※風神録キャラがチラリチラリ登場しますのでご注意を。
『えー、本日はお日柄もよく、秋の爽やかな風が気持ちいい絶好のお祭り日和ですねぇチルノさん』
『おひがら。ってなに?』
『……はい。というわけで、司会者の射命丸文です。
ほら、チルノさんも自己紹介』
『じこしょうかい? あたい最近事故なんてしてないよ?』
『……はい、ということで解説者というか、観客代表のチルノさんです』
射命丸とチルノの声がマイク越しに聞こえてくる。
霊夢はその言葉を聞きながら、ただただ黙っていた。
いや、黙っているしかなかった。
『魔理沙さん、自信のほどはどうですか?』
「私が負けるはずないぜ。霊夢は私の嫁だ!」
「あら、あなたが私に勝てるわけ?」
「あ?? いいのか咲夜、吸血鬼のこと放っておいて」
「大丈夫よ。お嬢様も参加してるんだから」
「霊夢は私の嫁ー!!!」
博麗神社に集まった、幻想郷でも有名な妖怪人間妖精etcetc……
それが口々に声を上げる。お祭りらしいいい雰囲気である。
霊夢にとっては、悪魔の雄たけびに等しいが。
『いやー参加者のみなさん、とても活気づいてますねチルノさん』
『なんだかんだ言ってるけど、最強はあたいだよ』
『はいはいそうですね。
では、開会の宣言を立案者の八雲紫さんからお願いします』
チルノの発言を軽く流すと、射命丸はそのまま隣に立つ紫にマイクを渡した。
紫はにっこりと笑顔になると、声高らかに宣言する。
『それじゃあこれより、
第1回幻想郷NO1決定戦!! ~霊夢は俺の嫁編~
を開催するわ。みんながんばってね~。そして私に勝つことは許さないわよ~』
紫の発言に、参加者達が雄たけびを上げる。
上がった雄たけびで紫の最後の辺りの言葉が聞こえなかったが、それも計画のうちである。
そんな本人にとっては地獄絵図にも近い光景を、霊夢は賽銭箱の上で見ていた。
縄で体中を縛られ、口をガムテープで止められている姿で。そしてその横には『今日の景品』と書かれた木札が立っており、
霊夢は「これが景品に対する仕打ちなのか」と、呆れかえっているのだった。
事の始まりを説明するとすれば、今日も今日とて霊夢のためにと博麗神社に集まる彼女たちにある。
魔理沙やらレミリアやら咲夜やらアリスやら妖夢やら迷い込んだチルノやらが雑談している時、スキマから紫が現れた。
そこで紫が開口一番、
「霊夢は私の嫁~」
とか言いながら霊夢に抱きついたのである。慌てる霊夢に対し、周りの面々も触発されるように次々と抱きついてくる。
そのまま喧嘩になると思いきや、なぜかそのままの体勢で会議が始まってしまった。
霊夢ははたして誰のものか。そんな議題で進む会議はもちろん平行線で一向に話はまとまらない。
もちろん当の本人である霊夢の発言は誰も聞こうとはしなかった。
それでよく人を嫁嫁言えるなと思う霊夢だったが、どうぜこいつらに言っても無駄だと1人納得してお茶を淹れることにした。かなりのお人好しなのだ。
そんな霊夢がお茶を淹れ、戻ってきたときにはすでに話はまとまっていた。
魔理沙による「とりあえず幻想郷で一番すごい霊夢の相手は、幻想郷で一番強い奴だろ」という発言のもと、
博麗神社内にて霊夢の婿決定戦を行うことになったという。もちろん、当人への相談抜きで。
あっけにとられる霊夢をよそに、魔理沙は射命丸を捕まえに、レミリアは霊夢を縛りあげ、紫はさりげなく噂を広めて人を集め、
上気のような一大お祭りになっていた。
そしていつのまにか、たくさんの屋台があったり決定戦に関係無い者も来ていたりと、本当のお祭りのようになっていた。
そんなわけで、本人の発言が1つも無いまま始まった霊夢の婿決定戦。
参加者は魔理沙、咲夜、レミリア、アリス、妖夢、紫、萃香、幽香。
その誰もが自分が『婿』である事に対して何も言わないでいるのは、きっと愛ゆえである。
そして司会者兼解説者の射命丸文。迷い込んだチルノによって本部が設置されている。明らかな人選ミスだがしょうがない。
『それでは、さっそく行ってみましょうか。
まぁ、実はなにも考えてないのですが、チルノさんは何かありますか?』
『巫女は貧乏だから、お金ある人でいいんじゃないの?』
貧乏じゃねぇ!ちょっと最低限の生活してるだけだ!!
