ある日の早朝。それは突然のことだった。
「カリスマが足りないのよ!」
「はい?」
いきなり部屋にやってきたかと思えば急に思い出したかのように、このぐーたら姫は言い出した。
「カリスマが足りないのよ。永琳」
「はあ……」
そんなことは前からだろう、などと思っても口にしない。それが従者たるものの宿命であり義務だ。
「どうすればカリスマがあがると思う?」
「さあ」
「さあって……すこしはまじめに考えてくれてもいいじゃないの」
ここらで言っておいた方が良いかもしれない。
そう思い、永琳は口を開く。
「いいですか、姫。まずその生活習慣を改めて下さい」
「せいかつしゅーかん?」
「不思議そうな顔をしないでください。いきなり扉を開けないで下さい。朝っぱらから叫ばないで下さい。そっちの棚の薬品に触れないで下さい。あと私のガ○プラ触らないで下さい」
なんでそんなもの置いてあるんだ。
「姫の生活習慣を簡単に言いますと、食っちゃ寝食っちゃ寝の毎日。これではカリスマがダダ下がりなのも当然です」
「へー」
輝夜はどうやら既に永琳の話に興味がないようで、棚に飾ってある黄色いびっくりどっきりメカを弄っている。
と、腕というか鎌が取れた。それも小さくポキッ、という音をたてて。
「たまに動いたかと思えば妹紅との殺し合い。帰ってきてはボロボロになって、直すよりも買い換えたほうが早いような服を「直して~」とか平気でおっしゃる。って聞いてますか、姫」
「え、ええっ! OSはピカチュウでしょう!」
「そんなことは一言も言ってません。それと後ろに何を隠してるんです」
まずい。
何がまずいって、そりゃ壊したから。
「右手あげて」
「はい」
右手をあげる。当然左手は後ろだ。
「左手あげて」
今度は右手を下げて左手をあげる。
「両手あげて」
ばっ、と両手をあげる。が、何も落ちない。
「……後ろにゲーム機もったイナバが!」
「えっ、どこ!」
振り向いた瞬間、遠心力により髪に絡められていた黄色い物体が飛び出し、永琳の顔面にクリーンヒット。
「姫、今私はあなた様に言うべきことが二つできました」
「ちょっと永琳。イナバなんていないじゃないの……よ?」
ごごご、と背景に炎でも揺らめいているようにも見える永琳の姿に流石に恐怖を覚えた。
「まず一つ、二次設定に踊らされるな。そしてもう一つは……」
「ア、アノ……エイリンサン? オチツイテ……」
「人のプラモ壊すなァァァァァ!!」
永琳が瞬獄殺と叫んだ後に周囲が暗くなり、ボッコボコにされて、気付いたときには倒れ、ただ永琳の背中に「八意」と浮き出ていたのをうっすらと覚えていた。
ともかく、永琳が怖いので永遠亭を出るしかなくなった輝夜は、路頭に迷っていた。
永遠亭から出て行く場所といえば、妹紅の家くらい。あとは宴会の時に行く博麗神社程度。
人里に降りれば薬売りに出ている鈴仙と合流できるだろうが、それはそれで気まずい。
「あれ? どうしてこんなところに姫がいるんですか」
(見られたーーー!)
竹林で鈴仙と出逢ってしまった。しかも最悪のタイミングで。
「うわ、どうしてそんなにボロボロなんですか」
言えない。
永琳のプラモ壊して瞬獄殺されました、なんて言えない。
「さては師匠のプラモ壊して瞬獄殺されました、とか」
(バレてるーーーーーーーーー!)
