━━━私に友達は一人もいない。私の友達は人形だけだから。
そう言って、自嘲気味にアリスは笑ってた。
どこか悲しげな笑顔を思いだしながら、私は泣きそうだった。
『私は友達じゃないの?』
怖くてその一言がでてこなかった。
「ちょっと魔理沙、人ん家の軒下で何やってんのよ?」
声をかけられて我にかえる。
さっきまで頭上にあったはずの太陽は傾いていた。悩んでいるうちに寝てしまったようだ。
頭上で霊夢が不機嫌な顔をしている。
「せっかく人が遊びに来てやったっていうのに何やってるとは失礼な」
「人ん家でぼーっと寝ておいて遊びにきた、ね」
なにやら呆れてるらしい。
「まぁいいわ。お茶くらい入れてあげるからこっち来てよね」
「なぁ、霊夢。お前友達っているか?」
「友達?うーん、友達っていうのかわかんないけど、翠香とか紫とかがそうかな」
少し恥ずかしげに、後はアンタとかね、と付け足した。
友達って聞かれたら普通2、3人、最低でも1人くらいパッと思い浮かぶもんだ。
私にだってパチェリーや霊夢がいる。宴会時なら誰とでも友達みたいに笑い合える。
「それが普通だよな…」
なのにアリスは友達なんかいないと言う。
友達だと思っていたのは私だけなんだろうか?
「全くどうしたのよ?さっきから暗い顔して?」
「……アリスのやつがな、友達なんかいないって言うもんだからさ」
「あぁ確かにアイツは人形だけが友達って感じだものね。根暗なのよ」
「そっか。」
人形だけが友達。やっぱり周りが見てもそうなのか。
「えっと…別にアリスの悪口を言ったつもりじゃないわよ」
霊夢が焦って言い訳をしてる。アリスの悪口を言ったから私が沈んでると思ったようだ。
「前回の宴会にアリスを呼ばなかったのだって、先月ちょっとピンチだっただけで。ほら中国と
か⑨も呼んでなかったでしょ」
「アリスはあいつらと同じ扱いか」
「はははは。でも安心して、明日の宴会はみんな呼んであるから。魔理沙も来るでしょ?」
「もちろんだぜ」
即答したものの正直悩んでいた。
今、アリスに会ったら私はなんて言うのだろう。
なんて言ってしまうのだろう。
アリスはなんて答えるのだろう。
今日の宴会はいつもより盛大だ。
紅魔館や永遠亭の面々だけでなく、あらゆる人間、妖怪、幽霊、妖精が集まっている。鬼や天
狗の姿もある。
それにしてもけっこう頻繁に宴会を開いてるが、霊夢はどこから資金を調達してるのだろうか?
会費を取られたことはないし、賽銭も期待できない貧乏巫だし。まぁ今はそんなことはどーで
もいいか。
私とアリスは少し離れた場所で静かに飲んでいたが、特に会話はなかった。
「魔理沙、別に向こうで飲んで来てもいいわよ。騒ぎたいんでしょ?」
「今日は静かに飲みたい気分なんだ」
「へぇー、魔理沙でもそんな日があるのね」
「何気に失礼なセリフだな?」
言って二人して笑い合う。
なんだ。悩んでたのがバカみたいだ。自然に笑えるじゃないか。
どう考えたって私とアリスは友達同士だ。
「なぁアリス。この間友達なんかいないって言ってたけどさ、私とアリスは友達だろ?」
言いながら嫌な予感がした。
「………………。」
アリスはうつ向いて黙ったまま、両手がスカートを固く握り締めている。
「……アリス?」
「私は…私は魔理沙とずっと……ずっと友達なんて嫌」
聞き取るのがやっとな、泣きそうな声。実際に泣いていたのかもしれない。
でもそれを確認する間もなく、私は夜空に飛びだした。
今にも泣きだしそうな顔を見られたくなかったから。
「私は…魔理沙と…。」
後ろでアリスが何か言ってるが、聞こえなかった。聞きたくなかった。
「魔理沙?」
宴会の途中だというのに、凄いスピードで魔理沙が飛んでいくのが見えた。
どうしたんだろう。昨日暗い顔していたしちょっと心配だ。
「ちょっと霊夢」
突然何もない空間から紫の顔がでてきた。
驚いたけどもう慣れた。
「何よ紫?」
「あの二人の盗み聞きしてたんだけどね」
