Coolier - 新生・東方創想話

わんわんブレイン

2007/10/20 23:56:35
最終更新
サイズ
9.52KB
ページ数
1
閲覧数
1289
評価数
13/55
POINT
2800
Rate
10.09











 ※当作品は風神録のネタバレ要素しか含んでいません。



















私の名は犬走椛、この山を見張り守る哨戒天狗だ、
あ! 貴様は今私を犬だと思ったろう!! 狼だ! 白狼だ!!
よく見るがいい! このふかふかとした見紛う事なき狼の尾!!
え、犬にしか見えない? 名前にも犬って入ってるじゃないかって?

どうせ昔からわんこと呼ばれて苛められてたよ畜生ーーー!!

「椛ー、いるー?」

はっ! この声は我が尊敬し敬愛し慕い痺れ憧れる文様のお声!

「もう、いるならいるで返事しなさい」

満面の笑みで出迎えれば叱られた、悲しきかな、尻尾に力が入らない。

「ふふふふー、椛ー?」

はっ、文様が私の前で屈まれた!
これはアレをする為の必須動作である!
これはまずい事になった! これはまずい事になった!
もし文様にアレをされてしまえば私は私で無くなってしまう!
どうすればいいんだ! どうすればいいんだ!

むっ! 文様の胸元のボタンが外れている!
ふむふむ、今日も見事な肌色です、肌の手入れを欠かしていませんね、
胸のふくらみは……やや小ぶりから並といった所か、今日はよせてあげてませんね、
ああ、相変わらず美しい……思い出します、初めてあなたの姿を拝見した時を……。


颯爽となびく黒い髪……。

風を撫でる滑らかな四肢……。

崩れることの無い真っ直ぐなお顔……。

我が上の青く広い大空を疾風の如く駆け抜ける美しきそのお姿を……。


あれ?
あれあれ?
おかしいな、確かあの時のお姿のときは……。

そうだ、髪が長かった、腰まで届きそうなほどに、
そうだ、背も高かった、それはもう憧れるほどに、
そうだ、胸も大きかった、今にも飛びつきたくなるほどに。

やっぱりおかしい、今の文様のお姿は……。

上を見た、髪が短かった、ショートヘアーという物だ、よく似合ってらっしゃる、
全体を見た、背が私と同じくらいだ、思わず抱きしめたくなる、
胸元を見た、やや控えめな二つの山がある、掌で撫で回したい。

結論は……文様は間違いなく縮んでいる!!
いや、すまぬ、間違えた、若返っていらっしゃるのだ、
さすがは文様、私ですら気づかぬぐらい上手に若返るとは、敬服いたします、
高度の妖怪には外見を操作する事など容易い、まさしくそれを体現なされたわけですな、
ああ、私も完全な人の姿を取れるように精進せねば!

だがしかし、何故文様は若返る必要があったのだろうか、
過去に何かあったのだろうか……それとも別の要因か……、
うむ? いや待て、待つのだ椛、今記憶の片隅に何かが引っかかった気がする!
思い出せ! 思い出すのだ! 今ここで思い出さねば我生涯後悔するなり!!



「文様もそろそろ身をかためてみては?」



思い出すのではなかった、思い出してはいけなかった、何故私は思い出そうとしたのだ、
記憶の底からあの時の文様の引きつった顔が手足を生やして這い上がってくる、
くうっ、蹴落とせ! 蹴落とすんだ! 弾幕を放て! 容赦するな!!

……駄目だ、押し切られた、数には敵わなかった、引きつった顔が脳内で大繁殖してしまった、
こらそこ、引きつった顔同士でいちゃいちゃするんじゃない、えぐいではないか、
あ、不味い、全員こっちを向きおった、さらにいやな記憶を思い出させるつもりと見える、
ええい! 我こそは妖怪の山の白狼天狗、犬走椛なり! 全員叩き切ってくれるわ!!


だがちょっと待って欲しい、顔だけなのに霊撃を放ってくるとは如何なる事か、
囲まないで欲しい、周りをぐるぐると回らないで欲しい、近寄らないで欲しい、
あっ、文様! 服の中に潜り込むのは……ああっ、でも文様になら何をされてもいい……!!



「いい年こいた女が四肢丸出しで飛び回るのがそんなにはしたなく見えるかーーー!!」



ああ、記憶を思い出さされてしまった、犬走椛、一生の不覚、
我が家に閉じこもり叫び暴れ最後は不貞寝してしまった文様の姿が様々と蘇る、
当時は今で言う大和撫子全盛期の時代だった故に、活発に動き回る文様は
それはもう敬遠されっぱなしだったのだろう、尻に敷かれるやも知れぬし、
しかしそれは大きな間違いという物、文様はこれ、と思いしものには全力を投じる、
それが新聞であろうと恋路であろうと、つまり文様は尽くす性格なのだ、間違いない。


……ならば今の若返った文様であればどうなのだろうか、
艶々として美味しそうな生腕生足丸出しでも特に問題の無い外見だ、
それでいて出るところはしっかり出ておられ、締まる所は締まっている、
是非とも文様を私の妻として頂戴したく存じ上げます!
必ず! 必ず幸せにいたしますから! どうかお願いいたします父上殿!