「まさか、そんなわけないですよね?」
「え、ええ。そうよ」
「嘘だッ!」
とかいきなり言われましても。
「本当の事言って下さい。でないと師匠のとっておきのケーキ食べたことを師匠にバラしますよ」
「ごめんなさい。イナバ様の言うとおりです。言わないで下さい」
土下座した。
それはもう、自然なんていうレベルじゃなかった。
威厳やプライドは捨て去り、ただ瞬獄殺はもうこりごりだ。あれは妹紅との殺し合いの時より痛かった。
「で、壊したんですね」
「ええ、まあ」
立ち直りがはやい。
「私も前にやって、その時は真空波動拳から真昇龍拳でした」
(永琳、貴女がわからなくなりそうだわ)
遠い目をしながら鈴仙・優曇華院・イナバは語る。
「そういえばあのイナバはどうだったの?」
「てゐですか? てゐはたしか……サイコクラッシャーでした」
結局、永琳は何者なのだろうか。
そこでふと思い出す。
「ねえ、イナバ。どうしたら私のカリスマが「ムリです」あが…えっ?」
にっこりと微笑んでいる鈴仙。輝夜の聞き間違えなのだろうか。
「どうしたらカ「ムリです」……」
前よりタイミングが早くなっている。
「ど「ムリです」……ってまだ何も言ってないじゃないのよ!」
「無理なものはムリです。まあ、一番良い方法としては各所のカリスマと呼ばれる妖怪や人間の話を聞くことですね」
「で、それで私のカリスマは上がるのね」
「無理でしょうけどね」
「OK、後で兎鍋の具にしてあげる」
「師匠にばらしますよ」
「すみませんでした、鈴仙様」
永遠亭の主がペットにひれ伏した。
ともあれ、鈴仙に言われたとおりにカリスマと呼ばれている妖怪に会いに行こうと、まずは紅魔館を目指してみる。
「あら、門番の……サイサイシー?」
「せめて中国って言って下さいよ! 誰ですか、サイサイシーって!」
「まあ気にしないでよ、張五飛」
「だから誰ですか!」
紅魔館の門番をからかうのはこのくらいにしよう。
「突然で悪いのだけれど、ここのお嬢様に会いたいの。通してもらえる?」
「はあ、まあ一応聞いてみますね。あと、私の名前は紅美鈴ですから」
「わかったわ。えっと……こきんとう?」
「うわぁぁぁん! 咲夜さーん、咲夜さーん!」
と、泣きながら走っていった。
しばらく待っていると、メイドが現れた。
紅魔館メイド長、十六夜咲夜だ。
「よくも美鈴を泣かせてくれたわね」
「だって、いくら思い出そうとしても名前が出てこないんですもの」
「はあ、で。お嬢様に会いたいなんてどういう風の吹き回し?」
「理由は貴女の主に話すわ」
「まあ、お嬢様の許可が出ているからいいけど。案内するわ」
案内され、いきなり紅茶を出される。
「で、話って何」
「……その前にそこのメイド下がらせてくださらない?」
「咲夜」
「はい」
次の瞬間には姿が見えなくなっていた。どうやら時を止めたらしい。
「これでいいわね。で、このレミリア・スカーレットに何の用?」
「じつは……カリスマをあげる方法を知りたくて」
その言葉を聞いたレミリアは豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
もっとも、彼女が本当に豆鉄砲を食らえばもがき苦しむこと間違いなしだが。
「っ……」
口元を押さえて笑いに耐えている。
「ちょ、ちょっと! なんで笑うのよ!」
「っ……だ、ダメ……! わ、笑い死ぬ……!!」
笑いで吸血鬼が殺せれば吸血鬼ハンターなんてできない。
「カ、カリスマが欲しいって……アハハハハハハハ!!」
ついには椅子から転げ落ち、腹を抱えて笑い出す。
「あ、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
手足をばたつかせ、床を転げ回る。
そこまで笑うことはないだろう。
「か、カリス……あひゃひゃひゃひゃ!」
ドンドンと床を叩きはじめた。
「カリスってどこの仮面ライダーよ」
「ーーーーーっ!」
トドメだったらしい。
ついに声が出なくなり、苦しそうな呼吸音だけが聞こえてくる。
そしてしばらくその状態が続いたかと思うと、急に静かになった。
「ちょ、ちょっと?」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「って、ちょっと。本当に呼吸してないわよ!? 誰かー! 誰かー!!」
本当に吸血鬼を笑い殺すところだった。
吸血鬼の笑いのツボはわからない。
呼吸困難でレミリアがぶっ倒れたので仕方なく紅魔館を去る。
レミリアに人工呼吸するとき、メイド長の鼻息が荒かったのは気のせいだと思いたい。
次は、とりあえず白玉楼に行こうと思ったが向かう途中でそこの庭師と遭遇したので、
「神宝「ブリリアントドラゴンバレッタ」」
「えっ!?」
ピチューン。
とりあえず撃墜しておいた。
「な、何をするんですか!」
「ちょっと話をしようかと。だからその刀しまって。二つとも」
ガルルルル、とでも唸っていそうな少女の名前を思い出そうとする。
そう、たしか永夜異変の時に鈴仙の目を見て狂気の瞳になった半霊の庭師だ。
「たしか、魂魄みょんだったかしら?」