「ほんと便利だけど、迷惑な能力ね。で、なんだって?」
ごにょごにょ。
「あんた二人の友達でしょ?なんとかしてあげなさいよ」
「うーんそうね。でもどうすればいいのよ?ってもういないし…。」
仕方ない。とりあえず勘違いしてる魔理沙を追い掛けよう。
逃げ帰ってベッドにもぐっていたら霊夢が勝手に入ってきた。
鍵をかけるのも忘れるほど動揺していたらしい。
電気もつけずに霊夢はベッドに腰掛けた。泣き顔を見られたくなかったので助かった。そんな
霊夢のさりげない配慮がありがたかった。
「あんたらしくないじゃない?」
「主催者がこんなとこ来てていいのか?」
「メイドに任せて来たから大丈夫よ。悪いけど話は紫から聞かせてもらったわ」
隙間か。便利だけどやっかいな能力だ。
「じゃあ知ってるだろ。アリスは私と友達でいるのが嫌なんだってさ。友達だと思ってたのは私
だけ。笑っちまうだろ?」
「そうね、おかしいわ。あなたの勘違いがね。多分そのうちアリスが来ると思うから、私からは
あまり言わないでおくけど…」
「来るはずがないぜ」
「来るわよ。アリスは魔理沙のことを大好きなんだから。私が保証するわ」
「でも友達は嫌って」
「うーん分かりやすく言うとね、ライクとラブの違いなんだけど……まぁ少しはアリスを信じて
あげなさい」
いまいち何が言いたいのかわからない。私だってアリスを信じたい。
だからもう一度だけ、もし今来てくれたらもう一度だけ信じてみよう。
「魔理沙っ!!って霊夢!?電気もつけずに何やってるのよ!!」
アリスが騒がしく入ってきたと思ったら、急に明るくなった。アリスが電気を付けたようだ。
「あーはいはい。私はお邪魔みたいだから失礼するわ。多分宴会は朝まで続くから気が向いたら
また来てね」
なぜか電気消して出ていこうとしてる。
「なんで消すんだよ?」
「こういう時は雰囲気が大事なのよ。ね?アリス」
「し、知らないわよ。」
「じゃあね。」
霊夢がいなくなり、今度はアリスがベッドに腰かけた。霊夢よりも少し近かった。
沈黙が流れる。
「魔理沙は私のこと嫌い?」
アリスが先に静寂を破った。
「嫌いなわけないぜ…」
ベッドから体を起こす。でも顔はうつ向いたまま。泣きそうな顔を見られたくないっていうの
もあるけど、それ以上にアリスの目を見れなかった。
「…よかった。じゃあなんで逃げたの?」
「それは…アリスが……アリスが友達なんていないって言うから。私は…友達だと思ってたのに。なのに、私と友達なのは嫌だって言うから…。
アリスは私が嫌いなんだろ?」
もう涙を止めておくことはできなかった。
冷たいな。頬に流れる涙を感じて、そう思った。
「そんなことないわ。私魔理沙のこと大好きだもの」
「ほんとう?じゃあなんで友達なのは嫌だって?」
「魔理沙のことが大好きだからよ。だからもう友達じゃ満足できない。私は友達以上を望んでる
の」
あぁ、霊夢の言っていたのはこれのことか。
なるほど、笑ってしまうくらい、くだらない勘違いだ。
笑ってるのに、涙は止まらなかった。けど、暖かかった。
「アリス、私も友達以上でいたいぜ」
酒とつまみの追加を用意して戻って来たら、いつのまにか、宴会は魔理沙を中心に盛り上がっ
ていた。
「霊夢一勝負どうだ?飲み比べだ。妖怪相手じゃ勝てやしない」
「遠慮するわ。魔理沙達がいない間に翠香に付き合って、さんざん飲まされたんだから」
「ちぇっ。ノリの悪いヤツだぜ」
いつも通り、いやいつも以上に元気そうだ。
「とりあえず解決したみたいね。」
「あぁ迷惑かけたぜ。私とアリスは友達じゃない。霊夢が言いたかったのはそうゆうことだろ?」
一件落着か。
まぁ客観的に見たらこの解決の仕方で本当にいいのかという疑問が残るが、
「でもまぁよかったじゃない」
愛の形なんて人それぞれだろう。
「あぁ今日から私とアリスは友達以上。つまり…」
魔理沙が親指を立てた手を突き出して宣言した。
「親友だぜ!!」
・・・・・・・・はい?