と言いたがあいにくガムテープによって口がふさがれているのでフガフガとしか言えない霊夢。
そんな霊夢を可愛いなぁとか思いながら見ている参加者。かなりダメな感じが出ている。
『さすがにそれは……そうですね。では、料理対決にしましょう。
食事があまり裕福ではない霊夢さんのためにおいしい料理ができた人が勝ちです。判定は霊夢さんで。
それじゃあ開始!!』
射命丸の声に、参加者はいっせいに飛び出した。材料やらなにやらは全部自分で用意し、調理場もどこでもいい。そんな感じのルールで。
残された射命丸とチルノと霊夢。
チルノはさっさと屋台に向かってしまったので、射命丸はしかたなく縛られる霊夢のもとまで行き、縄をほどいた。ついでにガムテープも。
「大変ですね、愛されるっていうのも」
「あんなの愛じゃないわよ」
「まぁ、とりあえずみなさんの気が済むまでお願いしますね。
ここで逃げてしまったら、神社どころか人里まで被害が出かねないですから」
「…………はぁ」
それほどまでのポテンシャルを秘めた連中ばかりである。霊夢も逃げたところで紫に捕まるのがオチだと分かっているので、仕方なく屋台を回る事にした。
恐らくいくつも完成するであろう、殺人級の料理のためにお腹を空かせながら。
それがいい意味で裏切られるのを少しだけ期待しながら。
そして数時間後、とりあえずチルノが取ってほしそうだったので変わりに取ってあげた風船ヨーヨーでチルノと遊んでいると、なんともな匂いを漂わせながら
妖夢と幽香が霊夢の前に降り立った。手にはあのなんか銀色のドーム状のフタを乗せた皿がある。
ミスティア印の串ウナギを買っていたという射命丸を持ち、審査に入る。
いつのまにか霊夢の前にイスといテーブルが用意されており、ここで審査しろという事らしい。
『モグモグ では妖夢さんからどうぞ』
「はい!いつも幽々子様が満足できる料理を作っている私には簡単でした。どうぞ召し上がれ!」
自信満々な妖夢がフタを開ける。
と、共になんともおいしそうな香りが辺りを包んだ。
『へぇ~。秋らしくサンマ焼きですね。しかもこれはアンがかかっているのですか?』
「はい。和風のだしをベース、こっちも秋らしく各種のキノコを使ってアンを作りました。
それを七輪で焼いたサンマの上にかけてあります」
『いい香りですねぇ。このキノコのほのかな香りと、お皿に添えられた紅葉の葉が風流じゃないですか』
金色に輝いているというような言い方のできる、焼いたサンマを覆うようにかかったアン。
そこには細かく切られた様々なキノコが混ざっており、秋の味覚を一度に楽しめるだろう。
そしてもちろん焼かれているサンマも絶妙な焼き加減であり、油ものっている。
そんな料理を前に、思わず霊夢は生唾を飲む。
「……ゴクリ。い、いいの?」
『え、い、いえそりゃあ審査なので食べてもらわないと……』
まるで3時間絶食した幽々子のような目で妖夢の料理を見る霊夢。
そして次の瞬間にはその料理を平らげていた。超スピードとかそういうものではないほどの速さである。
期待の目で見る妖夢に、霊夢は極上の笑顔を向けた。
「すっごくおいしかったわ!!!」
「…………」 バタン!