「みょんじゃありません! 妖夢です!」
「ああ、そうそう。妖夢ね。妖夢」
「本当に斬りますよ。それに急いでるんですから、あまり長話はできませんよ」
「ええ、ホントに短くていいから教えて欲しいのよ」
「何をです?」
「カリスマを上げる方法」
「……はい?」
「いや、だからカリスマを上げる方法」
妖夢は困惑する。
落ち着いて素数を数えようとしてもどこぞの氷精が邪魔をする。
「⑨が、⑨がぁぁ!」
「どこぞの大佐風に言わなくて良いから」
「みょん……カリスマなんてわかりませんよ。従者ですし」
「それもそうね。時間を取らせて悪かったわ」
「では、これで」
撃墜しておきながら別れ際はちゃんとしたものだ。
「あ、そうだ。この時間ならもしかしたら人里で藍さんに会えるかもしれませんよ」
「藍?」
そう言われてしばし思考する。
「ああ、永夜異変の時の」
八雲紫の連れていた式神。
「そうね。たまには人里もいいかもしれないわね」
人里に降りてみると、丁度タイムセールとかいうヤツで人混みが出来ていた。
その中に妖夢は突撃していく。
世間の奥様方の気迫は、もしかすると異変時の博麗の巫女よりも凄まじいかもしれない。
その人混みの中から金色に輝く尻尾をもつ妖怪が現れた。
八雲藍だ。
「ん? また珍しい人間に会ったな」
「人間じゃないわ。蓬莱人よ」
「そうだったな。たしか、蓬莱山輝夜とか」
「貴女は八雲藍ね。貴女に聞きたいことがあるのよ。すごく簡単な話」
「ふむ。夕食の準備をしなくてはならないので手短に頼む」
「わかったわ。では早速……カリスマはどうやったら上がるの?」
八雲藍はしばらく考えるような仕草を見せる。
「そもそも」
「ん?」
「カリスマのない貴女が上げる、という表現をするのは不適切ではないのか?」
ピシッ、という音がしたような気がする。
「い、いま何て?」
「いや、だからカリスマのないあn「嘘だッ!!」
叫んだ。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! こ、この私にカリスマがない? そんな、バカなことがあってたまるか!」
「いや、うん。まあ、紫様や幽々子様はああ見えてもカリスマにあふれている人だと私は思う。事実、本気になったときは誰よりも頼りになる。紅魔館のレミリア・スカーレットもまた、カリスマにあふれている。これは私でなくともそう思うだろう。更に言えば閻魔様も、ある種のカリスマだろう」
「わ、私は……」
「だが貴女にはカリスマがない。これは断言しよう。従者である八意永琳のほうがカリスマにあふれているのではないか?」
かいしんのいちげき。
えぐり込むようにフタエノキワミ、アッー!
「ああ、永琳。刻が見える……」
「現実逃避はよくないと思うぞ」
輝夜は知らなければいいことを知ってしまった。
自分にはカリスマがないことを。
レミリアが笑い転げたのももしかすると自分にカリスマがないからではないのだろうか。
永遠亭にいるイナバ達も実は自分よりも永琳の言うことを聞くのではないだろうか。
考え出したらとまらない。
「まあ、従えている者が居る異常カリスマは皆無ではないと思うぞ」
そう笑い(むしろ苦笑)ながら(間違いなくフォロー的な意味で)語りかけてくる藍に、輝夜は凄まじいカリスマを感じた。
これがカリスマだ。カリスマ・オブ・カリスマだ。
「おっと。そろそろ帰らないと。では」
一礼してから去っていく藍。
気付けば妖夢も買い物を終えている。
「どうかしたんですか?」
「なんでもないのよ。なんでも。私、帰るわ」
「えっ、あ。はい。さようなら」
「ええ。さようなら」
まっすぐ永遠亭を目指す。
永遠亭に到着すると、永琳が出迎えてくれた。
「姫。ついに見つけましたよ」
「な、何を?」
「カリスマを上げる方法です」
「ほ、本当!」
つい食いついてしまう。
「まず、語尾に「それと便座カバー」とつけてください」
「わかったわ! それと便座カバー」
「では、姫。食事の準備が出てきていますので」
「永琳、今日の夕食は何? それと便座カバー」
「秋の味覚を堪能できる献立を用意したと担当の者から聞いています」
「何が食べられるのかしら。それと便座カバー」
しまらない。
「焼き魚はやっぱりサンマかしら。……それと便座カバー」
「姫」
「何よ。……それと便座カバー」
「さっきのは嘘です」
「ぶっ殺すぞテメェェ!!」
「死にませんけど何か。あと落ち着いてください」
永琳もまた不老不死の蓬莱人であるからして、殺すことは出来ても死にはしない。
「ですが、カリスマを上げる方法を見つけたというのは本当です」
「どうするのよ」
「戦いに行く前に「俺、帰ったら小さな店を作るんだ」と言って戦いに行くことです」
「なんでわざわざ死亡フラグ立てなきゃいけないのよ」
「あら、知ってましたか。……ちっ」
今、ちっ、て言いましたか?
「じゃあ、コンパクトに向かって「ピリカピリララ~」と呪文を」
「いろいろ混ざってるわよ、それ」
「……なんで知ってるんですか。便座カバー」
「いかにも名前みたいに言わないで頂戴」
「そうですか……ちっ」
また言った?
