幻想郷の空を小町が飛ぶ。
死神が鎌も持たずに飛ぶ。
「大変大変大変大変大変大変大変大変大変大変大変たいへんたいぺんたいふぇんちゃいへんたいへんたい変態変態変態」
よほど焦っているのか、噛むはイントネーションがおかしくなるは散々である。
そんな死神の向かっている場所とは……?
「たまにはあなたがお茶淹れてくれない?」
「なんだ霊夢。お前は客人にお茶の準備をさせるつもりか?」
「毎日毎日来られると、お茶の貯蓄も無くなるのよ」
そんなわけで、今日は2人とも水を飲んでいる霊夢と魔理沙in博麗神社の縁側。
水と羊羹というのも、またこれはこれで趣があると霊夢は言うが、どうがんばって味わっても無理がある。
魔理沙は渋い顔で水を飲み続ける。
「遠まわしに来るなって言ってるように聞こえるな。さみしいぜー霊夢ー」
「そうは言ってないでしょ。だから次来るときはお茶を持参して」
「巫女ぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!」
喧嘩しているようで、表情はのほほんとしている2人は、空からとてもすごい声を出しながら接近してくる物体を見た。
よく見えないが、恐らくあの服装と胸にある脂肪の塊は死神のものだろうことは分かった。
よく見えないが、脂肪の塊は見えた2人には無意識のコンプレックスがあるものと思われるがそれは関係ない話だ。
「どうかしたの死神。こんなところまで来て」
「またサボりか?」
「そ、相談、が!」
無事2人の前に着地した小町は、息も途絶え途絶えに霊夢を指差した。
頭を傾げる魔理沙だが、霊夢は次の瞬間には接待用の笑顔になり、賽銭箱のある方を指差した。
「前金制よ。素敵な賽銭箱はあっち」
「くっ……」
何か文句を言いたげな小町だったが、渋々賽銭箱の方に歩いていった。
「相談とか前金とかってなんなんだ?」
「あら、天狗の新聞読んでないの?」
「ムダな時間は使いたくないからな」
「天狗に頼みこんで広告載せてもらったのよ、『博麗相談所』って」
お前が相談にのって的確なアドバイスできるのか。ただの賽銭集めというか小遣い稼ぎじゃないか。
と言いたげな魔理沙の視線を霊夢は理解しているうえで無視していると、まだ文句言いたげな顔の小町が戻ってきた。
「で、相談ってなに?」
「……そこの黒白が気になるけどまぁいい。
これはさっきの事なんだけど、いつもみたいにあたい昼寝してたのよ」
「ホントにどうしようもないなお前は」
横やりを入れる魔理沙に、小町と霊夢から鋭い視線が向けられた。
とりあえず魔理沙は少し拗ねた顔で水を飲み、聞き役に徹することにした。話自体に興味はあるらしい。
「それで、目が覚めると目の前に四季様いたわけさ」
「あー、それで説教を」
「『されなかったんだ』!」
必死の形相の小町に対して、はぁ?と言いたげな霊夢と魔理沙。
「いや、それは別にお前にとってはいい事じゃないのか?」
「だ、だって四季様が説教しないんだよ!?真面目に仕事するあたいくらいありえないことなんだよそれは!」
そんな堂々と言う事か。というような事を叫びながら、なおも必死の形相の小町。
その様子を見て、霊夢と魔理沙は顔を見合せてゆっくりと頷いた。
「……ただ無言で、あの棒で頭をコツンとやってさっさと引き返していったの。
これはつまり、四季様をそれほど怒らせたって事でしょ?
あー!明日からどんな顔して生きていけば!!」
「……ただのマゾね」
「ただのマゾだぜ」
きっぱりと言い放つ2人と、はぁ?と言いたげな顔の小町。
「……結論?」
「結論。またのお越しをお待ちしています」
「論が結してない!感想だそれは!!」
「じゃあどんな結論だせってのよ、そんな話の」
おいおい、相談役なんだろ?