『おぉ~っと、妖夢さん霊夢さんの笑顔にやられて倒れてしまいました!
なんという破壊力。これが博麗霊夢!まさに妖怪バスター!!』
射命丸の絶妙な解説が入りつつ、さりげなく裏方役の椛が妖夢の遺体(?)を引きずって行くと次は幽香のターンである。
『え~、では続きまして幽香さんの料理ですね。どうですか霊夢さん』
「そうね。どーせ花を食べろとか言うんでしょ?」
「あら、失礼ね。しっかりとした料理に決まってるじゃない」
心外だ。と言いたげな幽香が霊夢の前に幽香のお皿が置かれる。
『では、オープンです!』
おぉ~!!!
いつのまにか集まっていた(恐らくいい香りによって集められた)ギャラリーから、思わず歓声が上がる。
フタが取られた中には、1杯のお吸い物が入っていた。
『これまた和風ですね』
「えぇ、霊夢には和風の方がなじみ深いでしょうしね」
『これは……なるほど、具材を花のように飾り切りしたのですね。
いや、それにしても器用ですね~』
「霊夢への愛ゆえよ」
胸を張りながら言う幽香だが、霊夢はすでに目の前のお吸い物に釘付けだった。
中身はシンプルなお吸い物ながら、中に浮かぶ大根、人参はそれぞれ花を模っており、紅葉麩も添えられている。
食用の黄色い菊もバラバラにされた状態で少量浮かんでおり、なによりこの香りがアクセントとなっていた。
「い、いただきます」
意を決したような顔でお吸い物を手に取ると、グイッと一気に飲みほした。
熱くないのか?という周囲の思いとは逆に、霊夢は幸せそうな顔でお椀を置いた。
「おいしいわ幽香! あなたやるじゃない!!」
「そうでもないわよ」
などと言いながらも、幽香は幸せそうな顔でもじもじしている。
みんなもう本当にダメだなぁとかギャラリーが思い出した時に、第2波がやってきた。
『おぉ~っと、妖夢さん、幽香さんの審査が終わった所にレミリアさんと咲夜さんが到着しました』
「あら、一番じゃないみたいね」
「それはお嬢様がモタモタしていたからです」
「あら? 私にケチをつけるのかしら?」
両者の空気がわずかに冷える。
と、そこで射命丸は2人が1つの皿しか持っていない事に気づいた。
『おや?もしかして、レミリアさんと咲夜さんは合作ですか?』
「えぇ。最終的には敵になるけど、お嬢様を裏切るのは心苦しいからとりあえず同盟を組んだの」
「とか言いながら、本当は料理が得意じゃないだけなのよね」
小馬鹿にするように鼻で笑うレミリアだが、次の瞬間には足元にナイフが何本も刺さっていた。
再びわずかに凍る両者の間の空気。
『え、えぇ~、ではこのまま弾幕ごっこが始まる前に審査に入りましょう。椛、お皿を霊夢さんの前に』
「はいっ」
恐らくこのまま動かないであろうレミリアと咲夜の代わりに椛がお皿をテーブルに置き、フタを開ける。
『おぉ~これは――…………なんですか?』
中には、真っ赤な色をしたケーキのようなものと、真っ赤な液体が入ったグラスが入っていた。
冷戦状態のレミリアと咲夜はその言葉に怒ったような顔で説明を始める。
「見れば分かるでしょう?紅魔館自慢のブラッドケーキにすっぽんの血よ」
「ブラッドケーキは紅魔館では大人気なのよ。私たちだけじゃなくて他のメイドも大好きだし、
美鈴やあのパチェでさえおいしいって言うのよ? もちろんすっぽんの血は霊夢の」
『はい!それ以上は結構です。では霊夢さん審査を―――』
あらぬ妄想をしているレミリアと咲夜を差し置き、審査に入ろうとする。
が、ギャラリーや射命丸はここで思った。
……これは人が食べていいものだろうか。と。
いや、だめということは無いだろうが、血の味のケーキや正真正銘血のジュースを果たして人間の味覚がおいしいと思うのだろうか。
いくら舌が貧しい霊夢でも、こればっかりは……
ギャラリーがそう思い始めた時、霊夢はぎこちない動作でそえられたフォークでケーキを刺し、恐る恐る口へと運んだ。
突然の出来事に、思わずギャラリーからざわめきが漏れる。
霊夢は気持ち涙目になりながらも、そのままケーキとジュースを飲みきった。
『れ、霊夢さん。大丈夫ですか?』
「大丈夫……では無いけど、せっかくレミリアと咲夜が作ってくれたものだから……残すともったいないし」
涙目のまま、レミリアと咲夜にぎこちない笑顔を向ける霊夢。
その瞬間、レミリアと咲夜が鼻血を出しながら卒倒し、ギャラリーからは拍手が飛び交い、射命丸も思わず拍手をしてしまっていた。
中には涙を流しながら拍手をしているものもいたという。
『なんという慈愛の心っ! これが!これが妖怪バスターの力なのでしょうか!?