思わずアリスを探す。
アリスは、中心から少し離れたところでパチェリーと酒を飲んでいた。
明らかにヤケザケだ。パチェリーは道連れか。
考えてみれば、アレからあまり時間はたっていない。ナニかあったにしては早すぎるから、ナニもなかったということか。
あわれなりアリス。
「よっしゃ翠香。もう一勝負だぜ」
魔理沙は酒瓶片手にフラフラしながら最強の酒豪に挑みにいった。
完全にできあがってる。今の魔理沙に何を言っても無駄だ。
アリスも同じだろう。
「ふぅ…………ライクとラブの違いは大きいみたいね」
呟いて霊夢もバカ騒ぎの中に戻っていった。
fin
そう言って、自嘲気味にアリスは笑ってた。
どこか悲しげな笑顔を思いだしながら、私は泣きそうだった。
『私は友達じゃないの?』
怖くてその一言がでてこなかった。
「ちょっと魔理沙、人ん家の軒下で何やってんのよ?」
声をかけられて我にかえる。
さっきまで頭上にあったはずの太陽は傾いていた。悩んでいるうちに寝てしまったようだ。
頭上で霊夢が不機嫌な顔をしている。
「せっかく人が遊びに来てやったっていうのに何やってるとは失礼な」
「人ん家でぼーっと寝ておいて遊びにきた、ね」
なにやら呆れてるらしい。
「まぁいいわ。お茶くらい入れてあげるからこっち来てよね」
「なぁ、霊夢。お前友達っているか?」
「友達?うーん、友達っていうのかわかんないけど、翠香とか紫とかがそうかな」
少し恥ずかしげに、後はアンタとかね、と付け足した。
友達って聞かれたら普通2、3人、最低でも1人くらいパッと思い浮かぶもんだ。
私にだってパチェリーや霊夢がいる。宴会時なら誰とでも友達みたいに笑い合える。
「それが普通だよな…」
なのにアリスは友達なんかいないと言う。
友達だと思っていたのは私だけなんだろうか?
「全くどうしたのよ?さっきから暗い顔して?」
「……アリスのやつがな、友達なんかいないって言うもんだからさ」
「あぁ確かにアイツは人形だけが友達って感じだものね。根暗なのよ」
「そっか。」
人形だけが友達。やっぱり周りが見てもそうなのか。
「えっと…別にアリスの悪口を言ったつもりじゃないわよ」
霊夢が焦って言い訳をしてる。アリスの悪口を言ったから私が沈んでると思ったようだ。
「前回の宴会にアリスを呼ばなかったのだって、先月ちょっとピンチだっただけで。ほら中国と
か⑨も呼んでなかったでしょ」
「アリスはあいつらと同じ扱いか」
「はははは。でも安心して、明日の宴会はみんな呼んであるから。魔理沙も来るでしょ?」
「もちろんだぜ」
即答したものの正直悩んでいた。
今、アリスに会ったら私はなんて言うのだろう。
なんて言ってしまうのだろう。
アリスはなんて答えるのだろう。
今日の宴会はいつもより盛大だ。
紅魔館や永遠亭の面々だけでなく、あらゆる人間、妖怪、幽霊、妖精が集まっている。鬼や天
狗の姿もある。
それにしてもけっこう頻繁に宴会を開いてるが、霊夢はどこから資金を調達してるのだろうか?
会費を取られたことはないし、賽銭も期待できない貧乏巫だし。まぁ今はそんなことはどーで
もいいか。
私とアリスは少し離れた場所で静かに飲んでいたが、特に会話はなかった。
「魔理沙、別に向こうで飲んで来てもいいわよ。騒ぎたいんでしょ?」
「今日は静かに飲みたい気分なんだ」
「へぇー、魔理沙でもそんな日があるのね」
「何気に失礼なセリフだな?」
言って二人して笑い合う。
なんだ。悩んでたのがバカみたいだ。自然に笑えるじゃないか。
どう考えたって私とアリスは友達同士だ。
「なぁアリス。この間友達なんかいないって言ってたけどさ、私とアリスは友達だろ?」
言いながら嫌な予感がした。
「………………。」
アリスはうつ向いて黙ったまま、両手がスカートを固く握り締めている。
「……アリス?」
「私は…私は魔理沙とずっと……ずっと友達なんて嫌」
聞き取るのがやっとな、泣きそうな声。実際に泣いていたのかもしれない。
でもそれを確認する間もなく、私は夜空に飛びだした。
今にも泣きだしそうな顔を見られたくなかったから。
「私は…魔理沙と…。」
後ろでアリスが何か言ってるが、聞こえなかった。聞きたくなかった。
「魔理沙?」
宴会の途中だというのに、凄いスピードで魔理沙が飛んでいくのが見えた。
どうしたんだろう。昨日暗い顔していたしちょっと心配だ。
「ちょっと霊夢」
突然何もない空間から紫の顔がでてきた。
驚いたけどもう慣れた。
「何よ紫?」
「あの二人の盗み聞きしてたんだけどね」
「ほんと便利だけど、迷惑な能力ね。で、なんだって?」
ごにょごにょ。
「あんた二人の友達でしょ?なんとかしてあげなさいよ」