はぁはぁ……落ち着け、落ち着くのだ犬走椛よ、落ち着かなければ敵を見逃してしまうぞ、
今考えるべきは私と文様の愛特急空想世界では無い、現実だ、現実と向き合うのだ、
愛特急空想世界を見るのは布団の中だけでよいのだ、身体は火照って眠れなくなるが。


さて、刹那の時間にて頭を冷やしたのはいいが、文様は何故結婚しておられぬのか、
文様は外見は乙女、しかし心は女、付け加えればかなりの好色家である、それも男女問わずに、
以前文様の家を訪問した際、文様がお撮りになられた写真をいくつか拝見したのだが、
下着が写っていない写真が一枚も無かった、腋しか写っていない写真もあったぐらいだ、
しかし何故博麗の巫女は腋を丸出しにしているのだ? 聞けば冬も丸出しとの事、
寒くはないのだろうか、それとも名高い博麗の巫女ともなれば意にも介さぬのか、
よってそれを確かめるために私も腋を丸出しにしてみた、結論を言えばかなり寒かった。

そういえば、腋を丸出しにするようになってから文様が私を見る目が変わられた気がする、
まず私に用がある際は必ず左右から現れるのだ、音も無く気配も断って至近距離にて、
つい先ほど私の家を尋ねに来た際も私が返事をしなければ左右どちらかに忍び寄っていた筈である、
何分、本気になられた文様ほど恐ろしい者は無い、この前など文様に喧嘩を売った天狗がおったが、
私が叩き斬ろうとする前に素っ裸にされておった、何という早業か……私が刀の柄に手を添え、
一歩踏み込んだ瞬間には裸体が目の前にあったのだ、さすがの私も顔を赤らめざるをえなかった、
ちなみに相手は男の天狗だった、まあ下の方は天狗というより象であったが……一応斬っておいた、
その時は脱がしたであろう衣服を抱えていた文様も、あやややや……という顔をしておられた、
不埒な天狗はその後竹林の医者の元へ連れられたそうだが、以降姿を見ることは無い、
あの時の天狗によく似た方を見かけたことはあるが、女だったので別人であろう。

今思い返せば、あの日から他の天狗達の私を見る目が変わった気がする、
それだけならまだしも、男達は皆股間を抑えながらそそくさと私から離れていく、
一体私が何をしたというのか、ただ叩き切っただけではないか、アレを、
最近では、悪い事をすると椛がちょん切りに来るわよ、と親が子供を躾けているらしい、
鬼のように扱われるのも腹が立つので、女性の天狗が文様に喧嘩を売る事があれば
胸の二つの固まりでも切り落としてやろうかと考えている。

しかし胸か……私には胸が無い、文様が美しく誇り高いお胸が羨ましい限りだ、
そういえば最近、貧乳はステータスだの会というところからよく手紙が届く、
読めば勧誘の手紙なのだが、会長が閻魔様とはどういう理由か、これは断ると地獄行きという事か、
仕方なく入会します、の欄に丸をつけて返送しておいたが、会費がマイナスなのもどういう事か、
これは逆にお金をもらえると考えてよいのだろうか、さらには紅魔館でのお茶会のご招待や、
入会年月に応じて様々な物がもらえると言う事なのだが、あまりにも至れり尽くせりすぎて
疑わざるをえない、しかし会長は閻魔様であるし手紙も閻魔様の印付きである……信用してよいものか、
付け加えれば腋組合や中ボス連合とやらの勧誘の手紙も来ている、宝くじに当たったつもりは無いのだが。


おっと、思考が逸れてしまった、結論を言えば文様は強いのだ、
烏天狗という地位に甘んじてはいるが、本気を出せば大天狗にも引けをとらぬお方だ、
その強さを支えているのはやはり速さであろう、文様はよくこう仰られる。



「この世の理はすなわち速さ、物事を速く成し遂げればその分時間が有効に使えます、
 遅いことなら誰でもできる、二十日かければ誰でも傑作新聞が書ける!
 有能なのは週刊誌記者より新聞記者! 朝夕よりも号外です!
 つまり速さこそが文化の基本法則! そして私の師匠からの受け売りです!」



師匠とは誰なのですか、思い出した瞬間にその一言が脳内を駆け巡った、
一度も私がそのお姿を拝見した事の無い文様の師匠、やはり速いのであろうか、
文様より速いとなれば私が振り下ろした剣の上に立つ事など朝飯前か、
むしろ風向温度湿度を同時に確認したり他人と話しながら本を読破したり
戦闘と説教と髪の手入れを同時に行ったりするようなお方なのだろう、
そのお姿を拝めぬのも速すぎて目に映らなかっただけかも知れぬ、私はまだまだ未熟なり。