思わず私までキュン☆としてしまいました!!』
拍手の渦の中、苦しそうにテーブルにつっぷす霊夢。
そんな彼女の後方に一本の線ができたと思うと、そのままその線はスキマとなり、中から紫が現れた。
「あら?霊夢だめじゃないこんな体の毒になりそうなもの食べちゃ」
皿に残る残骸とグラスに残った液体を見てなんの料理は察した紫は笑顔でそれをスキマの彼方まで吹き飛ばすと、自分の料理をテーブルに置いた。
感動の空気が崩れたことで、ギャラリー間で空気読めよ的な感情が生まれたが、それ以上に紫の放つラヴパワーに黙り込んでしまう。
『えーそれでは突然現れた紫さんの料理をお願いします』
「本当は真打は最後に登場するべきなんでしょうけど、あんな料理の後は私の料理が最適だと思ったのよね」
紫は自慢げにフタを開ける。
するとその中には―――
『こ、これは!まさか世界3大珍味と呼ばれる!?』
「そう。確かに霊夢は素朴でおいしい料理も好きでしょうけど、こんな機会でしょ?
少なからずこういう豪華な料理を望んでいるはずと見ての選択よ」
『なんという人の心のスキマをつく攻撃!まさにスキマ妖怪!!』
フォアグラ、キャビア、トリュフを惜しげもなく使った料理が溢れるように並ぶお皿。
1皿にそんなに並べんなよ。と言いたいが、それでもやっぱりその豪華なオラーには圧倒される。
惜しらむは、作者がそれらの料理を食べたことが無いので詳しく表記できない点だろうか。
「お、お、お、お、おぉ~!!」
苦しそうにしていた霊夢も、思わず立ち上がってしまう顔ぶれ。
そしてまたしても次の瞬間にはお皿に乗っていた料理は消えていた。ものすごい食欲である。
平らげた霊夢は、今までで一番の笑顔で紫の手を握る。
「さすが紫!分ってるじゃない!ありがとう!ありがとう!!」
「これくらい当然よ」
澄ました顔をする紫だが、内心心臓バクバクでドッキドキでうっふーんな事になっているのは、ギャラリーですら認識できた。
続いての参加者がなかなか来ないので少しの休憩をはさむことにした。
すでに審査を終えた者も、妖夢は和室で幸せそうな顔で安置されており、レミリア・咲夜も同様、幽香と紫はそれぞれ幸せそうな顔で縁側にいた。
霊夢は少しできた暇で、さっきまで風船ヨーヨーで遊んでおり審査をちゃんと見てなかったチルノと射的を楽しんでいた。
ちなみにゲットした○○○っちのぬいぐるみはチルノにあげたところ、大層喜んだという。
そして、
『おぉ~っと、先ほどの4名から遅れること30分、アリスさんと魔理沙さん、萃香さんが同時に到着しました~』
という射命丸のアナウンスにより、霊夢は再び席につき、ギャラリー達もわらわらと湧いてきた。
チルノは自分も霊夢にお返しをしようと射的に夢中でやっぱりちゃんと見る気は無いようだった。
「あら、貴女たちも同時なの?じゃあ順番はどうする?」
「私は最後でいいぜ。真打は最後って相場が決まってるんだ!」
「だったら私一番にいくよ~」
珍しく酔っぱらってない萃香が、皿ではなく竹の皮で包まれた何かを取り出した。
その瞬間、周りの空気が変わった。
まさか。いや、まさかだろう。そんな囁きが聞こえる。
『萃香さん、それは?』
「見れば分かるでしょ?『おにぎり』よ『おにぎり』!」
やっぱりかよ!というキレのいいツッコミや噴き出すものがギャラリーの間で続出した。
当の萃香は、なぜみんなが笑っているのか謎らしく頭を捻っている。自覚は無いらしい。
笑うのをおさえている霊夢が、口の端をヒクヒクさせながら萃香からおにぎりを受け取った。
「なんで笑ってるのみんな?」
「さ、さぁ?じゃあ食べるわね」
これはさっさと食べないと噴き出しかねない。
そう決意して一口おにぎりを食べた霊夢は、そのおいしさに思わず黙ってしまった。
「ッ!!」
『おや、霊夢さんの表情が一転驚きのものになりましたよ?