と心配そうな顔になる魔理沙だったが、まぁこいつが相談役とか無理だしなーと自己完結で落ち着いた顔を取り戻した。
もちろん、そんな魔理沙は置いて2人の話は続く。
「そ、それを考えるのが相談役なんじゃないの?」
「……そうね、一利あるわ。
じゃあ私なりの結論を言うわね」
すぅ。と一呼吸おく霊夢。
小町も魔理沙も、真剣な表情で霊夢を見ている。
「閻魔に直接聞けばいいんじゃないの」
ずっこける小町。それはもう漫画の如くに。
魔理沙はやっぱり。みたいな顔だった。
「そ、それが相談役の言葉か!?」
「そうよ。理にかなってるじゃない。
貴女は閻魔の気持ちが知りたい。だったら直接聞いた方が早いんじゃないの?」
ぐっ。と痛いところを突かれたような顔をする小町。
しかしそれは正論と言えば正論なのだろうが、仮にもお金まで取って相談を受ける人の言う事ではない。
そう思っているのは、この場では魔理沙だけだった。
「知りたかったら自分でどうにかする。これが結論よ。それじゃあまたのお越しを」
「……頭が冷えて、その考えが自分で浮かんだって事に気付いたって意味では、感謝するわ」
なんだかしっくりこないというような顔をしつつ、小町は帰っていった。
そして残ったのは水が2杯と羊羹が少し。そして不真面目相談役の霊夢と魔理沙だけになった。
なにか言いたげな魔理沙の温かい視線を、知ってて無視する霊夢。
「……それでいくら取ってんだ?」
「それは相談してくる方の気持ち次第よ。入れなくてもいいし、いっぱい入れてくれてもいいの」
「へぇ、霊夢にしては真面目な案だな」
「ただ、一日の終わりのお賽銭箱の中を見てあんまり入ってないようだったら相手の家に忍び込んで……」
前言撤回だこりゃ。とため息を漏らす魔理沙。の目に、てくてくと歩いてくる小さいのが見えた。
あの服装とあの帽子。そして手に持つあのなんとかっていう棒を見るにその小さいのは閻魔様だろう。というか、閻魔様だった。
「あら、商売繁盛ね。次のお客さんはあなた?」
「は、はい……そこの魔法使いが気になりますが、相談事がありまして」
「いつも白黒つけてるわりには珍しいな」
あまり元気が無い様子の映姫に向かい、霊夢はまた営業用の笑顔をつくって賽銭箱の方を指す。
「前金制ね。素敵な賽銭箱はあっち」
「……仕方ありませんね」
小町よりかはあっさりと折れるとテクテクと歩いて行く映姫。
あの生真面目の事だから、けっこうな金額入れるだろうなー。となんだか魔理沙が申し訳ない気持ちになってきた。
そんな魔理沙をよそに、戻ってきた映姫を隣に座らせる霊夢。
「で、相談って?」
「はい。その……こ、小町の事なんですが」
お前もかよ。と思わずいいかけて止める魔理沙と霊夢。
ここは黙っているほうがきっとおもしろいだろうという判断だ。
「最近はけっこう真面目に働いていたんですが、昨日またいつものように寝ていたのです。
だから私もいつも通りに起こして話をしてあげようとしたのですが……」
話すにつれて、明らかにテンションが下がり、顔やオーラがしょぼんとなっていく映姫。
こりゃ重症だなーとか、小町愛されてるなーとかなんだか関係の無いことを考えている2人。
「小町は起きたとたん、顔を真っ赤にしてそっぽを向いたのです。
それには私も頭にきたので怒ったのですが、小町は『はい、すみません』や『あ、後で説教はききますから!』
などと言っていっこうにこちらを向かないんです……これは、やっぱり小町は怒っているんですよね?