ううむ、ここまで来て私はようやく大事な事を思い出してしまった、
美しく気高く誇り高くそれでいて可愛く優しくフレンドリーば文様が目の前におられることだ、
それも私の目の前で屈み、にこやかな顔でアレをなさろうとしていることだ、
アレとはアレである、我々誇り高き狼にとってそれをされる事は屈辱に近いアレである。

そう「お手」だ。

このお手の破壊力は凄まじい、例え相手にほんの僅かの好意でも持っていれば手を出さざるをえまい、
お手とはかつて大昔に犬が人間との馴れ合いの果てに植え込まれた本能と聞かされた、
しかし最近発表された九尾の狐の学説によると、これは犬が生まれもった本能とのこと、
そして犬が生まれ持っているとすれば、狼も持っていて当然、とまで書かれていた、
だが問題なのはそこでは無かった、なんと狐は含まれないと書かれていたのだ、
これには我々白狼天狗も遺憾の意を表明せざるをえなかった、むしろ押しかけた、
しかし九百九十九枚にも及ぶ証明を見せ付けられては愚の音も出ぬ、
皆意気消沈し尻尾を垂れ下げて目じりに涙を浮かべながら屋台を占拠したものだ。

その時食べた八目鰻は実に美味であった、
絶妙な塩味が犬と同等と証明された私達の心を癒してくれた物だ、
店長は甘辛だれなんだけどなぁと顔を捻っていたが、間違いなく塩味であった。

思考がそれてしまったが元に戻せば、それほどの脅威であるお手が目の前に迫っている、
しかも愛すべき文様が微笑みと言う武器と共にそれをなさろうとしておられるのだ、
これでは博麗の巫女に竹槍で挑むような物ではないか、勝ち目が無いと言わざるをえない。

しかし! しかし私は誇り高き白狼天狗! 否! 我は狼なり!
例え相手が文様でも! そしてお手が本能と証明されていようとも!
ゆえに全身全霊にて何があろうとも我は本能に勝利してみせる也!!

「椛、お手っ!」
「わんっ(はぁと」

……ち、違うぞ! これは文様に恥をかかせないための忠誠心から来る行動であり
決して本能に負けたわけではなく仕方なくしょうがなく手を出しただけであって
誇り高き白狼天狗と言えども誇りを捨てるのが誇りというもので文様は文様だから……!

「おかわり!」
「わおんっ(はぁと」

ち、ちがうんだから! これは忠誠心なんだから!
ああっ、でも右手が出ちゃう……くやしいっ……ぺしぺしっ!

「ちんちん!」
「わおーんっ(はぁと」



もう犬でいいや。
椛かあいいよかあいいよ椛ハァハァ……。

と言うわけで来年当たりは椛♂×リグルん♂が
極一部で流行りそうな気配がするのですが如何でしょうか?

えっ、椛は♀だって?
あんなかあいい子が女の子の訳ないじゃないかハハハハハ。
幻想と空想の混ぜ人
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1640簡易評価
4.90名前が無い程度の能力削除
どう見ても犬です、本当にありがとうございました。
6.70三文字削除
速さが足りない!の御方が幻想入りしていたとは・・・・・・
遅筆な俺に貴方様の能力を是非!!
8.90卯月由羽削除
この二人はやっぱり可愛い。
12.90名前が無い程度の能力削除
引きつった顔に囲まれるのを想像して吹いた。
犬と言ったら肉球しか思い浮かばない俺。
13.100名前が無い程度の能力削除
椛かわいいよ椛
思考がどんどんズレてくのにワロタw 文様は例え幼女になっても椛を可愛がると思うんだ。
15.80名前が無い程度の能力削除
>下着が写っていない写真が一枚も無かった、
>腋しか写っていない写真もあったぐらいだ
どっちやねん、とw
20.90名前が無い程度の能力削除
椛と文は、いいね。
21.90ぐい井戸・御簾田削除
藍さまは本当に腐るほどの時間を持て余してるんだなw
27.100名前が無い程度の能力削除
椛かわいいよ椛!やっぱりこの二人はいいなあ。
そして次々思い出されていく光景が面白すぎて噴きましたw
35.90削除
うわー、すっごい勢いで耳の後ろ掻いて抱き上げて振り回して頬っぺを痛くないくらいに引っ張って困らせてぇ。それくらいに犬。
36.90読み解く程度の能力削除
あやややや(笑)
38.80名前が削除
どんなカオスだよ!
椛はかわいいなぁ。
39.無評価削除
アニキが師匠と言うことは文の事をアネキと呼ばざるを得ない
40.100西行妖削除
なんか、如何わしい内容がある?
でも面白かったので満点。