なにかあのおにぎりに秘密はあるのですか萃香さん』
「ふふふっ。よくぞ聞いてくれました!』
射命丸に向けられたマイクを奪い取ると、萃香は主にギャラリーに向かって説明を始めた。
『まずはお米!人里のお店を何件も訪ねて最高のを貰ったわ!炊きあげた時にふっくらとするのはもちろん、艶やかに光って食欲をそそる様なやつをね。
塩ももちろんいいものよ。あの森の入口にあるなんとか堂とかいうところの主人がちょうど持ってるとか言ってくれてね。
中には霊夢が台所に隠してある、博麗に伝わる幻の梅干し!霊夢は隠してるみたいだけど私は知ってるのよ!もちろんみんなには教えないけどね』
ざわめいていたギャラリーも、萃香の説明に思わず生唾を飲む。
よくよく見れば、竹の皮で包まれたおにぎりは、輝かしいほどの輝きを放っている。
そしてなにより、萃香の説明の信憑性は霊夢の表情が物語っていた。
『霊夢さん、霊夢さん。おいしいのは分りましたから。緩みきった顔をどうにかしてください』
「え、わ、私そんな顔してる?」
『しています。すごく緩んでます』
慌てて顔を隠す霊夢だったが、その一連の行動により一層萃香は胸をはる。
そんな萃香を押しのけるように、アリスが飛び出す。
「次!次私!!」
『あ、じゃあアリスさんどうぞ』
押しのけられて不貞腐れたような顔をする萃香を無視して、アリスはテーブルにお皿とポット、カップを置いた。
『おや?これは?』
「ふふふ。最後の方にこれを持ってきたのも作戦のうちよ」
不敵に笑うアリスが、フタを開ける。
中には小さなモンブランが1つ入っていた。
「今までの料理で霊夢のお腹は満タンに近いはずよ。
ということは、まともな料理を出したところでどうにもならない……だったら、締めとして私自慢のデザートを出せばいいのよ!」
自信満々に、拳を上げて熱く語るアリス。いつのまにか現れた上海人形がポットから熱々の紅茶をカップに注いでいた。
『なるほど、アリスさんらしい狡い、もという賢い選択ですね』
「……」
思いっきりアリスにメンチを切られた射命丸だが、軽くスルーすると霊夢に向き直った。
すでに霊夢は臨戦態勢に入っている。
『では、霊夢さん審査をどうぞー』
また1瞬で食べ終わるのだろう。という大方の予想を裏切り、霊夢は丁寧にモンブランを食べ、紅茶を楽しんでいる。
まるでそうするのが礼儀と言わんばかりに。
「うん、さすがアリスね。いつも通りおいしいデザートだわ。
それにこの紅茶もおいしいわね。いつも緑茶ばかりだから新鮮でいいわ」
「そうでしょ?なんだったらこんどこの葉分けてあげましょうか?」
「いいの?じゃあ今度お願いね」
なんだか今まで一番和やかな空気で進む審査。
ギャラリーも満足げだ。
そのまま和やかに霊夢は完食すると、丁寧に手を合わせてごちそうさまをした。
『さぁ、和やかに終わったアリスさんの審査。
続いてラストになります、魔理沙さんの料理の登場です!!』
射命丸が魔理沙に向かって指をさす。
魔理沙は腕を組み、どこからともなくやってきた風で服がバサバサとなびいており、なぜかかっこいい演出になっていた。
そのまま魔理沙は自信満々な顔で1つ1つのお椀をテーブルに並べていく。