顔を真っ赤にするほど怒られる記憶なんて、私には無くて……」
もはや分裂した萃香よりちっさいんじゃないかと思われるほどに縮こまってしまった映姫。
その様子に、さすがに霊夢も魔理沙も心配そうな顔をする。
そして霊夢はまじめな顔を作り、映姫の肩に手を置いた。
「それほどあの死神の事が好きなの?」
「う、え……あ、は……はい」
一瞬なんで分かった!?みたいな表情をし顔を真っ赤に染めるが、映姫はゆっくりと首を縦に下ろした。
なんてことはない、ただのバカップルのすれ違いだっていう事に気がづいた霊夢だが、一応自分で相談役と名乗った以上、
それっぽい事を言わないといけないなと決意した。
「それで、理由もわからないで怒る死神……小町の心境が知りたいのね」
「……はい」
「だったら、自分で聞けばいいじゃない」
「し、しかし!また顔をそらされてしまったら私は……」
すっかりしょげてしまっている映姫。それを見かねたのか、魔理沙は縁側から飛び降りると映姫まえまで歩いてきた。
そして、霊夢とは逆の方の肩に手を置く。
「だったら無理やりにでも顔を自分の方に向けさせればいいだろ?
いつもの説教みたいに強気で行け、強気で」
「……その説教のせいで怒られているとしたら……」
「あーもー、本当に生真面目で厄介ねあなたは」
霊夢は少し怒った顔をすると、水を一気に飲みほし、映姫の顔をガッと掴んだ。
突然の行動に驚く映姫。そしてそれ以上に驚く魔理沙。
「自分が思ってる事はちゃんと伝えないと意味が無いのよ?
嫌われるのがいやなら、なんで嫌われてるのかを直接言葉に出して聞きなさい。
聞いて直せるのなら直せばいいし、無理ならもう私は知らん!」
これまた無茶な意見だぜおい。と思う魔理沙だったが、思いのほか映姫の心には響いたようで、
あっけにとられた顔から、みるみるうちにいつもの顔に戻っていった。
「そうですね……当たって砕けろって事ですね?」
「砕けないようにするのよ」
霊夢の言葉に無言でうなづくと、映姫はそのままピューと空に飛んでいった。
またのお越しを~。と遠くなっていく映姫に向けて叫ぶ霊夢を見ながら、魔理沙はため息をついた。
「なによ」
「いや、思ったより相談役ってのははまり役だと思ってな」
「そう?」
皮肉だよ。分かってるわよ。と視線で会話しながら、お客さんも居なくなったところで再び縁側へと帰って行く2人。
そして霊夢は空になった湯呑を手に取りながら、そう言えば。と魔理沙に話を振った。
「魔理沙も何か相談は無いの?あなたとの仲なら無料で乗ってあげるわよ初回限定で」
「限定かよ!
いや……そうだな……」
いきのいいツッコミをするが、次の瞬間にはなにかを考える顔になる。
そして霊夢の顔を2、3回チラ見するとビシッと姿勢を改めた。
「あら、なにかあるのね?」
「あぁ、前々から思ってたことなんだけどな……」
そこで、魔理沙はとても男らしい、爽やかな笑顔で霊夢を見た。
空の湯呑を手を遊ばせていた霊夢の顔が、ぴたりと止まる。
「いつまでも私の思いに気づかない、紅白の巫女と生涯を添い遂げるには、どうしたらいいのかな?」
魔理沙の言葉に、霊夢の湯呑はぽとりと落ち、地面に転がった。
恥ずかしいのか、へへっと笑う魔理沙に対し霊夢はぽかんとした顔をしており、それが時間が経つにつれてじょじょに赤くなっていく。
「……魔理沙」
「……霊夢」
そんなところで場面転換。場所は三途の河。
この話の主役は霊夢と魔理沙ではないのだ。前半部分はほとんどそうだったが。
まぁとにかく、三途の河に置いてきてしまっていた鎌を手に取りながら、小町は河の向こうをジッと見ていた。
四季様が来たら、なにを話そう。どんな顔をして話せばいいんだろうか。
さきほどからずっとそればかりである。
「……こま、ち?」
そんな小町の背後から、今会いたかった人の弱々しい声が聞こえる。
少し頬が赤くなるのを自覚しながら、小町は振り向いた。
その目に見えた会いたかった人は、言葉の調子と同様どこか弱々しかった。
「し、四季様……その、し、仕事さぼってどこいってたんですか!?」
思わず出てしまった言葉は、そんなどうでもいいような指摘で。
お前が言うな。と自分でもつっこんでしまいたいものだった。案の定、
「それをあなたが言いますか!?」
と軽く説教を受けてしまったのだが、甘んじて受けようと黙って聞く小町。
だがそんな小町の様子がただ我慢しているだけのように見えて、思わず映姫は喋るのを止めてしまった。
「……?し、四季様?」
「あ……その、ご、ごめんなさい。こんな説教、聞きたくないですよね」
表情が暗くなる映姫。その表情は涙は流しているが泣いているようにも見える。
突然の事に驚く小町だが、鎌が手から零れるように落ち、その音が聞こえた時には映姫を抱きしめていた。
今度は映姫の方が驚く番となってしまった。
「こ、こ、小町!?」
「すみませんでした!四季様がそんな事を気にしていたなんて……いいんです!いくらでも説教してください!