「さて、それはそうとそろそろ本題の……どうやったら⑨になれるか、でしたっけ?」
「カリスマを上げる方法!」
「ああ、そうでしたね。えっと、これです」
そういって永琳はおなかのあたりにある半円をしたポケットから「カリスマ」とかかれたたすきを取り出した。
「……そのポケットはどこから仕入れたのか聞かないでおくわ」
「ちなみにどこにでも行ける扉もはいってます」
「やっぱりあるのね。で、これをすればいいのね?」
「ええ、後ろは「NEET」って書いてますけど」
「喧嘩売ってンのかおどれは!」
たすきを地面に叩き付けた。
というか、さっきから永遠亭に入らずに何をやっているんだろうか。
「もういいわ。カリスマは諦める」
「はあ」
「いいからごはーん」
そうして蓬莱山輝夜のカリスマ捜索は終わりを告げる……
はずだった。
「って、永琳!」
「はい、なんでしょうか。食べながらしゃべるのは行儀が悪いですよ。あと、机に足をのせない」
「カリスマの発生方法よ!」
「はあ」
またくだらないことを思いついたな、と永琳は呆れながらキノコたっぷりの味噌汁をすする。
「あの帽子よ! 帽子!」
「帽子?」
「通称ZUN帽。レミリア・スカーレットも、西行寺幽々子も、八雲紫も、閻魔様も! カリスマと呼ばれる人はみんな帽子をしているのよ!!」
「ああ、そういえば」
「他人事のように言わない! 貴女も帽子をしているじゃないの!」
「まあ、一応医療に携わる人間だということをアピールする必要があるので」
「よこしなさい?」
「は?」
「その帽子をよこせー!」
直後、景色が揺らいだ。
「え、えいり……」
「お前に足りないものは! それはッ! 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ。そして何よりもォッ!」
永琳の蹴りのラッシュが輝夜に命中する。
「速さが足りないッ!」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
8Hits!
最後の一撃が障子を突き破って輝夜を竹林まで吹っ飛ばした。
だが、コレで終わらない。
「ん?」
運が良いのか悪いのか。
飛んでいった先に妹紅がいた。
「輝夜? ふんっ!」
輝夜だと確認するやいなや、いきなり蹴り飛ばした。
コンボが繋がった!
そのまま永琳のほうへ返っていく。
「む? 百裂脚!」
永琳の足蹴りが再び輝夜に命中する。
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
16Hits!
再び輝夜の身体が吹っ飛ぶ。
今度は竹林ではなく、空に。
「きゃっ!」
「任せろ! マスタースパーク!!」
アリスに向かって飛んでいった輝夜。だが紅魔館から大量に図書を借りてきたと思われる魔理沙がいきなりマスタースパークを発射し、輝夜を返す。
さらにコンボが繋がった!
「まだ来ますか」
今度は問答無用で蹴り始める。
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
24Hits!
輝夜の身体が吹っ飛ぶ。今度は返ってきても面倒なので永遠亭の中に向けてだ。
だが現実は甘くなかった。
「うわ! なんか変なの飛んできた!」
と、自分んところの姫様にそんなことをいう鈴仙はひどすぎやしないかと思うのだが、反射的に何故か手に持っていたバットで打ち返した。
さらにコンボが繋がった!
「いい加減にして下さい!」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
32Hits!
輝夜の身体が再び竹林に向けて蹴り飛ばされる。
「うわっ、何!?」
通りすがりのリグル登場。
「リグルキィィィィクッ!」
後日、輝夜が尋ねたところ、それは条件反射だったらしい。ともかく、さらにコンボが繋がった。
「そんなに蹴られたいんですか」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
40Hits!
渾身の蹴りにより輝夜の身体が吹っ飛ぶ。
と、突然空間が避けた。
「藍、何か飛んで来たわ」
スキマ妖怪の仕業だった。
「なっ! 何をやってるんですか紫様!」
「みぞおっ!?」
とはいいつつ、飛んできたボールにしか見えないほど高速回転している輝夜のみぞおちをピンポイントで狙って蹴り返す。
流石に効いたのか思わず呻き声が漏れた。
さらにコンボが繋がった!
「鬱陶しい!」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
既に容赦がない。
48Hits!
飛んでいった先に居た通りすがりの烏天狗の肩にぶつかる。
「おっと、失礼しました」
そのまま永琳めがけて落下していく輝夜。
更にコンボが繋がった!
「一度死にたいんですか?」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
56Hits!
吹っ飛ぶ輝夜。永淋もそろそろ面倒になってきたのか永遠亭の中へと蹴り飛ばした。
が、そこに通りかかったのはなんとてゐ。
「ほわっちゃ!」
ズガガガガガガッ……ドガシャッ!
一瞬の内に高速連打。それはもう神業といっても過言ではない領域だった。
永淋のほうへと再び飛んでいく輝夜。さらにコンボが繋がった!
「嘘でしょ!? ともかく、これで終わり!」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
64Hits!
そこでやっと、輝夜が地についた。が、勢いはとまらず最初のほうでぶち抜いた障子のほうへと滑っていき、そのまま縁側から庭へ落ちた。
しばらく動かなかったが、ゆっくりと起き上がり、
「わ、我が一生に一片の悔いなし……」
などと意味不明な言葉を残し、再び倒れた。
もしかしたらコイツ、妹紅よりも圧倒的につよかったりするんじゃないのか?