『これは……さきほどのアリスさんの言葉じゃないですが、最後にしては量が多いですね』
「そりゃそうだぜ。いつもの霊夢の朝ごはんと同じだからな」
白飯に、ネギと豆腐の味噌汁、焼き魚に出汁巻き卵とお茶。
素朴でいてまさに日本の朝ごはんを思わせる品揃えである。
『分かってて出す。ということは何か思惑があるわけですね?』
「あぁ、あるぜ。これはな―――霊夢の味を再現してるんだ」
魔理沙の言葉に、ギャラリーを含め辺りがシンとなる。
「何度も何度も朝早くに霊夢の家にお邪魔してた食べていたこの朝ごはん。
初めて食べた時のあの感動は今でも忘れないぜ。
ただの普通のメニューにみせかけて、1品1品に手を込めて愛を込めて作られたこれらをな」
「魔理沙……」
魔理沙の言葉を聞きつつも、恐る恐る料理に手を出す霊夢。
「私もいつかあんな料理を作りたい。それを霊夢に食べさせてやりたい。
そう思ってな。初めに感動したあの日から通い続けて、帰っては実験を繰り返して、なんとか近い味が出せたんだ。
これは決定戦とか関係無しに、霊夢に食べてもらいたかった料理なんだぜ」
魔理沙の言葉を聞きながらも、霊夢の箸は進んでいく。
ギャラリーも射命丸も黙る中、すべてを食べ終えた霊夢が端を置いた。
きっちりと完食している。
「……さすが魔理沙ね。いつも私が食べてる味とほとんど一緒じゃない」
「そうか!?本当にか!?」
「もちろんよ」
霊夢の言葉に、露骨なほどに喜びを体で表す魔理沙。
まるで大好きな母親に料理を褒められた娘のごとくに、いい笑顔で飛び回っている。
「それにしても、言ってくれれば作り方ぐらい教えてあげるのに」
「おいおい、それじゃあ意味が無いだろ。こういうのはドッキリでやるからいいんじゃないか」
「魔理沙らしいわね」
『えー、イチャイチャするのは勝手ですが、とりあえず審査結果の方をお願いできますか?』
初めこそは暖かな目で見ていたギャラリーだったが、次第にイチャイチャしだす2人を見て、
半ギレ憎しみ悲しみ等など、思い思いの感情を乗せた視線を向けていた。
少しの間空を眺めながら考えていた霊夢。
そして、さっぱりとした笑顔をして前を向き、言った。
「みんなおいしかったから、引き分けね」
神社内の空気が、凍った。
確かに霊夢のお人好し加減は知っていたが、ここまで彼女らが本気を出してがんばっている姿を出してもそれを崩さない姿には、思わず、空気読めよ。と思わざるを得なかった。
が、参加者達はその言葉に、どこか納得したような顔でため息をもらした。
「あー、やっぱそういう結果になるかー」
「まぁ、霊夢ならそう言うとは思ってたけどね」
「その辺空気読めれないからねー」
いつのまにか集まっていた前半参加者も、納得いっているようないってないような顔つきだった。
が、1人納得できてない顔の参加者がいた。
レミリア・スカーレットだ。
「ダメよ!せっかくみんなやる気出してるんだから、ここでちゃんと結果を出さないと!」
「それじゃあどうしようってんだ?」
魔理沙のその問いに、レミリアは不敵に笑った。
その笑みに、得体の知らない不安を覚えたギャラリーの一部はすでに逃げ出し始めていた。
「決まってるじゃない。
今までの異変を全部その力で解決してきた、いわば幻想郷最強の霊夢の相手よ?
