舞台にぴったりである。
ところで、今回の参加者は【霊夢・魔理沙・れみりゃ(幼女)・咲夜・アリス・幽々子・妖夢・八雲一家・映姫・小町】に加えて、てゐと鈴仙を足すと合計13人になる。
つまり大宴会ということだ。

「あー、永遠亭がやーっと来たわよ」
「もう・・・だめよ、妖夢。私のお腹が悲鳴を上げているわ。限界点突破まで後1分も持たないわ」
「幽々子様あ・・・恥ずかしいから涎を垂らして鍋を凝視しないでくださいー。霊夢、乾杯の準備お願い」
「ん?おっけーおっけー、やっぱり主催者の私がやらないと始まんないってわけね。うー、あー、ごほんごほん」

咳払いをし、喉を整えて霊夢は叫ぶ。

「みんなー、用意はいい?それでは・・・乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」

13人の声が揃い、お互いの気持ちが一つになる唯一の時間。和気藹々とした大宴会。
彼女たち(一部を除く)は、今夜もそれを楽しむのである。

少女たちは思い思いの具材を煮込み、それを食す。
ちなみに、てゐと鈴仙は鶏肉鍋派であった。
鍋の中には、白菜・もやし・春菊・舞茸・豆腐・人参・長ネギ、そして鶏肉など、色とりどりの具材が煮込まれている。

「あ、鈴仙。鶏肉ばっか食べてないで野菜もちゃんと食べなさい」
「だっておいしいんだもの。それに私はてゐのような健康お婆ちゃんじゃないわー」
「言ったわね?食わせてあげるから口を開けなさい」
「いいわよ」
「え、あっ、うん」

てゐは鍋から白菜を箸でつまみ、鈴仙の口へと運ぶ。

「はい、あーん」
「あーん・・・ムグ、ムグ」

ゴックン

「おいしいわ」
「でしょう。特に白菜の葉の部分が最高なのよ」
「多分、てゐが口に入れてくれたからだわ」
「もうっ、鈴仙ったら!」

てゐは照れて、思わず鈴仙の肩を叩いた。


「あ、でもそういうことなら今度から私が食べさせてあげようかな」
「いいかも」
「そうでしょ」

そして二人は笑い合った。
一方同じ鍋を囲んでいる霊夢と魔理沙とアリス。

「あいつらバカップル?」
「ああ、バカップルだ」
「でも、ちょっと羨ましいわ・・・」
「羨ましいって・・・アリス、お前もだれか好きな奴がいるのか!」
「え・・・あ、うん。実は霊夢のこと・・・」
「ちょ、ええ!?だめだぜ、実を言うと、私も霊夢が好きなんだ」
「ちょっと、お二人さん。そんな大事なこと・・・ここで?」
「だめよ!霊夢は私と一緒なの」
「いいや、アリスじゃなくて私だ!」
「あの・・・まあ、両手に華も良いのかもね」

アリスと魔理沙が口論しているのを横目に、霊夢は苦笑を続けた。

あっちでは映姫が酒に酔いながら小町を説教していて、こっちでは幽々子や八雲一家達が飲み比べている。
向こうではれみりゃにハァハァしながら食べさせてあげている咲夜達。
こうして幻想境の夜は更けていった。


―――――――――――――――


「あー、あたし酔ったわ!」
「もう・・・随分と飲んだしねえ・・・。てゐの顔も真っ赤っかよ」
「そうね・・・ちょいと疲れたわ。鈴仙の膝を借りるねー」
「どんとこーい」

てゐは、ぽすっ、と鈴仙の膝に頭を乗せる。
酒が入っているせいか、二人とも大胆になっている。

「どれどれ!普段イタズラされているし、今この場でやり返してあげようか」
「えーっ、なに?なに?」

そう言うと鈴仙は、てゐの耳を弄り始めた。
てゐは少しくすぐったそうな様子である。
鈴仙にもふもふとされている耳は、時折ぴくっぴくっと小刻みに揺れる。

「ああ、生の兎耳の感触がこれなのね。私も欲しいわあ」
「鈴仙~くすぐったいよう」
「ふふふ、じゃあ今日はこれくらいで勘弁してあげる」

ふぃーと息を吐いたてゐは、懐かしそうに語り始める。

「いやでも、この感じ。ちょっと懐かしい気がするなあ」
「え?私てゐを膝に乗っけた事あったっけ?」
「反対よ。私が鈴仙を膝に乗っけたの、覚えてない?」
「ああ、私が・・・月から逃げてきた時だったっけ・・・」