薄れ往く意識の中で、輝夜は自分のカリスマについて、そして八意永琳という存在の危険性について深く考え、暗闇の世界へ落ちていった。
「カリスマが足りないのよ!」
「はい?」
いきなり部屋にやってきたかと思えば急に思い出したかのように、このぐーたら姫は言い出した。
「カリスマが足りないのよ。永琳」
「はあ……」
そんなことは前からだろう、などと思っても口にしない。それが従者たるものの宿命であり義務だ。
「どうすればカリスマがあがると思う?」
「さあ」
「さあって……すこしはまじめに考えてくれてもいいじゃないの」
ここらで言っておいた方が良いかもしれない。
そう思い、永琳は口を開く。
「いいですか、姫。まずその生活習慣を改めて下さい」
「せいかつしゅーかん?」
「不思議そうな顔をしないでください。いきなり扉を開けないで下さい。朝っぱらから叫ばないで下さい。そっちの棚の薬品に触れないで下さい。あと私のガ○プラ触らないで下さい」
なんでそんなもの置いてあるんだ。
「姫の生活習慣を簡単に言いますと、食っちゃ寝食っちゃ寝の毎日。これではカリスマがダダ下がりなのも当然です」
「へー」
輝夜はどうやら既に永琳の話に興味がないようで、棚に飾ってある黄色いびっくりどっきりメカを弄っている。
と、腕というか鎌が取れた。それも小さくポキッ、という音をたてて。
「たまに動いたかと思えば妹紅との殺し合い。帰ってきてはボロボロになって、直すよりも買い換えたほうが早いような服を「直して~」とか平気でおっしゃる。って聞いてますか、姫」
「え、ええっ! OSはピカチュウでしょう!」
「そんなことは一言も言ってません。それと後ろに何を隠してるんです」
まずい。
何がまずいって、そりゃ壊したから。
「右手あげて」
「はい」
右手をあげる。当然左手は後ろだ。
「左手あげて」
今度は右手を下げて左手をあげる。
「両手あげて」
ばっ、と両手をあげる。が、何も落ちない。
「……後ろにゲーム機もったイナバが!」
「えっ、どこ!」
振り向いた瞬間、遠心力により髪に絡められていた黄色い物体が飛び出し、永琳の顔面にクリーンヒット。
「姫、今私はあなた様に言うべきことが二つできました」
「ちょっと永琳。イナバなんていないじゃないの……よ?」
ごごご、と背景に炎でも揺らめいているようにも見える永琳の姿に流石に恐怖を覚えた。
「まず一つ、二次設定に踊らされるな。そしてもう一つは……」
「ア、アノ……エイリンサン? オチツイテ……」
「人のプラモ壊すなァァァァァ!!」
永琳が瞬獄殺と叫んだ後に周囲が暗くなり、ボッコボコにされて、気付いたときには倒れ、ただ永琳の背中に「八意」と浮き出ていたのをうっすらと覚えていた。
ともかく、永琳が怖いので永遠亭を出るしかなくなった輝夜は、路頭に迷っていた。
永遠亭から出て行く場所といえば、妹紅の家くらい。あとは宴会の時に行く博麗神社程度。
人里に降りれば薬売りに出ている鈴仙と合流できるだろうが、それはそれで気まずい。
「あれ? どうしてこんなところに姫がいるんですか」
(見られたーーー!)
竹林で鈴仙と出逢ってしまった。しかも最悪のタイミングで。
「うわ、どうしてそんなにボロボロなんですか」
言えない。
永琳のプラモ壊して瞬獄殺されました、なんて言えない。
「さては師匠のプラモ壊して瞬獄殺されました、とか」
(バレてるーーーーーーーーー!)
「まさか、そんなわけないですよね?」
「え、ええ。そうよ」
「嘘だッ!」
とかいきなり言われましても。
「本当の事言って下さい。でないと師匠のとっておきのケーキ食べたことを師匠にバラしますよ」
「ごめんなさい。イナバ様の言うとおりです。言わないで下さい」
土下座した。
それはもう、自然なんていうレベルじゃなかった。
威厳やプライドは捨て去り、ただ瞬獄殺はもうこりごりだ。あれは妹紅との殺し合いの時より痛かった。
「で、壊したんですね」
「ええ、まあ」
立ち直りがはやい。
「私も前にやって、その時は真空波動拳から真昇龍拳でした」
(永琳、貴女がわからなくなりそうだわ)
遠い目をしながら鈴仙・優曇華院・イナバは語る。
「そういえばあのイナバはどうだったの?」
「てゐですか? てゐはたしか……サイコクラッシャーでした」
結局、永琳は何者なのだろうか。
そこでふと思い出す。
「ねえ、イナバ。どうしたら私のカリスマが「ムリです」あが…えっ?」
にっこりと微笑んでいる鈴仙。輝夜の聞き間違えなのだろうか。
「どうしたらカ「ムリです」……」
前よりタイミングが早くなっている。
「ど「ムリです」……ってまだ何も言ってないじゃないのよ!」
「無理なものはムリです。まあ、一番良い方法としては各所のカリスマと呼ばれる妖怪や人間の話を聞くことですね」
「で、それで私のカリスマは上がるのね」
「無理でしょうけどね」
「OK、後で兎鍋の具にしてあげる」
「師匠にばらしますよ」
「すみませんでした、鈴仙様」
永遠亭の主がペットにひれ伏した。
ともあれ、鈴仙に言われたとおりにカリスマと呼ばれている妖怪に会いに行こうと、まずは紅魔館を目指してみる。
「あら、門番の……サイサイシー?」
「せめて中国って言って下さいよ! 誰ですか、サイサイシーって!」
「まあ気にしないでよ、張五飛」
「だから誰ですか!」
紅魔館の門番をからかうのはこのくらいにしよう。
「突然で悪いのだけれど、ここのお嬢様に会いたいの。通してもらえる?」
「はあ、まあ一応聞いてみますね。あと、私の名前は紅美鈴ですから」
「わかったわ。えっと……こきんとう?」
「うわぁぁぁん! 咲夜さーん、咲夜さーん!」