説教をしていない四季様なんて四季様じゃありませんよ!あたし、どんなに説教されても絶対に四季様を嫌いになったりしませんから!だから!」
そんな悲しそうな顔をするのは止めてください。
小町のその言葉に、映姫の涙腺は緩んでしまった。
それを隠すように抱きつかれたまま小町の肩に顔を押しあてる。
「……本当に、怒ってませんか?」
「はい。あたし、ちょっと寝起きに四季様の顔が近くにあって、その恥ずかしくなっちゃって……」
「……バカです。小町は、本当にバカです」
「…………はい。そうですね」
ははっ、と軽く笑みを浮かべながら、そのまま小町は数時間の間説教を続けられた。
説教と言っても、中身はバカだのまぬけだの、可愛いだの好きだの、愛してるだの……
まぁつまりは、ただのバカップルの痴話喧嘩に相当する類のものだっただけなのだが。
とにかくそのまま映姫は、初めて仕事を10分サボり小町に説教を続けていたらしい。
「……今度からは、ちゃんと私の顔を見ながら話をききなさい」
「はい。って、今はいいんですか?」
「い、今はいいんです!」
「はい、すみませんでした」
――――数日後。
「し、四季様がなかなか寝かしてくれないんですけどそうすれば」
「帰れ」
夢想封印でピューン。
「こ、小町のような体になるにはどうしたら」
「帰っていいぜ」
マスタースパークでド-ン。
「……あの2人は、相談所をただノロケ話す場所だって勘違いしてるんじゃない?」
「ったく、そんな方法あるんだったらすでにやってるぜ」
それでも小町も映姫も、お互いがお互いの為にと思って。
今日も入れ違いで博麗神社に相談にくるのでした。
それを迎え撃つのが、いつも通りにお茶を飲みながら、でもその片手はお互いに重ね合ったままな霊夢と魔理沙。
いつも通りに仲がよくて、けど昔よりもお互いを知り合っているような2人。
とにかくまぁ、そんな感じの、幻想郷にはよくある日常で。
みんなの知らないところで2組のカップルができたとか、そういう話なのである。
おいしくニヤニヤさせてもらいました。
二組のバカッポーにニヤニヤさせていただきましたw
また黒白が何か盗んで神社に逃げたのかなぁ…
バカップルGJ
5円だったら大金じゃないかー!と思った。現代の金額に換算して~って意味なら少ないな。
魔理沙・・・・GJ
良いですねぇ・・・このバカップルw
霊夢と魔理沙のバカップルも良いですね。
ニヤニヤしていただければ幸いです。
>呼び方「四季様」
あぁ、確かにそうだった気が。
わざわざありがとうございます。修正しておきます。
>名前ガの兎さま
おそらく、それは返り討ちフラグかと。
紅白黒白が一緒なら誰にも負けないぜ的な。
>5円は大金
一応、今のお金で考えてたんですけど、よく考えたら幻想郷の通貨は昔のだったかもしれない。
でもまぁとりあえず今の5円だと換算してもらえれば大丈夫です。
それはそれとして、閻魔と死神のこういう関係は大好きです。とても長く生きているとは思えないほどのうぶっぷりは、見ていて思わず笑顔になってしまいます。映姫かぁいい。
なんとか他のキャラクターでの続投を期待しています。
・・・よく考えたらそれは褒めてねぇ!