「うーんそうね。でもどうすればいいのよ?ってもういないし…。」
仕方ない。とりあえず勘違いしてる魔理沙を追い掛けよう。
逃げ帰ってベッドにもぐっていたら霊夢が勝手に入ってきた。
鍵をかけるのも忘れるほど動揺していたらしい。
電気もつけずに霊夢はベッドに腰掛けた。泣き顔を見られたくなかったので助かった。そんな
霊夢のさりげない配慮がありがたかった。
「あんたらしくないじゃない?」
「主催者がこんなとこ来てていいのか?」
「メイドに任せて来たから大丈夫よ。悪いけど話は紫から聞かせてもらったわ」
隙間か。便利だけどやっかいな能力だ。
「じゃあ知ってるだろ。アリスは私と友達でいるのが嫌なんだってさ。友達だと思ってたのは私
だけ。笑っちまうだろ?」
「そうね、おかしいわ。あなたの勘違いがね。多分そのうちアリスが来ると思うから、私からは
あまり言わないでおくけど…」
「来るはずがないぜ」
「来るわよ。アリスは魔理沙のことを大好きなんだから。私が保証するわ」
「でも友達は嫌って」
「うーん分かりやすく言うとね、ライクとラブの違いなんだけど……まぁ少しはアリスを信じて
あげなさい」
いまいち何が言いたいのかわからない。私だってアリスを信じたい。
だからもう一度だけ、もし今来てくれたらもう一度だけ信じてみよう。
「魔理沙っ!!って霊夢!?電気もつけずに何やってるのよ!!」
アリスが騒がしく入ってきたと思ったら、急に明るくなった。アリスが電気を付けたようだ。
「あーはいはい。私はお邪魔みたいだから失礼するわ。多分宴会は朝まで続くから気が向いたら
また来てね」
なぜか電気消して出ていこうとしてる。
「なんで消すんだよ?」
「こういう時は雰囲気が大事なのよ。ね?アリス」
「し、知らないわよ。」
「じゃあね。」
霊夢がいなくなり、今度はアリスがベッドに腰かけた。霊夢よりも少し近かった。
沈黙が流れる。
「魔理沙は私のこと嫌い?」
アリスが先に静寂を破った。
「嫌いなわけないぜ…」
ベッドから体を起こす。でも顔はうつ向いたまま。泣きそうな顔を見られたくないっていうの
もあるけど、それ以上にアリスの目を見れなかった。
「…よかった。じゃあなんで逃げたの?」
「それは…アリスが……アリスが友達なんていないって言うから。私は…友達だと思ってたのに。なのに、私と友達なのは嫌だって言うから…。
アリスは私が嫌いなんだろ?」
もう涙を止めておくことはできなかった。
冷たいな。頬に流れる涙を感じて、そう思った。
「そんなことないわ。私魔理沙のこと大好きだもの」
「ほんとう?じゃあなんで友達なのは嫌だって?」
「魔理沙のことが大好きだからよ。だからもう友達じゃ満足できない。私は友達以上を望んでる
の」
あぁ、霊夢の言っていたのはこれのことか。
なるほど、笑ってしまうくらい、くだらない勘違いだ。
笑ってるのに、涙は止まらなかった。けど、暖かかった。
「アリス、私も友達以上でいたいぜ」
酒とつまみの追加を用意して戻って来たら、いつのまにか、宴会は魔理沙を中心に盛り上がっ
ていた。
「霊夢一勝負どうだ?飲み比べだ。妖怪相手じゃ勝てやしない」
「遠慮するわ。魔理沙達がいない間に翠香に付き合って、さんざん飲まされたんだから」
「ちぇっ。ノリの悪いヤツだぜ」
いつも通り、いやいつも以上に元気そうだ。
「とりあえず解決したみたいね。」
「あぁ迷惑かけたぜ。私とアリスは友達じゃない。霊夢が言いたかったのはそうゆうことだろ?」
一件落着か。
まぁ客観的に見たらこの解決の仕方で本当にいいのかという疑問が残るが、
「でもまぁよかったじゃない」
愛の形なんて人それぞれだろう。
「あぁ今日から私とアリスは友達以上。つまり…」
魔理沙が親指を立てた手を突き出して宣言した。
「親友だぜ!!」
・・・・・・・・はい?
思わずアリスを探す。
アリスは、中心から少し離れたところでパチェリーと酒を飲んでいた。
明らかにヤケザケだ。パチェリーは道連れか。
考えてみれば、アレからあまり時間はたっていない。ナニかあったにしては早すぎるから、ナニもなかったということか。
あわれなりアリス。
「よっしゃ翠香。もう一勝負だぜ」
魔理沙は酒瓶片手にフラフラしながら最強の酒豪に挑みにいった。
完全にできあがってる。今の魔理沙に何を言っても無駄だ。
アリスも同じだろう。
「ふぅ…………ライクとラブの違いは大きいみたいね」
呟いて霊夢もバカ騒ぎの中に戻っていった。
fin
だがそれが良い
まあ、そうくるわなw
だからがんばれ。
下手にシリアスな文章より百倍好きです。人によってまちまちだと思うけど、こんな意見もありますよ。