と、泣きながら走っていった。
しばらく待っていると、メイドが現れた。
紅魔館メイド長、十六夜咲夜だ。
「よくも美鈴を泣かせてくれたわね」
「だって、いくら思い出そうとしても名前が出てこないんですもの」
「はあ、で。お嬢様に会いたいなんてどういう風の吹き回し?」
「理由は貴女の主に話すわ」
「まあ、お嬢様の許可が出ているからいいけど。案内するわ」
案内され、いきなり紅茶を出される。
「で、話って何」
「……その前にそこのメイド下がらせてくださらない?」
「咲夜」
「はい」
次の瞬間には姿が見えなくなっていた。どうやら時を止めたらしい。
「これでいいわね。で、このレミリア・スカーレットに何の用?」
「じつは……カリスマをあげる方法を知りたくて」
その言葉を聞いたレミリアは豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
もっとも、彼女が本当に豆鉄砲を食らえばもがき苦しむこと間違いなしだが。
「っ……」
口元を押さえて笑いに耐えている。
「ちょ、ちょっと! なんで笑うのよ!」
「っ……だ、ダメ……! わ、笑い死ぬ……!!」
笑いで吸血鬼が殺せれば吸血鬼ハンターなんてできない。
「カ、カリスマが欲しいって……アハハハハハハハ!!」
ついには椅子から転げ落ち、腹を抱えて笑い出す。
「あ、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
手足をばたつかせ、床を転げ回る。
そこまで笑うことはないだろう。
「か、カリス……あひゃひゃひゃひゃ!」
ドンドンと床を叩きはじめた。
「カリスってどこの仮面ライダーよ」
「ーーーーーっ!」
トドメだったらしい。
ついに声が出なくなり、苦しそうな呼吸音だけが聞こえてくる。
そしてしばらくその状態が続いたかと思うと、急に静かになった。
「ちょ、ちょっと?」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「って、ちょっと。本当に呼吸してないわよ!? 誰かー! 誰かー!!」
本当に吸血鬼を笑い殺すところだった。
吸血鬼の笑いのツボはわからない。
呼吸困難でレミリアがぶっ倒れたので仕方なく紅魔館を去る。
レミリアに人工呼吸するとき、メイド長の鼻息が荒かったのは気のせいだと思いたい。
次は、とりあえず白玉楼に行こうと思ったが向かう途中でそこの庭師と遭遇したので、
「神宝「ブリリアントドラゴンバレッタ」」
「えっ!?」
ピチューン。
とりあえず撃墜しておいた。
「な、何をするんですか!」
「ちょっと話をしようかと。だからその刀しまって。二つとも」
ガルルルル、とでも唸っていそうな少女の名前を思い出そうとする。
そう、たしか永夜異変の時に鈴仙の目を見て狂気の瞳になった半霊の庭師だ。
「たしか、魂魄みょんだったかしら?」
「みょんじゃありません! 妖夢です!」
「ああ、そうそう。妖夢ね。妖夢」
「本当に斬りますよ。それに急いでるんですから、あまり長話はできませんよ」
「ええ、ホントに短くていいから教えて欲しいのよ」
「何をです?」
「カリスマを上げる方法」
「……はい?」
「いや、だからカリスマを上げる方法」
妖夢は困惑する。
落ち着いて素数を数えようとしてもどこぞの氷精が邪魔をする。
「⑨が、⑨がぁぁ!」
「どこぞの大佐風に言わなくて良いから」
「みょん……カリスマなんてわかりませんよ。従者ですし」
「それもそうね。時間を取らせて悪かったわ」
「では、これで」
撃墜しておきながら別れ際はちゃんとしたものだ。
「あ、そうだ。この時間ならもしかしたら人里で藍さんに会えるかもしれませんよ」
「藍?」
そう言われてしばし思考する。
「ああ、永夜異変の時の」
八雲紫の連れていた式神。
「そうね。たまには人里もいいかもしれないわね」
人里に降りてみると、丁度タイムセールとかいうヤツで人混みが出来ていた。
その中に妖夢は突撃していく。
世間の奥様方の気迫は、もしかすると異変時の博麗の巫女よりも凄まじいかもしれない。
その人混みの中から金色に輝く尻尾をもつ妖怪が現れた。
八雲藍だ。
「ん? また珍しい人間に会ったな」
「人間じゃないわ。蓬莱人よ」
「そうだったな。たしか、蓬莱山輝夜とか」
「貴女は八雲藍ね。貴女に聞きたいことがあるのよ。すごく簡単な話」
「ふむ。夕食の準備をしなくてはならないので手短に頼む」
「わかったわ。では早速……カリスマはどうやったら上がるの?」
八雲藍はしばらく考えるような仕草を見せる。
「そもそも」
「ん?」
「カリスマのない貴女が上げる、という表現をするのは不適切ではないのか?」
ピシッ、という音がしたような気がする。
「い、いま何て?」
「いや、だからカリスマのないあn「嘘だッ!!」
叫んだ。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! こ、この私にカリスマがない? そんな、バカなことがあってたまるか!」
「いや、うん。まあ、紫様や幽々子様はああ見えてもカリスマにあふれている人だと私は思う。事実、本気になったときは誰よりも頼りになる。紅魔館のレミリア・スカーレットもまた、カリスマにあふれている。これは私でなくともそう思うだろう。更に言えば閻魔様も、ある種のカリスマだろう」
「わ、私は……」
「だが貴女にはカリスマがない。これは断言しよう。従者である八意永琳のほうがカリスマにあふれているのではないか?」
かいしんのいちげき。
えぐり込むようにフタエノキワミ、アッー!