―――――――――――――――


永遠亭の一室で、鈴仙は泣いていた。
仲間を見捨て、己の保身のみを考えた自分に嫌悪した。

「どうして、私はこんなことをしているの・・・?」

今頃月の民はどうしているのだろうか、皆殺し等になっていないだろうか、様々な思いが鈴仙の頭の中を駆け巡る。
そんな時、部屋のふすまが開いた。

「えっと、貴女が鈴仙?」
「誰・・・?」

鈴仙は眼をゴシゴシと擦り、問いかける。
質問を質問で返すほど、鈴仙の心は乱れていた。

「私は永琳様達と一緒に、この永遠亭に住んでいる因幡てゐ。てゐって呼んでね」

そう答えたてゐは、てくてくと鈴仙に近づき、隣に座った。
鈴仙は戸惑ったが、何も言わなかった。

「ねえ、何があったかは知らないけど、今は忘れた方がいいよ」
「・・・でも、私・・・」

鈴仙はまた涙が滲んできた。ぐすっと鼻をすする。
てゐはそんな彼女を、自分の方へ抱き寄せた。

「え?」
「泣くだけじゃ心の痛みの元は除けないけど、そこから発した心のもやくらいなら晴らす事はできるわ」

そして、少し申し訳なさそうに話す。

「私は貴女が何があったか分からないから、これくらいしかできないの・・・。ごめんね」
「・・・うう、ひっく。うああ」

鈴仙は泣き続け、てゐは抱き締め続けた。

しばらくそうしている間に、時間はだいぶ過ぎていた。
てゐは鈴仙を膝枕し、頭を撫でている。

「ねえ鈴仙。しばらくなのか、一生なのかは分からないけど、ここに住む事になるんでしょ?」
「うん・・・多分、そうなると思う」

てゐはニッコリと微笑み、満面の笑みで言った。

「嬉しいわ、仲間が増えるなんてね。これから宜しくね、鈴仙」
「こちらこそ、宜しくお願いね。・・・てゐ」



―――――――――――――――



「いやあ、あの時も私は泣きまくってたからねえ・・・」
「うん。でもそんな鈴仙を慰めてあげたのが、この私よっ!」
「ふふふ、あの時は嬉しかったわ。感謝しているわよ」
「よしよし」

てゐは手を伸ばし、鈴仙の頬を撫でる。
それを嬉しそうに受け止めながら、鈴仙は言った。

「これからもずーっと、宜しくね」
「こちらこそっ」

その後眠くなった二人は、畳の上で仲良く添い合って、静かな寝息を立てていた。
こちらに初めて投稿させていただきました、しまうまと申します。
宜しくお願いします。

はたしてこの作品が、皆様に受け入れられるかどうか、心配で仕方ありません。
テンポとかは大丈夫なのか、ぶっちゃけつまんなくないか、等など。
会話中心で、いわゆる地の文はあまり書けてないという。
でも、自分の力量の中では自信が持てます。精一杯頑張りました。
最後の方とか、ちょっと自分の中では「よくできた!」とか思っていますが、自己満足で終わってないことを祈ります。

できるだけ、永遠亭組を中心にしようと書きました。
宴会も大人数を参加させましたが、会話がでたキャラは少ないです。
あと、霊夢・魔理沙・アリスの場面はちょっと・・・というかだいぶ強引にしてしまいました。

ほのぼの~としたお話にできたんじゃないだろうか、と思ってます。
最後に会話の場面ですが、誰がどこを話しているのか分かってもらえるかな・・・?心配です。

批評などをいただけましたら、とても助かります。
ちょっと変なところがあったりしたら、言ってもらえれば本当に嬉しいです。
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。

※追記

誤字の指摘をしていただいた方、ありがとうございました。
ちゃんと事前にチェックをしておけば良かったと後悔。

感想のコメントを付けてくださった方々もありがとうございます。
色々と参考にさせていただきました。
しまうま
[email protected]
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.840簡易評価
3.70名前が無い程度の能力削除
よく出来ました
序盤の二人と永琳のやり取りなど、そこいらの親子か姉妹かの様に話すのがうらやましくも思えました
ですが、二人きりでいきなり赤くなってしまうとか、女の子同士でラブラブなのは(キライデハアリマセンガ)違和感があり、何かしらそこに繋げる建前が欲しかったです
5.90名前が無い程度の能力削除
これはいいてゐとうどんげ
ラブはいいね~ラブは
どたばたしてるラヴもいいけど、こういうラヴもこれまたいい
誰がどこを話しているのかはわかりました

ところで、『生の兎耳の感触』ってやはり鈴仙の耳は付けみm

誤字
どんどこーい
どんとこーい
6.90名前が無い程度の能力削除
すごく良い。
特に物語の展開が早すぎず遅すぎずちょうどよかったと思う。
8.90名前が無い程度の能力削除
テンポがすごくよかったです。
この二人が仲良いとほんと和むなぁ。
9.70削除
サブキャラ(鈴仙とてゐ以外)の扱いがあれでしたけど(笑)
ほのぼのした永遠亭のうさぎコンビが良かったです。
黒くないてゐは自分の中ではかなり新鮮です……新参だからかな?
15.90読み解く程度の能力削除
スラスラと読める良い作品でした。こちらにはお初という事ですが、これからの作品も期待させてもらえる完成度だと思います。
炬燵で蜜柑は最高ですよねw