それに魔理沙が初めに言ったじゃない。『一番強い奴がその権利がある』って」
「……つまり、」
察した魔理沙がどこからともなく箒を取り出すと、そのまま宙へと浮かびあがった。
それにつられるように、それぞれの参加者もスペルカードを取り出す。
「弾幕ごっこってわけか!!」
博麗神社上空で突然始まった幻想郷有力者数名による弾幕ごっこ。
射命丸は隠れながらもネタになるとしてカメラを構え、ギャラリー達は一目散に逃げ出し、チルノはすでにアリスの審査あたりで帰っており、
そして、霊夢はというと―――……
「あら、霊夢。どうしたの?」
守矢神社の境内で掃除をしていた早苗は、とぼとぼと歩いてきた霊夢を不思議に思い、掃除をやめて近寄ってきた。
霊夢は申し訳ないような、疲れきったような、そしてどこか幸せそうな顔で早苗を見た。
「早苗……1週間くらい、ここに泊めてくれない?」
「……は?」
結局、霊夢はそのまま守矢神社に1週間泊まった。
『奇跡的に』1週間の間誰にも発見されることは無かったが、『運命的に』レミリアと出会ってしまい、あえなく連れ戻されてしまう霊夢であった。
奇跡の力は運命の力には勝てないんだなぁ。と悔しそうにしている風祝が居たのは別の話だし、
壮大な弾幕ごっこの結果、博麗神社が半壊してしまったことにブチギレた霊夢が1対8で弾幕ごっこした結果、霊夢の圧勝だったという話も、また別の話である。
最終的には、霊夢の婿決定戦はうやむやのうちに無かった事にされてしまい、
彼女たちはいつも通りに霊夢のために博麗神社に集まる日々が続くというオチになってしまったのだった。
レイチルだと思った。
以上!
・・・まだだ、まだ終わらんよ
誤字
イルノはすでにアリスの
チルノはすでにアリスの
そして面白かったです!
8人相手して圧勝ですか・・・・。霊夢怖い子・・・・・・
だけど其処が良い!!
点数入れ忘れです
だがあえて言わせてもらおう。
霊夢は俺の嫁!!
この場を借りて言うがヤンデ霊夢は俺の嫁
いや面白かったですがねw
「かなり」でしょうか?
こういうのに細かい設定がどうのはいらないですね。
……愛されてるなー霊夢w
それと悔しそうにしている風祝にちょっとだけ笑ったw
しかしながら霊夢は俺の嫁。
香霖は別にいてもいなくてもいいそんz(ry
レミリアの能力の使い方って難しいなと思う私。
その後の霊夢の無視されっぷりが良いですね。(景品って……。)
残念なのは、永夜抄組が出ていない事です。何とか絡ませて欲しかったです。
みんなが料理をつくってる間にチルノとだいぶ仲良くなってる気がする。つうかなんだかんだで一番チルノがよかった気がwww
霊夢は
ゆ か り ん の 嫁
に決まってるジャマイカ!!!(信者の戯言)
霊夢は
ア リ ス の 嫁
に決まってるジャマイカ!!!(信者の戯言)
これは良いレイチルですね~
そして最後のぶちきれいむ。
妖怪の大賢者 八雲紫。
花の大妖 風見幽香。
運命の吸血鬼 レミリア・スカーレット。
密度を操る鬼 伊吹萃香。
時空を操るメイド 十六夜咲夜。
魔界神の娘 アリス・マーガトロイド。
魔砲使い 霧雨魔理沙。
これほどの面子を相手に圧勝ですか・・・wさすがです^^;
霊夢最強は私のジャスティスだからよかったw
霊夢は
俺 の 嫁
に決まってるジャマイカ!!!(変態の戯言)
文はどこいったよ?
あやれいむ最強ォ!
チルノちゃんに所々で癒されました♬