「ああ、永琳。刻が見える……」
「現実逃避はよくないと思うぞ」
輝夜は知らなければいいことを知ってしまった。
自分にはカリスマがないことを。
レミリアが笑い転げたのももしかすると自分にカリスマがないからではないのだろうか。
永遠亭にいるイナバ達も実は自分よりも永琳の言うことを聞くのではないだろうか。
考え出したらとまらない。
「まあ、従えている者が居る異常カリスマは皆無ではないと思うぞ」
そう笑い(むしろ苦笑)ながら(間違いなくフォロー的な意味で)語りかけてくる藍に、輝夜は凄まじいカリスマを感じた。
これがカリスマだ。カリスマ・オブ・カリスマだ。
「おっと。そろそろ帰らないと。では」
一礼してから去っていく藍。
気付けば妖夢も買い物を終えている。
「どうかしたんですか?」
「なんでもないのよ。なんでも。私、帰るわ」
「えっ、あ。はい。さようなら」
「ええ。さようなら」
まっすぐ永遠亭を目指す。
永遠亭に到着すると、永琳が出迎えてくれた。
「姫。ついに見つけましたよ」
「な、何を?」
「カリスマを上げる方法です」
「ほ、本当!」
つい食いついてしまう。
「まず、語尾に「それと便座カバー」とつけてください」
「わかったわ! それと便座カバー」
「では、姫。食事の準備が出てきていますので」
「永琳、今日の夕食は何? それと便座カバー」
「秋の味覚を堪能できる献立を用意したと担当の者から聞いています」
「何が食べられるのかしら。それと便座カバー」
しまらない。
「焼き魚はやっぱりサンマかしら。……それと便座カバー」
「姫」
「何よ。……それと便座カバー」
「さっきのは嘘です」
「ぶっ殺すぞテメェェ!!」
「死にませんけど何か。あと落ち着いてください」
永琳もまた不老不死の蓬莱人であるからして、殺すことは出来ても死にはしない。
「ですが、カリスマを上げる方法を見つけたというのは本当です」
「どうするのよ」
「戦いに行く前に「俺、帰ったら小さな店を作るんだ」と言って戦いに行くことです」
「なんでわざわざ死亡フラグ立てなきゃいけないのよ」
「あら、知ってましたか。……ちっ」
今、ちっ、て言いましたか?
「じゃあ、コンパクトに向かって「ピリカピリララ~」と呪文を」
「いろいろ混ざってるわよ、それ」
「……なんで知ってるんですか。便座カバー」
「いかにも名前みたいに言わないで頂戴」
「そうですか……ちっ」
また言った?
「さて、それはそうとそろそろ本題の……どうやったら⑨になれるか、でしたっけ?」
「カリスマを上げる方法!」
「ああ、そうでしたね。えっと、これです」
そういって永琳はおなかのあたりにある半円をしたポケットから「カリスマ」とかかれたたすきを取り出した。
「……そのポケットはどこから仕入れたのか聞かないでおくわ」
「ちなみにどこにでも行ける扉もはいってます」
「やっぱりあるのね。で、これをすればいいのね?」
「ええ、後ろは「NEET」って書いてますけど」
「喧嘩売ってンのかおどれは!」
たすきを地面に叩き付けた。
というか、さっきから永遠亭に入らずに何をやっているんだろうか。
「もういいわ。カリスマは諦める」
「はあ」
「いいからごはーん」
そうして蓬莱山輝夜のカリスマ捜索は終わりを告げる……
はずだった。
「って、永琳!」
「はい、なんでしょうか。食べながらしゃべるのは行儀が悪いですよ。あと、机に足をのせない」
「カリスマの発生方法よ!」
「はあ」
またくだらないことを思いついたな、と永琳は呆れながらキノコたっぷりの味噌汁をすする。
「あの帽子よ! 帽子!」
「帽子?」
「通称ZUN帽。レミリア・スカーレットも、西行寺幽々子も、八雲紫も、閻魔様も! カリスマと呼ばれる人はみんな帽子をしているのよ!!」
「ああ、そういえば」
「他人事のように言わない! 貴女も帽子をしているじゃないの!」
「まあ、一応医療に携わる人間だということをアピールする必要があるので」
「よこしなさい?」
「は?」
「その帽子をよこせー!」
直後、景色が揺らいだ。
「え、えいり……」
「お前に足りないものは! それはッ! 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ。そして何よりもォッ!」
永琳の蹴りのラッシュが輝夜に命中する。
「速さが足りないッ!」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
8Hits!
最後の一撃が障子を突き破って輝夜を竹林まで吹っ飛ばした。
だが、コレで終わらない。
「ん?」
運が良いのか悪いのか。
飛んでいった先に妹紅がいた。
「輝夜? ふんっ!」
輝夜だと確認するやいなや、いきなり蹴り飛ばした。
コンボが繋がった!
そのまま永琳のほうへ返っていく。
「む? 百裂脚!」
永琳の足蹴りが再び輝夜に命中する。
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
16Hits!
再び輝夜の身体が吹っ飛ぶ。
今度は竹林ではなく、空に。
「きゃっ!」
「任せろ! マスタースパーク!!」
アリスに向かって飛んでいった輝夜。だが紅魔館から大量に図書を借りてきたと思われる魔理沙がいきなりマスタースパークを発射し、輝夜を返す。
さらにコンボが繋がった!
「まだ来ますか」
今度は問答無用で蹴り始める。
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
24Hits!
輝夜の身体が吹っ飛ぶ。今度は返ってきても面倒なので永遠亭の中に向けてだ。
だが現実は甘くなかった。
「うわ! なんか変なの飛んできた!」
と、自分んところの姫様にそんなことをいう鈴仙はひどすぎやしないかと思うのだが、反射的に何故か手に持っていたバットで打ち返した。
さらにコンボが繋がった!
「いい加減にして下さい!」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
32Hits!
輝夜の身体が再び竹林に向けて蹴り飛ばされる。
「うわっ、何!?」
通りすがりのリグル登場。
「リグルキィィィィクッ!」
後日、輝夜が尋ねたところ、それは条件反射だったらしい。ともかく、さらにコンボが繋がった。
「そんなに蹴られたいんですか」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
40Hits!
渾身の蹴りにより輝夜の身体が吹っ飛ぶ。
と、突然空間が避けた。
「藍、何か飛んで来たわ」
スキマ妖怪の仕業だった。
「なっ! 何をやってるんですか紫様!」
「みぞおっ!?」
とはいいつつ、飛んできたボールにしか見えないほど高速回転している輝夜のみぞおちをピンポイントで狙って蹴り返す。
流石に効いたのか思わず呻き声が漏れた。
さらにコンボが繋がった!
「鬱陶しい!」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
既に容赦がない。
48Hits!
飛んでいった先に居た通りすがりの烏天狗の肩にぶつかる。
「おっと、失礼しました」
そのまま永琳めがけて落下していく輝夜。
更にコンボが繋がった!
「一度死にたいんですか?」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
56Hits!
吹っ飛ぶ輝夜。永淋もそろそろ面倒になってきたのか永遠亭の中へと蹴り飛ばした。
が、そこに通りかかったのはなんとてゐ。
「ほわっちゃ!」
ズガガガガガガッ……ドガシャッ!
一瞬の内に高速連打。それはもう神業といっても過言ではない領域だった。
永淋のほうへと再び飛んでいく輝夜。さらにコンボが繋がった!
「嘘でしょ!? ともかく、これで終わり!」
どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし、どぐし……どぐしっ!
64Hits!
そこでやっと、輝夜が地についた。が、勢いはとまらず最初のほうでぶち抜いた障子のほうへと滑っていき、そのまま縁側から庭へ落ちた。
しばらく動かなかったが、ゆっくりと起き上がり、
「わ、我が一生に一片の悔いなし……」
などと意味不明な言葉を残し、再び倒れた。
もしかしたらコイツ、妹紅よりも圧倒的につよかったりするんじゃないのか?
薄れ往く意識の中で、輝夜は自分のカリスマについて、そして八意永琳という存在の危険性について深く考え、暗闇の世界へ落ちていった。
作者の輝夜に対する歪んだ愛情を感じるw
文に関しては詰め込みすぎな感がある。レミリアのところ無理矢理すぎ
最後のえーりんコンボも長すぎやしないか。
どうでもいいがガン麩羅って昔の接着剤でくっつけるヤツは幻想入りしてそうだ
異常?
最後のコンボはいまいち
鍵ネタもほどほどに
前後がないと唐突に感じます